(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065938
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ヤエヤマアオキの機能性蒸留液
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240508BHJP
A61K 36/74 20060101ALI20240508BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240508BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240508BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240508BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240508BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240508BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240508BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240508BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240508BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/74
A61P17/16
A61P31/04
A61P31/12
A61P37/04
A61K47/46
A61K9/08
A61K8/9789
A61Q19/00
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175066
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】522427176
【氏名又は名称】前嘉保 更咲
(71)【出願人】
【識別番号】517177992
【氏名又は名称】三枝 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100195970
【弁理士】
【氏名又は名称】本夛 伸介
(72)【発明者】
【氏名】前嘉保 更咲
(72)【発明者】
【氏名】三枝 隆裕
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE05
4B018MD52
4B018ME09
4B018MF04
4B018MF13
4B018MF14
4C076AA11
4C076CC07
4C076CC18
4C076CC32
4C076CC35
4C076EE58T
4C076FF52
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC022
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC402
4C083AC422
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC41
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE12
4C083EE14
4C083EE31
4C083FF01
4C088AB14
4C088AC04
4C088CA15
4C088CA25
4C088MA07
4C088NA09
4C088ZA89
4C088ZB09
4C088ZB33
4C088ZB35
(57)【要約】
【課題】ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液は、濃い茶色の濁りのある液体で、特徴的な強烈な臭いと味を有しているため、多くの消費者に受け入れられていない。
【解決手段】ヤエヤマアオキ果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液を特定の条件下で蒸留することにより、搾汁液の持つ独特な色、強烈な臭いと味を改善した無色透明な機能性を有する蒸留液を製造できる。また、臭いの調和性が良い他植物の搾汁液を混合して蒸留することで、ヤエヤマアオキ単独の蒸留液の臭いや味をさらに改善することができ、加えて抗菌力などの機能性も高めることができる。これらの蒸留液の各種組成物への利用が可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液をカプリル酸濃度が0.03%以下になるように90℃~110℃で蒸留して得られる蒸留液。
【請求項2】
さらに、水及び/又は臭いの調和性が良い他植物の搾汁液をヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液に添加した後に蒸留して得られる請求項1に記載の蒸留液。
【請求項3】
臭いの調和性が良い他植物が、シークワーサー、ユズ、パイナップル、アセロラ、オレンジ、レモン、ライム、タンカン、キウィ、マンゴー、パッションフルーツ、パパイヤ、ライチ、グレープフルーツ、アンズ、ウメ、ゲットウ、ナツミカン及びウンシュウミカンから選ばれる1種又は2種以上の植物である請求項2に記載の蒸留液。
【請求項4】
請求項1の蒸留液と別途に請求項3に記載の臭いの調和性が良い他植物の1種又は2種以上の搾汁液を蒸留して得られる蒸留液とを混合した蒸留液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液を蒸留して得られる無色透明な蒸留液に関する。
さらに詳しくは、ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液の持つ強い臭い及び味を改善し、抗菌力、免疫賦活活性、抗ウィルス活性、美肌効果などの機能性を持つヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液の蒸留液に関する。
また、ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液と水及び/又は臭いの調和性が良い他植物の搾汁液とを混合して蒸留することで、ヤエヤマアオキの持つ強い臭いと味、並びに機能性をさらに改善できる。
本発明によれば、化粧品、皮膚ケア品、口腔ケア品又は食品などに利用できる無色透明で機能性に優れかつ香味に優れたヤエヤマアオキの蒸留液が提供できる。
【背景技術】
【0002】
ヤエヤマアオキは、通称ノニ、学名モリンダ・シトリフォリアとして知られ、高さ3~10mの灌木で、蝋質の緑色又は緑黄色の楕円型をしたゴツゴツした5~8cmの大きさの果実を多数つける。この果実は熟すと、緑黄色から白色を呈し特徴的な強い臭いと味を生じる。この果実の熟成発酵物の搾汁液はノニジュースとして飲用されているが、バラエティ番組の罰ゲームに使われたほどの臭豆腐様の強烈な臭いと味である。
ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液には、抗菌力、抗酸化力、美肌作用などがあり、成分的にもアミノ酸、ミネラル、ビタミン類を豊富に含むことが知られている。
【0003】
ヤエヤマアオキ果実の熟成発酵物の搾汁液は、ノニジュースの名称で健康飲料として販売されている。
また、ヤエヤマアオキの果実搾汁液を配合した石鹸や浴用剤が販売されている。
さらに、ヤエヤマアオキの果実搾汁液を利用した口腔ケア組成物、溶媒による植物抽出液を利用した化粧料に関する特許が公開されている。
しかしながら、ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液を蒸留して得た無色透明で臭いを低減させた蒸留液を機能性原料として利用する例は、未だない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013-520515号
【特許文献2】特開2010-265310号
【特許文献3】特表2009-517471号
【特許文献4】特開2009-62301号
【特許文献5】特表2006-516019号
【特許文献6】特表2003-508554号
【特許文献7】特開2001-213753号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液には、機能性成分として、抗菌力を示すスコポレチンやカプリル酸、抗酸化力を示すポリフェノール類、免疫賦活活性を示すプロキセロニンなどを含有することが報告されている。これまでは、ヤエヤマアオキ果実及び/又は熟成発酵物の搾汁液を直接飲料として用いる方法、石鹸や入浴剤に臭いが出ない程度に少量添加する方法が取られていた。
ここで、公開特許としては、ヤエヤマアオキの果実搾汁液の利用、果実搾汁液の合成樹脂処理液の利用、葉の蒸気蒸留抽出物の利用、植物体からの溶媒抽出液の利用が存在する。具体的には、例えば、特許文献1(特表2013-520515号)には、ヤエヤマアオキ果実搾汁液の濃縮液並びに葉の蒸気蒸留抽出物の食品への利用が示されており、特許文献3(特表2009-517471号)には、同じく果実の搾汁液の濃縮液並びに葉の蒸気蒸留抽出物の抗ウィルス剤への利用が示されているが、この蒸気蒸留法は、葉に蒸気を吹き付けて成分を蒸発させる方法である。
特許文献4(特開2009-62301号)には、ヤエヤマアオキの果実又はその発酵物の搾汁液を合成樹脂で処理して臭いを軽減したエキスの食品等への利用が開示されているが、この方法では色や性状の大きな改善は難しく有効成分の減少もある。
特許文献2(特開2010-265310号)には、ヤエヤマアオキ植物体からアルコールベースの溶剤を用いて抽出した抽出液の口腔ケア組成物への利用、特許文献5(特表2006-516019号)には、ヤエヤマアオキ植物体から水溶性溶媒又はヘキサンを用いて抽出した抽出液の抗真菌剤への利用、特許文献7(特開2001-213753号)には、植物体の圧搾物や粉砕物から親水性溶媒を用いて抽出した抽出液の化粧料への利用がそれぞれ開示されている。
さらに、特許文献6(特表2003-508554号)には、ヤエヤマアオキの種子からヘキサンなどの非極性溶媒で抽出したオイルをマッサージオイルや化粧品へ利用することが開示されているところ、これらの溶媒を用いたヤエヤマアオキの成分抽出には、安全性と抽出される成分が限定される欠点がある。
以上の点に鑑み、従来技術とは異なるヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液の持つ独特な色、臭い、味を簡便な方法で軽減し、かつ揮発性の成分を効率よく集めることで機能性を保持若しくは増強した無色透明な原料を得る方法として蒸留を試みた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のヤエヤマアオキの果実の搾汁液は、ヤエヤマアオキの果実が薄黄緑色から白色に変わり熟した果実をミキサーなどで粉砕後、遠心分離又はろ過布などで絞ることにより得ることができ、茶色を呈した苦味やえぐ味があり、独特な臭いがある液である。また、ヤエヤマアオキ果実の熟成発酵物の搾汁液は、ヤエヤマアオキの熟した果実をそのままガラス瓶などの容器に詰め、1ヶ月から1年間、最適には3ヶ月間ほど自然発酵させた熟成発酵物をミキサーなどで粉砕後、遠心分離やろ過布などで絞ることにより得ることができ、黒褐色を呈した酸味やえぐ味があり、独特な強烈な臭いを有する液である。
【0007】
ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液を加熱式蒸留器で蒸留することで、無色透明な蒸留液を実現できた。この蒸留液は、ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液が持つドロドロとした性状と茶褐色の色合いを無色透明で水の様な外観と性状に変えたもので、搾汁液の持つ独特の強い臭いと独特の味も大きく改善されることが確認できた。加熱式蒸留器での最適な蒸留は、搾汁液を90℃~110℃に加温し、発生した蒸気を冷却することで可能となる。
【0008】
加熱式蒸留器は、搾汁液を入れて電気ヒーター、ガス又はスチームなどで加温し、発生した蒸気を冷却管で凝縮させて蒸留液を得るものであれば型式を問わない。なお、蒸気を冷却管で凝縮させて蒸留液として得る出口部分に加圧弁を設け、装置内を陽圧にすることで試料温度を100℃以上にして蒸留することができる。
【0009】
請求項2の水及び/又は臭いの調和性が良い他植物の搾汁液をヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液に添加する理由としては、ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液単独では蒸留するための加熱時に焦げ付きが生じる恐れがありそれを防止する効果、蒸留液量を充分に確保する効果および臭いと味を改善する効果が挙げられる。特に、水ではなくヤエヤマアオキと臭いの調和性が良い他植物の搾汁液を添加して蒸留する場合には、他植物の芳香や機能性を追加して製品価値を高めることができる。
また、水及び/又は臭いの調和性が良い他植物の搾汁液の添加量を加減すること、蒸留温度を調整することなどにより、臭いと味、並びに機能性成分量を一定に保つことができる。この臭いと味、並びに機能性成分量を一定に保つ指標として、ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液に豊富に含まれるカプリル酸を用いることができ、その蒸留液中の濃度が0.03%以下になるように調製することで、臭いと味、並びにカプリル酸以外の機能性成分量も一定に保つことができる。
【0010】
請求項3の臭いの調和性が良い他植物には、ヤエヤマアオキの臭いと相性が良く優れた芳香を有し抗菌力若しくはエモリエント効果などを有するものを選定している。
【0011】
請求項4では、請求項3に記載の臭いの調和性が良い他植物における1種又は2種以上の搾汁液の蒸留液を別に調製し、既に蒸留されたヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液の蒸留液に適量添加しても、両者を混合した後に蒸留した請求項2の蒸留液と同等な蒸留液が得られることを示している。
【0012】
請求項1~4で得られた蒸留液の持つ機能性が利用可能な組成物としては、化粧品組成物、皮膚ケア用組成物、口腔ケア用組成物又は食品組成物が挙げられる。
これらの他にも、本発明の効果を損なわない範囲において、蒸留液の持つ抗菌力などを利用した各種製品への応用が可能である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1~4で得られた蒸留液では、ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液の持つ強烈な臭いと味が改善され、無色透明な液として得られることが確認された。また、これらの透明な蒸留液には、抗菌力があると予想し、大腸菌、歯周病菌、虫歯菌、アクネ菌(ニキビの原因菌)などに対する抗菌力を測定したところ、強い抗菌力を認めた。さらに、免疫賦活活性、抗ウィルス活性も有することが確認された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ヤエヤマアオキは、沖縄県をはじめとする亜熱帯地方で生育しており、一年中に渡り果実を採取することができる。ヤエヤマアオキの果実が薄黄緑色から白色に変わり熟した果実を採取して利用する。採取直後の果実は、独特の臭いは熟成発酵物ほど強くはないが、苦味やえぐ味が強く食するには適さない状態である。そのため、ヤエヤマアオキの熟した果実を水洗し乾燥後、そのままガラス瓶などの容器に詰め、1ヶ月から1年間、最適には3ヶ月間ほど自然発酵させて飲用とする。自然発酵時に、黒砂糖、オリゴ糖などを少量添加することで、発酵のばらつきを抑え同等に発酵させることができる。
本発明で用いるヤエヤマアオキの果実の搾汁液は、熟した果実をミキサーなどで粉砕後、遠心分離やろ過布などで絞ることにより得ることができる。また、果実の熟成発酵物の搾汁液も同様に、熟成発酵物をミキサーなどで粉砕後、遠心分離やろ過布などで絞ることにより得ることができる。これらの搾汁液は、保存中に変質するため、搾汁液を75℃で3分間ほど低温殺菌すると、長期に同じ状態を保つことができる。必要により、ヤエヤマアオキ果実の搾汁液とヤエヤマアオキ果実の熟成発酵物の搾汁液とを適宜混合して蒸留する原料にすることができる。
【0015】
ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液をそのまま用いた場合、加熱時に焦げ付きが生じる恐れがあり、収量が少なく、臭いの調整や得られる蒸留液中の成分の制御が難しい。それを改善するため、請求項2における水及び/又は臭いの調和性が良い他植物の搾汁液をヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液に添加する方法を取ることができる。ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液に水を添加することで、蒸留のための加熱時の焦げ付きを防止する効果と適度な成分濃度の調整、並びに必要な蒸留液量を確保できる。また、ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液に臭いの調和性が良い他植物の搾汁液を添加することで、蒸留のための加熱時の焦げ付きを防止する効果と成分濃度の調整、並びに必要な蒸留液量を確保できることに加え、臭いの調和性が良い他植物の持つ優れた芳香や抗菌力、エモリエント効果などの機能性を付与することができる。
ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液に水及び/又は臭いの調和性が良い他植物の搾汁液を添加する割合は、0.3倍~3倍量が適している。ヤエヤマアオキ果実の熟成発酵物の搾汁液にシークワーサー搾汁液を加えた実施例では、両者の添加比率を1:1とした混合物を蒸留した場合で、求める臭いと味、並びに機能性が得られている。
蒸留液の臭いや機能性成分の強さを一定に保つ指標として、ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液に豊富に含まれるカプリル酸を用い、その濃度を0.03%以下に調製することで蒸留液の臭いや機能性成分の強さを一定に保つことができる。具体的には、ヤエヤマアオキの果実の収穫時期による臭いや成分の差異、及び蒸留工程での条件の差異で生じる蒸留液の臭いや機能性成分の強さを一定に保つために、蒸留時の初留の除去、蒸留時の加熱部の温度調整、蒸気の冷却媒体の温度調整、蒸留時に得られる蒸留液量と蒸留残渣液量の比率を加減する方法、水及び/又は臭いの調和性が良い他植物の搾汁液の添加量を調整する方法のうち1つ又は2つ以上の方法を組合せることで、カプリル酸濃度を0.03%以下に保つことができる。
【0016】
ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液、若しくはヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液に水及び/又は臭いの調和性が良い他植物の搾汁液を添加した液体を加熱式蒸留器で蒸留することで、独特な強い臭いを持ち茶色のドロドロとした性状を持つ搾汁液を独特な強い臭いを軽減した揮発性の機能性成分を含む無色透明な蒸留液へと変えることができる。蒸留装置としては、焼酎などの蒸留器や精製水を作る蒸留器に見られるような試料の加熱部と発生蒸気の冷却部を備えた加熱式蒸留装置であれば構わない。その加熱式蒸留器は、試料を加熱部に入れて電気ヒーター、ガス又はスチームなどで加温し、発生した蒸気を冷却管で凝縮させて蒸留液を得るものであれば型式を問わない。
加熱式蒸留器の加熱部にヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液、若しくはヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液に水及び/又は臭いの調和性が良い他植物の搾汁液を添加した液体を入れ、90℃~110℃に加温することで機能性成分を確保した蒸留が可能であり、最適には95℃~105℃での蒸留が適している。また、発生した蒸気を冷却管で凝縮させる時の冷却媒体の温度は、5℃~40℃が適している。ヤエヤマアオキの果実の熟成発酵物の搾汁液にシークワーサー搾汁液を等量加えた実施例では、冷却部の蒸留水の出口弁を少し絞り試料温度を102℃に保って蒸留し、発生した蒸気を冷却管で凝縮させる時の冷却媒体の温度を15℃とした場合で、良好な臭いと味、並びに機能性が得られている。なお、同様に加熱温度を85℃に保って蒸留した蒸留液では、充分な機能性が得られなかった。また、エバポレーターなどの減圧式蒸留器を用いて、試料温度を40℃~60℃として蒸留し、発生した蒸気を冷却管で凝縮させる時の冷却媒体の温度を2℃~20℃とした場合でも請求項1と同様な蒸留液を得ることができる。
【0017】
請求項4では、請求項3に記載の臭いの調和性が良い他植物における1種又は2種以上の搾汁液の蒸留液を別に調製し、既に蒸留されたヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液の蒸留液に添加した場合でも、両者を混合した後に蒸留した請求項2の蒸留液と同等な蒸留液が得られることを示している。
また、製品が無色透明でなくても良い場合には、ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液の蒸留液に請求項3に記載の臭いの調和性が良い他植物における1種又は2種以上の搾汁液を直接添加しても構わない。
【0018】
以下の実施例で本発明の効果を説明するが、当該説明において、ヤエヤマアオキを通称名であるノニ、シークワーサーをシーク、パイナップルをパイナと略記する。
【0019】
<実施例1>
表1に、1)ヤエヤマアオキ果実の熟成発酵物の搾汁液を評点2点、2)完熟パイナップル搾汁液を評点10点として官能評価時の採点基準品にし、3)~10)の試料の臭いと味をパネラー10名により相対的に10点満点で官能評価した評点の平均点を示した。ここでは、ヤエヤマアオキを通称であるノニと略記する。
評価試料には、比較品として1)ノニ発酵物の搾汁液、2)完熟パイナップル搾汁液、3)ノニ果実の搾汁液、4)ノニ発酵物の搾汁液に水を1:1で添加後に85℃で蒸留して得た蒸留液の4試料を用い、発明品として5)ノニ果実の搾汁液に水を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、6)ノニ発酵物の搾汁液に水を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、7)ノニ果実の搾汁液にシークワーサー搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、8)ノニ発酵物の搾汁液にシークワーサー搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、9)ノニ発酵物の搾汁液にパイナップル搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、10)ノニ発酵物の搾汁液にアセロラ搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液の6試料を用いて官能評価を行った。
表1の結果から、ノニ果実の搾汁液又はノニ発酵物の搾汁液を蒸留すること自体で臭いと味の改善が見られ、他の果実搾汁液を添加することで大きく臭いと味が改善されることが認められた。特に、7)ノニ果実の搾汁液にシークワーサー搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、8)ノニ発酵物の搾汁液にシークワーサー搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液では、そのままで飲用しても臭いや味に違和感がないレベルまで改善が見られた。
【表1】
【0020】
<実施例2>
実施例1と同じ試料、1)ノニ発酵物の搾汁液、2)完熟パイナップル搾汁液、3)ノニ果実の搾汁液、4)ノニ発酵物の搾汁液に水を1:1で添加後に85℃で蒸留して得た蒸留液、5)ノニ果実の搾汁液に水を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、6)ノニ発酵物の搾汁液に水を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、7)ノニ果実の搾汁液にシークワーサー搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、8)ノニ発酵物の搾汁液にシークワーサー搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、9)ノニ発酵物の搾汁液にパイナップル搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、10)ノニ発酵物の搾汁液にアセロラ搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液の10試料について、大腸菌Escherichia coli JCM5491株に対する抗菌力をペーパーディスク法にて評価した。大腸菌をNutrient broth培地を用い37℃で2日間液体培養後、シャーレに入れたNutrient agar No.2 寒天培地に菌数が約5×10
6個/mlとなるように混釈し、直径6mmペーパーディスク(Advantec)をその寒天培地上に置き、各試料を100μlずつペーパーディスクに添加し、37℃で2日間培養した。生じた生育阻止円の直径を測定することで大腸菌に対する抗菌力を測定した。表2の結果は、3枚の試験シャーレの平均値であり、阻止円の直径が大きいほど抗菌力が強いことを示している。
表2の結果から、ノニの果実の搾汁液又はノニ発酵物の搾汁液自体にも抗菌力が認められたが、蒸留することで抗菌力が強化されることが分かった。特に、8)ノニ発酵物の搾汁液にシークワ-サー搾汁液を1:1で添加した後に102℃で蒸留した蒸留液で、大腸菌に対する最も強い抗菌力が見られた。
【表2】
【0021】
<実施例3>
試験試料として、1)ノニ発酵物の搾汁液、5)ノニ果実の搾汁液に水を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、6)ノニ発酵物の搾汁液に水を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、8)ノニ発酵物の搾汁液にシークワーサー搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、9)ノニ発酵物の搾汁液にパイナップル搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液の5試料を用いて、大腸菌、アクネ菌(ニキビの原因菌)、歯周病菌、虫歯菌に対する抗菌力を評価した。大腸菌の試験菌株としてEscherichia coli JCM5491株を使用し、Nutrient broth液体培地を用いて37℃で2日間培養して菌濃度を約10
6個/mlに調製した。また、アクネ菌としてPropionibacterium acnes JCM18907株、歯周病菌としてPorphyromonas gingivalis JCM8525株、虫歯菌としてStreptococcus mutans JCM5157株を使用した。アクネ菌の培地としてGAM液体培地を用い、歯周病菌並びに虫歯菌用の培地として3%馬脱繊維血液添加GAM液体培地を用い、これらの菌株をそれぞれ37℃で3~4日間培養し、菌濃度を約10
6~7個/mlに調製した。各試験試料4.5mlに各試験菌液0.5mlを添加し、5分後、10分後に混合液を採取し、GAM寒天培地を用いて37℃で3~4日間培養した後に生じたコロニーをカウントし残存生菌数とした。対照としては、生理食塩水4.5mlに各試験菌液0.5mlを添加し、添加直後、5分後、10分後の残存生菌数を同様に測定した。
表3にその結果を示すが、1)ノニ発酵物の搾汁液自体に大腸菌、アクネ菌、歯周病菌、虫歯菌に対する強い抗菌力が認められた。なお、6)ノニ発酵物の搾汁液に水を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、及び8)ノニ発酵物の搾汁液にシークワーサー搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液で最も強い抗菌力が認められた。
【表3】
【0022】
<実施例4>
試験試料として、1)ノニ発酵物の搾汁液、6)ノニ発酵物の搾汁液に水を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、8)ノニ発酵物の搾汁液にシークワーサー搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液を用い、これらの添加時のマウスマクロファージ様細胞株J774.1のインターロイキン12(IL-12)生産量を測定した。LPS(リポポリサッカライド)を対照とし、J774.1細胞の培養液(1.0×10
5cell/ml)に、各試料をそれぞれ15%及び5%量添加し、24時間培養後、免疫を高める成分であるインターロイキン12の生産量をELISA法で測定した。
表4に結果を示すが、1)ノニ発酵物の搾汁液には、高いインターロイキン12生産能が認められた。なお、6)ノニ発酵物の搾汁液に水を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、及び8)ノニ発酵物の搾汁液にシークワ-サー搾汁液を1:1の割合で添加した後に102℃で蒸留した蒸留液においても、良好なインターロイキン12生産能が見られた。
【表4】
【0023】
<実施例5>
試験試料として、1)ノニ発酵物の搾汁液、6)ノニ発酵物の搾汁液に水を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、8)ノニ発酵物の搾汁液にシークワーサー搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液を用い、これらのインフルエンザAウィルスに対する抗ウィルス作用を測定した。
オルソミクソウィルス科インフルエンザAウィルス溶液に、精製水を対照として、各試験試料をそれぞれ10%量添加し、添加直後、15秒後、2分後にサンプリングし、CRFK培養細胞に添加後、その細胞変性効果を顕微鏡で観察し、50%組織培養ウィルス感染価(TCID
50)を求めた。検出しない場合を<1.5とした。
表5に結果を示すが、1)ノニ発酵物の搾汁液には、良好なインフルエンザAウィルスを不活性化させる抗ウィルス作用が認められた。また、6)ノニ発酵物の搾汁液に水を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液、及び8)ノニ発酵物の搾汁液にシークワーサー搾汁液を1:1で添加後に102℃で蒸留して得た蒸留液には、インフルエンザAウィルスに対する強い抗ウィルス作用が認められた。
【表5】
【0024】
請求項1~4で得られた蒸留液が利用可能な組成物としては、化粧品組成物、皮膚ケア用組成物、口腔ケア用組成物又は食品組成物が挙げられる。また、本発明品の抗菌力を利用してマンゴーなどの果皮の炭疽病の予防や遅延、動物の感染症の予防や治癒などにも利用可能である。
【0025】
請求項1~4で得られた蒸留液を利用した化粧品組成物、皮膚ケア用組成物、口腔ケア用組成物又は食品組成物の処方例を以下に示す。
(ローション)
(成分) (重量%)
ノニ発酵物+シークワーサーの蒸留液 60.00
ノニ果実の蒸留液 33.00
1,3-ブチレングリコール 4.00
エタノール 1.00
グリセリン 1.50
乳酸 0.20
乳酸ナトリウム 0.30
(クリーム剤)
(成分) (重量%)
モノステリアリン酸ポリエチレングリコール 2.00
モノステアリン酸グリセリン 5.00
流動パラフィン 8.00
トリオクタン酸グリセリル 9.00
1,3-ブチレングリコール 1.00
グリセリン 5.00
pH調整剤 微量
ノニ発酵物+シークワーサーの蒸留液 ~100
(口腔ケア剤)
(成分) (重量%)
ユズ搾汁液の蒸留液 30.00
キシリトール 0.10
エタノール 0.10
pH調整剤 微量
ノニ発酵物の蒸留液 ~100
(食品)
(成分) (重量%)
ノニ発酵物+シークワーサーの蒸留液 84.50
シークワーサー搾汁液 10.00
オリゴ糖 5.00
ビタミンC 0.50
【0026】
本発明によれば、ヤエヤマアオキの果実及び/又はその熟成発酵物の搾汁液を特定の条件下で蒸留することで、搾汁液が持つ独特な色、臭い、味が軽減され、さらに抗菌力をはじめとした機能性を持つ無色透明な蒸留液を得ることができる。
また、臭いの調和性の良い他植物の搾汁液を混合して蒸留することでそれらの効果をさらに改善することが出来る。
以上のことから、本発明の蒸留液を原料とした各種組成物への利用が可能となる。