IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧 ▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図1
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図2
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図3
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図4
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図5
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図6
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図7
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図8
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図9
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図10
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図11
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図12
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図13
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図14
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図15
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図16
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図17
  • 特開-電力変換装置、プログラム 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065970
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】電力変換装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
H02M7/12 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175109
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】小林 尚斗
(72)【発明者】
【氏名】越智 健次
(72)【発明者】
【氏名】金 寛烈
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA01
5H006CA02
5H006CB01
5H006CC01
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
(57)【要約】
【課題】コモンモードフィルタを備える新たな電力変換装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】電力変換装置10は、複数相の交流端子Tac1~Tac3と、直流端子TdcH,TdcLと、交流端子Tac1~Tac3から入力された交流電力を直流電力に変換して直流端子TdcH,TdcLから出力する。電力変換装置10は、第1~第3経路41~43と、第1~第3経路41~43に設けられた第1~第3インダクタ31~33と、コモンモードフィルタ35とを備えている。コモンモードフィルタ35は、第1~第4コイル36A~36Dを備えている。第1~第3コイル36A~36Cは、第1~第3経路41~43に設けられている。第3コイル36Cには、第4コイル36Dが並列接続されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相の交流端子(Tac1~Tac4)と、
直流端子(TdcH,TdcL)と、
前記交流端子から入力された交流電力を直流電力に変換して前記直流端子から出力する機能、及び前記直流端子から入力された直流電力を交流電力に変換して前記交流端子から出力する機能のうち少なくとも一方の機能を有する交流直流変換回路(S1H~S4L)と、
を備える電力変換装置(10)において、
各相に対応して設けられ、前記交流直流変換回路及び前記交流端子を接続する電気経路(41~43,140,210)と、
コモンモードフィルタ(35,135)と、
を備え、
前記コモンモードフィルタは、
各相の前記電気経路に設けられたコイル(36A~36C,136A~136D)と、
前記各コイルのうち少なくとも1つに並列接続された特定コイル(36D,136E)と、
前記各コイル及び前記特定コイルが巻回されたコア(37)と、
を有する、電力変換装置。
【請求項2】
前記交流端子として、第1交流端子(Tac1)、第2交流端子(Tac2)及び第3交流端子(Tac3)が備えられ、
前記直流端子として、高電位側直流端子(TdcH)及び低電位側直流端子(TdcL)が備えられ、
前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に3相交流電源(21)が接続可能に構成され、前記第1交流端子及び前記第3交流端子に単相交流電源(22)が接続可能に構成されており、
前記交流直流変換回路は、
第1上アームスイッチ(S1H)及び第1下アームスイッチ(S1L)の直列接続体と、
第2上アームスイッチ(S2H)及び第2下アームスイッチ(S2L)の直列接続体と、
第3上アームスイッチ(S3H)及び第3下アームスイッチ(S3L)の直列接続体と、
を有し、
前記電気経路として、
前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチの接続点と前記第1交流端子とを電気的に接続する第1経路(41)と、
前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチの接続点と前記第2交流端子とを電気的に接続する第2経路(42)と、
前記第3上アームスイッチ及び前記第3下アームスイッチの接続点と前記第3交流端子とを電気的に接続する第3経路(43)と、
が備えられ、
前記第1経路に設けられた第1インダクタ(31)と、
前記第2経路に設けられた第2インダクタ(32)と、
前記第3経路に設けられた第3インダクタ(33)と、
を備え、
前記第1,第2,第3上アームスイッチの高電位側端子が、前記高電位側直流端子に電気的に接続されており、
前記第1,第2,第3下アームスイッチの低電位側端子が、前記低電位側直流端子に電気的に接続されており、
前記コモンモードフィルタ(35)を構成する前記コイルとして、
前記第1経路のうち前記第1インダクタよりも前記第1交流端子側に設けられた第1コイル(36A)と、
前記第2経路のうち前記第2インダクタよりも前記第2交流端子側に設けられた第2コイル(36B)と、
前記第3経路のうち前記第3インダクタよりも前記第3交流端子側に設けられた第3コイル(36C)と、
が備えられる、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1交流端子と前記第2交流端子とを電気的に接続する単相充電スイッチ(46)と、
前記制御部(70)と、
を備え、
前記特定コイル(36D)は、前記第3コイルに並列接続されており、
前記制御部は、前記第1交流端子及び前記第3交流端子に前記単相交流電源が接続されていると判定した場合、前記単相充電スイッチをオンした状態において、前記第1交流端子及び前記第3交流端子と前記高電位側直流端子及び前記低電位側直流端子との間で電力変換を行うべく、前記第1上アームスイッチ、前記第1下アームスイッチ、前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチのスイッチング制御を行う、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記交流端子として、第1交流端子(Tac1)、第2交流端子(Tac2)、第3交流端子(Tac3)及び第4交流端子(Tac4)が備えられ、
前記直流端子として、高電位側直流端子(TdcH)及び低電位側直流端子(TdcL)が備えられ、
前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に3相交流電源(21)が接続可能に構成され、前記第1交流端子及び前記第4交流端子に単相交流電源(22)が接続可能に構成されており、
前記交流直流変換回路は、
第1上アームスイッチ(S1H)及び第1下アームスイッチ(S1L)の直列接続体と、
第2上アームスイッチ(S2H)及び第2下アームスイッチ(S2L)の直列接続体と、
第3上アームスイッチ(S3H)及び第3下アームスイッチ(S3L)の直列接続体と、
上アーム整流部(S4H)及び下アーム整流部(S4L)の直列接続体と、
を有し、
前記電気経路として、
前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチの接続点と前記第1交流端子とを電気的に接続する第1経路(41)と、
前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチの接続点と前記第2交流端子とを電気的に接続する第2経路(42)と、
前記第3上アームスイッチ及び前記第3下アームスイッチの接続点と前記第3交流端子とを電気的に接続する第3経路(43)と、
が備えられ、
前記第1経路に設けられた第1インダクタ(31)と、
前記第2経路に設けられた第2インダクタ(32)と、
前記第3経路に設けられた第3インダクタ(33)と、
前記第1交流端子と前記第2交流端子とを電気的に接続する第1単相充電スイッチ(46)と、
第2単相充電スイッチ(47)と、
第3単相充電スイッチ(48)と、
前記制御部(70)と、
を備え、
前記第1,第2,第3上アームスイッチの高電位側端子が、前記高電位側直流端子に電気的に接続されており、
前記第1,第2,第3下アームスイッチの低電位側端子が、前記低電位側直流端子に電気的に接続されており、
前記コモンモードフィルタ(35)を構成する前記コイルとして、
前記第1経路のうち前記第1インダクタよりも前記第1交流端子側に設けられた第1コイル(36A)と、
前記第2経路のうち前記第2インダクタよりも前記第2交流端子側に設けられた第2コイル(36B)と、
前記第3経路のうち前記第3インダクタよりも前記第3交流端子側に設けられた第3コイル(36C)と、
が備えられ、
前記第2単相充電スイッチは、前記上アーム整流部及び前記下アーム整流部の接続点と、前記第3経路のうち前記第3コイルよりも前記第3インダクタ側の部分とを電気的に接続し、
前記第3単相充電スイッチは、前記第4交流端子と、前記第3経路のうち前記第3コイルよりも前記第3交流端子側の部分とを電気的に接続し、
前記制御部は、前記第1交流端子及び前記第4交流端子に前記単相交流電源が接続されていると判定した場合、前記第1単相充電スイッチ、前記第2単相充電スイッチ及び前記第3単相充電スイッチをオンした状態において、前記第1交流端子及び前記第4交流端子と前記高電位側直流端子及び前記低電位側直流端子との間で電力変換を行うべく、前記第1上アームスイッチ、前記第1下アームスイッチ、前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチのスイッチング制御を行い、
前記特定コイル(36D)は、前記第3コイルに並列接続されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第3経路のうち、前記第2単相充電スイッチとの接続点よりも前記第3インダクタ側の部分に設けられた3相充電スイッチ(49)を備え、
前記制御部は、前記第1交流端子及び前記第4交流端子に前記単相交流電源が接続されていると判定した場合、前記第1単相充電スイッチ、前記第2単相充電スイッチ及び前記第3単相充電スイッチをオンするとともに前記3相充電スイッチをオフした状態において、前記第1交流端子及び前記第4交流端子と前記高電位側直流端子及び前記低電位側直流端子との間で電力変換を行うべく、前記第1上アームスイッチ、前記第1下アームスイッチ、前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチのスイッチング制御を行う、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記上アーム整流部及び前記下アーム整流部は、自身の低電位側端子から高電位側端子への電流の流通を許容する、請求項4又は5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記特定コイルは1つであり、
前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイル及び前記特定コイルの定格電流は同じ値に設定されている、請求項2~5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
第1交流端子(Tac1)、第2交流端子(Tac2)及び第3交流端子(Tac3)と、
高電位側直流端子(TdcH)及び低電位側直流端子(TdcL)と、
コンピュータ(71)と、
を備える電力変換装置(10)であって、
前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に3相交流電源(21)が接続可能に構成され、前記第1交流端子及び前記第3交流端子に単相交流電源(22)が接続可能に構成された電力変換装置に適用されるプログラムにおいて、
前記電力変換装置は、
第1上アームスイッチ(S1H)及び第1下アームスイッチ(S1L)の直列接続体と、
第2上アームスイッチ(S2H)及び第2下アームスイッチ(S2L)の直列接続体と、
第3上アームスイッチ(S3H)及び第3下アームスイッチ(S3L)の直列接続体と、
前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチの接続点と前記第1交流端子とを電気的に接続する第1経路(41)と、
前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチの接続点と前記第2交流端子とを電気的に接続する第2経路(42)と、
前記第3上アームスイッチ及び前記第3下アームスイッチの接続点と前記第3交流端子とを電気的に接続する第3経路(43)と、
前記第1経路に設けられた第1インダクタ(31)と、
前記第2経路に設けられた第2インダクタ(32)と、
前記第3経路に設けられた第3インダクタ(33)と、
前記第1交流端子と前記第2交流端子とを電気的に接続する単相充電スイッチ(46)と、
コモンモードフィルタ(35)と、
を備え、
前記第1,第2,第3上アームスイッチの高電位側端子が、前記高電位側直流端子に電気的に接続されており、
前記第1,第2,第3下アームスイッチの低電位側端子が、前記低電位側直流端子に電気的に接続されており、
前記コモンモードフィルタは、
前記第1経路のうち前記第1インダクタよりも前記第1交流端子側に設けられた第1コイル(36A)と、
前記第2経路のうち前記第2インダクタよりも前記第2交流端子側に設けられた第2コイル(36B)と、
前記第3経路のうち前記第3インダクタよりも前記第3交流端子側に設けられた第3コイル(36C)と、
特定コイル(36D)と、
前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイル及び前記特定コイルが巻回されたコア(37)と、
を有し、
前記特定コイル(36D)は、前記第3コイルに並列接続されており、
前記コンピュータに
前記第1交流端子及び前記第3交流端子に前記単相交流電源が接続されているか否かを判定する処理と、
前記第1交流端子及び前記第3交流端子に前記単相交流電源が接続されていると判定した場合、前記単相充電スイッチをオンした状態において、前記第1交流端子及び前記第3交流端子と前記高電位側直流端子及び前記低電位側直流端子との間で電力変換を行うべく、前記第1上アームスイッチ、前記第1下アームスイッチ、前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチのスイッチング制御を行う処理と、
を実行させる、プログラム。
【請求項9】
第1交流端子(Tac1)、第2交流端子(Tac2)、第3交流端子(Tac3)及び第4交流端子(Tac4)と、
高電位側直流端子(TdcH)及び低電位側直流端子(TdcL)と、
コンピュータ(71)と、
を備える電力変換装置(10)であって、
前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に3相交流電源(21)が接続可能に構成され、前記第1交流端子及び前記第4交流端子に単相交流電源(22)が接続可能に構成された電力変換装置に適用されるプログラムにおいて、
前記電力変換装置は、
第1上アームスイッチ(S1H)及び第1下アームスイッチ(S1L)の直列接続体と、
第2上アームスイッチ(S2H)及び第2下アームスイッチ(S2L)の直列接続体と、
第3上アームスイッチ(S3H)及び第3下アームスイッチ(S3L)の直列接続体と、
上アーム整流部(S4H)及び下アーム整流部(S4L)の直列接続体と、
前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチの接続点と前記第1交流端子とを電気的に接続する第1経路(41)と、
前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチの接続点と前記第2交流端子とを電気的に接続する第2経路(42)と、
前記第3上アームスイッチ及び前記第3下アームスイッチの接続点と前記第3交流端子とを電気的に接続する第3経路(43)と、
前記第1経路に設けられた第1インダクタ(31)と、
前記第2経路に設けられた第2インダクタ(32)と、
前記第3経路に設けられた第3インダクタ(33)と、
前記第1交流端子と前記第2交流端子とを電気的に接続する第1単相充電スイッチ(46)と、
第2単相充電スイッチ(47)と、
第3単相充電スイッチ(48)と、
コモンモードフィルタ(35)と、
を備え、
前記第1,第2,第3上アームスイッチの高電位側端子が、前記高電位側直流端子に電気的に接続されており、
前記第1,第2,第3下アームスイッチの低電位側端子が、前記低電位側直流端子に電気的に接続されており、
前記コモンモードフィルタは、
前記第1経路のうち前記第1インダクタよりも前記第1交流端子側に設けられた第1コイル(36A)と、
前記第2経路のうち前記第2インダクタよりも前記第2交流端子側に設けられた第2コイル(36B)と、
前記第3経路のうち前記第3インダクタよりも前記第3交流端子側に設けられた第3コイル(36C)と、
特定コイル(36D)と、
前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイル及び前記特定コイルが巻回されたコア(37)と、
を有し、
前記第2単相充電スイッチは、前記上アーム整流部及び前記下アーム整流部の接続点と、前記第3経路のうち前記第3コイルよりも前記第3インダクタ側の部分とを電気的に接続し、
前記第3単相充電スイッチは、前記第4交流端子と、前記第3経路のうち前記第3コイルよりも前記第3交流端子側の部分とを電気的に接続し、
前記特定コイル(36D)は、前記第3コイルに並列接続されており、
前記コンピュータに
前記第1交流端子及び前記第4交流端子に前記単相交流電源が接続されているか否かを判定する処理と、
前記第1交流端子及び前記第4交流端子に前記単相交流電源が接続されていると判定した場合、前記第1単相充電スイッチ、前記第2単相充電スイッチ及び前記第3単相充電スイッチをオンした状態において、前記第1交流端子及び前記第3交流端子と前記高電位側直流端子及び前記低電位側直流端子との間で電力変換を行うべく、前記第1上アームスイッチ、前記第1下アームスイッチ、前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチのスイッチング制御を行う処理と、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数相の交流端子と、直流端子と、交流直流変換回路とを備える電力変換装置が知られている。交流直流変換回路は、交流端子から入力された交流電力を直流電力に変換して直流端子から出力する機能、及び直流端子から入力された直流電力を交流電力に変換して交流端子から出力する機能のうち少なくとも一方の機能を有している。このような電力変換装置としては、例えば、特許文献1に記載されているように、3相交流電源及び単相交流電源の双方に対応した電力変換装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2022-503713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換装置のEMC規格の要求を満たすために、電力変換装置にコモンモードフィルタが備えられることがある。
【0005】
本発明は、コモンモードフィルタを備える新たな電力変換装置及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、複数相の交流端子と、
直流端子と、
前記交流端子から入力された交流電力を直流電力に変換して前記直流端子から出力する機能、及び前記直流端子から入力された直流電力を交流電力に変換して前記交流端子から出力する機能のうち少なくとも一方の機能を有する交流直流変換回路と、
を備える電力変換装置において、
各相に対応して設けられ、前記交流直流変換回路及び前記交流端子を接続する電気経路と、
コモンモードフィルタと、
を備え、
前記コモンモードフィルタは、
各相の前記電気経路に設けられたコイルと、
前記各コイルのうち少なくとも1つに並列接続された特定コイルと、
前記各コイル及び前記特定コイルが巻回されたコアと、
を有する。
【0007】
第1の発明によれば、各電気経路に電流が流れる場合において、特定コイルが並列接続されたコイルと、特定コイルとで流通電流を分配できる。各コイルのうち流通電流が他のコイルよりも相対的に大きくなる対象コイルに特定コイルが並列接続されることにより、対象コイルに流れる電流を低減できる。その結果、対象コイルの定格電流を低減することができる。このように、第1の発明によれば、コモンモードフィルタを備える新たな電力変換装置を提供することができる。
【0008】
第1の発明は、例えば以下の第2の発明のように具体化できる。第2の発明では、前記交流端子として、第1交流端子、第2交流端子及び第3交流端子が備えられ、
前記直流端子として、高電位側直流端子及び低電位側直流端子が備えられ、
前記第1交流端子、前記第2交流端子及び前記第3交流端子に3相交流電源が接続可能に構成され、前記第1交流端子及び前記第3交流端子に単相交流電源が接続可能に構成されており、
前記交流直流変換回路は、
第1上アームスイッチ及び第1下アームスイッチの直列接続体と、
第2上アームスイッチ及び第2下アームスイッチの直列接続体と、
第3上アームスイッチ及び第3下アームスイッチの直列接続体と、
を有し、
前記電気経路として、
前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチの接続点と前記第1交流端子とを電気的に接続する第1経路と、
前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチの接続点と前記第2交流端子とを電気的に接続する第2経路と、
前記第3上アームスイッチ及び前記第3下アームスイッチの接続点と前記第3交流端子とを電気的に接続する第3経路と、
が備えられ、
前記第1経路に設けられた第1インダクタと、
前記第2経路に設けられた第2インダクタと、
前記第3経路に設けられた第3インダクタと、
前記第1交流端子と前記第2交流端子とを電気的に接続する単相充電スイッチと、
前記制御部と、
を備え、
前記第1,第2,第3上アームスイッチの高電位側端子が、前記高電位側直流端子に電気的に接続されており、
前記第1,第2,第3下アームスイッチの低電位側端子が、前記低電位側直流端子に電気的に接続されており、
前記制御部は、前記第1交流端子及び前記第3交流端子に前記単相交流電源が接続されていると判定した場合、前記単相充電スイッチをオンした状態において、前記第1交流端子及び前記第3交流端子と前記高電位側直流端子及び前記低電位側直流端子との間で電力変換を行うべく、前記第1上アームスイッチ、前記第1下アームスイッチ、前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチのスイッチング制御を行い、
前記コモンモードフィルタを構成する前記コイルとして、
前記第1経路のうち前記第1インダクタよりも前記第1交流端子側に設けられた第1コイルと、
前記第2経路のうち前記第2インダクタよりも前記第2交流端子側に設けられた第2コイルと、
前記第3経路のうち前記第3インダクタよりも前記第3交流端子側に設けられた第3コイルと、
が備えられ、
前記特定コイルは、前記第3コイルに並列接続されている。
【0009】
第2の発明では、制御部は、単相充電スイッチをオンした状態において、第1交流端子及び第3交流端子と高電位側直流端子及び低電位側直流端子との間で電力変換を行うべく、第1上アームスイッチ、第1下アームスイッチ、第2上アームスイッチ及び第2下アームスイッチのスイッチング制御を行う。単相充電スイッチがオンされているため、単相交流電源が用いられる電力変換時において、第1~第3経路全てを電力伝達経路として用いることができる。このため、電力変換時における伝達電力を増加させることができる。
【0010】
この場合において、第1,第2経路に流れる電流よりも第3経路に流れる電流が大きくなる。そこで、第2の発明では、コモンモードフィルタを構成する特定コイルが、第3経路に設けられた第3コイルに並列接続されている。このため、第3コイルに流れる電流を低減でき、第3コイルの定格電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る車載充電器の全体構成図。
図2】コモンモードフィルタの平面図。
図3】3相交流電源が接続された車載充電器を示す図。
図4】単相交流電源が接続された車載充電器を示す図。
図5】蓄電池の充電制御の手順を示すフローチャート。
図6】3相充電制御処理のブロック図。
図7】単相充電制御処理のブロック図。
図8】比較例に係る単相交流電源が接続された車載充電器を示す図。
図9】第2実施形態に係る車載充電器の全体構成図。
図10】蓄電池の充電制御の手順を示すフローチャート。
図11】3相交流電源が接続された車載充電器を示す図。
図12】単相交流電源が接続された車載充電器を示す図。
図13】第3実施形態に係る車載充電器の全体構成図。
図14】蓄電池の充電制御の手順を示すフローチャート。
図15】3相交流電源が接続された車載充電器を示す図。
図16】単相交流電源が接続された車載充電器を示す図。
図17】その他の実施形態に係る電力変換装置を示す図。
図18】その他の実施形態に係る電力変換装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号、又は百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る電力変換装置は、電気自動車などの車両に備えられ、具体的には車載充電器を構成するAC-DCDCコンバータである。車載充電器は、オンボードチャージャとも呼ばれる。
【0014】
電力変換装置は、交流端子及び直流端子を備えている。電力変換装置は、車両外部の交流電源に接続された交流端子を介して入力された交流電力を直流電力に変換して直流端子から出力する機能を備えている。直流端子から出力された直流電力は、車両に備えられた蓄電池に供給される。また、電力変換装置は、直流端子から入力された直流電力を交流電力に変換して交流端子から出力する機能を備えている。交流端子から出力された交流電力は、外部の交流電源を介して外部の電力系統に供給される。電力変換装置は、3相交流電源又は単相交流電源に接続可能である。
【0015】
図1に示すように、電力変換装置10は、交流端子として第1交流端子Tac1、第2交流端子Tac2及び第3交流端子Tac3を備えている。第1~第3交流端子Tac1~Tac3は、図3に示すように、外部の3相交流電源21に接続可能である。第1~第3交流端子Tac1~Tac3のうち第1,第3交流端子Tac1,Tac3は、図4に示すように、外部の単相交流電源22に接続可能である。
【0016】
電力変換装置10は、直流端子として高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLを備えている。高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLは、車載充電器を構成するDCDCコンバータ24の入力部に接続されている。DCDCコンバータ24の出力部は、車両に搭載された充放電可能な蓄電池20に接続されている。DCDCコンバータ24は、高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから入力された直流電圧を変圧し、変圧した直流電圧を蓄電池20に供給する。また、DCDCコンバータ24は、蓄電池20から入力された直流電圧を変圧して高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLに供給する。DCDCコンバータ24は、例えば、入力部と出力部とが電気的に絶縁された絶縁型DCDCコンバータであり、入力部と出力部とを接続するトランスを備えている。
【0017】
電力変換装置10は、3相分の上,下アームスイッチとして、第1上アームスイッチS1H及び第1下アームスイッチS1Lの直列接続体と、第2上アームスイッチS2H及び第2下アームスイッチS2Lの直列接続体と、第3上アームスイッチS3H及び第3下アームスイッチS3Lの直列接続体とを備えている。本実施形態において、各上,下アームスイッチS1H~S3Lは、ボディダイオードを有するNチャネルMOSFETである。このため、各上,下アームスイッチS1H~S3Lにおいて、高電位側端子はドレインであり、低電位側端子はソースである。第1~第3相のうち、例えば、第1相がU相であり、第2相がV相であり、第3相がW相である。
【0018】
電力変換装置10は、第1,第2,第3上アームスイッチS1H,S2H,S3Hの高電位側端子と高電位側直流端子TdcHとを接続する電気経路である高電位側経路30Hと、第1,第2,第3下アームスイッチS1L,S2L,S3Lの低電位側端子と低電位側直流端子TdcLとを接続する電気経路である低電位側経路30Lとを備えている。高電位側経路30H及び低電位側経路30Lは、例えばバスバー等の導電部材である。
【0019】
電力変換装置10は、高電位側経路30Hと低電位側経路30Lとを接続する直流側コンデンサ34を備えている。直流側コンデンサ34は、平滑コンデンサとして機能し、例えば電解コンデンサである。
【0020】
電力変換装置10は、第1経路41、第2経路42及び第3経路43を備えている。第1経路41は、第1上アームスイッチS1Hの低電位側端子及び第1下アームスイッチS1Lの高電位側端子と、第1交流端子Tac1とを接続する電気経路である。第2経路42は、第2上アームスイッチS2Hの低電位側端子及び第2下アームスイッチS2Lの高電位側端子と、第2交流端子Tac2とを接続する電気経路である。第3経路43は、第3上アームスイッチS3Hの低電位側端子及び第3下アームスイッチS3Lの高電位側端子と、第3交流端子Tac3とを接続する電気経路である。
【0021】
電力変換装置10は、第1経路41に設けられた第1インダクタ31、第2経路42に設けられた第2インダクタ32、及び第3経路43に設けられた第3インダクタ33を備えている。本実施形態において、各インダクタ31~33は、同一仕様である。このため、各インダクタ31~33のインダクタンス値が同じである。また、各インダクタ31~33の定格電流(具体的には、温度上昇定格電流)が同じである。
【0022】
電力変換装置10は、コモンモードフィルタ35を備えている。コモンモードフィルタ35は、第1コイル36A、第2コイル36B、第3コイル36C、及び「特定コイル」としての第4コイル36Dを備えている。第1~第3コイル36A~36Cは、第1~第3経路41~43のうち第1~第3インダクタ31~33よりも第1~第3交流端子Tac1~Tac3側に設けられている。第4コイル36Dは、第3コイル36Cに並列接続されている。電力変換装置10の入力側が3相であるのに対し、コモンモードフィルタ35のコイルが4相分設けられるのは、コイルの定格電流を低減し、コモンモードフィルタ35の小型化を図るためである。この点については、後に詳述する。
【0023】
コモンモードフィルタ35は、図2に示すように、各コイル36A~36Dが巻回された共通のコア37を備えている。コア37は、環状(具体的には円環状)をなしており、例えばフェライトで構成されている。コア37には、コア37の周方向において各コイル36A~36Dが等間隔で配置されている。本実施形態の各コイル36A~36Dは、定格電流(具体的には、温度上昇定格電流)が同じ値に設定されている。例えば、各コイル36A~36Dにおいて巻き数及び線径を同じにすることにより、各コイル36A~36Dの定格電流を同じ値に設定することができる。
【0024】
電力変換装置10は、単相充電スイッチ46を備えている。単相充電スイッチ46は、第1経路41のうち第1コイル36Aよりも第1交流端子Tac1側の部分と、第2経路42のうち第2コイル36Bよりも第2交流端子Tac2側の部分とを接続する。単相充電スイッチ46は、オンされている場合に双方向の電流の流通を許可し、オフされている場合に双方向の電流の流通を阻止する。なお、単相充電スイッチ46は、例えば、第1交流端子Tac1と第2交流端子Tac2とを接続していてもよい。
【0025】
電力変換装置10は、直流側電圧センサ50及び交流側電圧センサ51を備えている。直流側電圧センサ50は、直流側コンデンサ34の端子電圧を検出し、交流側電圧センサ51は、第1交流端子Tac1と電力変換装置10のグランドとの電圧差を検出する。
【0026】
電力変換装置10は、第1~第3電流センサ61~63を備えている。第1電流センサ61は、第1インダクタ31に流れる電流を検出し、第2電流センサ62は、第2インダクタ32に流れる電流を検出し、第3電流センサ63は、第3インダクタ33に流れる電流を検出する。各センサ50,51,61~63の検出値は、電力変換装置10が備える制御部としての制御装置70に入力される。
【0027】
制御装置70は、マイコン71を主体として構成され、マイコン71は、CPUを備えている。マイコン71が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン71がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン71は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する図5,10,14等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介して更新可能である。
【0028】
制御装置70は、3相充電制御又は単相充電制御を行う。以下、図4のフローチャートを用いて、充電制御について説明する。
【0029】
ステップS10では、3相充電制御の指示がなされているか否かを判定する。本実施形態では、図3に示すように、第1~第3交流端子Tac1~Tac3に3相交流電源21が接続されていると判定した場合、3相充電制御の指示がなされていると判定する。3相交流電源21において、3相の出力電圧V1,V2,V3の振幅及び周波数は同じであり、出力電圧V1,V2,V3及び出力電流の位相は各相で120°ずつずれている。
【0030】
ステップS10において肯定判定した場合には、ステップS11,S12において3相充電制御を行う。詳しくは、ステップS11では、単相充電スイッチ46をオフにする。
【0031】
ステップS12では、第1交流端子Tac1、第2交流端子Tac2及び第3交流端子Tac3から入力された交流電力を直流電力に変換して高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから出力すべく、第1,第2,第3上アームスイッチS1H,S2H,S3H及び第1,第2,第3下アームスイッチS1L,S2L,S3Lのスイッチング制御を行う。各相において、上アームスイッチと下アームスイッチとはデッドタイムを挟みつつ交互にオンされる。各相において、上,下アームスイッチの1スイッチング周期は同じである。
【0032】
ステップS10において否定判定した場合には、ステップS13に進み、単相充電制御の指示がなされているか否かを判定する。本実施形態では、図4に示すように、第1交流端子Tac1及び第3交流端子Tac3に単相交流電源22が接続されていると判定した場合、単相充電制御の指示がなされていると判定する。本実施形態において、単相交流電源22の出力電圧の振幅Vacは3相交流電源21の出力電圧の振幅と同じである。また、単相交流電源22の出力電圧の周波数は3相交流電源21の出力電圧の周波数と同じである。
【0033】
ステップS13において肯定判定した場合には、ステップS14,S15において単相充電制御を行う。詳しくは、ステップS14では、単相充電スイッチ46をオンにする。
【0034】
ステップS15では、第1交流端子Tac1及び第3交流端子Tac3から入力された交流電力を直流電力に変換して高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから出力すべく、第1上アームスイッチS1H、第1下アームスイッチS1L、第2上アームスイッチS2H及び第2下アームスイッチS2Lのスイッチング制御を行う。各相において、上アームスイッチと下アームスイッチとは、デッドタイムを挟みつつ、同期して交互にオンされる。各相において、上,下アームスイッチの1スイッチング周期は同じであり、3相充電制御時の1スイッチング周期と同じである。
【0035】
また、ステップS15では、第3交流端子Tac3から単相交流電源22を介して第1交流端子Tac1へと向かう方向に交流電流が流れている第1期間において、第3下アームスイッチS3Lをオンするとともに第3上アームスイッチS3Hをオフする。一方、第1交流端子Tac1から単相交流電源22を介して第3交流端子Tac3へと向かう方向に電流が流れている第2期間において、第3上アームスイッチS3Hをオンするとともに第3下アームスイッチS3Lをオフする。現在のタイミングが第1期間及び第2期間のいずれに含まれているかは、例えば、第1電流センサ61の検出値に基づいて判定されればよい。
【0036】
ちなみに、単相充電制御時において、第1上,下アームスイッチS1H,S1L及び第2上,下アームスイッチS2H,S2Lのスイッチング制御により各直流端子TdcH,TdcLから入力された直流電力を交流電力に変換して第1,第3交流端子Tac1,Tac3から出力する場合、ステップS15において、第3交流端子Tac3から単相交流電源22を介して第1交流端子Tac1へと向かう方向に電流が流れている第1期間において、第3上アームスイッチS3Hをオンするとともに第3下アームスイッチS3Lをオフする。一方、第1交流端子Tac1から単相交流電源22を介して第3交流端子Tac3へと向かう方向に電流が流れている第2期間において、第3下アームスイッチS3Lをオンするとともに第3上アームスイッチS3Hをオフする。
【0037】
続いて、図6を用いて、3相充電制御について説明する。図6は、制御装置70により実行される3相充電制御のブロック図である。
【0038】
電圧制御部80は、直流側電圧センサ50により検出された直流側コンデンサ34の端子電圧(以下、直流電圧検出値Vdcr)を目標直流電圧Vdcref(例えば800V)に制御するためのd軸目標電流Idrefを算出する。詳しくは、電圧制御部80は、電圧偏差算出部81と、電圧フィードバック制御部82とを備えている。電圧偏差算出部81は、目標直流電圧Vdcrefから直流電圧検出値Vdcrを差し引くことにより、電圧偏差ΔVを算出する。目標直流電圧Vdcrefは、例えば、各上,下アームスイッチS1H~S4L及びDCDCコンバータ24の定格電圧に基づいて設定されればよい。
【0039】
電圧フィードバック制御部82は、電圧偏差ΔVを0にフィードバック制御するための操作量としてd軸目標電流Idrefを算出する。電圧フィードバック制御部82におけるフィードバック制御は、例えば比例積分制御である。
【0040】
電気角算出部83は、交流側電圧センサ51により検出された電圧(以下、交流電圧検出値V1r)に基づいて、電気角θeを算出する。本実施形態では、交流電圧検出値V1rのゼロクロスタイミング(具体的には例えば、ゼロアップクロスタイミング)の電気角θeを0°とし、次のゼロアップクロスタイミングにおける電気角θeを360°とする。これにより、交流電圧検出値V1rの1周期が電気角1周期(0°~360°)に対応する。本実施形態において、交流電圧検出値V1rは、電力変換装置10のグランドの電圧よりも第1交流端子Tac1の電圧が高い場合を正とする。グランドは、3相交流電源21の中性点又は単相交流電源22に接続される。
【0041】
2相変換部84は、第1,第2,第3電流センサ61,62,63により検出された電流(以下、第1,第2,第3電流検出値i1r,i2r,i3r)と、電気角θeとに基づいて、3相固定座標系における第1,第2,第3電流検出値i1r,i2r,i3rを、2相回転座標系(dq軸座標系)におけるd,q軸電流Idr,Iqrに変換する。本実施形態において、第1,第2,第3電流検出値i1r,i2r,i3rは、第1,第2,第3交流端子Tac1,Tac2,Tac3側から第1,第2,第3インダクタ31,32,33側に向かって流れる場合を正とする。
【0042】
電流制御部85は、d軸偏差算出部86、d軸フィードバック制御部87、q軸偏差算出部88及びq軸フィードバック制御部89を備えている。
【0043】
d軸偏差算出部86は、d軸目標電流Idrefからd軸電流Idrを差し引くことにより、d軸電流偏差ΔIdを算出する。d軸フィードバック制御部87は、d軸電流偏差ΔIdを0にフィードバック制御するための操作量としてd軸目標電圧Vdrefを算出する。d軸フィードバック制御部87におけるフィードバック制御は、例えば比例積分制御である。
【0044】
q軸偏差算出部88は、q軸目標電流Iqrefからq軸電流Iqrを差し引くことにより、q軸電流偏差ΔIqを算出する。q軸目標電流Iqrefは、無効電流の目標値であり、本実施形態では力率を1にするために0に設定されている。力率を1にするとは、3相交流電源21の第1,第2,第3出力電圧V1,V2,V3と、第1,第2,第3電流検出値i1r,i2r,i3rとの位相差を0にすることである。q軸フィードバック制御部89は、q軸電流偏差ΔIqを0にフィードバック制御するための操作量としてq軸目標電圧Vqrefを算出する。q軸フィードバック制御部89におけるフィードバック制御は、例えば比例積分制御である。
【0045】
3相変換部90は、d,q軸目標電圧Vdref,Vqref及び電気角θeに基づいて、2相回転座標系におけるd,q軸目標電圧Vdref,Vqrefを、3相固定座標系における第1,第2,第3目標電圧Vleg1ref,Vleg2ref,Vleg3refに変換する。第1,第2,第3目標電圧Vleg1ref,Vleg2ref,Vleg3refは、電気角で位相が120°ずつずれており、正弦波状の信号である。正弦波状の信号は、電気角180°毎に0となる信号である。
【0046】
PWM生成部91は、第1,第2,第3目標電圧Vleg1ref,Vleg2ref,Vleg3refと、キャリア信号との大小比較に基づくパルス幅変調(PWM)により、第1上,下アームスイッチS1H,S1Lのゲートに供給する第1上,下アーム駆動信号と、第2上,下アームスイッチS2H,S2Lのゲートに供給する第2上,下アーム駆動信号と、第3上,下アームスイッチS3H,S3Lのゲートに供給する第3上,下アーム駆動信号とを生成する。キャリア信号は、例えば三角波信号であり、キャリア信号の1周期は、電気角1周期(0°~360°)よりも十分に短い。電気角1周期において、第1上,下アームスイッチS1H,S1Lのスイッチングパターン、第2上,下アームスイッチS2H,S2Lのスイッチングパターン、及び第3上,下アームスイッチS3H,S3Lのスイッチングパターンは、位相が120°ずつずれている。
【0047】
本実施形態では、3相充電制御時において、第1直流電力P1、第2直流電力P2及び第3直流電力P3が等しくなるように、第1,第2,第3目標電圧Vleg1ref,Vleg2ref,Vleg3refが3相変換部90において算出される。第1,第2,第3直流電力P1,P2,P3は、3相交流電源21から第1,第2,第3インダクタ31,32,33を介して各直流端子TdcH,TdcLから出力される個別の直流電力である。これにより、第1,第2,第3インダクタ31,32,33に流れる電流の実効値が同じ値(例えば、16Arms)になる。
【0048】
ちなみに、制御装置70は、3相充電制御として、図6に示す制御に代えて、平均電流モード制御等に基づく第1~第3相の上,下アームスイッチS1H~S3Lのスイッチング制御を行ってもよい。
【0049】
続いて、図7を用いて、単相充電制御について説明する。図7は、制御装置70により実行される単相充電制御のブロック図である。
【0050】
制御装置70において、フィルタ部112は、直流電圧検出値Vdcrにローパスフィルタ処理を施す。これにより、直流電圧検出値Vdcrに含まれる、単相交流電源22の出力電圧の高調波成分を除去する。高調波成分は、例えば、出力電圧の2次周波数(例えば、100Hz又は120Hz)の成分である。
【0051】
電圧制御部101は、電圧偏差算出部102と、電圧フィードバック制御部103とを備えている。電圧偏差算出部102は、フィルタ部112において高調波成分が除去された目標直流電圧Vdcrefから、直流電圧検出値Vdcrを差し引くことにより、電圧偏差ΔVを算出する。電圧フィードバック制御部103は、電圧偏差ΔVを0にフィードバック制御するための操作量として目標電流振幅Iamprefを算出する。電圧フィードバック制御部103におけるフィードバック制御は、例えば比例積分制御である。
【0052】
電気角算出部83は、交流電圧検出値V1rに基づいて、電気角θeを算出する。正弦波生成部109は、電気角θeに基づいて、正弦波信号「sin×θe」を生成する。
【0053】
電流制御部105は、目標電流算出部106、電流偏差算出部107及び電流フィードバック制御部108を備えている。
【0054】
目標電流算出部106は、目標電流振幅Iamprefに正弦波信号「sin×θe」を乗算することにより、目標電流Iacrefを算出する。目標電流Iacrefは、交流電圧検出値V1rと同じ周期で変動する。
【0055】
電流偏差算出部107は、目標電流Iacrefから、第1電流検出値i1r及び第2電流検出値i2rの加算値を差し引くことにより、電流偏差ΔIを算出する。第1電流検出値i1r及び第2電流検出値i2rの加算値は、電流加算部110において算出される。
【0056】
電流フィードバック制御部108は、電流偏差ΔIを0にフィードバック制御するための操作量として第1,第2目標電圧Vleg1ref,Vleg2refを算出する。電流フィードバック制御部108におけるフィードバック制御は、例えば比例積分制御である。第1,第2目標電圧Vleg1ref,Vleg2refは、同位相の信号である。本実施形態では、単相充電制御時において、第1直流電力P1及び第2直流電力P2が等しくなるように、第1,第2目標電圧Vleg1ref,Vleg2refが電流フィードバック制御部108において算出される。
【0057】
PWM生成部111は、第1,第2目標電圧Vleg1ref,Vleg2refと、キャリア信号との大小比較に基づくパルス幅変調により、第1上,下アームスイッチS1H,S1Lのゲートに供給する第1上,下アーム駆動信号と、第2上,下アームスイッチS2H,S2Lのゲートに供給する第2上,下アーム駆動信号とを生成する。本実施形態では、電気角1周期において、第1上,下アームスイッチS1H,S1Lのスイッチングパターンと、第2上,下アームスイッチS2H,S2Lのスイッチングパターンとの位相差が0°である。つまり、第1上アームスイッチS1Hと第2上アームスイッチS2Hとのオン切替タイミング及びオフ切替タイミングが同期しており、第1下アームスイッチS1Lと第2下アームスイッチS2Lとのオン切替タイミング及びオフ切替タイミングが同期している。
【0058】
本実施形態では、単相充電制御時において、第1直流電力P1及び第2直流電力P2が等しくなるように、第1,第2目標電圧Vleg1ref,Vleg2refが電流フィードバック制御部108において算出される。第1,第2直流電力P1,P2は、上述したように、3相交流電源21から第1,第2インダクタ31,32を介して各直流端子TdcH,TdcLから出力される個別の直流電力である。
【0059】
第3コイル36Cに第4コイル36Dが並列接続されているため、単相充電制御時において、第3経路43に流れる電流は第3,第4コイル36C,36Dに分配され、本実施形態では等分配される。このため、第1~第4コイル36A~36Dに流れる電流の実効値を同じ値(例えば、16Arms)にでき、第1~第4コイル36A~36Dの定格電流(具体的には、温度上昇定格電流)を同じ値にできる。
【0060】
図8に、比較例に係る構成を示す。比較例は、コモンモードフィルタ35が第4コイル36Dを備えていない構成である。
【0061】
比較例の単相充電制御時において、第3コイル36Cに流れる電流の実効値は、第1,第2コイル36A,36Bに流れる電流の実効値よりも大きい。具体的には、第3コイル36Cに流れる電流の実効値は、第1,第2コイル36A,36Bに流れる電流の実効値の2倍の値(例えば、32Arms)となる。一般的に、コモンモードフィルタを構成する各コイルの定格電流は、各コイルのうち流通電流の実効値が最も大きいコイルの定格電流と同じ値に設定される。このため、第1,第2コイル36A,36Bの定格電流を第3コイル36Cの定格電流に合わせる必要が生じる。定格電流が大きくなると、コイルが大型化するため、比較例では、第1,第2コイル36A,36Bが大型化してしまう。
【0062】
これに対し、本実施形態では、第3,第4コイル36C,36Dの定格電流を第1,第2コイル36A,36Bの定格電流まで下げることができる。その結果、第3,第4コイル36C,36Dを小型化でき、ひいてはコモンモードフィルタ35を小型化できる。
【0063】
<第1実施形態の変形例>
・第3コイル36Cに並列接続される特定コイルは、1つに限らず、複数であってもよい。
【0064】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0065】
本実施形態では、図9に示すように、電力変換装置10は、「上アーム整流部」である第4上アームスイッチS4H及び「下アーム整流部」である第4下アームスイッチS4Lの直列接続体と、第2単相充電スイッチ47と、第3単相充電スイッチ487とを備えている。本実施形態において、第4上,下アームスイッチS4H,S4Lは、ボディダイオードを有するNチャネルMOSFETである。第2,第3単相充電スイッチ47,48は、オンされている場合に双方向の電流の流通を許可し、オフされている場合に双方向の電流の流通を阻止する。なお、本実施形態において、単相充電スイッチ46を第1単相充電スイッチ46と称すこととする。
【0066】
第2単相充電スイッチ47及び第3単相充電スイッチ48は、単相充電制御時において第3インダクタ33に流れる電流の実効値を減らし、第3インダクタ33の定格電流を低減するために設けられている。第2単相充電スイッチ47は、第4上,下アームスイッチS4H,S4Lの接続点と、第3経路43のうち第3インダクタ33と第3コイル36Cとの間の部分とを接続する。第3単相充電スイッチ48は、第3経路43のうち第3コイル36Cよりも第3交流端子Tac3側の部分と、第4交流端子Tac4とを接続する。なお、第3単相充電スイッチ48は、第3交流端子Tac3と第4交流端子Tac4とを接続してもよい。
【0067】
図10を用いて、制御装置70により実行される充電制御について説明する。
【0068】
ステップS20では、3相充電制御の指示がなされているか否かを判定する。本実施形態では、図11に示すように、第1~第3交流端子Tac1~Tac3に3相交流電源21が接続されていると判定した場合、3相充電制御の指示がなされていると判定する。なお、図11では、3相交流電源21の中性点が第4交流端子Tac4に接続されているが、中性点が第4交流端子Tac4に接続されていなくてもよい。
【0069】
ステップS20において肯定判定した場合には、ステップS21,S22において3相充電制御を行う。詳しくは、ステップS21では、第1~第3単相充電スイッチ46~48及び第4上,下アームスイッチS4H,S4Lをオフにする(図11参照)。
【0070】
ステップS22では、図5のステップS12と同様に、第1交流端子Tac1、第2交流端子Tac2及び第3交流端子Tac3から入力された交流電力を直流電力に変換して高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから出力すべく、第1,第2,第3上アームスイッチS1H,S2H,S3H及び第1,第2,第3下アームスイッチS1L,S2L,S3Lのスイッチング制御を行う。
【0071】
ステップS20において否定判定した場合には、ステップS23に進み、単相充電制御の指示がなされているか否かを判定する。本実施形態では、図12に示すように、第1交流端子Tac1及び第4交流端子Tac4に単相交流電源22が接続されていると判定した場合、単相充電制御の指示がなされていると判定する。
【0072】
ステップS23において肯定判定した場合には、ステップS24,S25において単相充電制御を行う。詳しくは、ステップS24では、第1~第3単相充電スイッチ46~48をオンにする。また、第3上,下アームスイッチS3H,S3L及び第4上,下アームスイッチS4H,S4Lをオフにする。これにより、第3上,下アームスイッチS3H,S3L及び第4上,下アームスイッチS4H,S4Lにおいては、ボディダイオードを介した電流流通のみが可能となる。
【0073】
ステップS25では、ステップS15と同様に、第1交流端子Tac1及び第4交流端子Tac4から入力された交流電力を直流電力に変換して高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから出力すべく、第1上アームスイッチS1H、第1下アームスイッチS1L、第2上アームスイッチS2H及び第2下アームスイッチS2Lのスイッチング制御を行う。各相において、上アームスイッチと下アームスイッチとは、デッドタイムを挟みつつ、同期して交互にオンされる。
【0074】
第3上,下アームスイッチS3H,S3Lの直列接続体を第3レグと称し、第4上,下アームスイッチS4H,S4Lの直列接続体を第4レグと称すこととする。単相充電制御時において、第3レグ及び第3経路43に加え、第4レグにも電流が流れる。このため、第1実施形態と比較して、第3インダクタ33に流れる電流を低減でき、第3インダクタ33の定格電流(具体的には、温度上昇定格電流)を低減できる。これにより、第1実施形態の効果に加え、第3インダクタ33を小型化できるといった効果を更に奏することができる。
【0075】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図13に示すように、電力変換装置10は、3相充電スイッチ49を備えている。3相充電スイッチ49は、第3経路43のうち第3インダクタ33と第3コイル36Cとの間の部分に設けられている。3相充電スイッチ49は、オンされている場合に双方向の電流の流通を許可し、オフされている場合に双方向の電流の流通を阻止する。
【0076】
図14を用いて、制御装置70により実行される充電制御について説明する。
【0077】
ステップS30では、図10のステップS20と同様に、3相充電制御の指示がなされているか否かを判定する。
【0078】
ステップS30において肯定判定した場合には、ステップS31,S32において3相充電制御を行う。詳しくは、ステップS31では、第1~第3単相充電スイッチ46~48及び第4上,下アームスイッチS4H,S4Lをオフにし、3相充電スイッチ49をオンにする(図15参照)。
【0079】
ステップS32では、ステップS12と同様に、第1交流端子Tac1、第2交流端子Tac2及び第3交流端子Tac3から入力された交流電力を直流電力に変換して高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから出力すべく、第1,第2,第3上アームスイッチS1H,S2H,S3H及び第1,第2,第3下アームスイッチS1L,S2L,S3Lのスイッチング制御を行う。
【0080】
ステップS30において否定判定した場合には、ステップS33に進む。ステップS33では、ステップS23と同様に、単相充電制御の指示がなされているか否かを判定する。
【0081】
ステップS33において肯定判定した場合には、ステップS34,S35において単相充電制御を行う。詳しくは、ステップS34では、第1~第3単相充電スイッチ46~48をオンにし、3相充電スイッチ49及び第3上,下アームスイッチS3H,S3Lをオフにする(図16参照)。
【0082】
ステップS35では、第1交流端子Tac1及び第4交流端子Tac4から入力された交流電力を直流電力に変換して高電位側直流端子TdcH及び低電位側直流端子TdcLから出力すべく、ステップS15と同様に、第1上アームスイッチS1H、第1下アームスイッチS1L、第2上アームスイッチS2H及び第2下アームスイッチS2Lのスイッチング制御を行う。各相において、上アームスイッチと下アームスイッチとは、デッドタイムを挟みつつ、同期して交互にオンされる。
【0083】
また、ステップS35では、第4交流端子Tac4から単相交流電源22を介して第1交流端子Tac1へと向かう方向に交流電流が流れている第1期間において、第4下アームスイッチS4Lをオンするとともに第4上アームスイッチS4Hをオフする。一方、第1交流端子Tac1から単相交流電源22を介して第4交流端子Tac4へと向かう方向に電流が流れている第2期間において、第4上アームスイッチS4Hをオンするとともに第4下アームスイッチS4Lをオフする。現在のタイミングが第1期間及び第2期間のいずれに含まれているかは、例えば、第1電流センサ61の検出値に基づいて判定されればよい。
【0084】
本実施形態では、単相充電制御時において3相充電スイッチ49がオフされるため、第3インダクタ33に電流が流れない。このため、第3インダクタ33の定格電流をより低減でき、ひいては第3インダクタ33をより小型化できる。
【0085】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0086】
・制御装置70は、単相充電制御時において、第1,第2上,下アームスイッチS1H,S1L、S2H,S2Lをインターリーブ駆動してもよい。インターリーブ駆動は、第1上アームスイッチS1Hのオンへの切り替えタイミングと、第2上アームスイッチS2Hのオンへの切り替えタイミングとを電気角で180°ずらすスイッチング制御である。
【0087】
・第2,第3実施形態の単相充電制御時において、双方向の電力変換を行わず、交流電力から直流電力へと単方向の電力変換のみ行う場合、第4上,下アームスイッチS4H,S4Lに代えて、上,下アームダイオードが設けられていてもよい。上アームダイオードの高電位側端子であるカソードが高電位側経路30Hに接続され、下アームダイオードの低電位側端子であるアノードが低電位側経路30Lに接続される。上アームダイオードのアノードと下アームダイオードのカソードとが接続される。
【0088】
・電力変換装置としては、車載充電器に限らず、図17に示す構成であってもよい。図17に示す電力変換装置10は、例えばメガワット級の大電力を取り扱う設備で用いられる装置であり、3相系統に対するアクティブフィルタ回路として一般に用いられる4レグ構成のAC-DC変換回路を備えている。なお、図17において、先に示した構成に対応する構成については、便宜上、同一の符号を付しているものもある。
【0089】
電力変換装置10は、コモンモードフィルタ135を備えている。コモンモードフィルタ135は、第1コイル136A、第2コイル136B、第3コイル136C、第4コイル136D、及び「特定コイル」としての第5コイル136Eを備える5相のフィルタである。つまり、入力相が4相であるのに対し、コモンモードフィルタ135は1相多い5相である。第4上,下アームスイッチS4H,S4Lの接続点と、第4交流端子Tac4とは、接続経路140によって接続されている。第1~第3コイル136A~136Cは第1~第3経路41~43に設けられ、第4コイル136Dは接続経路140に設けられている。
【0090】
接続経路140には、第1~第3経路41~43よりも大きな電流が流れる可能性がある。このため、接続経路140に設けられた第4コイル136Dには、第5コイル136Eが並列接続されている。これにより、接続経路140に流れる電流を第4,第5コイル136D,136Eに分配でき、第4,第5コイル136D,136Eの定格電流を低減できる。
【0091】
また、電力変換装置としては、図18に示す構成であってもよい。図18に示す電力変換装置10は、3相の回転電機200に適用される4レグ構成のAC-DC変換回路(インバータ)を備えている。なお、図18において、先の図17に示した構成に対応する構成については、便宜上、同一の符号を付しているものもある。
【0092】
第1~第3交流端子Tac1~Tac3には、回転電機200の電機子巻線201の第1端が接続されている。各相の電機子巻線201の第2端は中性点で接続されている。この中性点と、第4上,下アームスイッチS4H,S4Lの接続点とは、接続経路210によって接続されている。
【0093】
接続経路210には、第1~第3経路41~43よりも大きな電流が流れる可能性がある。このため、接続経路210に設けられた第4コイル136Dには、第5コイル136Eが並列接続されている。これにより、接続経路210に流れる電流を第4,第5コイル136D,136Eに分配できる。
【0094】
・第1~第3実施形態において第3コイル36Cに並列接続される特定コイルの数や、図17及び図18の第4コイル136Dに並列接続される特定コイルの数は、1つに限らず、複数であってもよい。また、特定コイルが接続されるコイルの相は、1相に限らず、全相を除く複数相であってもよい。
【0095】
・電力変換装置10は、外部の交流電源に接続された交流端子を介して入力された交流電力を直流電力に変換して直流端子から出力する第1機能、及び直流端子から入力された直流電力を交流電力に変換して交流端子から出力する第2機能のうち、第2機能のみ備えていてもよい。
【0096】
・第1上アームスイッチが複数のNチャネルMOSFETの並列接続体で構成されていてもよい。第1下アームスイッチ及び第2~第4上,下アームスイッチについても同様である。
【0097】
・上,下アームスイッチとしては、NチャネルMOSFETに限らず、例えば、フリーホイールダイオードが逆並列接続されたIGBTであってもよい。この場合、IGBTのコレクタが高電位側端子に相当し、エミッタが低電位側端子に相当する。
【0098】
・直流側コンデンサ34に代えて、例えば、充放電可能な小容量の蓄電池が備えられていてもよい。
【0099】
・DCDCコンバータ24の出力部に接続される蓄電部としては、蓄電池に限らず、例えば、大容量の電気二重層キャパシタ、又は蓄電池及び電気二重層キャパシタの双方であってもよい。
【0100】
・電力変換装置が搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。また、電力変換装置の搭載先は、移動体に限らず、定置式の装置であってもよい。
【0101】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
10…電力変換装置、21…3相交流電源、22…単相交流電源、31~33…第1~第3インダクタ、46…単相充電スイッチ、70…制御装置、35…コモンモードフィルタ、S1H,S2H,S3H…第1~第3上アームスイッチ、S1L,S2L,S3L…第1~第3下アームスイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18