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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066012
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】音低減・増幅装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20240508BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240508BHJP
   E04B 1/82 20060101ALN20240508BHJP
   E04B 2/74 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
G10K11/178 100
H04R1/02 103E
E04B1/82 X
E04B2/74 541Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175186
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100227455
【弁理士】
【氏名又は名称】莊司 英史
(72)【発明者】
【氏名】清家 裕喜子
(72)【発明者】
【氏名】増田 崇
【テーマコード(参考)】
2E001
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DF01
2E001FA07
5D061FF02
(57)【要約】
【課題】音低減モードと音増幅モードの2つのモードを有する音低減・増幅装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る音低減・増幅装置1は、第1面11と、前記第1面11と表裏の関係にある第2面12とを有するシート状基材10と、前記第1面11に配され、音を集音し、集音された音を音信号に変換するマイクロフォン20と、前記マイクロフォン20から出力される音信号と逆位相の音信号を生成する逆位相音信号生成部と、前記第2面12に配され、前記マイクロフォン20から出力される音信号、又は前記逆位相音信号生成部で生成された逆位相の音信号のいずれかの音信号が入力され振動するスピーカー60と、前記スピーカー60に対して、前記マイクロフォン20から出力される音信号を入力するか、前記逆位相信号生成部で生成された逆位相の音信号を入力するかを切換する切換部40と、からなることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面と表裏の関係にある第2面とを有するシート状基材と、
前記第1面に配され、音を集音し、集音された音を音信号に変換するマイクロフォンと、
前記マイクロフォンから出力される音信号と逆位相の音信号を生成する逆位相音信号生成部と、
前記第2面に配され、前記マイクロフォンから出力される音信号、又は前記逆位相音信号生成部で生成された逆位相の音信号のいずれかの音信号が入力され振動するスピーカーと、
前記スピーカーに対して、前記マイクロフォンから出力される音信号を入力するか、前記逆位相信号生成部で生成された逆位相の音信号を入力するかを切換する切換部と、からなることを特徴とする音低減・増幅装置。
【請求項2】
前記逆位相音信号生成部には推定機能が含まれることを特徴とする請求項1に記載の音低減・増幅装置。
【請求項3】
前記推定機能は、前記シート状基材の音響透過損失特性に基づいた推定を行うことを特徴とする請求項2に記載の音低減・増幅装置。
【請求項4】
前記スピーカーがフィルムスピーカーであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の音低減・増幅装置。
【請求項5】
前記シート状基材が可撓性を有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の音低減・増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティションなどに好適に用い得る音低減・増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コミュニケーションの活性化等を目的として、壁やハイパーティションのないオープンプランオフィスが増加している。オープンプランオフィスでは、ローパーティションなどにより、打合せスペースと、執務スペースとを区切るようなケースが多い。このようなローパーティションを用いた区画分けを行うと、打合せスペースにおける打合せなどの声が周囲に広がることで、周囲の執務者の作業妨害、或いは、プライバシーや機密情報の漏洩などといった音の伝搬による問題が生じやすい。
【0003】
新型コロナウイルスなどの感染症の拡大に伴い、TV会議システムを用いた打合せが普及しているが、このような打合せでは、TV会議システムのスピーカーから発生する音が周囲に伝搬し、執務者の作業効率が低下したり、TV会議システムのマイクロフォンに執務スペース側からの音が入ることによって、情報漏洩が発生する可能性が高まったりする問題があった。
【0004】
上記のような種々の問題に対して、特許文献1(特開2012-159740号公報)においては、サウンドマスキングシステムを導入することでこれらを解決することが提案されている。特許文献1記載のサウンドマスキングシステムは、天井と、天井裏の空間に配置されマスキング音を出力するスピーカーと、を備え、対象エリア及び対象外エリアに区画された室内エリアのうち前記対象エリアの天井裏の空間にはマスキング音を遮音する遮音層が配置された構成が採用されている。
【特許文献1】特開2012-159740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の従来技術は、天井裏の空間にマスキング音を出力するスピーカーを設けたり、マスキング音を遮音する遮音層を設けたりする必要があり、施工コストが高くなると共に、オフィスのレイアウト変更に対応することが困難である、といった課題を有していた。
【0006】
ところで、近年、新型コロナウイルスなどの感染症の拡大防止対策として、机の上等に透明なアクリル製のパーティションを設置した状態で打合せを行う場合が増えているが、このようなパーティション越しの会話では声が聴き取り難く、声を大きく出す必要があったり、打合せがスムーズに進まなかったりする、という課題もあった。
【0007】
以上まとめると、オフィスなどの空間における用途や場面によって、パーティションに求められる性能は異なり、音を遮る必要がある場合と、音を透過させる必要がある場合があるが、これらの両立は困難であった
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記のような問題を解決するものであって、本発明に係る音低減・増幅装置は、第1面と、前記第1面と表裏の関係にある第2面とを有するシート状基材と、前記第1面に配され、音を集音し、集音された音を音信号に変換するマイクロフォンと、前記マイクロフォンから出力される音信号と逆位相の音信号を生成する逆位相音信号生成部と、前記第2面に配され、前記マイクロフォンから出力される音信号、又は前記逆位相音信号生成部で生成された逆位相の音信号のいずれかの音信号が入力され振動するスピーカーと、前記スピーカーに対して、前記マイクロフォンから出力される音信号を入力するか、前記逆位相信号生成部で生成された逆位相の音信号を入力するかを切換する切換部と、からなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る音低減・増幅装置は、前記逆位相音信号生成部には推定機能が含まれることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る音低減・増幅装置は、前記推定機能は、前記シート状基材の音響透過損失特性に基づいた推定を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る音低減・増幅装置は、前記スピーカーがフィルムスピーカーであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る音低減・増幅装置は、前記シート状基材が可撓性を有するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る音低減・増幅装置は、スピーカーに対して、マイクロフォンから出力される音信号を入力するか、逆位相信号生成部で生成された逆位相の音信号を入力するかを切換する切換部を有している。
【0014】
このような本発明に係る音低減・増幅装置を、オープンプランオフィスにおいて打合せスペースと執務スペースとを区切るような目的で使用する場合には、逆位相信号生成部で生成された逆位相の音信号がスピーカーに入力されることで、打合せスペースでの会話の音を低減(小さく)することでき、打合せスペースでの会話によって執務スペースにおける作業を妨害したり、当該会話が聞こえて機密情報やプライバシーが漏洩したりするリスクを低減できる。
【0015】
また、本発明に係る音低減・増幅装置を、感染症の拡大防止対策として用いるような場合には、マイクロフォンから出力される音信号がスピーカーに入力されることで、装置越しの話者の声の音を増幅(大きく)することでき、声が聴き取り易くなり、打合せがスムーズに進むようになる。
【0016】
また、本発明に係る音低減・増幅装置を、オープンプランオフィスにおける打合せスペースにて、会話が聞こえてほしくない方向に、第2面を向けて設置し、音を低減(小さく)する機能を用いることで、空間の意匠性や解放感を損なわずに任意の方向への遮音効果が得られる
また、本発明に係る音低減・増幅装置を、打合せスペースにおいて、感染症対策のためのパーティション板として設置し、音を増幅(大きく)する機能を用いることで、感染症対策を行いながらも快適なコミュニケーションを行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る音低減・増幅装置は、音を低減(小さく)する機能と増幅(大きく)する機能を使い分け、必要な場所に移動させて使用できるため、快適な音環境のオフィス空間を実現することができる。
【0018】
また、本発明に係る音低減・増幅装置は、導入のための建物等への工事が不要であり、導入コストを抑えることができる。
【0019】
なお、本発明に係る音低減・増幅装置における音を増幅(大きく)する機能を用いると、本発明に係る音低減・増幅装置をスピーカーとして使用することもできる。例えば、プロジェクター投影用のスクリーンにこの機能を組込めば、プレゼンテーション時のスクリーンとスピーカーの両方の役割を担うことができる
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る音低減・増幅装置1の外観を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る音低減・増幅装置1の回路構成を略式的に示す図である。
図3】本発明に係る音低減・増幅装置1の音低減モード(音を低減(小さく)する機能)の原理を説明する図である。
図4】本発明に係る音低減・増幅装置1の音増幅モード(音を増幅(大きく)する機能)の原理を説明する図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る音低減・増幅装置1の利用形態を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る音低減・増幅装置1の回路構成を略式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る音低減・増幅装置1の外観を示す図である。また、図2は本発明の第1実施形態に係る音低減・増幅装置1の回路構成を略式的に示す図である。
【0022】
以下、本実施形態は、オープンプランオフィスにおいて、打合せスペースと執務スペースとを区切る、本発明に係る音低減・増幅装置1を用いる例に基づいて説明するが、本発明に係る音低減・増幅装置1の適用例はこれに限定されるものではない。
【0023】
例えば、新型コロナウイルスなどの感染症の拡大防止対策として、机の上等に設置するパーティションに本発明に係る音低減・増幅装置1を適用することも可能である。このようなパーティションに本発明に係る音低減・増幅装置1を適用する場合には、シート状基材10としては透明なアクリル製のものを用いることが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る音低減・増幅装置1をローパーティションや机上のパーティションとして用いる場合、音低減・増幅装置1に用いるシート状基材10は自立する程度に剛性を有するものが利用されるが、シート状基材10としては、可撓性を有する素材を用いることもできる。この場合、音低減・増幅装置1は不使用時には、丸めてコンパクトに収納可能となるし、また、持ち運びなども容易なものとなる。
【0025】
図1において、基台5は主要部材であるシート状基材10を立設させるための土台として機能する。シート状基材10は、第1面11と、この第1面11と表裏の関係にある第2面12とを有している。シート状基材10は、ガラスやアクリル、金属やプラスチックなど剛性の高い板などを用いることができる。
【0026】
なお、シート状基材10は、前述したように布やビニールなどの可撓性を有する素材でもよい。シート状基材10が、可撓性を有する素材のときはロールスクリーンのように丸め、コンパクトに収納し持運びができるようになる。なお、シート状基材10が剛性の高い板状体の場合は折りたたみ可能な構成とすることでコンパクトに収納し持運びができるようにすることができる。
【0027】
シート状基材10の第1面11には、第1面11に埋設されるようにしてマイクロフォン20が設けられている。このマイクロフォン20は、第1面11側の音を集音し、集音された音を音信号に変換することが想定されている。
【0028】
なお、本実施形態ではマイクロフォン20が第1面11に埋設されるようにして設けられているが、必ずしもマイクロフォン20が第1面11に埋設されている必要はない。
【0029】
要は、マイクロフォン20は第1面11側に到来する音を集音できる位置に設置されていればよい。第1面11から離れた位置に設置されている場合には、音がマイクロフォン20から第1面11に到達するまでの距離分遅延させて、スピーカー60から音を再生させる。
【0030】
マイクロフォン20で変換された音信号は、筐体15の内部に設けられている電子回路によって処理される。本実施形態では、筐体15はシート状基材10の側面であって、第1面11と第2面12と間に設けられているが、筐体15の配置はこのように限定される必要はなく、例えば、基台5に埋設されるような配置でもよい。
【0031】
また、筐体15はシート状基材10や基台5と一体化している必要はなく、例えば、これらと分離して机上等に筐体15を配置するようにしてもよい。この場合、机上等に配置した筐体15に対して、前記マイクロフォン20及び前記スピーカー60をそれぞれ電気配線で接続する。
【0032】
切換部40は、本発明に係る音低減・増幅装置1を、音を低減(小さく)する音低減モードで用いるか、音低減・増幅装置1の音を増幅(大きく)する音増幅モードで用いるか、をユーザーが切り換え可能とするものである。図2に示す回路の状態は、本発明に係る音低減・増幅装置1を、音を低減(小さく)する音低減モードで用いている状態を示している。ユーザーは、図1に示す切換部40を操作することで、音低減モード又は音増幅モードのいずれかを選択的に切り換えることができる。
【0033】
図2の回路において、逆位相音信号生成部30は、基本的にマイクロフォン20から出力される音信号と逆位相の音信号を生成するものである。逆位相音信号生成部30には、推定機能35が含まれている。この推定機能35は、シート状基材10に入射した音(図3の(1))がシート状基材10に入射、透過して減衰した音信号を推定する処理を行う。図3の(1)のシート状基材10に入射した音に対して、図3の(2)における実線が推定機能35によって推定された音信号である。推定機能35における推定は、例えばシート状基材10の音響透過損失特性に基づいて、シート状基材10に入射する音を減衰させる処理によって行うことができる。
【0034】
逆位相音信号生成部30を経由しないライン(図2の上のライン)と、逆位相音信号生成部30を経由するライン(図2の下のライン)とは、アンプ50に入力される。アンプ50は入力された信号を増幅して出力する。なお、マイクロフォン20から出力される音信号、逆位相音信号生成部30で生成された逆位相の音信号のいずれの音信号も、スピーカー60を駆動する上で十分なものであれば、必ずしもアンプ50を設ける必要はない。図2の例では、アンプ50の出力はスピーカー60に入力される。
【0035】
スピーカー60はシート状基材10の第2面12に配されている。スピーカー60には、例えば、ピエゾ粒子の振動を利用するフィルムスピーカーを用いることができるが、その他のスピーカーを用いることもできる。なお、第1実施形態に係る音低減・増幅装置1においては、スピーカー60としてのフィルムスピーカーを第2面12の全面に設けるようにしたが、フィルムスピーカーを第2面12の一部の面に設けるようにすることもできる。
【0036】
上記のスピーカー60には、マイクロフォン20から出力される音信号、又は逆位相音信号生成部30で生成された逆位相の音信号のいずれかの音信号が入力され振動することで、第1面11で集音した音と同位相の音、又は逆位相の音のいずれかの音を第2面12で再生することができる。
【0037】
図3は本発明に係る音低減・増幅装置1の音低減モード(音を低減(小さく)する機能)の原理を説明する図である。図3においては、本発明に係る音低減・増幅装置1で音低減モードにセットされており、打合せスペースにおける参加者による発声が、執務スペースでの執務者になるべく伝搬しないようにされている。
【0038】
図3において、(1)は打合せ参加者による発話の音が伝搬する様子を模式的に示している。この音はマイクロフォン20によって集音され、音信号に変換される。音低減モードでは、(2)に示すように、逆位相音信号生成部30において、推定機能35で推定された音信号の逆位相の音信号が生成される。
【0039】
この逆位相の音信号は、(3)に示すように、スピーカー60で再生され、この再生音が、シート状基材10を透過して伝達する音を相殺する。従って、執務者に伝搬する音は、(3)における黒い波形に対し、(4)に示すような低減されたものとなる。
【0040】
次に、音増幅モードについて説明する。図4は本発明に係る音低減・増幅装置1の音増幅モード(音を増幅(大きく)する機能)の原理を説明する図である。図4においては、本発明に係る音低減・増幅装置1で音増幅モードにセットされており、打合せスペースにおける参加者による発声を、執務スペースにおける執務者―例えば、オブザーバーなどとして―が良好に聴き取れるようにされている。
【0041】
図4において、(1)は打合せ参加者による発話の音が伝搬する様子を模式的に示している。この音はマイクロフォン20によって集音され、音信号に変換される。音増幅モードでは、(2)に示すマイクロフォン20で変換された音信号そのものが、(3)に示すようにスピーカー60で再生され、この再生音が、シート状基材10を透過して伝達する音と重ね合わされる。従って、執務者に伝搬する音は、(4)に示すように、シート状基材10を透過して伝達した音が増幅されて、執務者に伝搬する。
【0042】
以上、本発明に係る音低減・増幅装置1は、スピーカー60に対して、マイクロフォン20から出力される音信号を入力するか、逆位相信号生成部30で生成された逆位相の音信号を入力するかを切換する切換部を有している。
【0043】
このような本発明に係る音低減・増幅装置1を、オープンプランオフィスにおいて打合せスペースと執務スペースとを区切るような目的で使用する場合には、逆位相信号生成部30で生成された逆位相の音信号がスピーカー60に入力されることで、打合せスペースでの会話の音を低減(小さく)することでき、打合せスペースでの会話によって執務スペースにおける作業を妨害したり、当該会話が聞こえて機密情報やプライバシーが漏洩したりするリスクを低減できる。
【0044】
また、本発明に係る音低減・増幅装置1を、感染症の拡大防止対策として用いるような場合には、マイクロフォン20から出力される音信号がスピーカー60に入力されることで、装置越しの話者の声の音を増幅(大きく)することでき、声が聴き取り易くなり、打合せがスムーズに進むようになる。
【0045】
また、本発明に係る音低減・増幅装置1を、オープンプランオフィスにおける打合せスペースにて、会話が聞こえてほしくない方向に、第2面を向けて設置し、音を低減(小さく)する機能を用いることで、空間の意匠性や解放感を損なわずに任意の方向への遮音効果が得られる
また、本発明に係る音低減・増幅装置1を、打合せスペースにおいて、感染症対策のためのパーティション板として設置し、音を増幅(大きく)する機能を用いることで、感染症対策を行いながらも快適なコミュニケーションを行うことができる。
【0046】
また、本発明に係る音低減・増幅装置1は、音を低減(小さく)する機能と増幅(大きく)する機能を使い分け、必要な場所に移動させて使用できるため、快適な音環境のオフィス空間を実現することができる。
【0047】
また、本発明に係る音低減・増幅装置1は、導入のための施工が不要であり、施工コストを抑えることができる。
【0048】
なお、本発明に係る音低減・増幅装置1における音を増幅(大きく)する機能を用いると、本発明に係る音低減・増幅装置1をスピーカー60として使用することもできる。例えば、プロジェクター投影用のスクリーンにこの機能を組込めば、プレゼンテーション時のスクリーンとスピーカー60の両方の役割を担うことができる。
【0049】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図5は本発明の第2実施形態に係る音低減・増幅装置1の利用形態を示す図である。また、図6は本発明の第2実施形態に係る音低減・増幅装置1の回路構成を略式的に示す図である。
【0050】
マイクロフォン20とスピーカー60との間に距離がある場合、マイクロフォン20からスピーカー60までの音の伝搬時間が、信号処理にかかる時間より大きくなる。本実施形態では、マイクロフォン20とスピーカー60の距離を算出して、音がスピーカー60の位置を透過するタイミングに合わせてスピーカー60から音を放射する。
【0051】
本発明の第2実施形態に係る音低減・増幅装置1では、マイクロフォンと音低減・増幅装置1本体(シート状基材10を含む本体部)の第1面11の位置関係を特定して、特定された位置関係に応じて、前述の遅延時間と空気中の音の伝搬特性を含むフィルタを適用するものである。
【0052】
第2実施形態に係る音低減・増幅装置1においては、シート状基材10の第1面11に配されているマイクロフォンに代え、打合せに用いるテーブル上に配されるビーコン信号発信器付きマイクロフォン22を用いる。このようなるビーコン信号発信器付きマイクロフォン22を用いることで、打合せ参加者の発声をより明瞭に集音することが可能となる。
【0053】
ビーコン信号発信器付きマイクロフォン22には、通常の集音機能等を有するマイクロフォン20に近接してビーコン信号発信器21が設けられている。第2実施形態に係る音低減・増幅装置1の本体側においては、このビーコン信号発信器21により発せられるビーコン信号に基づいて、その位置を検出するマイクロフォン位置検出部25が設けられている。また、音低減・増幅装置1の本体側には、マイクロフォン位置と伝搬特性フィルタとの対応関係を記述したテーブルであるマイクロフォン位置―伝搬特性フィルタテーブル26が設けられている。伝搬特性フィルタは、マイクロフォンで集音された音が、仮に空気中を伝搬して第1面11に到達した場合を模擬するフィルタである。すなわち、マイクロフォンで出力される音信号に、伝搬特性フィルタを通過させることで、第1面11に到達した音信号を取得することができる。
【0054】
音低減・増幅装置1の本体側の伝搬特性フィルタ選択部27では、マイクロフォン位置検出部25で検出されたマイクロフォン位置に基づいて、それに対応した伝搬特性フィルタをマイクロフォン位置―伝搬特性フィルタテーブル26から取得して、フィルタ28にセットする。これにより、ビーコン信号発信器付きマイクロフォン22で得られる音信号に基づいて、空気中を伝搬して第1面11に到達した音信号を取得することが可能となる。
【0055】
以上のような第2実施形態に係る音低減・増幅装置1によれば、第1実施形態に係る音低減・増幅装置1の効果に加えて、マイクロフォンの位置を自由に設定できるようになる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・音低減・増幅装置
5・・・基台
10・・・シート状基材
11・・・第1面
12・・・第2面
15・・・筐体
20・・・マイクロフォン
21・・・ビーコン信号発信器
22・・・ビーコン信号発信器付きマイクロフォン
25・・・マイクロフォン位置検出部
26・・・マイクロフォン位置―伝搬特性フィルタテーブル
27・・・伝搬特性フィルタ選択部
28・・・フィルタ
30・・・逆位相音信号生成部
35・・・推定機能
40・・・切換部
50・・・アンプ
60・・・スピーカー
図1
図2
図3
図4
図5
図6