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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066056
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
F25B1/00 321A
F25B1/00 399Y
F25B1/00 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175292
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】臼井 拓巳
(57)【要約】
【課題】圧縮機の異常高温を防止しつつ、蒸発器による冷却能力を増大させる。
【解決手段】冷凍装置100は、圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4および蒸発器5が接続されて蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路1を備える。凝縮器3は、冷媒を冷却水と熱交換させる。冷媒回路1は、蒸発器5から圧縮機2へ流れる冷媒を、凝縮器3で熱交換した後の冷却水と熱交換させて冷却する冷却熱交換器6を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、放熱器、膨張機構および蒸発器が接続されて蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路を備え、
前記放熱器は、冷媒を冷却媒体と熱交換させ、
前記冷媒回路は、前記蒸発器から前記圧縮機へ流れる冷媒を、前記放熱器で熱交換した後の前記冷却媒体と熱交換させて冷却する冷却熱交換器を有している冷凍装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍装置において、
前記冷媒回路は、
流入端および流出端が、前記蒸発器と前記圧縮機とを接続する吸入管に接続され、前記冷却熱交換器が設けられるバイパス管と、
所定の条件に基づき、前記蒸発器から流出した冷媒が前記バイパス管に流れるのを阻止する状態と前記蒸発器から流出した冷媒の少なくとも一部が前記バイパス管に流れる状態とを切り換える流路切換機構とをさらに有している冷凍装置。
【請求項3】
請求項2に記載の冷凍装置において、
前記流路切換機構は、前記吸入管における前記バイパス管の前記流入端よりも上流側の冷媒である上流側冷媒の温度が、前記放熱器で熱交換した後の前記冷却媒体の温度である対象温度以下の場合には、前記上流側冷媒が前記バイパス管に流れるのを阻止し、前記上流側冷媒の温度が前記対象温度よりも高い場合には、前記上流側冷媒の少なくとも一部を前記バイパス管に流す冷凍装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の冷凍装置において、
前記冷媒回路は、
流入端が、前記放熱器と前記膨張機構とを接続する高圧液管に接続され、流出端が前記吸入管に接続され、前記高圧液管の冷媒の一部を前記吸入管にインジェクションするインジェクション管と、
前記インジェクション管のインジェクション量を、前記吸入管における前記バイパス管の前記流出端および前記インジェクション管の前記流出端よりも下流側の冷媒の温度に応じて調整する調整機構とをさらに有している冷凍装置。
【請求項5】
請求項4に記載の冷凍装置において、
前記インジェクション管の前記流出端は、前記吸入管における前記バイパス管の前記流出端よりも下流側の部分に接続されている冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示の冷凍装置は、圧縮機が異常高温となるのを防止するための液インジェクション管を備えている。具体的に、特許文献1の液インジェクション管は、凝縮器から流出した液冷媒の一部を、圧縮機の吸入管にインジェクションする。これにより、圧縮機の吸入冷媒が液冷媒によって冷却され、圧縮機の異常高温が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-87688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した特許文献1のような冷凍装置では、蒸発器による冷却能力が低下してしまう問題がある。即ち、凝縮器から流出した液冷媒の一部が蒸発器をバイパスして圧縮機の吸入管に供給されるので、その分、凝縮器から蒸発器へ流れる冷媒流量が減少してしまう。
【0005】
本開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮機の異常高温を防止しつつ、蒸発器による冷却能力を増大させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の冷凍装置は、圧縮機、放熱器、膨張機構および蒸発器が接続されて蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路を備えている。前記放熱器は、冷媒を冷却媒体と熱交換させる。前記冷媒回路は、前記蒸発器から前記圧縮機へ流れる冷媒を、前記放熱器で熱交換した後の前記冷却媒体と熱交換させて冷却する冷却熱交換器を有している。
【0007】
前記の構成では、冷媒回路を冷媒が循環して蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。つまり、圧縮機で圧縮された冷媒は、放熱器に流れて、水等の冷却媒体と熱交換して放熱する。放熱器で放熱した冷媒は、膨張機構に流れて膨張する。膨張機構で膨張した冷媒は、蒸発器に流れて、空気等の対象物と熱交換して吸熱し、対象物が冷却される。冷媒は、吸熱することで蒸発する。蒸発器で蒸発した冷媒は、圧縮機へ戻り、再び圧縮される。
【0008】
ここで、蒸発器で蒸発した冷媒は、圧縮機へ流れる際、冷却熱交換器で冷却される。具体的に、冷却熱交換器には、蒸発器から冷媒が流入する一方、放熱器で冷媒と熱交換した後の冷却媒体が供給される。冷却熱交換器では、冷媒が冷却媒体と熱交換して放熱し、冷却される。冷却熱交換器で冷却された冷媒は、圧縮機に流れる。こうして、圧縮機の吸入冷媒が冷却されることで、圧縮機の異常高温が防止される。そして、冷却熱交換器においては、冷媒の冷却源として、放熱器で用いた後の冷却媒体が利用される。そのため、従来のように放熱器を流出した冷媒の一部を圧縮機の吸入側にインジェクションするインジェクション量が低減され得る。インジェクション量が低減されることで、冷媒回路において蒸発器へ流れる冷媒流量が増大する。これにより、圧縮機の異常高温を防止しつつ、蒸発器による冷却能力を増大させることができる。
【0009】
前記冷媒回路は、バイパス管と、流路切換機構とをさらに有していてもよい。前記バイパス管は、流入端および流出端が、前記蒸発器と前記圧縮機とを接続する吸入管に接続され、前記冷却熱交換器が設けられているものである。前記流路切換機構は、所定の条件に基づき、蒸発器から流出した冷媒が前記バイパス管に流れるのを阻止する状態と蒸発器から流出した冷媒の少なくとも一部が前記バイパス管に流れる状態とを切り換える。
【0010】
前記の構成では、バイパス管は、その流入端および流出端が吸入管に接続されて吸入管の一部をバイパスする。そして、蒸発器から圧縮機へ流れる冷媒の流路が、所定の条件に基づいて切り換えられる。つまり、冷却熱交換器によって冷媒を冷却し得る場合には、蒸発器から流出した冷媒の全量または一部はバイパス管を通過して圧縮機へ流れる。そのため、冷媒を冷却熱交換器で冷却したうえで圧縮機へ流すことができる。したがって、圧縮機の異常高温を防止することができる。
【0011】
前記流路切換機構は、前記吸入管における前記バイパス管の前記流入端よりも上流側の冷媒である上流側冷媒の温度が、前記放熱器で熱交換した後の前記冷却媒体の温度である対象温度以下の場合には、前記上流側冷媒が前記バイパス管に流れるのを阻止し、前記上流側冷媒の温度が前記対象温度よりも高い場合には、前記上流側冷媒を前記バイパス管に流すようにしてもよい。
【0012】
前記の構成では、上流側冷媒の温度が対象温度以下である場合は、上流側冷媒はバイパス管を通過することなく吸入管を通って圧縮機へ流れる。つまり、上流側冷媒は冷却熱交換器を通過することなく圧縮機へ流れる。そのため、圧縮機の吸入冷媒が冷却媒体によって加熱されることを防止し得る。一方、上流側冷媒の温度が対象温度よりも高い場合は、上流側冷媒はバイパス管を通過して圧縮機へ流れる。つまり、上流側冷媒は冷却熱交換器を通過して圧縮機へ流れる。そのため、圧縮機の吸入冷媒を冷却媒体によって冷却することができる。このように、上流側冷媒を冷却したうえで圧縮機へ流すことができる。したがって、さらに確実に圧縮機の異常高温を防止することができる。
【0013】
前記冷媒回路は、インジェクション管と、調整機構とをさらに有していてもよい。前記インジェクション管は、流入端が、前記放熱器と前記膨張機構とを接続する高圧液管に接続され、流出端が前記吸入管に接続され、前記高圧液管の冷媒の一部を前記吸入管にインジェクションする。前記調整機構は、前記インジェクション管のインジェクション量を、前記吸入管における前記バイパス管の前記流出端および前記インジェクション管の前記流出端よりも下流側の冷媒の温度に応じて調整する。
【0014】
前記の構成では、高圧液管の冷媒の一部がインジェクション管を介して吸入管にインジェクションされると、吸入管の冷媒が高圧液管の冷媒によって冷却される。そのため、吸入管の冷媒は、冷却熱交換器およびインジェクション管の2段階で冷却され得る。つまり、インジェクション管による冷却量は、吸入管の冷媒に対する必要冷却量の一部を賄えるものであればよい。そのため、インジェクション管のインジェクション量が従来より低減される。インジェクション量は、インジェクション管が賄わなければならない冷却量に応じて調整機構によって調整される。なお、吸入管の冷媒に対する必要冷却量は、蒸発器から吸入管に流出した冷媒を所定の温度(即ち、圧縮機の吸入温度の目標値)に冷却するために必要な冷却量である。
【0015】
前記インジェクション管の前記流出端は、前記吸入管における前記バイパス管の前記流出端よりも下流側の部分に接続されていてもよい。
【0016】
前記の構成では、吸入管の冷媒が、冷却熱交換器で冷却された後、インジェクション管によるインジェクションによってさらに冷却される。そのため、例えば吸入管の冷媒がインジェクション管によるインジェクションで冷却された後に冷却熱交換器で冷却される場合と比べて、前記対象温度を低い値に設定しなくてもよい。その結果、放熱器に供給される冷却媒体として、低温の冷却媒体を用意しなくてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示の冷凍装置によれば、圧縮機の異常高温を防止しつつ、蒸発器による冷却能力を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】冷凍装置を示す配管系統図である。
図2】制御装置およびその周辺機器を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、冷凍装置100を示す配管系統図である。冷凍装置100は、例えば、環境試験装置に設けられ、試験室内を設定温度に冷却するものである。冷凍装置100は、冷媒が循環して蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路1と、制御装置9とを備えている。冷媒回路1は、圧縮機2と、凝縮器3と、膨張弁4と、蒸発器5とが配管接続されて閉回路に形成されている。
【0021】
圧縮機2は、吸入側から吸入した冷媒を圧縮して吐出側から吐出するものであり、例えば、スクロール型やロータリ型の回転式圧縮機である。圧縮機2の吐出側には、吐出管11が接続されており、吐出管11は、凝縮器3に接続されている。つまり、吐出管11は、圧縮機2と凝縮器3とを接続している。
【0022】
凝縮器3は、圧縮機2から送られた冷媒を冷却水と熱交換させる熱交換器である。具体的に、凝縮器3は、第1流路31および第2流路32を有している。第1流路31の流入端には吐出管11が接続され、第1流路31の流出端には高圧液管12が接続されている。第2流路32の流入端には、冷却水を供給する流入管16aが接続され、第2流路32の流出端には、第2流路32から冷却水が流出する流出管16bが接続されている。凝縮器3では、第1流路31の冷媒が第2流路32の冷却水と熱交換して凝縮する。つまり、冷媒は冷却水に放熱して凝縮し、冷却水が加熱される。凝縮器3は放熱器の一例であり、冷却水は冷却媒体の一例である。
【0023】
膨張弁4は、凝縮器3で凝縮した液冷媒を膨張させる。膨張弁4の流入側には高圧液管12が接続され、膨張弁4の流出側には低圧液管13を介して蒸発器5が接続されている。つまり、高圧液管12は凝縮器3と膨張弁4とを接続し、低圧液管13は膨張弁4と蒸発器5とを接続している。膨張弁4は、膨張機構の一例であり、例えば開度可変の電動弁である。
【0024】
蒸発器5は、膨張弁4で膨張した液冷媒を空気と熱交換させる熱交換器である。冷凍装置100は、蒸発器5の近傍に設けられるファン5aを有している。ファン5aは、試験室内の空気を蒸発器5との間で循環させる。蒸発器5では、液冷媒がファン5aによって送られた空気と熱交換して蒸発する。つまり、液冷媒は空気から吸熱して蒸発し、空気が冷却される。蒸発器5の流出側には、吸入管14が接続され、吸入管14は、圧縮機2の吸入側に接続されている。つまり、吸入管14は、蒸発器5と圧縮機2とを接続している。蒸発器5で蒸発したガス冷媒は、吸入管14を介して圧縮機2の吸入側に吸入される。
【0025】
このように、冷媒回路1では、冷媒が、圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4および蒸発器5の順に循環することで、蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。
【0026】
さらに、冷媒回路1は、バイパス管17と、冷却熱交換器6と、流路切換機構7と、インジェクション管18と、流量調整弁8とを有している。
【0027】
バイパス管17は、流入端17aおよび流出端17bが吸入管14に接続され、冷却熱交換器6が設けられる管である。つまり、バイパス管17は、その両端が吸入管14に接続され、吸入管14の途中の一部をバイパスする。なお、当然ながら、吸入管14においては、バイパス管17の流出端17bは、バイパス管17の流入端17aよりも下流側に接続されている。
【0028】
冷却熱交換器6は、蒸発器5から圧縮機2へ流れる冷媒を、凝縮器3で熱交換した後の冷却水と熱交換させて冷却する。冷却熱交換器6は、バイパス管17の途中に設けられている。以下、蒸発器5から圧縮機2へ流れる冷媒を、吸入管14の冷媒と称する場合がある。
【0029】
具体的に、冷却熱交換器6は、第1流路61および第2流路62を有している。第1流路61にはバイパス管17が接続され、第2流路62には流出管16bが接続されている。第1流路61には、吸入管14の冷媒がバイパス管17を介して流入する。第2流路62には、凝縮器3で加熱された冷却水が流出管16bを介して流入する。冷却熱交換器6では、第1流路61の冷媒が第2流路62の冷却水と熱交換して冷却される。
【0030】
流路切換機構7は、所定の条件に基づき、蒸発器5から流出した冷媒がバイパス管17に流れるのを阻止する状態と蒸発器5から流出した冷媒の少なくとも一部がバイパス管17に流れる状態とを切り換える。
【0031】
具体的に、流路切換機構7は、吸入管14におけるバイパス管17の流入端17aよりも上流側の冷媒である上流側冷媒の温度が、凝縮器3で熱交換した後の冷却水の温度である対象温度以下の場合には、上流側冷媒がバイパス管17に流れるのを阻止する。また、流路切換機構7は、上流側冷媒の温度が前述の対象温度よりも高い場合には、上流側冷媒をバイパス管17に流す。つまり、流路切換機構7は、上流側冷媒の温度と前述の対象温度との大小関係に応じて、上流側冷媒が冷却熱交換器6を通過せずに圧縮機2へ流れる流路と、上流側冷媒が冷却熱交換器6を通過して圧縮機2へ流れる流路とを切り換える。さらに言えば、流路切換機構7は、上流側冷媒の温度と対象温度との大小関係を、前述の所定の条件としている。この例では、吸入管14の上流側冷媒の温度は、蒸発器5における冷媒の蒸発温度に相当する。
【0032】
具体的に、流路切換機構7は、第1開閉弁71および第2開閉弁72を有している。この例では、第1開閉弁71および第2開閉弁72は何れも、全開状態と全閉状態とに切り換えられる電磁弁である。第1開閉弁71は、吸入管14におけるバイパス管17の流入端17aと流出端17bの間の部分に設けられている。第2開閉弁72は、バイパス管17における冷却熱交換器6よりも上流側の部分に設けられている。流路切換機構7は、第1開閉弁71および第2開閉弁72の開閉状態を切り換えることで流路を切り換える。
【0033】
インジェクション管18は、流入端18aが高圧液管12に接続され、流出端18bが吸入管14に接続され、高圧液管12の冷媒の一部を吸入管14にインジェクションする。より詳しくは、インジェクション管18の流出端18bは、吸入管14におけるバイパス管17の流出端17bよりも下流側の部分に接続されている。インジェクション管18は、高圧液管12の冷媒の一部を吸入管14にインジェクションすることで、インジェクションした冷媒によって吸入管14の冷媒を冷却する。
【0034】
流量調整弁8は、インジェクション管18のインジェクション量を、吸入管14におけるバイパス管17の流出端17bおよびインジェクション管18の流出端18bよりも下流側の冷媒の温度に応じて調整する。吸入管におけるバイパス管17の流出端17bおよびインジェクション管18の流出端18bよりも下流側の冷媒の温度は、圧縮機2に吸入される直前の吸入冷媒の温度に相当し、以下、圧縮機2の吸入冷媒の温度と称する場合がある。
【0035】
具体的に、流量調整弁8は、インジェクション管18に設けられている。流量調整弁8は、開度可変に構成されている。流量調整弁8は、圧縮機2の吸入冷媒の温度がその目標温度となるように、開度を変更してインジェクション量を調整する。圧縮機2の吸入冷媒の目標温度は、圧縮機2に液冷媒が吸入されることを防止しつつ、圧縮機2の異常高温を防止し得る温度に設定される。流量調整弁8は、調整機構の一例であり、例えば、いわゆる感温式膨張弁である。感温式膨張弁は、圧縮機2の吸入冷媒の温度と目標温度との温度差に応じて、自動的に開度を変更するものであり、温度自動膨張弁とも呼ばれる場合がある。
【0036】
また、冷媒回路1には、第1温度センサ96、第2温度センサ97および第3温度センサ98が設けられている。第1温度センサ96は、吸入管14における上流側冷媒の温度、即ち、吸入管14におけるバイパス管17の流入端17aよりも上流側の冷媒の温度を検出する。第1温度センサ96は、吸入管14におけるバイパス管17の流入端17aよりも上流側の部分に設けられている。第2温度センサ97は、前述した対象温度、即ち、凝縮器3で熱交換した後の冷却水の温度を検出する。第2温度センサ97は、流出管16bにおける冷却熱交換器6よりも上流側の部分に設けられている。第3温度センサ98は、圧縮機2の吸入冷媒の温度を検出する。第3温度センサ98は、吸入管14におけるインジェクション管18の流出端18bよりも下流側の部分に設けられている。第3温度センサ98は、いわゆる感温筒であり、流量調整弁8と接続されている。流量調整弁8は、第3温度センサ98の検出値が入力され、その入力された検出値に応じて自動的に自身の開度を変更する。
【0037】
図2は、制御装置9およびその周辺機器のブロック図である。制御装置9は、冷媒回路1の全体を制御する。例えば、制御装置9は、圧縮機2の回転数や膨張弁4の開度、ファン5aの回転数等を制御する。具体的に、制御装置9は、入力部91を有すると共に、機能ブロックとして、取得部92と、弁制御部93とを有している。
【0038】
入力部91は、ユーザからの入力操作を受け付ける。ユーザは、入力部91によって冷凍装置100の運転に関する各種条件を設定することが可能である。例えば、ユーザは、試験室内の目標温度や圧縮機2の吸入冷媒の目標温度を設定することが可能である。入力部91は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネルである。
【0039】
取得部92は、第1温度センサ96および第2温度センサ97と通信可能である。取得部92は、第1温度センサ96の検出値を受信することで、吸入管14における上流側冷媒の温度を取得する。また、取得部92は、第2温度センサ97の検出値を受信することで、対象温度を取得する。
【0040】
弁制御部93は、流路切換機構7を制御する。具体的に、弁制御部93は、取得部92によって取得された吸入管14における上流側冷媒の温度と対象温度との大小関係に応じて、第1開閉弁71および第2開閉弁72を制御する。より詳しくは、弁制御部93は、吸入管14における上流側冷媒の温度が対象温度以下である場合には、第1開閉弁71を開弁させ、第2開閉弁72を閉弁させる。弁制御部93は、吸入管14における上流側冷媒の温度が対象温度よりも高い場合には、第1開閉弁71を閉弁させ、第2開閉弁72を開弁させる。
【0041】
次に、このように構成された冷凍装置100の動作について説明する。
【0042】
圧縮機2で圧縮された高圧冷媒は、吐出管11を介して凝縮器3に流れる。凝縮器3では、高圧冷媒が冷却水と熱交換して凝縮する。凝縮器3から高圧液管12に流出した液冷媒の一部は、インジェクション管18に流れ、残りの液冷媒は、膨張弁4によって膨張した後、低圧液管13を介して蒸発器5に流れる。一方、凝縮器3で熱交換した後の冷却水は、流出管16bを介して冷却熱交換器6に供給される。蒸発器5では、液冷媒が試験室の空気と熱交換して蒸発し、空気が冷却される。これにより、試験室内が所定の設定温度に冷却される。
【0043】
蒸発器5で蒸発した冷媒は、吸入管14に流出する。ここで、吸入管14における上流側冷媒の温度が対象温度よりも高い場合、弁制御部93によって、第1開閉弁71が閉弁されると共に第2開閉弁72が開弁される。そうすると、吸入管14における上流側冷媒の全量が、バイパス管17を介して冷却熱交換器6に流れる。冷却熱交換器6においては、冷却水が冷媒よりも温度が低いので、冷媒が冷却水と熱交換して冷却される。
【0044】
冷却熱交換器6で冷却された冷媒は、バイパス管17から吸入管14に戻る。吸入管14に戻った冷媒は、インジェクション管18から吸入管14にインジェクションされた冷媒と混合されてさらに冷却される。ここで、インジェクション管18のインジェクション量が、流量調整弁8によって適切に調整される。つまり、圧縮機2の吸入冷媒の温度がその目標温度となるように、流量調整弁8が開度を自動的に変更してインジェクション量を調整する。こうして、インジェクション量が調整されることで、圧縮機2の吸入冷媒の温度がその目標温度に維持される。したがって、圧縮機2の異常高温が防止される。
【0045】
このように、吸入管14の冷媒は、インジェクション管18によって冷却されるだけでなく、冷却熱交換器6によっても冷却される。そのため、従来のようにインジェクション管のみで冷却する場合に比べて、インジェクション管18による必要冷却量が低減される。これにより、インジェクション管18の必要インジェクション量が低減され、その分、凝縮器3から蒸発器5へ流れる冷媒量が増大する。
【0046】
一方、吸入管14における上流側冷媒の温度が対象温度以下である場合、弁制御部93によって、第1開閉弁71が開弁されると共に第2開閉弁72が閉弁される。そうすると、吸入管14における上流側冷媒の全量が、バイパス管17および冷却熱交換器6を通過することなく、そのまま吸入管14を流れる。この吸入管14の冷媒は、前述と同様、インジェクション管18から吸入管14にインジェクションされた冷媒と混合されて冷却される。そして、インジェクション管18のインジェクション量は、圧縮機2の吸入冷媒の温度がその目標温度となるように、流量調整弁8によって自動的に調整される。こうして、インジェクション量が調整されることで、圧縮機2の異常高温が防止される。
【0047】
以上のように構成された冷凍装置100によれば、圧縮機2の異常高温を防止しつつ、蒸発器5による冷却能力を増大させることができる。
【0048】
具体的に、冷凍装置100は、圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4および蒸発器5が接続されて蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路1を備えている。凝縮器3は、冷媒を冷却水と熱交換させる。冷媒回路1は、蒸発器5から圧縮機2へ流れる冷媒を、凝縮器3で熱交換した後の冷却水と熱交換させて冷却する冷却熱交換器6を有している。
【0049】
この構成によれば、蒸発器5で蒸発した冷媒は、圧縮機2へ流れる際に冷却熱交換器6で冷却される。そのため、圧縮機2の吸入冷媒が冷却されるので、圧縮機2の異常高温を防止することができる。そして、冷却熱交換器6においては、冷媒の冷却源として、凝縮器3で熱交換した後の冷却水が利用される。そのため、従来のように凝縮器を流出した冷媒の一部を圧縮機の吸入側にインジェクションする量が低減され得る。このようなインジェクション量が低減されることで、冷媒回路1において蒸発器5へ流れる冷媒量が増大する。したがって、圧縮機2の異常高温を防止しつつ、蒸発器5による冷却能力を増大させることができる。
【0050】
また、冷媒回路1は、流入端17aおよび流出端17bが吸入管14に接続され、冷却熱交換器6が設けられるバイパス管17を有している。また、冷媒回路1は、所定の条件に基づき、蒸発器5から流出した冷媒がバイパス管17に流れるのを阻止する状態と蒸発器5から流出した冷媒の少なくとも一部がバイパス管17に流れる状態とを切り換える流路切換機構7を有している。具体的に、流路切換機構7は、吸入管14におけるバイパス管17の流入端17aよりも上流側の上流側冷媒の温度が、凝縮器3で熱交換した後の冷却水の温度である対象温度以下の場合には、上流側冷媒がバイパス管17に流れるのを阻止し、上流側冷媒の温度が対象温度よりも高い場合には、上流側冷媒をバイパス管17に流す。
【0051】
この構成によれば、上流側冷媒の温度が対象温度以下である場合は、上流側冷媒はバイパス管17を通過することなく吸入管14を通って圧縮機2へ流れる。つまり、上流側冷媒は冷却熱交換器6を通過することなく圧縮機2へ流れる。そのため、圧縮機2の吸入冷媒が冷却水によって加熱されてしまうことを防止し得る。一方、上流側冷媒の温度が対象温度よりも高い場合は、上流側冷媒はバイパス管17を通過して圧縮機2へ流れる。つまり、上流側冷媒は、冷却熱交換器6を通過して圧縮機2へ流れる。そのため、圧縮機2の吸入冷媒が冷却水によって冷却される。このように、圧縮機2の吸入冷媒が冷却水によって冷却されるので、圧縮機2の異常高温を一層防止することができる。
【0052】
また、冷媒回路1は、流入端18aが高圧液管12に接続され、流出端18bが吸入管14に接続され、高圧液管12の冷媒の一部を吸入管14にインジェクションするインジェクション管18を有している。また、冷媒回路1は、インジェクション管18のインジェクション量を、圧縮機2の吸入冷媒の温度に応じて調整する流量調整弁8を有している。
【0053】
この構成によれば、インジェクション管18は、高圧液管12の冷媒の一部を吸入管14にインジェクションすることで、吸入管14の冷媒を冷却する。そのため、吸入管14の冷媒は、インジェクション管18および冷却熱交換器6の両方によって冷却される。そのため、従来のようにインジェクション管のみで冷却する場合に比べて、インジェクション管18による必要冷却量を低減することができる。これにより、インジェクション管18の必要インジェクション量が低減され、その分、凝縮器3から膨張弁4を介して蒸発器5へ流れる冷媒量が増大する。したがって、蒸発器5による冷却能力を増大させることができる。この構成は、吸入管14の冷媒に対する必要冷却量を冷却水のみによって賄えない場合に有効である。
【0054】
また、インジェクション管18の流出端18bは、吸入管14におけるバイパス管17の流出端17bよりも下流側の部分に接続されている。
【0055】
この構成によれば、吸入管14の冷媒が、冷却熱交換器6で冷却された後、インジェクション管18によるインジェクションによってさらに冷却される。そのため、例えば吸入管の冷媒をインジェクション管によって冷却した後に冷却熱交換器によって冷却する場合と比べて、対象温度を低い値に設定しなくてもよい。その結果、凝縮器3に供給する冷却水として、低温の冷却水を用意しなくてもよい。
【0056】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0057】
例えば、流路切換機構7は、上流側冷媒の全量をバイパス管17に流すのではなく、上流側冷媒の一部はバイパス管17に流し、残りはそのまま吸入管14に流すように構成されてもよい。その場合、第1開閉弁71および第2開閉弁72は、開度を連続的または段階的に変更可能な例えば電動弁が用いられる。この構成によれば、バイパス管17に流す冷媒の流量を連続的または段階的に調整できるため、圧縮機2の吸入冷媒の温度を細かく調節し得る。なお、この場合、第1開閉弁71および第2開閉弁72の一方を省略してもよいし、流路切換機構7は三方弁によって構成するようにしてもよい。流路切換機構7を三方弁で構成する場合、三方弁は例えばバイパス管17の流入端17aの位置に設けられる。
【0058】
また、第1温度センサ96によって検出される上流側冷媒の温度は、例えば、環境試験装置の試験室内の温度で代用するようにしてもよい。上流側冷媒の温度は、蒸発器5から流出する直前の冷媒温度に概ね相当し、この冷媒温度は、試験室内の温度(即ち、試験室内の空気の温度)と実質同等である。この場合、第1温度センサ96は省略可能である。
【0059】
また、第2温度センサ97は省略してもよい。この場合、例えば、対象温度を、予備実験等の結果から想定される温度に設定し、その設定された対象温度を制御装置9に記憶させることが考えられる。
【0060】
また、流路切換機構7は、上流側冷媒の温度と対象温度との大小関係を所定の条件としたが、これに限定されず、例えば環境試験装置の試験室内の温度とその設定温度との大小関係を所定の条件としてもよい。つまり、流路切換機構7は、試験室内の温度が設定温度よりも低い場合には、上流側冷媒がバイパス管17に流れるのを阻止し、試験室内の温度が設定温度よりも高い場合には、上流側冷媒をバイパス管17に流すようにしてもよい。
【0061】
また、インジェクション管18の流出端18bは、吸入管14におけるバイパス管17の流入端17aよりも上流側の部分に接続するようにしてもよい。この構成では、吸入管14の冷媒は、インジェクション管18によって冷却された後、冷却熱交換器6によってさらに冷却される。これは、インジェクション管18からインジェクションされる冷媒の温度が、対象温度、即ち、凝縮器3で熱交換した後の冷却水の温度よりも高い場合に有効である。逆に、前記実施形態の冷凍装置100は、インジェクション管18からインジェクションされる冷媒の温度が、対象温度よりも低い場合に有効である。
【0062】
また、流量調整弁8は、弁制御部93によって開度が制御されるものであってもよい。この場合、第3温度センサ98は、第1温度センサ96等と同様、取得部92と通信可能に構成される。つまり、取得部92は、第3温度センサ98の検出値を受信することで、圧縮機2の吸入冷媒の温度を取得する。弁制御部93は、取得部92によって取得された吸入冷媒の温度がその目標温度となるように、流量調整弁8の開度を制御する。
【0063】
また、前記実施形態の冷媒回路1において、インジェクション管18を省略するようにしてもよい。
【0064】
冷凍装置100は、環境試験装置の試験室内を冷却するものに限らず、例えば、食品等が収容された冷蔵庫または冷凍庫の内部を冷却するものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
100 冷凍装置
1 冷媒回路
2 圧縮機
3 凝縮器(放熱器)
4 膨張弁(膨張機構)
5 蒸発器
6 冷却熱交換器
7 流路切換機構
8 流量調整弁(調整機構)
12 高圧液管
14 吸入管
17 バイパス管
17a 流入端
17b 流出端
18 インジェクション管
18a 流入端
18b 流出端
図1
図2