(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065904
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 5/02 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G01N5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174990
(22)【出願日】2022-10-31
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】恩田 陽介
(57)【要約】
【課題】温度または湿度に基づく補正を適正に行うことが可能な検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、流体が供給されるチャンバ内に設けられ、感応膜を有する第1センサ10と、前記流体における温度および湿度の少なくとも一方の指標を検出する第2センサ18と、第1補正係数に基づき、前記第1センサが出力する第1出力値を前記第2センサが出力する第2出力値を用いて補正値を生成する補正部32と、前記補正値に基づき前記流体に関する情報を算出する算出部36と、前記第1センサが駆動する期間における、前記第1出力値の時間に対する第1データ列と前記第1データ列に関係付けられ前記第2出力値の時間に対する第2データ列との関係に基づき第2補正係数を算出し、前記第1補正係数を前記第2補正係数に更新する更新部34と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が供給されるチャンバ内に設けられ、感応膜を有する第1センサと、
前記流体における温度および湿度の少なくとも一方の指標を検出する第2センサと、
第1補正係数に基づき、前記第1センサが出力する第1出力値を前記第2センサが出力する第2出力値を用いて補正値を生成する補正部と、
前記補正値に基づき前記流体に関する情報を算出する算出部と、
前記第1センサが駆動する期間における、前記第1出力値の時間に対する第1データ列と前記第1データ列に関係付けられ前記第2出力値の時間に対する第2データ列との関係に基づき第2補正係数を算出し、前記第1補正係数を前記第2補正係数に更新する更新部と、
を備える検出装置。
【請求項2】
前記指標を変化させる素子を備え、
前記更新部は、前記第1センサが駆動し、かつ前記素子が駆動する期間における前記関係に基づき前記第2補正係数を算出する請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記素子は、前記流体を前記第1センサおよび前記第2センサに供給するポンプである請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記更新部は、前記第1センサが駆動し、かつ前記素子が駆動する前の前記素子が駆動しない第1期間、前記第1センサが駆動し、かつ前記素子が駆動する第2期間、および前記第1センサが駆動し、かつ前記素子が駆動した後の前記素子が駆動しない第3期間、の少なくとも2つの期間における前記関係に基づき前記第2補正係数を算出する請求項2または3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記更新部は、前記少なくとも2つの期間において、対応する前記第2補正係数を算出し、算出された前記対応する第2補正係数を比較することで、前記対応する第2補正係数が正常か否かを判定する請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記第1センサは複数設けられ、
前記補正部は、複数の前記第1補正係数のうち対応する第1補正係数に基づき、対応する第1センサが出力する前記第1出力値を、前記第2出力値を用いて補正することで、複数の前記補正値のうち対応する補正値を生成する処理を、前記複数の第1センサに対し実行し、
前記算出部は、前記複数の補正値に基づき前記情報を算出する請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記更新部は、
前記複数の第1センサのうち対応する第1センサの前記第1データ列と前記第2データ列との関係に基づき、複数の前記第2補正係数のうち対応する第2補正係数を算出する処理を、前記複数の第1センサに対し行い、
前記複数の第1補正係数を前記複数の第2補正係数にそれぞれ更新する請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記第1センサを搭載する基板と、
前記基板における前記第1センサおよび前記第2センサが搭載される面と反対の面に設けられ、前記ポンプを駆動させる駆動回路と、
を備える請求項3に記載の検出装置。
【請求項9】
前記第1センサおよび前記第2センサが設けられる第1空間と、
前記第1空間と前記ポンプとの間に設けられ、前記流体の流れる方向に対し直交する断面積が前記第1空間における前記方向に直交する断面積より大きい第2空間と、
を備える請求項3に記載の検出装置。
【請求項10】
前記更新部は、前記第1データ列と前記第2データ列とを回帰分析することで、前記第2補正係数を算出する請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項11】
前記第2センサは、前記流体における温度および湿度の両方を検出する請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関し、例えば感応膜を有する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気体中の物質を検出するセンサとして、感応膜を有するセンサが知られている。温度および湿度に基づき、センサの出力値を補正することが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度および湿度に基づき、センサの出力値を補正することで、温度および湿度による影響を抑制できることができる。しかしながら、センサの使用とともに感応膜の物性または構造が変化すると、温度および湿度に対するセンサの出力値の振る舞いが変化することがある。このため、センサの出力値を適切に補正できなくなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、温度または湿度に基づく補正を適正に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体が供給されるチャンバ内に設けられ、感応膜を有する第1センサと、前記流体における温度および湿度の少なくとも一方の指標を検出する第2センサと、第1補正係数に基づき、前記第1センサが出力する第1出力値を前記第2センサが出力する第2出力値を用いて補正値を生成する補正部と、前記補正値に基づき前記流体に関する情報を算出する算出部と、前記第1センサが駆動する期間における、前記第1出力値の時間に対する第1データ列と前記第1データ列に関係付けられ前記第2出力値の時間に対する第2データ列との関係に基づき第2補正係数を算出し、前記第1補正係数を前記第2補正係数に更新する更新部と、を備える検出装置である。
【0007】
上記構成において、前記指標を変化させる素子を備え、前記更新部は、前記第1センサが駆動し、かつ前記素子が駆動する期間における前記関係に基づき前記第2補正係数を算出する構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記素子は、前記流体を前記第1センサおよび前記第2センサに供給するポンプである構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記更新部は、前記第1センサが駆動し、かつ前記素子が駆動する前の前記素子が駆動しない第1期間、前記第1センサが駆動し、かつ前記素子が駆動する第2期間、および前記第1センサが駆動し、かつ前記素子が駆動した後の前記素子が駆動しない第3期間、の少なくとも2つの期間における前記関係に基づき前記第2補正係数を算出する構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記更新部は、前記少なくとも2つの期間において、対応する前記第2補正係数を算出し、算出された前記対応する第2補正係数を比較することで、前記対応する第2補正係数が正常か否かを判定する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1センサは複数設けられ、前記補正部は、複数の前記第1補正係数のうち対応する第1補正係数に基づき、対応する第1センサが出力する前記第1出力値を、前記第2出力値を用いて補正することで、複数の前記補正値のうち対応する補正値を生成する処理を、前記複数の第1センサに対し実行し、前記算出部は、前記複数の補正値に基づき前記情報を算出する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記更新部は、前記複数の第1センサのうち対応する第1センサの前記第1データ列と前記第2データ列との関係に基づき、複数の前記第2補正係数のうち対応する第2補正係数を算出する処理を、前記複数の第1センサに対し行い、前記複数の第1補正係数を前記複数の第2補正係数にそれぞれ更新する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1センサを搭載する基板と、前記基板における前記第1センサおよび前記第2センサが搭載される面と反対の面に設けられ、前記ポンプを駆動させる駆動回路と、を備える構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1センサおよび前記第2センサが設けられる第1空間と、前記第1空間と前記ポンプとの間に設けられ、前記流体の流れる方向に対し直交する断面積が前記第1空間における前記方向に直交する断面積より大きい第2空間と、を備える構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記更新部は、前記第1データ列と前記第2データ列とを回帰分析することで、前記第2補正係数を算出する構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記第2センサは、前記流体における温度および湿度の両方を検出する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、温度または湿度に基づく補正を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1におけるセンサの模式図である。
【
図2】
図2は、実施例1における検出装置のブロック図である。
【
図3】
図3は、実施例1における処理部の処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施例1における
図3のステップS14のフローを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施例1における
図3のステップS18のフローを示すフローチャートである
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、実施例1におけるメモリ40における補正係数AおよびBのデータを示す図、
図6(c)は、基準値のデータを示す図である。
【
図7】
図7(a)は、実施例1のステップS14におけるデータ列を示す図、
図7(b)は、ステップS18におけるデータ列を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、実験における時間に対する発振周波数および温度を示す図、
図8(b)は、時間に対する発振周波数および相対湿度を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例2における処理部が更新処理を行うときのフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施例3における検出装置のブロック図である。
【
図11】
図11(a)は、実施例3においてメモリ40における補正係数AおよびBのデータを示す図、
図11(b)は、基準値のデータを示す図である。
【
図12】
図12は、実施例3における
図3のステップS14のフローを示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施例3における
図3のステップS18のフローを示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施例4における検出装置の平面図である。
【
図16】
図16は、実施例4の変形例1における検出装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0020】
流体(例えば気体または液体)中のにおいの原因となる特定の物質を検出するセンサとして、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)を例にして説明する。以下の実施例では、流体として気体を例に説明する。
【0021】
図1は、実施例1におけるセンサの模式図である。センサ10(第1センサ)は、共振器15および感応膜16を備えている。センサ10は、気体内の物質を検出するセンサである。共振器15では、基板11上に空隙13を介して下部電極14aが設けられ、下部電極14a上に圧電層12が設けられ、さらに圧電層12上に上部電極14bが設けられている。空隙13はキャビティである。圧電層12を挟み、下部電極14aと上部電極14bとが重なる領域は弾性波が振動する共振領域17である。平面視において共振領域17は空隙13と重なる。平面視において共振領域17内の上部電極14b上に感応膜16が設けられている。感応膜16は、気体内の特定の物質を吸着させる。特定の物質が感応膜16に吸着されると、感応膜16の質量が増加する。これにより、共振器15の共振周波数が低くなる。これにともない、発振回路26の発振周波数が低くなる。測定器28は、この発振回路26の発振周波数を測定する。
【0022】
基板11は、例えばシリコン基板、サファイア基板、石英基板、ガラス基板、セラミック基板またはGaAs基板である。下部電極14aおよび上部電極14bは、例えばルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)またはイリジウム(Ir)等の単層膜またはこれらの膜から複数種類を選択した積層膜である。圧電層12は、例えば窒化アルミニウム(AlN)膜、酸化亜鉛(ZnO)膜、窒化ガリウム(GaN)膜、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)膜、チタン酸鉛(PbTiO3)膜、タンタル酸リチウム(LiTaO3)膜またはニオブ酸リチウム(LiNbO3)膜である。
【0023】
感応膜16の材料は、例えば高分子材料、多孔質材料または有機金属化合物である。高分子材料としては、例えばセルロース、フッ素系ポリマー、ポリエチレンイミン、エステル系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリスチレン、ポリブタジエン、シクロオレフィンポリマー等であり、高分子材料は特定の物質が結合しやすい官能基を有している。多孔質材料は、例えばゼオライト、UiO-66またはZIF-8等のMOF(Metal Organic Flamework)である。有機金属化合物は、例えば金属フタロシアニンまたは金属ポルフィリンである。有機金属化合物の金属は、例えば銅、ニッケル、コバルトまたは亜鉛である。
【0024】
共振器15としては、FBAR以外にSMR(Solidly Mounted Resonator)またはSAW(Surface Acoustic Wave)共振器でもよい。共振器15は、水晶振動子を用いたQCM(Quartz Crystal Microbalance)でもよい。検出する気体内の物質としては、例えばエタノール、アセトンもしくはトルエン等の有機化合物、または、アンモニア、窒素酸化物、オゾンもしくは塩素等の無機物質である。
【0025】
測定器28が出力する発振回路26の発振周波数に関する出力値と温度および湿度との関係について、説明する。センサ10の共振周波数は気体の温度および湿度により変化する。この原因は複合的である。例えば、感応膜16または共振器15を構成する各材料の物性値または温度特性に起因して、温度が変化すると共振周波数が変化する。また、温度または湿度が変化すると、気体内の水が感応膜16または共振器15に付着する量が変化する。付着した水を含めたセンサ10の質量が変化するので、共振周波数が変化する。共振器15の共振周波数が温度および湿度に対し線形的に変化すると仮定すると、発振周波数に関する出力値Smは、温度Tおよび湿度Hを用い、式1により表される。
Sm=Sm0+A1(T-T0)+B1(H-H0) 式1
ここで、基準となる出力値Sm0は、基準となる温度T0および基準となる湿度H0におけるセンサ10の出力値であり、A1およびB1は補正係数であり、実数である。
【0026】
センサ10を使用し続けると、感応膜16の物性または構造が変化し、温度Tおよび湿度Hに対するセンサ10の出力値の振る舞いが変化することがある。この場合、補正係数A1およびB1として、当初の補正係数を変えずに用いると、測定器28の出力値Smを適切に補正できなくなる。実施例1では、補正係数A1およびB1を適宜更新することで、測定器28の出力値Smを適切に補正する。詳細を以下に説明する。
【0027】
図2は、実施例1における検出装置のブロック図である。
図2に示すように、センサ10およびセンサ18は、チャンバ20内に設けられている。センサ18(第2センサ)は、チャンバ20に導入された気体の温度および湿度の少なくとも一方の指標を検出する温度計および/または湿度計である。
【0028】
チャンバ20には、導入路21aおよび21bより気体50aおよび50bが導入され、排出路24より気体52が排出される。導入路21aにはフィルタ23およびポンプA22aが設けられており、ポンプA22aを駆動することで、チャンバ20の外部の気体50aがフィルタ23を介しチャンバ20内に導入される。導入路21bにはポンプB22bが設けられている。ポンプB22bを駆動することで、チャンバ20の外部の気体50bがチャンバ20内に導入される。
【0029】
フィルタ23には、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲルおよび/またはモレキュラーシーブが用いられる。フィルタ23を気体50aが通過することで、水分および特定の物質の分子等を除去する。このため、ポンプA22aを駆動することで、ドライかつクリーンな空気がチャンバ20内に導入される。導入路21bからチャンバ20に導入される気体は、気体中の特定の物質またはにおい等の検出対象が含まれる測定対象の気体である。例えば、チャンバ20の周囲環境に、においを発生させる発生源があれば、外気には特定の物質またはにおい等が含まれることになる。このため、外気をチャンバ20内に取り入れることで、測定対象の気体とすることができる。
【0030】
処理部30は、例えばプロセッサである。処理部30は、ソフトウエアと協働し、補正部32、更新部34、算出部36および駆動部38として機能する。処理部30の少なくとも一部は専用回路等のハードウエアにより形成されていてもよい。
【0031】
補正部32は、補正係数A1およびB1を用い、測定器28が出力した発振周波数等の出力値Smを、センサ18が出力した温度Tおよび湿度Hに基づき補正する。算出部36は、補正部32が補正した補正値Scを用い気体中の特定の物質の種類または気体のにおい等の気体に関する情報を算出する。更新部34は、補正部32が出力値を補正するための補正係数A1およびB1を更新する。
【0032】
駆動部38は、駆動回路67に駆動信号を出力する。駆動回路67は、駆動信号を受信すると、発振回路26に駆動のための電力を供給する。これにより、発振回路26が駆動し、センサ18が駆動する。このとき、駆動回路67は、測定器28に電力を供給し、測定器28を駆動してもよい。具体的には、発振回路26はセンサ18を発振させ、測定器28は発振周波数を測定し出力値を出力する。以降、この発振回路26およびセンサ10が駆動することをセンサ10の電源がオンすると呼ぶ。発振回路26およびセンサ10の駆動が停止することをセンサ10の電源がオフすると呼ぶ。駆動部38は、発振回路26に直接電力を供給してもよい。
【0033】
駆動部38は、駆動回路69に駆動信号を出力する。駆動回路69は、駆動信号に基づき、ポンプA22aおよびポンプB22bに電力を供給することでポンプA22aおよびポンプB22bを駆動させる。また、駆動回路69はポンプA22aおよびポンプB22bを制御する。ポンプA22aまたはポンプB22bが駆動することにより、ポンプA22aまたはポンプB22bは気体の流れを作りだす。以降、このポンプA22aが駆動することを、ポンプA22aの電源がオンすると呼び、ポンプA22aの駆動が停止することをポンプA22aの電源がオフにすると呼ぶ。
【0034】
メモリ40は、例えば揮発性メモリまたは不揮発性メモリであり、補正係数A1およびB1などを記憶する。更新部34および算出部36のいずれかまたは両方は、ハードウエアで構成される検出装置内に設けられていてもよいし、クラウド等のネットワークにより接続されたサーバ上に設けられていてもよい。
【0035】
図3は、実施例1における処理部のフローチャートである。
図4は、実施例1における
図3のステップS14のフローチャートである。
図5は、実施例1における
図3のステップS18のフローチャートである。
図6(a)および
図6(b)は、実施例1におけるメモリ40における補正係数AおよびBのデータを示す図、
図6(c)は、基準値のデータを示す図である。
図7(a)は、実施例1のステップS14におけるデータ列を示す図、
図7(b)は、ステップS18におけるデータ列を示す図である。
【0036】
図6(a)に示すように、メモリ40には補正係数A1およびB1としてAaおよびBaが格納されている。
図6(b)に示すように、メモリ40の補正係数A1およびB1はAbおよびBbに更新される。
図6(c)に示すように、メモリ40には、基準となる出力値S0、基準となる温度T0および基準となる湿度H0が格納されている。
【0037】
図3の処理が開始される初期状態では、センサ10は駆動しておらず、ポンプA22aおよびポンプB22bは駆動していない。続いて、処理部30の駆動部38は、センサ10を駆動させ、ポンプB22bを駆動させる。すなわち、駆動部38は、センサ10およびポンプB22bの電源をオンする(ステップS10)。駆動部38がセンサ10およびポンプB22bを駆動させることにより、発振回路26に電源が供給され、センサ10に電源が供給される。センサ10の共振器15は振動を開始する。発振回路26は、発振周波数の信号を出力する。また、ポンプB22bが始動し、チャンバ20内に、測定対象の気体50bが導入される。
【0038】
処理部30はt=1に設定する(ステップS12)。なお、tは自然数である。処理部30は、通常の測定を行う(ステップS14)。
図4のように、このステップS14において、補正部32は、測定器28からの発振周波数に関する出力値Sm(t)を取得する(ステップS30)。補正部32は、センサ18から温度に関する出力値T(t)および湿度に関する出力値H(t)を取得する(ステップS32)。補正部32は、メモリ40から補正係数A1およびB1としてAaおよびBa、基準となる温度T0および基準となる湿度H0を取得する(ステップS34)。なお、ステップS30からS34の順番は限定されない。
【0039】
補正部32は、補正係数A1、B1、基準となる温度T0および基準となる湿度H0を用い、出力値Sm(t)を温度に関する出力値T(t)および湿度に関する出力値H(t)に基づき補正することで、補正値Sc(t)を算出する(ステップS36)。補正値Sc(t)は、基準となる温度T0および基準となる湿度H0のときに相当する出力値である。よって、式1より、補正値Sc(t)は、式2を用い算出できる。
Sc(t)=Sm(t)-A1(T(t)-T0)-B1(H(t)-H0) 式2
【0040】
算出部36は、補正値Sc(t)に基づき、気体に関する情報を算出(例えば判定)する(ステップS38)。算出部36は、例えば予め機械学習されたモデルを用い、補正値Sc(t)に基づき、気体に関する情報を算出する。気体に関する情報とは、例えば気体内の物質の種類または濃度、気体のにおいの種類またはにおいの強度などである。気体内の物質の種類とは、例えば、エタノール分子かアセトン分子か、などである。気体のにおいの種類とは、エタノール分子とアセトン分子などの、分子の複合的な組み合わせと、それぞれの分子の量(比率)によって定まり、例えば、タバコのにおいか加齢臭か、などである。気体のにおいの強度とは、例えば、タバコのにおいか加齢臭か、などのにおいがどれだけ強いかを示す指標である。
【0041】
t=1のとき、
図7(a)に示すように、出力値Sm、温度T、湿度Hは、t=1に関係付けられて、Sm(1)、T(1)およびH(1)となる。補正値Sc(1)はSm(1)、T(1)およびH(1)に基づき算出された値となる。
【0042】
図3に戻り、更新部34は、補正係数の更新を行うか判定する(ステップS16)。補正係数の更新は、例えば1日に一回等の周期的に行ってもよいし、外部からのトリガーにより行ってもよい。Noのとき、処理部30は、終了か判定する(ステップS20)。例えば、ステップS14を所望回(1回または複数回)繰り返した場合、Yesと判定する。Noのとき、補正部32は、t=t+1に設定する(ステップS22)。その後ステップS14に戻る。
【0043】
ステップS14を繰り返すことにより、
図7(a)のように、出力値Sm、温度T、湿度Hおよび補正値Scは、t=2に関係付けられて、Sm(2)、T(2)、H(2)およびSc(2)となり、t=3に関係付けられてSm(3)、T(3)、H(3)およびSc(3)となり、t=iに関係付けられて、Sm(i)、T(i)、H(i)およびSc(i)となる。
【0044】
図3のステップS16において、Yesのとき、更新部34は、補正係数A1およびB1を更新する(ステップS18)。
図5に示すように、駆動部38は、ポンプA22aおよびポンプB22bの駆動を停止させる。すなわち、駆動部38は、センサ10、ポンプA22aおよびポンプB22bの電源をオフする(ステップS40)。所定時間経過後、駆動部38は、センサ10およびポンプA22aを駆動させる。すなわち、駆動部38は、センサ10の電源およびポンプA22aの電源をオンする(ステップS42)。これにより、共振器15が振動し、チャンバ20内にクリーンな気体が導入される。処理部30は、t=1に設定する(ステップS44)。
【0045】
更新部34は、測定器28からの発振周波数に関する出力値Sm(t)を取得する(ステップS46)。更新部34は、センサ18から温度に関する出力値T(t)および湿度に関する出力値H(t)を取得する(ステップS48)。ステップS46およびS48の順番は限定されない。更新部34は、終了か判定する(ステップS50)。例えば、ステップS46およびS48を所望回(複数回)繰り返した場合、Yesと判定する。Noのとき、更新部34は、t=t+1に設定する(ステップS52)。その後ステップS46に戻る。
【0046】
ステップS46およびS48を繰り返すことにより、
図7(b)のように、メモリ40に、出力値Sm、温度Tおよび湿度Hとして、t=1に関係付けられて、Sm(1)、T(1)およびH(1)が格納され、t=2に関係付けられて、Sm(2)、T(2)およびH(2)が格納され、t=3に関係付けられて、Sm(3)、T(3)およびH(3)が格納され、t=iに関係付けられて、Sm(i)、T(i)およびH(i)が格納される。
【0047】
ステップS50において、Yesのとき、更新部34は、メモリ40から基準となる出力値S0、基準となる温度T0および基準となる湿度H0を取得する(ステップS53)。更新部34は、
図7(b)のデータ列Sm(t)、データ列T(t)およびデータ列H(t)に基づき、補正係数A2およびB2を算出する(ステップS54)。式1から、Sm(t)、T(t)、H(t)の関係は式3となる。
Sm(t)=S0+A2(T(t)-T0)+B2(H(t)-H0) 式3
補正係数A2およびB2以外は、既知であり、データ列Sm(t)とデータ列T(t)およびH(t)とを回帰分析することにより、補正係数A2およびB2が算出できる。データ列T(t)およびデータ列H(t)の2つのデータ列を用い補正係数A2およびB2を算出するときには重回帰分析を行う。
【0048】
更新部34は、メモリ40の補正係数A1およびB1を算出した補正係数A2およびB2に更新する(ステップS56)。
図6(b)に示すように、メモリ40内の補正係数A1およびB1を、ステップS54において算出された補正係数A2およびB2に相当するAbおよびBbに更新する。駆動部38は、センサ10およびポンプA22aの駆動を停止させる。すなわち、センサ10の電源およびポンプA22aの電源をオフにする(ステップS58)。その後終了し、
図3のステップS10に戻る。以上のように、補正係数A1およびB1が更新され、ステップS14では、更新された補正係数AbおよびBbを用い、
図4のフローが実行される。
【0049】
ステップS20において、Yesのとき、駆動部38は、センサ10およびポンプB22bの駆動を停止させる。すなわち、駆動部38は、センサ10の電源(すなわち発振回路26の電源)をオフし、ポンプB22bの電源をオフし(ステップS24)、終了する。
【0050】
[実験]
センサ10、ポンプA22aを駆動または駆動の停止を行い、センサ18により検出される温度、湿度および発振回路26の発振周波数を測定した。
【0051】
図8(a)は、実験における時間に対する発振周波数および温度を示す図、
図8(b)は、時間に対する発振周波数および相対湿度を示す図である。発振周波数は、センサ10に対応する発振回路26の発振周波数であり、時間が0秒のときの発振周波数を0kHzとしている。チャンバ20内には、8個のセンサ10が設けられており(センサ10が複数設けられる。詳細は実施例3を参照)、ch1~ch8は、8個のセンサ10の発振周波数を示している。温度および相対湿度はセンサ18が検出する温度および相対湿度である。
【0052】
シーケンスT1の前は、センサ10およびポンプA22aはいずれも駆動していない。すなわち、センサ10の電源、ポンプA22aの電源およびポンプB22bの電源はいずれもオフである。シーケンスT1では、センサ10が駆動し、かつポンプA22aは駆動していない。すなわち、センサ10の電源はオンであり、ポンプA22aの電源はオフである。シーケンスT2では、センサ10が駆動し、かつポンプA22aが駆動する。すなわち、センサ10の電源はオンであり、ポンプA22aの電源はオンである。シーケンスT3では、センサ10が駆動し、かつポンプA22aは駆動していない。すなわち、センサ10の電源はオンであり、ポンプA22aの電源はオフである。シーケンスT1~T3において、ポンプB22bはオフである。
【0053】
図8(a)および
図8(b)に示すように、シーケンスT1において、センサ10が駆動すると温度が上昇し、相対湿度が低下する。これは、センサ10が駆動することで、センサ10および発振回路26等に電流が流れ発熱するためである。シーケンスT2において、センサ10に加え、ポンプA22aが駆動すると温度がさらに上昇し、相対湿度がさらに低下する。これは、ポンプA22aが駆動することで、ポンプA22aおよびポンプA22aの駆動回路69等に電流が流れ発熱するためである。後述するように、筐体60に、センサ10を搭載する基板62(
図14および
図15参照)と、発振回路26、駆動回路67および69を搭載する基板64(
図14および
図15参照)が設けられている。シーケンスT2における温度上昇には、センサ10、発振回路26、駆動回路67および69の温度上昇が大きく寄与する。シーケンスT3において、センサ10が駆動した状態で、ポンプA22aの駆動を停止すると、温度の上昇率は低下し、相対湿度の下降率が低下する。これは、ポンプA22aの駆動を停止することで、シーケンスT2において説明したポンプA22aによる発熱が停止するためである。
【0054】
温度および相対湿度が変化すると、センサ10の発振周波数が変化する。8個のセンサ10は感応膜16が異なっているため、温度および相対湿度と発振周波数の相関はさまざまである。例えばch1のセンサ10では、温度が上昇し相対湿度が低下すると、発振周波数が高くなる。一方、ch7のセンサ10では、温度が上昇し相対湿度が低下すると、発振周波数が低くなる。
【0055】
この実験のように、センサ10またはポンプA22aが駆動すると、温度および湿度が変化する。よって、所定周期で発振周波数に対応する測定器28の出力値Sm、温度Tおよび湿度Hに関するセンサ18の出力値をサンプリングすることで、データ列Sm(t)、T(t)およびH(t)を生成する。データ列Sm(t)、T(t)およびH(t)に基づき、
図5のように、補正係数A2およびB2を算出できる。
【0056】
実施例1によれば、
図4のステップS36のように、補正部32は、補正係数A1およびB1(第1補正係数)に基づき、出力値Sm(t)(第1出力値)を出力値T(t)およびH(t)(第2出力値)を用いて、補正値Sc(t)を生成する。ステップS38のように、算出部36は、補正値Sc(t)に基づき、流体に関する情報を算出する。このような検出装置において、温度および湿度に対する発振周波数の振る舞いが変化すると、適切な補正が行われなくなる。そこで、
図5のステップS54のように、更新部34は、センサ10が駆動する期間における、データ列Sm(t)(第1データ列)とデータ列T(t)およびH(t)(第2データ列)との関係に基づき補正係数A2およびB2(第2補正係数)を算出する。ステップS56のように、メモリ40内の補正係数A1およびB1を補正係数A2およびB2に更新する。なお、データ列Sm(t)はセンサ10の出力値の時間に対するデータ列である。データ列T(t)およびH(t)は、Sm(t)と関係付けられセンサ18の出力値の時間に対するデータ列である。これにより、温度および湿度に対する発振周波数の振る舞いが変化しても、センサ10の出力値の適切な補正が可能となる。
【0057】
図8(a)および
図8(b)のように、センサ10が駆動すると温度および相対湿度が変化するものの、ポンプA22aが駆動すると、温度および相対湿度がより変化する。よって、シーケンスT2のように、更新部34は、センサ10が駆動し、かつポンプA22aが駆動する期間におけるデータ列Sm(t)とデータ列T(t)およびH(t)との関係に基づき補正係数A2およびB2を算出する。これにより、温度および相対湿度をより変化させることができる。
【0058】
ポンプA22aの代わりに、温度および湿度を変化させる素子を用いてもよい。例えば、温度および湿度を変化させる素子として、ゲートバルブなどを用いてもよい。また、温度および湿度を変化させる素子として、チャンバ20内にヒータを設けてもよい。検出装置に用いられている素子を温度および湿度を変化させる素子として用いる場合、ポンプA22aを用いることが好ましい。流路の途中に設置されるポンプA22aが発熱すると、効率よく熱を気体に伝えることができる。よって、ポンプA22aは、センサ10よりも気体の流れの上流に設置することが好ましい。また、ポンプA22aを駆動および制御する駆動回路69も熱を発生させる。このため、この熱も温度または湿度変化に利用できる。よって、実施例1のように、素子としてポンプA22aを用いることが好ましい。上記挙げた複数種類の素子または回路は、検出装置内に1つのみ設けられていなくてもよく、同一種類の素子または回路を複数設けてもよく、複数種類の素子または回路を設けてもよい。この場合、さらに効率よく熱を気体に伝えることができるので、さらに温度および湿度を変化させることができるため、好ましい。
【0059】
センサ18が気体における温度および湿度の両方を検出する例を説明したが、センサ18は、温度および湿度の少なくとも一方の指標を検出すればよい。センサ18が温度を検出し湿度を検出しない場合には、補正部32が用いる補正係数はA1のみであり、更新部34が算出する補正係数はA2のみである。センサ18が湿度を検出し温度を検出しない場合には、補正部32が用いる補正係数はB1のみであり、更新部34が算出する補正係数はB2のみである。ステップS54における補正係数A2またはB2の算出には単回帰分析を用いればよい。以下の実施例についても同様である。
【0060】
式1のように発振周波数が温度および湿度に対し線形的に変化する場合を例に説明したが、非線形な場合の補正係数を用いてもよい。
更新部34は、時間に対する温度および湿度のプロファイルが正常か否かを判定する(ステップS78)。Noのとき、アラームを発出する(ステップS84)。その後終了する。シーケンスT2において、温度の上昇スピードおよび湿度の下降スピードが遅い場合には、ポンプA22aが正常に動作していないことが考えられる。そこで、ステップS84において、ポンプA22aの異常をアラームする。
ステップS78においてYesの場合、更新部34は、補正係数A2a~A2cの比較、補正係数B2a~B2cの比較を行い、比較結果が正常か否かを判定する(ステップS80)。例えば、A2a~A2cのうち1つの値(例えばA2a)が他の2つの値(例えばA2bおよびA2c)より所定値以上異なる場合、A2aは異常と考えられる。B2a~B2cについても同様である。この場合、シーケンスT1でのステップS66が正常に行われなかった可能性がある。そこで、更新部34は、ステップS80においてNoと判定する。
ステップS80において、Noのとき、ステップS62に戻る。ステップS62において、リフレッシュ処理する。ステップS80において、Yesのとき、更新部34は、補正係数A2a~A2cおよび補正係数B2a~B2cが正常な範囲か否かを判定する(ステップS82)。ステップS80において、補正係数A2a~A2cの比較結果および補正係数B2a~B2cの比較結果が正常な場合において、補正係数A2a~A2cが所定範囲外の場合、または補正係数B2a~B2cが所定範囲外の場合、感応膜16が劣化している可能性がある。そこで、ステップS82において、Noの場合、ステップS84に進み、センサ10の異常をアラームする。その後終了する。
実施例2によれば、シーケンスT1は、センサ10が駆動し、かつポンプA22aが駆動する前のポンプA22aが駆動しない第1期間であり、シーケンスT2は、センサ10が駆動し、かつポンプA22aが駆動する第2期間であり、シーケンスT3は、センサ10が駆動し、かつポンプA22aが駆動した後のポンプA22aが駆動しない第3期間である。この3つの期間におけるデータ列Sm(t)とデータ列T(t)およびH(t)との関係に基づき、補正係数A2およびB2を算出する。これにより、異なるシーケンスにおけるデータ列の関係から補正係数A2およびB2を算出できるため、補正係数A2およびB2の算出精度を高めることができる。
なお、シーケンスT1~T3のうち、少なくとも2つのシーケンスにおけるデータ列Sm(t)とデータ列T(t)およびH(t)との関係に基づき、補正係数A2およびB2を算出すればよい。また、温度および湿度を変化させる素子としてポンプA22aの例を説明したが、実施例1と同様に、素子はポンプA22a以外でもよい。
ステップS66、S70およびS74のように、更新部34は、シーケンスT1~T3において、対応する補正係数A2aおよびB2a、補正係数A2bおよびB2b、並びに補正係数A2cおよびB2cを算出する。算出された補正係数A2a~A2cおよびB2a~B2cに基づき、補正係数A2およびB2を算出する。これにより、補正係数A2およびB2の精度を高めることができる。
さらに、ステップS80のように、更新部34は、算出された補正係数A2a~A2cを比較し、補正係数B2a~B2cを比較することで、補正係数A2a~A2cおよびB2a~B2cが正常か否かを判定する。このように、異なるシーケンスT1~T3において算出された補正係数を比較し、正常か否かを検出することで、補正係数A2およびB2の精度を高めることができる。