(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006596
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】液体収容体
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B41J2/175 141
B41J2/175 143
B41J2/175 201
B41J2/175 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107643
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 政弘
(72)【発明者】
【氏名】平田 和之
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056FA10
2C056KB27
2C056KC02
2C056KC09
2C056KC14
(57)【要約】
【課題】液体収容体が衝撃を受けた場合であっても、液体収容体が傷つくことが抑制される液体収容体を提供すること。
【解決手段】液体収容体であって、可撓性を有し、内部に液体を収容するための袋と、袋の一端部に取り付けられ、液体を液体噴射装置へ導出するための液体導出部を有する液体導出部材と、袋内に配置され、液体を濾過するフィルターが配置されたフィルター室を有するスペーサー部材と、袋内に配置され、フィルター室と液体導出部材とに接続され、フィルターによって濾過された液体を液体導出部へ流すための液体導出管と、を備え、液体導出管は、可撓性を有する、液体収容体。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体収容体であって、
可撓性を有し、内部に液体を収容するための袋と、
前記袋の一端部に取り付けられ、前記液体を液体噴射装置へ導出するための液体導出部を有する液体導出部材と、
前記袋内に配置され、前記液体を濾過するフィルターが配置されたフィルター室を有するスペーサー部材と、
前記袋内に配置され、前記フィルター室と前記液体導出部材とに接続され、前記フィルターによって濾過された前記液体を前記液体導出部へ流すための液体導出管と、を備え、
前記液体導出管は、可撓性を有する、液体収容体。
【請求項2】
請求項1に記載の液体収容体であって、さらに、
前記液体導出部とは別に、前記袋の内部と連通する前記液体の流路が形成された液体流路部を備える、液体収容体。
【請求項3】
請求項2に記載の液体収容体であって、
前記液体流路部は、
前記袋の前記一端部に対向する前記袋の他端部に取り付けられている、液体収容体。
【請求項4】
請求項2に記載の液体収容体であって、
前記液体流路部は、前記液体導出部材に形成されている、液体収容体。
【請求項5】
請求項4に記載の液体収容体であって、さらに、
前記液体導出部材と着脱可能に装着され、前記液体導出部材を前記液体噴射装置に接続するためのアダプター部を備え、
前記液体流路部は、前記液体導出部材の表面に開口する流路口を有し、
前記アダプター部は、前記流路口を覆う閉塞部を有する、液体収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている液体収容体は、液体を濾過するフィルターを有するスペーサー部材が先端に取り付けられた液体導出管を備えている。このスペーサー部材は、連結部材により、収容された液体を外部に導出するための液体導出部と連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液体収容体は、スペーサー部材が連結部材に固定されている。このため、液体収容体が落下するなどして衝撃を受けた場合に、スペーサー部材が液体収容体の袋の内側から袋を押し付けて傷つけるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、液体収容体が提供される。この液体収容体は、可撓性を有し、内部に液体を収容するための袋と、前記袋の一端部に取り付けられ、前記液体を液体噴射装置へ導出するための液体導出部を有する液体導出部材と、前記袋内に配置され、前記液体を濾過するフィルターが配置されたフィルター室を有するスペーサー部材と、前記袋内に配置され、前記フィルター室と前記液体導出部材とに接続され、前記フィルターによって濾過された前記液体を前記液体導出部へ流すための液体導出管と、を備え、前記液体導出管は、可撓性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図5】ケースから液体収容体を取り出した状態の概略分解斜視図。
【
図6】アダプター部を液体導出部材から取り外した状態の概略分解斜視図。
【
図7】アダプター部が装着された液体導出部材の斜視図。
【
図16】第3実施形態に係るアダプター部が装着された液体導出部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
A1.液体噴射装置の構成:
図1は、本実施形態の液体噴射装置10の斜視図である。
図1には、互いに直交する3つの方向を示す矢印X,Y,Zが図示されている。なお、矢印X,Y,Zは、他の各図においても、
図1に対応するように、適宜、図示されている。
【0008】
矢印X,Y,Zが示す方向は、通常の使用状態にあるときの液体噴射装置10の配置姿勢に対応している。液体噴射装置10の通常の使用状態は、液体噴射装置10が水平面に配置されて使用されるときの状態である。以下では、矢印X,Y,Zが示す方向をそれぞれ「X方向」、「Y方向」、「Z方向」と呼ぶ。Z方向は、鉛直方向である。各X方向のうち、ひとつの方向を「+X方向」と呼び、他の方向を「-X方向」と呼ぶ。Y,Z方向についても、同様に、ひとつの方向を「+Y方向」および「+Z方向」と呼び、他の方向を「-Y方向」および「-Z方向」と呼ぶ。以下の説明において、-Y方向を「前方向」とも呼び、+Y方向を「後方向」とも呼ぶ。-X方向を「右方向」とも呼び、+X方向を「左方向」とも呼ぶ。-Z方向を「上方向」とも呼び、+Z方向を「下方向」とも呼ぶ。
【0009】
液体噴射装置10は、インクジェットプリンターである。液体噴射装置10において噴射によって消費される液体はインクである。液体噴射装置10は、インク滴を吐出して、媒体MPに印刷画像を形成する。媒体MPは、例えば、布帛や印刷用紙である。本実施形態の液体噴射装置10は、液体噴射装置10の外装を構成する樹脂製の中空箱体であるハウジング10cを備えている。ハウジング10cは、略直方体形状を有する。ハウジング10cの前面部12には、操作部13と、媒体排出口14と、媒体受部15と、カバー部材18とが設けられている。
【0010】
操作部13は、ユーザーに対する情報を表示する表示部と、ユーザーの操作を受け付ける複数の操作ボタンとを有する。媒体排出口14は、液体噴射装置10の内部から繰り出される媒体MPの出口である。媒体排出口14は、X方向に幅の広いスリット状の開口である。媒体受部15は、媒体排出口14の下側において-Y方向に庇状に張り出しており、媒体排出口14から排出された媒体MPを受け止める。
【0011】
カバー部材18は、液体噴射装置10の外装の一部を構成する樹脂製の板状部材である。カバー部材18は、ハウジング10cに対して着脱可能に取り付けられている。カバー部材18は、液体噴射装置10の内部に収納されている
図2に示す装着体105を被覆して保護する。
【0012】
図2は、液体噴射装置10を前方から見た概略構成図である。
図2に示すように、液体噴射装置10は、制御部20と、吐出実行部30と、搬送ローラー36と、液体供給部40と、ケース収納部60とを備えている。
【0013】
ケース収納部60は、
図1に示すカバー部材18の内側に配置されており、液体噴射装置10の最下段に配置されている。ケース収納部60には、4つの装着体105が収納される。4つの装着体105は、具体的には、3つの第1装着体105aと、1つの第2装着体105bとを含む。第1装着体105aと第2装着体105bとは、大きさが互いに異なる。第2装着体105bは、第1装着体105aよりも大きい。装着体105は、ケース61と、ケース61に収納された液体収容体100とにより構成されている。装着体105と同様に、4つのケース61は、3つの第1ケース61aと、1つの第2ケース61bとを含む。4つの液体収容体100は、3つの第1液体収容体100aと、1つの第2液体収容体100bとを含む。第1装着体105aは、第1ケース61aに第1液体収容体100aが収納されて構成されている。第2装着体105bは、第2ケース61bに第2液体収容体100bが収納されて構成されている。そして、第2液体収容体100bは、第1液体収容体100aよりも大きい。例えば、3つの第1液体収容体100aのそれぞれには、シアン、マゼンタ、イエローのインクが収容され、第2液体収容体100bには、ブラックのインクが収容されてもよい。
【0014】
吐出実行部30は、液体吐出部31と、複数のチューブ32と、キャリッジ34とを備える。液体吐出部31の底面には、下方に向かって開口するノズル33が設けられている。液体吐出部31は、例えば、ピエゾ素子によるインクへの圧力の印加などにより、液体をノズル33から吐出する。キャリッジ34に液体吐出部31が搭載されている。キャリッジ34は、X方向に直線的に往復移動する。搬送ローラー36は、液体吐出部31の下方においてX方向に架設されている。搬送ローラー36は、媒体MPを搬送する。複数のチューブ32は、Y方向に配列されており、液体吐出部31と接続されている。
【0015】
液体供給部40は、4つの供給配管42と、継手部43と、吸引部45とを有する。4つの供給配管42のそれぞれは、4つの液体収容体100のそれぞれに接続されている。継手部43は、4つの供給配管42のそれぞれと、複数のチューブ32のそれぞれとを接続する。液体吐出部31には、4つの供給配管42、継手部43、および複数のチューブ32を介して、液体収容体100に収容されたインクが供給される。吸引部45は、液体収容体100から供給配管42にインクを送出するための圧力を発生する。
【0016】
制御部20は、液体噴射装置10における各部の駆動を制御する。制御部20は、少なくとも、中央処理装置と、主記憶装置と、を備えるマイクロコンピューターによって構成され、中央処理装置が主記憶装置に種々のプログラムを読み込んで実行することによって種々の機能を発揮する。
【0017】
図3は、液体供給部40を上から見た概略平面図である。
図4は、液体供給部40の概略斜視図である。
図3に示すように、ケース収納部60には、装着体105が外方から+Y方向に向かって差し込まれる。ケース収納部60には、4つの装着体105がX方向に配列されて収納される。
図3には、ケース収納部60における装着体105の配置位置である配置領域LAが一点鎖線で示されている。
【0018】
液体供給部40は、上述した構成の他に、4つの切替機構50と、圧力伝達配管46とを有する。4つの切替機構50は、配置領域LAの+Y方向側に配置されている。4つの切替機構50のそれぞれは、4つの配置領域LAのそれぞれに対応して配置されている。4つの切替機構50は、具体的には、3つの第1切替機構50aと、1つの第2切替機構50bとを含む。3つの第1切替機構50aのそれぞれは、3つの第1液体収容体100aのそれぞれに対応する。第2切替機構50bは、第2液体収容体100bに対応する。
【0019】
図4に示すように、各切替機構50は、供給針51を有する。供給針51は、液体収容体100に着脱可能に装着される。供給針51は、-Y方向に直線的に延びる管状の形状を有する。供給針51は、その先端部51tが、液体収容体100内に挿入されることによって、液体収容体100に接続される。そして、供給針51の内部を液体収容体100に収容された液体が流通する。圧力伝達配管46は、吸引部45が発生した圧力を伝達する。
【0020】
A2.液体収容体の構成:
図5は、第1ケース61aから第1液体収容体100aを取り出した状態における概略分解斜視図である。
図6は、アダプター部130を液体導出部材120から取り外した状態における概略分解斜視図である。第2装着体105bは、第1装着体105aと同様の構成を有する。よって、以下では、代表して第1装着体105aについて説明し、第2装着体105bの説明は省略する。
【0021】
ケース61は、上方が開放されたトレー状の容器である。ケース61は、例えば、ポリプロピレンなどの樹脂部材によって作製される。ケース61には、上方から液体収容体100が着脱可能に収納される。ケース61の+Y方向の端部には、ケース61の下面から上に向かって立ち上がる円柱形状の2つの案内部62が設けられている。2つの案内部62は、ケース61に液体収容体100が収容される場合に、後述するアダプター部130を案内する。
【0022】
液体収容体100は、
図5に示す袋110と、アダプター部130と、内部構造体200と、
図6に示す液体導出部材120とを備える。袋110は、液体としてのインクを内部に収容する。袋110は、一端部621から他端部622へ向かう-Y方向に長く、扁平な概形を有する。袋110は、袋状であり、可撓性を有する複数のフィルムが貼り付けることで形成されている。具体的には、複数のフィルムを重ね合わせて、周縁部の一部同士、および、周縁部の他の一部とアダプター部130とを熱溶着などの方法により接合することで袋110が形成される。本実施形態では、袋110は、後述する第1面111のフィルムと第2面112のフィルムと、X方向の両端部の各々に配置されたマチとなる2枚のフィルムとで形成されたいわゆるガゼットタイプの袋である。なお、袋110はガゼットタイプに限られず、2枚のフィルムにより形成された、いわゆるピロータイプの袋でもよい。袋110を構成するフィルムは、可撓性とガスバリア性を有する素材で形成されている。例えば、フィルムの素材としてはポリエチレンテレフタレート(PET),ナイロン,ポリエチレンなどが挙げられる。また、これらの素材で構成されたフィルムを複数積層した積層構造を用いてフィルムが形成されてもよい。このような積層構造では、例えば、外層を耐衝撃性に優れたPET又はナイロンによって形成し、内層を耐インク性に優れたポリエチレンによって形成してもよい。さらに、アルミニウムなどを蒸着した層を有するフィルムを積層構造の1つの構成部材としてもよい。
【0023】
袋110は、上面を形成する第1面111と、底面を形成する第2面112とを有する。第1面111および第2面112は、それぞれ1枚のフィルムで形成されている。重ね合わされた第1面111と第2面112との周囲が封止されて液体収容空間が形成されている。袋110は、一端部621と、一端部621と対向する他端部622とを有する。一端部621は、+Y方向側の端部である。他端部622は、-Y方向側の端部である。袋110内の液体が消費されるに伴って、袋110は、第1面111と第2面112とが互いに近づくように変形する。
【0024】
図7は、アダプター部130が装着された液体導出部材120を下方から見たときの斜視図である。
【0025】
図6に示すように、アダプター部130は、上から覆うように液体導出部材120に装着される。
図7に示すように、アダプター部130の上面には、Z方向に突出する2つの位置決め突起133が設けられている。そして、液体導出部材120には、2つの位置決め突起133のそれぞれが挿通されるZ方向に貫通する2つの位置決め孔122が設けられている。アダプター部130は、2つの位置決め孔122のそれぞれに、2つの位置決め突起133のそれぞれが挿通されて、液体導出部材120に装着される。
【0026】
図6に示すように、アダプター部130は、袋110の一端部621側に位置する。アダプター部130は、外形が概ね直方体である閉塞部134を有する。アダプター部130は、袋110に溶着された液体導出部材120に着脱可能に装着される。アダプター部130は、液体収容体100が液体噴射装置10に装着された装着状態において、液体噴射装置10の切替機構50に接続される。
図7に示すように、アダプター部130が装着された状態において、閉塞部134は、液体導出部材120の後方に位置する。
図6に示すように、アダプター部130は、+Y方向に開口している貫通孔部131を有する。貫通孔部131は、後述する液体導出部121を挿通させるための、Y方向に貫通する孔である。アダプター部130は、接続端子132を有する。接続端子132は、例えば回路基板の表面に設けられ、この回路基板は、液体収容体100に関する各種の情報を記憶する記憶部を含む。液体収容体100に関する情報には、例えば、液体収容体100の種類や液体の収容量等を表す情報が含まれる。
【0027】
図7に示すように、液体導出部材120は、上記構成に加え、液体を液体噴射装置10へ導出するための液体導出部121と、2つの円筒部123と、溶着部124とを有する。液体導出部材120は、袋110の一端部621に取り付けられている。
【0028】
図6に示すように、溶着部124に、袋110の一端部621が溶着される。
図7に示すように、Y方向について、液体導出部121と、2つの円筒部123とは、溶着部124を挟んで配置されている。溶着部124に袋110が溶着された状態では、2つの円筒部123は袋110内に位置し、液体導出部121は、袋110の外に位置する。液体導出部121および2つの円筒部123は、それぞれ、軸方向がY方向に平行な円筒形状を有する。2つの円筒部123は、X方向に並んでいる。各円筒部123の内部空間は、液体導出部121の内部空間と連通している。2つの円筒部123には、それぞれ、
図5に示す、後述する第1液体導出管140aと、第2液体導出管140bとが装着される。以下の説明において、第1液体導出管140aと第2液体導出管140bとを総称して、液体導出管140とも呼ぶ。液体収容体100が新品の状態では、液体導出部121の先端にはフィルムが溶着されている。そして、液体収容体100が液体噴射装置10に装着されると、液体導出部121に溶着されたフィルムは、供給針51によって破られる。
【0029】
図8は、内部構造体200の分解斜視図である。
図9は、内部構造体200の斜視図である。
図10は、内部構造体200の内部構造を模式的に示す図である。
図11は、内部構造体200を前方から見た内部構造体200の正面図である。
図12は、スペーサー部材160を上方から見た斜視図である。
図13は、スペーサー部材160を下方から見た斜視図である。
図12および
図13では、後述するフィルター171およびフィルム172が接合されていない状態のスペーサー部材160が示されている。
【0030】
図8に示すように、内部構造体200は、複数の液体導出管140と、スペーサー部材160と、フィルター171と、フィルム172とを有する。液体導出管140の端部に、スペーサー部材160が取り付けられている。スペーサー部材160に、フィルター171と、フィルム172とが取り付けられている。
【0031】
図5に示すように、複数の液体導出管140は、液体導出部材120と接続されて袋110の内部空間である液体収容部110aに配置される。複数の液体導出管140は、第1液体導出管140aと、第2液体導出管140bとを含む。各液体導出管140は、可撓性を有するチューブである。各液体導出管140の材料として、例えば、エラストマーやポリプロピレンなどの合成樹脂を用いることができる。各液体導出管140の材料は、袋110内のインクとの反応性を有さない材料が好ましい。本実施形態では、各液体導出管140の材料はエラストマーである。各液体導出管140は、可撓性を有することにより、液体収容体100が落下するなどして衝撃を受けた場合にも、外力に応じてたわむことができるため、袋110を内側から押して傷付けることを抑制することができる。
【0032】
スペーサー部材160は、袋110の液体収容部110aに一定の容積の領域を区画するための構造物である。スペーサー部材160は、袋110の厚み方向への収縮を規制する。スペーサー部材160は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂によって形成されている。
【0033】
図8に示すように、スペーサー部材160は、規制構造体901と、フィルター部902とを有する。規制構造体901とフィルター部902とは、Y方向に並んで接している。本実施形態では、規制構造体901とフィルター部902とは一体成形されているが、規制構造体901とフィルター部902とは別体のものとして形成された後に、一体的に接合あるいは組み立てられてもよい。
【0034】
規制構造体901は、袋110の厚み方向への収縮を規制するスペーサーとしての機能を果たす部分である。規制構造体901は、-Y方向の先端に向かうにつれ、Z方向の厚さが薄くなり、先端が尖った概形を有する。
図10に示すように、規制構造体901は、-Z方向を向く傾斜面91と、+Z方向を向く傾斜面91とを有する。そして、2つの傾斜面91は、XY平面に対して傾斜している。-Z方向を向く傾斜面91は、-Y方向に向かうにつれ、+Z方向に向かうように傾斜する。+Z方向を向く傾斜面91は、-Y方向に向かうにつれ、-Z方向に向かうように傾斜する。
【0035】
図8に示すように、本実施形態では、2つの傾斜面91のそれぞれには、X方向に沿って延びる複数の溝が形成されている。なお、本実施形態において、「面」とは、平面だけで構成された面だけではなく、その表面に溝や凹部などが形成された面や、その表面に突起や凸部が形成された面、枠に囲われた仮想的な面、も含む。つまり、全体として「面」として把握可能であれば、その面が占める一定領域に、凹凸や貫通穴があっても構わない。
【0036】
図8に示すように、フィルター部902は、フィルター室170を有している。
図10に示すように、フィルター室170は、スペーサー部材160の上面から+Z方向に凹んだ部分である。フィルター室170は、開口部905がフィルム172により閉塞されることにより、区画されている。フィルム172は、開口部905の縁部に溶着されている。
【0037】
図10に示すように、フィルター室170内には、液体を濾過するフィルター171が配置される。
図8に示すように、フィルター室170を区画する側壁には、フィルター171を溶着するための内部周縁部906が設けられている。そして、内部周縁部906にフィルター171が溶着されている。本実施形態では、フィルター171は、XY平面と平行に取り付けられている。
【0038】
図10に示すように、フィルター室170は、フィルター171によって上部空間S1と下部空間S2とに区画される。本実施形態において、液体を濾過するためのフィルター171は、SUS製の金属メッシュによって形成されている。フィルター171は、金属不織布によって形成されてもよい。フィルター171は、袋110内に混入した異物、あるいは、袋110内で発生した異物を取り除く。
【0039】
スペーサー部材160は、さらに、フィルター室170と連通する第1液体導入口92および第2液体導入口93を備える。第1液体導入口92および第2液体導入口93は、フィルター室170に液体を取り入れるための開口である。第1液体導入口92および第2液体導入口93は、より具体的には、フィルター室170の上部空間S1に連通する。第1液体導入口92の流路と、第2液体導入口93の流路とは、上部空間S1よりも上流に位置する合流部907にて合流する。
図8および
図12に示すように、合流部907には、合流部907を区画する底面から-Z方向に突出するリブ908が設けられている。リブ908が設けられていることにより、フィルム172が合流部907を区画する底面に接触することを防止できる。
【0040】
図10に示すように、第1液体導入口92と、第2液体導入口93とは、液体収容体100の使用状態において、高さ方向において異なる位置に配置されている。具体的には、液体収容体100の使用状態において、第2液体導入口93は第1液体導入口92よりもZ方向において高い位置に配置されている。これにより、液体が沈降成分を含む場合に、袋110内の上部における濃度の低い液体と、袋110内の下部における濃度の高い液体とをスペーサー部材160内で混合して液体噴射装置に供給できる。よって、液体噴射装置10に供給する液体の濃度を安定させることができる。第2液体導入口93は、フィルター室170の-Y方向側の端部であって、規制構造体901の上端付近に、-Y方向を向くように形成されている。一方、第1液体導入口92は、規制構造体901の下端付近に、+Z方向を向くように形成されている。本実施形態において、第1液体導入口92の開口面積は、第2液体導入口93の開口面積よりも大きい。開口面積とは、それぞれの導入口が、袋110内の空間に向けて開口する部分の面積である。これにより、第1液体導入口92の流路抵抗を第2液体導入口93の流路抵抗よりも小さくできる。よって、液体が沈降成分を含む場合、袋110内の上部よりも濃度の高い袋110内の下部の液体を優先的に液体噴射装置10に供給できる。
【0041】
図11に示すように、規制構造体901には、さらに、Y方向に延びる第1溝912および第2溝913を有する。
図13に示すように、第1溝912は、+Zを向く傾斜面91に形成されている。第1溝912は、Y方向について、規制構造体901の-Y方向の端部から第1液体導入口92に亘って形成されている。同様に、
図12に示すように、第2溝913は、-Zを向く傾斜面91に形成されている。第2溝913は、Y方向について、規制構造体901の-Y方向の端部から第2液体導入口93に亘って形成されている。
図11に示すように、第1溝912は、+Zを向く傾斜面91から、-Z方向に凹んで形成されている。第1溝912の底面は、XY平面と略平行であり、規制構造体901の中心軸CXを通るXY平面に近い。同様に、第2溝913は、-Zを向く傾斜面91から、+Z方向に凹んで形成されている。第2溝913の底面は、XY平面と略平行であり、中心軸CXを通るXY平面に近い。
図10に示すように、第1溝912が形成されていることにより、液体収容体100内において、第1液体導入口92の前方にある液体は、第1溝912を流通して、第1液体導入口92に導入される。同様に、第2溝913が形成されていることにより、第2液体導入口93の前方にある液体は、第2溝913を流通して、第2液体導入口93に導入される。よって、第1溝912および第2溝913が形成されていることにより、第1液体導入口92および第2液体導入口93に液体を導入し易くすることができる。
【0042】
図8に示すように、フィルター部902の+Y方向の端部には、2つの筒状の第2凸部141,142がX方向に並んで配置されている。
図10に示すように、第2凸部141,142のそれぞれの内部空間は、フィルター室170の下部空間S2と連通する。
図8に示すように、第2凸部141,142には、それぞれ、第1液体導出管140aと、第2液体導出管140bとが接続される。
【0043】
図10に示すよう、第1液体導入口92と第2液体導入口93とのそれぞれから流入した液体は、合流部907で合流した後に、上部空間S1からフィルター171を通過して下部空間S2に流れ込む。これにより、液体は、フィルター171によって濾過される。フィルター171によって濾過された液体は、第2凸部141,142、各液体導出管140、各円筒部123内の流路を通り、液体導出部材120内で合流した後、液体導出部121から外部に導出される。よって、異物が取り除かれた液体を液体噴射装置10に供給することができる。
【0044】
以上説明した第1実施形態によれば、各液体導出管140は、可撓性を有するため、衝撃を受けた場合に、受けた外力に従ってたわむことができるため、スペーサー部材160が袋110を内部から傷つけることを抑制することができる。
【0045】
B.第2実施形態:
図14は、第2実施形態に係る液体収容体2100の平面図である。本実施形態では、液体収容体2100に収容された液体が消費された後、液体を再補充して液体収容体2100を再び使用できるための工夫が施されている。
図14に示すように、本実施形態に係る液体収容体2100は、液体導出部材120およびアダプター部130をそれぞれ2つ有する点が、第1実施形態に係る液体収容体100とは異なる。第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0046】
本実施形態では、液体収容体2100の一端部621には液体導出部材120が取り付けられていると共に、液体収容体2100の他端部622に液体導出部材120が取り付けられている。一端部621に取り付けられた液体導出部材120には、第1実施形態と同様に、内部構造体200が取り付けられている。対して、他端部622に取り付けられた液体導出部材120には、内部構造体200は取り付けられていない。上記のように、他端部622に取り付けられた液体導出部材120は、袋110の内部と連通する液体の流路が形成された液体流路部としての液体導出部121を備える。
【0047】
他端部622に液体導出部材120が取り付けられていることにより、液体収容体100に収容された液体が消費された後、他端部622に取り付けられた液体導出部材120の液体導出部121を通じて、袋110内に液体を再充填することができる。さらに、他端部622に取り付けられた液体導出部材120を用いて液体を再充填することにより、再充填された液体を液体噴射装置10へ供給する過程で、フィルター171を用いて液体から異物を適切に取り除くことができる。
【0048】
仮に、一端部621に取り付けられた液体導出部121から液体を再充填する場合であって、液体に異物が含まれる場合には、異物は、
図10に示すフィルター171に捕捉され、下部空間S2内に留まることになる。そして、液体噴射装置10に液体を供給する過程において、下部空間S2内に留まった異物は、液体噴射装置10に供給される。この点、本実施形態によれば、再充填される液体に異物が含まれる場合であっても、再充填される液体は、内部構造体200を介さずに袋110内に充填される。このため、液体を液体噴射装置10に供給する過程で、液体に含まれる異物をフィルター171により取り除くことができる。
【0049】
本実施形態では、他端部622に取り付けられた液体導出部材120にはアダプター部130が装着されている。これにより、他端部622の液体導出部121を保護することができる。また、他端部622に取り付けられた液体導出部材120は、一端部621に取り付けられた液体導出部材120と同じである。これにより、共通の液体導出部材120を使用できるため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0050】
以上説明した第2実施形態によれば、液体収容体2100は、内部構造体200が取り付けられた一端部621の液体導出部材120とは別に、袋110の内部と連通する他端部622に取り付けられた液体導出部121を備える。よって、フィルター171を通過させることなく、他端部622の液体導出部121を通じて、再充填用の液体を液体収容体2100に注入することができる。また、再充填に用いられる液体導出部121は、他端部622に取り付けられている。これにより、袋110の一端部621から他端部622までの長さを変更することにより、液体収容体2100を既存の液体噴射装置10に用いることができる。
【0051】
C.第3実施形態:
図15は、第3実施形態に係る液体収容体3100の斜視図である。
図16は、アダプター部130が装着された第3実施形態に係る液体導出部材3120の斜視図である。本実施形態においても、第2実施形態と同じく、液体収容体3100に収容された液体が消費された後、液体を再補充して液体収容体3100を再び使用できるための工夫が施されている。
図15に示すように、本実施形態に係る液体収容体3100は、液体導出部材3120に液体流路部125が設けられている点が、第1実施形態に係る液体収容体100とは異なる。第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0052】
図15に示すように、液体導出部材3120に、液体流路部125が形成されている。具体的には、
図16に示すように、液体流路部125は、溶着部124の-X方向の端部に位置する。液体流路部125のY方向に貫通する貫通孔が、袋110の内部と連通する液体の流路となる。液体流路部125は、液体導出部材3120、具体的には、溶着部124の表面に開口する流路口125aを有する。流路口125aには、図示しないフィルムが溶着されている。
【0053】
液体導出部材3120に液体流路部125が設けられていることにより、液体収容体3100に収容された液体が消費された後、液体流路部125を通じて、袋110内に液体を再充填することができる。さらに、液体流路部125を用いて液体を再充填することにより、第2実施形態と同様に、再充填された液体を液体噴射装置10へ供給する過程で、フィルター171を用いて液体から異物を適切に取り除くことができる。なお、液体を再充填する場合には、流路口125aに溶着されたフィルムが取り外された後、液体が再充填され、その後流路口125aに再びフィルムが溶着される。
【0054】
図16に示すように、アダプター部130の閉塞部134は、流路口125aを覆う。これにより、流路口125aを保護することができる。また、流路口125aが閉塞部134に覆われることにより、流路口125aはユーザーから視認しにくくなるため、ユーザーが誤って流路口125aに触れることを抑制することができる。
【0055】
以上説明した第3実施形態によれば、液体導出部材3120は、液体導出部121とは別に、液体流路部125を有する。よって、フィルター171を通過させることなく、液体流路部125を通じて、再充填用の液体を液体収容体3100に注入することができる。また、アダプター部130は、流路口125aを覆う閉塞部134を有するため、流路口125aを保護することができる。
【0056】
D.他の実施形態
(D1)上記第2実施形態では、再充填用の液体導出部材120に他端部622に取り付けられている。再充填用の液体導出部材120の取り付け位置は、他端部622に限られず、例えば、袋110のY方向と平行な辺でもよい。
【0057】
E.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0058】
(1)本開示の第1形態によれば、液体収容体が提供される。この液体収容体は、可撓性を有し、内部に液体を収容するための袋と、前記袋の一端部に取り付けられ、前記液体を液体噴射装置へ導出するための液体導出部を有する液体導出部材と、前記袋内に配置され、前記液体を濾過するフィルターが配置されたフィルター室を有するスペーサー部材と、前記袋内に配置され、前記フィルター室と前記液体導出部材とに接続され、前記フィルターによって濾過された前記液体を前記液体導出部へ流すための液体導出管と、を備え、前記液体導出管は、可撓性を有する。この形態によれば、液体導出管は可撓性を有するため、衝撃を受けた場合に受けた外力に従ってたわみ、スペーサー部材が袋を内部から傷つけることを抑制することができる。
【0059】
(2)上記形態の液体収容体において、さらに、前記液体導出部とは別に、前記袋の内部と連通する前記液体の流路が形成された液体流路部を備えてもよい。この形態によれば、液体流路部は、液体導出部とは別であるため、フィルターを通過させることなく、液体流路部を通じて、再充填用の液体を液体収容体に注入することができる。
【0060】
(3)上記形態の液体収容体において、前記袋の前記一端部に対向する前記袋の他端部に取り付けられていてもよい。この形態によれば、袋の一端部から他端部までの長さを変更することにより、既存の液体噴射装置に用いることができる。
【0061】
(4)上記形態の液体収容体において、前記液体流路部は、前記液体導出部材に形成されていてもよい。この形態によれば、部材を増やさずに液体流路部を設けることができる。
【0062】
(5)上記形態の液体収容体において、さらに、前記液体導出部材と着脱可能に装着され、前記液体導出部材を前記液体噴射装置に接続するためのアダプター部を備え、前記液体流路部は、前記液体導出部材の表面に開口する流路口を有し、前記アダプター部は、前記流路口を覆う閉塞部を有していてもよい。この形態によれば、閉塞部により、流路口を保護することができる。
【0063】
本開示は、上記形態の他に、液体収容体の製造方法、液体噴射装置と液体収容体とを備えた液体噴出システムなどの形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…液体噴射装置、10c…ハウジング、12…前面部、13…操作部、14…媒体排出口、15…媒体受部、18…カバー部材、20…制御部、30…吐出実行部、31…液体吐出部、32…チューブ、33…ノズル、34…キャリッジ、36…搬送ローラー、40…液体供給部、42…供給配管、43…継手部、45…吸引部、46…圧力伝達配管、50…切替機構、50a…第1切替機構、50b…第2切替機構、51…供給針、51t…先端部、60…ケース収納部、61…ケース、61a…第1ケース、61b…第2ケース、62…案内部、91…傾斜面、92…第1液体導入口、93…第2液体導入口、100,2100,3100…液体収容体、100a…第1液体収容体、100b…第2液体収容体、105…装着体、105a…第1装着体、105b…第2装着体、110…袋、110a…液体収容部、111…第1面、112…第2面、120,3120…液体導出部材、121…液体導出部、122…孔、123…円筒部、124…溶着部、125…液体流路部、125a…流路口、130…アダプター部、131…貫通孔部、132…接続端子、133…突起、134…閉塞部、140…液体導出管、140a…第1液体導出管、140b…第2液体導出管、141,142…第2凸部、160…スペーサー部材、170…フィルター室、171…フィルター、172…フィルム、200…内部構造体、621…一端部、622…他端部、901…規制構造体、902…フィルター部、905…開口部、906…内部周縁部、907…合流部、908…リブ、912…第1溝、913…第2溝、CX…中心軸、LA…配置領域、MP…媒体、S1…上部空間、S2…下部空間