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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065902
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】車載器および通信システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/00 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G06F3/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174987
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 一成
(57)【要約】
【課題】車載器を接続する場合に、ネットワーク構成のバリエーションが複数ある場合でも、機種の増加や外付け部品の増加を伴うことなく有線伝送路におけるインピーダンスの不整合を防止する。
【解決手段】車載器10が、CAN等の通信線21に接続可能な1組以上の外部通信端子17、18と前記外部通信端子を介して通信する機能を有する中央処理部11a、12aと外部通信端子と電気的に接続された終端抵抗器11f、12fと終端抵抗器の使用の有無を切り替え可能なスイッチ回路11e、12eと、外部から入力された、終端抵抗器の使用の有無に関する設定データを記憶する不揮発性メモリ11c、12cと、設定データの内容に基づいてスイッチ回路の状態を制御する終端制御部11b、12bとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信線に接続可能な1組以上の外部通信端子と、
前記外部通信端子を介して通信する機能を有する中央処理部と、
前記外部通信端子と電気的に接続された終端抵抗器と、
前記終端抵抗器の使用の有無を切り替え可能なスイッチ回路と、
外部から入力された、前記終端抵抗器の使用の有無に関する設定データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記設定データの内容に基づいて前記スイッチ回路の状態を制御する終端制御部と、
を備える車載器。
【請求項2】
それぞれ通信線に接続可能な第1外部通信端子および第2外部通信端子と、
前記第1外部通信端子を介して通信する機能を有する第1中央処理部と、
前記第2外部通信端子を介して通信する機能を有する第2中央処理部と、
前記第1外部通信端子と電気的に接続された第1終端抵抗器と、
前記第2外部通信端子と電気的に接続された第2終端抵抗器と、
前記第1終端抵抗器の使用の有無を切り替え可能な第1スイッチ回路と、
前記第2終端抵抗器の使用の有無を切り替え可能な第2スイッチ回路と、
外部から入力された、前記終端抵抗器の使用の有無に関する設定データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記設定データの内容に基づいて前記第1スイッチ回路および前記第2スイッチ回路の各々の状態を制御する終端制御部と、
を備え、前記第1中央処理部および前記第2中央処理部は互いに種類の異なる機能を有する、
車載器。
【請求項3】
請求項1に記載の車載器と、
前記車載器と接続可能な管理装置と、
を備え、
前記管理装置は、所定のユーザインタフェースにおいて決定した内容をインストール用データとして前記車載器に与える機能を有し、
前記車載器の前記終端制御部は、前記管理装置から前記インストール用データを入力し、入力したデータを前記スイッチ回路の状態に反映する、
通信システム。
【請求項4】
請求項2に記載の車載器と、
前記車載器と接続可能な管理装置と、
を備え、
前記管理装置は、所定のユーザインタフェースにおいて決定した内容をインストール用データとして前記車載器に与える機能を有し、
前記車載器の前記終端制御部は、前記管理装置から前記インストール用データを入力し、入力したデータを前記第1スイッチ回路および前記第2スイッチ回路の各々の状態に反映する、
通信システム。
【請求項5】
前記終端制御部は、前記スイッチ回路の状態に対応するデータを保持するデータ保持部を有する、
請求項1に記載の車載器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の通信機器の間を有線の伝送路で接続し、前記伝送路を経由して複数の通信機器の間で通信する通信システムを構成する場合には、各通信機器を含む伝送路の全体についてインピーダンスを正しく整合させる必要がある。インピーダンスの不整合が発生すると信号の反射が生じるため、例えば信号波形に反射した不要な信号がノイズとして重畳し波形に歪みが生じたりする。
【0003】
したがって、2つの通信機器を単一の伝送路で接続した単純な構成の通信システムの場合には、インピーダンスの不整合が生じないように、伝送路の一端側および他端側にそれぞれ終端抵抗器を接続するのが一般的である。
【0004】
また、例えば特許文献1の図1に示された構成においては、ディジーチェーン接続されたケーブルの一端側のコネクタ内に1つの終端抵抗を配置し、他端側のコネクタ内にもう1つの終端抵抗を配置している。また、特許文献1の図3に示された構成においては、ケーブルの一端側のコネクタ内に1つの終端抵抗を配置し、他端側のノード内にもう1つの終端抵抗を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-303952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、車両に搭載される通信システムの場合には、例えばCAN (Controller Area Network)のような1組の共通のネットワーク上の様々な位置に、様々な種類の多数の通信可能な機器がそれぞれ接続される。また、ネットワーク上のそれぞれの位置に接続される通信機器の種類や数は、車両の車種毎、オプションの有無などに応じて変化する。また、同じ種類の車両であっても、設計仕様の変更に応じて通信機器の種類が変化したり、新たな通信機器が追加される場合もある。
【0007】
一方、車両上のネットワークに接続することを想定して設計された車載器においては、通信用のインタフェース回路の部位に終端抵抗器を内蔵している機種と、終端抵抗器が存在しない機種とがある。このような車載器を車両上のネットワークに接続する場合には、ネットワーク全体としてインピーダンスの不整合が生じないように構成する必要がある。そのため、車載器を車両に取り付ける作業者は、ネットワーク全体のシステム構成に合わせて、車載器の機種を適切に選定したり、状況に応じて適切な終端抵抗器を車載器の近傍に外付けで接続しなければならなかった。
【0008】
したがって、車両メーカや部品メーカは、同じ車載器について終端抵抗器を内蔵している機種と、終端抵抗器が存在しない機種とをそれぞれ用意したり、終端抵抗器を別途用意する必要がある。そのため、車載器の品番数や保管すべき終端抵抗器が増えて管理コストが増大する。また、作業者は、取り付け作業時に間違いが生じないように注意しなければならず、作業者の負担も大きくなる。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、想定されるネットワーク構成のバリエーションが複数ある場合でも、機種の増加や外付け部品の増加を伴うことなく、有線伝送路におけるインピーダンスの不整合を防止することが容易な車載器および通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
【0011】
通信線に接続可能な1組以上の外部通信端子と、
前記外部通信端子を介して通信する機能を有する中央処理部と、
前記外部通信端子と電気的に接続された終端抵抗器と、
前記終端抵抗器の使用の有無を切り替え可能なスイッチ回路と、
外部から入力された、前記終端抵抗器の使用の有無に関する設定データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記設定データの内容に基づいて前記スイッチ回路の状態を制御する終端制御部と、
を備える車載器。
【0012】
それぞれ通信線に接続可能な第1外部通信端子および第2外部通信端子と、
前記第1外部通信端子を介して通信する機能を有する第1中央処理部と、
前記第2外部通信端子を介して通信する機能を有する第2中央処理部と、
前記第1外部通信端子と電気的に接続された第1終端抵抗器と、
前記第2外部通信端子と電気的に接続された第2終端抵抗器と、
前記第1終端抵抗器の使用の有無を切り替え可能な第1スイッチ回路と、
前記第2終端抵抗器の使用の有無を切り替え可能な第2スイッチ回路と、
外部から入力された、前記終端抵抗器の使用の有無に関する設定データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記設定データの内容に基づいて前記第1スイッチ回路および前記第2スイッチ回路の各々の状態を制御する終端制御部と、
を備え、前記第1中央処理部および前記第2中央処理部は互いに種類の異なる機能を有する車載器。
【0013】
上記の車載器と、
前記車載器と接続可能な管理装置と、
を備え、
前記管理装置は、所定のユーザインタフェースにおいて決定した内容をインストール用データとして前記車載器に与える機能を有し、
前記車載器の前記終端制御部は、前記管理装置から前記インストール用データを入力し、入力したデータを前記スイッチ回路の状態に反映する、
通信システム。
【0014】
上記に記載の車載器と、
前記車載器と接続可能な管理装置と、
を備え、
前記管理装置は、所定のユーザインタフェースにおいて決定した内容をインストール用データとして前記車載器に与える機能を有し、
前記車載器の前記終端制御部は、前記管理装置から前記インストール用データを入力し、入力したデータを前記第1スイッチ回路および前記第2スイッチ回路の各々の状態に反映する、
通信システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車載器および通信システムによれば、想定されるネットワーク構成のバリエーションが複数ある場合でも、機種の増加や外付け部品の増加を伴うことなく、有線伝送路におけるインピーダンスの不整合を容易に防止できる。すなわち、車載器が終端抵抗器を内蔵し、終端制御部がスイッチ回路を制御して終端抵抗器の使用の有無を切り替えるので、実際のネットワーク構成に合わせて不整合が生じないように終端抵抗器の接続状態を変更できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態における車載器の主要部構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1の車載器を接続した通信システムの構成例を示すブロック図である。
図3図3は、終端管理テーブルの構成例を示す模式図である。
図4図4は、車載器の状態を設定する際に利用可能な通信システムの構成例を示すブロック図である。
図5図5は、図1の車載器を接続可能な通信システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0019】
<車載器の構成>
図1は、本発明の実施形態における車載器10の主要部構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示した車載器10は、単一の筐体10aの内部にデジタルタコグラフ(運行記録計)の機能と、ドライブレコーダの機能とを搭載している。
【0021】
車載器10において、デジタルタコグラフの主要な機能は、回路基板11上に組み付けられた電子回路のハードウェア及びソフトウェアにより実現される。また、ドライブレコーダの主要な機能は、回路基板12上に組み付けられた電子回路のハードウェア及びソフトウェアにより実現される。
【0022】
一方の回路基板11は、デジタルタコグラフ用の中央処理ユニット(CPU)11aを備えている。また、不揮発性メモリ11c、CANトランシーバ11d、及びアナログスイッチ11eが回路基板11に搭載されている。
【0023】
また、中央処理ユニット11aは、終端制御部11bの機能を備えている。中央処理ユニット11aにおける終端制御部11b以外の機能は、一般的なデジタルタコグラフにおける制御部の機能と同様である。
【0024】
不揮発性メモリ11cは、中央処理ユニット11aが実行可能なプログラムや、予め決定された定数データなどを保持することができる。また、車載器10の外部に所定の管理装置を接続することで、不揮発性メモリ11cのデータを必要に応じて更新できる。
【0025】
中央処理ユニット11aの通信ポートはCANトランシーバ11dと接続されている。また、CANトランシーバ11dのネットワーク側端子は、一対の通信線13、14を介して通信系コネクタ17の端子17a、17bと接続されている。
【0026】
図1に示した構成においては、車載器10の通信系コネクタ17は、CAN通信線21の接続位置P1に接続されている。CAN通信線21は、例えばツイストペア線のように一対の電線により構成され、H側通信線21HとL側通信線21Lとを含んでいる。勿論、車載器10は、CAN以外の様々な通信線と接続することも可能である。
【0027】
中央処理ユニット11aは、CANトランシーバ11dとの間で通信信号SG3の入出力を行うことで、CAN通信線21と接続されている車両上の他の様々な機器や、同じ車載器10上の回路基板12側との間でデータ通信できる。
【0028】
回路基板11に搭載されている終端抵抗器11fは、一端が通信線13と接続され、他端がアナログスイッチ11eを介して通信線14と接続されている。図1の例では、終端抵抗器11fのインピーダンスは120[Ω]になっている。
【0029】
アナログスイッチ11eは、終端抵抗器11fの他端と通信線14との接続のオンオフを制御信号SG1に応じて切り替える。終端抵抗器11fの他端と通信線14との接続をオンにすると、一対の通信線13、14間のインピーダンスを120[Ω]に固定し終端することができる。また、終端抵抗器11fの他端と通信線14との接続をオフにすると、一対の通信線13、14から終端抵抗器11fが開放されるため、終端は解除される。
【0030】
つまり、中央処理ユニット11aの終端制御部11bは、通信系コネクタ17や回路基板11の近傍で通信線13、14の伝送路を終端抵抗器11fで終端するか否かを制御信号SG1を用いて制御できる。
【0031】
一方、回路基板12は、ドライブレコーダ用の中央処理ユニット12aを備えている。また、不揮発性メモリ12c、CANトランシーバ12d、及びアナログスイッチ12eが回路基板12に搭載されている。
【0032】
また、中央処理ユニット12aは、終端制御部12bの機能を備えている。中央処理ユニット12aにおける終端制御部12b以外の機能は、一般的なドライブレコーダにおける制御部の機能と同様である。
【0033】
不揮発性メモリ12cは、中央処理ユニット12aが実行可能なプログラムや、予め決定された定数データなどを保持することができる。また、車載器10の外部に所定の管理装置を接続することで、不揮発性メモリ12cのデータを必要に応じて更新できる。
【0034】
中央処理ユニット12aの通信ポートは、CANトランシーバ12dと接続されている。また、CANトランシーバ12dのネットワーク側端子は、一対の通信線15、16を介して通信系コネクタ18の端子18a、18bと接続されている。
【0035】
図1に示した構成においては、車載器10の通信系コネクタ18は、CAN通信線21の接続位置P2に接続されている。
中央処理ユニット12aは、CANトランシーバ12dとの間で通信信号SG4の入出力を行うことで、CAN通信線21と接続されている車両上の他の様々な機器や、同じ車載器10上の回路基板11側との間でデータ通信できる。
【0036】
回路基板12に搭載されている終端抵抗器12fは、一端が通信線15と接続され、他端がアナログスイッチ12eを介して通信線16と接続されている。図1の例では、終端抵抗器12fのインピーダンスは120[Ω]になっている。
【0037】
アナログスイッチ12eは、終端抵抗器12fの他端と通信線16との接続のオンオフを制御信号SG2に応じて切り替える。終端抵抗器12fの他端と通信線16との接続をオンにすると、一対の通信線15、16間のインピーダンスを120[Ω]に固定し終端することができる。また、終端抵抗器12fの他端と通信線16との接続をオフにすると、一対の通信線15、16から終端抵抗器12fが開放されるため、終端は解除される。
【0038】
つまり、中央処理ユニット12aの終端制御部12bは、通信系コネクタ18や回路基板12の近傍で通信線15、16の伝送路を終端抵抗器12fで終端するか否かを制御信号SG2を用いて制御できる。
【0039】
<通信システムの構成>
図2は、図1の車載器10を接続した通信システム100Aの構成例を示すブロック図である。
【0040】
例えば、車両上に配置されるCANなどの伝送路はバス型であるため、多数の通信機器を伝送路上の様々な位置にそれぞれ接続することが可能である。図2に示した通信システム100Aの例では、共通のCAN通信線21上に外部機器(終端あり)31、外部機器(終端なし)32、車両側CAN機器33、および車載器10がそれぞれ接続されている。また、この通信システム100Aに接続された車載器10は、図1に示したようにデジタルタコグラフの機能とドライブレコーダの機能とを備えている。そのため、車載器10側のデジタルタコグラフ用の通信系コネクタ17と、ドライブレコーダ用の通信系コネクタ18とがそれぞれ同じCAN通信線21と接続されている。
【0041】
車載器10とCAN通信線21を介して接続可能な外部機器の具体例としては、スイッチボックス、画像認識システム、ハンディリモコンなどがある。スイッチボックスは、離れた位置の補機の機能をオンオフ操作するためのユーザが操作可能な複数のスイッチを装備した機器である。画像認識システムは、車載器10内のデジタルタコグラフの機能を向上するための処理装置であり、車載器10のコネクタを介してデジタルタコグラフの本体と接続できる。ハンディリモコンは、トラック車両の荷積み荷卸しなどの作業の際に作業者が車載器10を車両外から遠隔操作するための入力機能を備えた機器である。
【0042】
通信システム100Aは、このような機器が接続された状況において、CAN通信線21上で信号の反射が生じないように、伝送路各部のインピーダンスが調整されている必要がある。
【0043】
図2に示した通信システム100Aでは、外部機器31の接続位置の近傍で終端抵抗器31aによりCAN通信線21の一端側が終端されているので、CAN通信線21の他端側でも終端することで、システム全体のインピーダンスが調整される。具体的には、車載器10に搭載されている2つの終端抵抗器11fおよび12fのいずれか一方を、通信系コネクタ17、18等の近傍でCAN通信線21と接続すれば、全体のインピーダンスを整合させることができる。
【0044】
実際には、車載器10内に装備されている終端制御部11b、12bがアナログスイッチ11e、12eをそれぞれ適切に制御することで、終端抵抗器11f又は12fを用いてCAN通信線21を終端する。これにより、車載器10の外側に終端用の特別な部品を装着する必要がなくなる。なお、車両上の通信システムの構成は様々に変化するので、実際のシステム構成に合わせて各部のインピーダンスを適切に調整する必要がある。
【0045】
一方、車載器10を車両側のCAN通信線21に接続せずに単独で使用する形態も考えられる。その場合は、2つの通信系コネクタ17、18の間を所定の通信線を介して接続することで、車載器10内のデジタルタコグラフとドライブレコーダとの間で互いに通信可能になる。また、2つの終端抵抗器11fおよび12fの両方を接続することで、デジタルタコグラフとドライブレコーダとを結ぶ伝送路のインピーダンスを車載器10内で整合させることができる。
【0046】
<終端管理テーブル>
図3は、終端管理テーブル25の構成例を示す模式図である。
図1に示した車載器10において、2つの終端抵抗器11fおよび12fのそれぞれを使用するか否かは、車載器10を接続するシステムの実際のネットワーク構成、および伝送路の各位置における終端の有無に応じて決める必要がある。
【0047】
車両上で事前に想定されるシステム構成の違いや車載器10の接続位置の違いが伝送路におけるインピーダンス整合に影響を及ぼす状況は、数種類程度に分類できる。したがって、例えば図3に示した終端管理テーブル25の内容に従い、車載器10の実際の接続状況に応じて2つの終端抵抗器11fおよび12fのそれぞれを使用するか否かを決めることで、システムの伝送路のインピーダンスを整合させることができる。
【0048】
図3に示した終端管理テーブル25は、後述する管理用PC40が使用する。
図3の終端管理テーブル25において、各項目25a、25b、25c、及び25dは、それぞれ状況を表す番号(No.)、システム接続先、終端抵抗器11fの終端有無、及び終端抵抗器12fの終端有無を表している。また、図3中の○印は終端ありを表し、×印は終端なしを表している。
【0049】
例えば、図2に示した通信システム100Aのように、車載器10の接続先のCAN通信線21上に外部機器(終端あり)31が存在する場合には、終端管理テーブル25におけるNo.2、又はNo.3の状況に該当する。その場合は、予め定められている終端管理テーブル25の内容に従い、2つの終端抵抗器11fおよび12fのいずれか一方だけを使用状態(終端あり)に設定する。
【0050】
<車載器を設定する際に用いるシステムの構成>
図4は、車載器10の状態を設定する際に利用可能な通信システム100の構成例を示すブロック図である。
【0051】
車両上に組み付けられた車載器10を使用可能な状態にするために、例えば車両ディーラーにおいて、車載器10の状態を実際のシステム構成に合わせて適切に初期設定する必要がある。この初期設定には2つの終端抵抗器11f、12fの使用の有無を決定する作業も含まれる。
【0052】
この初期設定を行う場合に、図4に示した通信システム100のように、管理用PC(パーソナルコンピュータ)40を通信ケーブル45で車載器10に接続する。管理用PC40は、据置型であっても、作業者が持ち運び可能なポータブル型であってもよい。なお、車載器10は通信ケーブル45を接続するための専用のインタフェース(図示せず)を内蔵しているが、例えば車両側のCAN通信線(21)を介して通信ケーブル45で管理用PC40を車載器10に接続することもできる。
【0053】
管理用PC40には、車載器10を管理するための専用アプリ(アプリケーションソフトウェア)41が予め組み込まれている。この専用アプリ41は、図3に示した終端管理テーブル25の内容のように予め決定された定数データと、作業者によるユーザ入力を受付可能なユーザインタフェースを実現するプログラムとを含んでいる。
【0054】
このユーザインタフェースは、管理用PC40の画面上にユーザ入力を受付可能な所定の画面を表示する。この画面上に、車両のシステム構成や該当する車載器10の接続位置などを選択するための複数のチェックボックスが表示される。
【0055】
作業者は、実際に組み付けた車載器10および車両のシステム構成と一致するように、画面上の各チェックボックスの状態を操作するための入力を実施する。専用アプリ41は、作業者からの入力操作を受け付けた後の各チェックボックスの状態の組み合わせに基づき、終端管理テーブル25における該当する1つの番号を特定し、各項目25c、25dの○、×の違いに相当する設定データを決定する。そして、決定した設定データを通信ケーブル45を経由して車載器10に送信する。
【0056】
車載器10の各終端制御部11b、12bは、管理用PC40から送信された設定データの内容を不揮発性メモリ11c、12cに書き込む。上記の初期設定が完了した後、車載器10の終端制御部11bは不揮発性メモリ11cに書き込まれたデータに従い、制御信号SG1を出力し、アナログスイッチ11eのオンオフ及び終端抵抗器11fの使用の有無を決定する。また、車載器10の終端制御部12bは、不揮発性メモリ12cに書き込まれたデータに従い、制御信号SG2を出力し、アナログスイッチ12eのオンオフ及び終端抵抗器12fの使用の有無を決定する。
【0057】
車載器10は、図4に示した設定カード51および運行カード52のそれぞれを装着可能なカードスロットを含むインタフェースを備えている。設定カード51は、車載器10の状態を設定するために使用する記録媒体であり、不揮発性メモリ11c、12cとして利用することもできる。運行カード52は、車両の運行時に車載器10のデジタルタコグラフが記録した運行データや、ドライブレコーダが記録した運行データを保存するための記録媒体として利用できる。
【0058】
車載器10が使用する設定カード51および運行カード52に対しては、図4に示すようにカードリーダライタ43を用いて管理用PC40からアクセスし、データの読み取り及び書き込みを行うことができる。すなわち、様々な設定データを管理用PC40からカードリーダライタ43及び設定カード51を介して車載器10に書き込むこともできるし、車載器10が記録した運行データを運行カード52からカードリーダライタ43を利用して管理用PC40に読み込むこともできる。
【0059】
また、管理用PC40が車載器10に設定した設定データの内容や、運行カード52に保存されている運行データの内容については、管理用PC40に接続したプリンタ42を用いて紙に印刷することもできる。
【0060】
<様々な通信システムの構成例>
図5は、図1の車載器10を接続可能な通信システム100Bの構成例を示すブロック図である。図5の通信システム100Bにおいては、共通のCAN通信線65に4つの通信機器61、62、63、及び64が接続されている。
【0061】
図5の通信システム100Bにおいて、CAN通信線65の一端側および他端側に通信機器61および通信機器62がそれぞれ接続されている。したがって、図5に示したようにCAN通信線65の一端側を通信機器61内の終端抵抗器61aで終端し、CAN通信線65の他端側を通信機器62内の終端抵抗器62aで終端することで、CAN通信線65のインピーダンスを整合させることができ、信号の反射を防止できる。この場合、CAN通信線65の両端以外の位置に接続されている通信機器63および64については終端は行わない。
【0062】
図1に示した車載器10は、例えば図5中の通信機器61~64のいずれか1つとしてCAN通信線65に接続することが可能である。車載器10を通信機器61の代わりにCAN通信線65の一端に接続した場合には、図5の通信機器61と同様に、車載器10内の終端抵抗器11f、12fのいずれか一方を終端し、他方を開放するように終端管理テーブル25の内容に従って、車載器10の状態を定める不揮発性メモリ11c、11dのデータを作業者が管理用PC40により予め設定する。この例は、図3の終端管理テーブル25におけるNo.2、又はNo.3に対応する。
【0063】
また、車載器10を通信機器62の代わりにCAN通信線65の他端に接続した場合には、図5の通信機器62と同様に、車載器10内の終端抵抗器11f、12fのいずれか一方を終端し、他方を開放するように終端管理テーブル25の内容に従って、車載器10の状態を定める不揮発性メモリ11c、11dのデータを作業者が管理用PC40により予め設定する。この例も、図3の終端管理テーブル25におけるNo.2、又はNo.3に対応する。
【0064】
また、車載器10を通信機器63、又は64の代わりにCAN通信線65の中間位置に接続した場合には、図5の通信機器62、又は64と同様に、車載器10内の終端抵抗器11f、12fの両方の状態を開放するように終端管理テーブル25の内容に従って、車載器10の状態を定める不揮発性メモリ11c、11dのデータを作業者が管理用PC40により予め設定する。この例は、図3の終端管理テーブル25におけるNo.5に対応する。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0066】
例えば、上記の実施形態においては、車載器10が、単一の筐体10aの内部にデジタルタコグラフの機能と、ドライブレコーダの機能の両方を搭載している場合について説明した。しかし、一般的な車載器のように、デジタルタコグラフの機能だけを搭載した車載器や、ドライブレコーダの機能だけを搭載した車載器であっても本発明の技術は適用できる。
【0067】
また、図1に示した車載器10においては2つの回路基板11、12がそれぞれ終端制御部11b、12bおよび不揮発性メモリ11c、12cを備えているが、単一の終端制御部でデジタルタコグラフ側及びドライブレコーダ側のそれぞれの終端を制御してもよく、共通の不揮発性メモリを用いてデジタルタコグラフ側及びドライブレコーダ側のそれぞれの設定データを保持してもよい。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る車載器10は、各通信系コネクタ17、18の近傍で伝送路を終端するか否かを実際のシステム構成に合わせて作業者等が適切に設定できる。これにより、例えば図2に示した通信システム100AにおけるCAN通信線21などの伝送路のインピーダンスを整合させることができ、信号の反射を防止できる。また、車載器として終端抵抗器を有する機種と終端抵抗器がない機種とを個別に用意する必要がなく、車載器10の外側に特別な終端抵抗器を接続する必要もない。
【0069】
また、図1に示した車載器10は接続の有無を切り替え可能な2つの終端抵抗器11f、12fを装備しているので、車載器10をCAN通信線21等の外部伝送路に接続せず、車載器10を単独で使用することもできる。その場合は、通信系コネクタ17、18の間を所定の通信線を介して接続すると共に、2つの終端抵抗器11f、12fの両方を使用状態に設定することで通信線のインピーダンスを整合させることができる。
【0070】
また、図4に示した通信システム100のように管理用PC40を用いることで、通信により車載器10内の不揮発性メモリ11c、12cの設定データを書き換えて終端の有無を切り替えることができる。したがって、例えば共通のCAN通信線21に接続する車両上のシステムの構成を変更したときに、車載器10を車両に対して着脱することなく、車載器10の内部における各部の終端の有無を変更できる。これにより作業性の向上が実現する。
【0071】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る車載器および通信システムの特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 通信線(CAN通信線21)に接続可能な1組以上の外部通信端子(通信系コネクタ17、18)と、
前記外部通信端子を介して通信する機能を有する中央処理部(中央処理ユニット11a、12a)と、
前記外部通信端子と電気的に接続された終端抵抗器(11f、12f)と、
前記終端抵抗器の使用の有無を切り替え可能なスイッチ回路(アナログスイッチ11e、12e)と、
外部から入力された、前記終端抵抗器の使用の有無に関する設定データを記憶する記憶部(不揮発性メモリ11c、12c)と、
前記記憶部に記憶された前記設定データの内容に基づいて前記スイッチ回路の状態を制御する終端制御部(11b、12b)と、を備える
車載器(10)。
【0072】
上記[1]の構成の車載器によれば、車載器を接続する伝送路の位置の違いやシステム構成の違いに合わせて、伝送路上のインピーダンスが正しく整合するように設定できる。したがって、車両において様々なシステムのバリエーションが存在する場合でも、終端の有無が異なる複数機種の車載器を用意する必要がなく、車載器の外側に特別な終端抵抗器を接続する必要もない。また、終端の有無を外部から制御できるので、車載器を車両に取り付けた後でも車載器の設定を変更できる。
【0073】
[2] それぞれ通信線(CAN通信線21)に接続可能な第1外部通信端子(通信系コネクタ17)および第2外部通信端子(通信系コネクタ18)と、
前記第1外部通信端子を介して通信する機能を有する第1中央処理部(中央処理ユニット11a)と、
前記第2外部通信端子を介して通信する機能を有する第2中央処理部(中央処理ユニット12a)と、
前記第1外部通信端子と電気的に接続された第1終端抵抗器(終端抵抗器11f)と、
前記第2外部通信端子と電気的に接続された第2終端抵抗器(終端抵抗器12f)と、
前記第1終端抵抗器の使用の有無を切り替え可能な第1スイッチ回路(アナログスイッチ11e)と、
前記第2終端抵抗器の使用の有無を切り替え可能な第2スイッチ回路(アナログスイッチ12e)と、
外部から入力された、前記終端抵抗器の使用の有無に関する設定データを記憶する記憶部(不揮発性メモリ11c、12c)と、
前記記憶部に記憶された前記設定データの内容に基づいて前記第1スイッチ回路および前記第2スイッチ回路の各々の状態を制御する終端制御部(11b、12b)と、
を備え、前記第1中央処理部および前記第2中央処理部は互いに種類の異なる機能を有する、車載器(10)。
【0074】
上記[2]の構成の車載器によれば、車載器を接続する伝送路の位置の違いやシステム構成の違いに合わせて、伝送路上のインピーダンスが正しく整合するように設定できる。したがって、車両において様々なシステムのバリエーションが存在する場合でも、終端の有無が異なる複数機種の車載器を用意する必要がなく、車載器の外側に特別な終端抵抗器を接続する必要もない。また、終端の有無を外部から制御できるので、車載器を車両に取り付けた後でも車載器の設定を変更できる。また、単一の車載器の中に複数種類の機能を装備できるので、デジタルタコグラフとドライブレコーダのように互いに関連のある複数種類の機能を互いに連携させることも容易になる。更に、外部の伝送路を使用せずに車載器を単独で使用する場合でも、複数種類の機能の間で相互に通信することが可能であり、その場合も伝送路のインピーダンスを正しく整合させることができる。
【0075】
[3] 上記[1]に記載の車載器(10)と、
前記車載器と接続可能な管理装置(管理用PC40)と、
を備え、
前記管理装置は、所定のユーザインタフェースにおいて決定した内容をインストール用データとして前記車載器に与える機能(専用アプリ41)を有し、
前記車載器の前記終端制御部は、前記管理装置から前記インストール用データを入力し、入力したデータを前記スイッチ回路の状態に反映する、
通信システム(100)。
【0076】
上記[3]の構成の通信システムによれば、作業者等のユーザは、管理装置のユーザインタフェースを利用して車載器を使用するために必要なインストール用データの内容を容易に決定できる。また、車載器は管理装置が提供するインストール用データをスイッチ回路の状態に反映できる。これにより、車載器を含むシステムの伝送路におけるインピーダンスの整合を適切に調整し、伝送路における信号の反射を防止できる。また、車載器を車両に組み付けたままでインストール用データの内容を変更できるので、システム構成の変更などを行う場合の作業が容易になる。
【0077】
[4] 上記[2]に記載の車載器(10)と、
前記車載器と接続可能な管理装置(管理用PC40)と、
を備え、
前記管理装置は、所定のユーザインタフェースにおいて決定した内容をインストール用データとして前記車載器に与える機能(専用アプリ41)を有し、
前記車載器の前記終端制御部は、前記管理装置から前記インストール用データを入力し、入力したデータを前記第1スイッチ回路および前記第2スイッチ回路の各々の状態に反映する、
通信システム。
【0078】
上記[4]の構成の通信システムによれば、作業者等のユーザは、管理装置のユーザインタフェースを利用して車載器を使用するために必要なインストール用データの内容を容易に決定できる。また、車載器は管理装置が提供するインストール用データをスイッチ回路の状態に反映できる。これにより、車載器を含むシステムの伝送路におけるインピーダンスの整合を適切に調整し、伝送路における信号の反射を防止できる。また、車載器を車両に組み付けたままでインストール用データの内容を変更できるので、システム構成の変更などを行う場合の作業が容易になる。
【0079】
[5] 前記終端制御部は、前記スイッチ回路の状態に対応するデータを保持するデータ保持部(不揮発性メモリ11c、12c)を有する、
上記[1]に記載の車載器。
【0080】
上記[5]の構成の車載器によれば、この車載器を用いて通信する場合の伝送路における終端状況を、システム構成に合わせて適切な整合状態に維持するためのデータをデータ保持部で保持できる。また、データ保持部が保持するデータを更新することで、システム構成の変更に対応できる。
【符号の説明】
【0081】
10 車載器
10a 筐体
11,12 回路基板
11a,12a 中央処理ユニット
11b,12b 終端制御部
11c,12c 不揮発性メモリ
11d,12d CANトランシーバ
11e,12e アナログスイッチ
11f,12f 終端抵抗器
13,14,15,16 通信線
17,18 通信系コネクタ
17a,17b,18a,18b 端子
21 CAN通信線
21H H側通信線
21L L側通信線
25 終端管理テーブル
31 外部機器(終端あり)
31a 終端抵抗器
32 外部機器(終端なし)
33 車両側CAN機器
40 管理用PC
41 専用アプリ
42 プリンタ
43 カードリーダライタ
51 設定カード
52 運行カード
61,62,63,64 通信機器
61a,62a 終端抵抗器
65 CAN通信線
100,100A,100B 通信システム
P1,P2 接続位置
SG1,SG2 制御信号
SG3,SG4 通信信号
図1
図2
図3
図4
図5