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特開2024-65977ホログラム画像再生装置及び光照射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065977
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ホログラム画像再生装置及び光照射装置
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/22 20060101AFI20240508BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240508BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20240508BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G03H1/22
G02B5/18
G02B5/32
G02B5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175130
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】513143537
【氏名又は名称】株式会社アーティエンス・ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100111659
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 聡
(72)【発明者】
【氏名】白倉 明
(72)【発明者】
【氏名】西川 博
【テーマコード(参考)】
2H042
2H249
2K008
【Fターム(参考)】
2H042AA03
2H042AA10
2H042AA21
2H249AA08
2H249AA14
2H249AA60
2H249AA62
2H249AA64
2H249AA65
2H249CA00
2H249CA04
2H249CA09
2H249CA22
2K008AA00
2K008AA10
2K008CC03
2K008HH03
2K008HH19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】LED素子から出射し透明基板に入射して複数の反射型のホログラフィック回折格子で偏光される平行光の光量の減少を抑え、明るいホログラム画像を再生する
【解決手段】基板2と、基板2の前面2F側に取り付けられたホログラフィック回折格子3a~3iと、基板2の後面2Rに取り付けられてホログラム画像を再生するホログラフィック光学素子と、ホログラフィック回折格子3a~3iを照射するLED素子6a~6iとを備え、ホログラフィック回折格子3a~3iは、LED素子6a~6iからの光を一定方向の平行光に偏向し、基板2内を伝搬させ、ホログラフィック光学素子を照射してホログラム画像を再生するようにし、LED素子6a~6iとホログラフィック回折格子3a~3iとの間はLED素子6a~6iからの拡散光の拡散角を増加させない非拡散層である封入樹脂層7a~7iで覆われたホログラム画像再生装置。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が透明で厚さ方向に直交する第1の面と第2の面を有する平板状の基板と、
一の方向に配置されて前記基板の第1の面側に取り付けられた複数のホログラフィック回折格子と、
前記基板の第1の面又は第2の面の前記ホログラフィック回折格子とは異なる位置に取り付けられ、ホログラム画像を再生するホログラフィック光学素子と、
前記基板の前記ホログラフィック回折格子と対向する位置に取り付けられ、前記ホログラフィック回折格子を照射する複数のLED素子と
を備え、
前記ホログラフィック回折格子は、前記LED素子から出射して前記ホログラフィック回折格子に入射した光を一定方向の平行光に偏向し、該平行光が、前記基板の第1の面及び第2の面に当たって全反射して前記基板内を伝搬し、前記ホログラフィック光学素子を照射してホログラム画像を再生するようにしたホログラム画像再生装置であって、
前記LED素子は封入樹脂層で覆われ、
前記LED素子と前記ホログラフィック回折格子との間は前記LED素子から出射した拡散光が前記ホログラフィック回折格子に入射するまでに該拡散光の拡散角を増加させない非拡散層であることを特徴とするホログラム画像再生装置。
【請求項2】
前記LED素子を前記封入樹脂層で覆うLEDパッケージに前記LED素子が収納され、前記非拡散層は、前記LEDパッケージが空気層を介さずに前記基板の第2の面に取り付けられ、前記ホログラフィック回折格子が空気層を介さずに前記基板の第1の面に取り付けられることにより形成されていることを特徴とする請求項1記載のホログラム画像再生装置。
【請求項3】
前記非拡散層は、前記封入樹脂層と前記基板を一体化し、前記ホログラフィック回折格子が空気層を介さずに前記基板の第1の面に取り付けられることにより形成されていることを特徴とする請求項1記載のホログラム画像再生装置。
【請求項4】
前記基板には、前記LED素子から出射した光が前記LEDと対向する位置にある前記ホログラフィック回折格子以外のホログラフィック回折格子に入射しないようにする遮蔽手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のホログラム画像再生装置。
【請求項5】
前記遮蔽手段は、前記基板の第1の面と前記複数のホログラフィック回折格子の間に取り付けられたルーバーフィルムの遮光層であることを特徴とする請求項4記載のホログラム画像再生装置。
【請求項6】
内部が透明で厚さ方向に直交する第1の面と第2の面を有する平板状の基板と、
一の方向に配置されて前記基板の第1の面側に取り付けられた複数のホログラフィック回折格子と、
前記基板の第1の面又は第2の面の前記ホログラフィック回折格子とは異なる位置に取り付けられ、照射光を出射するホログラフィック光学素子と、
前記基板の前記ホログラフィック回折格子と対向する位置に取り付けられ、前記ホログラフィック回折格子を照射する複数のLED素子と
を備え、
前記ホログラフィック回折格子は、前記LED素子から出射して前記ホログラフィック回折格子に入射した光を一定方向の平行光に偏向し、該平行光が、前記基板の第1の面及び第2の面に当たって全反射して前記基板内を伝搬して前記ホログラフィック光学素子を照射し、前記ホログラフィック光学素子から出射した光が対象物を照射する光照射装置であって、
前記LED素子は封入樹脂層で覆われ、
前記LED素子と前記ホログラフィック回折格子との間は前記LED素子から出射した拡散光が前記ホログラフィック回折格子に入射するまでに該拡散光の拡散角を増加させない非拡散層であることを特徴とする光照射装置。
【請求項7】
前記ホログラフィック光学素子から出射した光は、平行光、収束光、発散光のいずれかであることを特徴とする請求項6記載の光照射装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィック光学素子(媒体)とホログラフィック回折格子を取り付けた基板のホログラフィック回折格子にLED光源からの光を照射し、ホログラフィック光学素子からホログラム画像を再生するホログラム画像再生装置、及び、ホログラフィック光学素子から製品の表面検査等のための光を出射する光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
広告宣伝用の立体的な画像等を表示するホログラムは、物体を表す物体光と参照光を干渉させて生じる干渉縞を感光材料に記録したものであり、ホログラムによる画像を再生して視認するためには、ホログラムを記録する際に用いた参照光の照射方向と同じ方向、またはその共役の方向から照明光をホログラムに照射する必要がある。
このホログラムを再生するための照明光を照射する照明装置には、各種光源を使用した光学系が用いられるが、ホログラムが大きくなると照明装置も大型となることから、大サイズのホログラム用の照明装置をコンパクトにするため、光学系にLED光源と導光板を使用した照明装置の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1(国際公開WO2018/221091号公報)には、透明基板の一方の面に多数の反射型のホログラフィック回折格子が光の伝搬方向と直交方向に隙間なく配置され、透明基板の他方の面側の各ホログラフィック回折格子に対向する位置には、所定の距離を保って近接するようにLEDが配置され、各LEDからの拡散光を対向するホログラフィック回折格子で所定角度の平行光として透明基板内を全反射させながら伝搬させ、この平行光を透明基板に貼り付けられた体積型ホログラフィック記録材料に照射して立体画像ホログラムを表示(再生)させる画像表示装置が開示されている。
この特許文献1の画像表示装置では、各LEDからの拡散光が対向するホログラフィック回折格子と隣接するホログラフィック回折格子に照射されないように、隣接するホログラフィック回折格子の間に隔壁(黒い材料の壁)を設けたり、透明基板にルーバーフィルムを配置したりすることも開示されている(特許文献1の段落[0086]、図9図10)。
【0004】
しかしながら、特許文献1の画像表示装置において、光源となるLEDは、通常、LED素子にワイヤーで電極をつないだものを封止樹脂層で覆ったLEDパッケージとなっており、このLEDパッケージを使用した場合、LEDパッケージの封止樹脂層と透明基板の間に空気が存在し、LED素子で発光した拡散光が封止樹脂層から出射する際に屈折してさらに拡散して拡がることとなる。
このため、各LEDパッケージから出射して対向するホログラフィック回折格子に照射される拡散光の光量が減少し、各ホログラフィック回折格子で偏光されて透明基板内を全反射しながら伝搬して体積型ホログラフィック記録材料を照射する平行光の光量も減少し、体積型ホログラフィック記録材料から明るい画像を再生できないという問題がある。
【0005】
ところで、特許文献2(特開2010-72148号公報)には、光源モジュール10とホログラム基板20とを有する光源ユニット1であって、光源モジュール10は、筐体11内にLEDで構成される光源12を有し、筐体11内部は樹脂モールドされており、ホログラム基板20は、透明な基板21上に体積位相型の透過型ホログラム光学素子22を有して構成され、このホログラム基板20は、基板21に対してホログラム光学素子22が光源12側となるように、光源モジュール10の表面に粘着層を介して接着された光源ユニット1が開示されている(特許文献2の段落[0031]~[0033]、図2)。
この特許文献2の光源ユニット1では、ホログラム基板20と光源モジュール10との間に空気が存在せず、光源モジュール10から出射した発散光は、拡散されずにホログラム光学素子22に入射する。
しかしながら、特許文献2の光源ユニットは、光源12から出射された発散光をホログラム光学素子22で回折、偏光して基板21から外部に出射させ、基板21の外部に配置された表示素子3を照射するものであって(特許文献2の段落[0034]、[0037]、[0038]、図4図5)、特許文献1の画像表示装置のようなLED光源からの拡散光を、透明基板内を全反射しながら伝搬する平行光に偏向するものではない。
【0006】
次に、製品の表面検査等においては、製品などの対象物(ワーク)に対し、その全方位から可及的に一様な光を照射して検査できるようした光照射装置が使用され、光照射装置には、高さや寸法が大きいドーム型の他、平板状の導光板を用いて薄型にした平板型全方位光照射装置がある。
そして、平板型全方位光照射装置においては、導光板から観察手段側に漏れ出る漏れ光を減少させるために種々の提案がなされている。
例えば、特許文献3(国際公開WO2020/045557号公報)には、正方形状の平板状をなす導光板と、該導光板の側周面からその内部に光を導入する光源体(LED)とを備えるとともに、前記導光板の一方の板面に複数の凹部が形成されており、前記導光板に入射した光が前記凹部で拡がるように反射し、該導光板の他方の板面から外部に射出されて、所定の対象物に照射されるとともに、該対象物を、該導光板の一方の板面側から該導光板を通じて観察できるように構成したものであって、前記凹部の表面が滑らかな凹曲面で形成されており、前記凹部を前記板面に垂直にかつその中心を通るように切った断面形状において、該凹部の開口縁での接線と前記板面とのなす角度である接線角が、50°以上85°以下である光照射装置が開示されている。
【0007】
特許文献3の光照射装置において、導光板の一方の板面に形成された複数の凹部で反射した光が他方の板面(ワーク側の面)から出射されることから、ワークを照射するのは拡散光である。
しかしながら、検査の対象となるワークの種類によっては、拡散光より平行光、収束光、発散光を照射した方がワークの欠陥等を正確に検出でき、特許文献3の光照射装置では、検査に適した平行光、収束光、発散光をワークに照射できないという問題がある。
また、特許文献3の光照射装置では、正方形状の導光板の4つの側周面に光源体(LED)が配置されることから、特許文献1のような導光板の1つの側周面にLEDを配置するものに比べて、4倍の数のLEDが必要となる。
その上、特許文献3の光照射装置では、導光板の1つの側周面に配置されたLEDから出射した光の一部は、対向する側周面まで到達して、一方の板面(カメラ側の面)から出射されず、光の利用効率が悪い。
さらに、特許文献3の光照射装置では、一方の板面(カメラ側の面)から漏れる光を完全になくすことができず、その漏れる光がノイズ成分となり、カメラによる検査精度が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2018/221091号公報
【特許文献2】特開2010-72148号公報公報
【特許文献3】国際公開WO2020/045557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、樹脂で覆われたLED素子から出射して透明基板に入射した拡散光を、透明基板の拡散光が入射しない側の面に一方向に隙間なく配置された複数の反射型のホログラフィック回折格子で回折させ、透明基板内を全反射しながら伝搬する平行光に偏向し、この平行光をホログラフィック光学素子に照射してホログラム画像を再生したり、製品の表面検査等のための光を出射したりする場合に、LED素子から出射し透明基板に入射して複数の反射型のホログラフィック回折格子を照射する拡散光の光量の減少を抑えることにより、複数の反射型のホログラフィック回折格子で偏光される平行光の光量の減少を抑え、ホログラフィック光学素子から明るいホログラム画像が再生されるようにし、また、ホログラフィック光学素子から製品の表面検査等のためにより明るい光をカメラ側に出射せずに拡散光以外の平行光、収束光、発散光としても出射できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、内部が透明で厚さ方向に直交する第1の面と第2の面を有する平板状の基板と、一の方向に配置されて前記基板の第1の面側に取り付けられた複数のホログラフィック回折格子と、前記基板の第1の面又は第2の面の前記ホログラフィック回折格子とは異なる位置に取り付けられ、ホログラム画像を再生するホログラフィック光学素子と、前記基板の前記ホログラフィック回折格子と対向する位置に取り付けられ、前記ホログラフィック回折格子を照射する複数のLED素子とを備え、前記ホログラフィック回折格子は、前記LED素子から出射して前記ホログラフィック回折格子に入射した光を一定方向の平行光に偏向し、該平行光が、前記基板の第1の面及び第2の面に当たって全反射して前記基板内を伝搬し、前記ホログラフィック光学素子を照射してホログラム画像を再生するようにしたホログラム画像再生装置であって、前記LED素子は封入樹脂層で覆われ、前記LED素子と前記ホログラフィック回折格子との間は前記LED素子から出射した拡散光が前記ホログラフィック回折格子に入射するまでに該拡散光の拡散角を増加させない非拡散層であるホログラム画像再生装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【0011】
請求項2の発明は、前記LED素子を前記封入樹脂層で覆うLEDパッケージに前記LED素子が収納され、前記非拡散層は、前記LEDパッケージが空気層を介さずに前記基板の第2の面に取り付けられ、前記ホログラフィック回折格子が空気層を介さずに前記基板の第1の面に取り付けられることにより形成されているホログラム画像再生装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【0012】
請求項3の発明は、前記非拡散層は、前記封入樹脂層と前記基板を一体化し、前記ホログラフィック回折格子が空気層を介さずに前記基板の第1の面に取り付けられることにより形成されているホログラム画像再生装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【0013】
請求項4の発明は、前記基板には、前記LED素子から出射した光が前記LEDと対向する位置にある前記ホログラフィック回折格子以外のホログラフィック回折格子に入射しないようにする遮蔽手段が設けられているホログラム画像再生装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【0014】
請求項5の発明は、前記遮蔽手段は、前記一の方向に一定の間隔で遮光層が設けられたルーバーフィルムであるホログラム画像再生装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【0015】
請求項6の発明は、内部が透明で厚さ方向に直交する第1の面と第2の面を有する平板状の基板と、一の方向に配置されて前記基板の第1の面側に取り付けられた複数のホログラフィック回折格子と、前記基板の第1の面又は第2の面の前記ホログラフィック回折格子とは異なる位置に取り付けられ、照射光を出射するホログラフィック光学素子と、前記基板の前記ホログラフィック回折格子と対向する位置に取り付けられ、前記ホログラフィック回折格子を照射する複数のLED素子とを備え、前記ホログラフィック回折格子は、前記LED素子から出射して前記ホログラフィック回折格子に入射した光を一定方向の平行光に偏向し、該平行光が、前記基板の第1の面及び第2の面に当たって全反射して前記基板内を伝搬して前記ホログラフィック光学素子を照射し、前記ホログラフィック光学素子から出射した光が対象物を照射する光照射装置であって、前記LED素子は封入樹脂層で覆われ、前記LED素子と前記ホログラフィック回折格子との間は前記LED素子から出射した拡散光が前記ホログラフィック回折格子に入射するまでに該拡散光の拡散角を増加させない非拡散層である光照射装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【0016】
請求項7の発明は、前記ホログラフィック光学素子から出射した光は、平行光、収束光、発散光のいずれかであるの光照射装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明のホログラム画像再生装置においては、LED素子とホログラフィック回折格子との間は前記LED素子から出射した拡散光の拡散角を増加させない非拡散層であるため、LED素子から出射し基板に入射して複数の反射型のホログラフィック回折格子を照射する拡散光の光量の減少が抑えられて、複数の反射型のホログラフィック回折格子で偏光される平行光の光量の減少が抑えられ、ホログラフィック光学素子から明るいホログラム画像が再生されるという効果を奏する。
【0018】
請求項2に記載の発明のホログラム画像再生装置においては、さらに、前記非拡散層は前記LEDパッケージが空気層を介さずに前記基板の第2の面に取り付けられ、前記ホログラフィック回折格子が空気層を介さずに前記基板の第1の面に取り付けられることにより形成されていることから、前記非拡散層を容易に形成できるという効果を奏する。
【0019】
請求項3に記載の発明のホログラム画像再生装置においては、さらに、前記非拡散層は、前記封入樹脂層と前記基板を一体化し、前記ホログラフィック回折格子が空気層を介さずに前記基板の第1の面に取り付けられることにより形成されていることから、前記基板から突出物がなく、装置全体を薄くできると共に、前記LEDパッケージを前記基板に貼り付ける必要がなく、製造工程を簡素化できるという効果を奏する。
【0020】
請求項4に記載の発明のホログラム画像再生装置においては、さらに、遮蔽手段があることにより、LEDから出射した拡散光は、ホログラフィック回折格子のうち対向する位置にあるホログラフィック回折格子のみに入射し、その隣にあるホログラフィック回折格子には入射せず、ホログラフィック回折格子から所定の角度の平行光以外の光が出射して前記基板内を伝搬して前記ホログラフィック光学素子を照射し、再生されるホログラム像のコントラスが悪くなったり多重像が再生されたりするのを防止できるという効果を奏する。
【0021】
請求項5に記載の発明のホログラム画像再生装置においては、さらに、前記基板の第1の面と前記複数のホログラフィック回折格子の間にルーバーフィルムを取り付けるだけで容易に前記遮蔽手段を形成できるという効果を奏する。
【0022】
請求項6に記載の発明の光照射装置においては、LED素子とホログラフィック回折格子との間は前記LED素子から出射した拡散光の拡散角を増加させない非拡散層であるため、LED素子から出射し基板に入射して多数の反射型のホログラフィック回折格子を照射する拡散光の光量の減少を抑えられて、複数の反射型のホログラフィック回折格子で偏光される平行光の光量の減少が抑えられ、ホログラフィック光学素子から製品の表面検査等のためにより明るい照明光をカメラ側に出射せずに製品側に出射できるという効果を奏する。
【0023】
請求項7に記載の発明の光照射装置においては、さらに、製品の表面検査等のために照明光を拡散光以外の平行光、収束光、発散光にすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のホログラム画像再生装置の正面側からの斜視図と背面側からの斜視図である。
図2図1に示すホログラム画像再生装置の左側面図と正面図である。
図3図1に示すホログラム画像再生装置の背面図と底面図である。
図4図2のA-A拡大断面図である。
図5図2のB-B拡大断面図である。
図6】ルーバーフィルムの拡大斜視図である。
図7】LED素子から出射した拡散光がホログラフィック回折格子を照射する状態を説明するためのLEDパッケージ列5の中央部分付近の拡大平面図である。
図8】薄膜マスクの背面側からの斜視図である。
図9】ルーバーフィルム8に代えて薄膜マスクを使用したホログラム画像再生装置1のB-B拡大断面図とその一部拡大図である。
図10】5番目のLED素子6eから出射した拡散光が基板2内を伝搬する状態を説明する説明図である。
図11】他のホログラム画像再生装置の左側面図、正面図、背面図、底面図である。
図12図11のC-C拡大断面図、D-D拡大断面図とその一部拡大図である。
図13】本発明の光照射装置を使用した検査システムの斜視図である。
図14図13に示す光照射装置の平面図、底面図、正面図、左側面図である。
図15図14のE-E拡大断面図、F-F拡大断面図である。
図16】5番目のLED素子16eから出射した拡散光が基板12内を伝搬する状態を説明するための基板12の左側面から見た説明図である。
図17】5番目のLED素子16eから出射した拡散光が基板12内を伝搬して、基板12から外側に拡散光として出射して検査対象物21を照射する状態を説明する説明図である。
図18】ホログラフィック光学素子14から平行光、収束光、発散光を出射して検査対象物21を照射する状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[ホログラム画像再生装置の構成]
図1(a)は、本発明のホログラム画像再生装置の正面側からの斜視図、図1(b)は、本発明のホログラム画像再生装置の背面側からの斜視図、図2(a)は、図1に示すホログラム画像再生装置の左側面図、図2(b)は、図1に示すホログラム画像再生装置の正面図、図3(a)は、図1に示すホログラム画像再生装置の背面図、図3(a)は、図1に示すホログラム画像再生装置の底面図、図4は、図2(b)のA-A拡大断面図、図5は、図2(b)のB-B拡大断面図、図6は、ルーバーフィルムの拡大斜視図である。
図中、1はホログラム画像再生装置、2は基板、2Fは前面、2Rは後面、3はホログラフィック回折格子列、3a~3iはホログラフィック回折格子、4はホログラフィック光学素子、5はLEDパッケージ列、5a~5iはLEDパッケージ、6a~6iはLED素子、7a~7iは封入樹脂層、8はルーバーフィルム、8aは透明層、9は遮光層であり、図において、Xは基板2を前面2Fが正面を向くように置いた場合の前面2Fにおける水平方向(左右方向)、Yは前面2FにおけるX方向と垂直な方向(上下方向)、Zは前面2F(XY面)と垂直な方向(上下方向、基板2の厚み方向)である。
図に示すように、ホログラム画像再生装置1は、基板2、ホログラフィック回折格子列3、ホログラフィック光学素子4、LEDパッケージ列5及びルーバーフィルム8を備えている。
基板2は、光学的屈折率が1.3~1.7の平板状の無色透明な板であり、第1の面となる前面2F、第2の面となる後面2Rを備え、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリアミド、トリアセチルセルロース(TAC)等のプラスチック材料、あるいは、ガラス等からなる。
本実施形態の基板2は、光学的屈折率が約1.5で、厚さが5mmの無色透明のアクリル板からなる。
【0026】
ホログラフィック回折格子列3は、X方向(左右方向)に配置された9個のホログラフィック回折格子3a~3iからなり、基板2の前面2Fの下部にルーバーフィルム8(後述する)を介して取り付けられている。
ホログラフィック回折格子3a~3iは、それぞれ矩形の体積型ホログラフィック記録材料からなり、反射型であり、前面2Fに対して後面2R側から法線方向(Z方向)に所定の拡散角をもった所定の波長の拡散光が照射されたとき、拡散光をYZ方向にXY面(前面2F)に対して所定の角度の平行光に偏向するように回折する干渉縞が記録されている。
各ホログラフィック回折格子3a~3iで回折される平行光は、基板2の前面2Fと後面2Rに当たって全反射しながら基板2内を伝搬し、ホログラフィック光学素子4(後述する)を照射してホログラム画像を再生させる。
ホログラフィック回折格子3a~3iは、X方向(左右方向)に隙間なく配置されることがぼやけのないホログラム画像を再生させる上で望ましいが、ホログラム画像に目立たないぼやけ等を生じさせる程度の隙間や重なりがホログラフィック回折格子3a~3iにあってもよい。
本実施形態のホログラフィック回折格子3a~3iは、それぞれ1辺の長さが17.3mmの正方形状で光学的屈折率が約1.5の体積型ホログラフィック記録材料からなり、このホログラフィック回折格子3a~3iには、裏面2R側からXY面(前面2F)の法線方向(Z方向)に、532nmを中心とした緑色の拡散光が照射されたとき、XY面(前面2F)の法線に対して角度60度の平行光をYZ方向後面2R側に回折する干渉縞が記録されている。
なお、ホログラフィック回折格子3a~3iは、渉縞を微細な凹凸で記録したエンボス型ホログラフィック光学素子や回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)等であってもよい。
【0027】
ホログラフィック光学素子4は、体積型ホログラム素子であり、感光性材料である体積型ホログラフィック記録材料からなり、基板2の後面2Rに空気を介さずに貼り合わされている。
このホログラフィック光学素子4には、その前面(後面2R)に対して所定の方向・角度から、所定の波長の平行光が照射されたとき、所定の視野角をもつホログラム画像が再生される干渉縞が記録されている。
本実施形態のホログラフィック光学素子4は、ホログラフィック回折格子3a等と同様に、反射型であり、光学的屈折率が約1.5の体積型ホログラフィック記録材料からなり、このホログラフィック光学素子4には、YZ方向前面2F側からXY面(後面2R)の法線に対して約60度の角度で、532nmを中心とした緑色の平行光が照射されたときXY面(後面2R)の法線に対してY方向(上下方向)に±20度、X方向(左右方向)に±45度の視野角をもつホログラム画像が前面2F側に再生される干渉縞が記録されている。
なお、ホログラフィック光学素子4は、透過型でもよく、その場合は、基板2の前面2Fに透過型のホログラフィック光学素子4が貼り付けられ、YZ方向後面2R側からXY面の法線に対して所定角度で所定波長の平行光が照射され、前面2F側にホログラム画像が再生される。
また、ホログラフィック光学素子4は、ホログラフィック回折格子3a等と同様に、干渉縞を微細な凹凸で記録したエンボス型ホログラフィック光学素子や回折光学素子等であってもよい。
【0028】
LEDパッケージ列5は、X方向(左右方向)に配置された9個のLEDパッケージ5a~5iからなり、基板2の後面2Rのホログラフィック回折格子列3に対向する位置に配置される。
LEDパッケージ5a~5iは、LED素子6a~6i、封入樹脂層7a~7iの他、土台となるパッケージ基板、電極、ボンディングワイヤー(いずれも図示せず)等を備えている。
LED素子6a~6iは、それぞれ大きさが例えば0.3mm角の微小な発光ダイオード(LED)チップであり、パッケージ基板に取り付けられ、ボンディングワイヤーにより電極に接合され、発光ダイオード(LED)チップが発光して拡散光を出射する。
封入樹脂層7a~7iは、光学的屈折率が基板2と同じかそれに近いシリコンやエポキシ樹脂等からなり、LED素子6a~6iを覆っている。
そして、各LED素子6a~6iの中心が各ホログラフィック回折格子3a~3iの中心と対向する位置にくるようにして、各LEDパッケージ5a~5iの各封入樹脂層7a~7iの一面が、光学的屈折率が基板2と同じかそれに近いエポキシ樹脂系等の接着剤乃至粘着剤(図示せず、以下「接着剤等」という)により、基板2の後面2Rに貼り付けられ、これにより、各LEDパッケージ5a~5iが基板2の後面2Rに取り付けられる(以下、このとき形成される接着剤等の層を「接着剤層1」という)。
なお、基板2と封入樹脂層7a~7iと接着剤層1の光学的屈折率は同じであることがLED素子6a~6iから出射する拡散光の拡散角を増加させない上で望ましいが、ホログラフィック回折格子3a~3iに入射する光(拡散光)の光量をそれほど減少させない程度の拡散角の増加を生じさせる屈折率差、例えば0.1~0.2程度の屈折率差が、基板2と封入樹脂層7a~7iと接着剤層1の相互間にあってもよい。
また、LEDパッケージ5a~5iを基板2に固定する手段として、封入樹脂層7a~7iを基板2の後面2Rに接着剤等より貼り付けることに代えて、封入樹脂層7a~7iを直接基板2の後面2Rに密着させるようにして接着剤等以外の手段(例えばネジ)でLEDパッケージ5a~5iを基板2に固定してもよい。
このように封入樹脂層7a~7iを基板2の後面2Rに密着させると、封入樹脂層7a~7iと基板2の後面2Rの間に空気層が介在するが、この空気層は極めて薄く、LED素子6a~6iから出射する拡散光の拡散角を増加させるものではない。
【0029】
ルーバーフィルム8は、図6に示すように多数の透明層8aと遮光層9を備え、透明層8aと遮光層9のZ方向(前後方向)の厚さは同じである。
透明層8aは、光学的屈折率が基板2と同じかそれに近い透明シリコンゴム等の透明樹脂からなり、遮光層9は、黒色シリコンゴム等の黒色樹脂からなり、透明層8aと遮光層9が交互に一定間隔で配置され、隣り合う遮光層9の間隔は、各ホログラフィック回折格子3a~3iの幅(X方向の長さ)より短くなっている。
そして、ルーバーフィルム8の背面が、エポキシ樹脂系、シリコン樹脂系等の光学的屈折率が基板2と同じかそれに近い接着剤等(図示せず)により、基板2の前面2Fの下部に貼り付けられる(以下、このとき形成される接着剤等の層を「接着剤層2」という。)。
また、図5に示すようにエポキシ樹脂系、シリコン樹脂系等の光学的屈折率が基板2と同じかそれに近い接着剤等(図示せず)により、ホログラフィック回折格子列3がルーバーフィルム8の前面に貼り付けられる(以下、このとき形成される接着剤等の層を「接着剤層3」という。)。
なお、基板2、ルーバーフィルム8、接着剤層2、接着剤層3の光学的屈折率は同じであることがホログラフィック回折格子3a~3iに入射する拡散光の拡散角を増加させない上で望ましいが、ホログラフィック回折格子3a~3iに入射する光(拡散光)の光量をそれほど減少させない程度の拡散角の増加を生じさせる屈折率差、例えば0.1~0.2程度の屈折率差が、基板2とルーバーフィルム8と接着剤層2・3の相互間にあってもよい。
【0030】
[LED素子から出射した拡散光によるホログラフィック回折格子の照射]
図7は、LED素子から出射した拡散光がホログラフィック回折格子を照射する状態を説明するためのLEDパッケージ列5の中央部分付近の拡大平面図であり、図中、6eB、6eB’、6eB”は拡散光である。
図7に示すように、中央のLEDパッケージ5eのLED素子6eが発光するとLED素子6eの基板2側の面から拡散光が出射する。
今、LED素子6eは微小であるからこれを点光源とみなし、LED素子6eの指向角(最も強く光る中心部(中心軸)の明るさから1/2の明るさになる角度の2倍、半値角ともいう)を2φ、LED素子6eと対向する位置にあるホログラフィック回折格子3eが正方形状であるとしてその1辺の長さをw、LED素子6eからホログラフィック回折格子3eまでの距離をhとすると、LED素子6eから出射した指向角2φ内の拡散光6eBが途中で拡散しないでホログラフィック回折格子3eの全域を照射するためには、tanφ>=w/(2h)を満たす必要があり、tanφ=w/(2h)のとき、拡散光6eBのすべてがLED素子6eを照射し、LED素子6eに入射する拡散光6eBの光量が最大となる。
LED素子6eの指向角2φは、LED素子6eの種類よって異なるが、おおよそ約120度であることから、tan60°=w/(2h)を満たすようにwとhを設定することにより、LED素子6eに入射する指向角2φ内の拡散光6eBの光量を最大にすることができる。
【0031】
ここで、LED素子6eから指向角2φで出射した拡散光6eBは、封入樹脂層7e、接着剤層1を通って後面2Rから基板2内に入射する。
このとき、基板2の後面2Rと封入樹脂層7eの間には空気層が介在せず、基板2、接着剤層1及び封入樹脂層7eの光学的屈折率は、例えば約1.5と同じかそれに近いことから、LED素子6eから出射した拡散光6eBは、拡散角を増加させることなく、すなわち、さらに拡散して拡がることなく基板2内に入射する。
次に、基板2内に入射した拡散光6eBは、前面2Fから出射して、接着剤層2、ルーバーフィルム8の透明層8e及び接着剤層3を介して、ホログラフィック回折格子3eを照射する。
このとき、基板2の前面2Fと透明層8eの間には空気層が介在せず、透明層8eとホログラフィック回折格子3eとの間にも空気層が介在せず、基板2、接着剤層2、透明層8e、接着剤層3及びホログラフィック回折格子3eの屈折率は、例えば約1.5と同じかそれに近いことから、基板2から出射した拡散光6eBは、拡散角を増加させることなく、すなわち、さらに拡散して拡がることなくホログラフィック回折格子3eを照射する。
同様に、LEDパッケージ5e以外のLEDパッケージにおいても、LED素子から出射した拡散光は、拡散光6dBと同様にさらに拡散して拡がることなく基板2内に入射し、基板2から出射した拡散光は、さらに拡散して拡がることなくホログラフィック回折格子を照射する。
なお、封入樹脂層7a~7iを直接基板2の後面2Rに密着させた場合、接着剤層1がなく封入樹脂層7a~7iと基板2の後面2Rとの間には空気層が介在するが、この空気層は極めて薄いことから、LED素子6eから出射した拡散光6eBはさらに拡散して拡がることなく基板2内に入射する。
【0032】
ところで、発光によりLED素子6eから指向角2φで出射する拡散光は、指向角2φの外側にも存在し、LED素子6eから出射する拡散光は、図7に示すように拡散光6eBよりも外に広がった拡散光6eB’、6eB”(図7に二点鎖線で示す。)等も存在する。
この拡散光6eB’ 、6eB”等は、ルーバーフィルム8がすべて透明層であると、ホログラフィック回折格子3eの両隣にあるホログラフィック回折格子3d、3fにも入射し、ホログラフィック回折格子3d、3fから所定の角度の平行光以外の光が出射して基板2内を伝搬してホログラフィック光学素子4を照射し、ホログラフィック光学素子4で再生されるホログラム像のコントラスが悪くなったりホログラフィック光学素子4から多重像が再生されたりすることとなる。
しかしながら、ルーバーフィルム8には、ホログラフィック回折格子3e等の幅(X方向の長さ)より短い間隔で遮光層9が設けられており、図7に示すように拡散光6eBの外側部分の拡散光(拡散光6eB’ 、6eB”等)は、遮光層9で吸収されてホログラフィック回折格子3d、3fには入射しないこととなる。
同様に、LED素子6e以外のLED素子から出射した拡散光のうち指向角2φの外側部分の光は、遮光層9で吸収されて隣のホログラフィック回折格子には入射しないこととなる。
これにより、各ホログラフィック回折格子3a~3iから所定の角度の平行光以外の光が出射して基板2内を伝搬してホログラフィック光学素子4を照射し、ホログラフィック光学素子4で再生されるホログラム像のコントラスが悪くなったりホログラフィック光学素子4から多重像が再生されたりすることを防止できる。
【0033】
このようにLED素子6a~6iから出射した拡散光は、さらに拡散せずに基板2内に入射し、さらに拡散せずに基板2から出射してルーバーフィルム8を介してホログラフィック回折格子3a~3iに入射することから、LED素子6a~6iとホログラフィック回折格子3a~3iとの間は、拡散光の拡散角を増加させない非拡散層となる。
よって、LED素子6a~6iが発光して生成された拡散光は、途中でさらに拡散することなくホログラフィック回折格子3a~3iに入射し、ホログラフィック回折格子3a~3iを照射する拡散光の光量の減少が抑制される。
また、各LED素子6a~6iから出射した拡散光のうちX方向(左右方向)の指向角2φの外側部分の光は、ルーバーフィルム8の遮光層9によって吸収され、各LED素子6a~6iから出射した拡散光は、ホログラフィック回折格子3a~3iのうち対向する位置にあるホログラフィック回折格子のみに入射し、その隣にあるホログラフィック回折格子には入射しない。
よって、ホログラム画像再生装置1においては、tanφ=w/(2h)を満たすように各ホログラフィック回折格子3a~3iの一辺の長さwと、各LED素子6a~6iから対向するホログラフィック回折格子までの距離hを設定することにより、指向角2φ(φは約60度)で各LED素子6a~6iから出射した拡散光は、途中でさらに拡散ことなく、ルーバーフィルム8の遮光層9によって吸収されるわずかな光量以外に減少せずに、対向する各ホログラフィック回折格子3a~3iに入射し、ホログラフィック回折格子3a~3iで回折されて出射する平行光の光量の減少を最小限に抑えることができる。
【0034】
ホログラム画像再生装置1おいては、ルーバーフィルム8に代えて薄膜マスクを使用することができる。
図8は、薄膜マスクの背面側からの斜視図、図9(a)は、ルーバーフィルム8に代えて薄膜マスクを使用したホログラム画像再生装置1のB-B拡大断面図、図9(b)は、図9(a)の一部拡大図であり、図中、8’は薄膜マスク、8’kはマスク基材、9’は遮光層であり、図9において、薄膜マスクの断面を網点で表す。
図8に示すように、薄膜マスク8’は、マスク基材8’kの基板2側の面に遮光層9’を設けたものである。
マスク基材8’kは、光学的屈折率が基板2と同じかそれに近い透明シリコンゴム等の透明樹脂からなり、遮光層9’は、黒色シリコンゴム等の黒色樹脂からなり、隣り合う遮光層9’の間隔は、各ホログラフィック回折格子3a~3iの幅(X方向の長さ)より短くなっている。
そして、図9に示すように薄膜マスク8’の背面が、エポキシ樹脂系、シリコン樹脂系等の光学的屈折率が基板2と同じかそれに近い接着剤等(図示せず)により、基板2の前面2Fの下部に貼り付けられ、ホログラフィック回折格子3a~3iが、エポキシ樹脂系、シリコン樹脂系等の光学的屈折率が基板2と同じかそれに近い接着剤等(図示せず)により、薄膜マスク8’の前面に貼り付けられる。
なお、基板2、薄膜マスク8’、接着剤等の光学的屈折率は同じであることがホログラフィック回折格子3a~3iに入射する拡散光の拡散角を増加させない上で望ましいが、ホログラフィック回折格子3a~3iに入射する光(拡散光)の光量をそれほど減少させない程度の拡散角の増加を生じさせる屈折率差、例えば0.1~0.2程度の屈折率差が、基板2と薄膜マスク8’と接着剤等の相互間にあってもよい。
【0035】
[ホログラフィック光学素子によるホログラム画像の再生表示]
ホログラム画像再生装置1おいては、LED素子6a~6iから出射した拡散光が、ホログラフィック回折格子3a~3iを照射し、ホログラフィック回折格子3a~3iで平行光に偏向するように回折され、この平行光が基板2内を伝搬し、ホログラフィック光学素子4を照射してホログラム画像を再生表示させる。
図10は、5番目のLED素子6eから出射した拡散光が基板2内を伝搬する状態を説明する説明図であり、同図(a)は、基板2の左側面から見た図、同図(b)は、基板2の正面から見た図であり、図中、4Sはホログラフィック光学素子の後面である。
図10(a)において、LED素子6eから出射される拡散光abを一点鎖線で表し、LED素子6eと対向するホログラフィック回折格子3eで回折されて基板2の前面2F、後面2Rで全反射しながら伝搬する平行光a1~a6、b1~b5を二点鎖線で表し、図10(b)において、ホログラフィック回折格子3eで回折された平行光が伝搬する部分(領域)を灰色で表す。
【0036】
LED素子6eから出射される発散角2φの拡散光abは、ルーバーフィルム8の透明層8eを介してホログラフィック回折格子3eに入射して伝搬角θの平行光a1に回折され、平行光a1は、基板2の後面2Rの領域A1に当たって全反射して平行光b1となり、平行光b1は、前面2Fの領域B1に当たって全反射して平行光a2となり、平行光a2は、ホログラフィック光学素子4に入って一部の光が透過して後面4Sの領域A2に当たって全反射して平行光b2となり、平行光b2は、基板2内に入って前面2Fの領域B2に当たって全反射して平行光a3となり、平行光a3は、ホログラフィック光学素子4に入って一部の光が透過して後面4Sの領域A3に当たって全反射して平行光b3となり、平行光b3は、基板2内に入って前面2Fの領域B3に当たって全反射し、これを繰り返して基板2内を平行光a4、b4、a5、b5、a6が伝搬して行く。
この場合、ホログラフィック回折格子3eで回折され、後面2R、後面4S、前面3Fで全反射される平行光(a1、b1、a2、b2、a3、b3・・・)は、図8(b)に示すように伝搬方向に直交し基板2の厚み方向に直交する方向に拡散せず平行であり(図8(b)に示されている灰色の帯状領域)、その伝搬方向の長さyは、基板2の厚さをtとすると、y=2t×tanθとなり、平行光(a1、b1、a2、b2、a3、b3・・・)が、後面3R、後面4S、前面3Fに伝搬方向に隙間なく当たるためには、ホログラフィック回折格子3eの光の伝搬方向の長さMyと長さyを等しくする必要がある。例えば、θ=60度、t=5mmの場合、My=y=2×5×tan60°=17.3mmとなる。
また、他のLED素子(LED素子6a~6d、6f~6i)から出射される発散角2φの拡散光も、同様にして対向する位置にあるホログラフィック回折格子で伝搬角θの平行光に回折され、基板2内を伝搬していく。
【0037】
ここで、ホログラフィック光学素子4には、ホログラフィック回折格子3a~3iからの平行光(Z方向のXY面に対して角度θの平行光)が照射されたとき、ホログラム画像が再生される干渉縞が記録されている。
よって、ホログラフィック回折格子3a~3iで回折され、基板2の前面2Fで全反射しホログラフィック光学素子4に入った平行光の一部は、ホログラフィック光学素子4の干渉縞により回折して、基板2から外側(正面側)に出て、これによってホログラム画像が再生され、正面側のホログラフィック光学素子4と対向する位置にいる観察者は、再生されたホログラム画像を視認することができる。
すなわち、基板2の前面2Fで全反射しホログラフィック光学素子4に入った平行光のうち、一部はホログラム画像を表す画像光として基板2の外側(正面側)に出て、残りは平行光のままホログラフィック光学素子4の後面4Sで全反射することとなる。
この場合、ホログラフィック光学素子4が貼り付けられた基板2内において、ホログラフィック光学素子4の後面4S又は基板2の前面2Fに当たった平行光が前面2F又は後面4Sに当たるまでに進む距離S’は、ホログラフィック光学素子4の厚みをδとすると、S’=(d+δ)tanθとなり、ホログラフィック光学素子4が貼り付けられていない基板2内を平行光が進む距離S(=dtanθ)より大きくなる。 δが基板2の厚みdに比べて小さい場合(例えば、δはdの5%以下)は、S’とSはほぼ等しく、δは無視してよいが、δがdに比べて無視できないほど大きい場合(例えば、δはdの10%以上)は、LyとS’が同じになるに、すなわち、Ly=(d+δ)tanθとなるように設定し、基板2内を伝搬する平行光がホログラフィック光学素子4を照射するようにするのが望ましい。
【0038】
以上のようにホログラム画像再生装置1は、基板2、ホログラフィック回折格子3a~3i、ホログラフィック光学素子4、LED素子6a~6iと封入樹脂層7a~7iを有するLEDパッケージ5a~5i及び遮光層9a~9hを有するルーバーフィルム8を備え、LED素子6a~6iとホログラフィック回折格子3a~3iとの間は、拡散光の拡散角を増加させない非拡散層となり、所定の指向角で各LED素子6a~6iから出射した拡散光は、途中でさらに拡散ことなく、ルーバーフィルム8の遮光層9a~9hによって吸収されるわずかな光量以外に減少せずに、対向する各ホログラフィック回折格子3a~3iに入射し、ホログラフィック回折格子3a~3iで回折されて出射する平行光の光量の減少を最小限に抑えることができる。
そして、ホログラム画像再生装置1おいては、このように光量の減少が最小限に抑えられた平行光が基板2内を伝搬し、ホログラフィック光学素子4を照射することから、明るいホログラム画像を再生表示させることができる。
【0039】
[他のホログラム画像再生装置]
本発明のホログラム画像再生装置は、図1図10に示すホログラム画像再生装置1に限定されるものではなく、種々の形態をとることができる。
図11(a)は、他のホログラム画像再生装置の左側面図、図11(b)は、他のホログラム画像再生装置の正面図、図11c)は、他のホログラム画像再生装置の背面図、図11(d)は、他の示すホログラム画像再生装置の底面図、図12(a)は、図11(b)のC-C拡大断面図、図12(b)は、図11(b)のD-D拡大断面図、図12(c)は、図12(b)の一部拡大図である。
図中、1’はホログラム画像再生装置、2’は基板、2’Fは前面、2’Rは後面、9”a~9”hは遮光層であり、図1図10に示すホログラム画像再生装置1の構成部分と同一のものには同一の符号を付し、図において、Xは基板2’を前面2’Fが正面を向くように置いた場合の前面2’Fにおける水平方向(左右方向)、Yは前面2’FにおけるX方向と垂直な方向(上下方向)、Zは前面2’F(XY面)と垂直な方向(上下方向、基板2’の厚み方向)である。
図に示すように、ホログラム画像再生装置1’は、基板2’、ホログラフィック回折格子列3、ホログラフィック光学素子4、LED素子6a~6i、は遮光層9”a~9”hを備えている。
基板2’は、基板2と同じ光学的屈折率の平板状の無色透明な板であり、第1の面となる前面2’F、第2の面となる後面2’Rを備え、基板2と同じ材料からなる。
基板2’においては、後面2’R側にLED素子6a~6i等が埋め込まれることから、基板2’は、基板2より若干厚くなっている。
【0040】
ホログラフィック回折格子列3、ホログラフィック回折格子3a~3iは、ホログラム画像再生装置1に取り付けられたものと同じであるが、ホログラム画像再生装置1’においては、ホログラム画像再生装置1と異なり、ホログラフィック回折格子3a~3iがルーバーフィルム8を介さずに基板2’の前面2’Fの下部に取り付けられている。
ホログラフィック光学素子4は、画像再生装置1に取り付けられたものと同じであり、基板2’の後面2’Rに空気を介さずに貼り合わされている。
LED素子6a~6iは、ホログラム画像再生装置1のLEDパッケージ5a~5iに収納されたものと同じであるが、ホログラム画像再生装置1’においては、ホログラム画像再生装置1と異なり、LED素子6a~6i、パッケージ基板、電極、ボンディングワイヤー等がLEDパッケージではなく、基板2’の後面2’R側に埋め込まれている。
すなわち、ホログラム画像再生装置1’においては、ホログラム画像再生装置1のようにLEDパッケージ5a~5iを基板2の後面2に貼り付けることに代えて、LED素子6a~6i等を基板2’の後面2’R側に埋め込んでいる。
これにより、ホログラム画像再生装置1’においては、ホログラム画像再生装置1のような基板2の後面2から突出物(LEDパッケージ)がなく、装置全体を薄くできると共に、LEDパッケージを基板に貼り付ける必要がなく、製造工程を簡素化できる。
【0041】
遮光層9”a~9”hは、ルーバーフィルム8の遮光層9や薄膜マスク8’の遮光層9’と同様に黒色シリコンゴム等の黒色樹脂からなり、図12(c)に示すうようにXZ断面がくさび形状をしており、その先端はLED素子6a~6iが埋め込まれた深さまで延びている。
この遮光層9”a~9”hは、基板2’の前面2’Fのホログラフィック回折格子3a~3iの境界部分にくさび形状の溝を形成し、その溝に黒色樹脂を充填することにより形成される。
すなわち、ホログラム画像再生装置1’においては、ホログラム画像再生装置1のルーバーフィルム8や薄膜マスク8’を使用せず、隣り合うホログラフィック回折格子3a~3iの境界部分が各遮光層9”a~9”hに重なるようにして、エポキシ樹脂系、シリコン樹脂系等の光学的屈折率が基板2’と同じになる接着剤等(図示せず)により、ホログラフィック回折格子列3が基板2’の前面2’Fに直接貼り付けられる。
これにより、ホログラム画像再生装置1’においては、隣り合うホログラフィック回折格子3a~3iの境界部分以外に遮光層がなく、LED素子6a~6iから出射した指向角内の拡散光のすべてが対向するホログラフィック回折格子3a~3iに入射し、ホログラム画像再生装置1のようにルーバーフィルム8や薄膜マスク8’を基板2に貼り付ける必要がなく、製造工程を簡素化できる。
【0042】
ホログラム画像再生装置1’においては、ホログラム画像再生装置1と同様に、LED素子6a~6iとホログラフィック回折格子3a~3iとの間は、拡散光の拡散角を増加させない非拡散層となり、LED素子6a~6iから出射した光は、さらに拡散せずに基板2’から出射して直接ホログラフィック回折格子3a~3iに入射する。
また、各LED素子6a~6iから出射した拡散光のうちX方向(左右方向)の指向角2φの外側部分の光は、遮光層9”a~9”hによって吸収され、各LED素子6a~6iから出射した拡散光は、ホログラフィック回折格子3a~3iのうち対向する位置にあるホログラフィック回折格子のみに入射し、その隣にあるホログラフィック回折格子には入射しないこととなる。
よって、ホログラム画像再生装置1’においては、ホログラム画像再生装置1と同様に、指向角2φ(φは約60度)で各LED素子6a~6iから出射した拡散光は、途中でさらに拡散ことなく、遮光層9”a~9”hによって吸収されるわずかな光量以外に減少せずに、対向する各ホログラフィック回折格子3a~3iに入射し、ホログラフィック回折格子3a~3iで回折されて出射する平行光の光量の減少を最小限に抑えることができる。
【0043】
そして、ホログラム画像再生装置1’においては、ホログラム画像再生装置1と同様に、LED素子6a~6iから出射される指向角2φの拡散光は、対向する位置にあるホログラフィック回折格子3a~3iで伝搬角θの平行光に回折され、基板2’の前面2’Fで全反射しホログラフィック光学素子4に入った平行光の一部は、ホログラフィック光学素子4の干渉縞により回折して、基板2’から外側(正面側)に出て、これによってホログラム画像が再生され、正面側のホログラフィック光学素子4と対向する位置にいる観察者は、再生されたホログラム画像を視認することができる。
よって、ホログラム画像再生装置1’においても、ホログラム画像再生装置1と同様に、光量の減少が最小限に抑えられた平行光が基板2内を伝搬し、ホログラフィック光学素子4を照射することから、明るいホログラム画像を再生表示させることができる。
【0044】
[光照射装置]
図13は、本発明の光照射装置を使用した検査システムの斜視図、図14(a)は、図13に示す光照射装置の平面図、図14(b)は、図13に示す光照射装置の底面図、図14(a)は、図1に示すホログラム画像再生装置の背面図、図14(c)は、図13に示す光照射装置の正面図、図14(d)は、図13に示す光照射装置の左側面図、図15(a)は、図14(a)のE-E拡大断面図、図15(b)は、図14(a)のF-F拡大断面図である。
図中、10は検査システム、11は光照射装置、12は基板、12Uは上面、12Lは下面、13はホログラフィック回折格子列、13a~13iはホログラフィック回折格子、14はホログラフィック光学素子、15はLEDパッケージ列、15a~15iはLEDパッケージ、16a~16iはLED素子、17a~17iは封入樹脂層、18はルーバーフィルム、18aは透明層、19は遮光層、20はカメラ、21は検査対象物、22は検査台であり、図において、Xは水平方向(左右方向)、YはX方向と垂直な方向(上下方向)、ZはXY面と垂直な方向(上下方向)である。
図に示すように、検査システム10は、光照射装置11、カメラ20、検査台22、検査制御装置(図示せず)を備え、検査台22に載置された検査対象物21に対して、光照射装置11から照明光を照射し、カメラ20で検査対象物21を撮影し、検査制御装置から撮影画像に基づく検査結果を出力する。
光照射装置11は、基板12、ホログラフィック回折格子列13、ホログラフィック光学素子14、LEDパッケージ列15及びルーバーフィルム18を備えている。
基板12は、ホログラム画像再生装置1の基板2と同じものであるが、ホログラム画像再生装置では、厚さ方向が前後方向(Z方向)となるように基板2が配置されるのに対し、光照射装置11では、厚さ方向が上下方向(Y方向)となるように基板12が配置される。
これより、基板12の下面12Lが第1の面となり、基板12の上面12Uが第2の面となる。
【0045】
ホログラフィック回折格子列13は、ホログラム画像再生装置1のホログラフィック回折格子列3と同じものであり、X方向(左右方向)に隙間なく配置された9個のホログラフィック回折格子13a~13iからなり、基板12の下面12Lの手前側にルーバーフィルム18(後述する)を介して取り付けられている。
ホログラフィック回折格子13a~13iは、ホログラフィック回折格子列3のホログラフィック回折格子3a~3iと同じものであり、下面12Lに対して上面12U側から法線方向(Y方向)に所定の拡散角をもった所定の波長の拡散光が照射されたとき、拡散光をYZ方向にXZ面(下面12L)に対して所定の角度の平行光に偏向するように回折する干渉縞が記録されている。
各ホログラフィック回折格子13a~13iで回折される平行光は、基板12の下面12Lと上面12Uに当たって全反射しながら基板12内を伝搬し、ホログラフィック光学素子4(後述する)に入射して照明光となって出射する。
ホログラフィック光学素子14は、ホログラム画像再生装置1のホログラフィック光学素子4と同じ体積型ホログラム素子であり、感光性材料である体積型ホログラフィック記録材料からなり、基板12の上面12Uに空気を介さずに貼り合わされている。
このホログラフィック光学素子14には、その上面(上面12U)に対して所定の方向・角度から、所定の波長の平行光が入射されたとき、検査対象物21を照射する拡散光、平行光、収束光、発散光等の照明光を出射する干渉縞が記録されている。
本実施形態のホログラフィック光学素子14は、ホログラフィック回折格子13a等と同様に、反射型であり、光学的屈折率が約1.5の体積型ホログラフィック記録材料からなり、このホログラフィック光学素子14には、下面12L側から上面12Uの法線に対して約60度の角度で、白色の平行光が照射されたとき、平行光を下面12の法線に対して前後方向に±15度、左右方向に±15度の拡散光として下面12L側に回折する干渉縞が記録されている。
なお、ホログラフィック光学素子14は、透過型でもよく、その場合は、基板12の下面12Lに透過型のホログラフィック光学素子14が貼り付けられ、YZ方向上面12U側からXZ面の法線に対して所定角度で所定波長の平行光が照射され、下面12L側に検査対象物21を照射する照明光が出射される。
【0046】
LEDパッケージ列15は、ホログラム画像再生装置1のLEDパッケージ列5と同じものであり、X方向(左右方向)に配置された9個のLEDパッケージ15a~15iからなり、基板12の上面12Uのホログラフィック回折格子列13に対向する位置に配置される。
LEDパッケージ15a~15iは、LEDパッケージ列5のLEDパッケージ5a~5iと同じものであり、LED素子16a~16i、封入樹脂層17a~17iの他、土台となるパッケージ基板、電極、ボンディングワイヤー(いずれも図示せず)等を備えている。
LED素子16a~16iは、LEDパッケージ5a~5iのLED素子6a~6iと同じものであり、パッケージ基板に取り付けられ、ボンディングワイヤーにより電極に接合され、発光ダイオード(LED)チップが発光して拡散光を出射する。
封入樹脂層17a~17iは、LEDパッケージ5a~5iの封入樹脂層7a~7iと同じものであり、LED素子16a~16iを覆っている。
そして、各LED素子16a~16iの中心が各ホログラフィック回折格子13a~13iの中心と対向する位置にくるようにして、各LEDパッケージ15a~15iの各封入樹脂層17a~17iの一面が、光学的屈折率が基板12と同じかそれに近いエポキシ樹脂系等の接着剤等により、基板12の上面12Uに貼り付けられ、これにより、各LEDパッケージ15a~15iが基板12の上面12Uに取り付けられる。
なお、基板12と封入樹脂層17a~17iと接着剤等の光学的屈折率は同じであることがLED素子16a~16iから出射する拡散光の拡散角を増加させない上で望ましいが、ホログラフィック回折格子13a1~3iに入射する光(拡散光)の光量をそれほど減少させない程度の拡散角の増加を生じさせる屈折率差、例えば0.1~0.2程度の屈折率差が、基板12と封入樹脂層17a~7iと接着剤等の相互間にあってもよい。
また、LEDパッケージ15a~15iを基板12に固定する手段として、封入樹脂層17a~17iを基板12の上面12Uに接着剤等より貼り付けることに代えて、封入樹脂層17a~17iを直接基板12の上面12Uに密着させるようにして接着剤等以外の手段(例えばネジ)でLEDパッケージ15a~15iを基板12に固定してもよい。
【0047】
ルーバーフィルム18は、ホログラム画像再生装置1のルーバーフィルム8と同じものであり、透明層18aと遮光層19を備え、透明層18a~18iと遮光層19a~19hのY方向(上下方向)の厚さは同じである(図6参照)。
透明層18aは、ルーバーフィルム8の透明層8aと同じものであり、遮光層19は、ルーバーフィルム8の遮光層9と同じものであり、透明層18aと遮光層19が交互に一定間隔で配置され、隣り合う遮光層19の間隔は、各ホログラフィック回折格子13a~13iの幅(X方向の長さ)より短くなっている。
そして、ルーバーフィルム18の背面が、エポキシ樹脂系、シリコン樹脂系等の光学的屈折率が基板12と同じかそれに近い接着剤等(図示せず)により、基板12の下面12Lの下部に貼り付けられる。
また、図15に示すようにエポキシ樹脂系、シリコン樹脂系等の光学的屈折率が基板12と同じかそれに近い接着剤等(図示せず)により、ホログラフィック回折格子列13がルーバーフィルム18の下面に貼り付けられる。
なお、基板12、ルーバーフィルム18、接着剤等の光学的屈折率は同じであることがホログラフィック回折格子13a~13iに入射する拡散光の拡散角を増加させない上で望ましいが、ホログラフィック回折格子13a~13iに入射する光(拡散光)の光量をそれほど減少させない程度の拡散角の増加を生じさせる屈折率差、例えば0.1~0.2程度の屈折率差が、基板12とルーバーフィルム18と接着剤等の相互間にあってもよい。
また、光照射装置11においても、ホログラム画像再生装置1と同様にルーバーフィルム18に代えて図8に示す薄膜マスク8’を使用することができる。
【0048】
光照射装置11においてはLED素子16a~16iとホログラフィック回折格子13a~13iとの間は、拡散光の拡散角を増加させない非拡散層となり、LED素子16a~16iから出射した光は、さらに拡散せずに基板2内に入射し、拡散せずに基板12から出射してルーバーフィルム18を介してホログラフィック回折格子13a~13iに入射する。
よって、LED素子16a~16iが発光して生成された拡散光は、途中でさらに拡散することなくホログラフィック回折格子13a~13iに入射し、ホログラフィック回折格子13a~13iを照射する拡散光の光量の減少が抑制される。
また、各LED素子16a~16iから出射した拡散光のうちX方向(左右方向)の指向角2φの外側部分の光は、ルーバーフィルム18の遮光層19によって吸収され、各LED素子16a1~6iから出射した拡散光は、ホログラフィック回折格子13a~13iのうち対向する位置にあるホログラフィック回折格子のみに入射し、その隣にあるホログラフィック回折格子には入射しない。
よって、光照射装置11においては、ホログラム画像再生装置1と同様に、tanφ=w/(2h)を満たすように各ホログラフィック回折格子13a~13iの一辺の長さwと、各LED素子16a~16iから対向するホログラフィック回折格子までの距離hを設定することにより、発散角2φ(φは約60度)で各LED素子16a~16iから出射した拡散光は、途中でさらに拡散ことなく、ルーバーフィルム18の遮光層19a~9hによって吸収されるわずかな光量以外に減少せずに、対向する各ホログラフィック回折格子13a~13iに入射し、ホログラフィック回折格子13a~13iで回折されて出射する平行光の光量の減少を最小限に抑えることができる。
なお、光照射装置11においては、ホログラム画像再生装置1のようなホログラム像を再生するものではないため、ホログラム像のコントラス等を考慮する必要がなく、ルーバーフィルム18をなくして、各LED素子16a1~6iから出射した拡散光の一部が対向する位置にあるホログラフィック回折格子の隣にあるホログラフィック回折格子に入射することとなってもよい。
【0049】
[光照射装置による検査対象物の照射]
光照射装置11においては、ホログラム画像再生装置1と同様に、LED素子16a~16iから出射した拡散光が、ホログラフィック回折格子13a~13iを照射し、ホログラフィック回折格子3a~3iで平行光に偏向するように回折され、この平行光が基板12内を伝搬し、ホログラフィック光学素子14を照射する。
図16は、5番目のLED素子16eから出射した拡散光が基板12内を伝搬する状態を説明するための基板12の左側面から見た説明図であり、図中、14Uはホログラフィック光学素子の上面である。
図16において、LED素子16eから出射される拡散光ab’を一点鎖線で表し、LED素子16eと対向するホログラフィック回折格子13eで回折されて基板12の上面12U、下面12Lで全反射しながら伝搬する平行光a1’~a6 ’、b1’~b5 ’を二点鎖線で表す。
LED素子16eから出射される発散角2φの拡散光ab’は、ルーバーフィルム18の透明層を介してホログラフィック回折格子13eに入射して伝搬角θの平行光a1’に回折され、平行光a1’は、基板12の上面12Uの領域A1’に当たって全反射して平行光b1’となり、平行光b1’は、下面12Lの領域B1’に当たって全反射して平行光a2’となり、平行光a2’は、ホログラフィック光学素子14に入って一部の光が透過して上面14Uの領域A2’に当たって全反射して平行光b2’となり、平行光b2’は、基板12内に入って下面12Lの領域B2’に当たって全反射して平行光a3’となり、平行光a3’は、ホログラフィック光学素子14に入って一部の光が透過して上面14Uの領域A3’に当たって全反射して平行光b3’となり、平行光b3’は、基板12内に入って下面12Lの領域B3’に当たって全反射し、これを繰り返して基板12内を平行光a4’、b4’、a5’、b5’、a6’が伝搬して行く。
また、他のLED素子(LED素子16a~16d、16f~16i)から出射される発散角2φの拡散光も、同様にして対向する位置にあるホログラフィック回折格子で伝搬角θの平行光に回折され、基板12内を伝搬していく。
【0050】
ここで、ホログラフィック光学素子14には、ホログラフィック回折格子13a~13iからの平行光(XZ面に対して角度θの平行光)が入射したとき、検査対象物21を照射するためのZ方向(前後方向)に±15度、X方向(左右方向)に±15度の拡散光を出射する干渉縞が記録されている。
図17は、5番目のLED素子16eから出射した拡散光が基板12内を伝搬しながら、ホログラフィック光学素子14の干渉縞により回折して、基板12から外側(下面側)に拡散光として出射して検査対象物21を照射する状態を説明する説明図である。
ホログラフィック光学素子14に入った平行光a2’、a3’、a4’、a5’、a6’のうち透過しない光は、ホログラフィック光学素子14で上面12Uの法線に対して上下方向に±15度、左右方向に±15度の拡散光c1、c2、c3、c4、c5として下面12L側に回折され、拡散光c1、c2、c3、c4、c5が検査台22に載置された検査対象物21を照射する。
この場合、拡散光c1、c2、c3、c4、c5の強さが均一になるように、ホログラフィック光学素子14の回折効率を変化させ、例えば、ホログラフィック光学素子14に最初に入る平行光a2’の回折効率を20%、次の平行光a3’の回折効率を25%、次の平行光a4’の回折効率を33.3%、次の平行光a5’の回折効率を50%、最後の平行光a6’の回折効率を100%とすると、拡散光c1、c2、c3、c4、c5の強さが均一になる。
また、基板12と検査対象物21(検査台22)の間に空気が介在するため、基板12を出た拡散光c1、c2、c3、c4、c5は、収束するように屈折して検査対象物21(検査台22を照射することから、拡散光c1、c2、c3、c4、c5の拡散角を、検査対象物21(検査台22)を照射する光が均一となるように調整する。
よって、ホログラフィック回折格子13a~13iで回折され、基板12の下面12Lで全反射しホログラフィック光学素子14に入った平行光の一部は、ホログラフィック光学素子14の干渉縞により回折して、基板12から外側(下面側)に拡散光として出射して検査対象物21を照射し、この拡散光が照射された検査対象物21をカメラ20が撮像する。
【0051】
図18は、ホログラフィック光学素子14にホログラフィック回折格子13a~13iから平行光が入射したとき、ホログラフィック光学素子14から拡散光以外の照明光を出射して検査対象物21を照射する状態を説明する説明図であり、同図(a)は、照明光として平行光を出射する場合、同図(b)は、照明光として収束光を出射する場合、同図(c)は、照明光として発散光を出射する場合を示している。
図18(a)に示すようにホログラフィック光学素子14から照明光として平行光を出射する場合、ホログラフィック光学素子14には、ホログラフィック回折格子13a~13iからの平行光(XZ面に対して角度θの平行光)が入射したとき、上面12U(XZ面)に対して垂直な平行光を出射する干渉縞が記録されている。
この場合、ホログラフィック光学素子14に入った平行光a2’、a3’、a4’、a5’、a6’のうち透過しない光は、ホログラフィック光学素子14で上面12Uに垂直な平行光d1、d2、d3、d4、d5として下面12L側に回折され、平行光d1、d2、d3、d4、d5が検査台22に載置された検査対象物21を照射する。
図18(b)に示すようにホログラフィック光学素子14から照明光として収束光を出射する場合、ホログラフィック光学素子14には、ホログラフィック回折格子13a~13iからの平行光(XZ面に対して角度θの平行光)が入射したとき、微小な検査対象物21’のやや下方の点Pに収束する収束光を出射する干渉縞が記録されている。
この場合、ホログラフィック光学素子14に入った平行光a2’、a3’、a4’、a5’、a6’のうち透過しない光は、ホログラフィック光学素子14で収束光e1、e2、e3、e4、e5として下面12L側に回折され、収束光e1、e2、e3、e4、e5が検査台22に載置された微小な検査対象物21’を照射する。
図18(c)に示すようにホログラフィック光学素子14から照明光として発散光を出射する場合、ホログラフィック光学素子14には、ホログラフィック回折格子13a~13iからの平行光(XZ面に対して角度θの平行光)が入射したとき、基板12の上方の点Qから発散する発散光を出射する干渉縞が記録されている。
この場合、ホログラフィック光学素子14に入った平行光a2’、a3’、a4’、a5’、a6’のうち透過しない光は、ホログラフィック光学素子14で発散光f1、f2、f3、f4、f5として下面12L側に回折され、発散光f1、f2、f3、f4、f5とが検査台22に載置された検査対象物21を照射する。
【0052】
以上のように光照射装置11は、基板12、ホログラフィック回折格子13a~13i、ホログラフィック光学素子14、LED素子16a~16iと封入樹脂層17a~17iを有するLEDパッケージ15a~15i及び遮光層19a~19hを有するルーバーフィルム18を備え、LED素子16a~16iとホログラフィック回折格子13a~13iとの間は、LED素子16a~16iから出射した拡散光の拡散角を増加させない非拡散層となり、所定の発散角で各LED素子16a~16iから出射した拡散光は、途中でさらに拡散ことなく、ルーバーフィルム81の遮光層19a~19hによって吸収されるわずかな光量以外に減少せずに、対向する各ホログラフィック回折格子13a~13iに入射し、ホログラフィック回折格1子3a~13iで回折されて出射する平行光の光量の減少を最小限に抑えることができる。
そして、光照射装置11おいては、このように光量の減少が最小限に抑えられた平行光が基板12内を伝搬してホログラフィック光学素子14を照射し、ホログラフィック光学素子14から、検査対象物21を照射するための明るい照射光を拡散光のみならず平行光、収束光、発散光としても出射することができる。
なお、本発明の光照射装置は、図13図18に示す光照射装置11に限定されるものではなく、種々の形態をとることができ、ホログラム画像再生装置1’と同じように、LEDパッケージ15a~15iを基板12の上面12Uに貼り付けることに代えて、LED素子16a~16i等を基板12の上面12U側に埋め込んでもよく、また、ルーバーフィルム18を使用せず、基板12の下面12Lのホログラフィック回折格子13a~13iの境界部分にくさび形状の溝を形成し、その溝に黒色樹脂を充填することにより遮光層を形成し、ホログラフィック回折格子列13を基板12の下面12Lに直接貼り付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のホログラム画像再生装置及び光照射装置は、LED素子から出射し透明基板に入射して複数の反射型のホログラフィック回折格子を照射する拡散光の光量の減少を抑えることにより、複数の反射型のホログラフィック回折格子で偏光される平行光の光量の減少を抑え、ホログラフィック光学素子から明るいホログラム画像が再生されるようにし、また、ホログラフィック光学素子からより明るい光を拡散光以外の平行光、収束光、発散光としても出射でき、樹脂で覆われたLED素子から出射して透明基板に入射した拡散光を、透明基板の拡散光が入射しない側の面に一方向に隙間なく配置された複数の反射型のホログラフィック回折格子で回折させ、透明基板内を全反射しながら伝搬する平行光に偏向し、この平行光をホログラフィック光学素子に照射してホログラム画像を再生するホログラム画像再生装置、及び、製品の表面検査等のための光を出射する光照射装置に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1、1’ ホログラム画像再生装置
2、2’ 基板
2F、2’F 前面
2R、2’R 後面
3 ホログラフィック回折格子列
3a~3i ホログラフィック回折格子
4 ホログラフィック光学素子
5 LEDパッケージ列
5a~5i LEDパッケージ
6a~6i LED素子
6eB、6eB’ 拡散光
7a~7i 封入樹脂層
8 ルーバーフィルム
8a 透明層
8’は薄膜マスク
8’kはマスク基材
9、9’、9”a~9”h 遮光層
10 検査システム
11 光照射装置
12 基板
12U 上面
12L 下面
13 ホログラフィック回折格子列
13a~13i ホログラフィック回折格子
14 ホログラフィック光学素子
15 LEDパッケージ列
15a~15i LEDパッケージ
16a~16i LED素子
17a~17i 封入樹脂層
18 ルーバーフィルム
18a 透明層
19 遮光層
20 カメラ
21 検査対象物
22 検査台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18