IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新潟精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図1
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図2
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図3
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図4
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図5
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図6
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図7
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図8
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図9
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図10
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図11
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図12
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図13
  • 特開-異形すみ肉溶接用ゲージ 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065930
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】異形すみ肉溶接用ゲージ
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/20 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G01B3/20 E
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175033
(22)【出願日】2022-10-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年10月25日頒布 鉄骨工事運営委員会調査研究報告会「鉄骨工事関連指針類の改定に向けて」第3.2-(1)頁~第3.2-(7)頁、一般社団法人日本建築学会
(71)【出願人】
【識別番号】391011836
【氏名又は名称】新潟精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092691
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 勇治
(74)【代理人】
【識別番号】100199543
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 利行
【テーマコード(参考)】
2F061
【Fターム(参考)】
2F061CC37
2F061JJ02
2F061RR01
2F061RR05
2F061RR07
2F061RR26
(57)【要約】
【課題】溶接用ゲージの副尺体を摺動操作することにより開先深さが各種に異なる異形すみ肉溶接ののど厚を測定することができる。
【解決手段】ゲージ本体1には開先深さ目盛Dが形成され、開先深さ目盛は開先角度θの頂点θoからフランジ材Fの板面Fに直交して延びる延長線Fと、ウエブ材Wの板面Wに当接される設定当接面3aの設定点Sからウエブ材の板面に直交して延びる線分Wとの交点Gを零目盛として、この交点からウエブ材の板面に直交して延びる方向の長さ目盛とされ、本尺体2には異形すみ肉用の実際のど厚目盛αを読み取るための読取指標Rが形成され、副尺体3には開先深さを設定するための設定指標Sが形成されてなる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ材の板面にウエブ材の板面が直交状に突合配置され、該フランジ材の板面に突き合うウエブ材の端面に開先が形成され、該ウエブ材の端面を該フランジ材の板面に溶接する異形すみ肉溶接であって、該異形すみ肉溶接のすみ肉の実際のど厚を測定するための溶接用ゲージにおいて、上記互いに隣り合うフランジ材の板面及び上記ウエブ材の板面間に配置され、該フランジ材の板面に当接させる基準当接面が形成された板状のゲージ本体と、上記すみ肉の理論のど厚は、上記開先の開先角度の頂点たる開先面の始端点としての基準点と、該開先面の終端点を通る上記フランジ材の板面との交角を該開先角度と同角度とする線分に引いた該頂点からの垂線の足との間の距離とされ、該ゲージ本体に該開先角度の頂点から上記垂線の延びる方向に摺動自在に配置され、先端部に上記すみ肉の表面に当接して実際のど厚を測定するための測定点を有する本尺体と、加えて、上記ゲージ本体に上記ウエブ材の板面と直交する方向に摺動自在に配置され、上記ウエブ材の板面に当接して開先深さを設定するための設定点を有する設定当接面が形成され、上記ウエブ材の端面に形成された開先の開先深さを設定するための副尺体を備えてなり、上記ゲージ本体には異形すみ肉用ののど厚目盛が形成され、該のど厚目盛は上記開先の開先角度の頂点としての基準点を零目盛として該開先角度の頂点から上記垂線が延びる方向の長さ目盛とされ、上記ゲージ本体には開先深さ目盛が形成され、該開先深さ目盛は上記開先角度の頂点から上記フランジ材の板面に直交して延びる延長線と、上記ウエブ材の板面に当接される設定当接面の設定点から上記ウエブ材の板面に直交して延びる線分との交点を零目盛として該交点から該ウエブ材の板面に直交して延びる方向の長さ目盛とされ、上記本尺体には該異形すみ肉用の実際のど厚目盛を読み取るための読取指標が形成され、上記副尺体には該開先深さを設定するための設定指標が形成され、上記開先深さの変更に対応して上記副尺体を摺動操作するように構成したこと特徴とする異形すみ肉溶接用ゲージ。
【請求項2】
上記ゲージ本体に上記フランジ材の板面及び上記ウエブ材の板面にそれぞれ当接させる互いに直交する一対の当接面が形成され、該一対の当接面は該各当接面の各延長線の交点を頂点とする2等分線と上記開先の開先角度の頂点から延びる上記垂線とが合致する位置にそれぞれ形成され、上記ゲージ本体にすみ肉用ののど厚目盛が形成され、該すみ肉用ののど厚目盛は上記頂点としての基準点を零目盛として上記垂線が延びる方向の長さ目盛とされ、上記本尺体に上記すみ肉用ののど厚目盛を読み取るための読取指標が形成され、上記本尺体の上記測定点と反対側の後端部に上記すみ肉の表面に当接して上記すみ肉の実際のど厚を測定するための測定点を備えてなることを特徴とする請求項1記載の異形すみ肉溶接用ゲージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄骨製作や鉄骨工事における異形すみ肉溶接ののど厚を測定する際に用いられる異形すみ肉溶接用ゲージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のすみ肉溶接のすみ肉ののど厚を測定するための溶接用ゲージとして、互いに直交状に隣り合うフランジ材の板面及び上記ウエブ材の板面間に配置され、フランジ材の板面及び上記ウエブ材の板面にそれぞれ当接させる互いに直交する一対の当接面が形成されたゲージ本体と、ゲージ本体に上記一対の各当接面の各延長線の交点を頂点とする2等分線の延びる方向に摺動自在に配置された本尺体とを備えてなり、上記のど厚は上記一対の各当接面の各延長線の交点としての基準点とすみ肉の表面との間の距離とされ、ゲージ本体に基準点を零目盛りとして上記2等分線の延びる方向にのど厚目盛が形成され、本尺体に実際のど厚目盛を読み取るための読取指標が形成された構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭34-4635号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来構造の場合、例えば、図14に示す如く、この溶接用ゲージは上記ゲージ本体1に上記フランジ材Fの板面F及び上記ウエブ材Wの板面Wにそれぞれ当接させる互いに直交する図外の一対の当接面が形成された構造であるから、フランジ材Fの板面Fに突き合うウエブ材Wの端面Wに開先が形成され、開先を有するウエブ材Wの端面Wをフランジ材Fの板面Fに直交状に溶接するいわゆる異形すみ肉溶接における実際のど厚αは測定することはできないことになる。
【0005】
ここに、「一般社団法人日本建設業連合会・鉄骨溶接標準(2018年7月1日版)・すみ肉溶接の開先標準」によれば、開先角度θ及び開先深さDにおけるのど厚αを測定するに当たり、ウエブ材Wの板厚T、開先角度θ及び開先深さDの相互関係は、下記[表1]のとおりと定められている。
【0006】
【表1】
【0007】
又、例えば、上記図14の如く、上記のど厚αは上記開先の開先角度θの頂点θたる開先面Kの始端点K(所謂、ルート)としての基準点Oと、開先面Kの終端点Kを通る上記フランジ材Fの板面Fとの交角を開先角度θと同角度とする線分Lに引いた頂点θからの垂線Hの足Hとの間の距離とされるから、図14に示す、開先角度θが60°の場合、ウエブ材Wの板厚Tが40mmのとき開先深さDは12.0mm、又、ウエブ材Wの板厚Tが19mmのとき開先深さDは5.5mmとされるところ、開先角度θが60°、開先深さDが12.0mm用の溶接用ゲージEを製作し、この溶接用ゲージEを用いて、開先深さDが5.5mmののど厚αを測定することはできず、すなわち、同じ開先角度θの開先面Kであったとしても、開先深さDが開先深さDから開先深さDに変化すると開先角度θの頂点θを通る垂線Hの位置が垂線HL1から垂線HL2に開先深さDと開先深さDの差分(D-D)の位置ずれが生じ、このため、開先角度θが同じ角度であって、開先深さDが12.0mm用の溶接用ゲージEでは、開先深さDが5.5mmののど厚αを測定することはできず、このため、開先角度θが同じ角度であっても、開先深さDの異なるのど厚αを測定するための専用の溶接用ゲージEを製作しなければならず、開先角度θ及び開先深さD毎に数種類の溶接用ゲージEを製作する必要があり、それだけ、溶接用ゲージEの管理が複雑化し、のど厚測定の測定作業性が低下したり、測定の人為的誤差が生じたりすることがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、フランジ材の板面にウエブ材の板面が直交状に突合配置され、該フランジ材の板面に突き合うウエブ材の端面に開先が形成され、該ウエブ材の端面を該フランジ材の板面に溶接する異形すみ肉溶接であって、該異形すみ肉溶接のすみ肉の実際のど厚を測定するための溶接用ゲージにおいて、上記互いに隣り合うフランジ材の板面及び上記ウエブ材の板面間に配置され、該フランジ材の板面に当接させる基準当接面が形成された板状のゲージ本体と、上記すみ肉の理論のど厚は、上記開先の開先角度の頂点たる開先面の始端点としての基準点と、該開先面の終端点を通る上記フランジ材の板面との交角を該開先角度と同角度とする線分に引いた該頂点からの垂線の足との間の距離とされ、該ゲージ本体に該開先角度の頂点から上記垂線の延びる方向に摺動自在に配置され、先端部に上記すみ肉の表面に当接して実際のど厚を測定するための測定点を有する本尺体と、加えて、上記ゲージ本体に上記ウエブ材の板面と直交する方向に摺動自在に配置され、上記ウエブ材の板面に当接して開先深さを設定するための設定点を有する設定当接面が形成され、上記ウエブ材の端面に形成された開先の開先深さを設定するための副尺体を備えてなり、上記ゲージ本体には異形すみ肉用ののど厚目盛が形成され、該のど厚目盛は上記開先の開先角度の頂点としての基準点を零目盛として該開先角度の頂点から上記垂線が延びる方向の長さ目盛とされ、上記ゲージ本体には開先深さ目盛が形成され、該開先深さ目盛は上記開先角度の頂点から上記フランジ材の板面に直交して延びる延長線と、上記ウエブ材の板面に当接される設定当接面の設定点から上記ウエブ材の板面に直交して延びる線分との交点を零目盛として該交点から該ウエブ材の板面に直交して延びる方向の長さ目盛とされ、上記本尺体には該異形すみ肉用の実際のど厚目盛を読み取るための読取指標が形成され、上記副尺体には該開先深さを設定するための設定指標が形成され、上記開先深さの変更に対応して上記副尺体を摺動操作するように構成したこと特徴とする異形すみ肉溶接用ゲージにある。
【0009】
又、請求項2記載の発明は、上記ゲージ本体に上記フランジ材の板面及び上記ウエブ材の板面にそれぞれ当接させる互いに直交する一対の当接面が形成され、該一対の当接面は該各当接面の各延長線の交点を頂点とする2等分線と上記開先の開先角度の頂点から延びる上記垂線とが合致する位置にそれぞれ形成され、上記ゲージ本体にすみ肉用ののど厚目盛が形成され、該すみ肉用ののど厚目盛は上記頂点としての基準点を零目盛として上記垂線が延びる方向の長さ目盛とされ、上記本尺体に上記すみ肉用ののど厚目盛を読み取るための読取指標が形成され、上記本尺体の上記測定点と反対側の後端部に上記すみ肉の表面に当接して上記すみ肉の実際のど厚を測定するための測定点を備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、開先角度が同じ開先ののど厚の測定に当たり、その開先角度に応じた溶接用ゲージを製作し、この溶接用ゲージの副尺体を摺動操作することにより開先深さが各種に異なる異形すみ肉溶接ののど厚を測定することができ、開先深さの異なるのど厚を測定するための専用の溶接用ゲージを製作する必要がなくなり、開先角度が同じ場合に開先深さ毎に数種類の溶接用ゲージを製作する必要がなくなり、それだけ、溶接用ゲージの管理が簡素化され、のど厚測定の測定作業性を向上することができ、測定の人為的誤差を防ぐことができ、管理許容差を加味して異形すみ肉溶接の良否判定を正確に行うことができる。
【0011】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記ゲージ本体に上記フランジ材の板面及び上記ウエブ材の板面にそれぞれ当接させる互いに直交する一対の当接面が形成され、一対の当接面は各当接面の各延長線の交点を頂点とする2等分線と上記開先の開先角度の頂点から延びる上記垂線とが合致する位置にそれぞれ形成され、上記ゲージ本体にすみ肉用ののど厚目盛が形成され、すみ肉用ののど厚目盛は上記頂点としての基準点を零目盛として上記垂線が延びる方向の長さ目盛とされ、上記本尺体に上記すみ肉用ののど厚目盛を読み取るための読取指標が形成され、上記本尺体の上記測定点と反対側の後端部に上記すみ肉の表面に当接して上記すみ肉の実際のど厚を測定するための測定点を備えて構成しているから、測定点により開先を取らないすみ肉溶接ののど厚も測定することができ、使用の融通性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の第一形態例の全体正面図である。
図2】本発明の実施の第一形態例の全体側断面図である。
図3】本発明の実施の第一形態例の部分断面図である。
図4】本発明の実施の第一形態例の部分断面図である。
図5】本発明の実施の第一形態例の部分断面図である。
図6】本発明の実施の第一形態例の使用状態の全体説明正面図である。
図7】本発明の実施の第一形態例の使用状態の全体正面図である。
図8】本発明の実施の第一形態例の使用状態の全体正面図である。
図9】本発明の実施の第一形態例の使用状態の全体説明正面図である。
図10】本発明の実施の第二形態例の使用状態の全体説明正面図である。
図11】本発明の実施の第二形態例の使用状態の全体正面図である。
図12】本発明の実施の第二形態例の使用状態の全体正面図である。
図13】本発明の実施の第二形態例の使用状態の全体説明正面図である。
図14】従来構造の使用状態の部分拡大説明正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図13は本発明の実施の形態例を示し、図1乃至図9は本発明の実施の第一形態例、図10乃至図13は本発明の実施の第二形態例である。
【0014】
図1乃至図9の第一形態例にあっては、ウエブ材Wに開先角度θが60°の開先が形成された異形すみ肉溶接ののど厚測定に用いられる開先角度60°用の溶接用ゲージEとなっており、この場合、図1図6図7の如く、フランジ材Fの板面Fにウエブ材Wの板面Wが直交状に突合配置され、フランジ材Fの板面Fに突き合うウエブ材Wの端面Wに開先が形成され、ウエブ材Wの端面Wをフランジ材Fの板面Fに溶接する異形すみ肉溶接であって、この異形すみ肉溶接のすみ肉Mの実際のど厚αを測定するための溶接用ゲージEにおいて、上記互いに隣り合うフランジ材Fの板面F及び上記ウエブ材Wの板面W間に配置され、フランジ材Fの板面Fに当接させる基準当接面1aが形成された板状のゲージ本体1と、上記すみ肉Mの理論のど厚αは、上記開先の開先角度θの頂点θたる開先面Kの始端点K(所謂、ルート)としての基準点Oと、開先面Kの終端点Kを通る上記フランジ材Fの板面Fとの交角を開先角度θと同角度とする線分Lに引いた頂点θからの垂線Hの足H(すなわち、終端点Kを通る上記フランジ材Fの板面Fとの交角を開先角度θと同角度とする線分Lとその線分Lに引いた頂点θからの垂線Hとの交点)との間の距離とされ、ゲージ本体1に開先角度θの頂点θから上記垂線Hの延びる方向に摺動自在に配置され、先端部に上記すみ肉Mの表面Mに当接して実際のど厚αを測定するための測定点Pを有する本尺体2とを備えて構成されている。
【0015】
上記異形すみ肉溶接のすみ肉Mの理論のど厚αは上記開先の開先角度θの頂点θたる開先面Kの始端点K(所謂、ルート)としての基準点Oと、開先面Kの終端点Kを通る上記フランジ材Fの板面Fとの交角を開先角度θと同角度とする線分Lに引いた頂点θからの垂線Hの足H(すなわち、終端点Kを通る上記フランジ材Fの板面Fとの交角を開先角度θと同角度とする線分Lとその線分Lに引いた頂点θからの垂線Hとの交点)との間の距離としたのは、「JISハンドブック40-1溶接I(基本)・2022年1月31日第1版第1刷発・一般財団法人日本規格協会発行・Z3001-1・番号11613」に掲載の「実際に溶接された部分ののど厚。すみ肉溶接の場合は、断面のルートから表面までの最短距離とする。ルート部まで溶込みが届かない場合は、溶融金属の最下部から表面までの最短距離とする。注記・実際ののど厚は、設計のど厚の指示に依存する。」の定義に基づくものである。
【0016】
そして、こののど厚αの定義から、開先角度θ、開先深さD及びのど厚αの関係の一般式は下記[数1]のとおりとなる。
【数1】
【0017】
この場合、図6の如く、上記ゲージ本体1及び本尺体2に加えて、上記ゲージ本体1に上記ウエブ材Wの板面Wと直交する方向に摺動自在に配置され、上記ウエブ材Wの板面Wに当接して開先深さDを設定するための設定点Sを有する設定当接面3aが形成され、上記ウエブ材Wの端面Wに形成された開先の開先深さDを設定するための副尺体3を備えてなる。
【0018】
そして、この場合、図1図6の如く、上記ゲージ本体1には異形すみ肉用ののど厚目盛αが形成され、のど厚目盛αは上記開先の開先角度θの頂点θとしての基準点Oを零目盛として開先角度θの頂点θから上記垂線Hが延びる方向の長さ目盛とされ、上記ゲージ本体1には開先深さ目盛Dが形成され、開先深さ目盛Dは上記開先角度θの頂点θから上記フランジ材Fの板面Fに直交して延びる延長線Fと、上記ウエブ材Wの板面Wに当接される設定当接面3aの設定点Sから上記ウエブ材Wの板面Wに直交して延びる線分Wとの交点Gを零目盛としてこの交点Gからウエブ材Wの板面Wに直交して延びる方向の長さ目盛とされ、上記本尺体2には異形すみ肉用の実際のど厚目盛αを読み取るための読取指標Rが形成され、上記副尺体3には開先深さDを設定するための設定指標Sが形成され、上記開先深さDの変更に対応して上記副尺体3を摺動操作するように構成している。
【0019】
又、この場合、図1図2図3図4図5の如く、上記ゲージ本体1に上記本尺体2をガイド溝1c・1c及び摺動部2a・2aにより摺動自在に設け、板バネ1dにより本尺体2を弾圧保持して不測の摺動を防ぐように構成され、又、この場合、上記副尺体3にゲージ本体1の4個のガイドピン3d・・と摺動面3b・3bとにより摺動自在に設け、副尺体3に長穴3cを形成し、長穴3cを介して回動つまみ3eをゲージ本体1の雌ネジ1eに螺着し、回動つまみ3eの正逆回動により上記副尺体3を位置調節自在に設けている。
【0020】
又、この場合、図9の如く、上記ゲージ本体1に上記フランジ材Fの板面F及び上記ウエブ材Wの板面Wにそれぞれ当接させる互いに直交する一対の当接面1b・1bが形成され、一対の当接面1b・1bは各当接面1b・1bの各延長線F・Wの交点Iを頂点Iとする2等分線Bと上記開先の開先角度θの頂点Iから延びる上記垂線Hとが合致する位置にそれぞれ形成され、上記ゲージ本体1にすみ肉M用ののど厚目盛αが形成され、すみ肉M用ののど厚目盛αは上記頂点Iとしての基準点Oを零目盛として上記垂線Hが延びる方向の長さ目盛とされ、上記本尺体2に上記すみ肉M用ののど厚目盛αを読み取るための読取指標Rが形成され、上記本尺体2の上記測定点Pと反対側の後端部に上記すみ肉Mの表面Mに当接して上記すみ肉Mの実際のど厚αを測定するための測定点Qを備えて構成している。
【0021】
この実施の第一形態例は上記構成であるから、図6図7図8の如く、上記開先角度θが60°用の溶接用ゲージEによりのど厚αを測定するにあたり、先ず、上記開先深さDに対応して上記副尺体3を摺動操作し、開先深さDが12.0mmの場合、図7の如く、副尺体3の設定指標Sを開先深さ目盛Dの12.0mm目盛に合致させ、これにより上記[数1]の一般式に開先角度θを60°、開先深さDを12mmと代入すれば、[数2]の上段の如く、理論のど厚αは20.8mmと求められ、しかして、溶接後のすみ肉Mの実際のど厚αを測定し、理論のど厚20.8mmとの比較により溶接の良否判定を行うことができ、又、上記開先深さDが5.5mmの場合、図8の如く、副尺体3の設定指標Sを開先深さ目盛Dの5.5mm目盛に合致させ、これにより上記[数1]の一般式に開先角度θを60°、開先深さDを5.5mmと代入すれば、[数2]の下段の如く、理論のど厚αは9.5mmと求められ、しかして、溶接後のすみ肉Mの実際のど厚αを測定し、理論のど厚9.5mmとの比較により溶接の良否判定を行うことができる。
【0022】
【数2】
【0023】
しかして、開先角度θが同じ開先ののど厚αの測定に当たり、その開先角度θに応じた溶接用ゲージEを製作し、この場合、開先角度60°用の溶接用ゲージEを製作し、この溶接用ゲージEの副尺体3を摺動操作して開先深さの差分(D-D)の距離をフランジ材Fの板面Fの延びる方向にゲージ本体1を平行移動することにより開先深さDが各種に異なる異形すみ肉溶接ののど厚αを測定することができ、開先深さDの異なるのど厚αを測定するための専用の溶接用ゲージEを製作する必要がなくなり、開先角度θが同じ場合に開先深さD毎に数種類の溶接用ゲージEを製作する必要がなくなり、それだけ、溶接用ゲージEの管理が簡素化され、のど厚α測定の測定作業性を向上することができ、測定の人為的誤差を防ぐことができ、管理許容差を加味して異形すみ肉溶接の良否判定を正確に行うことができる。
【0024】
又、この場合、図9の如く、上記ゲージ本体1に上記フランジ材Fの板面F及び上記ウエブ材Wの板面Wにそれぞれ当接させる互いに直交する一対の当接面1b・1bが形成され、一対の当接面1b・1bは各当接面1b・1bの各延長線F・Wの交点Iを頂点Iとする2等分線B(45°)と上記開先の開先角度θの頂点Iから延びる上記垂線Hとが合致する位置にそれぞれ形成され、上記ゲージ本体1にすみ肉M用ののど厚目盛αが形成され、すみ肉M用ののど厚目盛αは上記頂点Iとしての基準点Oを零目盛として上記垂線Hが延びる方向の長さ目盛とされ、上記本尺体2に上記すみ肉M用ののど厚目盛αを読み取るための読取指標Rが形成され、上記本尺体2の上記測定点Pと反対側の後端部に上記すみ肉Mの表面Mに当接して上記すみ肉Mの実際のど厚αを測定するための測定点Qを備えて構成しているから、測定点Qにより開先を取らないすみ肉溶接ののど厚αも測定することができ、使用の融通性を高めることができる。
【0025】
図10乃至図13は本発明の実施の第二形態例を示し、この場合、ウエブ材Wに開先角度θが50°の開先が形成された異形すみ肉溶接ののど厚測定に用いられる開先角度50°用の溶接用ゲージEとなっており、第一形態例と同一態様部分には同符号を付して説明する。
【0026】
すなわち、第二形態例にあっては、図10図11図12図13の如く、フランジ材Fの板面Fにウエブ材Wの板面Wが直交状に突合配置され、フランジ材Fの板面Fに突き合うウエブ材Wの端面Wに開先が形成され、ウエブ材Wの端面Wをフランジ材Fの板面Fに溶接する異形すみ肉溶接であって、この異形すみ肉溶接のすみ肉Mの実際のど厚αを測定するための溶接用ゲージEにおいて、上記互いに隣り合うフランジ材Fの板面F及び上記ウエブ材Wの板面W間に配置され、フランジ材Fの板面Fに当接させる基準当接面1aが形成された板状のゲージ本体1と、上記すみ肉Mの理論のど厚αは上記開先の開先角度θの頂点θたる開先面Kの始端点K(所謂、ルート)としての基準点Oと、開先面Kの終端点Kを通る上記フランジ材Fの板面Fとの交角を開先角度θと同角度とする線分Lに引いた頂点θからの垂線Hの足H(すなわち、終端点Kを通る上記フランジ材Fの板面Fとの交角を開先角度θと同角度とする線分Lとその線分Lに引いた頂点θからの垂線Hとの交点)との間の距離とされ、ゲージ本体1に開先角度θの頂点θから上記垂線Hの延びる方向に摺動自在に配置され、先端部に上記すみ肉Mの表面Mに当接して実際のど厚αを測定するため測定点Pを有する本尺体2とを備えて構成されている。
【0027】
又、上記異形すみ肉溶接のすみ肉Mの理論のど厚αは上記開先の開先角度θの頂点θたる開先面Kの始端点Kとしての基準点Oと、開先面Kの終端点Kを通る上記フランジ材Fの板面Fとの交角を開先角度θと同角度とする線分Lに引いた頂点θからの垂線Hの足Hとの間の距離としたのは、上記JISハンドブック2022の定義に基づくものである。
【0028】
又、この場合、図10の如く、上記ゲージ本体1及び本尺体2に加えて、上記ゲージ本体1に上記ウエブ材Wの板面Wと直交する方向に摺動自在に配置され、上記ウエブ材Wの板面Wに当接して開先深さDを設定するための設定点Sを有する設定当接面3aが形成され、上記ウエブ材Wの端面Wに形成された開先の開先深さDを設定するための副尺体3を備えてなる。
【0029】
そして、この場合、図10の如く、上記ゲージ本体1には異形すみ肉用ののど厚目盛αが形成され、のど厚目盛αは上記開先の開先角度θの頂点θとしての基準点Oを零目盛として開先角度θの頂点θから上記垂線Hが延びる方向の長さ目盛とされ、上記ゲージ本体1には開先深さ目盛Dが形成され、開先深さ目盛Dは上記開先角度θの頂点θから上記フランジ材Fの板面Fに直交して延びる延長線Fと、上記ウエブ材Wの板面Wに当接される設定当接面3aの設定点Sから上記ウエブ材Wの板面Wに直交して延びる線分Wとの交点Gを零目盛としてこの交点Gからウエブ材Wの板面Wに直交して延びる方向の長さ目盛とされ、上記本尺体2には異形すみ肉用の実際のど厚目盛αを読み取るための読取指標Rが形成され、上記副尺体3には開先深さDを設定するための設定指標Sが形成され、上記開先深さDの変更に対応して上記副尺体3を摺動操作するように構成している。
【0030】
この実施の第二形態例は上記構成であるから、図10図11図12の如く、上記開先角度θが50°用の溶接用ゲージEによりのど厚αを測定するにあたり、先ず、上記開先深さDに対応して上記副尺体3を摺動操作し、開先深さDが13.5mmの場合、図11の如く、副尺体3の設定指標Sを開先深さ目盛Dの13.5mm目盛に合致させ、これにより上記[数1]の一般式に開先角度θを50°、開先深さDを13.5mmと代入すれば、[数3]の上段の如く、理論のど厚αは20.7mmと求められ、しかして、溶接後のすみ肉Mの実際のど厚αを測定し、理論のど厚20.7mmとの比較により溶接の良否判定を行うことができ、又、上記開先深さDが6.5mmの場合、図12の如く、副尺体3の設定指標Sを開先深さ目盛Dの6.5mm目盛に合致させ、これにより上記[数1]の一般式に開先角度θを50°、開先深さDを6.5mmと代入すれば、[数3]の下段の如く、理論のど厚αは10.0mmと求められ、しかして、溶接後のすみ肉Mの実際のど厚αを測定し、理論のど厚10.0mmとの比較により溶接の良否判定を行うことができる。
【0031】
【数3】
【0032】
しかして、開先角度θが同じ開先ののど厚αの測定に当たり、その開先角度θに応じた溶接用ゲージEを製作し、この場合、開先角度50°用の溶接用ゲージEを製作し、この溶接用ゲージEの副尺体3を摺動操作して開先深さの差分(D-D)の距離をフランジ材Fの板面Fの延びる方向にゲージ本体1を平行移動することにより開先深さDが各種に異なる異形すみ肉溶接ののど厚αを測定することができ、開先深さDの異なるのど厚αを測定するための専用の溶接用ゲージEを製作する必要がなくなり、開先角度θが同じ場合に開先深さD毎に数種類の溶接用ゲージEを製作する必要がなくなり、それだけ、溶接用ゲージEの管理が簡素化され、のど厚α測定の測定作業性を向上することができ、測定の人為的誤差を防ぐことができ、管理許容差を加味して異形すみ肉溶接の良否判定を正確に行うことができる。
【0033】
又、この場合、図13の如く、上記ゲージ本体1に上記フランジ材Fの板面F及び上記ウエブ材Wの板面Wにそれぞれ当接させる互いに直交する一対の当接面1b・1bが形成され、一対の当接面1b・1bは各当接面1b・1bの各延長線F・Wの交点Iを頂点Iとする2等分線B(45°)と上記開先の開先角度θの頂点Iから延びる上記垂線Hとが合致する位置にそれぞれ形成され、上記ゲージ本体1にすみ肉M用ののど厚目盛αが形成され、すみ肉M用ののど厚目盛αは上記頂点Iとしての基準点Oを零目盛として上記垂線Hが延びる方向の長さ目盛とされ、上記本尺体2に上記すみ肉M用ののど厚目盛αを読み取るための読取指標Rが形成され、上記本尺体2の上記測定点Pと反対側の後端部に上記すみ肉Mの表面Mに当接して上記すみ肉Mの実際のど厚αを測定するための測定点Qを備えて構成しているから、測定点Qにより開先を取らないすみ肉溶接ののど厚αも測定することができ、使用の融通性を高めることができる。
【0034】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、ゲージ本体1、本尺体2、副尺体3の構造や形態等は上記フランジ材F及びウェブ材W、開先角度θに応じて適宜変更して設計されるものである。
【0035】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0036】
E 溶接用ゲージ
F フランジ材
板面
延長線
延長線
G 交点
W ウエブ材
板面
端面
延長線
延長線
M すみ肉
表面
K 開先面
始端点
終端点
線分
H 足
垂線
O 基準点
P 測定点
S 設定点
設定指標
D 開先深さ
開先深さ目盛
I 交点
頂点
2等分線
読取指標
Q 測定点
α のど厚
α 異形すみ肉用ののど厚目盛
α すみ肉用ののど厚目盛
θ 開先角度
θ 頂点
1 ゲージ本体
1a 基準当接面
1b 当接面
2 本尺体
3 副尺体
3a 設定当接面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14