(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066023
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】フレキシブル基板洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 1/20 20240101AFI20240508BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B08B1/02
B08B3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175213
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】509154420
【氏名又は名称】株式会社NSC
(72)【発明者】
【氏名】西山 榮
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
【Fターム(参考)】
3B116AA02
3B116AA46
3B116AB14
3B116AB33
3B116AB44
3B116BA02
3B116BA15
3B116BB23
3B116CC03
3B116CD22
3B201AA02
3B201AA46
3B201AB14
3B201AB44
3B201BA02
3B201BA15
3B201BB23
3B201BB92
3B201CC11
3B201CD22
(57)【要約】
【課題】被洗浄基板の大きさにかかわらずコンパクト化を図り易いフレキシブル基板洗浄装置を提供する。
【解決手段】フレキシブル基板洗浄装置10は、支持ドラム20、洗浄ユニット30、および洗浄槽142を少なくとも備える。支持ドラム20は、回転可能に構成されるとともに、処理すべきフレキシブル基板100をその周面において支持するように構成される。洗浄ユニット30は、支持ドラム20に支持されたフレキシブル基板100の被洗浄面に当接させるべきロール状の洗浄ブラシ32、および、この洗浄ブラシに洗浄液を供給するように構成された洗浄液供給部34を少なくとも有する。洗浄槽142は、支持ドラム20および洗浄ユニット30を収容するように構成される。この洗浄槽142は、フレキシブル基板の被洗浄面から除去される不要物を含む洗浄排液を排出するための排液口144を底部に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄ブラシによって可撓性を有するフレキシブル基板の被洗浄面から不要物を除去するように構成されたフレキシブル基板洗浄装置であって、
回転可能に構成されるとともに、処理すべきフレキシブル基板をその周面において支持するように構成された支持ドラムと、
前記支持ドラムに支持されたフレキシブル基板の被洗浄面に当接可能なロール状洗浄ブラシ、および、この洗浄ブラシに洗浄液を供給するように構成された洗浄液供給部を少なくとも有する洗浄ユニットと、
前記支持ドラムおよび前記洗浄ユニットを収容するように構成された洗浄槽であって、前記フレキシブル基板の被洗浄面から除去される不要物を含む洗浄排液を排出するための排液口を底部に備えた洗浄槽と、
を少なくとも備えたフレキシブル基板洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄ユニットが、
洗浄特性が互いに異なる複数の洗浄ブラシと、
それぞれが対応する洗浄ブラシに別個に洗浄液を供給するように構成された複数の洗浄液供給部と、
を備え、
前記複数の洗浄ブラシのいずれか1つを選択的に前記フレキシブル基板の被洗浄面に当接させるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル基板洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有するフレキシブル基板の被洗浄面から不要物を除去するように構成されたフレキシブル基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の基板洗浄装置では、搬送経路に沿って複数配列された搬送ローラによって被洗浄基板を搬送しつつ、搬送経路上に配置された洗浄処理部の洗浄ブラシ等によって洗浄処理を施す構成を採用するものがあった。
【0003】
ところが、通常、被洗浄基板に洗浄力を作用させる際に基板をセッタに固定する必要があるため、採用するセッタの大きさによって洗浄可能な被洗浄基板の大きさが制限されてしまうという不都合が生じることがあった。
【0004】
そこで、従来技術の中には、無端ベルトを用いて被洗浄基板を搬送する構成を採用した装置が存在する(例えば、特許文献1参照。)。このような構成を採用することにより、被洗浄基板の大きさが制限されなくなるというメリットがある、とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術は、被洗浄基板の大きさの制限を受けにくい反面、被洗浄基板の大きさ(特に、搬送方向の長さ)が大きくなると、洗浄ゾーンおよびリンスゾーンのそれぞれにおいて適正な処理に必要とされるサイズも大きくなるため、装置のコンパクト化を図ることが容易ではなかった。
【0007】
本発明の目的は、被洗浄基板の大きさにかかわらずコンパクト化を図り易いフレキシブル基板洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るフレキシブル基板洗浄装置は、洗浄ブラシによって可撓性を有するフレキシブル基板の被洗浄面から不要物を除去するように構成される。フレキシブル基板の例としては、樹脂製の印刷用版が挙げられ、その場合には、感光性樹脂の未現像部分(未硬化部分)が不要物に該当する。ただし、これに限定されるものではない。
【0009】
このフレキシブル基板洗浄装置は、支持ドラム、洗浄ユニット、および洗浄槽を少なくとも備える。
【0010】
支持ドラムは、回転可能に構成されるとともに、洗浄処理すべきフレキシブル基板をその周面において支持するように構成される。
【0011】
洗浄ユニットは、支持ドラムに支持されたフレキシブル基板の被洗浄面に当接させるべきロール状の洗浄ブラシ(ブラシローラ)、および、この洗浄ブラシに洗浄液を供給するように構成された洗浄液供給部を少なくとも有する。
【0012】
洗浄槽は、支持ドラムおよび洗浄ユニットを収容するように構成される。この洗浄槽は、フレキシブル基板の被洗浄面から除去される不要物を含む洗浄排液を排出するための排液口を底部に備える。
【0013】
この構成においては、洗浄処理すべきフレキシブル基板の長さが増加した場合において、支持ドラムの直径の増加分が、フレキシブル基板の長さの増加分の3分の1程度に抑えられる。
【0014】
また、フレキシブル基板に対して念入りな洗浄処理が必要な場合に、支持ドラムの回転数を増やすだけで対応可能であり、装置全体の搬送速度を遅くする必要がないため、洗浄以外の処理において時間の無駄が発生しにくい。
【0015】
上述のフレキシブル基板洗浄装置において、洗浄ユニットが、洗浄特性が互いに異なる複数の洗浄ブラシと、それぞれが対応する洗浄ブラシに別個に洗浄液を供給するように構成された複数の洗浄液供給部と、を備え、複数の洗浄ブラシのいずれか1つを選択的にフレキシブル基板の被洗浄面に当接させるように構成されることが好ましい。
【0016】
洗浄ブラシの洗浄特性の例としては、ブラシ毛の長さ、ブラシ毛の固さ、ブラシ毛の密度、ブラシ毛の材質等のように洗浄能力に影響を与えうる要素が挙げられる。また、洗浄ブラシの被洗浄面への当接力を洗浄特性の解釈に含めるようにしても良い。
【0017】
このような構成を採用することにより、最適な洗浄ブラシや洗浄液を適宜選択することによって、洗浄処理やリンス処理を連続的に実行することが可能になったり、除去しにくい不要物に対して念入りな洗浄処理を施したりすることが可能になる。
【0018】
洗浄液のバリエーションとしては、冷水、温水、界面活性剤、炭化水素系溶剤等が挙げられるが、環境負荷を考慮すると、なるべく炭化水素系溶剤の使用料を最小化することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、被洗浄基板の大きさにかかわらずフレキシブル基板洗浄装置コンパクト化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフレキシブル基板洗浄装置の概略を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るフレキシブル基板洗浄装置の動作の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るフレキシブル基板洗浄装置10の概略を示している。フレキシブル基板洗浄装置10は、洗浄ブラシによって可撓性を有するフレキシブル基板100(例えば、印刷用の樹脂版)の被洗浄面から不要物(例えば、感光性樹脂版の未硬化部)を除去するように構成される。
【0022】
フレキシブル基板洗浄装置10は、導入部12、洗浄チャンバ14、および排出部16を少なくとも備える。導入部12は、フレキシブル基板100を受け入れるように構成される。
【0023】
洗浄チャンバ14は、後述するように、フレキシブル基板100を洗浄するように構成される。排出部16は、洗浄されたフレキシブル基板100を、必要に応じて乾燥させ、かつ、装置外部に排出するように構成される。
【0024】
フレキシブル基板洗浄装置10における洗浄チャンバ14は、支持ドラム20、2つの洗浄ユニット30、および洗浄槽142を少なくとも備える。支持ドラム20は、回転可能に構成されるとともに、処理すべきフレキシブル基板100をその周面において支持するように構成される。
【0025】
2つの洗浄ユニット30は、それぞれドラム20の近傍に配置される。各洗浄ユニット30は、支持ドラム20に支持されたフレキシブル基板100の被洗浄面に当接させるべきロール状の洗浄ブラシ32、および、この洗浄ブラシ32に洗浄液を供給するように構成された洗浄液供給部(例えば、洗浄液供給ノズル)34を少なくとも備えている。
【0026】
この実施形態では、洗浄ユニット30は、洗浄特性が互いに異なる3つの洗浄ブラシ32と、各洗浄ブラシ32と一対に設けられる3つの洗浄液供給部34とを備えている。
【0027】
洗浄チャンバ14におけるフレキシブル基板100に対する洗浄力は、支持ドラム20や洗浄ブラシ32の回転速度および押圧力を適宜制御したり、洗浄ブラシ32の洗浄特性(ブラシ毛の長さ、ブラシ毛の固さ、ブラシ毛の密度、ブラシ毛の材質等)を適宜選択したりすることによって、調整することが可能である。
【0028】
3組の洗浄ブラシ32および洗浄液供給部34は、洗浄ユニット30において回転可能に支持されている。いわゆるリボルバー式の構成が採用されているため、3つ洗浄ブラシ32のいずれか1つを選択的にフレキシブル基板100の被洗浄面に当接させることが可能である。
【0029】
また、選択された洗浄ブラシ32が洗浄処理をする場合には、これに対応する洗浄液供給部34から、選択された洗浄ブラシ32に対して洗浄液が供給される。
【0030】
洗浄槽142は、支持ドラム20および洗浄ユニット30を収容するように構成される。この洗浄槽142は、フレキシブル基板の被洗浄面から除去される不要物を含む洗浄排液を排出するための排液口144を底部に備える。
【0031】
排液口144から排出された排液は、排液処理部40に送られる。排液処理部40は、使用する洗浄液の種類以上の数のタンク(この実施形態では3つ)を有している。廃液処理部40における排液経路には、経路を切り替える機構が設けられているため、排出される液に応じて好適なタンクを選択して貯液することが可能である。
【0032】
この実施形態では、排液処理部40における各タンクから洗浄ユニット30に循環させる液経路(図示省略)が設けられているため、使用済みの洗浄液の再利用が可能となっている。
【0033】
この液経路において、フィルタ等のろ過機構を適宜配置することにより、再利用される洗浄液から不要物や異物等を除去することが可能になるため、再利用される洗浄液の品質を保ちやすくなる。
【0034】
続いて、
図2(A)~
図2(C)を用いて、フレキシブル基板洗浄装置10の動作について説明する。上述の構成において、導入部12に受け入れられたフレキシブル基板100は、複数の搬送ローラ50によって洗浄チャンバ14内に搬送される(
図2(A)参照。)。
【0035】
洗浄チャンバ14に到達したフレキシブル基板100は、支持ドラム20の周面に装着される。支持ドラム20への装着は、例えば、支持ドラム20の周面に複数設けられた装着具22によって、フレキシブル基板100に辺縁部(特に、先端部と後端部)を保持することによって実現する。
【0036】
フレキシブル基板100を支持ドラム20に装着する際、装着具22によってフレキシブル基板10に対して微小な張力が加えられる構成を採用することが好ましい。このような構成を採用することにより、支持ドラム20の周面にフレキシブル基板100がぴったりと貼り合わされるようになるため、洗浄時においてフレキシブル基板100の位置ずれ等が発生しにくくなる。
【0037】
フレキシブル基板100が支持ドラム20に装着されると、洗浄処理が開始される。洗浄処理中は、支持ドラム20が回転するとともに、洗浄ユニット30の洗浄ブラシ32が回転しつつフレキシブル基板100の被洗浄面に押し当てられる(
図2(B)参照。)。
【0038】
洗浄処理中において、洗浄液供給部34から洗浄ブラシ32に対して洗浄液が供給される。供給された洗浄液はフレキシブル基板100の被洗浄箇所に到達し、その後、フレキシブル基板100の被洗浄面から除去された不要物とともに洗浄液が洗浄槽142に流れ落ちる。
【0039】
洗浄処理は、フレキシブル基板100の被洗浄面が十分に清浄化されるまで継続され、その後、後段の排出部16に送られることになる(
図2(C)参照。)。
【0040】
排出部16では、フレキシブル基板100に付着した洗浄液が、エアや熱等によって除去される。十分に乾燥したフレキシブル基板100は、搬送ローラ50によってフレキシブル基板洗浄装置10の最下流まで搬送され、そこで回収される。
【0041】
この実施形態に係るフレキシブル基板洗浄装置10では、2つの洗浄ユニット30、ならびに3組の洗浄ブラシ32および洗浄液供給部34が設けられているが、洗浄ユニット30の数や、各洗浄ユニット30に設けられる洗浄ブラシ32や洗浄液供給部34の数は、フレキシブル基板洗浄装置10に要求される洗浄能力に応じて適宜増減することが可能である。
【0042】
この実施形態では、フレキシブル基板100として、長さが約2000mm程度の大サイズのものが用いられているが、支持ドラム20の直径は約650mm程度に抑えられている。なお、処理されるフレキシブル基板100のサイズはこれに限定されるものではない。
【0043】
上述したフレキシブル基板洗浄装置10によれば、フレキシブル基板100の大きさや被洗浄面に必要される洗浄処理の度合いに関わらず、コンパクトな構成を実現することが可能になる。
【0044】
また、洗浄チャンバ14において、必要に応じて、洗浄処理やリンス処理等の複数の処理を行えたり、洗浄処理中において搬送ローラ50の搬送速度を遅く設定したりする必要がないため、無駄を省いた過不足ない洗浄処理を実現することが可能になる。
【0045】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
10-フレキシブル基板洗浄装置
12-導入部
14-洗浄チャンバ
16-排出部
20-支持ドラム
30-洗浄ユニット
32-洗浄ブラシ
34-洗浄液供給部
40-排液処理部
50-搬送ローラ
100-フレキシブル基板
142-洗浄槽
144-排液口