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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066009
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/34 20060101AFI20240508BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20240508BHJP
   B62K 25/20 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/32 H
B62K25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175177
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 大輔
【テーマコード(参考)】
3D014
3J069
【Fターム(参考)】
3D014DD02
3D014DF25
3D014DF32
3J069AA50
3J069CC09
3J069EE20
3J069EE52
(57)【要約】
【課題】ピストンの位置に応じて減衰力の特性を調節することができる緩衝器を提供すること。
【解決手段】緩衝器(10)は、シリンダ(20)と、ロッド(14)と、ピストン(15)と、を備えている。シリンダ(20)の内周面(21)に形成された複数の溝(22~24)のうち、周方向の異なる位置に備えられている任意の溝を第1溝(22)及び第2溝(23)とした場合に、第1溝(22)は、軸線(CL)に垂直な面である第1面部(31)と、この第1面部(31)とは軸線方向の異なる位置であって軸線(CL)に垂直な面である第2面部(32)と、の両方を通過し、第2溝(23)は、第2面部(32)のみを通過するような位置関係となるよう、第1溝(22)と第2溝(23)とは備えられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略筒体であり内部にオイルが充填されているシリンダと、このシリンダの内部に先端が挿入されており前記シリンダの軸線に沿って移動可能なロッドと、このロッドの先端に設けられ前記シリンダの内周面に当接しているピストンと、を備え、
前記内周面には、前記ピストンの可動範囲を含むよう軸線方向に延びる複数の溝が備えられ、
これらの溝のうち周方向の異なる位置に備えられている任意の溝を第1溝及び第2溝とした場合に、
前記第1溝は、前記軸線に垂直な面である第1面部と、この第1面部とは軸線方向の異なる位置であって前記軸線に垂直な面である第2面部と、の両方を通過し、前記第2溝は、前記第1面部を通過せず前記第2面部を通過するような位置関係となるよう、前記第1溝と前記第2溝とは備えられていることを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記第1溝の一端と、前記第2溝の一端とは、前記軸線に垂直な面を基準として、同じ面上に位置する、請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記溝には、前記第1溝及び前記第2溝とは周方向の異なる位置に備えられている第3溝が含まれ、
前記第1溝、前記第2溝、及び、前記第3溝の、前記軸線に沿った長さは、この順に長く、
前記第1溝の一端、前記第2溝の一端、及び、前記第3溝の一端は、前記軸線に垂直な面を基準として、同じ面上に位置している、請求項1に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記第1溝は、前記第2溝よりも細い、請求項2に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記第1溝は、前記第2溝及び前記第3溝のいずれよりも細い、請求項3に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記第1溝及び前記第2溝は、いずれも溝の深さよりも幅の方が狭い、請求項1に記載の緩衝器。
【請求項7】
前記第1溝と前記内周面の一般面との境界は湾曲状、又は、前記第1溝と前記一般面とを接続する部位が前記第1溝と前記一般面の両方に対して傾いている傾斜面であり、
前記第2溝と前記一般面との境界は湾曲状、又は、前記第2溝と前記一般面とを接続する部位が前記第2溝と前記一般面の両方に対して傾いている傾斜面である、請求項1に記載の緩衝器。
【請求項8】
略筒体であり内部にオイルが充填されているシリンダと、このシリンダの内部に先端が挿入されており前記シリンダの軸線に沿って移動可能なロッドと、このロッドの先端に設けられ前記シリンダの内周面に当接しているピストンと、を備え、
前記内周面には、前記ピストンの可動範囲を含むよう軸線方向に延びる複数の溝が備えられ、
これらの溝のうち周方向の異なる位置に備えられている任意の溝を、それぞれ長い方から第1溝、第2溝、及び第3溝とした場合に、
前記第1溝の一端、前記第2溝の一端、及び前記第3溝の一端は、前記軸線に垂直な面を基準として、同じ面上に位置し、
前記第1溝、前記第2溝、及び前記第3溝は、いずれも溝の深さよりも幅の方が狭いと共に、内周面の一般面との境界が湾曲状であることを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルを用いて減衰力を発生させる緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両の車輪と車体との間には、緩衝器が設けられている。このような緩衝器の一例として、フロントフォークに関する従来技術として特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるような、フロントフォークは、正立式のフロントフォークであり、車軸側のアウタチューブと、このアウタチューブの内部に挿入されている車体側のインナチューブと、を備えている。アウタチューブの内周面には、縦溝が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-175436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般にフロントフォークを含む緩衝器において、発生する減衰力の特性は、ピストンに形成されオイルが通過可能な孔の面積等によって決まる。
【0006】
このような緩衝器において、例えば、圧縮の開始時に発生する減衰力を低下させる等、ピストンによって決まる減衰力の特性を調節することができれば、乗り心地性等を向上させることができ好ましい。即ち、ピストンの位置に応じて減衰力の特性を調節することが望まれる。
【0007】
本発明は、ピストンの位置に応じて減衰力の特性を調節することができる緩衝器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、ピストンが当接するシリンダの内周面に第1溝及び第2溝を含む複数の溝を形成し、周方向を基準として第1溝と第2溝のうち、第1溝のみが形成されている部位や第1溝と第2溝の両方が形成されている部位を形成することとした。これにより、オイルの通過可能な面積をピストンの位置に応じて変化させることができ、減衰力の特性を調節することができることを知見した。本発明は、当該知見に基づいて完成させた。
【0009】
以下、本開示について説明する。
【0010】
本開示の1つの態様によれば、略筒体であり内部にオイルが充填されているシリンダと、このシリンダの内部に先端が挿入されており前記シリンダの軸線に沿って移動可能なロッドと、このロッドの先端に設けられ前記シリンダの内周面に当接しているピストンと、を備え、
前記内周面には、前記ピストンの可動範囲を含むよう軸線方向に延びる複数の溝が備えられ、
これらの溝のうち周方向の異なる位置に備えられている任意の溝を第1溝及び第2溝とした場合に、
前記第1溝は、前記軸線に垂直な面である第1面部と、この第1面部とは軸線方向の異なる位置であって前記軸線に垂直な面である第2面部と、の両方を通過し、前記第2溝は、前記第1面部を通過せず前記第2面部を通過するような位置関係となるよう、前記第1溝と前記第2溝とは備えられていることを特徴とする緩衝器が提供される。
【0011】
本開示の他の態様によれば、略筒体であり内部にオイルが充填されているシリンダと、このシリンダの内部に先端が挿入されており前記シリンダの軸線に沿って移動可能なロッドと、このロッドの先端に設けられ前記シリンダの内周面に当接しているピストンと、を備え、
前記内周面には、前記ピストンの可動範囲を含むよう軸線方向に延びる複数の溝が備えられ、
これらの溝のうち周方向の異なる位置に備えられている任意の溝を、それぞれ長い方から第1溝、第2溝、及び第3溝とした場合に、
前記第1溝の一端、前記第2溝の一端、及び前記第3溝の一端は、前記軸線に垂直な面を基準として、同じ面上に位置し、
前記第1溝、前記第2溝、及び前記第3溝は、いずれも溝の深さよりも幅の方が狭いと共に、内周面の一般面との境界が湾曲状であることを特徴とする緩衝器が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ピストンの位置に応じて減衰力の特性を調節することができる緩衝器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1による緩衝器としてのリヤクッションの要部断面図である。
図2図1の2部拡大図である。
図3図1に示したシリンダの展開図である。
図4図3の4-4線断面図である。
図5】実施例2による緩衝器に用いられるシリンダの展開図である。
図6】実施例3による緩衝器に用いられるシリンダの展開図である。
図7】実施例4による緩衝器に用いられるシリンダの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示したCompは、軸線に沿った方向でばねの圧縮時にシリンダに対してピストンが変位する方向をいい、Tenは、軸線に沿った方向でばねの伸長時にシリンダに対してピストンが変位する方向をいう。添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。
【0015】
<実施例1>
図1を参照する。緩衝器10は、例えば、鞍乗り型車両の後部に搭載されるリヤクッションである。以下、緩衝器10をリヤクッション10と言い換えて説明する。
【0016】
リヤクッション10は、例えば、上端が車体に固定されていると共に下端が後輪の側部に固定され、内部に充填されているオイルによって減衰力を発生させる油圧式の緩衝器である。以下、詳細に説明する。
【0017】
リヤクッション10は、上端に位置し車体後部に固定される上部固定部11と、この上部固定部11に上端が固定され略筒体に形成されているシリンダ20と、下端に位置し後輪の側方に固定される下部固定部13と、を有している。また、リヤクッション10は、下部固定部13からシリンダ20の内部まで延びている丸棒状のロッド14と、このロッド14の先端に支持されシリンダ20の軸線CLに沿ってシリンダ20内を進退可能なピストン15と、シリンダ20の周囲を囲むように設けられているばね16と、上部固定部11に接続されシリンダ20内に圧縮方向の力が加わった際にオイルが流入可能なサブタンク17と、を有している。
【0018】
シリンダ20の内部は、オイルによって満たされている。シリンダ20の上端(底部)は、上部固定部11によって覆われており、シリンダ20の下端(先端)は、蓋体18によって閉じられている。蓋体18の中心には穴が空けられている。ロッド14は蓋体18の中心に空けられた穴からシリンダ20に対して出没可能に設けられている。
【0019】
ピストン15は、圧縮時及び伸長時においてオイルが内部を通過し、これにより減衰力を発生させる。ピストン15が発生させる減衰力は、圧縮時と伸長時において異なるように設定することもできるし、同じになるように設定することもできる。
【0020】
図2を参照する。シリンダ20の内周側の面である内周面21のうち、ピストン15が当接している部位を一般面21aという。
【0021】
図3を参照する。図3は、シリンダ20の展開図であり、図の上下方向は軸線方向に一致し、図の左右方向は周方向に一致する。シリンダ20の内周面21であって、ピストン15(図2参照)の可動範囲を含む部位には、軸線方向に延びる複数の溝22~24が備えられている。以下、1番長い溝22を第1溝22といい、2番目に長い溝23を第2溝23といい、3番目に長い溝24を第3溝24ということがある。第1溝22~第3溝24は、それぞれ同じ幅、同じ深さに形成され、長さのみが異なっている。
【0022】
溝22~24は、それぞれ周方向の異なる位置に備えられている。溝22~24の一端は、同じ高さに位置し、この位置から圧縮方向に(シリンダ20の底部(図1参照)に向かって)延びている。換言すれば、第1溝22の一端~第3溝24の一端は、軸線に垂直な面30を基準として、同じ面上に位置している、ということができる。
【0023】
溝22~24が同じ高さから延びていると共に、それぞれの溝22~24の長さが異なることにより、周方向を基準として、第1溝22のみが形成されている領域、第1溝22と第2溝23のみが形成されている領域、第1溝22~第3溝24の全てが形成されている領域が存在する。
【0024】
第1溝22は、軸線に垂直な面である第1面部31と、この第1面部31とは軸線方向の異なる位置であって軸線に垂直な面である第2面部32と、これらの第1面部31、第2面部32とは軸線方向の異なる位置であって軸線に垂直な面である第3面部33と、の全てを通過している。第2溝23は、第1面部31を通過せず、第2面部32と、第3面部33と、を通過している。第3溝24は、第1面部31、第2面部32を通過せず、第3面部33を通過している。第1溝22~第3溝24は、このような位置関係が成立するような位置に形成されている。
【0025】
なお、第1面部31~第3面部33の関係は、図に示されるような圧縮方向の先端から末端(シリンダ20の底部から先端(図1参照))に向かって順に第1~第3の関係になくても良い。この順に第3~第1となるような関係になっても良い。
【0026】
図4を併せて参照する。第1溝22は、深さDよりも幅Wの方が狭い。また、第1溝22と一般面21aとの境界は湾曲状である。第2溝23及び第3溝24も同様である。
【0027】
なお、一般面21aと第1溝22との境界は、いわゆるC面取りされた形状に形成されていても良い。即ち、第1溝22と一般面21aとを接続する部位が第1溝22と一般面21aの両方に対して傾いている傾斜面によって形成されていても良い。
【0028】
また、第1溝22の幅Wとは、第1溝22の直線的に形成されている部位の延長線と、一般面21aの延長線とが交差する部位同士の幅をいう。第2溝23及び第3溝24も同様である。
【0029】
<実施例2>
次に、実施例2を図面に基づいて説明する。
【0030】
図5を参照する。図5には、実施例2によるリヤクッション10A(緩衝器10A)に用いられるシリンダ20Aの展開図が示されている。図の上下方向は軸線方向に一致し、図の左右方向は周方向に一致する。実施例1による緩衝器10(図1等参照)と共通する構成については、符号を流用すると共に、詳細な説明を適宜省略する。
【0031】
シリンダ20Aの内周面21には、それぞれ2本の第1溝22、22、第2溝23A、23A、第3溝24A、24Aが備えられている。第1溝22~第3溝24Aは、それぞれ複数本備えられていても良い。
【0032】
第1溝22の太さ(幅)は、第2溝23A及び第3溝24Aの太さ(幅)よりも細い。また、第2溝23Aの太さ(幅)は、第3溝24Aの太さ(幅)よりも細い。なお、第2溝23Aの太さ(幅)は、第1溝22よりも太く(広く)、第3溝24Aと同じであっても良い。それぞれの溝22~24Aの太さ(幅)が異なる場合には、一番長い第1溝22の太さ(幅)が他の溝23A、24Aよりも細い(狭い)ことが好ましい。理由は後述する。
【0033】
<実施例3>
次に、実施例3を図面に基づいて説明する。
【0034】
図6を参照する。図6には、実施例3によるリヤクッション10B(緩衝器10B)に用いられるシリンダ20Bの展開図が示されている。図の上下方向は軸線方向に一致し、図の左右方向は周方向に一致する。実施例1による緩衝器10(図1等参照)と共通する構成については、符号を流用すると共に、詳細な説明を適宜省略する。
【0035】
第1溝22~第3溝24は、それぞれ異なる高さから形成されている。即ち、第1溝22~第3溝24は、一端の形成される高さが同じでなくても良い。第1溝22は、最も低い位置から最も高い位置まで形成され、第2溝23は、2番目に低い位置から形成され2番目に高い位置まで形成され、第3溝24は、最も高い位置から最も低い位置まで形成されている。
【0036】
軸線方向を基準として、第1面部31、31は、第3面部33及び2つの第2面部32、32を挟むように2カ所に形成されている。また、軸線方向を基準として、第2面部32、32は、第3面部33を挟むように2カ所に形成されている。
【0037】
なお、第1溝22~第3溝24のうち、2つの溝を同じ高さから形成し、残りの1つの溝のみを異なる高さから形成しても良い。また、第1溝22を最も細くなるようにし、第2溝23及び/又は第3溝24を第1溝22とは異なる幅に形成しても良い。
【0038】
<実施例4>
次に、実施例4を図面に基づいて説明する。
【0039】
図7を参照する。図7には、実施例4によるリヤクッション10C(緩衝器10C)に用いられるシリンダ20Cの展開図が示されている。図の上下方向は軸線方向に一致し、図の左右方向は周方向に一致する。実施例1による緩衝器10(図1等参照)又は実施例2による緩衝器10A(図5)と共通する構成については、符号を流用すると共に、詳細な説明を適宜省略する。
【0040】
第1溝22と第1溝22よりも太い第2溝23Aとは、一部が周方向において重なっていると共に、その他の部位は互いにオフセットされている。
【0041】
以上に説明したリヤクッション10、10A、10B、10Cについて、以下のように纏めることができる。
【0042】
図1図3図5図7を参照する。第1に、リヤクッション10、10A、10B、10C(緩衝器10、10A、10B、10C)は、略筒体であり内部にオイルが充填されているシリンダ20、20A、20B、20Cと、このシリンダ20、20A、20B、20Cの内部に先端が挿入されておりシリンダ20、20A、20B、20Cの軸線CLに沿って移動可能なロッド14と、このロッド14の先端に設けられシリンダ20、20A、20B、20Cの内周面21に当接しているピストン15と、を備えている。内周面21には、ピストン15の可動範囲を含むよう軸線方向に延びる複数の溝22、23、23Aが備えられている。これらの溝22、23、23Aのうち周方向の異なる位置に備えられている任意の溝を第1溝22及び第2溝23、23Aとした場合に、第1溝22は、軸線CLに垂直な面である第1面部31と、この第1面部31とは軸線方向の異なる位置であって軸線CLに垂直な面である第2面部32と、の両方を通過し、第2溝23、23Aは、第2面部32のみを通過するような位置関係となるよう、第1溝22と第2溝23、23Aとは備えられている。
【0043】
図3図5図7を参照する。シリンダ20、20A、20B、20Cの内周面21には、第1溝22及び第2溝23、23Aを含む複数の溝22、23、23Aが形成されている。シリンダ20、20A、20B、20Cは、周方向を基準として第1溝22と第2溝23、23Aのうち、第1溝22のみが形成されている部位や第1溝22と第2溝23、23Aの両方が形成されている部位を有する。これにより、オイルの通過可能な面積をピストン15の位置に応じて変化させることができ、減衰力の特性を調節することができる。
【0044】
図3図5を参照する。第2に、第1のリヤクッション10、10A(緩衝器10、10A)であって、第1溝22の一端と、第2溝23、23Aの一端とは、軸線CLに垂直な面30を基準として、同じ面上に位置する。第1溝22及び第2溝23、23Aは、同じ方向に延びている。これにより、連続的に減衰力の特性を変化させることができる。特に、第1溝22及び第2溝23、23Aが軸線に垂直な面30から圧縮方向に延びている場合には、最圧縮時の底付きを抑制しつつ、ばね16の自然長付近では迅速にピストン15を基準となる位置まで戻すことができる。
【0045】
第3に、第1又は第2のリヤクッション10、10A(緩衝器10、10A)であって、溝22~24、23A、24Aには、第1溝22及び第2溝23、23Aとは周方向の異なる位置に備えられている第3溝24、24Aが含まれ、第1溝22、第2溝23、23A、及び、第3溝24、24Aの、軸線CLに沿った長さは、この順に長く形成されている。加えて、第1溝22の一端、第2溝23、23Aの一端、及び、第3溝24、24Aの一端は、軸線CLに垂直な面30を基準として、同じ面上に位置している。これにより、減衰力の特性をより細かく変化させることができる。
【0046】
図5及び図7を参照する。第4に、第1~第3のいずれかのリヤクッション10A、10C(緩衝器10A、10C)であって、第1溝22は、第2溝23Aよりも細い。第1溝22は、より広い範囲で油圧を受けると共に、第2溝23Aが形成されていない範囲ではより高い油圧を受ける。つまり、第1溝22は、第2溝23Aよりも大きな負荷を受ける。より大きな負荷が加わる第1溝22を第2溝23Aよりも細く形成することにより、リヤクッション10A、10Cの長寿命化を図ることができる。
【0047】
図5を参照する。第5に、第1~第4のいずれかのリヤクッション10A(緩衝器10A)であって、第1溝22は、第2溝23A及び第3溝24Aのいずれよりも細い。第1溝22は、より広い範囲で油圧を受けると共に、第2溝23A、第3溝24Aの形成されていない範囲ではより高い油圧を受ける。つまり、第1溝22は、第2溝23Aや第3溝24Aよりも大きな負荷を受ける。より大きな負荷が加わる第1溝22を第2溝23Aや第3溝24Aよりも細くすることにより、リヤクッション10A、10Cの長寿命化を図ることができる。
【0048】
図4を参照する。第6に、第1~第5のいずれかのリヤクッション10、10A、10B、10C(緩衝器10、10A、10B、10C)であって、第1溝22及び第2溝23、23Aは、いずれも溝の深さよりも幅の方が狭い。深さよりも幅を狭くすることにより、ピストン15が繰り返し変位した場合であっても、溝22、23、23Aが広がる方向へ変形しにくくなることが分かった。リヤクッション10、10A、10B、10Cの長寿命化を図ることができる。
【0049】
第7に、第1~第6のいずれかのリヤクッション10、10A、10B、10C(緩衝器10、10A、10B、10C)であって、第1溝22と内周面21の一般面21aとの境界は湾曲状であり、第2溝23、23Aと内周面21の一般面21aとの境界は湾曲状である。内周面21の一般面21aにはピストン15の外周面(ピストンリング)が当接し、変位する。このため、一般面21aと溝22、23、23Aとの境界が角状に形成されている場合には、この境界部分に大きな負荷が加わりやすい。一般面21aと溝22、23、23Aとの境界を湾曲状に形成することにより、この部位に加わる負荷を軽減し、リヤクッション10、10A、10B、10C長寿命化を図ることができる。また、溝22、23、23Aと一般面21aとを接続する部位が溝22、23、23A及び一般面21aの両方に対して傾いている傾斜面によって形成されている場合にも、同様の効果を奏する。
【0050】
図1図4を参照する。リヤクッション10(緩衝器10)は、略筒体に形成され内部にオイルが充填されているシリンダ20と、このシリンダ20の内部に先端が挿入されておりシリンダ20の軸線CLに沿って移動可能なロッド14と、このロッド14の先端に設けられシリンダ20の内周面に当接しているピストン15と、を備えている。内周面21には、ピストン15の可動範囲を含むよう軸線方向に延びる複数の溝22~24が備えられている。これらの溝22~24のうち周方向の異なる位置に備えられている任意の溝を、それぞれ長い方から第1溝22、第2溝23、及び第3溝24とした場合に、第1溝22の一端、第2溝23の一端、及び第3溝24の一端は、軸線CLに垂直な面30を基準として、同じ面上に位置し、第1溝22、第2溝23、及び第3溝24は、いずれも溝の深さよりも幅の方が狭いと共に、内周面21の一般面21aとの境界が湾曲状である。
【0051】
図3を参照する。シリンダ20の内周面21に第1溝22~第3溝24を含む複数の溝22~24を形成し、周方向を基準として第1溝22~第3溝24のうち、第1溝22のみが形成されている部位、第1溝22と第2溝23が形成されている部位、第1溝22~第3溝24の全てが形成されている部位を有する。これにより、オイルの通過可能な面積をピストン15の位置に応じて変化させることができ、減衰力の特性を調節することができる。
【0052】
なお、本発明による緩衝器は、鞍乗り型車両のリヤクッションを例に説明したが、鞍乗り型車両のフロントフォークや鞍乗り型車両以外の乗り物や建機等にも、本発明を適用することは可能である。
【0053】
加えて、各実施例は、適宜組み合わせることも可能である。例えば、全てが同じ太さの溝が複数本ずつ同じ高さから延びる構成とすることも可能である。また、第3溝を除いた構成を採用することも可能である。
【0054】
加えて、シリンダの内周面に4本以上の溝が形成されている場合においても、そのうちの任意に選択した2本又は3本の溝が、本発明における要件を満たすように形成されていればよい。
【0055】
加えて、シリンダの内周面に形成される第1溝~第3溝は、それぞれ同じ本数形成される例によって説明したが、第1溝~第3溝の本数が一部のみ同じであったり、それぞれ異なったりしても良い。
【0056】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の緩衝器は、鞍乗り型車両のリヤクッションに好適である。
【符号の説明】
【0058】
10、10A、10B、10C…リヤクッション(緩衝器)
14…ロッド
15…ピストン
20、20A、20B、20C…シリンダ
21…内周面、21a…一般面
22…第1溝(溝)
23、23A…第2溝(溝)
24、24A…第3溝(溝)
30…軸線に垂直な面
31…第1面部
32…第2面部
CL…軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7