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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066026
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】大量調理施設用の大型調理器具保管器
(51)【国際特許分類】
   A47B 31/00 20060101AFI20240508BHJP
   A47B 77/04 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A47B31/00 G
A47B77/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175220
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】522173158
【氏名又は名称】株式会社高原の森
(74)【代理人】
【識別番号】100177747
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】山中 力
(57)【要約】
【課題】大量調理施設での衛生管理に関し、取り扱いが容易で、調理作業の効率と衛生管理の向上を共に損なわずにこれらを両立させるため、大量調理施設用の簡便で有用な大型調理器具保管器を実現する。
【解決手段】筒状の保護部と、その下縁側にあって大型調理器具の持ち手側を挿入する複数の挿入口を備える支持部と、これらを床面から所定の高さに保持する脚部とで構成される大型調理器具保管器である。脚部には脚車が設けられ、必要に応じて移動できる。調理者は、使用後に殺菌消毒をし、次回の使用まで、大型調理器具の持ち手を支持部の挿入口に上から下へ挿入し、これを保管する。大型調理器具の上側部は保護部によって囲まれ、持ち手の末端も床面から所定の高さで衛生的に保持される。また、脚部に対して保護部と支持部を昇降可能及び回転可能とし、大型調理器具を昇降及び傾斜させて更に床面から離れた衛生的な位置で大型調理器具を保管する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の保護部、
この保護部の下縁側に設けられて、複数の挿入口を備える薄板状の支持部、
前記保護部と前記支持部とを床面から所定の高さに保持し、下端に脚車を備える脚部を有し、
大量調理施設で使用される大型調理器具の持ち手を前記支持部の上から前記挿入口に下向きに挿入することで、前記保護部が前記大型調理器具の上側部を囲み込み、前記持ち手の下端が床面から所定の高さに保持された状態で前記大型調理器具を収納し、これを移動可能な状態で保管できることを特徴とする大量調理施設用の大型調理器具保管器。
【請求項2】
前記支持部の前記挿入口が正方形又は正円形であることを特徴とする請求項1に記載の大量調理施設用の大型調理器具保管器。
【請求項3】
前記大型調理器具の前記持ち手の下端を床面から所定の高さに保持するために、前記脚部に対して前記保護部と前記支持部とを上昇させて固定することができる昇降機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の大量調理施設用の大型調理器具保管器。
【請求項4】
前記大型調理器具の前記持ち手の下端を床面から所定の高さに保持するために、前記脚部に対して前記保護部と前記支持部とを傾斜させて固定することができる回転機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の大量調理施設用の大型調理器具保管器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
大量調理施設で使用される大型調理器具の衛生管理に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
給食サービスや食品の製造・加工・調理・販売等を行う食品等事業に係る大量調理施設では、衛生管理に関して様々な取り組みが行われている。その代表的なものの一つとして、食中毒の発生や異物混入などのリスクを全工程において把握し、重要工程の体系的な管理を通じて、把握したリスクを低減又は除去する「ハサップ」(HACCP)の手法が周知になっている。そして、2021年6月からは、原則的に全ての食品等事業者に対し、このハサップに沿った衛生管理の実施が義務付けられている。
また、1997年3月に厚生労働省によって策定された「大量調理施設衛生管理マニュアル」は、ハサップによる衛生管理と共に、大量調理施設における集団食中毒の予防に関し、その対策を推進する保健所等と実際に調理作業等を担う食品等事業者とが認識を共有して準拠すべき重要な判断基準となっている。
本件の発明者も大量調理施設での調理作業に従事し、公的機関の指導や助言を受けながら、現場での職務に携わる中で自ら気付いた課題への対応を検討しつつ、様々な業務改善の取り組みを行ってきた。大量調理施設で使用される多量の米飯や汁物を取り扱う「しゃもじ」や「おたま」等の杓子や、食品を掬い取るために持ち手の先端に網が付いた掬い網など、一般家庭で使用する調理器具とは取り扱いが異なる大型調理器具の衛生管理もその課題の一つであった。しかし、一般家庭用の技術や製品は、特許文献1や特許文献2の他にも多種多様なものが提案されているが、大量調理施設で多用される大型調理器具に好適であると共に、衛生管理と業務効率とを両立させたい現場の調理者の要求に即した既存の製品等は見当たらず、本件発明の実現について試行錯誤を行ってきた経緯がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-125555号公報
【特許文献2】特開2019-58522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大型の杓子や掬い網など、大量調理施設で日常的に多用される大型調理器具用の新たな保管器具を提供することである。
大量調理施設は集団食中毒の発生源にもなり得るため、その衛生管理に関しては、前記のマニュアルに基づいて、食品等事業者が自ら作業工程等を厳格に管理している。そして、何らかの改善が必要と思われる際には、同じマニュアルに準拠して、保健所等の公的機関による指導や助言が行われることがある。このマニュアルでは、二次汚染防止の取り組みとして、調理器具や食品等の取り扱いに関する詳細な規定が設けられている。例えば、「十分殺菌した後、乾燥させ、清潔な保管庫を用いるなどして衛生的に保管すること」や「取り扱いは、床面からの跳ね水等による汚染を防止するため、床面から60cm以上の場所で行うこと。ただし、跳ね水等からの直接汚染が防止できる食缶等で食品を取り扱う場合には、30cm以上の台にのせて行うこと」等の規定である。
本発明の大型調理器具保管器は、衛生面を考慮した床面からの安全な高さの確保など、前記の基準を確実に充足することが要求される大量調理施設での衛生管理に関して有用であることを目的として開発されたものである。そして、調理作業の効率と衛生管理の向上のいずれもを共に損なわずに両立させるため、取り扱いも容易である大量調理施設用の大型調理器具保管器を実現することが、本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この大型調理器具保管器は、筒状の保護部と、この保護部の下縁側に設けられて、大型調理器具の持ち手側が差し込まれる複数の正方形等の角形や正円形等の丸形をした挿入口を備えた薄板状の支持部と、その保護部と支持部とを床面から離れた所定の位置に保持する脚部によって構成される。また、この大型調理器具保管器は、調理や殺菌消毒など作業の必要性に応じて容易に移動させることを可能とするため、脚部には移動用の脚車が設けられている。
そして、使用者は、調理において用いられる杓子や掬い網等の大型調理器具や、使用後に殺菌消毒されて次の使用時まで暫くの間保管されるそれらを、この大型調理器具保管器の支持部に差し込んで保管する。より具体的には、それらの持ち手側を、支持部の挿入口にその上方から下向きに差し込むことになる。この時に、その持ち手側の反対側である大型調理器具の上側部は保護部によって囲み込まれ、持ち手の下端側も床面から所定の高さに維持された衛生的な状態で保持される。
また、本発明の大型調理器具保管器には、作業者が操作を行うことにより、脚部に対して保護部と支持部を上昇させ、又は、回転して傾斜させるため、付加機能としての昇降機構や回転機構を設けることも可能である。そして、このような付加機能を備えた大型調理器具保管器により、大型調理器具を上昇させ、又は、傾斜角を与え、その全体を床面から更に離れた高い位置で衛生的に保管することを可能とする。
【発明の効果】
【0006】
大型調理器具を保管する際には、その持ち手側を支持部に設けられた複数の角形又は丸形の挿入口に素早く差し込んで、これを容易に収納することができる。料理や滅菌消毒の際にも大型調理器具を取り出し易く、作業準備や後処理の必要に応じて大量調理施設内を自在に移動させることも可能であり、作業効率の向上が見込まれる。
大型調理器具の持ち手側の末端が、床面からの跳ね水等による汚染を効果的に回避できる所定の高さで安定して保持されるため、前記のマニュアル等で要求される衛生管理に関する安全基準を確実に確保することができる。
更には、大型調理器具保管器の保護部及び支持部を上昇させ、又は、これらを脚部に対して傾斜させることによって、大型調理器具がより効果的に衛生的な高さに保たれると共に、基準改定や現場状況に応じて保管状態の細やかな変更が可能となる。即ち、作業効率と衛生管理の向上を両立できる大量調理施設用の大型調理器具保管器となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】大型調理器具保管器の外観を表した斜視図である。
図2】大型調理器具保管器を上方から見た平面図である。
図3】大型調理器具保管器の使用状態を示す斜視図である。
図4】大型調理器具用の補助具である。
図5】大型調理器具保管器の使用状態を示す側面図である。
図6】異なる仕様で、保護部等を傾斜させた大型調理器具保管器の使用状態を表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を用いながら、本発明について説明する。
始めに、大型調理器具保管器1の全体的な構成である。
図1は、その基本的な構成要素の組み合わせと、それによってなる外観の一例を表した斜視図である。
この大型調理器具保管器1は、筒状の保護部2、平坦な支持部3、縦に長い脚部4、その下端にある脚車5の組み合わせによって構成されている。
なお、保護部2、支持部3、脚部4については、いずれも図示した形状に限定されるものではない。また、これらが一体化されたものでも良い。但し、大型調理器具保管器1の輸送等の利便性、そして、清掃や修繕等の保守管理の容易性から、これらを個別に分離できるものとし、必要に応じて自在に分解でき、また、容易に組立て可能にすることも有意義である。
【0009】
大型調理器具保管器1の大きさの目安としては、保護部2の上縁から脚車5が接する床面までの高さを概ね90cmとすることが考えられる。即ち、大型調理器具6の出し入れ等の容易性と、前記のマニュアル等で要求される衛生管理とを両立させるため、大型調理器具保管器1の最下部から最上部までの全高が、概ね成人の腰付近の高さになる見込みである。これにより、大型調理器具保管器1の移動時の取り回しや、大型調理器具6の取り扱いが非常に容易なものになる。但し、この全高の数値はあくまで一例のため、これを中心として変更される余地はある。
【0010】
次に、図2である。
これは、図1の大型調理器具保管器1を上方から見下ろした状態として表された平面図である。
両図では、大型調理器具保管器1の上方から見た場合に、正方形になっている保護部2の上辺と、同じく正方形になっている保護部2の下辺とが、ほぼ同じ大きさとして図示されている。しかし、これに収納しようとする大型調理器具6の取り回しのし易さという観点からは、保護部2の上方を下方よりやや大きめとし、上方に向けてやや拡がるような形状にしても良い。
【0011】
図1のように、四角筒状の保護部2の下縁側には、平たく四角い網状の支持部3が横に配されている。図2では、格子状になっている支持部3において、四角形の網目がそれぞれに挿入口になって、これに大型調理器具6の持ち手が下向きに差し込まれる。そして、衛生的な所定の高さで保持されることになる。
また、この図2においては、正方形の保護部2の四方の縁と重なって、脚部4の一部を視認することができる。また、脚部4の四隅には、大型調理器具保管器1を移動させるための4つの脚車5が配されている。
【0012】
次に、大型調理器具保管器1の個々の構成要素である保護部2・支持部3・脚部4・脚車5の各々について説明する。
まず始めに保護部2である。
図1の保護部2は、縦横の大きさに比べて深さが浅く、角筒状をした保護部2である。その四方向の各側面には、横向きで細長い複数のスリットが密に並んだものとして図示している。
その大きさは、成人であることを主として想定された調理人が、この大型調理器具保管器1を使用する際の大型調理器具6の取り回しの容易性を考慮すると、縦横がいずれも40cm程度の幅であり、筒の下縁から上縁までが概ね20cmの高さである。但し、この数値も一例であるため、これとは幅や高さが異なる保護部2であっても構わないし、保護部2の下縁を図1よりも更に下方に延長されたものにすることも可能である。
【0013】
この保護部2を作成する場合、その素材の選択や製造方法については、加工の容易性や計量化、そして、衛生上の観点から、軽金属や抗菌性のプラスチック等を用いて、図1のような所定の形状に成形することが考えられる。その際には、保護部2と次に説明をする支持部3とを、例えば籠状の形状にして一体的に成形しても良い。
また、図1等では、保護部2を脚部4の上に直立する角筒状に図示している。しかし、斜視図である図1で、支持部3を上方から見下ろした際のその形状、即ち、平面図である図2に示される支持部3の外形状を正円形や楕円形とし、これに対応するように全体が丸みを帯びた円筒状の保護部2にしても構わない。更には、図1のように完全に直立させず、保護部2に予め緩い傾斜角を付与するものとしても良い。
【0014】
また、両図では図示していないが、保護部2を、支持部3に収納された大型調理器具6と共に、それらの上方から被覆するカバーや蓋部を設けた大型調理器具保管器1にしても良い。その際には、カバー等が保護部2から自在に分離できる仕様にすることや、蝶番のような連結手段によって保護部2とカバー等とが可動的に連結された仕様にすることも可能である。
【0015】
但し、大型調理器具保管器1は、調理作業の終了後に殺菌消毒された大型調理器具6を次に使用する時まで、例えば翌日の調理までの間、衛生的な環境下において乾燥させた状態のまま、一時的に保管しようとするものである。
また、調理作業を行う際には、杓子や掬い網等の大型調理器具6が格納された状態のまま、大型調理器具保管器1を調理現場まで移動させて、これから取り出した大型調理器具6を使用することになる。そして、大型調理器具6の使用後には、次の使用に備えてこれを殺菌消毒し、衛生的な状態で保つため、再び大型調理器具保管器1を移動させるものである。
主に、このような使用状況が想定され、そもそも支持部3には上下に開放された挿入口が多数設けられることから、必ずしも保護部2をその内側と外部とで厳格に遮断する必要性は高くはない。そのため、大型調理器具保管器1のカバー等に関しては、使用状況に対応して必要な際に追加されるべきものと考えられ、一律に必須の構成要素になるものではない。
【0016】
しかし、異なる使用環境を様々に考慮して、これまで説明したものとは異なる仕様の大型調理器具保管器1にすることも当然ながら可能である。例えば、保管時の通風性や軽量化のため、図1のような複数のスリットを保護部2の側面に設ける他にも、これを網目のような形状にすること、又は、多数の貫通孔を適宜に配することなども考えられる。
また、これらの考えとは逆に、保護部2の側面に透明アクリル板を利用するなどして内側に外光を取り入れつつ、内部を確認できると共に外部からの埃や塵等の侵入を遮断するものとしても良い。このような場合には、図示していないカバー等についても、保護部2と同じく透明で外側と内側とを遮断するものとし、保護部2及び支持部3の全体を上方から被覆するものにする。
【0017】
次に、支持部3である。
図2の支持部3は、大型調理器具6との当接が柔らかになるように、断面が丸みを帯びた細長い金属線等を格子状に編んだような形状の部品又は部位として、目が粗い金網状に図示されている。その網目がそれぞれに大型調理器具6の持ち手側を差し込むための挿入口になるが、図2ではそれらの挿入口が支持部3の縁近くまで、保護部2の側面まで至るように規則的に配されている。
図2で正方形に図示された挿入口は、縦横が共に5cm程度の大きさであるため、この挿入口の対角線の長さは約7cmとなる。そして、使用者は、杓子等の大型調理器具6の持ち手側を容易にこの挿入口に差し入れることができ、容易に抜き出すこともできる。
このような形状の挿入口を備える支持部3であり、図2のように8行8列の格子状に挿入口が配された支持部3の場合、その全体的な大きさは縦横共に40cm程度になっている。
【0018】
なお、このような支持部3の形状や大きさ、そして、これに設けられる挿入口の形状や大きさも、大型調理器具保管器1の仕様の一つである。図2のような薄い網状のものではなく、薄板状の支持部3に複数の挿入口を設けたものでも良く、必ずしも図2のように支持部3の縁近くまで密に挿入口を設ける必要もない。また、挿入口の他の例としては、直径5cmから7cm程度の丸い貫通孔として、これを支持部3に複数かつ規則的に配したものにしても良い。
この時、挿入口を正方形や正円形にすることで、使用者は大型調理器具6の出し入れの際に、挿入口の向きに気を遣うことなく、支持部3への差し入れや抜き出しを容易に行うことが可能になる。
また、図2のように保護部2の側面の近傍まで、即ち、支持部3の縁近くまで、挿入口を広く密に設けることは、下方からの通風の向上によって保管される大型調理器具6が乾燥し易くなるため、衛生管理の上で有用な点になる。
【0019】
大型調理器具保管器1には、大量調理施設用で多用される杓子や掬い網等の大型調理器具6を保管する。
図3は、図1の大型調理器具保管器1に2本の大型杓子が保管されている状態を図示したものである。
杓子にも大きさの違いはあるが、一般的な大きさとしては、長さが75cm程度、上方の薄く扁平になったヘラの部分で15cm程度の幅、持ち手は場所によって異なるが概ね4cm前後の幅になることが多い。
図3のように、支持部3の挿入口には杓子の持ち手側が差し込まれており、その下端は床面から離れた位置で維持される。そして、杓子のヘラの部分は保護部2によって周りを囲まれながらも、通気性の良い環境下で保管されている。
この時、杓子の持ち手が下側になって、その反対側で食品と直に接するヘラ側が床面から更に離れた上方にある状態で、大型調理器具6が衛生的に保管されることになる。
【0020】
ところで、大型調理器具6に関しては、掬い網等の金属製のものの他にも、杓子等では木製のものも多く、その取り扱いによっては、支持部3と数多く激しく当接することで損傷し、剥離した小木片が食品に混入するリスクも否定できないところである。
そのため、支持部3が硬質素材である場合、頻繁かつ粗雑に使用されかねない大型調理器具6を適切に保護するため、大型調理器具6が挿入口に差し込まれる際に、その持ち手が損傷しないように、支持部3を柔軟かつ強度を備えた素材で被覆することが考えられる。若しくは、支持部3と大型調理器具6が数多く接触しても、これらが共に傷付き難いように、両者の当接が柔らかく滑らかになるように滑らかに成形した貫通孔を設ける支持部3とする。そして、そのような支持部3を保護部2に適宜に組み込んで、消耗の度合いや使用期間を考慮して、必要に応じて自在に交換できる仕様にしても良い。
【0021】
また、支持部3と大型調理器具6を保護して損傷を防ぐため、また、支持部3で大型調理器具6を所定の正しい高さに維持するため、大型調理器具6に図4のような補助具7を装着してから、大型調理器具6の持ち手側を支持部3に差し込むことも有用である。図4の補助具7は、片側が開放されるU字型のものであるが、容易に抜け落ちないように閉じ具によって大型調理器具6に固定されている。なお、この補助具7の形状や構成も一つの例である。
【0022】
次に脚部4及び脚車5である。
脚部4についても、図示された形状に限らない。製造のし易さや適正なコストの観点からは、その素材として金属や硬質プラスチックを選択することが考えられる。保護部2及び支持部3、そして、収納される大型調理器具6との間で大きさ及び重量のバランスが重要であり、容易に転倒しないような形状であることが求められる。脚部4と脚車5を併せた高さは、70cm程度となることが多い。
各図では、保護部2及び支持部3を所定の高さで安定的に維持するために、それらの四隅を均等に支持する標準的な構成として図示されている。
そして、大型調理器具保管器1を必要に応じて容易に移動できるように、脚部4の下方には移動手段となる脚車5を設けており、作業員は保護部2や脚部4に手を掛けて、これを移動させることになる。
この脚車5は、作業員が大型調理器具保管器1に加える力によって、その進行方向を容易に転回できるものとされ、作業時の安定性を向上させて、使用状況に応じてその位置を固定するために、足踏式等のブレーキなども設けられる。
【0023】
大型調理器具保管器1で大型の杓子を保管している状態を図3に示したが、それを横から見た側面図が図5である。
2本の杓子はほぼ同じ大きさであるため、それらの持ち手の下端が床面から同じ高さで維持されている。そのため、床面からの水の跳ね返りなどによって杓子の持ち手が汚染されることはなく、衛生的な状態において保管される。
そして、食品の具材等と直に接触する杓子や掬い網の上側部は床面から更に離れた高い位置にあるため、大型調理器具6は全体として、より衛生的な状態に維持される。また、図示してはいないが、大型調理器具保管器1の脚部4の下方には、大型調理器具6の下端と床面との間を遮るため、縁部に上向きの返しを付けた板状の遮蔽構造を設けることも有用な一案である。
【0024】
更に、大型調理器具保管器1の付加機能として、保護部2及び支持部3を必要に応じて持ち上げる昇降機構を追加した仕様にすることも可能である。図示してはいないが、保護部2及び支持部3と脚部4とを分離できる構造とし、使用者が昇降機構を操作することによって、これらの相対的な位置関係が変更されるものである。そして、脚部4から保護部2及び支持部3を上昇させて所定の高さに維持することで、大型調理器具6が更に床面より離れた衛生的な高い位置に保管されることになる。
これを実現する手段としては、使用者が操作することによって機械的に昇降させるもの、モーター及び電源若しくは油圧や空圧などを利用して昇降を補助するものなど、様々な昇降機構を採用することができる。
【0025】
図6は、図1の大型調理器具保管器1とは形状を異にするものの一例である。
前記のように、保護部2が円筒型であり、円盤状の支持部3に多数の正円形の挿入口が設けられた大型調理器具保管器1となっている。脚部4等の形状も図1の大型調理器具保管器1とは異なったものである。
また、支持部3の挿入口に差し込まれている杓子には、前記の補助具7が取り付けられている。大型調理器具6の保護と併せて、これを所定の高さに正しく維持するために、大型調理器具保管器1の機能を補完する付加部品である。
【0026】
更に、図6に示した大型調理器具保管器1では、脚部4に対して保護部2と支持部3を傾斜させることが可能な仕様になっている。使用者がレバーを操作することで、必要に応じて多段階又は連続的に傾斜角が変化し、それを維持することが可能な仕組みである。なお、このような動作を可能にする回転機構8としては、例えば、保護部2と支持部3の傾斜を誘導するガイドパイプを脚部4の両側に設けることが一案である。そして、使用者のレバー操作に応じて、保護部2等がガイドパイプに沿って傾斜し、これに設けられた複数の停止位置で任意に固定できるものである。この回転機構8は、昇降機構と同じく、人力で機械的に駆動するものや、電気や圧力を補助的な動力源にするものなどが考えられる。
また、昇降機構と回転機構8を兼備する大型調理器具保管器1にすることも可能かつ有用である。
【0027】
図6のように、回転機構8を備える大型調理器具保管器1の場合、保護部2等と共に大型調理器具6が傾斜するため、作業中の大型調理器具6の出し入れが容易になって、作業効率が向上する利点がある。また、大型調理器具6の持ち手側が床面より更に上方に移動すると共に、その全体がより衛生的な高さにおいて維持される。
また、昇降機構や回転機構8により、大型調理器具6を保持する位置を容易に変えることができるため、ガイドライン等の基準が変更された場合や、施設の状況等に応じて、保管方法を柔軟に変更することが可能になる。
【0028】
作業員がこの大型調理器具保管器1を使用する場合、概ね次のような流れになるものと考えられる。
調理作業が終了した後、作業員は大型調理器具6を洗浄し、殺菌消毒を行った後に、大型調理器具6の持ち手側を支持部3の挿入口に差し込んでこれを大型調理器具保管器1で保管する。大型調理器具6は、風通しのよい状態で、床面からの高さも確保されているため、乾燥した状態で衛生的に保管される。
回転機構8が付属する仕様の大型調理器具保管器1の場合、保護部2及び支持部3と共に、大型調理器具6が傾斜した状態となって、全体として床面から離れた高さで安全かつ衛生的に保管される。
【0029】
そして、次の調理作業時には、大型調理器具6が保管された大型調理器具保管器1を作業現場に移動させて、これを使用する。
回転機構8がある大型調理器具保管器1の場合、移動時には保護部2等の傾斜を戻して保護部2を直立させ、コンパクトな状態で移動を行う。
その後、作業現場で大型調理器具6を使用する際には、作業を行い易い角度に回転機構8を操作する。傾斜角が付与されることによって、大型調理器具6の取り出しや差し込みが容易になり、作業中も床面から大型調理器具6までの高さが適切に維持された安全な状態で、効率的に調理作業等を行うことができる。
そして、作業の終了後には、洗浄等の後処理を行う場所に大型調理器具保管器1を再び移動させ、大型調理器具6の洗浄及び殺菌消毒を行って、次の作業のために衛生的な環境下で大型調理器具6を保管するものである。
【符号の説明】
【0030】
1 大型調理器具保管器
2 保護部
3 支持部
4 脚部
5 脚車
6 大型調理器具
7 補助具
8 回転機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6