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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065994
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】軸箱支持装置用防振ブッシュ
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/387 20060101AFI20240508BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240508BHJP
   B61F 5/30 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F16F1/387 F
F16F15/08 K
B61F5/30 C
B61F5/30 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175156
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏原 広樹
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA19
3J048CB05
3J048EA15
3J059AA04
3J059AB13
3J059BA42
3J059BC06
3J059DA16
3J059GA01
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れる軸箱支持装置用防振ブッシュを提供する。
【解決手段】軸箱支持装置用防振ブッシュ10は、車両前後方向と交差する軸心を有する中心軸12と、中心軸12に設けられた弾性部13と、互いに間隔をあけた状態で弾性部13に設けられた一対の外側部と、一対の外側部の間で、弾性部13に設けられたストッパー部15とを備え、中心軸12は、弾性部13を介してストッパー部15と対向する位置にえぐり部33を有する。
【選択図】図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向と交差する軸心を有する中心軸と、
前記中心軸に設けられた弾性部と、
互いに間隔をあけた状態で前記弾性部に設けられた一対の外側部と、
一対の前記外側部の間で、前記弾性部に設けられたストッパー部とを備え、
前記中心軸は、前記弾性部を介して前記ストッパー部と対向する位置にえぐり部を有する軸箱支持装置用防振ブッシュ。
【請求項2】
前記えぐり部は、前記ストッパー部の外周に沿って連続する溝状に設けられている請求項1に記載の軸箱支持装置用防振ブッシュ。
【請求項3】
前記ストッパー部は、正面視で矩形状に形成されており、
前記えぐり部は、前記ストッパー部の角部と対向する位置に設けられている請求項1に記載の軸箱支持装置用防振ブッシュ。
【請求項4】
前記中心軸は、心棒部を有し、前記心棒部に前記えぐり部が設けられており、
前記弾性部は、前記心棒部に設けられた筒状部を有し、
前記筒状部は、前記心棒部のうちの前記えぐり部に設けられた厚肉部と、前記心棒部のうちの前記えぐり部以外の部分に設けられ、且つ、前記厚肉部より厚みが小さい薄肉部とを有する請求項1に記載の軸箱支持装置用防振ブッシュ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用として好適に用いられる軸箱支持装置用防振ブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道車両では、車軸を保持する軸箱部から軸はりを車両前後方向へ延設させ、軸はりの先端部と台車フレームとの連結部に軸箱支持装置が設けられている。軸箱支持装置は、軸はりの先端部に設けられたハウジング部に防振ブッシュ(ゴムブッシュとも称する。)が嵌装されている。防振ブッシュは、車両前後方向と交差するように配置された中心軸と、中心軸に設けられた弾性部と、弾性部に設けられた外側部とを有している。防振ブッシュの弾性部により、軸はりの中心軸回りの回転運動を許容しながら、軸はりと台車フレームとの連結部位の振動及び衝撃を吸収する。
【0003】
防振ブッシュは、鉄道車両の加減速時に車両前後方向の大きい荷重が作用することで、中心軸と外側部とが相対的に変位し、中心軸と外側部との間の弾性部が圧縮される。特に制動による減速時には大荷重が作用し易い。防振ブッシュは、大荷重が繰り返し作用することにより、弾性部に亀裂が発生することがある。このため、中心軸と外側部との相対的な変位を抑制するためにストッパー部を設ける場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、中心軸から車両前後方向に突出して弾性部に食い込むように形成されたストッパー部を有する防振ブッシュが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-20487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された防振ブッシュは、中心軸から突出したストッパー部によって弾性部の厚みが減少しており、弾性部に作用する応力およびひずみを低減できないので、耐久性を高めることが難しい。
【0007】
そこで、本発明は、耐久性に優れる軸箱支持装置用防振ブッシュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る軸箱支持装置用防振ブッシュは、車両前後方向と交差する軸心を有する中心軸と、前記中心軸に設けられた弾性部と、互いに間隔をあけた状態で前記弾性部に設けられた一対の外側部と、一対の前記外側部の間で前記弾性部に設けられたストッパー部とを備え、前記中心軸は、前記弾性部を介して前記ストッパー部と対向する位置にえぐり部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、中心軸のうちのストッパー部と対向する位置にえぐり部を設け、えぐり部での弾性部の厚みを増大させることで、弾性部に作用する応力及びひずみを低減させることができる。本発明に係る軸箱支持装置用防振ブッシュは、弾性部での亀裂の発生を抑制することができるので、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る防振ブッシュを適用した軸箱支持装置の一部を切り欠いて示す側面図である。
図2】防振ブッシュの斜視図である。
図3】防振ブッシュを別の角度から視た斜視図である。
図4】防振ブッシュの一部を切り欠いて示す正面図である。
図5図4のV-V線に沿って切断した断面図である。
図6】防振ブッシュの軸はりへの組み付け方法を説明するための説明図である。
図7】組付状態の防振ブッシュの断面図である。
図8図4のVIII-VIII線に沿って切断した断面図である。
図9】凹部を有する防振ブッシュと凹部を有しない従来の防振ブッシュの前後方向でのたわみに対する荷重のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施形態
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、鉄道車両に用いられる軸箱支持装置は、車軸1を回転自在に保持する軸箱部2が軸ばね3を介して台車フレーム4を上下方向に支持するとともに、軸箱部2から車両前後方向へ延設された軸はり5を介して台車フレーム4を車両前後方向に支持する構造を有している。軸はり5の車両前後方向の先端部に設けられたハウジング部6には軸箱支持装置用防振ブッシュ10が嵌装されている。簡単のため、軸箱支持装置用防振ブッシュは、単に防振ブッシュと称する。防振ブッシュ10は、台車フレーム4に設けられたブラケット7に回転不能に支持されている。なお、図面において、X軸方向を前後方向(車両前後方向)、Y軸方向を上下方向、Z軸方向を左右方向とそれぞれ定義する。
【0013】
図2は、防振ブッシュ10を車両前後方向(図1参照)の前方側から視た斜視図である。図3は、防振ブッシュ10を車両前後方向の後方側から視た斜視図である。図4は、防振ブッシュ10の一部を切り欠いて示す正面図である。
【0014】
図4において、防振ブッシュ10は、車両前後方向(X軸方向)と交差する軸心Pを有する中心軸12と、中心軸12に設けられた弾性部13と、互いに間隔をあけた状態で弾性部13に設けられた一対の外側部14と、一対の外側部14の間で、弾性部13に設けられたストッパー部15とを備える。図4では、中心軸12の軸心Pを基準とする下半分を正面図、上半分を部分断面図として示している。
【0015】
中心軸12は、例えば金属製である。中心軸12の軸心Pは、Z軸方向と平行である。防振ブッシュ10を軸はり5に組み付ける際は、中心軸12は、その軸心Pが車両前後方向と交差するように配置される。
【0016】
中心軸12は、心棒部12Aと、心棒部12Aの軸心P方向の両端に設けられた一対のインナー鍔状部12Bと、各インナー鍔状部12Bから軸心P方向の両側へ向けて突出した一対の取付部12Cとを有する。心棒部12Aは、円柱状に形成されている。インナー鍔状部12Bは、中心軸12の径方向の外側へ広がり、かつ、径方向の外側へ向かうほど薄肉となるフランジ状に形成されている。インナー鍔状部12Bは、軸心Pに対し直角に設けられた外側面17と、軸心Pに対し傾斜して設けられた内側面18とを有する。取付部12Cは、多角柱状に形成されている(図2及び図3参照)。取付部12Cは、Y軸方向に延びる貫通孔19を有し、例えばボルトが貫通孔19に挿入されることで、台車フレーム4のブラケット7に取り付けられる。この例では、心棒部12A、インナー鍔状部12B、及び取付部12Cは、一体に形成されている。
【0017】
弾性部13は、筒状のゴムにより形成されている。弾性部13は、中心軸12と外側部14との間に配置され、中心軸12及び外側部14と加硫接着されている。弾性部13は、心棒部12Aの外周面21に設けられた筒状部13aと、一対のインナー鍔状部12Bの内側面18に設けられた一対のゴム鍔状部13bとを有する。ゴム鍔状部13bは、軸心Pに対し傾斜して設けられた外側面22及び内側面23を有する。この例では、筒状部13a及び一対のゴム鍔状部13bは、一体に形成されている。
【0018】
図5は、図4のV-V線に沿って切断した断面図である。図5に示すように、弾性部13の筒状部13aは、軸心Pを中心として上下対称に形成された一対の大径部25と、一対の大径部25の間の一方に形成された中径部26と、一対の大径部25の間の他方に形成された小径部27とを有する。防振ブッシュ10を軸はり5に組み付けていない状態で、大径部25、中径部26、小径部27の順に外径が小さくなるように設定されている。
【0019】
一対の外側部14は、例えば金属製である。外側部14は、弾性部13の筒状部13aの外周面31に設けられた筒板部14aと、一対のゴム鍔状部13bの内側面23に設けられた一対の鍔板部14bとを有する。詳細には、筒板部14aは、筒状部13aのうちの大径部25に設けられている。一対の鍔板部14bは、筒板部14aに連接するように設けられている。筒板部14aと一対の鍔板部14bとは、一体に形成されている。
【0020】
ストッパー部15は、例えば金属製である。ストッパー部15は、弾性部13の筒状部13aの外周面31に設けられている。詳細には、ストッパー部15は、筒状部13aのうちの小径部27に設けられている。ストッパー部15は、小径部27に対し加硫接着されている。ストッパー部15は、正面視で長辺と短辺とを有する矩形状に形成されており、4つの角部30を有している(図2及び図4参照)。ストッパー部15の外周のうち、互いに対向する長辺は心棒部12Aの軸心P方向に沿って延びており、互いに対向する短辺は心棒部12Aの周方向に沿って延びている。ここで、矩形状には、角部が直角である場合に限定されず、角部がR形状(丸みを帯びた形状)である場合が含まれる。ストッパー部15は、側面視で円弧状に形成された板状部材である。
【0021】
図6に示すように、防振ブッシュ10は、ハウジング部6の嵌合孔32に嵌装された状態で、軸はり5に組み付けられる。ハウジング部6は、例えば金属製である。ハウジング部6は、車両前後方向(X軸方向)に二分割された構成を有している。ハウジング部6は、軸はり5の先端部に固定される基端側半割体6Aと、基端側半割体6Aに固定される先端側半割体6Bとを有する。基端側半割体6Aと先端側半割体6Bとは、図示しないボルト等の締結部材を用いて連結される。基端側半割体6A及び先端側半割体6Bの内面により嵌合孔32が形成される。ハウジング部6は、防振ブッシュ10の一対の外側部14を挟むように基端側半割体6Aと先端側半割体6Bとを連結させることで、筒状に組み立てられる。ハウジング部6は、防振ブッシュ10に対し締め付け力を付与し、弾性部13に予備圧縮を加える。
【0022】
防振ブッシュ10の軸はり5への組み付けは、基端側半割体6Aと先端側半割体6Bとの間に防振ブッシュ10を配置し、一対の大径部25を上下に向け、中径部26を基端側半割体6Aに対向させ、小径部27を先端側半割体6Bに対向させる。そして、基端側半割体6Aと先端側半割体6BとをX軸方向に接近させ、図示しない締結部材により連結する。これにより、防振ブッシュ10は、弾性部13の大径部25が圧縮された状態でハウジング部6の嵌合孔32に嵌装される。嵌合孔32内に嵌装された防振ブッシュ10は、中心軸12の軸心P方向の両側に設けられた一対の取付部12Cが、ブラケット7に回転不能に支持される。このような構造により、軸はり5が中心軸12の軸心P回りに揺動移動可能であるとともに、軸はり5と台車フレーム4との連結部位の振動及び衝撃を吸収する。
【0023】
図7は、組付状態の防振ブッシュ10の断面図である。図7に示すように、組付状態でのストッパー部15の外径は、外側部14の外径よりも小さい。外側部14の外径は、嵌合孔32の内径と等しい。このため、ストッパー部15とハウジング部6(嵌合孔32の内面)との間には隙間Dが設けられている。この隙間Dの距離、すなわちストッパー部15の外径と嵌合孔32の内径との径差は、この例では3mmに設定されているが、特に限定されない。本実施形態では、組付状態でのストッパー部15の外径が弾性部13の中径部26の外径と等しくなるように構成されている。このため、中径部26と嵌合孔32の内面との間にも3mmの隙間Dが設けられている。
【0024】
ここで、防振ブッシュには、車両の上下方向、前後方向及び左右方向の3方向でそれぞれ異なるばね特性(ばね定数)が要求される。特に、車両前後方向のばね特性に関しては、通常走行時のように防振ブッシュが受ける荷重が小さい場合は小さいばね定数(柔らかいばね特性)であって、急制動時のように防振ブッシュが受ける荷重が大きい場合は大きいばね定数(硬いばね特性)であるような非線形のばね特性が要求される。防振ブッシュ10は、ストッパー部15と嵌合孔32の内面との間に隙間Dが設けられており、ストッパー部15が嵌合孔32の内面に接触する前の小荷重時は小さいばね定数となり、ストッパー部15が嵌合孔32の内面に接触した後の大荷重時は大きいばね定数となるように設計されている。なお、ストッパー部15と嵌合孔32の内面との間に隙間Dが設けられていない場合は、要求される非線形のばね特性が得られない。
【0025】
また、防振ブッシュには、車両の加減速時、とりわけ制動による減速時に、車両前後方向の大荷重が作用する。大荷重が繰り返し作用することにより、中心軸とストッパー部との間の弾性部が圧縮され、弾性部に亀裂が発生するといった問題がある。特にストッパー部の角部付近では応力がより高くなるので、ストッパー部の角部付近の弾性部に亀裂が発生し易い。亀裂の発生を防ぐためには、例えば、弾性部を硬くしたり中心軸を太くしたりすることで、中心軸とハウジング部との相対的な変位を小さくする方法が有効と考えられる。しかしながら、このような方法では、制動による減速時のように大荷重が作用する場合も、通常走行時のように小さい荷重が作用する場合も、大きいばね定数となるため、乗り心地が損なわれてしまう。ストッパー部の厚み(車両前後方向の長さ)を増大させる方法では、小荷重時の影響を抑えつつ大荷重時の変位も抑えられるが、ストッパー部の厚みが増大する分だけ弾性部の厚みが減少するため、弾性部に作用する応力及びひずみを低減できない。これに対し、防振ブッシュ10は、弾性部13に作用する応力及びひずみを低減させる構成を有していることにより、弾性部13での亀裂の発生が抑制されている。以下に、応力及びひずみを低減させる構成について、詳細に説明する。
【0026】
図8は、図4のVIII-VIII線に沿って切断した断面図である。図8に示すように、防振ブッシュ10の中心軸12は、弾性部13を介してストッパー部15と対向する位置にえぐり部33を有する。具体的には、えぐり部33は、正面視で矩形状に形成されたストッパー部15の角部30と対向する位置に設けられている。えぐり部33は、心棒部12Aの外周面21を所定の深さまで抉る(削り取る)ことにより形成される。中心軸12の心棒部12Aは、えぐり部33の部分の直径よりも、えぐり部33以外の部分の直径の方が大きい。中心軸12のえぐり部33以外の部分の直径は、えぐり部を有しない従来の防振ブッシュの中心軸の直径と同等に設計されている。
【0027】
えぐり部33は、ストッパー部15の外周に沿って連続する溝状に設けられている。本実施形態では、えぐり部33は、ストッパー部15の外周のうち、互いに対向する短辺に沿って溝状に設けられている。より具体的には、えぐり部33は、心棒部12Aの周方向に一周する環状の凹溝として構成されている。防振ブッシュ10は、心棒部12Aの軸心P方向の2箇所に一対のえぐり部33が設けられているが、図8では、一対のえぐり部33のうちの一方のみを示している。えぐり部33の深さ(心棒部12Aの外周面21からえぐり部33の底面までの寸法)は、この例では4mm程度に設定されているが、これに限定されない。
【0028】
弾性部13の筒状部13aは、心棒部12Aのうちのえぐり部33に設けられた厚肉部34と、心棒部12Aのうちのえぐり部33以外の部分に設けられ、且つ、厚肉部34より厚みが小さい薄肉部35とを有する。図8では、厚肉部34の厚みをT1、薄肉部35の厚みをT2として示している。厚肉部34は、ストッパー部15の角部30と心棒部12Aのえぐり部33との間に設けられている。このように、弾性部13は、ストッパー部15の角部30付近の厚みが部分的に増大した構成となっている。
【0029】
2.作用及び効果
防振ブッシュ10は、中心軸12の心棒部12Aのうち、ストッパー部15と対向する位置に、えぐり部33が設けられている。弾性部13は、えぐり部33に設けられた厚肉部34の厚みT1が、えぐり部33以外の部分に設けられた薄肉部35の厚みT2よりも大きい。このように、防振ブッシュ10は、えぐり部33での弾性部13の厚みを増大させることで、弾性部13に作用する応力及びひずみを低減させることができる。防振ブッシュ10は、弾性部13での亀裂の発生を抑制することができるので、耐久性に優れる。
【0030】
えぐり部33は、ストッパー部15の外周に沿って連続する溝状に設けられているので、ストッパー部15の外周付近の弾性部13に作用する応力及びひずみを低減させる。特に、ストッパー部15の角部30と対向する位置にえぐり部33が設けられているので、角部30付近の弾性部13に作用する応力及びひずみを低減させることができる。ストッパー部15の角部30は応力が高くなり易いが、防振ブッシュ10では、角部30付近の弾性部13の厚みを増大させることで、角部30付近での亀裂の発生を抑制するとともに、亀裂の進展を抑制することができる。
【0031】
防振ブッシュ10は、心棒部12Aの直径のうち、えぐり部33以外の部分の直径が従来のえぐり部を有しない中心軸の直径と同等となるように設計されているので、従来と同等のばね特性が維持されている。なお、中心軸の心棒部の直径を全体的に小さくした場合は、ばね特性が低下する。
【0032】
3.実施例
図9は、えぐり部を有する実施例の防振ブッシュとえぐり部を有しない比較例の防振ブッシュの車両前後方向でのたわみに対する荷重のグラフである。実施例の防振ブッシュは、実施形態の防振ブッシュ10と同様の構成を有するものを用いた。比較例の防振ブッシュは、えぐり部を有しないこと以外は、防振ブッシュ10と同様の構成を有するものを用いた。
【0033】
図9より、実施例と比較例は、いずれもストッパー部15とハウジング部6(嵌合孔32の内面)との間に隙間D(3mm)を有しているので、弾性部13の車両前後方向でのたわみ量が3mmまでは比較的緩やかに荷重が増加し、弾性部13の3mmを越えると、ストッパー部15が嵌合孔32の内面に接触し、荷重の増加率が増大した。ストッパー部15が嵌合孔32の内面に接触する前の小荷重時は小さいばね定数となり、ストッパー部15が嵌合孔32の内面に接触した後の大荷重時は大きいばね定数となる傾向が確認できた。実施例と比較例とのばね定数の差異は微差であり、えぐり部の有無によるばね特性への大きな影響はないことがわかる。よって、えぐり部33を有する実施例の防振ブッシュは、えぐり部を有しない従来の防振ブッシュと同等のばね特性を有している。
【0034】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0035】
上記実施形態では、ストッパー部15の角部30と対向する位置にえぐり部33を設け、角部30付近の弾性部13の厚みを増大させているが、中心軸12とストッパー部15との間の弾性部13の厚みを部分的に増大させる構成であれば、えぐり部33の位置は限定されない。えぐり部33は、弾性部13を介してストッパー部15の角部30と異なる部分(例えば、中央部)と対向する位置に設けても良い。ストッパー部15と少なくとも対向する位置にえぐり部33を設けることで、弾性部13の厚みを部分的に増大させることができ、弾性部13に作用する応力及びひずみを緩和できる。えぐり部33を設ける位置は、上記実施形態のように、ストッパー部15の角部30と対向する位置であることが好ましい。亀裂が発生し易い角部30付近に作用する応力及びひずみをより緩和でき、耐久性がより向上し、長寿命化を図れるからである。
【0036】
えぐり部33は、上記実施形態では、ストッパー部15の外周のうちの対向する短辺に沿って溝状に形成されているが、これに限定されず、ストッパー部15の外周のうちの対向する長辺に沿って溝状に形成されても良い。また、えぐり部33をストッパー部15の外周に沿って連続する溝状に設ける場合に限定されず、例えば、ストッパー部15の4つの角部30と対向するように、4つのえぐり部33を互いに間隔を開けて設けても良い。
【0037】
ストッパー部15は、上記実施形態では車両前後方向の前方側に配置されているが、これに限定されず、車両前後方向の後方側に配置されるようにしても良い。また、車両前後方向の前方側及び後方側に一対のストッパー部15を配置しても良い。一対のストッパー部15を車両前後方向の前方側及び後方側に配置する場合は、弾性部13の筒状部13aは、軸心Pを中心として上下対称に形成された一対の大径部25と、軸心Pを中心として左右対称に形成された一対の小径部27とを有するものとする。そして、各々の小径部27にストッパー部15を設ける。
【0038】
弾性部13は、えぐり部を有しない従来の防振ブッシュに用いられる弾性部よりも硬いゴムを使用しても良い。従来の弾性部よりも硬いゴムを使用することにより、ばね定数の低下が抑制され、従来と同等のばね特性をより確実に維持できる。
【0039】
上記実施形態では、ハウジング部6により防振ブッシュ10に対し締め付け力を付与し、弾性部13に予備圧縮を加える構成が採用されているが、これに限定されない。
【0040】
えぐり部33は、中心軸12に設けられる場合に限られず、ストッパー部15に設けられても良い。ストッパー部15の内面(弾性部13を介して中心軸12と対向する面)を所定の深さまで抉る(削り取る)ことにより、ストッパー部15にえぐり部33を形成することができる。えぐり部33での弾性部13の厚みを増大させることで、弾性部13に作用する応力及びひずみを低減させることができる。この結果、弾性部13での亀裂の発生が抑制され、耐久性が向上する。えぐり部33は、ストッパー部15の角部30に設けることが好ましい。角部30付近の弾性部13の厚みを増大させることで、応力が高くなり易い角部30付近での亀裂の発生を抑制するとともに、亀裂の進展を抑制することができるからである。
【符号の説明】
【0041】
10 防振ブッシュ
12 中心軸
12A 心棒部
12B インナー鍔状部
12C 取付部
13 弾性部
13a 筒状部
13b ゴム鍔状部
14 外側部
14a 筒板部
14b 鍔板部
25 大径部
26 中径部
27 小径部
15 ストッパー部
30 角部
33 えぐり部
P 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9