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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066064
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】中継回路基板および中継電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/14 20060101AFI20240508BHJP
   H01R 31/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H05K1/14 F
H01R31/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175317
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】成 星宇
(72)【発明者】
【氏名】山田 彰太
(72)【発明者】
【氏名】菅原 学史
(72)【発明者】
【氏名】玉井 暢洋
【テーマコード(参考)】
5E344
【Fターム(参考)】
5E344AA07
5E344AA12
5E344AA26
5E344BB06
5E344CC03
5E344CD18
5E344CD29
5E344DD07
5E344EE07
5E344EE08
(57)【要約】
【課題】ストレートペアとクロスペアとの間でスキューの差を良好に低減できる中継回路基板および中継電気コネクタを提供する。
【解決手段】中継回路基板は、板状の基材41と、基材41の板面上にて相手接続体との接続方向で基材41の一端側から他端側にわたって延びる複数の差動信号伝送用の信号伝送線路ペア42,44とを有し、基材41は、基材41を補強するための複数の繊維411A,411Bが網目状に編み込まれて形成された繊維クロス411と、繊維クロス411を埋設する樹脂製の板状部材412とを有し、複数の前記信号伝送線路ペア40,44は、基材41の幅方向で交互に配置されたストレートペア42とクロスペア44とを有し、ストレートペア42およびクロスペア44は、基材41の板厚方向に見て、繊維クロス411の繊維411A,411Bに対して傾斜するように延びて形成されている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの相手接続体を中継接続する中継電気コネクタに設けられる中継回路基板において、
板状の基材と、
前記基材の板面上にて、一方の前記相手接続体が接続される前記基材の一端側から他方の前記相手接続体が接続される前記基材の他端側にわたって延びる複数の差動信号伝送用の信号伝送線路ペアとを有し、
前記基材は、前記基材を補強するための複数の繊維が網目状に編み込まれて形成された繊維クロスと、前記繊維クロスを埋設する樹脂製の板状部材とを有し、
複数の前記信号伝送線路ペアは、交互に配置されたストレートペアとクロスペアとを有し、
前記ストレートペアは、互いに平行をなして延びる2つの信号伝送線路、あるいは前記ストレートぺアの長手方向における偶数箇所で互いに非接触で交差する交差部分をもつ2つの信号伝送線路で形成され、
前記クロスペアは、前記クロスペアの長手方向における奇数箇所で互いに非接触で交差する交差部分をもつ2つの信号伝送線路で形成され、
前記ストレートペアおよび前記クロスペアは、前記基材の板厚方向に見て、前記ストレートペアおよび前記クロスペアの長手方向での少なくとも一部が前記繊維クロスの前記繊維に対して傾斜するように延びて形成されていることを特徴とする中継回路基板。
【請求項2】
前記ストレートペアおよび前記クロスペアは、前記基材の板厚方向に見て、前記ストレートペアおよび前記クロスペアの長手方向での少なくとも一部が前記繊維クロスの前記繊維に対して2~20度の角度をもって傾斜していることとする請求項1に記載の中継回路基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の中継回路基板を有することを特徴とする中継電気コネクタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの相手接続体を中継接続する中継電気コネクタに設けられる中継回路基板および該中継回路基板を有する中継電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる中継電気コネクタは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の中継電気コネクタでは、上方および下方のそれぞれから相手接続体としての相手コネクタが接続される回路基板(中継回路基板)がその板厚方向に複数配列された状態で、四角筒ケース状のハウジングに収容されて保持されている。回路基板は、電気絶縁材製の板状の基材と、該基材の板面に沿って上下方向に延びるパターンとして形成された5つのペア伝送路とを有している。
【0003】
ペア伝送路は、2つの信号伝送線路をペアとしてもつ差動信号伝送用の信号伝送線路ペア(差動ペア線路)であり、基材の板厚方向に見たときに上下方向全域にわたって平行に延びるストレートペア、あるいは、上下方向における一部が交差するクロスペアをなしている。上記回路基板では、隣接する差動ペア線路同士のクロストークを低減するために、2つのストレートペアと3つのクロスペアが交互に配置されて形成されている。また、クロスペアにおいては、2つの信号伝送線路が一部交差していることにより、これらの信号伝送線路における差動信号の伝送時間のずれ、いわゆるスキュー(電気長差)の低減が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-032548号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、回路基板は、その強度を確保するために、複数の繊維(例えば、ガラス繊維)を網目状に編み込んで形成した繊維クロスを樹脂製の基材の内部に埋設して作られることが多い。このとき、繊維クロスと樹脂とで誘電率が異なっていることに起因して、回路基板において、局所的に誘電率が高い部分と低い部分が形成されることとなる。
【0006】
このような回路基板の板面にストレートペアを形成する場合、回路基板の基材において、該ストレートペアの全長範囲に対応する部分での誘電率の分布状態が、ストレートペアの一方の信号伝送線路と他方の信号伝送線路とで相違する。ここで、一例として、縦方向に延びる複数の繊維(ここでは「縦繊維」という)と横方向に延びる複数の繊維(ここでは「横繊維」という)とが格子網目状に編み込まれた繊維クロスを埋設した基材にストレートペアを形成する場合を説明する。仮に、基材の板厚方向に見て、一方の信号伝送線路が縦繊維と同じ位置で縦方向に延び、他方の信号伝送線路が隣接する2つの縦繊維の間の位置で縦方向に延びている場合、一方の信号伝送線路についてはその全長範囲に対応して縦繊維が存在しているが、他方の信号伝送線路については、その全長範囲に対応して、横繊維と基材の樹脂が交互に存在している。したがって、2つの信号伝送線路に対応する部分の誘電率の分布状態は大きく相違することとなる。この誘電率の分布状態の相違は、ストレートペアの2つの信号伝送線路同士の間で生じるスキューの増大につながる。
【0007】
一方、クロスペアを形成する場合には、該クロスペアの2つの信号伝送線路は、長手方向での中間位置で交差することで互いの位置が途中から入れ替わっている関係上、全長範囲を総合的に見たときに、基材において、全長範囲に対応する部分での誘電率の分布状態が、一方の信号伝送線路と他方の信号伝送線路とでほぼ同じとなる。したがって、クロスペアにおいては、誘電率の分布状態の相違は、2つの信号伝送線路同士の間で生じるスキューの増大にあまり影響を及ぼさない。
【0008】
しかし、クロスペアにおいてスキューが増大しにくくても、ストレートペアにおいてスキューが増大しやすいと、ストレートペアとクロスペアと間で大きなスキューの差(ずれ)が生じてしまう。このようなスキューの差は、回路基板全体として見たときに、信号伝送特性の低下を招くこととなる。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑み、ストレートペアとクロスペアとの間でスキューの差を良好に低減できる中継回路基板および中継電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明に係る中継回路基板は、2つの相手接続体を中継接続する中継電気コネクタに設けられる。
【0011】
かかる中継回路基板において、本発明では、板状の基材と、前記基材の板面上にて、一方の前記相手接続体が接続される前記基材の一端側から他方の前記相手接続体が接続される前記基材の他端側にわたって延びる複数の差動信号伝送用の信号伝送線路ペアとを有し、前記基材は、前記基材を補強するための複数の繊維が網目状に編み込まれて形成された繊維クロスと、前記繊維クロスを埋設する樹脂製の板状部材とを有し、複数の前記信号伝送線路ペアは、交互に配置されたストレートペアとクロスペアとを有し、前記ストレートペアは、互いに平行をなして延びる2つの信号伝送線路、あるいは前記ストレートぺアの長手方向における偶数箇所で互いに非接触で交差する交差部分をもつ2つの信号伝送線路で形成され、前記クロスペアは、前記クロスペアの長手方向における奇数箇所で互いに非接触で交差する交差部分をもつ2つの信号伝送線路で形成され、前記ストレートペアおよび前記クロスペアは、前記基材の板厚方向に見て、前記ストレートペアおよび前記クロスペアの長手方向での少なくとも一部が前記繊維クロスの前記繊維に対して傾斜するように延びて形成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明では、ストレートペアは、基材の板厚方向に見て、該ストレートペアの長手方向での少なくとも一部が繊維クロスの繊維に対して傾斜するように延びて形成されている。したがって、ストレートペアのそれぞれの信号伝送線路は、上記繊維に対して傾斜している範囲にわたって、基材における繊維の部分と板状部材の樹脂の部分とが規則的に分布した範囲で延びている。その結果、基材において、ストレートペアの上記範囲に対応する部分での誘電率の分布状態が、一方の信号伝送線路と他方の信号伝送線路とでほぼ同じとなり、2つの信号伝送線路同士の間で大きなスキューが生じにくくなる。
【0013】
一方、クロスペアについては、2つの信号伝送線路は、クロスペアの長手方向における奇数箇所で互いの位置が途中から入れ替わっている関係上、もともと、大きなスキューが生じくい。本発明では、さらに、クロスペアの長手方向での少なくとも一部が繊維クロスの繊維に対して傾斜するように延びて形成されている。したがって、ストレートペアについて上述したのと同様に、クロスペアのそれぞれの信号伝送路は、上記繊維に対して傾斜している範囲にわたって、基材における繊維の部分と板状部材の樹脂の部分とが規則的に分布した範囲で延びている。その結果、一方の信号伝送線路と他方の信号伝送線路とで、上述の誘電率の分布状態がさらに近くなり、大きなスキューがより生じにくくなる。
【0014】
このように本発明では、ストレートペアおよびクロスペアのいずれにおいても大きなスキューが生じにくいので、ストレートペアとクロスペアとの間でスキューの差が良好に低減される。
【0015】
(2) (1)の発明において、前記ストレートペアおよび前記クロスペアは、前記基材の板厚方向に見て、前記ストレートペアおよび前記クロスペアの長手方向での少なくとも一部が前記繊維クロスの前記繊維に対して2~20度の角度をもって傾斜していてもよい。
【0016】
(3) 本発明に係る中継電気コネクタは、(1)または(2)の発明の中継回路基板を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ストレートペアとクロスペアとの間でスキューの差を良好に低減できる中継回路基板および中継電気コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る中継コネクタを基板コネクタとともに示した斜視図であり、嵌合接続前の状態を示している。
図2】中継コネクタを基板コネクタとともに示した斜視図であり、嵌合接続後の状態を示している。
図3】中継コネクタの各部材を分離して示した斜視図である。
図4】互いに上下反転した状態の2枚の中継基板を並べて示した正面図である。
図5】3枚の中継基板に設けられる信号伝送線路ペアのみを並べて示した斜視図である。
図6】中継コネクタの下側側壁および上側側壁の位置における、コネクタ幅方向に対して直角な面での断面図であり、(A)は全ての中継基板が正しく配置されている状態、(B)は、一部の中継基板が誤って配置されている状態を示している。
図7】第一基板コネクタの各部材を分離して示した斜視図である。
図8】中継コネクタの下部および第一基板コネクタについての中継電気コネクタの配列方向に対して直角な面での断面図あり、嵌合接続前の状態を示している。
図9】中継コネクタの下部および第一基板コネクタについての中継コネクタの配列方向に対して直角な面での断面図あり、(A)は嵌合接続途中の状態、(B)は嵌合接続後の状態、(C)は抜去途中の状態を示している。
図10】基板素材のガラスクロスと基材および信号伝送線路ペアとの位置関係を示した図である。
図11】中継基板の信号伝送線路ペアに信号を流したときに発生したスキューを示したグラフであり、(A)は、ストレートペアに関するグラフ、(B)はクロスペアに関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1および図2は、本発明の実施形態に係る中継電気コネクタ1(以下、「中継コネクタ1」という)を、相手接続体としての第一基板コネクタ2および第二基板コネクタ3(以下、必要に応じて「基板コネクタ2,3」と総称する)とともに示した斜視図であり、図1は嵌合接続前の状態、図2は嵌合接続後の状態を示している。本実施形態では、中継コネクタ1および基板コネクタ2,3は高速差動信号を伝送するコネクタ組立体を構成する。基板コネクタ2,3は、それぞれ異なる回路基板(図示せず)上に配される回路基板用電気コネクタであり、各回路基板の面が上下方向、換言するとコネクタ高さ方向(Z軸方向)に対して直角をなす姿勢で中継コネクタ1に嵌合される。具体的には、中継コネクタ1に対して下方(Z2側)から第一基板コネクタ2が嵌合接続され、上方(Z1側)から第二基板コネクタ3が嵌合接続されることにより、基板コネクタ2,3同士が中継コネクタ1を介して接続される。本実施形態では、基板コネクタ2,3は、全く同じ形状をなす電気コネクタとして構成されている。
【0021】
中継コネクタ1は、図1に見られるように、板状をなす後述の複数の中継体としての中継回路基板40(以下、「中継基板40」という)と、複数の中継基板40をその板厚方向(X軸方向)で所定間隔をもって配列して支持する樹脂等の電気絶縁材製のハウジング10と、後述の二つの金属板製の連繋金具50とを有している。
【0022】
ハウジング10は、中継基板40の配列方向(X軸方向)を長手方向(以下、「コネクタ長さ方向」という)とする略直方体外形をなしている。ハウジング10は、中継基板40の下側部分を支持する下側ハウジング20と、中継基板40の上側部分を支持する上側ハウジング30とを有している。後述するように、下側ハウジング20と上側ハウジング30とは連繋金具50を介して連結されている。
【0023】
図3は、中継コネクタ1の各部材を分離して示した斜視図である。下側ハウジング20は、図3に示されるように、上方から見て四角枠状をなし複数の中継基板40を包囲する周壁21と、複数の中継基板40をコネクタ長さ方向(X軸方向)で所定間隔をもって位置させるための複数の下側中間壁(図示せず)とを有している。周壁21は、コネクタ長さ方向(X軸方向)に延びる二つの下側側壁22と、コネクタ長さ方向に対して直角なコネクタ幅方向(Y軸方向)に延び上記二つの下側側壁22の端部同士を連結する二つの下側端壁23とを有している。下側中間壁は、周壁21に囲まれた空間内にて、コネクタ長さ方向に対して直角な板面をもつ板状をなして二つの下側側壁22の上下方向中間部の内壁面同士を連結しており、コネクタ長さ方向で所定間隔をもって配列形成されている(上側ハウジング30の上側中間壁34を参照)。
【0024】
隣接する下側中間壁同士の間あるいは下側中間壁と下側端壁23との間で上下方向に貫通して形成されるスリット状の空間は、中継基板40の下側部分を収容するための下側基板収容空間(図示せず)をなしている。該下側基板収容空間の下方には、周壁21に囲まれた下側受入部26が形成されており(図8参照)、該下側受入部26で第二基板コネクタ3を下方から受入可能となっている。
【0025】
下側側壁22の上部には、図3に示されるように、コネクタ幅方向(Y軸方向)、すなわち下側側壁22の厚さ方向で中間位置に、連繋金具50の下部を受け入れるための下側溝部22Aがコネクタ長さ方向に延びて形成されている。下側側壁22の上部においてコネクタ幅方向で下側溝部22Aの外側に位置する壁部には、下側側壁22をその壁厚方向に貫通する下側係止孔部22Bが、コネクタ長さ方向(X軸方向)で所定間隔をもって複数形成されている。下側係止孔部22Bは、連繋金具50の後述の下側係止片51Aと係止可能となっている。
【0026】
下側側壁22の下部には、下壁側壁22をその壁厚方向(Y軸方向)に貫通する被ロック孔部22Cが、コネクタ長さ方向(X軸方向)で所定間隔をもって複数形成されている。図8に示されるように、被ロック孔部22Cの下縁部を形成する部分には、第一基板コネクタ2の後述のロック部83Bと係止可能な被ロック部22C-1が形成されている。被ロック部22C-1は、コネクタ幅方向内方へ向かうにつれて上方へ向けて傾斜して延びる爪状をなしている。
【0027】
図3に示されるように、下側側壁22の内面には、中継基板40の側縁部(上下方向に延びる縁部)を収容するスリット22Dが、上下方向に延びて形成されている。また、下側側壁22の上部には、図6(A),(B)に示されるように、コネクタ幅方向(Y軸方向)での下側溝部22Aとスリット22Dとの間の位置に、中継基板40の後述の被支持部41Aを下方から支持するための第一下側支持部22Eおよび第二下側支持部22Fが設けられている。第一下側支持部22Eおよび第二下側支持部22Fは、コネクタ長さ方向で交互に設けられており、第一下側支持部22Eは、第二下側支持部22Fよりも所定の寸法Pだけ上方に突出して位置している。第一下側支持部22Eおよび第二下側支持部22Fは、上端面が、上下方向に対して直角な平坦面をなしており、該上端面で、中継基板40の後述の被支持部41Aを下方から支持するようになっている。
【0028】
上側ハウジング30は、下側ハウジング20と類似した形状をなしており、図1図2図3および図6(A),(B)に示されるように、下側ハウジング20に対して上下反転した姿勢で設けられている。これらの図では、上側ハウジング30において、下側ハウジング20の各部と対応する部分が、下側ハウジング20における符号に「10」を加えた符号を付して示されている。ここでは、下側ハウジング20と異なる部分を中心に説明する。上側ハウジング30は、隣接する上側中間壁34同士の間あるいは上側中間壁34と端壁33との間に形成されたスリット状の上側基板収容空間35で中継基板40の上側部分を収容する。また、上側基板収容空間35の上方には、周壁31に囲まれた上側受入部36が形成されており、該上側受入部36で第二基板コネクタ3を上方から受入可能となっている。上側ハウジング30は、図3に示されるように、下側ハウジング20の被ロック孔部22Cと対応する位置に、上方へ向けて開口した切欠部32Cが形成されている。つまり、上側ハウジング30には、下側ハウジング20の被ロック部22C-1に相当する部分は設けられていない。
【0029】
上側ハウジング30には、図6(A),(B)に示されるように、上側側壁32の下部に、中継基板40を上方から支持するための第一上側支持部32Eおよび第二上側支持部32Fが設けられている。第一上側支持部32Eおよび第二上側支持部32Fは、コネクタ長さ方向で交互に設けられており、第一上側支持部32Eは、コネクタ長さ方向で第二下側支持部22Fと同位置に位置し、第二上側支持部32Fは、コネクタ長さ方向で第一下側支持部22Eと同位置に位置している。第一上側支持部32Eおよび第二上側支持部32Fは、それぞれ第一下側支持部22Eおよび第二下側支持部22Fを上下反転させた形状となっており、その下端面(平坦面)で、対応する中継基板40の後述の被支持部41Aを下方から支持するようになっている。
【0030】
本実施形態では、第一上側支持部32Eは、第二上側支持部32Fよりも所定の寸法Pだけ下方に突出して位置している。つまり、第一上側支持部32Eが第二上側支持部32Fよりも下方に突出する寸法Pは、第一下側支持部22Eが第二下側支持部22Fよりも上方に突出する寸法Pと等しくなっている。
【0031】
連繋金具50は、金属板部材を打ち抜くとともに部分的に屈曲して作られている。連繋金具50は、図3に示されるように、コネクタ長さ方向(X軸方向)を長手方向として延び、その板厚方向がコネクタ幅方向(Y軸方向)に一致した姿勢で、コネクタ幅方向での中継基板40の両側に1つずつ設けられている。連繋金具50の下端側には、コネクタ長さ方向で下側ハウジング20の下側係止孔部22Bに対応する位置に、下側溝部22Aに上方から進入可能な下側突片51が下方へ突出して設けられている。下側突片51には、その一部をコネクタ幅方向外方へ切り起こした下側係止片51Aが形成されている。下側係止片51Aは、下側係止孔部22Bに進入して該下側係止孔部22Bの上縁部に下方から係止するようになっている。連繋金具50の上端側には、下側突片51および下側係止片51Aと同様に、上側ハウジング30の上側溝部に進入可能な下側突片52と、上側係止孔部32Bに進入して該上側係止孔部32Bの下縁部に上方から係止可能な上側係止片52Aが設けられている。
【0032】
中継基板40は、図3に示されるように、樹脂等の電気絶縁材製の板状の基材41と、基材41に配列形成された複数の差動信号伝送用の信号伝送線路ペア42,44(図4および図5参照)と、基材41の両方の板面(板厚方向(X軸方向)に対して直角な面)を覆うように形成されたグランド層46とを有している。信号伝送線路ペア42,44は、それぞれ基材41の板面に沿って延びる導電パターンと、板厚内部に設けられ導電パターン同士を接続するビアとを有している。本実施形態では、複数の中継基板40は、コネクタ長さ方向で隣接する中継基板40同士が互いに上下反転した姿勢で設けられている。ここで、中継基板40についての「上下反転」とは、中継基板40の面(X軸方向に対して直角な面)を維持したまま、該面の中心を通るX軸方向の軸線まわりに中継基板40を180°回転させることをいう。
【0033】
基材41は、図3に示されるように、コネクタ幅方向での両端で上下方向に延びる側縁部に、上下方向にて互いに同じ位置でコネクタ幅方向外方へ突出する被支持部41Aを有している。被支持部41Aは、上下方向にて基材40の中央位置から一方の側へずれた位置に設けられている。中継基板40は、図6(A),(B)に示されるように、被支持部41Aが、下側ハウジング20の第一下側支持部22Eまたは第二下側支持部22Fによって下方から支持され、上側ハウジング30の第一上側支持部32Eまたは第二上側支持部32Fによって上方から支持されるようになっている。被支持部41Aは、図4に示されるように、上下反転させた2つの中継基板40において、上下方向で所定の寸法Pだけ異なって位置している。この所定の寸法Pは、第一下側支持部22Eが第二下側支持部22Fよりも上方に突出する所定の寸法P(図6(A)参照)、および第一上側支持部32Eが第二上側支持部32Fよりも下方に突出する所定の寸法P(図6(A)参照)と等しい。
【0034】
信号伝送線路ペア42,44は、図4および図5に示されるように、ストレートペア42とクロスペア44の2種のペアを有している。本実施形態では、3つのストレートペア42と3つのクロスペア44とがコネクタ幅方向(Y軸方向)で交互に配置されている。
【0035】
ストレートペア42は、上下方向で一端側から他端側までの全範囲にわたり互いに交差することなく間隔をもって延びる一対(2つ)のストレートパターン(ストレート線路)43を有している。一対のストレートパターン43は、基材41の板厚方向(X軸方向)に見たとき、互いに左右対称でかつ上下対称な形状をなしている。ストレートパターン43は、図5に示されるように、基板コネクタ2,3との接続のための信号接続部43Aと、上下方向に分割されて延びる複数の細条部43Bと、基材41の板厚内を板厚方向(X軸方向)に延びる複数の信号用ビアとを有している。信号接続部43Aおよび複数の細条部43Bは信号用ビアによって互いに連結されており、これによって、ストレートパターン43は、基材41の板厚内で2層にわたって形成されている。本実施形態では、ストレートペア42は、互いに交差することがない一対のストレートパターン43によって構成されることとしたが、これに替えて、ストレートペアは、該ストレートペアの長手方向における偶数箇所で互いに非接触で交差する交差部分をもつ一対のストレートパターンによって構成されていてもよい。
【0036】
クロスペア44は、上下方向における中間位置で互いに非接触で交差する一対(2つ)のクロスパターン(クロス線路)45を有している。一対のクロスパターン45は、基材41の板厚方向に見たとき、互いに左右非対称かつ上下非対称な形状をなしている。クロスパターン45も、ストレートパターン43と同様に、基板コネクタ2,3との接続のための信号接続部45Aと、上下方向に分割されて延びる複数の細条部45Bと、基材41の板厚内を板厚方向(X軸方向)に延びる複数の信号用ビアとを有している。信号接続部45Aおよび複数の細条部45Bは信号用ビアによって互いに連結されており、これによって、クロスパターン45は、基材41の板厚内で2層にわたって形成されている。本実施形態では、クロスペア44のクロスパターン45は、クロスペア44の長手方向における1箇所にて互いに非接触で交差しているが、この交差部分が形成される箇所数は、1箇所であることに限られず、奇数箇所であればよい。
【0037】
グランド層46は、金属製の層状をなしており、図3に示されるように、基材41のそれぞれの板面のほぼ全域を覆うように形成されている。
【0038】
中継コネクタ1は次の要領で組み立てられる。まず、下側ハウジング20の下側基板収容空間へ上方から中継基板40を1つずつ挿入して配置する。このとき、中継基板40は、互いに隣接する中継基板40が上下反転して設けられるように配置され、それぞれの被支持部41Aが第一下側支持部22Eまたは第二下側支持部22Fによって下方から支持される。具体的には、図6(A)に示されるように、被支持部41Aが上方に寄って位置する姿勢の中継基板40は、その被支持部41Aが第一下側支持部22Eによって支持されるように配置され、被支持部41Aが下方に寄って位置する姿勢の中継基板40は、その被支持部41Aが第二下側支持部22Fによって支持されるように配置される。
【0039】
また、連繋金具50を下側ハウジング20に取り付ける。具体的には、連繋金具50の下側突片51を下側ハウジング20の下側溝部22Aへ上方から挿入する。このとき、下側係止片51Aは、挿入途中において、下側溝部22Aの内壁面との当接によりコネクタ幅方向内方へ弾性変形し、その後、下側係止孔部22Bの位置に達すると、自由状態に戻り、下側係止孔部22B内に進入する。その結果、下側係止片51Aが下側係止孔部22Bの上縁に下方から係止可能な状態となり連繋金具50の取付けが完了する。
【0040】
次に、下側ハウジング20に配置された中継基板40に対して上側ハウジング30を上方からもたらし、中継基板40の上部を上側ハウジング30の上側基板収容空間35へ下方から挿入して配置するとともに、上側ハウジング30に連繋金具50を下方から取り付ける。図6(A)に示されるように、被支持部41Aが上方に寄って位置する姿勢の中継基板40は、その被支持部41Aが第二上側支持部32Fによって上方から支持され、被支持部41Aが下方に寄って位置する姿勢の中継基板40は、その被支持部41Aが第一上側支持部32Eによって上方から支持される。
【0041】
また、上側ハウジング30への連繋金具50の取付けは、既述した下側ハウジング20への連繋金具50の取付けと同じ要領で行われる。連繋金具50が取り付けられると、上側係止片52Aが上側ハウジング30の上側係止孔部32Bの下縁に上方から係止可能な状態となる。このようにして、中継コネクタ1の組立てが完了する。
【0042】
本実施形態では、既述したように、互いに上下反転した2つの中継基板40の被支持部41A同士が上下方向で所定の寸法Pだけ異なって位置している。また、第一下側支持部22Eと第二下側支持部22Fとは上下方向で所定の寸法Pだけ異なって位置している。したがって、隣接する中継基板40が上下反転するように、中継基板40が正しい姿勢で配置されている場合には、図6(A)に示されるように、全ての中継基板40の上端は上下方向で同じ高さに位置することとなる。したがって、作業者は、それらの中継基板40が正しい姿勢で配置されたことを目視により簡単に認識することができる。
【0043】
仮に、複数の中継基板40のうちに、隣接する中継基板40に対して上下反転されていない姿勢で誤配置された中継基板40がある場合には、図6(B)に示されるように、その中継基板40の上端は、他の中継基板40よりも上方あるいは下方にずれて位置する。例えば、被支持部41Aが上方に寄って位置する姿勢の中継基板40が、コネクタ長さ方向で第二下側支持部22Fの位置に配置された場合には、中継基板40の上端は、他の中継基板40の上端よりも下方に位置する(図6(B)における右から2番目の中継基板40を参照)。また、被支持部41Aが下方に寄って位置する姿勢の中継基板40が、コネクタ長さ方向で第一下側支持部22Eの位置に配置された場合には、中継基板40の上端は、他の中継基板40の上端よりも上方に位置する(図6(B)における右から5番目の中継基板40を参照)。
【0044】
したがって、作業者は、中継基板40が誤配置されたことを目視により簡単に認識することができる。中継基板40の誤配置があったことは、下側ハウジング20に中継基板40を配置する際、および中継コネクタ1を組立てが完了した後のいずれのタイミングでも認識できる。このような誤配置があった場合には、その中継体を上下反転させてから、再度下側ハウジング20に配置し直せばよい。
【0045】
既述したように、本実施形態では、中継基板40を上下反転させたとき、図4および図5に示されるように、反転状態におけるストレートペア42が非反転状態のクロスペア44に対応して位置し、反転状態におけるクロスペア44が非反転状態のストレートペア42に対応して位置する。したがって、複数の中継基板40がハウジング10に配列された状態において、隣接する任意の2つの中継基板40のうち一方の中継基板40において、他方の中継基板40のストレートペア42に対応する位置にクロスペア44が配置され、他方の中継基板40のクロスペア44に対応する位置にストレートペア42が配置された状態となる。つまり、複数の中継基板40全体で見たときにストレートペア42とクロスペア44が千鳥状に配置された状態となるので、中継基板40同士でのFEXT(遠端クロストーク)が良好に低減される。
【0046】
なお、本実施形態では、互いに上下反転した姿勢の2つの中継基板40において、ストレートペア42とクロスペア44とがコネクタ幅方向で同位置に位置することで対応しているが、同位置であることは必須ではなく、ストレートペア42とクロスペア44がコネクタ幅方向で若干ずれて位置して対応していてもよい。また、本実施形態では、ストレートペア42とクロスペア44とが交互に配置されることとしたが、交互に配置されることは必須ではなく、ストレートペア42とクロスペア44とが対応して配置されていればよい。
【0047】
次に、基板コネクタ2,3の構成について説明する。図1に見られるように、基板コネクタ2,3は全く同じ構成であるので、以下、第一基板コネクタ2の構成を中心に説明し、第二基板コネクタ3の説明は第一基板コネクタ2と同じ符号を付して省略する。図7は、第一基板コネクタ2の各部材を分離して示した斜視図である。図1および図7に見られるように、第一基板コネクタ2は、中継コネクタ1の下側ハウジング20の下側受入部26(図8参照)に適合した直方体外形で形成されたハウジング60と、ハウジング60に配列保持される複数の端子保持体70と、コネクタ幅方向での端子保持体70の両側でコネクタ長さ方向に延びる二つの金属板製の連結金具80とを有している。
【0048】
ハウジング60は、樹脂等の電気絶縁材製であり、図1に示されるように、端子保持体70の配列方向(X軸方向)を長手方向(コネクタ長さ方向)とする略直方体外形をなしている。ハウジング60は、図1および図7に示されるように、上下方向に分割して形成された上側ハウジング61と下側ハウジング62とを有している。上側ハウジング61と下側ハウジング62とは連結金具80を介して連結されている。ハウジング60は、コネクタ長さ方向に配列された複数の端子保持体70を収容して保持している。
【0049】
上側ハウジング61は、図7に示されるように、上下方向に見て四角枠状をなす上側周壁61Aと、上側周壁61Aに囲まれた空間でコネクタ幅方向(Y軸方向)に延びる複数の上側中間壁61Dとを有している。上側周壁61Aは、コネクタ長さ(X軸方向)に延びる2つの上側側壁61Bと、コネクタ幅方向(Y軸方向)に延び2つの上側側壁61Bの端部同士を連結する2つの上側端壁61Cとを有している。複数の上側中間壁61Dは、コネクタ幅方向に延びて2つの上側側壁61Bの内壁面同士を連結している。上側側壁61Bには、コネクタ長さ方向で間隔をもった複数位置に、上下方向に貫通する溝状の上側連結溝部61B-1が形成されている。上側側壁61Bには、コネクタ長さ方向で上側連結溝部61B-1とは異なる複数位置に、上下方向に貫通する溝状の上側ロック溝部61B-2が形成されている。
【0050】
下側ハウジング62は、コネクタ長さ方向(X軸方向)で等間隔に配列された複数の端子保持体70を保持している。下側ハウジング62も、上側ハウジング61と同様に、四角枠状の下側周壁62Aと、コネクタ幅方向(Y軸方向)に延びる複数の下側中間壁62Dとを有している。また、下側周壁62Aは、上側周壁61Aと同様に、コネクタ長さ方向に延びる2つの下側側壁62Bと、コネクタ幅方向に延びる2つの下側端壁62Cとを有している。
【0051】
下側側壁62Bには、コネクタ長さ方向での上側ハウジング61の上側連結溝部61B-1と同位置に、上下方向に貫通して上側連結溝部61B-1に連通する溝状の下側連結溝部62B-1形成されている。また、下側側壁62Bには、コネクタ長さ方向での上側ハウジング61の上側ロック溝部61B-2と同位置に、上下方向に貫通して上側ロック溝部61B-2に連通する溝状の下側ロック溝部62B-2が形成されている。
【0052】
端子保持体70は、図7に示されるように、コネクタ幅方向に配列された金属板製の複数の信号端子と、コネクタ幅方向に延びて設けられた金属板製の複数のグランド部材と、信号端子およびグランド端子を保持する樹脂等の電気絶縁材製の保持部材とを有している。信号端子は、上端側で、中継コネクタ1の中継基板40の下部に形成された信号接続部43Aまたは信号接続部45Aに接触可能となっているとともに、下端側で、回路基板の対応回路部に半田接続可能となっている。グランド部材は、上端側で、中継コネクタ1の中継基板40に形成されたグランド層46に接触可能となっているとともに、下端側で、回路基板の対応回路部に半田接続可能となっている。
【0053】
連結金具80は、図7に示されるように、コネクタ長さ方向(X軸方向)に延びる金属板部材を打ち抜くとともに部分的に板厚方向に屈曲して作られている。連結金具80は、コネクタ長さ方向で端子保持体70の配列範囲の全域にわたって延び、コネクタ幅方向における第一基板コネクタ2の両側でコネクタ幅方向に対して直角な板面をもった姿勢で設けられている。本実施形態では、連結金具80がこのような姿勢で設けられる板状部材となっているので、コネクタ幅方向における連結金具80の寸法を該連結金具80の板厚寸法に留めることができ、その結果、コネクタ幅方向における第一基板コネクタ2の大型化を回避できる。
【0054】
連結金具80は、コネクタ長さ方向に延びる側板部81と、コネクタ長さ方向における複数位置で側板部81から上方に延びる複数の係止腕部82およびロック腕部83と、コネクタ長さ方向における複数位置で側板部81から下方に延びる複数の固定部84とを有している。
【0055】
係止腕部82は、コネクタ長さ方向で上側ハウジング61の上側連結溝部61B-1および下側連結溝部62B-1に対応する位置に設けられている。係止腕部82は、その一部がコネクタ幅方向外方へ向けて切り起こされた係止片82Aが形成されており、該係止片82Aで上側ハウジング61の上側側壁61Bに形成された段部に上方から係止するようになっている。
【0056】
ロック腕部83は、上側ハウジング61の上側ロック溝部61B-2および下側ロック溝部62B-2に対応する位置に設けられている。ロック腕部83は、コネクタ幅方向に弾性変形可能な弾性片をなし、中継コネクタ1の下側ハウジング20の被ロック部22C-1に上下方向で係止可能となっている(図9(B)参照)。具体的には、ロック腕部83は、図8に示されるように、上下方向で直状に延びる直状部83Aと、該直状部83Aの上端から屈曲して延びるロック部83Bとを有している。直状部83Aは、その板厚方向、すなわちコネクタ幅方向に弾性変形可能となっている。ロック部83Bは、直状部83Aよりもコネクタ幅方向で外側に位置している。ロック部83Bは、直状部83Aの上端で屈曲されてコネクタ幅方向外方かつ下方へ向けて傾斜して延びてから、上方へ向けて屈曲されて延び、さらにその上端部(自由端部)がコネクタ幅方向内方かつ上方へ受けて傾斜して延びるように屈曲されて形成されている。本実施形態では、連結金具80においてロック腕部83がコネクタ長さ方向での複数位置に設けられているので、これらの位置でロック部83Bを中継コネクタ1の被ロック部22C-1と係止させることができ、第一基板コネクタ2と中継コネクタ1とのロック強度を増大させることができる。
【0057】
固定部84は、コネクタ長さ方向における係止腕部82およびロック腕部83のそれぞれに対応する位置に設けられており、その下端部で、回路基板の対応部に半田接続される固定されるようになっている。
【0058】
第一基板コネクタ2は、次の要領で組み立てられる。まず、下側ハウジング62において隣接する下側中間壁62Dの間、および隣接する下側端壁62Cと下側中間壁62Dとの間の溝部に端子保持体70を上方から挿入し、複数の端子保持体70をコネクタ長さ方向(X軸方向)に配列した状態で下側ハウジング62に保持させる。また、二つの金属板製の連結金具80の係止腕部82を下側連結溝部62B-1へ下方から圧入する。このとき、ロック腕部83は下側ロック溝部62B-2へ下方から進入する。
【0059】
さらに、上側ハウジング61を下側ハウジング62に上方から取り付ける。このとき、連結金具80の係止腕部82が上側連結溝部61B-1へ下方から挿入され、係止片82Aが上側側壁61Bの上記段部に上方から係止可能に位置する。その結果、上側ハウジング61と下側ハウジング62とが外れが防止される。また、これと同時に、ロック腕部83が上側ロック溝部61B-2へ下方から進入する。この結果、ロック腕部83は、コネクタ幅方向に弾性変形可能な状態で、上側ロック溝部61B-2および下側ロック溝部62B-2に収容される。このようにして上側ハウジング61を取り付けることにより、第一基板コネクタ2が完成する。また、第二基板コネクタ3も第一基板コネクタ2と同じ要領で製造される。
【0060】
次に、中継コネクタ1と基板コネクタ2,3とのコネクタ嵌合動作について説明する。まず、基板コネクタ2,3をそれぞれ異なる回路基板に半田接続して取り付ける。次に、図1に見られるように、中継コネクタ1を第一基板コネクタ2の上方に位置させる。
【0061】
次に、図8にて矢印で示されるように、中継コネクタ1を下方へ移動させて第一基板コネクタ2に嵌合接続させる。嵌合接続の途中において、下側ハウジング20の被ロック部22C-1の下面が連結金具80のロック腕部83のロック部83Bに上方からに当接する。被ロック部22C-1の下面は、コネクタ幅方向内方へ向かうにつれて上方へ傾斜する傾斜面をなしているので、ロック部83Bをコネクタ幅方向内方へ押圧する。その結果、図9(A)に示されるように、ロック腕部83がコネクタ幅方向内方に弾性変形し、中継コネクタ1の下方へ向けたさらなる移動が許容される。
【0062】
中継コネクタ1がさらに下方へ移動して、被ロック部22C-1がロック部83Bの位置を通過すると、図9(B)に示されるように、ロック腕部83が自由状態に戻り、ロック部83Bが被ロック部22C-1の直上に位置する。その結果、被ロック部22C-1がロック部83Bへ下方から係止可能となり、中継コネクタ1の上方への移動が規制されたロック状態となる。
【0063】
中継コネクタ1が第一基板コネクタ2に嵌合接続されると、第一基板コネクタ2の信号端子およびグランド端子が、各中継基板40の下部における信号接続部43A、信号接続部45A、グランド層46に接圧をもって接触し、電気的に導通可能な状態となる。
【0064】
次に、第二基板コネクタ3を、第一基板コネクタ2に対して上下反転させた姿勢(図1に示される姿勢)で中継コネクタ1に対して上方から嵌合接続させる。既述したように、中継コネクタ1の上側ハウジング30において、下側ハウジング20の被ロック孔部22Cに対応する部分には、切欠部32Cが形成されている。つまり、上側ハウジング30には、下側ハウジング20の被ロック部22C-1に対応する部分が存在しない。したがって、第二基板コネクタ3のロック腕部83は、上側ハウジング30と干渉することなく、切欠部32C内に上方から進入する(図2参照)。つまり、第二基板コネクタ3のロック腕部83は使用されない。
【0065】
第二基板コネクタ3が中継コネクタ1に嵌合接続されると、第二基板コネクタ3の信号端子およびグランド端子が、各中継基板40の上部における信号接続部43A、信号接続部45A、グランド層46に接圧をもって接触し、電気的に導通可能な状態となる。このようにして、第一基板コネクタ2と第二基板コネクタ3が中継コネクタ1に嵌合接続されることにより、第一基板コネクタ2と第二基板コネクタ3とが中継コネクタ1を介して電気的に接続される。
【0066】
コネクタ嵌合接続状態において、中継コネクタ1は、第一基板コネクタ2とはロック状態となっているが、第二基板コネクタ3とはロック状態となっていない。したがって、コネクタを抜出する際、第二基板コネクタ3を摘んで上方へ引くと、必ず第二基板コネクタ3が中継コネクタ1から抜出されるようになっており、中継コネクタ1が第一基板コネクタ2から抜出されることはない。
【0067】
第一基板コネクタ2から中継コネクタ1を抜出したい場合には、まず、中継コネクタ1をコネクタ幅方向での一方の側(図9(C)ではY2側)に寄せて、被ロック部22C-1をロック部83Bよりもコネクタ幅方向で外側に位置させる。次に、図9(C)に示されるように、コネクタ幅方向での他方側(図9(C)ではY1側)を支点として中継コネクタ1を回転させるようにして、上記一方の側をもち上げるように傾ける。ロック部83Bの下部には、下方かつ外方に向けて突湾曲した部分が形成されているので、上記一方の側をもち上げる途中において、被ロック部22C-1が上記部分に当接すると、コネクタ幅方向内方(図9(C)ではY1側へ向けた方向)へ向けた押圧力がロック部83Bに作用し、直状部83Aがコネクタ幅方向内方へ弾性変形する。したがって、上記一方の側をさらにもち上げることが許容され、その結果、被ロック部22C-1をロック部83Bよりも上方へ抜き出すことができる。
【0068】
次に、中継コネクタ1をコネクタ幅方向での他方の側に寄せるとともに、該他方の側をもち上げることにより、被ロック部22C-1がロック部83Bよりも上方に抜き出され、その結果、中継コネクタ1を第一基板コネクタ2から抜出することができる。
【0069】
本実施形態では、既述したように、第一基板コネクタ2の連結金具80にロック腕部83が形成されており、ロック腕部83のロック部83Bが、中継コネクタ1の下側ハウジング20の被ロック部22C-1に係止することでロック可能となっている。もし上下方向での回路基板同士の距離の設定が変更された場合には、第一基板コネクタ2および第二基板コネクタ3はそのまま使用され、変更後の上記距離に対応した上下方向寸法の中継コネクタ1を新たに用意することとなる。本実施形態では、中継コネクタ1において、被ロック部22C-1が形成されているのは連繋金具50ではなく下側ハウジング20である。したがって、連繋金具50は、もともとロック機能を有していないので、上記距離の設定の変更に応じて形状を変える必要がなく、そのまま使用することができる。つまり、中継コネクタ1において、少なくとも連繋金具50については、形状を変更したものを新たに製造する必要がなくなるので、その分、中継コネクタ1の製造が煩雑になりにくく、また、製造コストの増大を抑制できる。
【0070】
本実施形態の中継基板40の基材41は、板状をなす基板素材を板厚方向に打ち抜くことで作られる。この基板素材は、基材を補強するための複数の繊維が網目状に編み込まれて形成された繊維クロスが、樹脂製の板状部材の内部に埋設された構成となっている。このとき、繊維クロスと樹脂とで誘電率が異なっていることに起因して、中継基板40において、局所的に誘電率が高い部分と低い部分が形成されることとなる。本実施形態では、繊維クロスは、縦方向に延びる複数のガラス繊維および横方向に延びる複数のガラス繊維が格子網目状に編み込まれたガラスクロスとして形成されている。
【0071】
図10は、基板素材410のガラスクロス411と基材41および信号伝送線路ペア42,44との位置関係を示した図である。この図10に示される基板素材410は、ガラスクロス411が樹脂製の四角形状の板状部材412に埋設されて形成されている。実際には、ガラスクロス411は、板状部材412の内部に埋設されているので外部からは見えないが、図10では説明の便宜上、実線で示されている。
【0072】
ガラスクロス411は、縦方向に延びるガラス繊維である複数の縦繊維411Aと、横方向に延びるガラス繊維である複数の横繊維411Bとを有している。ここで、縦繊維411Aは、板状部材412の縦辺(図示せず)に対して平行に延び、横繊維411Bは、板状部材412の横辺(図示せず)に対して平行に延びている。基材41は、図10に示されるような、基板素材410の板厚方向(図10の紙面に対して直角な方向)に見て、基材41の長手方向がガラスクロス411の縦繊維411Aに対して所定の角度αだけ傾斜するような位置で、基板素材410を板厚方向に打ち抜いて作られる。
【0073】
図10には、基材41が1つだけ示されているが、実際には、複数の基材41が、該基材41の長手方向および短手方向の両方向に並んだ状態で、1つの基板素材410から打ち抜かれることで得られる。このとき、基板素材410において、複数の基材41が長手方向および短手方向でなるべく隙間なく近接して並ぶように位置取りされることが好ましい。このように位置取りすることにより、1つの基板素材410からより多くの基材41を作ることができるので、基板素材410の無駄を減らし、製造コスト増大の抑制することが可能となる。
【0074】
基板素材410に形成される信号伝送線路ペア42,44、換言すると、ストレートペア42とクロスペア44は、基材41の長手方向に延びて形成されている。したがって、図10に示されるように、ストレートペア42およびクロスペア44は、ガラスクロス411の縦繊維411Aに対して所定の角度αだけ傾斜して延びて形成される。
【0075】
したがって、ストレートペア42のそれぞれのストレートパターン43は、その全長にわたって、基材41におけるガラスクロス411の部分、すなわちガラスの部分と、板状部材412の部分、すなわち樹脂の部分とが規則的に分布した範囲で延びている。その結果、基材41において、ストレートペア42の全長範囲に対応する部分での誘電率の分布状態が、一方のストレートパターン43と他方のストレートパターン43とでほぼ同じとなり、2つのストレートパターン43同士の間で大きなスキューが生じにくくなる。
【0076】
一方、クロスペア44については、2つのクロスパターン45は、互いの位置が途中から入れ替わっている関係上、もともと、大きなスキューが生じくい。本実施形態では、ガラスクロス411の縦繊維411Aに対して傾斜するように延びて形成されている。したがって、ストレートペア42について上述したのと同様に、クロスペア44のそれぞれのクロスパターン45は、その全長にわたって、基材41におけるガラスクロス411の部分と板状部材412の部分とが規則的に分布した範囲で延びている。その結果、一方のクロスパターン45と他方のクロスパターン45とで、上述の誘電率の分布状態がさらに近くなり、大きなスキューがより生じにくくなる。
【0077】
このように、本実施形態では、ストレートペア42およびクロスペア44のいずれにおいても大きなスキューが生じにくいので、ストレートペア42とクロスペア44との間でスキューの差が良好に低減される。
【0078】
図11(A),(B)は、中継基板40の信号伝送線路ペア42,44に高速差動信号を流したときに発生するスキューを測定する実験の結果を示したグラフであり、図11(A)は、ストレートペア42に関するグラフ、図12(B)はクロスペア44に関するグラフである。この実験では、ストレートペア42およびクロスペア44の傾斜角度、すなわち図10に示される角度αを0°から徐々に大きくしていき、ストレートペア42およびクロスペア44のそれぞれついてスキューを測定した。図11(A)、(B)のグラフでは、傾斜角度が0°、3°、20°のそれぞれの場合について結果が示されている。ここで、傾斜角度が0°である場合とは、信号伝送線路ペア42,44が縦繊維411Aに対して平行に延びていることを意味している。
【0079】
図11(A),(B)には示されていないが、上記実験において、傾斜角度を0°から大きくしていくと、スキューは急激に低減し、2°あたりから緩やかに低減し、3°以上になるとスキューはほとんど変化しなくなった。つまり、スキューが小さい値で安定するのは3°程度であると言える。
【0080】
図11(A),(B)に示されているように、ストレートペア42およびクロスペア44のいずれにおいても、傾斜角度が3°のとき、および傾斜角度が20°のときには、傾斜角度が0°のときと比べて、スキューが減少し改善している。特に、ストレートペア42では、クロスペア44よりもスキューの減少の度合いが大きくなっている。また、傾斜角度が3°とき、および傾斜角度が20°のときは、傾斜角度が0°のときと比べて、ストレートペア42およびクロスペア44との間でスキューの差が小さくなっている。このように、実験結果からも、ストレートペア42とクロスペア44との間でスキューの差が良好に低減されていることは明らかである。
【0081】
また、既述したように、1つの基板素材410からの基材41の取り分をなるべく多くするために、基板素材410において、複数の基材41が長手方向および短手方向でなるべく隙間なく近接して並ぶようにして位置取りがなされる。このとき、上記傾斜角度を2~20°程度に設定した場合に、スキューの差を十分に小さくしつつ、基材41の取り分を十分に多くできることが分かった。
【0082】
本実施形態では、繊維クロスはガラス繊維で形成されていることしたが、繊維クロスの材料はこれに限られず、例えば、繊維強化プラスチック等、中継基板を補強する材料であればよい。
【0083】
本実施形態では、信号伝送線路ペア42,44(ストレートペア42およびクロスペア44)がその全長範囲にわたって繊維クロスとしてのガラスクロス411に対して傾斜している例を説明したが、繊維クロスに対して傾斜するのは全長範囲であることは必須でなく、信号伝送線路ペアの長手方向での一部の範囲であってもよい。
【0084】
本実施形態では、中継コネクタ1に接続される2つの相手接続体がいずれもコネクタ(基板コネクタ2,3)であることとしたが、これに替えて、変形例として、例えば、一方の相手接続体がコネクタ、他方の相手接続体がケーブルであってもよい。つまり、この変形例では、中継コネクタは、一方の側でコネクタが嵌合接続され、他方の側でケーブルが結線されて接続されることとなる。
【0085】
本実施形態では、中継コネクタ1に対して下方および上方のそれぞれから相手接続体としての基板コネクタ2,3が接続されることとしたが、相手接続体の接続方向はこれに限られず、変形例として、中継コネクタに対する一方の相手接続体の接続方向と他方の相手接続体の接続方向とが交差するようになっていてもよい。この変形例では、例えば、一方の相手接続体が中継コネクタに対して下方から接続され、他方の相手接続体が上下方向に対して直角な方向を接続方向として中継コネクタに接続されるようにしてもよい。つまり、この場合、中継コネクタはいわゆるライトアングルコネクタとして構成されることとなる。
【符号の説明】
【0086】
1 中継コネクタ
2 第一基板コネクタ(相手接続体)
3 第二基板コネクタ(相手接続体)
40 中継基板(中継回路基板)
41 基材
42 ストレートペア(信号伝送線路ペア)
43 ストレートパターン(信号伝送線路)
44 クロスペア(信号伝送線路ペア)
45 クロスパターン(信号伝送線路)
411 ガラスクロス(繊維クロス)
411A 縦繊維(繊維)
411B 縦繊維(繊維)
412 板状部材

図1
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図11