IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社美濃クラフトの特許一覧

<>
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図1
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図2
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図3
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図4
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図5
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図6
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図7
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図8
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図9
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図10
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図11
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図12
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図13
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図14
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図15
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図16
  • 特開-名前を認識しにくい表札の設計方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065935
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】名前を認識しにくい表札の設計方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 7/00 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G09F7/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175063
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】500501373
【氏名又は名称】株式会社美濃クラフト
(72)【発明者】
【氏名】都竹 隆広
(57)【要約】
【課題】表札としての存在感は損なわず名前を認識されにくい表札を設計することができる。
【解決手段】名前以外の文字、イラストの少なくともひとつと名前の文字を表札として表示し、名前以外の文字、イラストの文字サイズを読むのに適したサイズにしたり、文字色を背景色との対比で認識しやすいものとし、それと比較して名前の文字を読むのに適さない文字サイズとしたり、文字色を背景色との対比で認識しにくいものとして設計することで表札としての存在感は損なわず名前が認識しにくい表札とすることができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
名前と名前以外の文字、イラストを表示する表札において名前以外の文字、イラストの中で一番大きいものの1文字または1イラストを認識するのに必要十分な部分の大きさを縦、横どちらか大きいほうで30mm以上69.8mm以下とし名前の全ての文字において1文字を認識するのに必要十分な部分の大きさを縦、横どちらか大きいほうで6mm以上、10.5mm以下とする表札。
【請求項2】
名前と名前以外の文字、イラストを表示する表札において名前以外の文字、イラストの少なくともその一部で名前以外の文字、イラストを表示する場所の色と名前以外の文字、イラストの色間の色差を13以上とするか、名前以外の文字、イラストを表示する場所の表面処理状態と名前以外の文字、イラストの表面処理状態を異なる状態とし、名前の文字の少なくともその一部で名前を表示する場所の色と名前の文字の色間の色差を13より小さくするか、名前を表示する場所の表面処理状態と名前の文字の表面処理状態を同じ状態とする表札
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表札の設計にかかわるものである
【背景技術】
【0002】
表札には居住している住民の名前を明確にすることで地域住民が居住者を認識することや郵便配達人、宅配業者が正しく配達できるようにする利点がある。そのため従来は誰にでも名前がすぐに読み取れるように設計されてきた(図1)。しかし近年誰にでも名前が読み取れてしまうことを嫌がって表札を掲げないという選択を取る人もいる。そうした場合、通信販売で物を購入したときに郵便物、宅配物が正しく届かなくなることや、宅配ボックスの活用や置き配ができずに届くのが遅くなるという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために人が近付くと名前が光って表示される表札や(特許文献1)、名前の文字を読みにくくしたデザイン文字を使用したり(図2)、正面からは名前が読み取れないような立体形状にした表札(図3)が開発されているが、これらの技術には表札の設計が制限される問題があった。また別の方法として目立たない小さな表札(図4)とすることも行われているが、表札がそこにあることに気づかれない場合があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-089328号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sharma, Wu, Dalal, “The CIDE2000 Color-Difference Formula: Implementation Notes, Supplementary Test Data, and Mathematical Observations”, COLOR research and application, Vol.30, Number 1, February 2005, pp.21-30.
【非特許文献2】Apple Inc. , “Typography”, Human Interface Guidelines, https://developer.apple.com/design/human-interface-guidelines/foundations/typography/,
【非特許文献3】LEGGE,PELLI,RUBIN,SCHLESKE “PSYCHOPHYSICS OF READING: I. NORMAL VISION”, Vision Research Vol.25, No. 2, pp.239-252, 1985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、表札の設計自由度を保ちながら表札の存在は認識させつつ名前を認識しにくくする設計手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表札に名前より容易に判別できる文字情報(追加の文字情報)を表示したうえで前記追加の文字情報より名前を読み取りにくく表示するよう設計することで表札の存在は明確にしたうえで名前を認識しにくくする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば表札の存在は明確にしたうえで、通行人や通行する車に乗っている第三者は読みやすい追加の文字情報のみを認識し、宅配業者のように宅配先を探して注意深く表札を見る者には名前が認識できる表札が設計できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来技術による表札の例である。
図2】従来技術による読み取りにくい文字の例である。
図3】従来技術によるプライバシー配慮型表札の例である。
図4】従来技術によるプライバシー配慮型表札の例である。
図5】本発明による表札の例である。(実施例1)
図6】本発明による表札の例である(実施例2)
図7】本発明による表札の例である(実施例3)
図8】本発明による表札の例である(実施例4)
図9】本発明による表札の例である(実施例5)
図10】視角の説明の図である。
図11】幅員4mの道路から表札までの距離の説明の図である。
図12】文字に飾りがついた場合の説明の図である。
図13】非特許文献2から文字サイズ表を抜粋したものである。
図14】色差値と知覚の対応表である
図15】文字サイズの単位変換表である。
図16】視角と距離から文字サイズを計算する式である。
図17】CIE DE2000の色差の算出式である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。
【実施例0011】
図5に示される実施例は名前以外の文字として町名と番地を表示した表札である。本実施例では縦15cm、横15cmの素材上に町名と番地と名前を表示している。住所の一部の文字の中で最大の文字の大きさを30mm以上かつ69.8mm以下で表示し名前の文字の中で最大の文字の大きさを10.5mm以下で、名前の文字の中で最小の文字の大きさを6mm以上で表示したものである。
【実施例0012】
図5に示される実施例では金属から文字を切り出した表札での例となる。これは住所と名前と飾りバーからなる表札である。住所の文字の最大サイズは30mm以上、69.8mm以下であり、名前の文字の中で一番大きい文字のサイズは10.5mm以下であり、名前の文字の中で一番小さい文字のサイズは6mm以上である。本実施例では住所が先で名前が後になっているがこの位置関係は一例であり、逆の並びになることや上下に並ぶこと、またイラストと名前だけになることも考えられる。また飾りバーが無い場合も考えられる。
【0013】
実施例1,実施例2で住所の文字の中で最大の文字の大きさを30mm以上としたのはアップル社のWebページのデザインガイドライン(非特許文献2参照)で推奨しているWebページの本文(Body)の文字サイズが17points(図13)(pointの単位は図15参照)であるからである。この文字を40cm離れたところから見たときの視角(図10参照)を求め、2m離れた距離から同じ視角になる文字のサイズ(図16参照)が30mmとなることから最大の文字の大きさの下限値として決定している。
【0014】
また実施例1、実施例2で住所の文字の中で最大の文字の大きさを69.8mm以下としたのは非特許文献3に文字の視角が2.0°を超えると文字を読む速度が遅くなるという結果がでているからである。2m離れた距離から視角が2.0°になる文字のサイズを計算(図16参照)したところ69.8mmとなることから最大の文字の大きさの上限値として決定した。これにより住所の文字の少なくとも一部は2mの距離から読みやすいサイズとなる。
【0015】
次に実施例1,実施例2で名前の文字の中で最大の文字の大きさを10.5mm以下としたのは非特許文献3で文字の視角が0.3°以下となると文字を読む速度が遅くなるという結果が出ているためである。2m離れた距離から視角が0.3°になる文字のサイズを計算(図16参照)したところ10.5mmとなることから名前の文字の中で最大の文字の大きさの上限値として決定した。
【0016】
また実施例1、実施例2で名前の文字の中で最小の文字の大きさを6mm以上としたのは非特許文献2のアップル社のWebページのデザインガイドラインで推奨しているWebページの本文(Body)の文字サイズ17points(図13)(pointの単位は図15参照)の文字サイズが6mmであることから決定している。これにより、名前のすべての文字が2mの距離からは読みにくく、近づいたときには読みやすい文字のサイズとなる。
【0017】
ここで2m離れた距離からとしているのは建築基準法(令和四年法律第四十四号による改正)の42条と43条に定められている建築物の敷地が接しなければいけない道路の幅員が4mであることからその道路の中央から家の敷地の境界にある表札までの距離(図11参照)として2mの距離を決定している。
【0018】
視角とは目に投影される物体がなす角度のことでありここでは図10に示したように対象物の上端と目を結んだ線と、下端と目を結んだ線の角度で定義する。図10では上端、下端で角度を定義しているがこれは左端、右端としてもよい。
【0019】
実施例1,実施例2では住所の一部がアルファベット、名前もアルファベットで表示されているがこれはどちらかが漢字になることや両方漢字になる場合もある。また住所の変わりにイラストと名前となることも考えられる、また表札の中での住所の表示場所、名前の表示場所は一例である。本実施例では住所の最後の町名と番地を名前以外の情報として表示しているがこれも一例であり、市から表示したり、最後の番地のみを表示したりすることも考えられる。また住所の先頭文字だけ大きな文字としているがこれも一例である。
【0020】
また名前以外の文字の最低サイズが名前の文字のサイズより大きくなっているがこれも一例であり、表札によっては住所の文字の最低サイズが名前の文字より小さくなる場合もあり得る。
【0021】
ここで文字のサイズには文字の飾りを含めないものとする。飾りがある場合の文字のサイズは図12のように文字を認識するのに必要十分な部分の大きさとする。図12は英文字であるが日本語の場合も同様である。
【実施例0022】
図7に示される実施例は名前以外の情報として住所を表示した表札である。本実施例では縦150cm、横150cmの素材上に住所と名前を表示している。住所の文字色は素材と異なる色(色差13以上)で塗装されている。名前の文字色は素材の色と近い色(色差13より小さい)で塗装されている。本実施例では住所より名前の文字のサイズが小さいが、住所と名前の文字が同じサイズの場合や、逆に名前の文字のほうが大きい場合、名前や住所の一部の文字のサイズが異なる場合も考えられる。素材の色としているが素材に塗装がされている場合はその塗装の色との色差として考えるものとする。
【実施例0023】
図8に示される実施例は金属から文字を切り出した表札での例となる。本実施例は住所と名前と飾りバーからなる表札である。住所の文字と飾りバーの色は取り付け予定の壁の色と異なる色(色差13以上)で塗装されている。次に名前の文字色は取り付け予定の壁の色と近い色(色差13よりすくない)で塗装されている。本実施例では住所の文字と飾りバーの色が同色となっているが別の色となってもよい。また、飾りバーが無い場合もあり得る。
【実施例0024】
図9に示される実施例は名前以外の情報としてイラストを表示した表札である。本実施例では縦150cm、横150cmの素材上にイラストと名前を表示している。イラストの色は素材と異なる色(色差13以上)で塗装されている。名前の文字色は素材の色と近い色(色差13より小さい)で塗装されている。イラストと名前の位置関係はこれに限るわけではない。素材の色としているが素材に塗装がされている場合はその塗装の色との色差として考えるものとする。
【0025】
ここで色差とはCIE DE2000色差式(図17、非特許文献1参照)により計算される色差であり色差13以上というのは図14にあるように異なる色名の色として認識される色差である。これにより名前の文字以外の文字やイラストは認識しやすく、名前の文字は認識しにくくなる。
【0026】
実施例3,実施例4,実施例5で塗装とされている箇所は塗装に限定しているわけではなく、塗装以外の色を変える手法や金属の色をそのまま用いても良い。また色は同じでも表面処理方法(光沢、艶消し、ヘアライン加工と鏡面や梨地など)の違いにより取付予定の壁や文字を表示する部分の素材と名前の文字は近い見え方で住所の文字を異なる見え方となるように設計することも考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17