(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066042
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】衣類用アイロン
(51)【国際特許分類】
D06F 75/08 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
D06F75/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175259
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】514325642
【氏名又は名称】株式会社abien
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】松永 晴男
【テーマコード(参考)】
4L029
【Fターム(参考)】
4L029AA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加熱板が薄くて軽い衣類用アイロンの提供を図る。
【解決手段】衣類に対する加熱面22をその下面に備えた加熱板21が本体11の底部に配置される。加熱板21は、発熱面32を少なくともその下面に備えたフィルムヒーター31と、フィルムヒーター31の少なくとも下面の発熱面32を覆う底部材41とを備える。底部材41はケイ素化合物を含むセラミックから構成されることができ、加熱板21は本体の下面17との間に空隙54を置いて配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類に対する加熱面をその下面に備えた加熱板が本体の底部に配置された衣類用アイロンにおいて、
前記加熱板は、発熱面を少なくともその下面に備えたフィルムヒーターと、前記フィルムヒーターの少なくとも下面の前記発熱面を覆う底部材とを備えたことを特徴とする衣類用アイロン。
【請求項2】
前記底部材はケイ素化合物を含むセラミックから構成され、
前記底部材は、その平滑な下面が前記加熱面を構成していることを特徴とする請求項1に記載の衣類用アイロン。
【請求項3】
前記フィルムヒーターは、その下面が前記底部材の上面と密着状態で前記底部材と一体化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の衣類用アイロン。
【請求項4】
前記フィルムヒーターの上面側に剛性を備えた支持体が配置され、前記フィルムヒーターは前記支持体と共に前記底部材と一体化されており、前記フィルムヒーターへのヒーター給電端子口が前記支持体を貫通して配置されていることを特徴とする請求項3に記載の衣類用アイロン。
【請求項5】
前記フィルムヒーターの抵抗値の変化にて前記フィルムヒーターの前記発熱面の発熱温度を制御する温度制御方式が採用されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の衣類用アイロン。
【請求項6】
前記加熱板は、前記本体の下面との間に空隙を置いて前記本体の下面側に固定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の衣類用アイロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類用アイロンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の衣類用のアイロンの加熱方式は、特許文献1に示すような面状発熱体を用いたものが一般的ではなく、シーズヒーターを用いたものが主流を占めていた。そのため、加熱板には金属製など比較的厚みの大きなものが採用されており、アイロンの重量も大きくなり、衣類の皴伸ばしなどのアイロン掛け作業は疲労を伴うものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、加熱板が薄くて軽い衣類用アイロンの提供を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、衣類に対する加熱面をその下面に備えた加熱板が本体の底部に配置された衣類用アイロンにおいて、次の手段を備えたものを提供する。前記加熱板は、発熱面をその下面に備えたフィルムヒーターと、少なくとも前記発熱面を覆う底部材とを備えたことを特徴とする。
これにより、シーズヒーターを用いたものに比較して、加熱板の厚みを薄くすると共にその重量を軽くすることができた。
【0006】
前記底部材はケイ素化合物を含むセラミックから構成され、前記底部材は平滑な下面が前記加熱面を構成しているものとして実施することができる。これにより、熱伝導率、絶縁性が良好で、耐久性にも有利な衣類用アイロンとして、実施することができる。
【0007】
また、前記フィルムヒーターは、その下面が前記底部材の上面と密着状態で前記底部材と一体化されているものとして実施することができる。
また、前記フィルムヒーターの上面側に剛性を備えた支持体が配置され、前記フィルムヒーターは前記支持体と共に前記底部材と一体化されており、前記フィルムヒーターへのヒーター給電端子口が前記支持体を貫通して配置されているものとして実施することができる。
【0008】
またさらに、前記フィルムヒーターの発熱温度の制御には、前記フィルムヒーターの抵抗値の変化にて制御する温度制御方式を採用ことによって、温度センサーを用いずとも温度制御を実現することができる。
またさらに、前記加熱板を、前記本体の下面との間に空隙を置いて前記本体の下面側に固定することによって、前記本体への熱伝導を抑えることが出来て、前記空隙に外部へ空気が通ることにより外部に空気を逃がして前記本体が高温化することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
加熱板の厚みを薄くすると共にその重量を軽くすることができた衣類用アイロンを提供することができたものである。また本発明は、熱効率が良く温度の即温性に有利な衣類用アイロンを提供することができたものである。よって本発明は、衣類の皴伸ばしなどのアイロンがけ作業が簡単且つ疲労の軽減にも有利な衣類用アイロンを提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る衣類用アイロンの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(全体構造)
この実施の形態にかかる衣類用アイロンは、上部にハンドル12を備えた本体11と、本体11の底部に配置された加熱板21とを備えている。
【0012】
本体11は、ハンドル12と本体上カバー13とによってその外殻が形成されており、ハンドル12には操作スイッチ15が配置され、後面には衣類用アイロンに電気を供給する電源コード16が接続されている。
操作スイッチ15は、電源のオンオフや温度設定のスイッチなどが配置されている。
なお、本発明の衣類用アイロンは、スチームアイロンとして蒸気発生機能を付加して実施することもできるし、充電式のものとして実施することもできる。
【0013】
(加熱板について)
加熱板21は、フィルムヒーター31と、その上面に配置された支持体51と、その下面に配置された底部材41とを備える。フィルムヒーター31の全体の厚みは、3mm程度であり、シーズヒーターと比べて極めて薄くて軽いものとなっている。
【0014】
(フィルムヒーターについて)
フィルムヒーター31はプラスチックフィルム状のヒーターであり、特に、フィルム内に金属線や金属薄膜などの導体が配置されたもので、これ通電することによりに、導体の電気抵抗による発熱でフィルム自体が温まることで、ヒーターとしての機能を発揮するのを用いることができる。フィルムヒーター31は厚み1mm以下の極薄のものが提供されており、その厚みを小さくすることで、フィルムヒーター31の全体の厚みを小さくすることができる。
フィルムヒーター31は、上下の両面が発熱するものであるが、その下面が、アイロン掛け作業に必要な発熱面32として機能する。
【0015】
(支持体について)
支持体51は、フィルムヒーター31の上面に配置されたもので、アルミニウムなどの剛性があって熱伝導性の高い金属板を好適に用いることができる。
フィルムヒーター31の上面には、本体11の下面17に対する固定部53として固定ナットが互いに間隔をおいて複数個立設されている。この固定部53は、下面17に対するスペーサーとしても機能するもので、これによりフィルムヒーター31の上面と本体11の下面17との間に空隙54が形成され、空隙54の外周は外部に開口している。
【0016】
またフィルムヒーター31の上面には、フィルムヒーター31に電気供給する導線を配置するヒーター給電端子口52が、フィルムヒーター31を貫通して上方に向けて設けられている。
【0017】
(底部材について)
底部材41は、フィルムヒーター31の下面側に配置されたもので、この例ではフィルムヒーター31の下面が底部材41の上面と密着状態で底部材41と一体化されている。この例では、フィルムヒーター31は支持体51と共に底部材41と一体化されている。
【0018】
底部材41は、二酸化ケイ素などのケイ素化合物を含むセラミックや熱硬化性樹脂などの耐熱材料から構成されており、熱伝導率が高く、絶縁性が良いものを選択することが好ましい。
【0019】
図示は省略するが、底部材41は、焼成用のセラミック材料や熱硬化性樹脂材料を金型内に充填して所定温度で焼成したり成形したりすることにより形成される。その際、フィルムヒーター31は支持体51の下面に接着剤で固定され、固定ピンにて金型内の所定位置に下方から支持された状態で形成される。
【0020】
これによって、加熱板21が製造されるが、底部材41の下面には金型固定ピン孔42が形成される。この金型固定ピン孔42は小さな内径の孔であるため、開口した状態であっても衣類用アイロンの機能には悪影響を与えない。
底部材41の下面は、加熱板21の加熱面22を構成するものであり、衣類の皺伸ばしのために平滑な面に仕上げられることが好ましい。
また、底部材41の下面などにコーティングを施して実施することを妨げるものではないが、施すことなく実施しても衣料用アイロンとして十分実用に供することができる。
【0021】
フィルムヒーター31の発熱面32の発熱によって、底部材41が加熱され、アイロン掛け作業に必要な温度に加熱板21の下面の加熱面22(即ち底部材41の下面)が加熱される。
フィルムヒーター31はその上面も発熱するが、その熱は支持体51を介して空隙54から外部へ逃がされることにより、本体11の温度上昇が抑制される。
【0022】
(制御部について)
フィルムヒーター31の発熱温度は、温度センサーによって検知してフィルムヒーター31に供給される電源からの電気を、急いでするものでも構わないが、この実施の形態においては、フィルムヒーター31の発熱面32の発熱温度に基づいて制御する温度制御方式が採用されている。詳しくは、金属導体の電気抵抗値は、その温度に基づいて変化するため、金属導体の電気抵抗値を検知し、これに基づいてフィルムヒーター31に供給される電気を制御することによって、温度センサーを用いずとも発熱面32の発熱温度を制御することができる。
【0023】
具体的には、この衣類用アイロンは、ハンドル12内に配置された回路基板18に制御部61を備えている。制御部61は、
図6に示すように、発熱面32に接続されてその電気抵抗値を検知する抵抗検知部62を備えている。また、制御部61は電源制御部63を介して接続されている。またさらに制御部61は操作スイッチ15に接続されている。
【0024】
電源のオンオフ信号と、アイロン掛けをする衣類の素材の温度に応じた電気抵抗値を示す信号が、操作スイッチ15から制御部61に入力される。なお、操作スイッチ15の外部への表示は、電気抵抗値の表示でなくても、温度表示であっても構わないし、衣類の素材の種類表示であっても構わない。
【0025】
他方、フィルムヒーター31の電気抵抗値は46によって検出され、45は操作スイッチ15から入力された電気抵抗値と46からのフィルムヒーター31の電気抵抗値に基づいて、46からフィルムヒーター31に送られる電気を適正な値に設定する。これによって、使用者が希望する温度にフィルムヒーター31の発熱温度が制御される。
【符号の説明】
【0026】
11 本体
12 ハンドル
13 本体上カバー
14 本体下カバー
15 操作スイッチ
16 電源コード
17 下面
18 回路基板
21 加熱板
22 加熱面
31 フィルムヒーター
32 発熱面
41 底部材
42 金型固定ピン孔
51 支持体
52 ヒーター給電端子口
53 固定部
54 空隙
61 制御部
62 抵抗検知部
63 電源制御部