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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065911
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】荷役方法及び港湾施設
(51)【国際特許分類】
   B65G 63/00 20060101AFI20240508BHJP
   B66C 19/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B65G63/00 G
B66C19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175001
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】杉本 真隆
(72)【発明者】
【氏名】杉山 功樹
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、制約のある港湾施設であっても効率的に荷役を行うことができる荷役方法及び港湾施設を提供することである。
【解決手段】本発明の一態様である荷役方法は、港内の一のバースに着岸した船舶に対して、この船舶の積載物に応じて荷役を行う荷役方法であって、前記バースで軌道走行式荷役機械によって固体物の荷役をする工程と、前記バースでマリンローディングアームによって流体物の荷役をする工程とを備え、前記バース用に、前記マリンローディングアームのアーム用基礎と、前記軌道走行式荷役機械の軌道用基礎とが互いに独立して設けられている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
港内の一のバースに着岸した船舶に対して、この船舶の積載物に応じて荷役を行う荷役方法であって、
前記バースで軌道走行式荷役機械によって固体物の荷役をする工程と、
前記バースでマリンローディングアームによって流体物の荷役をする工程と
を備え、
前記バース用に、前記マリンローディングアームのアーム用基礎と、前記軌道走行式荷役機械の軌道用基礎とが互いに独立して設けられていることを特徴とする荷役方法。
【請求項2】
前記アーム用基礎が前記バースにおける岸壁から独立して設けられている請求項1に記載の荷役方法。
【請求項3】
前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の移動経路上に配置され、
前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を通過可能である請求項1又は請求項2に記載の荷役方法。
【請求項4】
前記マリンローディングアームのアーム部が屈曲可能であり、
前記アーム部が屈曲した状態で前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を通過する請求項3に記載の荷役方法。
【請求項5】
前記マリンローディングアームのアーム部が水平方向、鉛直方向及びアーム部の軸回り方向の少なくとも一方向に回転可能であり、
前記アーム部が前記軌道走行式荷役機械と接触しないように回転して前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を通過する請求項3に記載の荷役方法。
【請求項6】
前記アーム用基礎が、杭及び矢板の少なくとも一方を有するものである請求項1又は請求項2に記載の荷役方法。
【請求項7】
船舶に対して固体物を荷役するための軌道走行式荷役機械と、
船舶に対して流体物を荷役するためのマリンローディングアームと、
前記軌道走行式荷役機械を支持するための軌道用基礎と、
前記マリンローディングアームを支持するためのアーム用基礎と
を有するバースを備え、
前記軌道用基礎と前記アーム用基礎とが独立して設けられていることを特徴とする港湾施設。
【請求項8】
前記アーム用基礎が、前記バースにおける岸壁から独立して設けられている請求項7に記載の港湾施設。
【請求項9】
前記マリンローディングアームが、前記軌道走行式荷役機械の移動経路上に配置され、
前記軌道走行式荷役機械が、前記マリンローディングアーム上を通過可能である請求項7又は請求項8に記載の港湾施設。
【請求項10】
前記マリンローディングアームのアーム部が、移動する前記軌道走行式荷役機械と接触しないように屈曲可能である請求項9に記載の港湾施設。
【請求項11】
前記マリンローディングアームのアーム部が、移動する前記軌道走行式荷役機械と接触しないように水平方向、鉛直方向及びアーム部の軸回り方向の少なくとも一方向に回転可能である請求項9に記載の港湾施設。
【請求項12】
前記アーム用基礎が、杭及び矢板の少なくとも一方を有するものである請求項7又は請求項8に記載の港湾施設。
【請求項13】
港内の一のバースに着岸した船舶に対して荷役を行う荷役方法であって、
前記バースでマリンローディングアームによって前記船舶に対して流体物の荷役をする工程を備え、
前記流体物の荷役をする作業領域に前記マリンローディングアームを支持するアーム用基礎が周囲から独立して設けられ、
前記マリンローディングアームを前記作業領域外から前記作業領域に地上を移動させて前記流体物の荷役をすることを特徴とする荷役方法。
【請求項14】
前記バースで軌道走行式荷役機械によって船舶に対して固体物の荷役をする工程をさらに備え、
前記軌道走行式荷役機械の軌道用基礎と、前記アーム用基礎とが独立して設けられている請求項13に記載の荷役方法。
【請求項15】
前記アーム用基礎が前記バースにおける岸壁から独立して設けられている請求項13又は請求項14に記載の荷役方法。
【請求項16】
前記作業領域の外に前記マリンローディングアームの待機領域を設け、
前記マリンローディングアームが、前記固体物の荷役をする工程において前記待機場所で待機する請求項14に記載の荷役方法。
【請求項17】
前記作業領域が前記軌道走行式荷役機械の移動経路上に設けられている請求項14に記載の荷役方法。
【請求項18】
前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の下を移動し、又は前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアームの上を移動する請求項17に記載の荷役方法。
【請求項19】
前記マリンローディングアームのアーム部が屈曲可能であり、
前記アーム部が屈曲した状態で前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の下を通過し、又は前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアームの上を通過する請求項18に記載の荷役方法。
【請求項20】
前記マリンローディングアームのアーム部が水平方向、鉛直方向及びアーム部の軸回り方向の少なくとも一方向に回転可能であり、
前記アーム部が前記軌道走行式荷役機械と接触しないように回転して前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の下を移動し、又は前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアームの上を移動する請求項18に記載の荷役方法。
【請求項21】
前記アーム用基礎が、杭及び矢板の少なくとも一方を有するものである請求項13又は請求項14に記載の荷役方法。
【請求項22】
前記マリンローディングアームが、タイヤ及びクローラの少なくとも一方と、内燃機関及びモータの少なくとも一方とを有し、自走可能な走行体に配設されている請求項13又は請求項14に記載の荷役方法。
【請求項23】
作業領域外と作業領域とを地上で移動可能であり、前記作業領域において船舶に対して流体物の荷役をするためのマリンローディングアームと、
前記作業領域で前記マリンローディングアームを支持するアーム用基礎と
が設けられているバースを備え、
前記アーム用基礎が周囲から独立して設けられていることを特徴とする港湾施設。
【請求項24】
船舶に対して固体物の荷役をするための軌道走行式荷役機械をさらに備え、
この軌道走行式荷役機械を支持する軌道用基礎と、前記アーム用基礎とが独立して設けられている請求項23に記載の港湾施設。
【請求項25】
前記アーム用基礎が、前記バースにおける岸壁から独立して設けられている請求項23又は請求項24に記載の港湾施設。
【請求項26】
前記作業領域外に前記マリンローディングアームの待機領域を設け、
前記軌道走行式荷役機械の稼動中に、前記マリンローディングアームが前記待機領域に配置される請求項24に記載の港湾施設。
【請求項27】
前記作業領域が前記軌道走行式荷役機械の移動経路上に設けられている請求項24に記載の港湾施設。
【請求項28】
前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の下を移動可能、又は前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアームの上を移動可能である請求項24に記載の港湾施設。
【請求項29】
前記マリンローディングアームのアーム部が、相対的に移動する前記軌道走行式荷役機械と接触しないように屈曲可能である請求項28に記載の港湾施設。
【請求項30】
前記マリンローディングアームのアーム部が、相対的に移動する前記軌道走行式荷役機械と接触しないように水平方向、鉛直方向及びアーム部の軸回り方向の少なくとも一方向に回転可能である請求項28に記載の港湾施設。
【請求項31】
前記アーム用基礎が、杭及び矢板の少なくとも一方を有するものである請求項23又は請求項24に記載の港湾施設。
【請求項32】
前記マリンローディングアームが、タイヤ及びクローラの少なくとも一方と、内燃機関及びモータの少なくとも一方とを有し、自走可能な走行体に配設されている請求項23又は請求項24に記載の港湾施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役方法及び港湾施設に関する。
【背景技術】
【0002】
積荷が荷役される船舶が着岸するバースには、積荷の種類に応じた荷役機械がそれぞれのバースに配備されている。例えば、コンテナを荷役するクレーン、石炭や穀物などのバラ物貨物を荷役するアンローダ、液体や気体を荷役するマリンローディングアーム等は、バース毎に配備され、船舶は積荷の種類に対応する荷役機械が配備されたバースに着岸して荷役作業が行われる。
【0003】
LNG等の流体物を荷役するマリンローディングアームは、荷役作業における高い安全性が要求されている。より安全な荷役作業を行うためのタンカー用荷役装置が発案されている(特開2017-105507号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-105507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある港湾において、たとえばバラ物貨物及び流体物を荷役するためには、それぞれアンローダとマリンローディングアームとをそれぞれ設けた二つのバースが必要になる。港湾の大きさや岸壁周辺の水深の状況などによっては、所望の数のバースを確保することが難しいことがある。この解決策として、一つのバースにアンローダとマリンローディングアームの双方を配置し、船舶の積荷の種類に応じてそれらを使い分けることも考えられる。
【0006】
しかしながら、マリンローディングアームはLNG等の可燃性液体を荷役するものであるため、必要な耐震性が他の設備と異なり、アンローダ等の他の荷役機械などが既に設けられたバースにマリンローディングアームを単純に追加することは容易ではない。
【0007】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、制約のある港湾施設であっても効率的に荷役を行うことができる荷役方法及び港湾施設を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた本発明の一態様である荷役方法は、港内の一のバースに着岸した船舶に対して、この船舶の積載物に応じて荷役を行う荷役方法であって、前記バースで軌道走行式荷役機械によって固体物の荷役をする工程と、前記バースでマリンローディングアームによって流体物の荷役をする工程とを備え、前記バース用に、前記マリンローディングアームのアーム用基礎と、前記軌道走行式荷役機械の軌道用基礎とが互いに独立して設けられている。
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明の別の一態様である港湾施設は、船舶に対して固体物を荷役するための軌道走行式荷役機械と、前記船舶に対して流体物を荷役するためのマリンローディングアームと、前記軌道走行式荷役機械を支持するための軌道用基礎と、前記マリンローディングアームを支持するためのアーム用基礎とを有するバースを備え、前記軌道用基礎と前記アーム用基礎とが独立して設けられている。
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明のさらに別の一態様である荷役方法は、港内の一のバースに着岸した船舶に対して荷役を行う荷役方法であって、前記バースでマリンローディングアームによって前記船舶に対して流体物の荷役をする工程を備え、前記流体物の荷役をする作業領域に前記マリンローディングアームを支持するアーム用基礎が周囲から独立して設けられ、前記マリンローディングアームを前記作業領域外から前記作業領域に地上を移動させて前記流体物の荷役をする。
【0011】
前記課題を解決するためになされた本発明のさらに別の一態様である港湾施設は、作業領域外と作業領域とを地上で移動可能であり、前記作業領域において船舶に対して流体物の荷役をするためのマリンローディングアームと、前記作業領域で前記マリンローディングアームを支持するアーム用基礎とが設けられているバースを備え、前記アーム用基礎が周囲から独立して設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様である荷役方法及び港湾施設は、制約のある港湾施設であっても固体物と流体物との荷役を行うことができる。本発明の別の一態様である荷役方法及び港湾施設は、制約のある港湾施設であっても流体物の荷役を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る港湾施設を示す模式的平面図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3は、図2のマリンローディングアームが流体物の荷役をする状態を示す模式的側面図である。
図4図4は、本発明の別の一実施形態に係る港湾施設を示す模式的平面図である。
図5図5は、図4のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一態様である荷役方法は、港内の一のバースに着岸した船舶に対して、この船舶の積載物に応じて荷役を行う荷役方法であって、前記バースで軌道走行式荷役機械によって固体物の荷役をする工程と、前記バースでマリンローディングアームによって流体物の荷役をする工程とを備え、前記バース用に、前記マリンローディングアームのアーム用基礎と、前記軌道走行式荷役機械の軌道用基礎とが互いに独立して設けられている。
【0015】
当該荷役方法は、一のバースにおいて、軌道走行式荷役機械による固体物の荷役をする工程と、マリンローディングアームによって流体物の荷役をする工程とが行われるため、例えば、比較的小さな港や比較的水深の深い部分が少ない港であっても船舶の積載する貨物の種類に応じて軌道走行式荷役機械とマリンローディングアームとを使い分け、固体物及び流体物の双方の荷役を行うことができる。しかも、前記バースは、前記アーム用基礎と前記軌道用基礎とが独立して設けられているため、前記マリンローディングアームについても耐震性を確保することができる。つまり、当該荷役方法では、前記マリンローディングアームの基礎を前記軌道走行式荷役機械の基礎から独立したものとすることによって前記マリンローディングアームについて耐震性を確保することができ、前記一のバースにおいて前記マリンローディングアームと前記軌道走行式荷役機械とを使い分けて固体物の荷役と流体物の荷役とを行うことが可能としている。
【0016】
前記アーム用基礎が前記バースにおける岸壁から独立して設けられているとよい。このようにすることで、前記マリンローディングアームの耐震性確保の確実性が向上できる。
【0017】
前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の移動経路上に配置され、前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を通過可能であるとよい。このようにすることで、前記バースにおいて双方の荷役機械を配置するための面積を抑制しつつ、双方の荷役機械で荷役することができる。
【0018】
前記マリンローディングアームのアーム部が屈曲可能であり、前記アーム部が屈曲した状態で前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を通過するとよい。マリンローディングアームのアーム部が屈曲することで、移動する前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアームと接触することを抑制できる。
【0019】
前記マリンローディングアームのアーム部が水平方向、鉛直方向及びアーム部の軸回り方向の少なくとも一方向に回転可能であり、前記アーム部が前記軌道走行式荷役機械と接触しないように回転して前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を通過するとよい。前記マリンローディングアームのアーム部が前記軌道走行式荷役機械と接触しないように回転することで、前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を容易に通過できる。
【0020】
前記アーム用基礎が、杭及び矢板の少なくとも一方を有するものであるとよい。このようにすることで、高い耐震性を有するアーム用基礎を設けることができる。
【0021】
本発明の別の一態様である港湾施設は、船舶に対して固体物を荷役するための軌道走行式荷役機械と、船舶に対して流体物を荷役するためのマリンローディングアームと、前記軌道走行式荷役機械を支持するための軌道用基礎と、前記マリンローディングアームを支持するためのアーム用基礎とを有するバースを備え、前記軌道用基礎と前記アーム用基礎とが独立して設けられている。
【0022】
当該港湾施設は、マリンローディングアームのアーム用基礎と、軌道走行式荷役機械の軌道用基礎とが互いに独立して設けられている一つのバースを備える。すなわち、一つのバースにマリンローディングアームと軌道走行式荷役機械用とが併設されている。このため、例えば、固体物の荷役するためのバースと流体物の荷役をするためのバースとの二つのバースを設けることができない比較的小さな港や比較的水深の深い部分が少ない港でも前記一つのバースで船舶の積載する積荷の種類に応じて前記軌道走行式荷役機械と前記マリンローディングアームとを使い分け、固体物の荷役と流体物の荷役とを行うことができる。しかも、前記バースは、前記アーム用基礎と前記軌道用基礎とを独立して設けているため、前記マリンローディングアームについても耐震性を確保することができる。つまり、当該港湾施設では、前記マリンローディングアームの基礎を前記軌道走行式荷役機械の基礎から独立したものとすることによって前記マリンローディングアームについて耐震性を確保することができ、前記一のバースにおいて前記マリンローディングアームと前記軌道走行式荷役機械とを使い分けて固体物の荷役と流体物の荷役とを行うことが可能としている。
【0023】
前記アーム用基礎が前記バースにおける岸壁から独立して設けられているとよい。このようにすることで、前記マリンローディングアームの耐震性確保の確実性を向上できる。
【0024】
前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の移動経路上に配置され、前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を通過可能であるとよい。このようにすることで、双方の荷役機械を配置するための面積を抑制しつつ、双方の荷役機械で荷役することができる。
【0025】
前記マリンローディングアームのアーム部が、移動する前記軌道走行式荷役機械と接触しないように屈曲可能であるとよい。マリンローディングアームのアーム部が前記軌道走行式荷役機械と接触しないように屈曲することで、前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を容易に通過できる。
【0026】
前記マリンローディングアームのアーム部が、移動する前記軌道走行式荷役機械と接触しないように水平方向、鉛直方向及びアーム部の軸回り方向の少なくとも一方向に回転可能であるとよい。マリンローディングアームのアーム部が前記軌道走行式荷役機械と接触しないように回転することで、前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を容易に通過できる。
【0027】
前記アーム用基礎が、杭及び矢板の少なくとも一方を有するものであるとよい。このようにすることで、高い耐震性を有するアーム用基礎を設けることができる。
【0028】
本発明のさらに別の一態様である荷役方法は、港内の一のバースに着岸した船舶に対して荷役を行う荷役方法であって、前記バースでマリンローディングアームによって前記船舶に対して流体物の荷役をする工程を備え、前記流体物の荷役をする作業領域に前記マリンローディングアームを支持するアーム用基礎が周囲から独立して設けられ、前記マリンローディングアームを前記作業領域外から前記作業領域に地上を移動させて前記流体物の荷役をする。
【0029】
当該荷役方法は、マリンローディングアームを移動可能なものとし、流体物の荷役をするときにマリンローディングアームを作業領域へと移動させて荷役するようにしているため、流体物を荷役しないときには他の作業の支障にならない場所に移動させることができる。そのため、たとえば比較的小さい港であっても、他の作業への影響を抑制しつつ、流体物の荷役を行うことができる。しかも、前記マリンローディングアームのアーム用基礎が周囲から独立して設けられているため、前記マリンローディングアームの耐震性を確保することができ、前記マリンローディングアームを導入することが可能となる。
【0030】
前記バースで軌道走行式荷役機械によって船舶に対して固体物の荷役をする工程をさらに備え、前記軌道走行式荷役機械の軌道用基礎と、前記アーム用基礎とが独立して設けられているとよい。軌道走行式荷役機械による固体物の荷役をする工程をさらに備えることで、一つのバースで固体物の荷役作業と流体物の荷役作業とを行うことができる。前記軌道走行式荷役機械の軌道用基礎と前記アーム用基礎とが独立して設けられることで、前記マリンローディングアームの耐震性確保の確実性が向上できる。
【0031】
前記アーム用基礎が前記バースにおける岸壁から独立して設けられているとよい。このようにすることで、前記マリンローディングアームの耐震性確保の確実性がより向上できる。
【0032】
前記作業領域の外に前記マリンローディングアームの待機領域を設け、前記マリンローディングアームが、前記固体物の荷役をする工程において前記待機場所で待機するとよい。このようにすることで、固体物の荷役作業の支障にならないようにすることができる。
【0033】
前記作業領域が前記軌道走行式荷役機械の移動経路上に設けられているとよい。このようにすることで、双方の荷役機械を配置するための面積を抑制することができる。
【0034】
前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の下を移動し、又は前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアームの上を移動するとよい。このようにすることで、効率的な荷役作業を行うことができる。
【0035】
前記マリンローディングアームのアーム部が屈曲可能であり、前記アーム部が屈曲した状態で前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の下を通過し、又は前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアームの上を通過するとよい。マリンローディングアームのアーム部が屈曲することで、前記マリンローディングアームと前記軌道走行式荷役機械とが接触することを抑制できる。
【0036】
前記マリンローディングアームのアーム部が水平方向、鉛直方向及びアーム部の軸回り方向の少なくとも一方向に回転可能であり、前記アーム部が前記軌道走行式荷役機械と接触しないように回転して前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の下を移動し、又は前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアームの上を移動するとよい。前記マリンローディングアームのアーム部が前記軌道走行式荷役機械と接触しないように回転することで、前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の下を容易に通過でき、前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を容易に通過できる。
【0037】
前記アーム用基礎が、杭及び矢板の少なくとも一方を有するものであるとよい。このようにすることで、高い耐震性を有するアーム用基礎を設けることができる。
【0038】
前記マリンローディングアームが、タイヤ及びクローラの少なくとも一方と、内燃機関及びモータの少なくとも一方とを有し、自走可能な走行体に配設されているとよい。このようにすることで、前記マリンローディングアームが作業領域外と作業領域とを容易に移動できる。
【0039】
本発明のさらに別の一態様である港湾施設は、作業領域外と作業領域とを地上で移動可能であり、前記作業領域において船舶に対して流体物の荷役をするためのマリンローディングアームと、前記作業領域で前記マリンローディングアームを支持するアーム用基礎とが設けられているバースを備え、前記アーム用基礎が周囲から独立して設けられている。
【0040】
当該港湾施設は、マリンローディングアームを移動可能なものとし、流体物の荷役をするときに前記マリンローディングアームを作業領域へ移動させて荷役をし、流体物を荷役しないときには他の作業の支障にならない場所に移動させることができる。そのため、例えば、比較的小さい港であっても、他の作業への影響を抑制しつつ、流体物の荷役を行うことができる。しかも、前記マリンローディングアームのアーム用基礎が周囲から独立して設けられているため、前記マリンローディングアームの耐震性を確保することができ、前記マリンローディングアームを導入することが可能となる。
【0041】
船舶に対して固体物の荷役をするための軌道走行式荷役機械をさらに備え、この軌道走行式荷役機械を支持する軌道用基礎と、前記アーム用基礎とが独立して設けられているとよい。固体物の荷役をするための軌道走行式荷役機械をさらに備えることで、一つのバースで固体物の荷役作業と流体物の荷役作業とを行うことができる。しかも、前記軌道走行式荷役機械の軌道用基礎と前記アーム用基礎とが独立して設けられることで、前記マリンローディングアームの耐震性確保の確実性が向上できる。
【0042】
前記アーム用基礎が前記バースにおける岸壁から独立して設けられているとよい。このようにすることで、前記マリンローディングアームの耐震性確保の確実性がより向上できる。
【0043】
前記作業領域の外に前記マリンローディングアームの待機領域を設け、前記軌道走行式荷役機械の稼動中に、前記マリンローディングアームが前記待機領域に配置されるようにするとよい。このようにすることで、固体物の荷役作業の支障にならないようにすることができる。
【0044】
前記作業領域が前記軌道走行式荷役機械の移動経路上に設けられているとよい。このようにすることで、双方の荷役機械を配置するための面積を抑制することができる。
【0045】
前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の下を移動可能、又は前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアームの上を移動可能であるとよい。このようにすることで、効率的な荷役作業を行うことができる。
【0046】
前記マリンローディングアームのアーム部が、相対的に移動する前記軌道走行式荷役機械と接触しないように屈曲可能であるとよい。マリンローディングアームのアーム部が前記軌道走行式荷役機械と接触しないように屈曲することで、前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の下を容易に通過でき、前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を容易に通過できる。
【0047】
前記マリンローディングアームのアーム部が、相対的に移動する前記軌道走行式荷役機械と接触しないように水平方向、鉛直方向及びアーム部の軸回り方向の少なくとも一方向に回転可能であるとよい。マリンローディングアームのアーム部が前記軌道走行式荷役機械と接触しないように回転することで、前記マリンローディングアームが前記軌道走行式荷役機械の下を容易に通過でき、前記軌道走行式荷役機械が前記マリンローディングアーム上を容易に通過できる。
【0048】
前記アーム用基礎が、杭及び矢板の少なくとも一方を有するものであるとよい。このようにすることで、高い耐震性を有するアーム用基礎を設けることができる。
【0049】
前記マリンローディングアームが、タイヤ及びクローラの少なくとも一方と、内燃機関及びモータの少なくとも一方とを有し、自走可能な走行体に配設されているとよい。このようにすることで、前記マリンローディングアームが作業領域外と作業領域とを容易に移動できる。
【0050】
なお、「バース」とは、着岸した船舶が停泊する水域と、この水域に隣接する岸(陸)の一定の領域とを含む。また、ある基礎と他の基礎とが「独立している」とは、双方の基礎が構造力学的に分断されている状態を意味する。
【0051】
[発明を実施するための形態の詳細]
以下、本発明について詳説する。
【0052】
<第一実施形態>
図1及び図2に本発明の一実施形態である港湾施設を示す。
【0053】
〔港湾施設〕
当該港湾施設1は、船舶に対して固体物を荷役するための軌道走行式荷役機械と、船舶に対して流体物を荷役するためのマリンローディングアーム3と、前記軌道走行式荷役機械を支持するための軌道用基礎21と、前記マリンローディングアーム3を支持するためのアーム用基礎31とを有するバースB1を備え、前記軌道用基礎21と前記アーム用基礎31とが独立して設けられている。なお、図では、船舶として固体物が荷役される固体物貨物船Sを例示している。
【0054】
マリンローディングアーム(Marine Loading Arm:以下、「MLA」ともいう)3としては、特に限定されるものではなく、FBMA(Fully Balanced Marine Arm)型、RCMA(Rotary Counterweighted Marine Arm)型、DCMA(Double Counterweighted Marine Arm)型などが挙げられる。図1及び図2のMLA3は、固定式のFBMA型である。
【0055】
MLA3は、アーム用基礎31上に固定されているベースライザ32と、このベースライザ32に配されるアーム部33とを有する。本実施形態のアーム部33は屈曲可能である。具体的には、アーム部33は、インボードアーム331と、このインボードアーム331に対して屈曲可能なアウトボードアーム332とを含む。アウトボードアーム332は、船舶(流体物貨物船)の流体用開口部と脱着可能なジョイント(不図示)を有する。
【0056】
また、本実施形態のアーム部33は、回転可能である。具体的には、インボードアーム331は、ベースライザ32を中心として水平方向に回転することができ(左右方向の回転)、かつ鉛直方向、すなわち、ベースライザ32の軸方向に回転することができ(上下方向の回転)。
【0057】
バースB1に配設されるMLA3の数としては、特に限定されるものではなく、一又は複数であってもよい。図1及び図2では、一基のMLA3が配置されている。
【0058】
軌道走行式荷役機械としては、特に限定されるものではなく、アンローダ、クレーン等が挙げられる。図1及び図2の軌道走行式荷役機械は、アンローダ(Unloader)2である。
【0059】
バースB1に配設されるアンローダ2の数としては、特に限定されるものではなく、一又は複数であってもよい。図1及び図2では、二基のアンローダ2が配置されている。
【0060】
アンローダ2は、軌道22上を移動可能である。アンローダ2は、移動することで、固体物貨物船2の任意の箇所から固体物の荷役をすることができる。アンローダ2は、アンローダアーム部23と、このアンローダアーム部23を支持する本体24と、この本体24を支持する脚部25とを備え、この脚部25が下端に車輪(不図示)を有する。この車輪が軌道22上を転動することでアンローダ2が移動する。
【0061】
軌道22は、一対の軌道用基礎21それぞれの上に配置されている。本実施形態では、岸壁が一方の軌道用基礎21を兼ねている。この軌道用基礎21は鉄筋コンクリート製であり、鋼製の矢板4上に設けられている。他方の軌道用基礎21は、一方の軌道用基礎21と平行に離間して設けられている。一方の軌道用基礎21(岸壁)には、船舶が接岸するための防舷材9が配設されている。他方の軌道用基礎21の近傍には防潮堤10が配設されている。
【0062】
MLA3のアーム用基礎31は、軌道用基礎21と独立して設けられている。本実施形態では、アーム用基礎31は、一対の軌道用基礎21間でそれぞれに離間して配置されている。つまり、アーム用基礎31はアンローダ2の移動経路M上に配置されている。すなわち、MLA3はアンローダ2の移動経路M上に配置されている。アーム用基礎31は岸壁(一方の軌道用基礎21)から独立して設けられている。
【0063】
当該港湾施設1は、MLA3のアーム用基礎31が軌道用基礎21から独立して設けられているため、十分な耐震性を確保することができる。
【0064】
アーム用基礎31は、地表で略水平に配設され、MLA3のベースライザ32を支持するための基礎躯体311と、この基礎躯体311を支持する複数の杭312とを含む。複数の杭312は、地盤の支持層まで打設されたものであり、鉄筋コンクリート製の基礎躯体311を補強するためのものである。
【0065】
アンローダ2は、その移動経路M上に配置されているMLA3上を通過可能である。すなわち、アンローダ2は、脚部25でMLA3を跨ぐようにして移動する。このようにすることで、アンローダ2が移動経路M内を自由に移動でき、効率的な固体物の荷役作業を行うことができる。
【0066】
本実施形態のアーム部33は、屈曲可能かつ回転可能であるため、アンローダ2がMLA3上を通過する際には、インボードアーム331及びアウトボードアーム332を折りたたんで重ね合わせ、さらに略水平かつ軌道22と略平行になるようにインボードアーム331を水平方向に回転させる。このようにすることで、アンローダ2がMLA3の上を通過する際、アンローダ2とMLA3とが接触することを防止できる。
【0067】
〔荷役方法〕
当該荷役方法は、港内の一のバースB1に着岸した船舶に対して、この船舶の積載物に応じて荷役機械を使い分けて荷役を行う荷役方法であって、前記バースB1でアンローダ2(軌道走行式荷役機械)によって固体物の荷役をする工程と、前記バースB1でマリンローディングアーム3によって流体物の荷役をする工程とを備え、前記バースB1用に、前記マリンローディングアーム3のアーム用基礎31と、前記アンローダ2の軌道用基礎21とが互いに独立して設けられている。固体物荷役工程と流体物荷役工程とは、その順序を問わない。
【0068】
当該荷役方法は、港内の一のバースB1に着岸した船舶に対して、この船舶の積載物に応じて荷役を行う。すなわち、船舶の積載物が、コンテナ、バラ物貨物などの固体物であるか、液体、気体などの流体物であるかを問わず、いずれの積載物を積載する船舶であっても、その積載物の荷役を一つの(同一の)バースB1で行う。このバースB1は、アンローダ2とMLA3とを有し、アンローダ2の軌道用基礎21とMLA3のアーム用基礎31とは、互いに接続されることなく、独立して設けられている。このため、バースB1におけるMLA3は耐震性が確保されている。
【0069】
(固体物荷役工程)
固体物荷役工程では、バースB1でアンローダ2によって固体物の荷役をする。つまり、バースB1に固体物を積載する固体物貨物船(例えば、バルカー等)Sが着岸するとアンローダ2による荷役作業が行われる。バースB1には、アンローダ2の移動経路M上にMLA3が設置されているが、アンローダ2はMLA3上を通過することができるため、アンローダ2は固体物貨物船Sの任意の箇所から固体物を荷役することができる。この工程において、MLA3は、上述したように、アンローダ2と接触しないように、アーム部33を屈曲させるとともに水平方向に回転させ、待機姿勢となる。アンローダ2はこの待機姿勢のMLA3の上を通過した後、又は待機姿勢のMLA3の上で(すなわち、MLA3を跨いだ状態で)荷役を行う。
【0070】
(流体物荷役工程)
流体物荷役工程では、同一のバースB1でマリンローディングアーム3によって流体物の荷役をする。つまり、バースB1に流体物を積載する流体物貨物船(タンカー)が着岸するとMLA3による荷役作業が行われる。流体物荷役工程では、図3で示すように、MLA3はアーム部33を海側に向けて回転し、伸長して作業姿勢となる。MLA3は、この作業姿勢で先端を荷役物貨物船と接続され、流体物貨物船に対して流体物を荷役する。流体物荷役工程では、アンローダ2はMLA3から離間した位置に移動して待機していることが好ましい。例えば、流体物荷役工程では、アンローダ2は軌道22の両端(移動領域の最外)に位置する。なお、図3では、船舶及びアンローダ2の図を省略している。MLA3が荷役する流体物は、特に限定されるものではなく、例えば、液化天然ガス、液化水素、液体窒素、液化アンモニアなどが挙げられる。
【0071】
<利点>
当該荷役方法は、一つのバースB1にアンローダ2とMLA3とを備える港湾施設1で行われるため、二つのバースを設けることができないような比較的小さな港であっても、一つのバースB1で固体物貨物船Sに対する固体物の荷役と、流体物貨物船に対する流体物の荷役とを行うことができる。当該港湾施設1は、バースB1に設けられているアンローダ2の軌道用基礎21とMLA3のアーム用基礎31とが互いに独立して設けられているため、MLA3の耐震性を確保することができる。
【0072】
また、MLA3がアンローダ2の一対の軌道22の間に配置されるとともに、アーム用基礎31が一対の軌道用基礎21の間に設けられているので、MLA3及びアンローダ2それぞれを配置するための面積を抑制しつつ、両者の基礎を独立させることができる。
【0073】
<第二実施形態>
図4及び図5に本発明の別の一実施形態である港湾施設を示す。なお、上述の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
〔港湾施設〕
当該港湾施設11は、作業領域5外と作業領域5とを地上で移動可能であり、前記作業領域5において船舶に対して流体物の荷役をするためのマリンローディングアーム6と、前記作業領域5で前記マリンローディングアーム6を支持するアーム用基礎61とが設けられているバースB2を備え、前記アーム用基礎61が周囲から独立して設けられている。すなわち、アーム用基礎61は、他の構造物、設備の基礎などと接続されることなく、独立して設けられている。
【0075】
本実施形態のバースB2は、作業領域5を有し、この作業領域5外にMLA6が待機する待機領域7が設けられている。なお、図4及び図5では、いずれもMLA6が待機領域7で待機している状態を示している。
【0076】
本実施形態のMLA6は、ベースライザ62とアーム部63とを有し、このアーム部63は、インボードアーム631とアウトボードアーム632とを含む。また、このMLA6のアーム部63は、屈曲可能かつ回転可能である。すなわち、MLA6は、第一実施形態のMLA3と同様に待機姿勢と作業姿勢とをとることができる。
【0077】
MLA6は、タイヤ81と内燃機関(不図示)とを有し、自走可能な走行体8に配設されている。すなわち、MLA6は移動式かつ自走式である。MLA6は、作業領域5と待機領域7との間を走行する。走行体8の走行は、走行体8に搭乗する操縦者によるものであってもよいし、遠隔操作によるのであってもよい。走行体8は、タイヤ81に換えて又はタイヤ81と共にクローラを有するものであってもよい。また、走行体8は、内燃機関に換えて又は内燃機関と共にモータ(電動)を有してもよい。
【0078】
本実施形態では、MLA6が走行体8に配設されたものなっているが、これらをMLA6本体と走行体8とを有する自走式マリンローディングアームということもできる。
【0079】
バースB2に配置されるMLA6の数としては、特に限定されるものではなく、一又は複数であってもよい。図4及び図5では、一基のMLA6が配置されている。
【0080】
MLA6のアーム用基礎61は、周囲と独立して設けられている。バースには、防潮堤、管理塔、倉庫、積荷を搬送するための搬送設備、これらの施設、設備などにアクセスするための道路などが設けられていることがある。アーム用基礎61は、これらの構造物、設備などの基礎に接続されることなく独立して設けられている。このため、アーム用基礎61及びMLA6は耐震性を確保することが可能となっている。また、本実施形態のアーム用基礎61は、岸壁から独立して設けられている。
【0081】
アーム用基礎61は、鉄筋コンクリート製の基礎躯体611と、この基礎躯体611を支持する複数の杭612とを有する。杭612は地盤の支持層まで届くように打設されている。アーム用基礎61は、作業領域5に配設される。すなわち、アーム用基礎61の基礎躯体611が作業領域5を区画している。
【0082】
本実施形態の港湾施設11は、バースB2に、船舶に対して固体物の荷役をするためのアンローダ2(軌道走行式荷役機械)と、アンローダ2を支持し、軌道22が付設されている軌道用基礎21とをさらに備える。この軌道用基礎21とアーム用基礎61とは、独立して設けられている。
【0083】
MLA6は、アンローダ2の稼動中、すなわち、アンローダ2が固体物の荷役をしている際には、作業領域5外の待機領域7で待機する。このため、アンローダ2による荷役作業に支障をきたさない。
【0084】
一対の軌道用基礎21の一方は、岸壁を兼ねている。他方の軌道用基礎21は、一方の軌道用基礎21と平行に離間して設けられている。アーム用基礎61は、アンローダ2の移動経路M上に設けられている。具体的には、アーム用基礎61は、一対の軌道用基礎21間でそれぞれに離間して配設されている。
【0085】
アンローダ2はMLA6上を通過することができ、MLA6はアンローダ2下を通過することができる。すなわち、アンローダ2とMLA6とは相対的に移動することができる。このため、バースB2で効率的に荷役を行うことができる。
【0086】
MLA6は、アンローダ2との相対的な移動をする際に、インボードアーム631及びアウトボードアーム632を折りたたんで重ね合わせ、さらに略水平かつ進行方向と略平行になるようにインボードアーム631を回転させることができる。このようにすることで、相対的に移動するアンローダ2とMLA6とが接触することを防止できる。
【0087】
〔荷役方法〕
当該荷役方法は、港内の一のバースB2に着岸した船舶に対して荷役を行う荷役方法であって、前記バースB2でマリンローディングアーム6によって前記船舶に対して流体物の荷役をする工程を備え、前記流体物の荷役をする作業領域5に前記マリンローディングアーム6を支持するアーム用基礎61が周囲から独立して設けられ、前記マリンローディングアーム6を前記作業領域5外から前記作業領域5に地上を移動させて前記流体物の荷役をする。
【0088】
当該荷役方法は、作業領域5外に設けられた待機領域7から作業領域5にMLA6が移動して流体物の荷役を行う。この作業領域5にあるアーム用基礎61は、周囲から独立して設けられているため、MLA6の耐震性が確保されている。
【0089】
(流体物荷役工程)
流体物荷役工程では、バースB2でマリンローディングアーム3によって船舶に対して流体物の荷役をする。つまり、バースB2に流体物を積載する流体物貨物船が着岸するとMLA6による荷役作業が行われる。流体物荷役工程では、アンローダ2はMLA3から離間した位置に移動して待機する。具体的には、アンローダ2は軌道22の両端に位置する。待機領域7で待機するMLA6は、第一実施形態に記載したように、アンローダ2と接触しないように、アーム部63を屈曲させるとともに水平方向に回転させ、待機姿勢となっている。待機姿勢のMLA6は、走行体8によってアンローダ2の下を通過することで待機領域7から作業領域5に移動する。走行体8は、作業領域5において走行体8に配設されているアウトリガー(不図示)をアーム用基礎61の基礎躯体611に接地する。これにより、走行体8及びMLA6の姿勢が固定され、意図せずに移動することが防止される。そして、MLA6は、第一実施形態と同様に、作業領域5においてアーム部63を海側に向けて回転し、伸長して作業姿勢となる。MLA6はこの作業姿勢で先端を流体物貨物船と接続し、流体物の荷役を開始する。流体物荷役工程が終了すると、MLA6は待機姿勢となり、走行体8は、上記アウトリガーを基礎躯体611から離間させて収容し、アンローダ2の下を通過して待機領域7に移動する。
【0090】
(固体物荷役工程)
本実施形態の荷役方法は、固体物荷役工程をさらに備える。固体物荷役工程では、バースB2でアンローダ2によって固体物の荷役をする。つまり、バースB2に固体物を積載する固体物貨物船Sが着岸するとアンローダ2による荷役作業が行われる。アンローダ2が軌道の両端から軌道中央方向に移動する際、待機姿勢で移動中又は停止しているMLA6の上を通過してもよい。また、アンローダ2は、荷役作業中に待機姿勢で移動中又は停止しているMLA6の上を通過してもよく、荷役作業後に待機姿勢で移動中又は停止しているMLA6の上を通過して軌道の両端に移動してもよい。MLA6は、アンローダ2が荷役作業を開始する前にアンローダ2の下を通過してもよく、アンローダ2が荷役作業を開始した後(荷役作業中)にアンローダ2の下を通過してもよい。また、MLA6は、必要があるならば、作業領域5内で待機していてもよい。
【0091】
<利点>
当該港湾施設11及び当該荷役方法は、MLA6を地上を移動可能なものとし、流体物の荷役をするときにMLA6を作業領域5へと移動させ、流体物を荷役しないときには他の作業の支障にならない作業領域5外(待機領域7)に移動させるため、例えば比較的小さい港であっても、他の作業への影響を抑制しつつ、流体物の荷役を行うことができる。しかも、MLA6の作業領域5に相当する位置にアーム用基礎61が周囲から独立して設けられているため、MLA6の耐震性を確保できる。このため、MLA6を導入し、流体の荷役を行うことが可能となる。
【0092】
また、バースB2にアンローダ2をさらに備えることで、船舶の積載する貨物の種類に応じてMLA6とアンローダ2とを使い分け、一つのバースB2で固体物貨物船Sに対する固体物の荷役と、流体物貨物船に対する流体物の荷役とを行うことができ、二つのバースを設けることができない比較的小さな港などでも固体物の荷役と流体物の荷役とを一つのバースB2で行うことができる。
【0093】
また、MLA6の作業領域5がアンローダ2の一対の軌道22の間に配置されると共に、作業領域5に対応するアーム用基礎61が一対の軌道用基礎21の間に設けられているので、MLA6及びアンローダ2を配置する面積を抑制しつつ、それぞれの基礎を独立したものとすることができる。
【0094】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0095】
軌道用基礎は、岸壁から独立していてもよい。すなわち、バースに独立した岸壁を設け、この岸壁から一方(海側)の軌道用基礎が離間して配設されていてもよい。また、軌道用基礎は、二つである必要はなく、一又は三以上であってもよい。
【0096】
軌道走行式荷役機械の軌道は、二本に限定されるものでなく、三本以上としてもよい。
【0097】
アーム用基礎は、軌道走行式荷役機械の移動経路上に配置されれば、軌道走行式荷役機械の一対の軌道用基礎間に配置されることに限定されない。例えば、アンローダ及びその軌道用基礎が上述した実施形態よりも内陸側にあって、岸壁と、この岸壁から離間して配置されている一方の(海側の)軌道用基礎との間にアーム用基礎及びマリンローディングアームが配置されてもよい。さらには、アーム用基礎は、軌道走行式荷役機械の移動経路上に配置されていなくてもよい。
【0098】
アーム用基礎は、マリンローディングアームを岸壁に近接して配置する場合には、杭の代わりに矢板が打設されて補強されたものであってもよい。
【0099】
マリンローディングアームは、軌道走行式荷役機械との接触を回避できるのであれば、屈曲及び回転のいずれか一方が可能なものであってもよく、屈曲も回転もしないものであってもよい。また、マリンローディングアームは、アーム部がアームの軸回りに回転し、それにより待機姿勢と作業姿勢とを切り替えるものであってもよい。
【0100】
マリンローディングアームは、アーム部に代えて又はアーム部と共に、ベースライザが屈曲及びベースライザの軸方向に回転の少なくとも一方を可能として、軌道走行式荷役機械との接触を回避できるものであってもよい。
【0101】
第二実施形態において、軌道走行式荷役機械(アンローダ)は設けられていなくてもよい。
第二実施形態において、マリンローディングアームは、待機領域から作業領域に移動する際、或いは作業領域から待機領域に移動する際に、軌道走行式荷役機械の下を通過する代わりに、軌道走行式荷役機械を迂回してもよい。この場合、マリンローディングアームはアーム部が屈曲及び回転できなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の荷役方法及び港湾施設は、制約のある港でも効率的に荷役を行うことができるため、様々な港湾やその港湾における荷役作業に適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1,11 港湾施設
2 アンローダ(軌道走行式荷役機械)
21 軌道用基礎
22 軌道
23 アンローダアーム部
24 本体
25 脚部
3,6 マリンローディングアーム(MLA)
31,61 アーム用基礎
311,611 基礎躯体
312,612 杭
32,62 ベースライザ
33,63 アーム部
331,631 インボードアーム
332,632 アウトボードアーム
4 矢板
5 作業領域
7 待機領域
8 走行体
81 タイヤ
9 防舷材
10 防潮堤
B1,B2 バース
M アンローダの移動経路
S 固体物貨物線(船舶)
図1
図2
図3
図4
図5