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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066039
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/00 20060101AFI20240508BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20240508BHJP
   B60W 30/16 20200101ALI20240508BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20240508BHJP
【FI】
B62K25/00
B62J45/00
B60W30/16
B60W30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175254
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】中村 翔太
(72)【発明者】
【氏名】笠井 聡
(72)【発明者】
【氏名】杉田 健治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章浩
【テーマコード(参考)】
3D014
3D241
【Fターム(参考)】
3D014DD02
3D014DE22
3D014DF22
3D241BA02
3D241BA18
3D241BA51
3D241BC01
3D241BC06
3D241CA12
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC18
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DC02Z
(57)【要約】
【課題】クルーズコントロール中の乗り心地を向上させること。
【解決手段】自動二輪車1の制御装置60は、クルーズコントロールを実行する走行制御部61とサスペンション制御部63とを有している。サスペンション制御部63は、クルーズコントロールが開始されると、フロントフォーク20の減衰力および/またはリアサスペンション30の減衰力を減少させ、クルーズコントロールが終了すると、減少させたフロントフォーク20の減衰力および/またはリアサスペンション30の減衰力を増加させる制御を実行する。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに支持された前輪と、
前記車体フレームに支持された後輪と、
前記車体フレームと前記前輪とに接続された電子制御式のフロントサスペンションと、
前記車体フレームと前記後輪とに接続された電子制御式のリアサスペンションと、
前記車体フレームに支持された車速センサと、
前記車体フレームに支持され、先行車との間の車間距離を検出する先行車検出装置と、
前記フロントサスペンション、前記リアサスペンション、前記車速センサ、および前記先行車検出装置に接続された制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記車速センサにより検出される車速が設定速度となるように走行する制御、または、前記車速センサにより検出される車速が設定速度以下、かつ、前記先行車検出装置により検出される車間距離が設定距離となるように前記先行車に追従する制御、からなるクルーズコントロールを実行する走行制御部と、
前記クルーズコントロールが開始されると、前記フロントサスペンションの減衰力および/または前記リアサスペンションの減衰力を減少させ、前記クルーズコントロールが終了すると、減少させた前記フロントサスペンションの減衰力および/または前記リアサスペンションの減衰力を増加させる制御を実行するサスペンション制御部と、を有している、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記車体フレームに支持され、乗員により操作されるアクセル操作子を備え、
前記制御装置は、前記走行制御部が前記クルーズコントロールを実行しているときに前記アクセル操作子の操作が開始されると、前記走行制御部のクルーズコントロールおよび前記サスペンション制御部の前記制御を中止させ、前記アクセル操作子の操作が終了すると、前記走行制御部のクルーズコントロールおよび前記サスペンション制御部の前記制御を再開させる一時中止部を有している、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車との車間距離を検出する検出装置および電子制御式のサスペンションを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フロントフォークおよびリアサスペンション等のサスペンションとして、電子制御によって減衰力の調整が可能な電子制御式のサスペンションを備えた鞍乗型車両が知られている。また、車両前方を検出するレーダ装置を備えた鞍乗型車両が知られている。例えば特許第6842568号公報に、電子制御式のサスペンションおよびレーダ装置を備えた鞍乗型車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6842568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速道路などにおいて、設定された一定の速度で走行するような制御を行う鞍乗型車両が知られている。また、先行車の速度が設定速度以下の場合に、所定の車間距離を保ちながら先行車に追従するような制御を行う鞍乗型車両が知られている。以下、このような制御のことをクルーズコントロールと言う。このようなクルーズコントロールを実行している間は、鞍乗型車両は、車体の姿勢変化が少ない安定した走行を行っている。安定した走行を行っているときにサスペンションの減衰力が大きいと、路面からの振動が乗員に伝わりやすいため、乗り心地が低下する。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、クルーズコントロールを行う鞍乗型車両において、クルーズコントロール中の乗り心地を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される鞍乗型車両は、車体フレームと、前記車体フレームに支持された前輪と、前記車体フレームに支持された後輪と、前記車体フレームと前記前輪とに接続された電子制御式のフロントサスペンションと、前記車体フレームと前記後輪とに接続された電子制御式のリアサスペンションと、前記車体フレームに支持された車速センサと、前記車体フレームに支持され、先行車との間の車間距離を検出する先行車検出装置と、前記フロントサスペンション、前記リアサスペンション、前記車速センサ、および前記先行車検出装置に接続された制御装置と、を備える。前記制御装置は、走行制御部とサスペンション制御部とを有する。前記走行制御部は、前記車速センサにより検出される車速が設定速度となるように走行する制御、または、前記車速センサにより検出される車速が設定速度以下、かつ、前記先行車検出装置により検出される車間距離が設定距離となるように前記先行車に追従する制御、からなるクルーズコントロールを実行する。前記サスペンション制御部は、前記クルーズコントロールが開始されると、前記フロントサスペンションの減衰力および/または前記リアサスペンションの減衰力を減少させ、前記クルーズコントロールが終了すると、減少させた前記フロントサスペンションの減衰力および/または前記リアサスペンションの減衰力を増加させる制御を実行する。
【0007】
上記鞍乗型車両によれば、クルーズコントロールが開始されると、フロントサスペンションおよび/またはリアサスペンションの減衰力が減少するので、クルーズコントロールの実行中は、路面からの振動が乗員に伝わりにくい。そのため、クルーズコントロール中の乗り心地を向上させることができる。クルーズコントロールが終了すると、減少させたフロントサスペンションおよび/またはリアサスペンションの減衰力が増加するので、急制動時やコーナリング時等において、車両の挙動が安定する。
【0008】
前記鞍乗型車両は、前記車体フレームに支持され、乗員により操作されるアクセル操作子を備えていてもよい。前記制御装置は、前記走行制御部が前記クルーズコントロールを実行しているときに前記アクセル操作子の操作が開始されると、前記走行制御部のクルーズコントロールおよび前記サスペンション制御部の前記制御を中止させ、前記アクセル操作子の操作が終了すると、前記走行制御部のクルーズコントロールおよび前記サスペンション制御部の前記制御を再開させる一時中止部を有していてもよい。
【0009】
このことにより、クルーズコントロール中に乗員がアクセル操作子を操作すると、クルーズコントロールは一時的に中止され、鞍乗型車両は加速する。この際、フロントフォークおよび/またはリアサスペンションの減衰力が減少したままでは、加速に伴うピッチングが発生するおそれがある。しかし、乗員がアクセル操作子を操作すると、サスペンション制御部による減衰力を減少させる制御も一時的に中止されるので、フロントフォークおよび/またはリアサスペンションの減衰力は、上記制御前の減衰力に復帰する。したがって、乗員が自らの意思によって鞍乗型車両を加速させたときに、ピッチングを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クルーズコントロールを行う鞍乗型車両において、クルーズコントロール中の乗り心地を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る自動二輪車の側面図である。
図2図2は、自動二輪車の制御系の構成図である。
図3図3は、フロントフォークの構成図である。
図4図4は、リアサスペンションの構成図である。
図5図5は、制御装置の機能ブロック図である。
図6図6は、自動二輪車によって行われる制御の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、鞍乗型車両の一実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る鞍乗型車両は自動二輪車1である。
【0013】
図1に示すように、自動二輪車1は、車体フレーム10と、車体フレーム10に支持されたシート2と、車体フレーム10に支持された内燃機関(以下、エンジンという)6と、車体フレーム10に支持された前輪8および後輪9と、車体フレーム10と前輪8とに接続された電子制御式のフロントフォーク20と、車体フレーム10と後輪9とに接続された電子制御式のリアサスペンション30と、レーダ22と、を備えている。また、図2に示すように、自動二輪車1は、アクセル操作子の一例であるアクセルグリップ16Aと、後述するクルーズコントロールをON/OFFするクルーズコントロールスイッチ55と、自動二輪車1の速度を検出する車速センサ23と、自動二輪車1の加速度を検出する加速度センサ24と、前輪8を制動する前輪ブレーキ8Bと、後輪9を制動する後輪ブレーキ9Bと、制御装置60とを備えている。制御装置60は、アクセルグリップ16A、クルーズコントロールスイッチ55、レーダ22、車速センサ23、加速度センサ24、エンジン6、前輪ブレーキ8B、後輪ブレーキ9B、フロントフォーク20、およびリアサスペンション30と通信可能に接続されている。
【0014】
図1に示すように、車体フレーム10は、ヘッドパイプ11と、ヘッドパイプ11から後方に延びるメインフレーム12と、メインフレーム12から後方に延びるシートフレーム13とを備えている。シート2はシートフレーム13に支持されている。
【0015】
ヘッドパイプ11にはステアリングシャフト15が回転可能に挿入されている。ステアリングシャフト15の上端部には、ハンドル16が取り付けられている。図1では図示を省略するが、アクセルグリップ16Aはハンドル16の右端部に回転可能に取り付けられている。ステアリングシャフト15の上端部には、アッパーブラケット17が固定されている。ステアリングシャフト15の下端部には、アンダーブラケット18が固定されている。
【0016】
エンジン6は車体フレーム10に支持されている。エンジン6は、後輪9を駆動する駆動源の一例である。ただし、走行用の駆動源はエンジン6に限定されない。駆動源は電動モータを備えていてもよい。駆動源は、内燃機関および電動モータの両方を備えていてもよい。
【0017】
前輪8は、フロントフォーク20を介して車体フレーム10のヘッドパイプ11に支持されている。後輪9は、リアアーム19を介して車体フレーム10のメインフレーム12に支持されている。リアアーム19の前端部は、図示しないピボット軸により、メインフレーム12に揺動可能に接続されている。リアアーム19の後端部は、後輪9に接続されている。後輪9は、チェーン等の動力伝達部材(図示せず)によりエンジン6に接続されている。後輪9は駆動輪であり、エンジン6の駆動力を受けて回転する。
【0018】
フロントフォーク20は、電子制御式サスペンションの一例である。なお、電子制御式サスペンションとは、少なくとも電子制御により減衰力特性が調整されるサスペンションをいう。ここでは、フロントフォーク20は、電子制御により減衰力特性およびばね特性の両方が調整可能に構成されている。図3に示すように、フロントフォーク20は、アッパーブラケット17およびアンダーブラケット18に固定されている。フロントフォーク20は、左チューブ20Lおよび右チューブ20Rを備えている。
【0019】
左チューブ20Lおよび右チューブ20Rのそれぞれは、アウターチューブ25とインナーチューブ26とを備えている。アウターチューブ25は、アッパーブラケット17およびアンダーブラケット18に取り付けられている。インナーチューブ26の下端部は、アクスルブラケット29を介して前輪8の車軸8Aに連結されている。インナーチューブ26はアウターチューブ25の内部にスライド可能に挿入されている。インナーチューブ26がアウターチューブ25に対してスライドすることにより、フロントフォーク20は伸縮する。本実施形態では、インナーチューブ26がアウターチューブ25に対して下方に移動すると、フロントフォーク20は伸長する。インナーチューブ26がアウターチューブ25に対して上方に移動すると、フロントフォーク20は収縮する。下方、上方は、それぞれフロントフォーク20の伸長方向、収縮方向に対応する。
【0020】
図示は省略するが、右チューブ20Rおよび左チューブ20Lの内部には、フォークスプリングが配置されている。フォークスプリングは、フロントフォーク20のばねの一例である。
【0021】
右チューブ20Rは、電子制御されるオイル式のショックアブソーバ40を備えている。ショックアブソーバ40は、インナーチューブ26と、ロッド27と、ピストン28と、制御弁アッセンブリ41とを備えている。ロッド27は、アウターチューブ25に変位不能に固定されている。ピストン28は、ロッド27の下端部に接続されている。ピストン28はインナーチューブ26の内部に配置されている。インナーチューブ26の内部空間は、ピストン28によって、油室44と油室45とに区画されている。
【0022】
制御弁アッセンブリ41は、油室44および油室45に接続されている。制御弁アッセンブリ41は、油路46~47と、チェックバルブ50および51と、電子制御式のピストンバルブ52および53とを備えている。チェックバルブ50は、油路46と油路48との間に配置されている。チェックバルブ50は、油路48から油路46への油の流れを許容し、油路46から油路48への油の流れを規制する。チェックバルブ51は、油路47と油路48との間に配置されている。チェックバルブ51は、油路48から油路47への油の流れを許容し、油路47から油路48への油の流れを規制する。ピストンバルブ52は、油路46と油路48とを接続している。ピストンバルブ52は、油路46から油路48への油の流れを許容し、油路48から油路46への油の流れを規制する。ピストンバルブ53は、油路47と油路48とを接続している。ピストンバルブ53は、油路47から油路48への油の流れを許容し、油路48から油路47への油の流れを規制する。ピストンバルブ52および53は、例えばソレノイドバルブによって構成されている。
【0023】
油がピストンバルブ52を流れるときに、油は流動抵抗を受ける。ピストンバルブ52が発生させる流動抵抗は、制御装置60(詳しくは、後述する制御ユニット60B)によって制御される。制御装置60がピストンバルブ52の流動抵抗を大きくすると、油は油路46から油路48へ流れるときに、より多くの抵抗を受ける。これにより、油室45から制限弁アッセンブリ41を通じて油室44に油が流れにくくなるので、フロントフォーク20の伸長方向の減衰力が大きくなる。逆に、制御装置60がピストンバルブ52の流動抵抗を小さくすると、フロントフォーク20の伸長方向の減衰力は小さくなる。
【0024】
油がピストンバルブ53を流れるときに、油は流動抵抗を受ける。ピストンバルブ53が発生させる流動抵抗は、制御装置60によって制御される。制御装置60がピストンバルブ53の流動抵抗を大きくすると、油は油路47から油路48へ流れるときに、より多くの抵抗を受ける。これにより、油室44から制限弁アッセンブリ41を通じて油室45に油が流れにくくなるので、フロントフォーク20の収縮方向の減衰力が大きくなる。逆に、制御装置60がピストンバルブ53の流動抵抗を小さくすると、フロントフォーク20の収縮方向の減衰力は小さくなる。
【0025】
図1に示すように、リアサスペンション30の上端部32は、ブラケットを介してメインフレーム12に固定されている。リアサスペンション30の下端部33は、リアアーム19に固定された連結部材14に接続されている。リアサスペンション30は、車体フレーム10および後輪9に間接的に接続されている。
【0026】
リアサスペンション30は、電子制御式サスペンションの他の一例である。ここでは、リアサスペンション30は、電子制御により減衰力特性およびばね特性が調整可能に構成されている。リアサスペンション30は、図示しないばねを備えている。また、図4に示すように、リアサスペンション30は、電子制御されるオイル式のショックアブソーバ40Bを備えている。ショックアブソーバ40Bは、シリンダ37と、シリンダ37内に摺動可能に配置されたピストン36と、ピストン36から延びるロッド31とを備えている。シリンダ37の内部空間は、ピストン36により、油室34と油室35とに区画されている。ピストン36が下方に移動すると、リアサスペンション30は伸長する。ピストン36が上方に移動すると、リアサスペンション30は収縮する。下方、上方は、それぞれリアサスペンション30の伸長方向、収縮方向に対応する。
【0027】
リアサスペンション30は、フロントフォーク20の制御弁アッセンブリ41と同様の制御弁アッセンブリ41を備えている。以下では、フロントフォーク20の制御弁アッセンブリ41と同様の部分には同様の符号を付し、それらの説明は省略することとする。リアサスペンション30では、制御弁アッセンブリ41の油路46は、油室34に接続されている。制御弁アッセンブリ41の油路47は、油室35に接続されている。
【0028】
制御装置60(詳しくは、後述する制御ユニット60B)がピストンバルブ52の流動抵抗を大きくすると、油室34から制限弁アッセンブリ41を通じて油室35に油が流れにくくなるので、リアサスペンション30の収縮方向の減衰力が大きくなる。逆に、制御装置60がピストンバルブ52の流動抵抗を小さくすると、リアサスペンション30の収縮方向の減衰力は小さくなる。
【0029】
制御装置60がピストンバルブ53の流動抵抗を増加させると、油室35から制限弁アッセンブリ41を通じて油室34に油が流れにくくなるので、リアサスペンション30の伸長方向の減衰力が大きくなる。逆に、制御装置60がピストンバルブ53の流動抵抗を小さくすると、リアサスペンション30の伸長方向の減衰力は小さくなる。
【0030】
レーダ22(図1参照)は、先行車(すなわち、自動二輪車1の前方を走行する他の車両)との間の車間距離を検出する先行車検出装置の一例である。レーダ22は、ミリ波等の電磁波を車両前方に向けて発信するとともに、その反射波を受信する。レーダ22は車体フレーム10に支持されており、自動二輪車1の前部に設置されている。なお、先行車検出装置は、先行車との間の車間距離を検出できる装置であれば足り、レーダ22に限定されない。先行車検出装置は、レーザまたはカメラなどによって構成されていてもよい。
【0031】
クルーズコントロールスイッチ55は、乗員によって操作される入力装置である。クルーズコントロールスイッチ55は、例えばハンドル16(図1参照)に取り付けられている。クルーズコントロールスイッチ55は、例えばメータ(図示せず)に設けられている。クルーズコントロールスイッチ55は、押しボタン式のスイッチであってもよく、タッチパネル式のスイッチであってもよく、その具体的な構成は特に限定されない。
【0032】
制御装置60は、1つまたは2つ以上のマイクロコンピュータによって構成されている。本実施形態では、図2に示すように、制御装置60は複数の制御ユニットを有している。詳しくは、制御装置60は、エンジン6の制御を行う制御ユニット60Aと、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の制御を行う制御ユニット60Bと、前輪ブレーキ8Bおよび後輪ブレーキ9Bの制御を行う制御ユニット60Cとを含んでいる。制御ユニット60Aは、インターフェース101、CPU102、ROM103、およびRAM104等を有している。図示は省略するが、制御ユニット60B,60Cも、インターフェース101、CPU102、ROM103、およびRAM104等を有している。これら制御ユニット60A,60B,60Cは、互いに別体に形成され、互いに離れた箇所に配置されている。制御ユニット60A,60B,60Cは、互いに通信可能に接続されている。ただし、制御装置60の構成は何ら限定されない。制御装置60は、単一の制御ユニットによって構成されていてもよい。
【0033】
前述したように、自動二輪車1は、自動二輪車1の速度を検出する車速センサ23と、自動二輪車1の加速度を検出する加速度センサ24とを備えている。加速度センサ24は、例えば慣性計測装置(IMU)によって構成されている。
【0034】
図5は、制御装置60の機能ブロック図である。制御装置60のCPU102(図2参照)は、ROM103等に保存されたコンピュータプログラムを実行することにより、クルーズコントロールを実行する走行制御部61、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の制御を実行するサスペンション制御部63、および、走行制御部61およびサスペンション制御部63の制御を一時的に中止させる一時中止部62として機能する。なお、クルーズコントロールとは、車速が予め設定された速度(以下、設定速度という)となるように走行する制御、または、車速が設定速度以下かつ先行車との車間距離が予め定められた車間距離(以下、設定距離という)となるように先行車に追従する制御(以下、アダプティブクルーズコントロールという)のことである。設定距離は所定の距離であってもよく、所定の距離範囲であってもよい。設定距離は、自動二輪車1の速度に応じて変化してもよい。例えば、設定距離は、自動二輪車1の速度が比較的大きい場合は比較的長い距離であり、自動二輪車1の速度が比較的小さい場合は比較的短い距離であってもよい。制御装置60のROM103またはRAM104は、各種制御のコンピュータプログラム、または各種制御のパラメータに関するマップ等を記憶した記憶部64として機能する。なお、制御装置60は、記憶部64として、ROM103およびRAM104とは別のメモリを備えていてもよい。
【0035】
図示は省略するが、前輪ブレーキ8Bおよび後輪ブレーキ9Bは油圧式のブレーキキャリパを備えている。走行制御部61は、ブレーキキャリパの油圧を制御することにより、前輪ブレーキ8Bおよび後輪ブレーキ9BのON/OFFおよびそれらの制動力を制御する。アダプティブクルーズコントロールの実行中、走行制御部61は、少なくともレーダ22によって検出される車間距離に基づいて、エンジン6、前輪ブレーキ8Bおよび後輪ブレーキ9Bを制御する。本実施形態では、走行制御部61は、レーダ22によって検出される車間距離、車速センサ23によって検出される自動二輪車1の速度、および加速度センサ24によって検出される自動二輪車1の加速度に基づいて、エンジン6の出力を増加または減少させ、あるいは、前輪ブレーキ8Bおよび/または後輪ブレーキ9Bを作動させる。なお、加速度は正および負の値をとる。以下の説明では、負の加速のことを減速とも言い、負の加速度のことを減速度とも言う。
【0036】
アダプティブクルーズコントロールの実行中、自動二輪車1の速度が設定速度以下であって車間距離が設定距離よりも長くなると、走行制御部61はエンジン6の出力を増加させる。これにより、自動二輪車1は加速し、車間距離は減少する。逆に、アダプティブクルーズコントロールの実行中、車間距離が設定距離未満になると、走行制御部61はエンジン6の出力を低減し、更に、必要に応じて前輪ブレーキ8Bおよび/または後輪ブレーキ9Bを作動させる。これにより、自動二輪車1は減速し、車間距離は増加する。このようにして、自動二輪車1は、車間距離を設定距離に保ちながら先行車に追従する。
【0037】
サスペンション制御部63は、フロントフォーク20の減衰力、フロントフォーク20のばね反力、リアサスペンション30の減衰力、およびリアサスペンション30のばね反力を制御可能である。フロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力が大きいと、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の伸縮動作は固くなる。フロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力が大きいと、急制動時やコーナリング時に車体の挙動が安定するが、路面からの振動が乗員に伝わりやすい。一方、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力が小さいと、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の伸縮動作は柔らかくなる。フロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力が小さいと、路面からの振動が乗員に伝わりにくい。
【0038】
一時中止部62は、乗員がアクセルグリップ16Aを操作している間、走行制御部61によるクルーズコントロールと、サスペンション制御部63によるフロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力制御とを一時的に中止させるように構成されている。詳しくは、一時中止部62は、乗員がアクセルグリップ16Aの操作を開始すると、走行制御部61によるクルーズコントロールと、サスペンション制御部63によるフロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力を減少させる制御とを中止させる。一時中止部62は、乗員がアクセルグリップ16Aの操作を終了すると、走行制御部61によるクルーズコントロールと、サスペンション制御部63によるフロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力を減少させる制御とを再開させる。一時中止部62は、アクセルグリップ16Aから信号を受け、アクセルグリップ16Aの操作の有無を判定する。一時中止部62は、アクセルグリップ16Aが操作されていることを検出すると、走行制御部61およびサスペンション制御部63に信号を送り、走行制御部61およびサスペンション制御部63の制御を無効化する。
【0039】
次に、図6のフローチャートを参照しながら、自動二輪車1の制御の一例について説明する。以下の制御は制御装置60によって実行される。
【0040】
まず、ステップS1において、クルーズコントロールスイッチ55がONか否かを判定する。判定結果がYESの場合、ステップS2に進む。ステップS2では、クルーズコントロールを行っていない場合はクルーズコントロールを開始し、クルーズコントロール中の場合はクルーズコントロールを継続する。
【0041】
続いてステップS3に進み、サスペンション制御部63がフロントフォーク20の減衰力およびリアサスペンション30の減衰力を減少させる制御を行う。例えば、クルーズコントロールが実行される前のフロントフォーク20の減衰力、リアサスペンション30の減衰力をそれぞれ第1の値、第2の値とすると、サスペンション制御部63は、フロントフォーク20の減衰力を第1の値よりも小さな第3の値に減少させ、リアサスペンション30の減衰力を第2の値よりも小さな第4の値に減少させる。これにより、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の伸縮動作が柔らかくなる。フロントフォーク20およびリアサスペンション30が路面からの振動を吸収しやすくなるので、路面からの振動は乗員に伝わりにくくなる。なお、ステップS3はステップS2よりも前に行ってもよく、ステップS2と同時に行ってもよい。
【0042】
次に、ステップS4において、クルーズコントロールスイッチ55がOFFされたか否かを判定する。判定結果がNOの場合、ステップS5に進む。
【0043】
ステップS5では、乗員がアクセルグリップ16Aを操作しているか否かを判定する。乗員がアクセルグリップ16Aを操作する場合、乗員はクルーズコントロールよりも自動二輪車1の加速走行を望んでいることになる。そこで、ステップS5の判定結果がYESの場合、ステップS6に進み、走行制御部61はクルーズコントロールを中止する。ここで、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力を減少させたままの場合、フロントフォーク20およびリアサスペンション30は比較的伸縮しやすいため、自動二輪車1が加速したときにピッチングが発生するおそれがある。そこで、ステップS7において、サスペンション制御部63は、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力を減少させる制御を中止する。サスペンション制御部63は、例えば、フロントフォーク20の減衰力を第3の値から第1の値に戻し、リアサスペンション30の減衰力を第4の値から第2の値に戻す。なお、ステップS7はステップS6よりも前に行ってもよく、ステップS6と同時に行ってもよい。ステップS7の後は、ステップS5に戻る。
【0044】
ステップS5において、乗員がアクセルグリップ16Aを操作していないと判定された場合(言い換えると、判定結果がNOの場合)は、ステップS2に戻る。クルーズコントロールとフロントフォーク20およびリアサスペンション30の制御とが中止されている場合は、ステップS2においてクルーズコントロールが再開され、ステップS3においてフロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力の制御が再開される。例えば、フロントフォーク20の減衰力は第1の値から第3の値に減少し、リアサスペンション30の減衰力は第2の値から第4の値に減少する。
【0045】
ステップS4において、クルーズコントロールスイッチ55がOFFされたと判定された場合は、ステップS8に進む。ステップS8では、走行制御部61がクルーズコントロールを終了させる。続いてステップS9に進み、サスペンション制御部63は、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力を減少させる制御を終了する。ここでは、サスペンション制御部63は、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力を、それぞれクルーズコントロールを開始する前のフロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力に復帰させる。例えば、サスペンション制御部63は、フロントフォーク20の減衰力を第3の値から第1の値に増加させ、リアサスペンション30の減衰力を第4の値から第2の値に増加させる。なお、ステップS9はステップS8よりも前に行ってもよく、ステップS8と同時に行ってもよい。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る自動二輪車1によれば、クルーズコントロールが開始されると、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力が減少するので、クルーズコントロールの実行中は、路面からの振動が乗員に伝わりにくい。そのため、自動二輪車1のクルーズコントロール中の乗り心地を向上させることができる。一方、クルーズコントロールが終了すると、減少させたフロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力が増加するので、急制動時やコーナリング時等において車両の挙動が安定する。
【0047】
また、本実施形態によれば、クルーズコントロール中に乗員がアクセルグリップ16Aを操作すると、クルーズコントロールは一時的に中止され、自動二輪車1は加速する。この際、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力が減少したままでは、加速に伴うピッチングが発生するおそれがある。しかし、本実施形態によれば、乗員がアクセルグリップ16Aを操作すると、サスペンション制御部63による減衰力を減少させる制御も一時的に中止されるので、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力は、上記制御前の減衰力に復帰する。したがって、乗員が自らの意思によって自動二輪車1を加速させたときに、ピッチングを抑制することができる。
【0048】
以上、鞍乗型車両の一実施形態について説明したが、前記実施形態は一例に過ぎない。他にも様々な実施形態が可能である。
【0049】
前記実施形態では、サスペンション制御部63はクルーズコントロール中にフロントフォーク20の減衰力およびリアサスペンション30の減衰力の両方を減少させるが、いずれか一方のみを減少させるようにしてもよい。
【0050】
サスペンション制御部63は、クルーズコントロール中に、フロントフォーク20およびリアサスペンション30の減衰力を一定に保つようにしてもよく、自動二輪車1の車速や加速度等に応じて変化させてもよい。
【0051】
フロントフォーク20は電子制御式のフロントサスペンションの例であるが、フロントサスペンションはフロントフォーク20に限定されない。フロントサスペンションは、テレスコピック式の機構を備えるものに限らず、テレレバー式の機構を備えるものであってもよい。
【0052】
鞍乗型車両とは、乗員が跨がって乗車する車両のことである。鞍乗型車両は自動二輪車1に限定されない。鞍乗型車両は、例えば、自動三輪車、ATV(All Terrain vehicle)、スノーモービルであってもよい。
【0053】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0054】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、8…前輪、9…後輪、10…車体フレーム、16A…アクセルグリップ(アクセル操作子)、20…フロントフォーク(フロントサスペンション)、22…レーダ(先行車検出装置)、23…車速センサ、30…リアサスペンション、60…制御装置、61…走行制御部、62…一時中止部、63…サスペンション制御部
図1
図2
図3
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図5
図6