(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065988
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】導電性材料及び測定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/268 20210101AFI20240508BHJP
A61B 5/256 20210101ALI20240508BHJP
A61B 5/26 20210101ALI20240508BHJP
A61B 5/27 20210101ALI20240508BHJP
【FI】
A61B5/268
A61B5/256 220
A61B5/26 200
A61B5/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175146
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】516043742
【氏名又は名称】エーアイシルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】岡野 秀生
(72)【発明者】
【氏名】目黒 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】川股 祥子
(72)【発明者】
【氏名】及川 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】菊池 藍
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127AA04
4C127LL13
4C127LL22
(57)【要約】
【課題】生体電気を検出するのに適した導電性材料及び測定システムを提供する。
【解決手段】導電性材料10は、生体電気を検出するためのものであり、絶縁基礎部材11と、絶縁基礎部材11に間隔をあけて設けられ、導電性高分子よりなり、絶縁基礎部材11の厚み方向に通電可能な複数の導体部12とを有している。絶縁基礎部材11は、繊維を含み、厚みが0.2mm以上2mm以下であり、絶縁性の材料により構成されている。絶縁基礎部材11には、例えば、面内方向に間隔を開けて厚み方向に貫通する複数の貫通孔11Aが設けられている。導体部12は、各貫通孔の内部又は内周面に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体電気を検出するための導電性材料であって、
繊維を含み厚みが0.2mm以上2mm以下である絶縁性の絶縁基礎部材と、
前記絶縁基礎部材に間隔をあけて設けられ、導電性高分子よりなり、前記絶縁基礎部材の厚み方向に通電可能な複数の導体部と
を有することを特徴とする導電性材料。
【請求項2】
前記絶縁基礎部材には、厚み方向に貫通する複数の貫通孔が間隔をあけて設けられ、
前記導電部は、前記貫通孔の内部又は内周面に設けられた
ことを特徴とする請求項1記載の導電性材料。
【請求項3】
前記導体部は、前記絶縁基礎部材を構成する前記繊維の隙間に前記導電性高分子が含侵されることにより形成されたことを特徴とする請求項1記載の導電性材料。
【請求項4】
前記各導体部の間隔は、0.2mm以上20mm以下であることを特徴とする請求項1記載の導電性材料。
【請求項5】
前記絶縁基礎部材は、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、又は、編み物よりなることを特徴とする請求項1記載の導電性材料。
【請求項6】
生体電気を検出する測定システムであって、
自転車のハンドルグリップ又は自動車のステアリングに間隔をあけて配設された複数の電極と、
前記ハンドルグリップ又は前記ステアリングを利用者が手で握る際に、前記利用者の手と前記複数の電極との間に介在され、請求項1から請求項5のいずれか1に記載の導電性材料よりなる導通部材と
を備えたことを特徴とする測定システム。
【請求項7】
前記ハンドグリップ又は前記ステアリングに、前記電極として、信号検出電極とノイズ軽減用共通電極とが交互にスパイラル状に巻かれて配設されたことを特徴とする請求項6記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体電気を検出するための導電性材料及びそれを用いた測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活の様々な場面において心拍、心電、又は、筋電等の生体情報を測定し、人の健康や治療に役立てることが行われている。例えば、自転車のハンドグリップや自動車のステアリングに電極を配置し、ハンドグリップやステアリングを手で握ることにより、運転中の生体情報を測定することが提案されている。この場合、例えば、コモンモードノイズを軽減するために、ハンドグリップやステアリングに信号検出電極とノイズ軽減用共通電極とを間隔をあけて配置することが考えられるが、そのまま手で握るとショートしてしまい、測定することができない。そこで、簡単にコモンモードノイズを軽減して生体情報を測定することができる導電性材料及び測定システムの開発が望まれていた。
【0003】
なお、従来より、半導体デバイスのリードと基板上の回路とを接続する際に、リード間の絶縁を確実にするために、異方性導電膜を間に介して接続することが行われている。異方性導電膜としては、例えば、絶縁性接着剤中に導電性粒子及び絶縁性粒子を分散し、圧力方向にのみ導電性を有し、それ以外の方向では絶縁性を示すものがある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような異方性導電膜は、熱圧着などにより接続されるものであり、手で握っても導電性を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、生体電気を検出するのに適した導電性材料及びそれを用いた測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の導電性材料は、生体電気を検出するためのものであって、繊維を含み厚みが0.2mm以上2mm以下である絶縁性の絶縁基礎部材と、絶縁基礎部材に間隔をあけて設けられ、導電性高分子よりなり、絶縁基礎部材の厚み方向に通電可能な複数の導体部とを有するものである。
【0007】
本発明の測定システムは、生体電気を検出するものであって、自転車のハンドルグリップ又は自動車のステアリングに間隔をあけて配設された複数の電極と、ハンドルグリップ又はステアリングを利用者が手で握る際に、利用者の手と複数の電極との間に介在され、本発明の導電性材料よりなる導通部材とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、絶縁基礎部材に、間隔をあけて、絶縁基礎部材の厚み方向に通電可能な導電性高分子よりなる複数の導体部を設けるようにしたので、各導体部において個別に絶縁基礎部材の表面側と裏面側が導通しており、触るだけで生体電気を検出することができる。よって、信号検出電極とノイズ軽減用共通電極とを配置しても、個別に通電させることができ、生体情報を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る導電性材料の構成を表す図である。
【
図2】
図1に示した導電性材料を用いた測定システムの構成を表す図である。
【
図3】
図2に示した導通部材の他の構成例を表す図である。
【
図4】
図1に示した導電性材料を用いた測定システムの変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施の形態の導電性材料)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る導電性材料10の構成を表すものである。この導電性材料10は、心拍、心電、又は、筋電等の生体電気を検出するためのものであり、絶縁基礎部材11と、絶縁基礎部材11に間隔をあけて設けられ、導電性高分子よりなり、絶縁基礎部材11の厚み方向に通電可能な複数の導体部12とを有している。なお、
図1では、分かりやすくするために導体部12の部分にグレーを付して示している。
【0012】
絶縁基礎部材11は、繊維を含み、厚みが0.2mm以上2mm以下であり、絶縁性の材料により構成されている。繊維は、シルク及び綿等の天然繊維でも、合成繊維等の化学繊維でもよく、いずれか1種を単独でもちいても、2種以上を混合して用いてもよい。特に、異形断面を有する合成繊維(すなわち異形断面糸)を含むようにすれば、繊維の間に導電性高分子が付着し、洗濯耐性を高めることができるので好ましい。
【0013】
絶縁基礎部材11は、具体的には、例えば、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、又は、編み物により構成されることが好ましい。なお、不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたシート状のものであり、繊維を熱、機械的または化学的な作用によって接着または絡み合わせたものである。人工皮革は、例えば、不織布にポリウレタン樹脂を浸み込ませた不織布層の表面に、ポリウレタン樹脂等の樹脂よりなる表面樹脂層を形成したものであり、極微細な連続気泡をもった多孔質材料である。合成皮革は、例えば、不織布以外の編物や織物よりなる土台層の表面に、ポリウレタン樹脂等の樹脂よりなる表面樹脂層を形成したものであり、極微細な連続気泡をもった多孔質材料である。絶縁基礎部材11の形状は、例えば、布状、シート状、又は、薄膜状である。
【0014】
絶縁基礎部材11の厚みを0.2mm以上とするのは、これよりも絶縁基礎部材11の厚みを薄くすると十分な強度を得ることができないからである。また、絶縁基礎部材11の厚みを2mm以下とするのは、これよりも絶縁基礎部材11の厚みを厚くすると、絶縁基礎部材11の厚み方向に通電可能な導体部12を形成することが難しくなるからである。
【0015】
絶縁基礎部材11には、例えば、絶縁基礎部材11の面内方向(すなわち、絶縁基礎部材11が延存する平面内における方向)に間隔を開けて、厚み方向に貫通する複数の貫通孔11Aが設けられている。この貫通孔11Aは、導電部12を形成するためのものである。貫通孔11Aの形状は、例えば、円柱状又は楕円柱状とすることが好ましい。導電部12を容易に形成することができるからである。貫通孔11Aの大きさは、例えば、直径、長径、又は、短径が10mm以下であることが好ましい。貫通孔11Aの大きさが大きくなると1つの導電部12に複数の電極が接触する可能性が高くなるからである。
【0016】
各貫通孔11Aの間隔、すなわち、隣接する各貫通孔11Aの間の距離は、例えば、0.2mm以上20mm以下とすることが好ましい。絶縁基礎部材11に導電性高分子が染み込むため、1KΩ以上の電気的絶縁性を確保するためには一定以上の間隔に配置する必要があるからである。なお、各貫通孔11Aは、規則的に、例えば、縦方向及び横方向に所定の間隔で設けられていてもよく、また、不規則に設けられていてもよい。
【0017】
導体部12は、例えば、絶縁基礎部材11の面内方向に間隔を開けて、厚み方向において表面側と裏面側とを電気的に接続するように設けられている。具体的には、導電部12は、例えば、絶縁基礎部材11の各貫通孔11Aの内部又は内周面に設けられている。導電部12は、貫通孔11Aの大きさに応じ、例えば、
図1(A)に示したように、貫通孔11Aの内部全体を埋めるように形成されていてもよく、
図1(B)に示したように、貫通孔11Aの内周面に形成され、貫通孔11Aの中心部は空間となっていてもよい。また、貫通孔11Aの内部全体を埋めるように形成された導体部12と、貫通孔11Aの内周面に形成された導体部12とが混在していてもよい。
【0018】
各導体部12の間隔、すなわち、隣接する各導体部12の間の距離は、各貫通孔11Aの間隔と同様に、例えば、0.2mm以上20mm以下とすることが好ましい。各導体部12は、各貫通孔11Aと同様に、規則的に設けられていてもよく、不規則に設けられていてもよい。
【0019】
導体部12を構成する導電性高分子としては、導電性を有していればどのようなものでもよいが、例えば、p-トルエンスルホン酸の鉄塩(以下、pTSと記す)を添加したポリ3,4-エチレンジオキシチオフェン(以下、PEDOTと記す)、すなわち、pTSとPEDOTとを含むものが好ましく挙げられる。高い導電性を得ることができると共に、導体部12を容易に形成することができるからである。pTSは、PEDOTの単量体、すなわち3,4-エチレンジオキシチオフェン(以下、EDOTと記す)を重合させる際の酸化剤として機能すると共に、PEDOTに導電性を発現させるためのドーパントとして機能するものである。
【0020】
PEDOTは、pTSと、PEDOTの単量体(すなわちEDOT)と、エタノールと、水とを含む反応溶液を用いて重合させたものであることが好ましい。PEDOTの結晶化度が低くなり、絶縁基礎部材11に対する付着性が向上し、洗濯耐性を向上させることができるからである。PEDOTの結晶性については、例えば、X線回折において2θ=5度から7度付近に結晶性ピークが現れるので、この結晶性ピークの強度を測定することにより判断することができる。反応溶液における水の割合(水/反応溶液)は、1体積%以上30体積%以下の範囲内であることが好ましい。より高い効果を得ることができるからである。
【0021】
また、PEDOTは、反応溶液におけるpTSとPEDOTの単量体との割合(pTS:PEDOTの単量体)を、モル比で、1:0.2から1:0.6の範囲内として重合させたものであることが好ましい。導電性と洗濯耐性をより向上させることができるからである。また、このような割合で重合させることにより、導電性高分子12のPEDOTのうち、pTSが配位しているPEDOTの割合を10%以上50%以下とすることができる。なお、PEDOTのうちpTSが配位しているPEDOTの割合は、例えば、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy;X線光電子分光)により得られたPEDOTのピークと、pTSが配位しているPEDOTのピークとの面積比から求めることができる。
【0022】
この導電性材料10は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、所望の絶縁基礎部材11を用意し、目的に応じて、所定の大きさの複数の貫通孔11Aを形成する。貫通孔11Aは、例えば、レーザー又はイオンビームにより形成することができる。次いで、絶縁基礎部材11に対して、導体部12を構成する導電性高分子の重合前の反応溶液を、貫通孔11Aの位置に対応して、部分的に印刷等により塗布する。続いて、導電性高分子の反応溶液を反応させて、各貫通孔11Aの内部又は内周面に導電性高分子よりなる導体部12を形成する。例えば、導電性高分子として、pTSを添加したPEDOTを用いる場合であれば、絶縁基礎部材11に、pTSとPEDOTの単量体とエタノールと水とを含む反応溶液を塗布したのち、絶縁基礎部材11に温風を当てて20℃から60℃に加熱し、PEDOTの単量体を重合させる。その後、必要に応じて水洗いし、乾燥させることにより、導電性材料10が得られる。
【0023】
(第1の実施の形態の測定システム)
この導電性材料10は、例えば、生体電気を検出する測定システム20に用いることができる。
図2は、導電性材料10を用いた測定システム20の構成を表すものである。測定システム20は、例えば、自転車のハンドルグリップ21に間隔をあけて配設された複数の電極22と、ハンドルグリップ21を利用者が手で握る際に、複数の電極22と利用者の手との間に介在される導電性材料10よりなる導通部材23と、電極22を介して利用者の生体電気を検出する検出回路24とを備えている。
【0024】
電極22は、例えば、信号検出電極である第1の信号検出電極22A及び第2の信号検出電極22Bと、ノイズ軽減用共通電極22Cとを有している。なお、
図2では、分かりやすくするために、第1の信号検出電極22A及び第2の信号検出電極22Bの部分には網掛けを付し、ノイズ軽減用共通電極22Cの部分には梨地を付して示している。第1の信号検出電極22A又は第2の信号検出電極22Bとノイズ軽減用共通電極22Cとは、例えば、ハンドルグリップ21に対して、間隔をあけて交互にスパイラル状に巻かれて配設されていることが好ましい。利用者がハンドルグリップ21をどの位置で握っても容易に生体電気を検出することができるからである。具体的には、一方のハンドルグリップ21には、第1の信号検出電極22Aとノイズ軽減用共通電極22Cとを交互にスパイラル状に巻いて配設し、他方のハンドルグリップ21には、第2の信号検出電極22Bとノイズ軽減用共通電極22Cとを交互にスパイラル状に巻いて配設することが好ましい。
【0025】
電極22は、導電性を得ることができればどのような材料により構成してもよい。電極22を構成する材料としては、例えば、繊維を含む基材に導電性高分子が付着された導電性高分子導電体が好ましく挙げられる。柔軟で耐食性に優れるからである。具体的には、シルク、綿、及び、合成繊維のうちの少なくとも1種を含む基材に、酸化剤及びドーパントとしてpTSを添加したPEDOTを付着させた導電性高分子導電体が好ましい。
【0026】
導通部材23は、例えば、複数の電極22が配設されたハンドルグリップ21を覆うカバー部材として配設されてもよく、また、ハンドルグリップ21を覆うカバー部材ではなく、例えば、
図3に示したように、手袋25の手のひら側の少なくとも一部を構成する部材として配設されてもよい。なお、
図2では、導通部材23を構成する導電性材料10の導体部12は省略して表している。また、
図3では、分かりやすくするために、導通部材23を構成する導電性材料10の導体部12の部分にグレーを付して示している。これにより、利用者が導通部材23を介してハンドルグリップ21を握ると、各電極22と利用者の手とは、導通部材23を構成する導電性材料10の各導体部12により個別に電気的に接続されるようになっている。これにより、各電極22、具体的には、一方のハンドルグリップ21に配設された第1の信号検出電極22Aとノイズ軽減用共通電極22C、又は、他方のハンドルグリップ21に配設された第2の信号検出電極22Bとノイズ軽減用共通電極22Cとをショートさせずに、利用者の手と個別に電気的に接続できるようになっている。
【0027】
検出回路24は、生体電気を検出するものであればどのようなものでもよい。
図2に示した回路は、心電を検出する一例を示したものであり、例えば、第1の信号検出電極22Aと第2の信号検出電極22Bに抵抗24A,24Bをそれぞれ介して接続された増幅回路24Cと、増幅回路24Cに接続されたアナログ・デジタル変換器24Dと、アナログ・デジタル変換器24Dの出力を図示しない表示装置に送信する無線通信モジュール24Eとを有している。また、第1の信号検出電極22Aに接続された抵抗24Aとアナログ・デジタル変換器24Dとの間には、増幅回路24Cと並列に抵抗24Fが接続されている。更に、第2の信号検出電極22Bに接続された抵抗24Bと増幅回路24Cとの間には、両方のハンドルグリップ21にそれぞれ配設されたノイズ軽減用共通電極22C、又は、どちらか一方のノイズ軽減用共通電極22Cが抵抗24Gを介して接続されており、コモンモードノイズを軽減することができるようになっている。
【0028】
測定システム20では、例えば、利用者が導通部材23を介して手で両方のハンドルグリップ21を握ると、導通部材23を構成する導電性材料10の各導体部12により、各電極22と利用者の手とが個別に電気的に接続される。よって、測定システム20によれば、コモンモードノイズを軽減して生体電気を検出することができる。
【0029】
このように本実施の形態によれば、絶縁基礎部材11に、間隔をあけて、絶縁基礎部材11の厚み方向に通電可能な導電性高分子よりなる複数の導体部12を設けるようにしたので、各導体部12において個別に絶縁基礎部材11の表面側と裏面側が導通しており、触るだけで生体電気を検出することができる。よって、信号検出電極とノイズ軽減用共通電極とを配置しても、個別に通電させることができ、生体情報を正確に測定することができる。
【0030】
(変形例)
なお、上述した測定システム20では、複数の電極22を自転車のハンドルグリップ21に間隔をあけて配設する場合について具体的に説明したが、例えば、
図4に示したように、複数の電極22を自動車のステアリング26に間隔を開けて配設してもよい。この場合、例えば、
図4に示したように、ステアリング26の一方の片側半周に沿って第1の信号検出電極22Aを設け、反対側の片側半周に沿って第2の信号検出電極22Bを設けると共に、ステアリング26の全周にわたり、第1の信号検出電極22A及び第2の信号検出電極22Bとは間隔をあけてノイズ軽減用共通電極22Cを設けるようにしてもよい。また、図示しないが、ステアリング26の一方の片側半周においては、第1の信号検出電極22Aとノイズ軽減用共通電極22Cとを間隔をあけて交互にスパイラル状に巻いて配設し、反対側の片側半周においては、第2の信号検出電極22Bとノイズ軽減用共通電極22Cとを間隔をあけて交互にスパイラル状に巻いて配設するようにしてもよい。その他の構成は上述した通りである。
【0031】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、絶縁基礎部材11に複数の貫通孔11Aを形成し、各貫通孔11Aに対応して各導体部12を形成する場合について説明したが、貫通孔11Aを形成せずに、絶縁基礎部材11を構成する繊維の隙間に導電性高分子を含侵させることにより複数の導体部12を形成するようにしてもよい。この場合、導電性高分子が繊維の隙間を介して絶縁基礎部材11の表面側から裏面側まで連続して形成されることにより、厚み方向において表面側と裏面側とを電気的に接続するようになっている。他は、第1の実施の形態と同様であり、同様にして製造することができ、同様にして用いることができる。
【実施例0032】
(実施例1)
絶縁基礎部材11として、厚み0.5mmの化学繊維よりなる不織布及び人工皮革を用意し、レーザー又はイオンビームにより、直径0.2mmの円柱状の貫通孔11Aを規則的に複数形成した。隣接する各貫通孔11Aの間の距離は、0.2mmとした。次いで、絶縁基礎部材11に、各貫通孔11Aの位置に対応して、pTSとPEDOTの単量体とエタノールと水とを含む反応溶液を部分的に塗布し、温風を当てて加熱することによりPEDOTの単量体を重合させた。これにより、各貫通孔11Aの内部にpTSを添加したPEDOTよりなる導体部12を個別に形成し、例えば、
図1(A)に示したような導電性材料10を得た。
【0033】
続いて、得られた2種類の導電性材料10を用いて、例えば、
図3に示したように手のひら側の少なくとも一部を形成した2種類の手袋25をそれぞれ作製した。また、
図2に示したように、自転車の一方のハンドルグリップ21に、第1の信号検出電極22Aとノイズ軽減用共通電極22Cとを間隔をあけて交互にスパイラル状に巻き、他方のハンドルグリップ21に、第2の信号検出電極22Bとノイズ軽減用共通電極22Cとを間隔をあけて交互にスパイラル状に巻き、第1の信号検出電極22A、第2の信号検出電極22B、及び、ノイズ軽減用共通電極22Cに
図2に示したような検出回路24を接続した。
【0034】
次いで、作製した手袋25を利用者が両手につけて、片方の手で片方のハンドルグリップ21をそれぞれ握り、自転車を漕いでいる間における利用者の心電を2種類の手袋25についてそれぞれ測定した。その結果、どちらの手袋25についても、ショートはなく、心電を測定することができた。
【0035】
(実施例2)
絶縁基礎部材11として、厚み0.5mmの化学繊維よりなる不織布及び人工皮革を用意し、レーザー又はイオンビームにより、直径0.5mmの円柱状の貫通孔11Aを規則的に複数形成した。隣接する各貫通孔11Aの間の距離は、0.5mmとした。次いで、絶縁基礎部材11に、各貫通孔11Aの位置に対応して、pTSとPEDOTの単量体とエタノールと水とを含む反応溶液を部分的に塗布し、温風を当てて加熱することによりPEDOTの単量体を重合させた。これにより、各貫通孔11Aの内周面にpTSを添加したPEDOTよりなる導体部12を個別に形成し、例えば、
図1(B)に示したような導電性材料10を得た。
【0036】
また、
図4に示したように、自動車のステアリング26の一方の片側半周に沿って第1の信号検出電極22Aを設け、反対側の片側半周に沿って第2の信号検出電極22Bを設けると共に、ステアリング26の全周にわたり、第1の信号検出電極22A及び第2の信号検出電極22Bとは間隔をあけてノイズ軽減用共通電極22Cを設け、第1の信号検出電極22A、第2の信号検出電極22B、及び、ノイズ軽減用共通電極22Cに
図2に示したような検出回路24を接続した。次いで、得られた2種類の導電性材料10を用いてステアリング26を覆う2種類のカバー部材を形成し、それぞれについて、ステアリング26に配設した各電極22を覆うようにステアリング26の全周に設けた。
【0037】
続いて、利用者が導電性材料10のカバー部材を介して素手でハンドルグリップ21を握り、自動車を運転している間における利用者の心電を2種類のカバー部材について導電性材料についてそれぞれ測定した。その結果、どちらのカバー部材についても、ショートはなく、心電を測定することができた。
【0038】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素についても具体的に説明したが、全ての構成要素を備えていなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
10…導電性材料、11…絶縁基礎部材、11A…貫通孔、12…導体部、20…測定システム、21…ハンドルグリップ、22…電極、22A…第1の信号検出電極、22B…第2の信号検出電極、22C…ノイズ軽減用共通電極、23…導通部材、24…検出回路、24A,24B,24F,24G…抵抗、24C…増幅回路、24D…アナログ・デジタル変換器、24E…無線通信モジュール、25…手袋、26…ステアリング