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  • 特開-建具及び戸体の取付方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065905
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】建具及び戸体の取付方法
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/06 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
E05D15/06 122
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174991
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長 晃司
(72)【発明者】
【氏名】高木 翔平
(72)【発明者】
【氏名】松村 心互
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034CA01
2E034DA02
(57)【要約】
【課題】レールに対して戸体が傾いて支持されることを抑制することができる建具及び戸体の取付方法を提供する。
【解決手段】建具は、戸体と、前記戸体がスライドするレールを有する上枠と、前記レールに対してスライド可能に支持されるローラ部と、前記戸体の上端部に固定されると共に前記ローラ部と連結されるベース部と、を有し、前記戸体を前記レールに対して吊下げ支持する戸体支持機構と、を備え、前記ベース部は、前記戸体に対して見込み方向の位置が調整不能に固定され、さらに、前記ローラ部と前記ベース部との間に設けられ、前記ローラ部に対する前記戸体の見込み方向での位置を調整するための1又は複数枚のライナー板を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具であって、
戸体と、
前記戸体がスライドするレールを有する上枠と、
前記レールに対してスライド可能に支持されるローラ部と、前記戸体の上端部に固定されると共に前記ローラ部と連結されるベース部と、を有し、前記戸体を前記レールに対して吊下げ支持する戸体支持機構と、
を備え、
前記ベース部は、前記戸体に対して見込み方向の位置が調整不能に固定され、
さらに、前記ローラ部と前記ベース部との間に設けられ、前記ローラ部に対する前記戸体の見込み方向での位置を調整するための1又は複数枚のライナー板を備える
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記ローラ部は、
前記レールを転動するローラと、
前記ローラを相対回転可能に支持すると共に、前記ベース部と連結されるシャフトと、
を有し、
前記ライナー板は、前記シャフトが挿通される孔部を有する
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項2に記載の建具であって、
前記孔部は、前記シャフトに対してその軸方向と直交する方向に挿抜可能な切欠形状を有する
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の建具であって、
さらに、前記ライナー板を前記ベース部に対して仮固定可能な仮固定部を備える
ことを特徴とする建具。
【請求項5】
レールを有する上枠に対して戸体を支持する戸体の取付方法であって、
前記戸体は、前記レールに対してスライド可能に支持されるローラ部と、前記戸体の上端部に固定されると共に前記ローラ部と連結されるベース部とを有する戸体支持機構を用い、前記レールに対して吊下げ支持されるものであり、
前記ベース部を前記戸体に対して見込み方向の位置を調整不能な固定部を用いて固定する工程と、
前記固定する工程の後、前記戸体に固定された前記ベース部と前記ローラ部との間に1又は複数枚のライナー板を挟み込むことで、前記ローラ部に対する前記戸体の見込み方向での位置を調整する工程と、
前記調整する工程の後、前記ベース部を前記ローラ部に連結し、前記戸体を前記レールに対して吊下げ支持する工程と、
を有する
ことを特徴とする戸体の取付方法。
【請求項6】
請求項5に記載の戸体の取付方法であって、
前記ローラ部は、前記レールを転動するローラと、前記ローラを相対回転可能に支持すると共に、前記ベース部と連結されるシャフトと、を有し、
前記ライナー板は、前記シャフトに対してその軸方向と直交する方向に挿抜可能な切欠形状の孔部を有し、
前記調整する工程では、前記孔部を前記シャフトに対して挿抜して前記ベース部と前記ローラ部との間に挟む前記ライナー板の枚数を変更することで、前記ローラ部に対する前記戸体の見込み方向での位置を調整する
ことを特徴とする戸体の取付方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の戸体の取付方法であって、
前記調整する工程では、前記ライナー板を前記ベース部に対して仮固定する
ことを特徴とする戸体の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具及び戸体の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば玄関ドア等の建具では、上枠に設けられたレールに対してローラ部(戸車)を転動可能に支持し、戸体をレールに対して吊下支持した上吊式の構成がある。このような上吊式のドアでは、戸体の見込み方向での位置調整は、戸体の上端部に固定され、ローラ部と連結されるベース部の戸体に対する固定位置を調整することで行われている。例えば特許文献1には、ベース部に見込み方向に沿う欠状の長穴を形成し、この長穴を用いて戸体に対するベース部の見込み方向位置を調整する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59-41579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の構成では、ベース部に設けた長穴を用いて戸体の見込み方向位置を調整する。このため、この構成では、ベース部が戸体に対して斜めに固定されてしまう場合もある。そうすると、ベース部がローラ部に対して傾いて連結され、その結果、戸体がレールに対して傾いた姿勢で支持されてしまい、異音の発生等の要因となっていた。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、レールに対して戸体が傾いて支持されることを抑制することができる建具及び戸体の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る建具は、戸体と、前記戸体がスライドするレールを有する上枠と、前記レールに対してスライド可能に支持されるローラ部と、前記戸体の上端部に固定されると共に前記ローラ部と連結されるベース部と、を有し、前記戸体を前記レールに対して吊下げ支持する戸体支持機構と、を備え、前記ベース部は、前記戸体に対して見込み方向の位置が調整不能に固定され、さらに、前記ローラ部と前記ベース部との間に設けられ、前記ローラ部に対する前記戸体の見込み方向での位置を調整するための1又は複数枚のライナー板を備える。
【0007】
本発明の第2態様に係る戸体の取付方法は、レールを有する上枠に対して戸体を支持する戸体の取付方法であって、前記戸体は、前記レールに対してスライド可能に支持されるローラ部と、前記戸体の上端部に固定されると共に前記ローラ部と連結されるベース部とを有する戸体支持機構を用い、前記レールに対して吊下げ支持されるものであり、前記ベース部を前記戸体に対して見込み方向の位置を調整不能な固定部を用いて固定する工程と、前記固定する工程の後、前記戸体に固定された前記ベース部と前記ローラ部との間に1又は複数枚のライナー板を挟み込むことで、前記ローラ部に対する前記戸体の見込み方向での位置を調整する工程と、前記調整する工程の後、前記ベース部を前記ローラ部に連結し、前記戸体を前記レールに対して吊下げ支持する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、レールに対して戸体が傾いて支持されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る建具を室外側から見た姿図である。
図2図1に示す建具の縦断面図である。
図3】戸車支持機構及びその周辺部の拡大図であり、図3(A)は平面図、図3(B)は正面図である。
図4】戸車支持機構及びその周辺部を拡大した縦断面図であり、図4(A)はベース部をローラ部に連結する動作を示し、図4(A)はベース部をローラ部に連結した状態を示す。
図5】変形例に係るベース部の平面図である。
図6】変形例に係るライナー板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る建具及び戸体の取付方法について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施形態の建具10は、建物躯体11の開口部に固定される枠体12と、枠体12に開閉可能に支持される戸体14とを備える。建具10は、例えば住宅の玄関ドアとして用いることができる。
【0012】
本出願において、見込み方向(出入り方向)とは建具10の奥行方向(図中に矢印Zで示す方向)をいい、見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な縦枠12c等の場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上枠12a等の場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Yで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。
【0013】
先ず、建具10の全体構成を説明する。
【0014】
枠体12は、上枠12aと、下枠12bと、縦枠12cを連結したものである。各枠12a~12cは、アルミニウム合金等の押出形材である。各枠12a~12cは、アルミニウム合金等の押出形材の室内側に塩化ビニル樹脂(PVC)等で形成された樹脂形材を装着した複合構造ものでもよいし、樹脂形材のみで構成されてもよい。
【0015】
図2に示すように、上枠12aは、その長手方向に沿って延在するようにレール16が設けられている。下枠12bは、その上面から突出するガイドローラ18が取り付けられている。縦枠12cは、上枠12a及び下枠12bの戸先側端部12a1,12b1に連結されている。縦枠12cは、上枠12aの戸先側端部12a1と共に戸尻側端部にも設け、左右一対で設置してもよい。図2中の参照符号19は、下枠12bの上面側に設置された床材である。
【0016】
戸体14は、上枠12aのレール16に対して戸体支持機構20を介して吊下支持され、上枠12aの長手方向に沿ってスライド可能な片引きドアを構成する。スライド時、戸体14の下端部はガイドローラ18によってガイドされる。戸体14は、両開きドアでもよい。戸体14は、その上端部14aが上枠12aに設けられた下向きに開口する開口溝21に飲み込まれた状態で、レール16に沿ってX方向にスライドする。
【0017】
次に、戸体支持機構20による戸体14の支持構造を説明する。
【0018】
図2図4に示すように、戸体支持機構20は、ローラ部22と、駆動部24と、ベース部26とを有する。
【0019】
ローラ部22は、レール16に対してスライド可能に支持される。ローラ部22は、ローラ22aと、シャフト22bとを有する。ローラ22aは、レール16を転動する戸車である。シャフト22bは、ローラ22aを相対回転可能に支持する回転軸である。シャフト22bはベース部26と連結され、これによりローラ部22と戸体14とが連結される。
【0020】
駆動部24は、ローラ部22を駆動して戸体14を移動させるためのエンジンとなる部分であり、例えばリニアモータで構成される。駆動部24は、上枠12a内の開口溝21の上方で支持ブラケット27を用いて上枠12aに支持されている。支持ブラケット27は、例えば略J字状の断面形状を有する。レール16は、例えば支持ブラケット27の下部に形成されている。駆動部24は、例えばステータ24aとムーバ24bとを有し、可動磁石体であるムーバ24bがX方向に移動する構成である。駆動部24は、上枠12a内に設置されるコントローラによって駆動制御される。
【0021】
ムーバ24bは、下向きのL字状のブラケット28と一体に連結され、ブラケット28はローラ部22を一体的に支持している。つまりブラケット28は、ローラ部22の一部品と言い換えてもよい。ブラケット28のZ方向に突出した一片は、ムーバ24bと一体に設けられている。ブラケット28の下方に突出した他片は、シャフト22bを相対回転可能に支持することで、ローラ部22を支持している。駆動部24は、ムーバ24bが移動することで、これに支持されたローラ部22を移動させることができる。駆動部24の構成は、戸体14を移動させることができるものであればよく、リニアモータではなく電動モータ等で構成されてもよい。
【0022】
ベース部26は、戸体14とローラ部22とを連結する板金部品である。ベース部26は、戸体14の上端部14aに固定される横板30と、横板30の室外側端部から上方に起立した縦板31とを有する。
【0023】
横板30は、X方向に沿って延在し、戸体14の上端部(上端面)14aと固定される。図3及び図4に示すように、横板30は、X方向の両端部付近にそれぞれ固定孔30aを有する。固定孔30aは、横板30を戸体14に固定するためのねじ32が挿通される孔部である。ねじ32は、例えば六角ボルトである。固定孔30aは、戸体14に対して見込み方向の位置が調整不能な形状な固定部を構成する。図3に示す構成例では、固定孔30aは、ねじ32の外径より僅かに大きな内径を有し、ねじ32がほとんどがたつきなく挿通される丸孔である。これによりベース部26は、戸体14に対して見込み方向の位置が調整不能に固定される。なお、ベース部26が戸体14に対して見込み方向に位置調整不能に固定されるとは、ベース部26を戸体14に固定する際に見込み方向の位置調整作業を行うことを要しないという意味であると言うこともでき、例えば固定孔30aとねじ32との間に多少のがたや寸法公差があることを排除する趣旨ではない。
【0024】
縦板31は、横板30の一側部から上方に折り曲げて形成されたものである。縦板31は、Y方向に起立し、ローラ部22と連結される。図3及び図4に示すように、縦板31は、そのX方向中央の上部に連結孔31aを有する。連結孔31aは、ローラ部22のシャフト22bが挿通される。連結孔31aは、例えばX方向に沿った長孔である。これにより連結孔31aとシャフト22bとの位置関係は、Y方向ではがたつきなく位置決めされ、X方向ではある程度調整することができる。シャフト22bは、連結孔31aを通過した先端に形成された雄ねじにナット34が螺合される。これにより縦板31とシャフト22bが連結され、ベース部26とローラ部22が連結される。
【0025】
図3に示すように、縦板31には、さらに、連結孔31aのX方向両側部にそれぞれ仮固定孔31bが形成されている。仮固定孔31bは、後述するライナー板36を仮固定する際に用いられる。
【0026】
なお、上記では、ローラ部22が上枠12a側に支持された構成を例示したが、ローラ部22は戸体14側に支持され、これをレール16に支持する構成としてもよい。
【0027】
次に、ライナー板36について説明する。
【0028】
上記した通り、本実施形態のベース部26は、戸体14に対して固定孔30aを用いて固定されるため、戸体14に対する見込み方向での位置調整を行うことができない。また、ローラ部22は、上枠12aに固定されたレール16に対して位置決めされるため、上枠12aや戸体14に対する見込み方向での位置調整を行うことはできない。一方、建具10では、建物躯体11に対する上枠12aや下枠12bの取付位置や角度が施工現場によって変化する。このため、戸体14は、上枠12aに対して見込み方向での位置調整を行い、枠体12に取り付けられた上下のタイト材38,39に対する当たり具合等を調整できる必要がある。
【0029】
図3及び図4に示すように、ライナー板36は、このような上枠12a、つまりローラ部22に対する戸体14の見込み方向での位置を調整するための部材である。ライナー板36は、例えば金属又は樹脂で形成された薄い板材であり、ローラ部22とベース部26との間に1枚又は複数枚が挟み込まれる。より具体的には、ライナー板36は、ローラ部22を支持したブラケット28と、ベース部26の縦板31との間に挟持される。建具10は、ライナー板36の積層枚数を変更することにより、ローラ部22に対するベース部26の見込み方向での位置を調整し、これにより上枠12aや下枠12bに対する戸体14の見込み方向での位置を調整することができる。
【0030】
図3に示すように、ライナー板36は、例えばX方向に延びた帯状の板材である。ライナー板36は、孔部36aと、仮固定孔36bとを有する。
【0031】
孔部36aは、シャフト22bが挿通される。孔部36aは、ライナー板36の一縁部を切り欠いたように形成された切欠形状を有することが好ましい。そうすると、孔部36aは、シャフト22bに対してその軸方向と直交する方向から容易に挿抜することができる。その結果、ライナー板36は、例えばシャフト22bにベース部26を引っ掛けた後、容易に縦板31とブラケット28との間に挟み込むことができ、その枚数調整も容易である。なお、図3(A)及び図3(B)中のライナー板36において、一方のライナー板36Aは孔部36aにシャフト22bに挿通させる前の状態を示し、他方のライナー板36Bは孔部36aにシャフト22bに挿通させた後の状態を示す。
【0032】
孔部36aは省略されてもよい。但し、この場合は、ライナー板36は、縦板31とブラケット28との間から脱落する懸念が高まるため、孔部36aを設けてシャフト22bに引っ掛けることができる構成が好ましい。
【0033】
仮固定孔36bは、シャフト22bが孔部36aに通された状態で、ベース部26の仮固定孔31bと軸方向に並んで配置される。仮固定孔31b,36bは、ねじ40が挿通され、ナット41を用いて縦板31に締結される。これにより各ライナー板36は、戸体14の位置調整作業中にベース部26に対して仮固定しておくことができ、作業性が向上する。このように、仮固定孔31b,36bは、ねじ40やナット41と共にライナー板36の仮固定部を構成する。
【0034】
次に、以上のような建具10における戸体14の枠体12に対する取付方法の一手順を説明する。
【0035】
戸体14の取付作業に先立ち、予め、枠体12を建物躯体11に固定すると共に、上枠12aに支持ブラケット27を取り付けてレール16及び駆動部24を設置しておく。なお、図2に示す上枠12aの室外側見付け面を形成する上枠アタッチメント42は、戸体14をレール16で支持した後に装着する。従って、戸体14の取付作業時、シャフト22bは、先端がブラケット28を貫通して室外側に突出した状態となっている(図4(A)参照)。
【0036】
戸体14の取付作業について説明する。先ず、建物躯体11に対する枠体12の設置工程と前後して、戸体14の上端部14aにベース部26を固定する。この際、ベース部26の横板30に形成された固定孔30aは、ねじ32との関係で見込み方向の調整幅が実質的にゼロとなっている。このため、ベース部26は、戸体14に対して見込み方向の位置が調整不能な状態で位置決め固定される。その結果、ベース部26は、戸体14の面方向(XY方向)に対して傾きや位置ずれを生じることがなく、縦板31の面方向が戸体14の面方向と略一致する。
【0037】
続いて、戸体14をローラ部22に連結する。先ず、シャフト22bの先端を戸体14に固定された縦板31の連結孔31aに挿通させる。これによりベース部26がシャフト22bに引っ掛かり、戸体14がローラ部22及び上枠12aに対して仮支持される。
【0038】
次に、ベース部26とローラ部22との間にライナー板36を1又は2枚以上挟み込み、ローラ部22に対する戸体14の見込み方向位置を調整する。ここでは、先端部に戸体14が仮支持されたシャフト22bに対し、ライナー板36の孔部36aを横から差し込みつつ、その枚数を調整する。図4では、2枚のライナー板36を設置した構成を例示している。この際、ライナー板36は、仮固定孔31b,36bを通したねじ40を用いてベース部26に仮固定しておくことができる。そうすると、ブラケット28と縦板31との間に設置したライナー板36が脱落することを防止しつつ、戸体14の見込み方向位置を容易に調整できる。なお、ライナー板36の枚数調整が完了した後は、ねじ40を完全に締結してライナー板36をベース部26に確実に固定しておくとよい。そうすると、戸体14の開閉動作時にライナー板36ががたついて異音を発生することを一層確実に防止できる。
【0039】
最後に、シャフト22bの先端にナット34を取り付けて、ベース部26をローラ部22(ブラケット28)に対して締結する。これにより戸体14は、上枠12aのレール16に支持されたローラ部22に対して所定の見込み方向位置で連結される。その際、ベース部26は、戸体14に対して見込み方向の位置を調整不能な固定孔30aを用いて固定されているため、戸体14の面方向がレール16に対して傾いて支持されることが抑制される。このため、戸体14は、異音やがたつき等を生じることが抑えられ、円滑な開閉動作が可能となる。
【0040】
なお、固定孔30aは、戸体14に対するベース部26の見込み方向での位置を調整不能な構成であればよい。図5に示すように、ベース部26は、固定孔30aに代えて固定孔30cを有する構成としてもよい。固定孔30cは、X方向に横長な長孔であるが、見込み方向(Z方向)にはねじ32を調整不能に位置決め可能である。このため、固定孔30cの場合も、固定孔30aと同様に、ベース部26の戸体14に対する見込み方向での傾きや位置ずれを抑制できる。また、固定孔30cは、戸体14の面方向に対するベース部26の位置調整を行うことができるため、連結孔31aとシャフト22bとのX方向での位置調整が可能となる。
【0041】
図6に示すように、ライナー板36は、孔部36aに代えて孔部36cを設けた構成としてもよい。孔部36cは、シャフト22bが挿通可能な丸孔である。孔部36cを用いたライナー板36は、連結孔31aをシャフト22bに引っ掛ける前にライナー板36をシャフト22bに通しておく必要があり、孔部36aを用いた構成に比べてライナー板36の設置作業や枚数調整の手間がかかる。しかしながら、孔部36cを用いたライナー板36は、シャフト22bから脱落することがないため、仮固定孔31b,36bを用いたベース部26に対する仮固定作業が不要となるという利点がある。
【0042】
本発明の第1態様に係る建具は、戸体と、前記戸体がスライドするレールを有する上枠と、前記レールに対してスライド可能に支持されるローラ部と、前記戸体の上端部に固定されると共に前記ローラ部と連結されるベース部と、を有し、前記戸体を前記レールに対して吊下げ支持する戸体支持機構と、を備え、前記ベース部は、前記戸体に対して見込み方向の位置が調整不能に固定され、さらに、前記ローラ部と前記ベース部との間に設けられ、前記ローラ部に対する前記戸体の見込み方向での位置を調整するための1又は複数枚のライナー板を備える。このような構成によれば、ベース部が戸体に対して見込み方向の位置を調整不能に固定されるため、戸体の面方向がベース部及びレールに対して傾いて支持されることが抑制される。このため、戸体が異音やがたつき等を生じることが抑えられ、円滑な開閉動作が可能となる。
【0043】
前記ローラ部は、前記レールを転動するローラと、前記ローラを相対回転可能に支持すると共に、前記ベース部と連結されるシャフトと、を有し、前記ライナー板は、前記シャフトが挿通される孔部を有する構成としてもよい。そうすると、ライナー板は、孔部がシャフトに挿通された状態で設置されるため、戸体の見込み方向の位置調整時に脱落することを防止できる。
【0044】
前記孔部は、前記シャフトに対してその軸方向と直交する方向に挿抜可能な切欠形状を有する構成としてもよい。そうすると、ライナー板は、シャフトに対して横から孔部を挿抜することができるため、その枚数調整が一層容易となる。
【0045】
さらに、前記ライナー板を前記ベース部に対して仮固定可能な仮固定部を備える構成としてもよい。そうすると、戸体の見込み方向での位置調整時にライナー板が脱落することを防止できる。
【0046】
本発明の第2態様に係る戸体の取付方法は、レールを有する上枠に対して戸体を支持する戸体の取付方法であって、前記戸体は、前記レールに対してスライド可能に支持されるローラ部と、前記戸体の上端部に固定されると共に前記ローラ部と連結されるベース部とを有する戸体支持機構を用い、前記レールに対して吊下げ支持されるものであり、前記ベース部を前記戸体に対して見込み方向の位置を調整不能な固定部を用いて固定する工程と、前記固定する工程の後、前記戸体に固定された前記ベース部と前記ローラ部との間に1又は複数枚のライナー板を挟み込むことで、前記ローラ部に対する前記戸体の見込み方向での位置を調整する工程と、前記調整する工程の後、前記ベース部を前記ローラ部に連結し、前記戸体を前記レールに対して吊下げ支持する工程と、を有する。このような方法によれば、ベース部が戸体に対して見込み方向の位置を調整不能に固定されるため、戸体の面方向がベース部及びレールに対して傾いて支持されることが抑制される。このため、戸体が異音やがたつき等を生じることが抑えられ、円滑な開閉動作が可能となる。
【0047】
前記ローラ部は、前記レールを転動するローラと、前記ローラを相対回転可能に支持すると共に、前記ベース部と連結されるシャフトと、を有し、前記ライナー板は、前記シャフトに対してその軸方向と直交する方向に挿抜可能な切欠形状の孔部を有し、前記調整する工程では、前記孔部を前記シャフトに対して挿抜して前記ベース部と前記ローラ部との間に挟む前記ライナー板の枚数を変更することで、前記ローラ部に対する前記戸体の見込み方向での位置を調整するものとしてもよい。そうすると、ライナー板の枚数調整時に、ライナー板が脱落することを防止でき、調整作業効率が向上する。
【0048】
前記調整する工程では、前記ライナー板を前記ベース部に対して仮固定するものとしてもよい。そうすると、戸体の見込み方向での位置調整時にライナー板が脱落することを一層確実に防止できる。
【0049】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 建具、12 枠体、12a 上枠、14 戸体、16 レール、20 戸体支持機構、22 ローラ部、22a ローラ、22b シャフト、24 駆動部、26 ベース部、30a,30c 固定孔、31b,36b 仮固定孔、36,36A,36B ライナー板、36a,36c 孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6