(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065971
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】整流作用を有する制御回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/687 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175110
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】390025737
【氏名又は名称】株式会社新陽社
(71)【出願人】
【識別番号】516131843
【氏名又は名称】ANP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 直哉
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 直史
(72)【発明者】
【氏名】羽田 正二
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX05
5J055AX12
5J055AX53
5J055AX66
5J055BX12
5J055DX12
5J055EX02
5J055EX06
5J055EX22
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY17
5J055EY21
5J055EZ10
5J055EZ22
5J055FX01
5J055FX05
5J055FX13
5J055FX19
5J055FX38
5J055GX01
5J055GX06
(57)【要約】
【課題】高電圧にも対応可能で、順方向電圧特性が低く、電力損失が少ない、整流作用を有する制御回路を提供する。
【解決手段】電源P1と、第1電路21乃至第9電路29を備え、第1電路21では、R1、D2が設けられ、第2電路22では、R2が設けられ、第3電路23では、R3、R10、D3が設けられ、第4電路24では、R7、R6、Q1が設けられ、第5電路25では、Q4、R8が設けられ、第6電路26では、Q2、R4が設けられ、第7電路27では、Q3、R5が設けられ、第8電路28では、FET1が設けられ、第5電路25には、FET1のゲートが、R8より電位が低い位置にあるQ5のコレクタの接続点より電位が低い位置で接続され、第8電路28には、Q5のエミッタが、第4電路24の接続点とFET1のソースの間の位置で接続されている構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流作用を有する制御回路であって、
直流電圧を印加する電源と、
当該電源と各一端が接続された第1電路乃至第5電路と、
前記第2電路の他端と、一端が接続された第6電路及び第7電路と、
前記第1電路、前記第6電路、前記第7電路、及び前記第3電路乃至前記第5電路の各他端が接続された第8電路と、
前記第2電路と、前記第3電路を接続する第9電路を備え、
前記第1電路では、電位が高い順に、第1抵抗素子、第2ダイオードが設けられ、
前記第2電路では、第2抵抗素子が設けられ、
前記第3電路では、電位が高い順に、第3抵抗素子、第10抵抗素子、第3ダイオードが設けられ、
前記第4電路では、電位が高い順に、第7抵抗素子、第6抵抗素子、第1NPN型バイポーラトランジスタが設けられ、
前記第1NPN型バイポーラトランジスタのベースは、第3PNP型バイポーラトランジスタと第5抵抗素子の間の位置で、前記第7電路と接続され、
前記第5電路では、電位が高い順に、第4PNP型バイポーラトランジスタ、第8抵抗素子が設けられ、
前記第4PNP型バイポーラトランジスタのベースは、前記第7抵抗素子と、前記第6抵抗素子の間の位置で、前記第4電路と接続され、
前記第6電路では、電位が高い順に、第2PNP型バイポーラトランジスタ、第4抵抗素子が設けられ、
前記第2PNP型バイポーラトランジスタのベースは、前記第1抵抗素子と、前記第2ダイオードの間の位置で、前記第1電路と接続され、
前記第3PNP型バイポーラトランジスタのベースは、前記第9電路の接続点と、前記第10抵抗素子の間の位置で、前記第3電路と接続され、
前記第8電路では、一端側にソースを接続し、他端側にドレインを接続することで、前記第8電路では、電界効果トランジスタが直列に設けられ、
前記第5電路には、前記電界効果トランジスタのゲートが、前記第8抵抗素子より電位が低い位置にある第5NPN型バイポーラトランジスタのコレクタの接続点より電位が低い位置で接続され、
前記第9電路は、前記第2電路の、前記第2抵抗素子と前記第2電路の他端の間の位置と、前記第3電路の、前記第3抵抗素子と前記第3PNP型バイポーラトランジスタのベースの接続点の間の位置を接続し、また、前記第9電路では、第1ダイオードが設けられ、
前記第8電路では、前記第5NPN型バイポーラトランジスタのエミッタが、前記第4電路の接続点と前記電界効果トランジスタのソースの間の位置で接続され、
前記第6電路には、前記第5NPN型バイポーラトランジスタのベースが、前記第2PNP型バイポーラトランジスタと前記第4抵抗素子の間の位置で接続されていることを特徴とする、制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流作用を有する制御回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なPN接合のダイオードは、電圧降下VFによって、約0.6(V)の電力損失(≒電力ロス)が生じてしまう。
【0003】
ところで、順方向電圧特性(≒電圧降下VF)が低い素子として、ショットキーバリアダイオードがある。
【0004】
例えば、特許文献1では、集積回路上を占有する面積が少なく、製造する際に必要な処理ステップが少ない。また、接合スパイクの影響を受ける可能性が少なく、ポリシリコンプロセスを使用して集積回路内に形成する従来のショットキーバリアダイオード装置と比較して、より製造が容易であるショットキーバリアダイオード及びその方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、金属と半導体との接合によって生じるショットキー障壁を利用した、ショットキーバリアダイオードは、原理的に、リーク電流が大きく、放熱設計を誤ってしまうと熱暴走を起こしてしまうという欠点がある。また、このような原理によって、ショットキーバリアダイオードは、高電圧用(高耐圧)のものが少ない。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題を解決するものとして、リーク電流が大きく、放熱設計を誤ってしまうと熱暴走を起こしてしまうという欠点がなく、高電圧にも対応可能で、順方向電圧特性が低く、電力損失が少ない、整流作用を有する制御回路を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、
整流作用を有する制御回路であって、
直流電圧を印加する電源と、
当該電源と各一端が接続された第1電路乃至第5電路と、
前記第2電路の他端と、一端が接続された第6電路及び第7電路と、
前記第1電路、前記第6電路、前記第7電路、及び前記第3電路乃至前記第5電路の各他端が接続された第8電路と、
前記第2電路と、前記第3電路を接続する第9電路を備え、
前記第1電路では、電位が高い順に、第1抵抗素子、第2ダイオードが設けられ、
前記第2電路では、第2抵抗素子が設けられ、
前記第3電路では、電位が高い順に、第3抵抗素子、第10抵抗素子、第3ダイオードが設けられ、
前記第4電路では、電位が高い順に、第7抵抗素子、第6抵抗素子、第1NPN型バイポーラトランジスタが設けられ、
前記第1NPN型バイポーラトランジスタのベースは、第3PNP型バイポーラトランジスタと第5抵抗素子の間の位置で、前記第7電路と接続され、
前記第5電路では、電位が高い順に、第4PNP型バイポーラトランジスタ、第8抵抗素子が設けられ、
前記第4PNP型バイポーラトランジスタのベースは、前記第7抵抗素子と、前記第6抵抗素子の間の位置で、前記第4電路と接続され、
前記第6電路では、電位が高い順に、第2PNP型バイポーラトランジスタ、第4抵抗素子が設けられ、
前記第2PNP型バイポーラトランジスタのベースは、前記第1抵抗素子と、前記第2ダイオードの間の位置で、前記第1電路と接続され、
前記第3PNP型バイポーラトランジスタのベースは、前記第9電路の接続点と、前記第10抵抗素子の間の位置で、前記第3電路と接続され、
前記第8電路では、一端側にソースを接続し、他端側にドレインを接続することで、前記第8電路では、電界効果トランジスタが直列に設けられ、
前記第5電路には、前記電界効果トランジスタのゲートが、前記第8抵抗素子より電位が低い位置にある第5NPN型バイポーラトランジスタのコレクタの接続点より電位が低い位置で接続され、
前記第9電路は、前記第2電路の、前記第2抵抗素子と前記第2電路の他端の間の位置と、前記第3電路の、前記第3抵抗素子と前記第3PNP型バイポーラトランジスタのベースの接続点の間の位置を接続し、また、前記第9電路では、第1ダイオードが設けられ、
前記第8電路では、前記第5NPN型バイポーラトランジスタのエミッタが、前記第4電路の接続点と前記電界効果トランジスタのソースの間の位置で接続され、
前記第6電路には、前記第5NPN型バイポーラトランジスタのベースが、前記第2PNP型バイポーラトランジスタと前記第4抵抗素子の間の位置で接続されている、制御回路とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る制御回路を適用・使用することによって、一般的な整流ダイオードを適用・使用する場合に比べて、電圧降下VFによる電力損失を低減させることができる。そのため、直流電力で動作する種々の装置・回路に対して、一般的に使用されている整流ダイオードを、本発明に係る制御回路に置き換えることができる。
【0010】
また、直流配電システム内で、ダイオードブリッジとして、本発明に係る制御回路を適用・使用することができる。
【0011】
更に、ショットキーバリアダイオードを適用・使用する場合には、熱暴走が生じないように、放熱設計を行う必要があったが、本発明に係る制御回路を適用・使用することによって、放熱設計を行う必要性がなくなり、便宜である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態例1に係る整流作用を有する制御回路の構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態例1に係る整流作用を有する制御回路の動作を説明する説明図である。
【
図3】バイポーラトランジスタをエミッタ接地した際のコレクタ電流に対するコレクタ‐エミッタ間の飽和電圧を示した説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態例1に係る整流作用を有する制御回路の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態例1)
まず、本発明の実施の形態例1の整流作用を有する制御回路Aの構成を、
図1に基づいて説明する。
【0014】
<制御回路Aの構成>
図1に示すように、直流電圧を印加する電源P1の+(プラス)極に、第10電路30、第1電路21、第2電路22、第3電路23、第4電路24及び第5電路25の各一端が接続されている。なお、本実施の形態例1では、電源P1は、+(プラス)の直流電圧を印加するV
CCであり、例えば20(V)の直流電圧を印加する。
【0015】
第2電路22の他端は、第6電路26及び第7電路27の一端と接続されている。
【0016】
電源P1の-(マイナス)極と、第10電路30、第1電路21、第6電路26、第7電路27、第3電路23、第4電路24及び第5電路25の各他端は、第8電路28に接続されている。なお、第3電路23の他端は、電界効果トランジスタであるFET1と第8電路28の他端の間の位置で、第8電路28に接続されている。
【0017】
第10電路30上には、コンデンサC1が直列に設けられている。なお、本実施の形態例1では、コンデンサC1は、静電容量が100μ(F)のものを用いる。制御回路Aでは、後述するように、第8電路28上に直列に設けられたFET1のソース側の電位を基準電位とする。しかし、制御回路Aを用いて全波整流回路を構成する場合等、このFET1のソース側の電位が電源P1の電圧より上昇してしまうと、電源P1から電源供給ができなくなってしまう。その場合に、このコンデンサC1が設けられていることで、上昇したFET1のソース側の電位を基準にして電源P1分の電荷を放電することができる。
【0018】
第1電路21上には、電源P1に近く電位が高い順に、抵抗R1及びダイオードD2が直列に設けられている。なお、本実施の形態例1では、抵抗R1は、抵抗値が100K(Ω)のものを用いる。また、ダイオードD2は、電源P1側にアノード(電流を受け入れる電極)が、逆側にカソード(電流を放出する電極)がくるように配置されている。
【0019】
第2電路22上には、抵抗R2が直列に設けられている。なお、本実施の形態例1では、抵抗R2は、抵抗値が2M(Ω)のものを用いる。
【0020】
第2電路22の他端に一端が接続されている第6電路26上には、電源P1に近く電位が高い順に、PNP型バイポーラトランジスタQ2及び抵抗R4が直列に設けられている。なお、本実施の形態例1では、PNP型バイポーラトランジスタQ2は、電源P1側にエミッタ(
図1では、「E」と表示)が、逆側にコレクタ(
図1では、「C」と表示)がくるように配置されている。そして、PNP型バイポーラトランジスタQ2のベース(
図1では、「B」と表示)は、抵抗R1とダイオードD2の間の位置で、第1電路21と接続されている。また、抵抗R4は、抵抗値が100K(Ω)のものを用いる。
【0021】
第2電路22の他端に一端が接続されている第7電路27上には、電源P1に近く電位が高い順に、PNP型バイポーラトランジスタQ3及び抵抗R5が直列に設けられている。なお、本実施の形態例1では、PNP型バイポーラトランジスタQ3は、電源P1側にエミッタが、逆側にコレクタがくるように配置されている。そして、PNP型バイポーラトランジスタQ3のベースは、第9電路29の接続点と抵抗R10の間の位置で、第3電路23と接続されている。また、抵抗R5は、抵抗値が100K(Ω)のものを用いる。
【0022】
第3電路23上には、電源P1に近く電位が高い順に、抵抗R3、抵抗10及びダイオードD3が直列に設けられている。なお、本実施の形態例1では、抵抗R3は、抵抗値が100K(Ω)のものを用い、抵抗R10は、抵抗値が200(Ω)のものを用いる。また、ダイオードD3は、電源P1側にアノード(電流を受け入れる電極)が、逆側にカソード(電流を放出する電極)がくるように配置されている。
【0023】
第4電路24上には、電源P1に近く電位が高い順に、抵抗R7、抵抗R6及びNPN型バイポーラトランジスタQ1が直列に設けられている。なお、本実施の形態例1では、抵抗R7及び抵抗R6は、抵抗値が100K(Ω)のものを用いる。また、NPN型バイポーラトランジスタQ1は、電源P1側にコレクタが、逆側にエミッタがくるように配置されている。そして、NPN型バイポーラトランジスタQ1のベースは、PNP型バイポーラトランジスタQ3と抵抗R5の間の位置で、第7電路27と接続されている。
【0024】
なお、抵抗R6が設けられていない場合、NPN型バイポーラトランジスタQ1に値の大きな電流が流れてしまう。一方、抵抗R6が設けられていることで、例えば、20(V)の電圧が印加された場合であっても、「20/100K=0.2m(A)」といった値の小さな電流しか流れないで済む。
【0025】
第5電路25上には、電源P1に近く電位が高い順に、PNP型バイポーラトランジスタQ4、抵抗R8が直列に設けられている。なお、本実施の形態例1では、PNP型バイポーラトランジスタQ4は、電源P1側にエミッタが、逆側にコレクタがくるように配置されている。そして、PNP型バイポーラトランジスタQ4のベースは、抵抗R7と抵抗R6の間の位置で、第4電路24と接続されている。なお、本実施の形態例1では、抵抗R8は、抵抗値が10K(Ω)のものを用いる。また、FET1のゲート(
図1では、「G」と表示)が、NPN型バイポーラトランジスタQ5のコレクタの接続点より電位が低い位置で、第5電路25と接続されている。
【0026】
なお、万が一、PNP型バイポーラトランジスタQ4及びNPN型バイポーラトランジスタQ5が両方「ON動作」してしまった場合、抵抗R8が設けられていないと、第5電路25に値の大きな電流が流れてしまう。一方、抵抗R8が設けられていることで、例えば、20(V)の電圧が印加された場合であっても、「20/10K=2m(A)」といった値の小さな電流しか流れないで済む。
【0027】
第8電路28上には、NPN型バイポーラトランジスタQ5のエミッタの接続点と、第8電路28の他端の間の位置に、第8電路28の他端側にドレイン(
図1では、「D」と表示)が、第8電路28の一端側にソース(
図1では、「S」と表示)がくるようにFET1が直列に配置されている。このように、第8電路28の一端にFET1のソースを接続し、他端にドレインを接続することで、第8電路28の一端がアノード、他端がカソードの役割を果たすようになる。
【0028】
第2電路22上の、抵抗R2と第2電路22の他端の間の位置と、第3電路23上の、抵抗R3とPNP型バイポーラトランジスタQ3のベース接続点の間の位置を接続する第9電路29が設けられている。そして、この第9電路29上に直列にダイオードD1が設けられている。ダイオードD1は、第3電路23側にアノードが、第2電路22側にカソードがくるように配置されている。また、ダイオードD1は、PNP型バイポーラトランジスタQ3のベース‐エミッタ間を保護するため、設定値(例えば、0.6(V))以上の電圧が印加されないようにする役割を果たす。
【0029】
また、NPN型バイポーラトランジスタQ5のコレクタが、抵抗R8とFET1のゲートの接続点との間の位置で、第5電路25と接続されている。NPN型バイポーラトランジスタQ5のエミッタが、第4電路24の接続点とFET1のソースの間の位置で、第8電路28と接続されている。そして、NPN型バイポーラトランジスタQ5のベースは、PNP型バイポーラトランジスタQ2と抵抗R4の間の位置で、第6電路26と接続されている。
【0030】
<回路がOFFになる場合の動作の流れ>
次に、本発明の実施の形態例1の整流作用を有する制御回路AがOFFになる場合の動作の流れを、
図2を用いて、説明する。回路内の電圧について、第8電路28の一端側(FET1のS側)が低く、第8電路28の他端側(FET1のD側)高いとき、FET1のソース側の電圧を基準(基準電位=0(V))とすると、ドレイン側の電圧が高いため、第3電路23上を電流が流れようとするが、ダイオードD3によって阻止される。また、PNP型バイポーラトランジスタQ3のベース側電位は、抵抗R3を介して電源電圧V
CCと同等な電圧値となる。また、PNP型バイポーラトランジスタQ2のベース側電位は、基準電位(S側)と比べてダイオードD2の順方向電圧VF(≒0.6(V))分高くなる。また、PNP型バイポーラトランジスタQ2のベース側電位0.6(V)に対し、トランジスタのPN接合に基づき、PNP型バイポーラトランジスタQ2のエミッタ側の電位の方が順方向電圧VF(≒0.6(V))分高くなる。即ち、PNP型バイポーラトランジスタQ2及びQ3に係る共通エミッタの電位は「0.6+0.6=1.2(V)」となる。共通エミッタの電位1.2(V)に対し、PNP型バイポーラトランジスタQ2のベース電位は0.6(V)、PNP型バイポーラトランジスタQ3のベース電位は20(V)である。電流は電位が高いところから低いところに流れるため、ベース電流はPNP型バイポーラトランジスタQ2に流れ、PNP型バイポーラトランジスタQ3には流れない。従って、PNP型バイポーラトランジスタQ2は「ON動作」、PNP型バイポーラトランジスタQ3は「OFF動作」となる。
【0031】
PNP型バイポーラトランジスタQ2が「ON」すると、NPN型バイポーラトランジスタQ5のベース電位は1.2(V)となる。NPN型バイポーラトランジスタQ5のベース電位は1.2(V)で、エミッタの電位が基準電位の0(V)であり、ベース電位の方が高いため、ベース電流が流れ、NPN型バイポーラトランジスタQ5は、「ON動作」する。NPN型バイポーラトランジスタQ5が「ON動作」することにより、Nチャネル型FET1のゲートに印可される電圧が基準電圧と等しくなり、FET1が「OFF動作」し、回路が遮断される。
【0032】
このように、本発明の実施の形態例1の整流作用を有する制御回路Aで、FET1の「OFF動作」に関わるのは、NPN型バイポーラトランジスタQ5である。
図3に示すように、バイポーラトランジスタをエミッタ接地した際のコレクタ‐エミッタ間の電圧降下は、極めて少ない。従って、FET1のゲート電圧が、ほぼ0(V)の状態で、「OFF動作」し、第8電路28の一端と他端に接続された交流電源を遮断することができる。従って、電流が逆流する心配もなく、高電圧の遮断も確実に行うことができる。
【0033】
なお、NPN型バイポーラトランジスタQ1のベース電位は抵抗R5を介し、基準電位(=0)と接続している。よって、PNP型バイポーラトランジスタQ3の「OFF動作」により、NPN型バイポーラトランジスタQ1は安定的に「OFF動作」となる。即ち、抵抗R5は、回路OFF時に、NPN型バイポーラトランジスタQ1のベース電位を基準電位(=0(V))に固定するためのプルダウン抵抗の役割を果たす。また、PNP型バイポーラトランジスタQ4は、NPN型バイポーラトランジスタQ1の「OFF動作」により、ベース電流が流れないため、「OFF動作」をする。PNP型バイポーラトランジスタQ4のベース電位は抵抗R7を介し電源電圧VCCに接続されている。よって、PNP型バイポーラトランジスタQ4は、安定的に動作する。即ち、抵抗R7は、PNP型バイポーラトランジスタQ4のベース電位を電源電圧VCCに保っておくためのプルアップ抵抗の役割を果たす。
【0034】
<回路がONになる場合の動作の流れ>
次に、本発明の実施の形態例1の整流作用を有する制御回路AがONになる場合の動作の流れを、
図4を用いて、説明する。回路内の電圧について、第8電路28の一端側(FET1のS側)が高く、第8電路28の他端側(FET1のD側)低いとき、FET1のソース側の電圧を基準(基準電位=0(ゼロ))とすると、ドレイン側の電圧が低いため、第3電路23上を電流が流れる。PNP型バイポーラトランジスタQ2のベース側電位は、基準電位(S側)と比べてダイオードD2の順方向電圧VF(≒0.6(V))分高くなる。また、PNP型バイポーラトランジスタQ2のベース側電位0.6(V)に対し、トランジスタのPN接合に基づき、エミッタ側の電位の方が順方向電圧VF(≒0.6(V))分高くなる。即ち、PNP型バイポーラトランジスタQ2及びQ3に係る共通エミッタの電位は「0.6+0.6=1.2(V)」となる。また、PNP型バイポーラトランジスタQ3のベース側電位は、FET1のドレイン側からダイオードD3の電圧降下分0.6(V)、抵抗R10の電圧降下分の0.04(V)により、合計0.64(V)となる。なお、抵抗R10の電圧降下について、詳しく説明する。第3電路23上に20(V)の電圧を印加すると、抵抗R3の抵抗値は、100K(Ω)であるため、オームの法則により、抵抗R3では、0.2m(A)の電流が流れる。0.2m(A)の電流が、抵抗値が200(Ω)の抵抗R10を流れる場合には、オームの法則により、0.04(V)の電圧降下が生じる。即ち、第1電路21に生じる電圧降下0.6(V)と第3電路23に生じる電圧降下0.64(V)の差分0.04(V)が、差動増幅の入力となり、FET1の両端は、0.04(V)に維持される。そして、共通エミッタの電位1.2(V)に対し、PNP型バイポーラトランジスタQ2のベース電位は0.6(V)であり、PNP型バイポーラトランジスタQ3のベース電位は0.64(V)であるため、PNP型バイポーラトランジスタQ2は「OFF動作」し、PNP型バイポーラトランジスタQ3は「ON動作」する。電流は、電位が高いところから電位が低いところに流れるが、その落差が小さい方に流れるからである。PNP型バイポーラトランジスタQ3が「ON動作」すると、NPN型バイポーラトランジスタQ1のベース電位は、PNP型バイポーラトランジスタQ2及びQ3に係る共通エミッタの電位と同じく、1.2(V)となる。NPN型バイポーラトランジスタQ1のベース電位が1.2(V)で、エミッタの電位が基準電位の0Vで、ベース電位の方が高いため、ベース電流が流れ、NPN型バイポーラトランジスタQ1は、「ON動作」する。NPN型バイポーラトランジスタQ1が「ON動作」することにより、抵抗R6を介してPNP型バイポーラトランジスタQ4のベースに電流が流れる。ベースに電流が流れるため、PNP型バイポーラトランジスタQ4は「ON動作」し、PNP型バイポーラトランジスタQ4のエミッタ電位が、抵抗R8を介してFET1のゲートに印可され、FET1が「ON動作」する。
【0035】
このように、本実施の形態例1に係る整流作用を有する制御回路Aでは、抵抗R10によって、FET1がON動作時の順方向電圧VFを生成する構成である。即ち、抵抗R10の電圧降下分によって、FET1のON動作時の順方向電圧VFを生成し、FET1の両端の電位差を生じさせる構成である。ダイオードの両端に流す電流値に差を設け、発生するVFの差をFETの順方向電圧VFとするといったダイオードの特性を利用する従来技術と比べて、固定抵抗によって、自由にFET1用の順方向電圧VFを生成することができるため、便宜である。
【0036】
なお、NPN型バイポーラトランジスタQ5のベース電位は抵抗R4を介し、基準電位(=0(V))と接続している。よって、PNP型バイポーラトランジスタQ2の「OFF動作」により、NPN型バイポーラトランジスタQ5は安定的に「OFF動作」となる。即ち、抵抗R4は、回路OFF時に、NPN型バイポーラトランジスタQ5のベース電位を基準電位(=0(V))に固定するためのプルダウン抵抗の役割を果たす。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施の形態例について述べたが、本発明に係る整流作用を有する制御回路は上述した実施の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
A:整流作用を有する制御回路、
21:第1電路、22:第2電路、23:第3電路、24:第4電路、25:第5電路、26:第6電路、27:第7電路、28:第8電路、29:第9電路、30:第10電路、
P1:電源、
C1:コンデンサ、
R1~R8:抵抗、R10:抵抗
D1~D3:ダイオード、
Q1:NPN型バイポーラトランジスタ、
Q2~Q4:PNP型バイポーラトランジスタ、
Q5:NPN型バイポーラトランジスタ、
FET1:電界効果トランジスタ