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特開2024-66013温度調整システムに用いられるタンク、および温度調整システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066013
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】温度調整システムに用いられるタンク、および温度調整システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20240508BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240508BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240508BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240508BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240508BHJP
【FI】
H01M10/6556
B60H1/22 611D
B60H1/22 671
H01M10/613
H01M10/6568
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175187
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 和俊
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
【テーマコード(参考)】
3L211
5H031
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA12
3L211AA14
3L211BA51
3L211BA54
3L211EA31
3L211EA56
3L211EA72
3L211FA04
3L211FA06
3L211GA43
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】温度調整システムに用いられるタンクにおいて、省スペース化とメンテナンス性の向上とを実現するタンクを提供する。
【解決手段】温度調整システムにおいて用いられ、温度調整用の冷媒を収容するタンクであって、開口を有し、冷媒を収容する容器本体部と、開口を覆う蓋部であって、容器本体部の内側に向かって窪み、容器本体部の内部と連通する貫通孔が形成されたポンプ収容部と、温度調整システムが有する冷媒回路から冷媒が流入する少なくとも一つの流入ポートと、を有する蓋部と、ポンプ収容部に収容され、貫通孔を介して容器本体部に収容されている冷媒を吸い上げるポンプと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調整システムにおいて用いられ、温度調整用の冷媒を収容するタンクであって、
開口を有し、前記冷媒を収容する容器本体部と、
前記開口を覆う蓋部であって、
前記容器本体部の内側に向かって窪み、前記容器本体部の内部と連通する貫通孔が形成されたポンプ収容部と、
前記温度調整システムが有する冷媒回路から前記冷媒が流入する少なくとも一つの流入ポートと、
を有する蓋部と、
前記ポンプ収容部に収容され、前記貫通孔を介して前記容器本体部に収容されている前記冷媒を吸い上げるポンプと、
を備える、タンク。
【請求項2】
請求項1に記載のタンクにおいて、
前記ポンプ収容部は、前記ポンプの外表面に形成されているねじと螺合するねじ部を有し、
前記ポンプは、前記ねじが前記ねじ部と螺合することにより、前記ポンプ収容部に係合している、タンク。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のタンクにおいて、
前記蓋部に取り付けられ、前記ポンプにより吸い上げられた前記冷媒を加温して前記冷媒回路へと前記冷媒を送出する冷媒加温装置を更に備える、タンク。
【請求項4】
請求項3に記載のタンクにおいて、
前記蓋部は、第1タンク流路を、前記容器本体部側の表面に更に有し、
前記第1タンク流路は、前記ポンプと前記冷媒加温装置とを接続し、前記ポンプにより吸い上げられた前記冷媒を前記冷媒加温装置に供給する、タンク。
【請求項5】
請求項4に記載のタンクにおいて、
前記冷媒回路は、
前記冷媒加温装置と、前記冷媒加温装置により加温された前記冷媒により加温される被加温装置と、を接続する第1流路と、
前記冷媒を冷却して被冷却装置に対して前記冷媒を供給する第1冷媒冷却装置と、前記タンクと、を接続する第2流路と、
を有し、
前記蓋部は、第2タンク流路を、前記容器本体部側の表面に更に有し、
前記第2タンク流路は、前記第1タンク流路と前記第2流路とを接続し、前記ポンプにより吸い上げられた前記冷媒を前記第2流路に供給し、
前記タンクは、前記蓋部に取り付けられた第1バルブであって、前記ポンプから吸い上げられ前記第1タンク流路に供給される前記冷媒を、前記冷媒加温装置と前記第2タンク流路とのうちの少なくとも一方に流通させるための第1バルブを有する、
タンク。
【請求項6】
請求項5に記載のタンクを備える、温度調整システムであって、
前記冷媒回路は、
前記被加温装置と、前記流入ポートと、を接続する第3流路と、
前記第1冷媒冷却装置と、前記被冷却装置とを接続する第4流路と、
前記被冷却装置と、前記流入ポートと、を接続する第5流路と、
前記冷媒を冷却して被温調装置に対して前記冷媒を供給する第2冷媒冷却装置と、前記タンクと、を接続する第6流路と、
前記第2冷媒冷却装置と、前記被温調装置と、を接続する第7流路と、
前記被温調装置と、前記流入ポートと、を接続する第8流路と、
前記第1流路と、前記第7流路または前記被温調装置と、を接続するバイパス流路と、
前記第1流路と前記バイパス流路との接続点に設けられる第2バルブであって、前記第1流路に供給される前記冷媒を、前記被加温装置と前記バイパス流路とのうちの少なくとも一方に流通させるための第2バルブと、
を更に有し、
前記蓋部は、第3タンク流路を、前記容器本体部側の表面に更に有し、
前記第3タンク流路は、前記第1タンク流路と前記第6流路とを接続し、前記ポンプにより吸い上げられた前記冷媒を前記第6流路に供給し、
前記第1バルブは、前記ポンプから吸い上げられ前記第1タンク流路に供給される前記冷媒を、前記冷媒加温装置と前記第2タンク流路と前記第3タンク流路とのうちの少なくとも一つに流通させる、
温度調整システム。
【請求項7】
請求項6に記載の温度調整システムであって、
前記温度調整システムは、車両に搭載されて用いられ、
前記被加温装置は、前記車両の客室のための空調装置の一部として用いられ、
前記温度調整システムは、制御装置を更に備え、
前記制御装置は、
前記空調装置の動作状態を示す空調動作状態情報を取得する空調動作状態情報取得部と、
前記車両の状態を示す車両状態情報を取得する車両状態情報取得部と、
前記車両の外気温を取得する外気温取得部と、
取得された前記空調動作状態情報と、取得された前記車両状態情報と、取得された前記外気温と、のうちの少なくとも一つの示す状態に応じて、前記第1バルブと前記第2バルブとのうちの少なくとも一方を制御するバルブ制御部と、
を有する、温度調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度調整システムに用いられるタンク、および温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるバッテリやインバータを冷却するために、ラジエータで冷却した冷媒(冷却溶媒)をインバータおよびバッテリに供給して熱交換させる技術が知られている。例えば特許文献1は、冷媒を収容する1つのタンクと、インバータおよびバッテリのそれぞれに冷媒を循環させる2つの循環路と、を備え、タンクから2つの循環路のいずれか一方に1つのポンプを用いて冷媒を供給する温度調整システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-58241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1には、ポンプおよびタンクの詳細な構造について記載されていない。ポンプおよびタンクの省スペース化およびメンテナンス性向上の点において、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、温度調整システムにおいて用いられ、温度調整用の冷媒を収容するタンクが提供される。このタンクは、開口を有し、前記冷媒を収容する容器本体部と、前記開口を覆う蓋部であって、前記容器本体部の内側に向かって窪み、前記容器本体部の内部と連通する貫通孔が形成されたポンプ収容部と、前記温度調整システムが有する冷媒回路から前記冷媒が流入する少なくとも一つの流入ポートと、を有する蓋部と、前記ポンプ収容部に収容され、前記貫通孔を介して前記容器本体部に収容されている前記冷媒を吸い上げるポンプと、を備える。
この形態のタンクによれば、蓋部に設けられたポンプ収容部にポンプが収容されているので、タンクの外部にポンプがある構成と比較して、タンクおよびポンプの設置に要する空間をより小さくできる。また、ポンプ収容部には貫通孔が形成されているので、ポンプを取り外すことで容器本体部に冷媒を容易に供給することができる。
(2)上記実施形態のタンクにおいて、前記ポンプ収容部は、前記ポンプの外表面に形成されているねじと螺合するねじ部を有し、前記ポンプは、前記ねじが前記ねじ部と螺合することにより、前記ポンプ収容部に係合してもよい。
この形態のタンクによれば、ポンプの外表面に形成されたねじはポンプ収容部の有するねじ部と螺合するので、ねじおよびねじ部が設けられていない構成と比較して、ポンプをタンクに対してより確実に係合できる。
(3)上記実施形態のタンクにおいて、前記タンクは、前記蓋部に取り付けられ、前記ポンプにより吸い上げられた前記冷媒を加温して前記冷媒回路へと前記冷媒を送出する冷媒加温装置を更に備えてもよい。
この形態のタンクによれば、冷媒加温装置は蓋部に取り付けられているので、冷媒加温装置がタンクの外部に配管で接続されている構成と比較して、配管を通過することによる冷媒の熱エネルギーの損失を抑制できる。また、冷却加温装置の設置に要する空間をより小さくできる。
(4)上記実施形態のタンクにおいて、前記蓋部は、第1タンク流路を、前記容器本体部側の表面に更に有し、前記第1タンク流路は、前記ポンプと前記冷媒加温装置とを接続し、前記ポンプにより吸い上げられた前記冷媒を前記冷媒加温装置に供給してもよい。
この形態のタンクによれば、ポンプと冷媒加温装置とを接続する第1タンク流路は、蓋部に設けられているので、ポンプと冷媒加温装置とを接続する流路がタンクの外部に在る構成と比較して、配管を通過することによる冷媒の熱エネルギーの損失を抑制できる。
(5)上記実施形態のタンクにおいて、前記冷媒回路は、前記冷媒加温装置と、前記冷媒加温装置により加温された前記冷媒により加温される被加温装置と、を接続する第1流路と、前記冷媒を冷却して被冷却装置に対して前記冷媒を供給する第1冷媒冷却装置と、前記タンクと、を接続する第2流路と、を有し、前記蓋部は、第2タンク流路を、前記容器本体部側の表面に更に有し、前記第2タンク流路は、前記第1タンク流路と前記第2流路とを接続し、前記ポンプにより吸い上げられた前記冷媒を前記第2流路に供給し、前記タンクは、前記蓋部に取り付けられた第1バルブであって、前記ポンプから吸い上げられ前記第1タンク流路に供給される前記冷媒を、前記冷媒加温装置と前記第2タンク流路とのうちの少なくとも一方に流通させるための第1バルブを有してもよい。
この形態のタンクによれば、第1バルブは、冷媒加温装置と第2タンク流路とのうちの少なくとも一方に冷媒を流通させるので、冷媒加温装置と第1冷媒冷却装置とに冷媒を供給できる。また、第1バルブは、蓋部に取り付けられているので、第1バルブがタンクの外部に設けられている構成と比較して、第1バルブの設置に要する空間をより小さくできる。
(6)本開示の他の形態によれば、温度調整システムが提供される。この温度調整システムは、上記実施形態のタンクを備える温度調整システムであって、前記冷媒回路は、前記被加温装置と、前記流入ポートと、を接続する第3流路と、前記第1冷媒冷却装置と、前記被冷却装置とを接続する第4流路と、前記被冷却装置と、前記流入ポートと、を接続する第5流路と、前記冷媒を冷却して被温調装置に対して前記冷媒を供給する第2冷媒冷却装置と、前記タンクと、を接続する第6流路と、前記第2冷媒冷却装置と、前記被温調装置と、を接続する第7流路と、前記被温調装置と、前記流入ポートと、を接続する第8流路と、前記第1流路と、前記第7流路または前記被温調装置と、を接続するバイパス流路と、前記第1流路と前記バイパス流路との接続点に設けられる第2バルブであって、前記第1流路に供給される前記冷媒を、前記被加温装置と前記バイパス流路とのうちの少なくとも一方に流通させるための第2バルブと、を更に有し、前記蓋部は、第3タンク流路を、前記容器本体部側の表面に更に有し、前記第3タンク流路は、前記第1タンク流路と前記第6流路とを接続し、前記ポンプにより吸い上げられた前記冷媒を前記第6流路に供給し、前記第1バルブは、前記ポンプから吸い上げられ前記第1タンク流路に供給される前記冷媒を、前記冷媒加温装置と前記第2タンク流路と前記第3タンク流路とのうちの少なくとも一つに流通させる。
この形態の温度調整システムによれば、バイパス流路は、第7流路または被温調装置と接続され、第2バルブは被加温装置とバイパス流路とのうちの少なくとも一方に冷媒を供給するので、冷媒加温装置により加温された冷媒を被温調装置と被加温装置とに供給できる。また、第1バルブは、冷媒加温装置と第2タンク流路と第3タンク流路とのうちの少なくとも一つに冷媒を流通させるので、冷媒加温装置と第1冷媒冷却装置と第2冷媒冷却装置とに冷媒を供給できる。
(7)上記実施形態の温度調整システムにおいて、前記温度調整システムは、車両に搭載されて用いられ、前記被加温装置は、前記車両の客室のための空調装置の一部として用いられ、前記温度調整システムは、制御装置を更に備え、前記制御装置は、前記空調装置の動作状態を示す空調動作状態情報を取得する空調動作状態情報取得部と、前記車両の状態を示す車両状態情報を取得する車両状態情報取得部と、前記車両の外気温を取得する外気温取得部と、取得された前記空調動作状態情報と、取得された前記車両状態情報と、取得された前記外気温と、のうちの少なくとも一つの示す状態に応じて、前記第1バルブと前記第2バルブとのうちの少なくとも一方を制御するバルブ制御部と、を有してもよい。
この形態に温度調整システムによれば、バルブ制御部は、空調動作状態情報と、車両状態情報と、外気温と、のうちの少なくとも一つの示す状態に応じて、第1バルブと第2バルブとのうちの少なくとも一方を制御するので、空調の動作状態と、車両の状態と、外気温とのうちの少なくとも一つに応じて、被加温装置と、被冷却装置と、被温調装置とのそれぞれの温度調整を適切に行うことができる。
本開示は、温度調整システムおよびタンク以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、温度調整システムにおけるバルブの開閉の制御方法、かかる制御方法を実現するためのコンピュータプログラム、かかるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一形態としての温度調整システムの概略構成を示す説明図である。
図2】本開示の一形態としてのタンクを示す斜視図である。
図3】蓋部の裏側を示す斜視図である。
図4】流路形成板を示す平面図である。
図5】第1バルブを示す斜視図である。
図6】アクチュエータおよび第1バルブが取り付けられた状態における図3のVI-VI断面を示す図である。
図7】ポンプを示す斜視図である。
図8】ポンプが取り付けられた状態における図3のVIII-VIII断面を示す図である。
図9】第2実施形態の温度調整システムの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
A1.温度調整システム300の構成:
図1は、本開示の一形態としての温度調整システム300の概略構成を示す説明図である。図1中の白抜き矢印は、冷媒の流れる方向を示す。温度調整システム300は、冷却または加温した冷媒と、温度調整の対象となる装置と、を熱交換させることで、かかる装置の温度を調整するために用いられる。温度調整システム300は、例えば電動自動車(Battery Electric Vehicle,BEV)に搭載される。本実施形態の温度調整システム300は、1つのタンク100に収容された温度調整用の冷媒を用いて、被加温装置60と、被冷却装置81と、被温調装置82と、の温度調整を行う。
【0009】
温度調整システム300は、タンク100と、ポンプ20と、冷媒加温装置30と、被加温装置60と、第1冷媒冷却装置71と、第2冷媒冷却装置72と、被冷却装置81と、被温調装置82と、冷媒回路200と、を備える。
【0010】
タンク100は、冷媒を収容する容器である。タンク100の詳細な構成については、後述する。ポンプ20は、タンク100の蓋部11に取り付けられており、タンク100に収容された冷媒を第1タンク流路91に供給する。ポンプ20の詳細な構成については、後述する。第1タンク流路91は、タンク100の蓋部11に設けられた流路であり、冷媒加温装置30に冷媒を流通させる。第1タンク流路91は、後述する第2タンク流路92および第3タンク流路93と接続している。第1タンク流路91に供給された冷媒は、第1バルブ41により、冷媒加温装置30と第2タンク流路92と第3タンク流路93とのうちの少なくとも一つに流通される。第1バルブ41の詳細な構成については、後述する。
【0011】
冷媒加温装置30は、ポンプ20と同様にタンク100の蓋部11に取り付けられており、冷媒を加温し送出する。冷媒加温装置30は、本実施形態では、クーラントヒータである。なお、冷媒加温装置30は、クーラントヒータに限らず冷媒を加温し得る任意の装置であってよい。被加温装置60は、冷媒加温装置30により加温された冷媒と熱交換を行うことで、加温される。被加温装置60は、本実施形態では、車両の客室のための空調装置の一部として用いられるヒータコアである。なお、被加温装置60は、ヒータコアに限らず加温された冷媒により加温され得る任意の装置であってよい。第1冷媒冷却装置71は、冷媒を冷却し、被冷却装置81に冷媒を供給する。第2冷媒冷却装置72は、冷媒を冷却し、被温調装置82に冷媒を供給する。第1冷媒冷却装置71および第2冷媒冷却装置72は、本実施形態では、ラジエータである。なお、第1冷媒冷却装置71および第2冷媒冷却装置72は、ラジエータに限らず冷媒を冷却し得る任意の装置であってよい。被冷却装置81は、第1冷媒冷却装置71により冷却された冷媒と熱交換を行うことで、冷却される。被冷却装置81は、本実施形態では、モータおよびインバータである。なお、被冷却装置81は、モータおよびインバータに限らず冷却された冷媒により冷却され得る任意の装置であってよい。被温調装置82は、冷媒加温装置30により加温された冷媒と熱交換を行うことで加温され、第2冷媒冷却装置72により冷却された冷媒と熱交換を行うことで冷却される。被温調装置82は、本実施形態では、バッテリおよびコンバータである。なお、被温調装置82は、バッテリおよびコンバータに限らず、冷却された冷媒により冷却され、加温された冷媒により加温され得る任意の装置であってよい。
【0012】
冷媒回路200は、タンク100と、冷媒加温装置30と、被加温装置60と、第1冷媒冷却装置71と、第2冷媒冷却装置72と、被冷却装置81と、被温調装置82との間で、冷媒を循環させる流路である。
【0013】
冷媒回路200は、第1流路51と、第2流路52と、第3流路53と、第4流路54と、第5流路55と、第6流路56と、第7流路57と、第8流路58と、バイパス流路94と、第2バルブ42と、を備える。第1~第8流路51~58およびバイパス流路94のそれぞれは、冷媒が流通可能な部材で構成されている。そのような部材は、例えばゴムホース管、ナイロンチューブ等である。
【0014】
第1流路51は、冷媒加温装置30と被加温装置60とを接続する。第3流路53は、被加温装置60と、タンク100に設けられた流入ポート21と、を接続する。流入ポート21は、タンク100の蓋部11に設けられており、各流路と接続可能に構成されている。第2流路52は、第2タンク流路92と第1冷媒冷却装置71とを接続する。第2タンク流路92は、タンク100の蓋部11に設けられた流路であり、第1タンク流路91と第2流路52とを接続する。第4流路54は、第1冷媒冷却装置71と被冷却装置81とを接続する。第5流路55は、被冷却装置81と流入ポート21とを接続する。第6流路56は、第3タンク流路93と第2冷媒冷却装置72とを接続する。第3タンク流路93は、タンク100の蓋部11に設けられた流路であり、第1タンク流路91と第6流路56とを接続する。第7流路57は、第2冷媒冷却装置72と被温調装置82とを接続する。第8流路58は、被温調装置82と流入ポート21とを接続する。
【0015】
バイパス流路94は、第1流路51と第7流路57とを接続する。バイパス流路94と第1流路51との接続点Pには、第2バルブ42が設けられている。第2バルブ42は、
第1流路51に供給される冷媒を、バイパス流路94と被加温装置60とのうちの少なくとも一方に流通させる。すなわち、冷媒加温装置30により加温された冷媒は、被加温装置60と被温調装置82とのうちの少なくとも一方と熱交換を行う。
【0016】
A2.タンク100の構成:
図2は、本開示の一形態としてのタンク100を示す斜視図である。図2には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。図2におけるXYZ軸は、他の図面におけるXYZ軸と対応する。
【0017】
タンク100は、温度調整システム300に用いられ、冷媒を収容する容器である。タンク100は、容器本体部10と、蓋部11と、を備える。
【0018】
容器本体部10は、冷媒を収容可能に構成されている。容器本体部10は、上方に開口を有する略直方体形状である。容器本体部10は、例えばポリプロピレン(PP)やガラス繊維強化ポリプロピレン(GFPP)等によって形成される。
【0019】
蓋部11は、容器本体部10の開口を覆う。蓋部11は、略平板形状である。蓋部11は、容器本体部10と同様に、PP、GFRP等によって形成される。蓋部11は、ポンプ20が収容されるポンプ収容部12と、冷媒加温装置30が取り付けられる冷媒加温装置取付部29と、アクチュエータ40が取り付けられるアクチュエータ取付部31と、冷媒回路200の各流路が接続可能に構成された流入ポート21と、を備える。ポンプ収容部12は、上方に開口を有し、容器本体部10の内側に向かう窪みである。ポンプ収容部12の側壁面15の上部には、ねじ部35が設けられている。ねじ部35は、後述するポンプ20に設けられたねじ89と螺合可能に構成されている。流入ポート21は、上下方向に開口した略円筒状の部材である。流入ポート21は、少なくとも1つ設けられる。冷媒は、流入ポート21を介してタンク100の内外に流通することができる。
【0020】
図3は、蓋部11の裏側を示す斜視図である。なお、蓋部11の裏側とは、蓋部11が容器本体部10を覆う際の容器本体部10側を言う。蓋部11は、第1タンク流路形成部17と、第2タンク流路形成部18と、第3タンク流路形成部19と、第1バルブ収容部27と、を更に備える。
【0021】
ポンプ収容部12の底面13には、容器本体部10の内部と連通する第1貫通孔14を有する。容器本体部10に収容されている冷媒は、第1貫通孔14を介して、ポンプ20に吸い上げられる。ポンプ収容部12の側壁面15には、第2貫通孔16が設けられている。第2貫通孔16は、第1タンク流路91と接続しており、ポンプ20に吸い上げられた冷媒は、第2貫通孔16を介して第1タンク流路91に供給される。なお、第1貫通孔14は、底面13に代えてまたは底面13に加えて、側壁面15に設けられてもよい。
【0022】
第1タンク流路形成部17と、第2タンク流路形成部18と、第3タンク流路形成部19とは、蓋部11の裏側表面に形成された溝である。第1タンク流路形成部17の一端は、第1流出ポート24と接続する。第2タンク流路形成部18の一端は、第2流出ポート25と接続する。第3タンク流路形成部19の一端は、第3流出ポート26と接続する。第1流出ポート24は、冷媒加温装置30の冷媒流入口(図示せず)と接続可能に構成された開口である。第2流出ポート25は、第2流路52と接続する、上下方向に開口を有する略円筒状の部材である。第3流出ポート26は、第6流路56と接続する、上下方向に開口を有する略円筒状の部材である。
【0023】
第1バルブ収容部27には、第1バルブ41が収容される。第1バルブ収容部27は、蓋部11において、アクチュエータ取付部31の裏側に設けられている。第1バルブ収容部27は、容器本体部10側に向けた開口を有する円筒形状である。第1バルブ収容部27は、第1バルブ41の軸部7が挿入される第3貫通孔28を有する。
【0024】
図4は、流路形成板22示す平面図である。流路形成板22は、平面視において、第1タンク流路形成部17と、第2タンク流路形成部18と、第3タンク流路形成部19と、第1バルブ収容部27と、に倣った形状を有する平板状の部材である。流路形成板22が、第1タンク流路形成部17と、第2タンク流路形成部18と、第3タンク流路形成部19と、第1バルブ収容部27とを下側から覆って熱溶着等で固定されることで、第1タンク流路91と、第2タンク流路92と、第3タンク流路93とが、形成される。すなわち、第1タンク流路91は、第1タンク流路形成部17と流路形成板22とで画定される領域であり、第2タンク流路92は、第2タンク流路形成部18と第1バルブ収容部27の一部と流路形成板22とで画定される領域であり、第3タンク流路93は、第3タンク流路形成部19と第1バルブ収容部27の一部と流路形成板22とで画定される領域である。
【0025】
図5は、第1バルブ41を示す斜視図である。第1バルブ41は、バルブ本体部8および軸部7を備える。バルブ本体部8は、下方向に開口した中空の円筒形状を有する部材である。バルブ本体部8の側面には3つのバルブ貫通孔43が設けられている。軸部7は、バルブ本体部8と同じ中心軸Cを有する円筒状の部材である。軸部7の径は、バルブ本体部8の径よりも小さい。
【0026】
図6は、アクチュエータ40および第1バルブ41が取り付けられた状態における図3のVI-VI断面を示す図である。アクチュエータ40は、第1バルブ41の軸部7を中心軸C周りに回転させる装置である。かかる回転により各バルブ貫通孔43の位置と第1~第3タンク流路91~93の位置とを合わせることで、第1タンク流路91中の冷媒を、第2タンク流路92と第3タンク流路93とに分流させることができ、かつ回転量に応じて分流される冷媒の流量を調整できる。
【0027】
図7は、ポンプ20を示す斜視図である。ポンプ20は、下部に設けられた吸入口90を介して容器本体部10に収容された冷媒を吸い上げ、第1タンク流路91に冷媒を供給する。ポンプ20は、蓋部11に形成されたポンプ収容部12に収容されている。本実施形態におけるポンプ20は、遠心式のウォーターポンプである。ポンプ20は、取手83と、コネクタ84と、ハウジング85と、上鍔部86と、下鍔部87と、吐出口88と、を有する。
【0028】
取手83は、把持可能に構成された略円筒状の部材である。コネクタ84は、取手83に取り付けられており、ポンプ20に電力を供給するための配線部材が接続される。ハウジング85は、内部にモータ75とインペラ76とを格納する略円筒状の部材である。吐出口88は、ポンプ20により吸い上げられた冷媒がポンプ20の外部に吐出される際の開口である。吐出口88は、ハウジング85の側面に設けられている。
【0029】
上鍔部86は、ハウジング85の上部に設けられた略円盤状の部材である。下鍔部87は、ハウジング85の下部に設けられた略円盤状の部材である。上鍔部86および下鍔部87の径は、ハウジング85の径よりも大きい。上鍔部86および下鍔部87は、略同一の中心軸を有する。上鍔部86および下鍔部87の中心軸と、ハウジング85の中心軸とは、互いにずれている。上鍔部86の外周面には、ポンプ収容部12のねじ部35と螺合するねじ89が形成されている。このため、ポンプ20をポンプ収容部12に嵌め込み、取手83を持って回転させることで、ポンプ20と蓋部11とが一体化する。このとき、下鍔部87はポンプ収容部12の底面13と接し、上鍔部86は、ポンプ収容部12の開口を封止する。
【0030】
図8は、ポンプ20が取り付けられた状態における図3のVIII-VIII断面を示す図である。図8における矢印は、ポンプ20が吸い上げた冷媒の流れを示す。図8においてモータ75は、簡略化して示されている。コネクタ84を介して電力がポンプ20に供給されると、モータ75が作動することでインペラ76が回転し、ポンプ20の吸入口90を介してポンプ20内に冷媒が吸い上げられる。吸い上げられた冷媒は、吐出口88を通じてポンプ20の外に排出される。排出された冷媒は、ハウジング85の側面と、上鍔部86と下鍔部87と、ポンプ収容部12の側壁面15とにより画定される領域を通過し、第2貫通孔16を介して、第1タンク流路91に供給される。
【0031】
以上説明した第1実施形態の温度調整システム300によれば、1つのタンク100に収容された冷媒を1つのポンプ20で吸い上げ、被加温装置60と、被冷却装置81と、被温調装置82と、の3つの装置の温度調整を行うので、温度調整される装置1つにつき1つのポンプと1つのタンクとを要する構成と比較して、温度調整システム300の省スペース化を実現できる。また、温度調整システム300の製造コストを小さくできる。
【0032】
また、以上説明した第1実施形態のタンク100によれば、タンク100の蓋部11にポンプ20が取り付けられているので、ポンプがタンクの外部に設けられている構成と比較して、タンク100およびポンプ20の設置に要する空間をより小さくできる。
【0033】
また、ポンプ20がポンプ収容部12と螺合しているので、取手83を回転させてポンプ20を取り外すことで、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0034】
また、ポンプ収容部12の底面13に第1貫通孔14が設けられているので、ポンプ20を取り外すことで、第1貫通孔14を通じて冷媒を補充できる。すなわち、ポンプ20は、蓋部11におけるキャップの役割を果たすことができる。したがって、ポンプ20とは別にキャップを備える構成と比較して、部品点数を削減することで温度調整システム300の製造コストを低減できる。
【0035】
また、ポンプ20の外表面に形成されたねじ89がポンプ収容部12の有するねじ部35と螺合するので、ねじ89およびねじ部35が設けられていない構成と比較して、ポンプ20をタンク100に対してより確実に係合させることができる。
【0036】
また、蓋部11に冷媒加温装置30が取り付けられているので、配管でタンクと冷媒加温装置とが接続されている構成と比較して、冷媒の温度変化を小さくし、熱効率を上げることができる。具体的には、配管を通過することによる冷媒の熱エネルギーの損失を抑制できる。また、冷媒加温装置30の設置に要する空間を小さくできる。
【0037】
また、蓋部11に第1バルブ41が取り付けられているので、第1バルブ41がタンク100の外部に在る構成と比較して、第1バルブ41の設置に要するスペースを小さくできる。
【0038】
また、ポンプ20の上鍔部86および下鍔部87と、ハウジング85との軸は、互いにずれているので、これらの軸が略同一である構成と比較して、上鍔部86と下鍔部87と、ポンプ収容部12の側壁面15とにより画定される領域を流通する冷媒の圧力損失を抑制できる。
【0039】
また、ポンプ20から吐出された冷媒は、上鍔部86と下鍔部87と、ポンプ収容部12の側壁面15とにより画定される領域を流通するので、冷媒が配管を通じてポンプから冷媒加温装置に供給される構成と比較して、配管を通過することによる冷媒の熱エネルギーの損失を抑制できる。
【0040】
B.第2実施形態:
図9は、第2実施形態の温度調整システム301の概略構成を示す説明図である。第2実施形態の温度調整システム301は、制御装置400を更に備える点で、第1実施形態の温度調整システム301と異なる。第2実施形態の温度調整システム300におけるその他の構成は、第1実施形態の温度調整システム300と同じであるので、同一の構成要素は同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0041】
制御装置400は、温度調整システム301の各部の動作を制御する。制御装置400は、互いに内部バスで接続されたCPUおよび記憶部を備えるコンピュータにより構成されている。制御装置400は、記憶部に予め記憶されている制御プログラムを実行することで、空調動作状態情報取得部401と、車両状態情報取得部402と、外気温取得部403と、バルブ制御部404として機能する。
【0042】
空調動作状態情報取得部401は、空調動作状態情報を取得する。本実施形態において空調動作状態情報は、温度調整システム301が搭載された車両における空調(空気調和)装置の動作状態を示す情報である。空調装置の動作状態は、例えば冷房運転中、暖房運転中、非運転である。空調動作状態情報取得部401は、取得した空調動作状態情報をバルブ制御部404に伝達する。
【0043】
車両状態情報取得部402は、車両状態情報を取得する。本実施形態において車両状態情報は、温度調整システム301が搭載された車両の状態を示す情報である。車両状態は、例えば停止中、始動中、低中速走行中、高速走行中、バッテリ充電中である。低中速走行とは、例えば車両が時速80km未満で車両が走行することをいう。高速走行とは、例えば車両が時速80km以上で走行することをいう。車両状態情報取得部402は、取得した車両状態情報をバルブ制御部404に伝達する。
【0044】
外気温取得部403は、外気温を取得する。本実施形態において外気温は、温度調整システム301が搭載された車両の周囲の外気温である。外気温取得部403は、取得した外気温をバルブ制御部404に伝達する。
【0045】
バルブ制御部404は、空調動作状態情報と、車両状態情報と、外気温と、のうちの少なくとも一つの示す状態に応じて、第1バルブ41と第2バルブ42とのうちの少なくとも一方を制御する。
【0046】
例えば、空調動作情報として非運転であることと、車両状態情報として始動中であることと、外気温として通常の温度(例えば、10℃~30℃)であることとが、バルブ制御部404に伝達された場合、バルブ制御部404は、第1タンク流路91を流れる冷媒を冷媒加温装置30に流れるように第1バルブ41を制御し、第1流路51を流れる冷媒をバイパス流路94に流れるように第2バルブ42を制御する。かかる制御により、冷媒加温装置30であるクーラントヒータに加温された冷媒は、被温調装置82であるバッテリに供給される。このようにして、バッテリの温度は、始動に適切な温度(例えば、20℃~30℃)に調整される。
【0047】
また、例えば空調動作状態情報として暖房運転中であることと、車両状態情報として始動中であることと、外気温として比較的低い温度(例えば、10℃以下)であることとが、バルブ制御部404に伝達された場合、バルブ制御部404は、第1タンク流路91を流れる冷媒を冷媒加温装置30に流れるように第1バルブ41を制御し、第1流路51を流れる冷媒をバイパス流路94および被加温装置60に流れるように第2バルブ42を制御する。かかる制御により、冷媒加温装置30であるクーラントヒータにより加温された冷媒は、被温調装置82であるバッテリと、被加温装置60であるヒータコアと、に供給される。このようにして、バッテリの温度は、始動に適切な温度(例えば、20℃~30℃)に調整され、ヒータコアは、加温される。
【0048】
また、例えば空調動作状態情報として暖房運転中であること、車両状態情報として低中速運転中であることと、外気温として比較的低い温度(例えば、10℃以下)であることとが、バルブ制御部404に伝達された場合、バルブ制御部404は、第1タンク流路91を流れる冷媒を冷媒加温装置30に流れるように第1バルブ41を制御し、第1流路51を流れる冷媒を被加温装置60に流れるように第2バルブ42を制御する。かかる制御により、冷媒加温装置30であるクーラントヒータにより加温された冷媒は、被加温装置60であるヒータコアに供給される。このようにして、ヒータコアは、加温される。
【0049】
また、例えば空調動作情報として暖房運転中であることと、車両状態情報として高速走行中であることと、外気温として比較的低い温度(例えば、10℃以下)であることとが、バルブ制御部404に伝達された場合、バルブ制御部404は、第1タンク流路91を流れる冷媒を冷媒加温装置30と第2タンク流路92と第3タンク流路93とに流れるように第1バルブ41を制御し、第1流路51を流れる冷媒を被加温装置60に流れるように第2バルブ42を制御する。かかる制御により、第1冷媒冷却装置71および第2冷媒冷却装置72であるラジエータに冷媒が供給され、ラジエータにより冷却された冷媒が、被冷却装置81であるインバータおよび被温調装置82であるバッテリに供給される。また、かかる制御により、冷媒加温装置30であるクーラントヒータにより加温された冷媒が、被加温装置60であるヒータコアに供給される。このようにして、空調動作のために電力を供給することで発熱するバッテリと、高速走行により発熱するインバータとは、冷却され、ヒータコアは、加温される。
【0050】
また、例えば空調動作情報として冷房運転中であることと、車両状態情報として高速走行中であることと、外気温として比較的高い温度(例えば、30℃以上)であることとが、バルブ制御部404に伝達された場合、バルブ制御部404は、第1タンク流路91を流れる冷媒を第2タンク流路92および第3タンク流路93に流れるように第1バルブ41を制御する。かかる制御により、第1冷媒冷却装置71および第2冷媒冷却装置72であるラジエータに冷媒が供給され、ラジエータにより冷却された冷媒が、被冷却装置81であるインバータおよび被温調装置82であるバッテリに供給される。このようにして、空調動作のために電力を供給することで発熱するバッテリと、高速走行により発熱するインバータとは、冷却される。
【0051】
また、例えば空調動作情報として非運転であることと、車両状態情報として高速走行中であることと、外気温として通常の温度(例えば、10℃~30℃)であることとが、バルブ制御部404に伝達された場合、バルブ制御部404は、第1タンク流路91を流れる冷媒を第2タンク流路92に流れるように第1バルブ41を制御する。かかる制御により、第1冷媒冷却装置71であるラジエータに冷媒が供給され、ラジエータにより冷却された冷媒が、被冷却装置81であるインバータに供給される。このようにして、高速走行により発熱するインバータは、冷却される。
【0052】
また、例えば空調動作情報として非運転であることと、車両状態情報として充電中であることと、外気温として通常の温度(例えば、10℃~30℃)であることとが、バルブ制御部404に伝達された場合、バルブ制御部404は、第1タンク流路91を流れる冷媒を第6流路56に流れるように第1バルブ41を制御する。かかる制御により、第2冷媒冷却装置72であるラジエータに冷媒が供給され、ラジエータにより冷却された冷媒が、被温調装置82であるバッテリに供給される。このようにして、充電により発熱するバッテリは、冷却される。
【0053】
上述したバルブ制御部404による第1バルブ41および第2バルブ42の制御は、例示に過ぎない。すなわち、被加温装置60が加温を要する場合、バルブ制御部404は、第1タンク流路91を流れる冷媒が冷媒加温装置30に流れるように第1バルブ41を制御し、第1流路51を流れる冷媒が被加温装置60に流れるように第2バルブ42を制御する。被温調装置82が加温を要する場合、バルブ制御部404は、第1タンク流路91を流れる冷媒が冷媒加温装置30に流れるように第1バルブ41を制御し、第1流路51を流れる冷媒がバイパス流路94に流れるように第2バルブ42を制御する。被冷却装置81が冷却を要する場合、バルブ制御部404は、第1タンク流路91を流れる冷媒が第2タンク流路92に流れるように第1バルブ41を制御する。被温調装置82が冷却を要する場合、バルブ制御部404は、第1タンク流路91を流れる冷媒が第3タンク流路93に流れるように第1バルブ41を制御する。バルブ制御部404は、第1バルブ41および第2バルブ42の両方を制御してもよい。第1バルブ41は、第1タンク流路91を流れる冷媒を、冷媒加温装置30と第2タンク流路92と第3タンク流路93とのうちの2つ以上に冷媒を流通させてもよい。第2バルブ42は、第1流路51を流れる冷媒を、被加温装置60およびバイパス流路94の両方に流通させてもよい。被加温装置60と、被冷却装置81と、被温調装置82と、の冷却または加温の要否は、空調動作状態情報と、走行状態情報と、外気温と、のうちの少なくとも1つの示す状態に応じて、バルブ制御部404により決定されてもよい。
【0054】
上述した第2実施形態の温度調整システム301によれば、第1実施形態の温度調整システム300と同様の効果を奏する。また、第2実施形態の温度調整システム301によれば、バルブ制御部404は、空調動作状態情報と、走行状態情報と、外気温と、のうちの少なくとも一つの示す状態に応じて、第1バルブ41と、第2バルブ42とのうちの少なくとも一方を制御するので、空調の動作状態と、車両の状態と、外気温とのうちの少なくとも一つに応じて、被加温装置60と、被冷却装置81と、被温調装置82とのそれぞれの温度調整を適切に行うことができる。
【0055】
C.他の実施形態:
(C1)各実施形態において、冷媒加温装置30と、被加温装置60と、第1冷媒冷却装置71と、被冷却装置81と、第2冷媒冷却装置72と、被温調装置82と、を備える温度調整システム300、301について説明したが、本開示はこれに制限されない。温度調整システム300、301は、各実施形態の温度調整システム300、301から、第1冷媒冷却装置71と、被冷却装置81と、第2タンク流路92と、第2流路52と、第4流路54と、第5流路55と、を除いた構成であってもよい。また、温度調整システム300、301は、各実施形態の温度調整システム300、301から、第2冷媒冷却装置72と、被温調装置82と、第3タンク流路93と、第6流路56と、第7流路57と、第8流路58と、を除いた構成であってもよい。このような構成であっても、被冷却装置81および被温調装置82のうちのいずれか一方と、被加温装置60と、の温度調整を1つのタンク100および1つのポンプ20を用いて行うことができる。
【0056】
(C2)各実施形態において、ポンプ20とポンプ収容部12とは、螺合していたが、本開示はこれに制限されない。ポンプ20とポンプ収容部12とは、任意の形状によって係合されてもよい。
【0057】
(C3)各実施形態において、バイパス流路94は、第7流路57に接続していたが、本開示はこれに制限されない。バイパス流路94は、被温調装置82に直接接続されていてもよい。このような構成によっても、冷媒加温装置30により加温された冷媒を、被温調装置82に供給できる。
【0058】
(C4)各実施形態において、温度調整システム300、301が電動自動車に搭載される例について説明したが、本開示はこれに制限されない。温度調整システム300、301は、任意の移動体や、加温および冷却を要する機器を搭載し固定設置された任意の装置に搭載されてもよい。
【0059】
(C5)各実施形態において、第1バルブ41および第2バルブ42は、流路を流れる冷媒を分流できる構成であれば、任意の構成のバルブでよい。
【0060】
(C6)各実施形態において、第2流路52と、第4流路54と、第6流路56と、第7流路57とをヒートパイプで構成された配管、またはヒートシンクを設けた配管で構成することで、冷媒の冷却を行ってもよい。かかる構成においては、ヒートパイプで構成された配管、またはヒートシンクを設けた配管は、本開示の第1冷媒冷却装置71または第2冷媒冷却装置72に相当する。
【0061】
(C7)各実施形態において、第1~第3タンク流路91~93のそれぞれは、蓋部11の裏側に設けられていたが、本開示はこれに制限されない。第1~第3タンク流路91~93のそれぞれは、蓋部11の表側に設けられていてもよい。
【0062】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
7…軸部、8…バルブ本体部、10…容器本体部、11…蓋部、12…ポンプ収容部、13…底面、14…第1貫通孔、15…側壁面、16…第2貫通孔、17…第1タンク流路形成部、18…第2タンク流路形成部、19…第3タンク流路形成部、20…ポンプ、21…流入ポート、22…流路形成板、24…第1流出ポート、25…第2流出ポート、26…第3流出ポート、27…第1バルブ収容部、28…第3貫通孔、29…冷媒加温装置取付部、30…冷媒加温装置、31…アクチュエータ取付部、35…ねじ部、40…アクチュエータ、41…第1バルブ、42…第2バルブ、43…バルブ貫通孔、51…第1流路、52…第2流路、53…第3流路、54…第4流路、55…第5流路、56…第6流路、57…第7流路、58…第8流路、60…被加温装置、71…第1冷媒冷却装置、72…第2冷媒冷却装置、75…モータ、76…インペラ、81…被冷却装置、82…被温調装置、83…取手、84…コネクタ、85…ハウジング、86…上鍔部、87…下鍔部、88…吐出口、89…ねじ、90…吸入口、91…第1タンク流路、92…第2タンク流路、93…第3タンク流路、94…バイパス流路、100…タンク、200…冷媒回路、300,301…温度調整システム、400…制御装置、401…空調動作状態情報取得部、402…車両状態情報取得部、403…外気温取得部、404…バルブ制御部、C…中心軸、P…接続点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9