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特開2024-66027保護スーツの製造方法およびそれによって得られる保護スーツ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066027
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】保護スーツの製造方法およびそれによって得られる保護スーツ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/012 20060101AFI20240508BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240508BHJP
   A41D 31/10 20190101ALI20240508BHJP
   A41D 31/02 20190101ALI20240508BHJP
   D06M 17/06 20060101ALI20240508BHJP
   D06M 17/00 20060101ALI20240508BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20240508BHJP
   D06M 23/16 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A41D13/012
A41D31/00 502Q
A41D31/10
A41D31/02 Z
D06M17/06
D06M17/00 H
D06M15/693
D06M23/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175222
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】399018828
【氏名又は名称】株式会社瀧原工業
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】名倉 進
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
4L031
4L032
4L033
【Fターム(参考)】
3B011AA04
3B011AB03
3B011AB12
3B011AC08
3B011AC09
3B011AC17
3B211AA04
3B211AB03
3B211AB12
3B211AC08
3B211AC09
3B211AC17
4L031AB31
4L031BA31
4L031DA19
4L032AA05
4L032AB01
4L032AB03
4L032AC01
4L032BA02
4L032BB02
4L032BD05
4L032DA01
4L032EA00
4L032EA01
4L033AB04
4L033AC03
4L033CA68
(57)【要約】
【課題】簡単な工程で外観の良好な保護スーツが得られる保護スーツの製造方法を提供する。
【解決手段】スーツ生地10を裁断して複数のパーツ20を得る裁断工程と、上記複数のパーツ20を組立てて立体的なスーツ基体30を形成する組立て工程と、上記スーツ基体30の表面に、ゴム系塗料41を噴霧して乾燥固化させ、ゴムによる防水層40を形成する防水層形成工程とを行う。ゴム系塗料41の噴霧および乾燥固化という極めて簡素な工程で保護スーツを得ることができる。得られた保護スーツは、全体に表面が滑らかで外観的に良好なうえ、引っかかりによる破損の原因ができにくい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーツ生地を裁断して複数のパーツを得る裁断工程と、
上記複数のパーツを組立てて立体的なスーツ基体を形成する組立て工程と、
上記スーツ基体の表面に、ゴム系塗料を噴霧して乾燥固化させ、ゴムによる防水層を形成する防水層形成工程とを行う
ことを特徴とする保護スーツの製造方法。
【請求項2】
上記スーツ生地は、発泡クロロプレンゴムからなる所定厚みのクロロプレン層と、上記クロロプレン層の少なくとも一方の面に貼り付けられたジャージ生地からなるジャージ層とを有する
請求項1記載の保護スーツの製造方法。
【請求項3】
上記組立て工程は、上記パーツにおける上記ジャージ層の面がスーツ基体の表面側になるよう、上記複数のパーツを組立て、
上記防水層形成工程は、上記ジャージ層の面に対して上記防水層を形成する
請求項2記載の保護スーツの製造方法。
【請求項4】
スーツ生地が裁断されてなる複数のパーツが組立てられて立体的なスーツ基体が形成され、上記スーツ基体の表面に、ゴムによる防水層が形成されている
ことを特徴とする保護スーツ。
【請求項5】
上記スーツ生地は、発泡クロロプレンゴムからなる所定厚みのクロロプレン層と、上記クロロプレン層の少なくとも一方の面にジャージ生地が貼り付けられてなるジャージ層とを有する
請求項4記載の保護スーツ。
【請求項6】
上記スーツ基体は、上記パーツにおける上記ジャージ層の面の側がスーツ基体の表面側になるよう上記複数のパーツが配置され、
上記ジャージ層の面に対して上記防水層が形成されている
請求項5記載の保護スーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜水作業やマリンスポーツに用いるドライスーツ等の産業用防護服に用いることができる保護スーツの製造方法およびそれによって得られる保護スーツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、潜水作業やマリンスポーツの際には、保護スーツが着用される。上記保護スーツには、内部に水が浸入するウエットスーツと、内部に水が侵入しないドライスーツがあり、用途によって使い分けられる。上記ドライスーツは特に、着用者の身体が水に触れないため、水温が低い時期や汚染された水域での使用に適し、産業用防護服として用いられている。
【0003】
上記保護スーツは、スーツ用生地を裁断して得られた複数のパーツを、スーツ状の立体に組み上げることにより形成される。上記スーツ用生地は、厚み5mm程度の発泡クロロプレンゴム生地が用いられ、強度を確保するために、その表面および裏面にニットのジャージ生地が貼り付け加工される。
【0004】
上記のような保護スーツに関する先行技術文献として、本出願人は、下記の特許文献1および2を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-39105号公報
【特許文献2】特許第6158745号公報
【0006】
上記特許文献1は、保護スーツに関するものであり、下記の記載がある。
[請求項1]
複数個のパーツの端面を接合することによって立体形状に構成される保護スーツであって、
前記パーツの接合部分に沿って設けられて前記パーツの接合部分から水が浸入することを防止するテープ部材を備える、保護スーツ。
[0012]
保護スーツ10は、サーフィンやシュノーケリング等の種々のウォータースポーツ、または、水中土木やレスキュー等の水中作業において着用される。以下において保護スーツ10は、ウエットスーツであるものとして説明する。
図1乃至図3に示すように、保護スーツ10は、着用者の身体に密着するように伸縮性および弾力性に富む素材(主に、ゴム素材)の複数個のパーツ(例えば、襟部、前身頃、後身頃、腕部、又部、または、足部等)1A~1Nから構成される。保護スーツ10は、パーツ1A~1Nの端面(断面)に接着剤11を塗布して接合することによって、立体形状に構成される。また、保護スーツ10では、接着剤11を塗布することに加えて、パーツ1A~1Nの接合部分(端部同士)を縫い合わせる構成とすることもできる。
[0013]
保護スーツ10は、テープ部材12を備える。
テープ部材12は、防水性を有し、パーツ1A~1Nの接合部分から保護スーツ10内に水が浸入することを防止する。テープ部材12は、このように、テープ部材12を備える、保護スーツ10では、パーツの接合部分から水が浸入することを確実に防止することができる。
【0007】
上記特許文献2は、運動用保護衣に関するものであり、下記の記載がある。
[0050]
<第一の製造方法>
まず、伸縮性と弾力性に富むシート状生地として、内部に小さな気泡を多数含む発泡性ゴム材からなるものを用い、このシート状生地を着用者の体型の凹凸に適合するように立体裁断して複数の生地片11・・11を準備する。
次いで、この生地片11の裁断面12に接着剤3を塗布する。
[0052]
引き続き、塗布した接着剤3の流動性が失われる程度に乾燥させた後、生地片11の裁断面12同士が突き合うように他の生地片11と組み合わせ、これらの生地片11,11同士を縫合せずに圧着してそれぞれ接合することで一体とした立体的な着衣基体1を成形する。ここで、接着剤3を乾燥させるのは、接着剤3が流動性を有している間は接着力が低く、生地片11,11同士の接合が解除され易いが、接着剤3を適度に乾燥させることで初期接着力が高まり、圧着し易くなるためである。
[0053]
また、立体的に成形した着衣基体1の表面(一面側)13に、接着剤4を塗布する。接着剤4の塗布は、たとえば、スプレーガンで噴霧することにより行うことができる。この接着剤4としては、たとえば、接着剤3と同じ反応硬化型の加硫接着剤とすることができる。
さらに、被覆材2として、伸張することで着衣基体1に適合する形状となり、継ぎ目なく一体的に成形された伸縮性を有する織編物からなるナイロンジャージ生地を用い、このナイロンジャージ生地2を接着剤4が乾燥する前に着衣基体1に被覆する。
[0054]
そして、被覆材2を被覆した着衣基体1を室温で放置し、接着剤4を架橋させることにより、着衣基体1と被覆材2とが接着剤4を用いて貼着された身体保護製品10を製造することができる。なお、ここで室温とは、外部系から加熱も冷却もしていない状態のことをいう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1では、パーツの接合部分に沿って水の浸入を防止するテープ部材が貼り付けられている。人体を覆う保護スーツは多数のパーツから構成されているため、上記のようなテープ部材は、保護スーツを着用した全身の表面に多数の凸条として浮き出ることになる。上記特許文献1の技術では、上記のような多数の凸条が、当然のことながら外観を悪くし、水中で動作を行う際の引っかかりとなり、破損の原因をつくりかねない。
【0009】
上記特許文献2では、生地片11,11を組み合わせて立体的な着衣基体1を成形したのち、その着衣基体1に被覆材2を被せることが行われる。上記被覆材2は、継ぎ目なく一体的に成形された伸縮性を有する織編物からなるナイロンジャージ生地である。上記特許文献2の技術では、上記のような被覆材2を準備し、それを着衣基体1に被せるという工程が必要で極めて高コストである。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、つぎの目的をもってなされたものである。
簡単な工程で外観の良好な保護スーツが得られる保護スーツの製造方法およびそれによって得られる保護スーツを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の保護スーツの製造方法は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
スーツ生地を裁断して複数のパーツを得る裁断工程と、
上記複数のパーツを組立てて立体的なスーツ基体を形成する組立て工程と、
上記スーツ基体の表面に、ゴム系塗料を噴霧して乾燥固化させ、ゴムによる防水層を形成する防水層形成工程とを行う。
【0012】
請求項2記載の保護スーツの製造方法は、請求項1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記スーツ生地は、発泡クロロプレンゴムからなる所定厚みのクロロプレン層と、上記クロロプレン層の少なくとも一方の面に貼り付けられたジャージ生地からなるジャージ層とを有する。
【0013】
請求項3記載の保護スーツの製造方法は、請求項2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記組立て工程は、上記パーツにおける上記ジャージ層の面がスーツ基体の表面側になるよう、上記複数のパーツを組立て、
上記防水層形成工程は、上記ジャージ層の面に対して上記防水層を形成する。
【0014】
請求項4記載の保護スーツは、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
スーツ生地が裁断されてなる複数のパーツが組立てられて立体的なスーツ基体が形成され、上記スーツ基体の表面に、ゴムによる防水層が形成されている。
【0015】
請求項5記載の保護スーツは、請求項4記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記スーツ生地は、発泡クロロプレンゴムからなる所定厚みのクロロプレン層と、上記クロロプレン層の少なくとも一方の面にジャージ生地が貼り付けられてなるジャージ層とを有する。
【0016】
請求項6記載の保護スーツは、請求項5記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記スーツ基体は、上記パーツにおける上記ジャージ層の面の側がスーツ基体の表面側になるよう上記複数のパーツが配置され、
上記ジャージ層の面に対して上記防水層が形成されている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の保護スーツの製造方法は、裁断工程と組立て工程と防水層形成工程とを行う。上記裁断工程は、スーツ生地を裁断して複数のパーツを得る。上記組立て工程は、上記複数のパーツを組立てて立体的なスーツ基体を形成する。上記防水層形成工程は、上記スーツ基体の表面に、ゴム系塗料を噴霧して乾燥固化させ、ゴムによる防水層を形成する。
本発明では、上記特許文献2のように被覆材を準備して着衣基体に被せるという工程が不要で、ゴム系塗料の噴霧および乾燥固化という極めて簡素な工程で保護スーツを得ることができる。得られた保護スーツは、上記特許文献1のような凸状が表面に浮き出ることがなく全体に滑らかで、外観的に良好なうえ、引っかかりによる破損の原因ができにくい。噴霧という簡易な工程により、強度と防水性に優れた保護スーツが得られる。
【0018】
請求項2記載の保護スーツの製造方法は、上記スーツ生地は、発泡クロロプレンゴムからなる所定厚みのクロロプレン層と、上記クロロプレン層の少なくとも一方の面に貼り付けられたジャージ生地からなるジャージ層とを有する。
上記ジャージ層の面に対してゴム系塗料を噴霧して乾燥固化させることができるため、ゴムによる防水層に対してジャージ生地がアンカー効果を発揮し、密着性を良好にできる。
【0019】
請求項3記載の保護スーツの製造方法は、上記組立て工程は、上記パーツにおける上記ジャージ層の面がスーツ基体の表面側になるよう、上記複数のパーツを組立て、
上記防水層形成工程は、上記ジャージ層の面に対して上記防水層を形成する。
上記ジャージ層の面に対してゴム系塗料を噴霧して乾燥固化させるため、ゴムによる防水層に対してジャージ生地がアンカー効果を発揮し、密着性が良好になる。
【0020】
請求項4記載の保護スーツは、スーツ生地が裁断されてなる複数のパーツが組立てられて立体的なスーツ基体が形成され、上記スーツ基体の表面に、ゴムによる防水層が形成されている。
本発明の保護スーツは、上記特許文献1のような凸状が表面に浮き出ることがなく全体に滑らかで、外観的に良好なうえ、引っかかりによる破損の原因ができにくい。強度と防水性に優れた保護スーツである。
【0021】
請求項5記載の保護スーツは、上記スーツ生地は、発泡クロロプレンゴムからなる所定厚みのクロロプレン層と、上記クロロプレン層の少なくとも一方の面にジャージ生地が貼り付けられてなるジャージ層とを有する。
上記ジャージ層の面に対してゴム系塗料を噴霧して乾燥固化させることができるため、ゴムによる防水層に対してジャージ生地がアンカー効果を発揮し、密着性を良好にできる。
【0022】
請求項6記載の保護スーツは、上記スーツ基体は、上記パーツにおける上記ジャージ層の面の側がスーツ基体の表面側になるよう上記複数のパーツが配置され、上記ジャージ層の面に対して上記防水層が形成されている。
上記ジャージ層の面に対してゴム系塗料を噴霧して乾燥固化させるため、ゴムによる防水層に対してジャージ生地がアンカー効果を発揮し、密着性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態の保護スーツの製造方法を説明する図である。
図2】上記実施形態の保護スーツの製造方法を説明する図である。
図3】上記実施形態の保護スーツの製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の保護スーツの製造方法およびそれによって得られる保護スーツの実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、本発明をドライスーツに適用した例を説明するが、本発明はウエットスーツに対して適用することも可能である。
【0025】
◆製造方法の説明
図1図3は、本発明の実施形態の保護スーツの製造方法を説明する図である。
【0026】
図1(A)は、スーツ生地10の平面図、図1(B)はスーツ生地10の断面図である。
【0027】
〔スーツ生地10〕
上記スーツ生地10は、この例では長方形を呈する所定厚みの板状である。上記スーツ生地10は、クロロプレン層11とジャージ層12を有した積層構造である。
【0028】
上記クロロプレン層11は、所定厚みの発泡クロロプレンゴムからなる板状材である。上記クロロプレン層11の厚みは、たとえば5mm以下程度に設定することができる。保護スーツを着用したときの動きやすさを向上させるには薄い方がよく、たとえば3mm以下、2mm以下等の薄いものを用いることができる。厚みが薄いことによる保温性の低下は、インナーウェアの着用によって解消できる。
【0029】
上記ジャージ層12は、上記クロロプレン層11に貼り付けられたジャージ生地からなる。この例では、上記ジャージ層12が上記クロロプレン層11の表面と裏面の両面に形成されている。上記ジャージ層12は、上記クロロプレン層11の少なくとも表面に形成されていればよい趣旨である。上記ジャージ層12を構成するジャージ生地は、合成繊維による編んだニット生地が用いられる。上記ジャージ生地として好ましくは、一般に天竺と呼ばれ柔らかく伸縮性に富んだ丸編みのニット生地が用いられる。上記合成繊維としては、たとえば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエステルとポリウレタンの混合繊維等を用いることができる。上記ジャージ層12は、上記ニット生地を上記クロロプレン層11の片面に接着剤で貼り付けることにより形成することができる。
【0030】
上記ゴム系塗料41として後述するように水性のラテックス塗料を用いる場合、上記ジャージ生地として親水性の繊維から構成される生地を用いるのが好ましい。
【0031】
本実施形態の製法では、上記スーツ生地10を準備し、裁断工程、組立て工程、防水層形成工程を行う。
【0032】
〔裁断工程〕
上記裁断工程は、上記スーツ生地10を裁断して複数のパーツ20を得る。上記裁断工程では、上記スーツ生地10を所定のパターンに裁断してパーツ20を得るものである。上記パーツ20は、スーツに組立てたときの部位に応じた形状に裁断される。
【0033】
図1(C)に上記パーツ20の一例を示す。図示した例は前腕部に相当するパーツ20であり、扇形環状を呈している。両側の直線部21同士を突き合せるよう筒状に丸め、前腕部を通す部分を形成する。
【0034】
〔組立て工程〕
上記組立て工程は、上記複数のパーツ20を組立てて立体的なスーツ基体30を形成する。
図2は、スーツ基体30の一例を示す図である。
上記スーツ基体30において、少なくとも上記防水層形成工程が終了するまでのあいだ、スーツ基体30の立体的形状を保持するために各パーツ20の継ぎ目31を仮止めする仮止め処理を行うことができる。上記仮止め処理は、たとえば接着剤による接着や縫製による縫合等によって実施することができる。
【0035】
上記組立て工程は、上記パーツ20における上記ジャージ層12の側がスーツ基体30の表面側になるよう、上記複数のパーツ20を組立てる。この例では、上記スーツ基体30の裏側(着用したときに人体に面する側である)もジャージ層12である。上記スーツ基体30の裏側は、ジャージ層12が形成されていないスキン面とすることもできる。この場合、上記スキン面には人体側との滑りを良好にする滑り加工を施すことができる。
【0036】
本実施形態では、上記クロロプレン層11の少なくとも表面側に上記ジャージ層12が形成されたパーツ20を組み立てる。上記の構成のパーツ20は防水層が形成されていないので柔らかく、上記組立て工程を行いやすい。
【0037】
〔防水層形成工程〕
図3(A)(B)(C)は、上記防水層形成工程を説明する図である。
上記防水層形成工程は、上記スーツ基体30の表面に、ゴム系塗料41を噴霧して乾燥固化させ、ゴムによる防水層40を形成する。
【0038】
図3(A)は、スーツ基体30の断面図である。上記スーツ基体30のパーツ20同士のあいだに継ぎ目31が形成されている。上述した仮止めは図示していない。
【0039】
図3(B)は、ゴム系塗料41を噴霧して、上記スーツ基体30の表面のジャージ層12に塗膜41Aを形成した状態である。表面のジャージ層12を形成するジャージ生地が上記塗膜41Aに覆われて見えなくなる程度まで上記ゴム系塗料41を噴霧する。
【0040】
図3(C)は、上記塗膜41Aを乾燥固化させて上記防水層40を形成した状態である。上記防水層40により、保護スーツに撥水性および防水性が付与される。表面のジャージ層12を形成するジャージ生地は、上記防水層40に埋もれて表面には出ない構造になる。これにより、表面が滑らかで外観が良好となり、引っかかりによる破損の原因もできにくい。
【0041】
上記クロロプレン層11の厚みが相対的に厚い場合に、上記塗膜41Aが薄くなるよう噴霧して、形成する防水層40を相対的に薄くすることができる。上記クロロプレン層11の厚みが相対的に薄い場合に、上記塗膜41Aが厚くなるよう噴霧して、形成する防水層40を相対的に厚くすることができる。上記塗膜41Aの厚さは、ゴム系塗料41を噴霧するノズル50の番手によって調節することができる。
【0042】
上記ゴム系塗料41は、たとえば水性のゴム系塗料を用いることができる。水性であれば、水を添加することで容易に、噴霧に適する粘度や濃度に調整することができる。
上記ゴム系塗料41としては、たとえば、株式会社レヂテックス社のクロロプレン系高濃度水性ラテックス型接着剤(たとえばCG-1501)を用いることができる。当該接着剤を本発明のゴム系塗料として上記スーツ基体30の表面に噴霧し、上記塗膜41Aを形成して乾燥固化させ、上記防水層40を形成する。これにより、優れた耐水性、耐溶剤性、耐酸化性、耐油性、耐候性をもつ保護スーツを得ることができる。
【0043】
上記防水層形成工程では、上記ジャージ層12のある表面に対して上記防水層40を形成する。上記防水層40により、上記継ぎ目31からスーツ内部への浸水を防止する。したがって、上述したように上記スーツ基体30における上記継ぎ目31は仮止め処理で十分である。また、上記スーツ基体30の表面に上記防水層40を形成するため、スーツ生地10の表面強度が向上し、耐引っ掻き性等の強度や耐久性をあげることができる。
【0044】
本実施形態の保護スーツの製造方法は、以下の作用効果を奏する。
【0045】
本実施形態の保護スーツの製造方法は、裁断工程と組立て工程と防水層形成工程とを行う。上記裁断工程は、スーツ生地10を裁断して複数のパーツ20を得る。上記組立て工程は、上記複数のパーツ20を組立てて立体的なスーツ基体30を形成する。上記防水層形成工程は、上記スーツ基体30の表面に、ゴム系塗料41を噴霧して乾燥固化させ、ゴムによる防水層40を形成する。
本実施形態では、上記特許文献2のように被覆材を準備して着衣基体に被せるという工程が不要で、ゴム系塗料41の噴霧および乾燥固化という極めて簡素な工程で保護スーツを得ることができる。得られた保護スーツは、上記特許文献1のような凸状が表面に浮き出ることがなく全体に滑らかで、外観的に良好なうえ、引っかかりによる破損の原因ができにくい。噴霧という簡易な工程により、強度と防水性に優れた保護スーツが得られる。
【0046】
本実施形態の保護スーツの製造方法は、上記スーツ生地10は、発泡クロロプレンゴムからなる所定厚みのクロロプレン層11と、上記クロロプレン層11の少なくとも一方の面に貼り付けられたジャージ生地からなるジャージ層12とを有する。
上記ジャージ層12の面に対してゴム系塗料41を噴霧して乾燥固化させることができるため、ゴムによる防水層40に対してジャージ生地がアンカー効果を発揮し、密着性を良好にできる。
【0047】
本実施形態の保護スーツの製造方法は、上記組立て工程は、上記パーツ20における上記ジャージ層12の面がスーツ基体30の表面側になるよう、上記複数のパーツ20を組立て、上記防水層形成工程は、上記ジャージ層12の面に対して上記防水層40を形成する。上記ジャージ層12の面に対してゴム系塗料41を噴霧して乾燥固化させるため、ゴムによる防水層40に対してジャージ生地がアンカー効果を発揮し、密着性が良好になる。
【0048】
◆保護スーツの説明
上記製造方法により、本発明の実施形態の保護スーツが得られる。
【0049】
本実施形態の保護スーツは、スーツ生地10が裁断されてなる複数のパーツ20が組立てられて立体的なスーツ基体30が形成され、上記スーツ基体30の表面に、ゴムによる防水層40が形成されている。
【0050】
上記スーツ生地10は、発泡クロロプレンゴムからなる所定厚みのクロロプレン層11と、上記クロロプレン層11の少なくとも一方の面にジャージ生地が貼り付けられてなるジャージ層12とを有する。
【0051】
上記スーツ基体30は、上記パーツ20における上記ジャージ層12の面の側がスーツ基体30の表面側になるよう上記複数のパーツ20が配置され、上記ジャージ層12の面に対して上記防水層が形成されている。
【0052】
本実施形態の保護スーツは、以下の作用効果を奏する。
【0053】
本実施形態の保護スーツは、スーツ生地10が裁断されてなる複数のパーツ20が組立てられて立体的なスーツ基体30が形成され、上記スーツ基体30の表面に、ゴムによる防水層40が形成されている。
本発明の保護スーツは、上記特許文献1のような凸状が表面に浮き出ることがなく全体に滑らかで、外観的に良好なうえ、引っかかりによる破損の原因ができにくい。強度と防水性に優れた保護スーツである。
【0054】
本実施形態の保護スーツは、上記スーツ生地10は、発泡クロロプレンゴムからなる所定厚みのクロロプレン層11と、上記クロロプレン層11の少なくとも一方の面にジャージ生地が貼り付けられてなるジャージ層12とを有する。
上記ジャージ層12の面に対してゴム系塗料41を噴霧して乾燥固化させることができるため、ゴムによる防水層40に対してジャージ生地がアンカー効果を発揮し、密着性を良好にできる。
【0055】
本実施形態の保護スーツは、上記スーツ基体30は、上記パーツ20における上記ジャージ層12の面の側がスーツ基体30の表面側になるよう上記複数のパーツ20が配置され、上記ジャージ層12の面に対して上記防水層40が形成されている。
上記ジャージ層12の面に対してゴム系塗料41を噴霧して乾燥固化させるため、ゴムによる防水層40に対してジャージ生地がアンカー効果を発揮し、密着性が良好になる。
【0056】
特に、上記スーツ基体30を構成する上記パーツ20におけるクロロプレン層11の厚みが、2mm以下(たとえば2mmや1.5mm)であれば、保護スーツ自体が軽くて柔らかいため、産業防護服として用いたときに動きやすい。本発明によれば、表面にゴムによる防水層40が形成されることから、軽さと柔らさに加えて高い防水性能を発揮する。
【0057】
◆変形例
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示の実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【0058】
たとえば、上記実施形態では、スーツ基体30の表のジャージ層12にゴム系塗料41を噴霧して防水層40を形成したが、その状態で裏返してさらに裏面にゴム系塗料41を噴霧して防水層40を形成するようにしてもよい。
【0059】
また、上記スーツ基体30における各パーツ20の継ぎ目31の裏面側に熱圧着テープを貼ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、潜水作業やマリンスポーツに用いるウエットスーツおよびドライスーツ等の産業用防護服に適用することができる。特に、石油タンクや薬品タンクの清掃、下水路のメンテナンス等に使用できる産業用防護服として好適である。
【符号の説明】
【0061】
10:スーツ生地
11:クロロプレン層
12:ジャージ層
20:パーツ
21:直線部
30:スーツ基体
31:継ぎ目
40:防水層
41:ゴム系塗料
41A:塗膜
50:ノズル
図1
図2
図3