IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーアイシルク株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-自転車用グローブ及び測定システム 図1
  • 特開-自転車用グローブ及び測定システム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065989
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】自転車用グローブ及び測定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20240508BHJP
   A61B 5/268 20210101ALI20240508BHJP
   A61B 5/296 20210101ALI20240508BHJP
   A61B 5/28 20210101ALI20240508BHJP
【FI】
A61B5/256 220
A61B5/268
A61B5/296
A61B5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175147
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】516043742
【氏名又は名称】エーアイシルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】岡野 秀生
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA04
4C127GG18
4C127LL13
4C127LL22
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で安定して心拍や筋電情報を測定することができる自転車用グローブ及びそれを用いた測定システムを提供する。
【解決手段】自転車用グローブ10は、心拍又は筋電情報を検出するグローブ用電極11が少なくとも手のひらの一部に配置されている。グローブ用電極11は、繊維を含む基材に導電性高分子を含浸させた導電性高分子導電体よりなり、厚みが0.2mm以上1.5mm以下、目付が1g/m以上3/m以下、厚み方向の電気導電抵抗が20Ω/sq以上200Ω/sq以下、通気抵抗が1Kpa・s/m以上5Kpa・s/m以下であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心拍又は筋電情報を検出するグローブ用電極が少なくとも手のひらの一部に配置され、
前記グローブ用電極は、繊維を含む基材に導電性高分子を含浸させた導電性高分子導電体よりなり、厚みが0.2mm以上1.5mm以下、目付が1g/m以上3/m以下、厚み方向の電気導電抵抗が20Ω/sq以上200Ω/sq以下、通気抵抗が1Kpa・s/m以上5Kpa・s/m以下である
ことを特徴とする自転車用グローブ。
【請求項2】
前記グローブ用電極は、前記基材が不織布、人工皮革、合成皮革、織物、又は、編み物からなり、前記導電性高分子が酸化剤及びドーパントとしてp-トルエンスルホン酸の鉄塩を添加したポリ3,4-エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項1記載の自転車用グローブ。
【請求項3】
心拍又は筋電情報を測定する測定システムであって、
請求項1又は請求項2記載の自転車用グローブと、
自転車の一対のハンドルグリップを覆うように設けられ、繊維を含む基材に導電性高分子を含浸させた導電性高分子導電体よりなる一対のハンドルグリップ用電極と
を備えたことを特徴とする測定システム。
【請求項4】
前記ハンドルグリップ用電極は、前記基材が不織布、人工皮革、合成皮革、織物、又は、編み物からなり、前記導電性高分子が酸化剤及びドーパントとしてp-トルエンスルホン酸の鉄塩を添加したポリ3,4-エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項3記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍又は筋電情報を測定する測定システム及びそれに用いる自転車用グローブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活の様々な場面において心拍や筋電情報を測定することが行われており、例えば、自転車の走行中における心拍や筋電情報を測定することが検討されている。素手で自転車のハンドルグリップを握る場合には、ハンドルグリップに電極を配置することにより、手から心拍や筋電情報を測定することが可能である。しかし、自転車競技等では自転車用グローブを装着してハンドルグリップを握るのが一般的であるので、自転車用グローブを装着した状態でも安定して心拍や筋電情報を測定できることが必要である。そこで、心拍又は筋電情報を検出可能な自転車用グローブの開発が望まれていた。
【0003】
なお、特許文献1には、手袋の内部に生体信号検出手段と演算手段を設け、手袋の外部表面に表示手段を設けることにより、手袋を装着した状態で各種情報をモニタリングできるようにした携帯用保護具が記載されている。この携帯用保護具によれば、手袋を装着することにより、自転車の走行中においても生体情報を測定することが可能となる。しかしながら、この携帯用保護具では、手袋の内部に生体信号検出手段と演算手段を設け、外部表面に表示手段を設けているので、構造が複雑であり、また、これらの機能を備えていない通常の手袋とは使用感が変わってしまうという問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、被検生体の生体情報を計測するために計測者が装着する手袋型装具であって、手袋の少なくとも2本の指の掌側に、伸縮性を有する電極部を備えたものが記載されている。しかしながら、この手袋型装置は、被検生体の生体情報を計測する計測者が装着するものであり、手袋を装着する計測者の生体情報を測定するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-14894号公報
【特許文献2】特開2019-180862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、簡単な構造で安定して心拍や筋電情報を測定することができる自転車用グローブ及びそれを用いた測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自転車用グローブは、心拍又は筋電情報を検出するグローブ用電極が少なくとも手のひらの一部に配置され、グローブ用電極は、繊維を含む基材に導電性高分子を含浸させた導電性高分子導電体よりなり、厚みが0.2mm以上1.5mm以下、目付が1g/m2以上3/m2以下、厚み方向の電気導電抵抗が20Ω/sq以上200Ω/sq以下、通気抵抗が1Kpa・s/m以上5Kpa・s/m以下のものである。
【0008】
本発明の測定システムは、心拍又は筋電情報を測定するものであって、本発明の自転車用グローブと、自転車の一対のハンドルグリップを覆うように設けられ、繊維を含む基材に導電性高分子を含浸させた導電性高分子導電体よりなる一対のハンドルグリップ用電極とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自転車用グローブによれば、繊維を含む基材に導電性高分子を含浸させた所定の特性を有する導電性高分子導電体よりなるグローブ用電極を少なくとも手のひらの一部に配置するようにしたので、簡単な構造で、安定して心拍や筋電情報を測定することができると共に、良好な使い心地を得ることができる。よって、本発明の自転車用グローブを用いた測定システムによれば、ハンドルグリップを覆うようにハンドルグリップ用電極を設け、本発明の自転車用グローブを装着してハンドルグリップを握ることにより、容易に安定して心拍や筋電情報を測定することができる。
【0010】
また、グローブ用電極又はハンドルグリップ用電極を、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、又は、編み物からなる基材に、酸化剤及びドーパントとしてp-トルエンスルホン酸の鉄塩を添加したポリ3,4-エチレンジオキシチオフェンからなる導電性高分子を含浸させた導電性高分子導電体により構成するようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係る自転車用グローブの構成を表すものである。
図2図1に示した自転車用グローブを用いた測定システムの構成を表すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る自転車用グローブ10を手のひら側から見た構成を表すものである。この自転車用グローブ10は、自転車に乗る際に装着するものであり、心拍又は筋電情報を検出するグローブ用電極11が少なくとも手のひらの一部に配置されている。なお、図1では、分かりやすくするために、グローブ用電極11の部分に網掛けを付して示している。また、図1では、グローブ用電極11を手のひらの一部、具体的には、人差し指から小指の付け根側と、親指の付け根側の2箇所に設ける場合について示したが、これに限定されるものではない。手のひら全体に配置するようにしてもよく、手のひらの一部に1箇所又は複数個所配置するようにしてもよい。更に、自転車用グローブ10の全体をグローブ用電極11により構成するようにしてもよい。
【0014】
グローブ用電極11は、自転車用グローブ10を利用者が手に装着した時に、利用者の手に直接接触し、かつ、利用者が自転車用グローブ10を手に装着して自転車のハンドルグリップを握った時に、ハンドルグリップに直接接触するように配置されている。すなわち、グローブ用電極11は、自転車用グローブの内側からも外側からも直接接触できるように露出して配置されている。
【0015】
グローブ用電極11は、繊維を含む基材に導電性高分子を含浸させた導電性高分子導電体よりなり、厚みが0.2mm以上1.5mm以下、目付が1g/m以上3/m以下、厚み方向の電気導電抵抗が20Ω/sq以上200Ω/sq以下、通気抵抗が1Kpa・s/m以上5Kpa・s/m以下であることが好ましい。
【0016】
厚みを0.2mm以上1.5mm以下とするのは、これよりも薄くすると十分な強度を得ることができず、これよりも厚くすると十分な導電性を得ることが難しくなるからである。
【0017】
グローブ用電極11を構成する導電性高分子導電体としては、例えば、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、又は、編み物からなる基材に、酸化剤及びドーパントとしてp-トルエンスルホン酸の鉄塩(以下、pTSと記す)を添加したポリ3,4-エチレンジオキシチオフェン(以下、PEDOTと記す)からなる導電性高分子を含浸させたものが好ましい。上述した特性を容易に得ることができるからである。なお、不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたシート状のものであり、繊維を熱、機械的または化学的な作用によって接着または絡み合わせたものである。人工皮革は、例えば、不織布にポリウレタン樹脂を浸み込ませた不織布層の表面に、ポリウレタン樹脂等の樹脂よりなる表面樹脂層を形成したものであり、極微細な連続気泡をもった多孔質材料である。合成皮革は、例えば、不織布以外の編物や織物よりなる土台層の表面に、ポリウレタン樹脂等の樹脂よりなる表面樹脂層を形成したものであり、極微細な連続気泡をもった多孔質材料である。
【0018】
基材に含まれる繊維は、シルク及び綿等の天然繊維でも、合成繊維等の化学繊維でもよく、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。特に、異形断面を有する合成繊維(すなわち異形断面糸)を含むようにすれば、繊維の間に導電性高分子が付着し、洗濯耐性を高めることができるので好ましい。
【0019】
PEDOTは、pTSと、PEDOTの単量体(すなわちEDOT)と、エタノールと、水とを含む反応溶液を用いて重合させたものであることが好ましい。PEDOTの結晶化度が低くなり、絶縁基礎部材11に対する付着性が向上し、洗濯耐性を向上させることができるからである。PEDOTの結晶性については、例えば、X線回折において2θ=5度から7度付近に結晶性ピークが現れるので、この結晶性ピークの強度を測定することにより判断することができる。反応溶液における水の割合(水/反応溶液)は、1体積%以上30体積%以下の範囲内であることが好ましい。より高い効果を得ることができるからである。
【0020】
また、PEDOTは、反応溶液におけるpTSとPEDOTの単量体との割合(pTS:PEDOTの単量体)を、モル比で、1:0.2から1:0.6の範囲内として重合させたものであることが好ましい。導電性と洗濯耐性をより向上させることができるからである。また、このような割合で重合させることにより、導電性高分子12のPEDOTのうち、pTSが配位しているPEDOTの割合を10%以上50%以下とすることができる。なお、PEDOTのうちpTSが配位しているPEDOTの割合は、例えば、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy;X線光電子分光)により得られたPEDOTのピークと、pTSが配位しているPEDOTのピークとの面積比から求めることができる。
【0021】
グローブ用電極11を構成する導電性高分子導電体は、例えば、基材に導電性高分子の重合前の反応溶液を塗布し、含浸させた後、導電性高分子の反応溶液を反応させることにより製造することができる。例えば、導電性高分子として、pTSを添加したPEDOTを用いる場合であれば、基材に、pTSとPEDOTの単量体とエタノールと水とを含む反応溶液を塗布して含浸させたのち、温風を当てて20℃から60℃に加熱し、PEDOTの単量体を重合させることにより得ることができる。
【0022】
なお、自転車用グローブ10のグローブ用電極11以外の部分は、特に限定はなく、従来の自転車用グローブと同様に構成することができる。自転車用部グローブ10は、例えば、縫い合わせたり、貼り合わせたりすることにより形成することができ、グローブ用電極11を部分的に配置する場合には、他の部分と縫い合わせたり、貼り合わせることにより形成することができる。
【0023】
この自転車用グローブ10は、心拍又は筋電情報を測定する測定システム20に用いることができる。図2は、測定システム20の構成を表すものである。なお、図2では、自転車用グローブ10の記載を省略している。測定システム20は、例えば、自転車用グローブ10と、自転車の一対のハンドルグリップ31,32をそれぞれ覆うように設けられた一対のハンドルグリップ用電極21,22と、自転車用グローブ10及びハンドルグリップ用電極21,22を介して利用者の心拍又は筋電情報を測定する測定回路23とを備えている。
【0024】
ハンドルグリップ用電極21,22は、繊維を含む基材に導電性高分子を含浸させた導電性高分子導電体により構成されることが好ましい。ハンドルグリップ用電極21,22を構成する導電性高分子導電体としては、例えば、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、又は、編み物からなる基材に、酸化剤及びドーパントとしてpTSを添加したPEDOTからなる導電性高分子を含浸させたものが好ましい。高い導電性を得ることができるからである。基材に含まれる繊維、及び、PEDOTは、グローブ用電極11において説明したものと同様である。
【0025】
検出回路23は、心拍又は筋電情報を測定するものであればどのようなものでもよい。図2に示した回路は、心拍を測定する一例を示したものであり、例えば、一対のハンドルグリップ用電極21,22に抵抗23A,23Bをそれぞれ介して接続された増幅回路23Cと、増幅回路23Cに接続されたアナログ・デジタル変換器23Dと、アナログ・デジタル変換器23Dの出力を図示しない表示装置に送信する無線通信モジュール23Eとを有している。また、一方のハンドルグリップ用電極21に接続された抵抗23Aとアナログ・デジタル変換器23Dとの間には、増幅回路23Cと並列に抵抗23Fが接続されている。更に、他方のハンドルグリップ用電極22に接続された抵抗23Bと増幅回路23Cとの間には、抵抗23Gを介して接地端子が接続されている。
【0026】
この測定システム20では、例えば、利用者が両手に自転車用グローブ10を装着して、一方の手で一方のハンドルグリップ31を握り、他方の手で他方のハンドルグリップ32を握ると、自転車用グローブ10及びハンドルグリップ用電極21,22を介して、測定回路23により、利用者の心拍又は筋電情報が測定される。なお、図1に示した自転車用グローブ10を利用者が装着し、図2に示した測定システムにより、自転車の走行中における利用者の心拍を測定したところ、安定して測定することができた。
【0027】
このように本実施の形態の自転車用グローブ10によれば、繊維を含む基材に導電性高分子を含浸させた所定の特性を有する導電性高分子導電体よりなるグローブ用電極11を少なくとも手のひらの一部に配置するようにしたので、簡単な構造で、安定して心拍や筋電情報を測定することができると共に、良好な使い心地を得ることができる。よって、この自転車用グローブ10を用いた測定システム20によれば、ハンドルグリップ31,32を覆うようにハンドルグリップ用電極21,22を設け、自転車用グローブ10を装着してハンドルグリップ31,32を握ることにより、容易に安定して心拍や筋電情報を測定することができる。
【0028】
また、グローブ用電極11又はハンドルグリップ用電極21,22を、不織布、人工皮革、合成皮革、織物、又は、編み物からなる基材に、pTSを添加したPEDOTからなる導電性高分子を含浸させた導電性高分子導電体により構成するようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0029】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素についても具体的に説明したが、全ての構成要素を備えていなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10…自転車用グローブ、11…グローブ用電極、20…測定システム、21,22…ハンドルグリップ用電極、23…検出回路、23A,23B,23F,23G…抵抗、23C…増幅回路、23D…アナログ・デジタル変換器、23E…無線通信モジュール、23H…接地端子、31,32…ハンドルグリップ
図1
図2