(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006608
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】車両側部構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/06 20060101AFI20240110BHJP
B60K 15/05 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60J5/06 D
B60K15/05 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107670
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 滋己
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA32
3D038CB01
3D038CC16
(57)【要約】
【課題】スライドドアの移動が蓋部材によって規制されることを抑制する。
【解決手段】車両側部構造は、車両Vのスライドドア10と、車両Vの側部1に、車両後方側が車幅方向内外方に開閉可能に配設された蓋部材20と、スライドドア10と共に蓋部材20よりも車両前後方向後方の第1位置Pb1と、蓋部材20よりも車両前後方向前方の第2位置Pb2と、の間で移動する、スライドドア10の車幅方向内方側に配設された第1部材30と、を備える。第1部材30は、第1部材30が第1位置Pb1から第2位置Pb2に移動する際、車両後方側が車幅方向外方に開いた開状態の蓋部材20に当接して蓋部材20を閉方向に案内する第1ガイド部40を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のスライドドアと、
前記車両の側部に、車両後方側が車幅方向内外方に開閉可能に配設された蓋部材と、
前記スライドドアと共に前記蓋部材よりも車両前後方向後方の第1位置と、前記蓋部材よりも車両前後方向前方の第2位置と、の間で移動する、前記スライドドアの車幅方向内方側に配設された第1部材と、
を備え、
前記第1部材は、当該第1部材が前記第1位置から前記第2位置に移動する際、車両後方側が車幅方向外方に開いた開状態の前記蓋部材に当接して当該蓋部材を閉方向に案内する第1ガイド部を有する、車両側部構造。
【請求項2】
前記第1ガイド部は、前記開状態の前記蓋部材に当接して当該蓋部材を前記閉方向に案内する第1ガイド面を備え、
前記第1ガイド面が前記蓋部材に当接した状態で、前記第1ガイド面の前記蓋部材と当接する当接部を通る、上下方向に垂直な断面における当該第1ガイド面は、車両前後方向後方側に向かうほど車幅方向内方に位置するように連続して延在している、請求項1に記載の車両側部構造。
【請求項3】
前記第1ガイド部は、前記開状態の前記蓋部材に当接して当該蓋部材を前記閉方向に案内する第1ガイド面を備え、
前記スライドドアの車幅方向内方側には、前記第1部材が前記第1位置から前記第2位置に移動する際、前記蓋部材のうち前記第1ガイド部が当接する部分以外の部分に当接する第2ガイド部が配設され、
前記第2ガイド部は前記開状態の前記蓋部材と当接して、当該蓋部材を前記第1ガイド面に案内する、請求項1に記載の車両側部構造。
【請求項4】
前記第2ガイド部は、前記開状態の前記蓋部材と当接して当該蓋部材を前記第1ガイド面に案内する第2ガイド面を備え、
前記第1ガイド面を構成する材料の硬さは、前記第2ガイド面を構成する材料の硬さよりも低い、請求項3に記載の車両側部構造。
【請求項5】
前記第1部材は、前記車両に前記スライドドアを車両前後方向に移動可能に支持する支持部材であり、
前記第1ガイド面は、前記蓋部材と上下方向における高さが等しい部分を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の車両側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1が開示するフューエルリッド及びスライドドアの制御装置は、リッド開閉センサと、スライドドア制御手段と、スライドドア位置センサと、フューエルリッド制御部と、を備える。リッド開閉センサはスライドドアを有する車両に搭載され、フューエルリッドの開閉を検知する。スライドドア制御手段は、フューエルリッドが開状態のとき、スライドドアの移動範囲のうち全開位置から所定の移動範囲に設定されたフューエルリッド干渉範囲へのスライドドアの移動を禁止し、スライドドアのフューエルリッド干渉範囲外での移動を許容する。スライドドア位置センサは、スライドドアがフューエルリッド干渉範囲内にあるか否かを検出する。フューエルリッド制御部は、スライドドアがフューエルリッド干渉範囲内にあるとき、フューエルリッドの開放を禁止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、給油口等を覆う蓋部材とスライドドアとを備えた車両では、スライドドアを開けた際、当該スライドドアが蓋部材を車幅方向外方から覆うように配置される場合が有る。そのような配置で蓋部材が開状態にされると、スライドドアの車幅方向内方側に配設された部材と蓋部材とが干渉し、スライドドアの移動が規制されるおそれが有った。
【0005】
本発明の目的は、スライドドアの移動が蓋部材によって規制されることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両側部構造は、車両のスライドドアと、蓋部材と、スライドドアと共に第1位置と第2位置との間で移動する第1部材と、を備える。第1部材は、当該第1部材が第1位置から第2位置に移動する際、開状態の蓋部材に当接して当該蓋部材を閉方向に案内する第1ガイド部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スライドドアの移動が蓋部材によって規制されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る車両側部構造の一構成例を示す図であって、車両Vにおいて開位置に配置されたスライドドアと、蓋部材と、第1部材との位置的関係を示す側面図である。
【
図2】実施形態に係る車両側部構造の開位置に配置されたスライドドアと、蓋部材と、第1部材との位置的関係を示す図であって、車室内から車幅方向外方を見た場合における部分側面図である。
【
図3】実施形態に係る車両側部構造の開位置に配置されたスライドドアと、蓋部材と、第1部材との位置的関係を示す図であって、
図1のSC-SC線に沿った部分断面図である。
【
図4】実施形態に係る車両側部構造の開位置に配置されたスライドドアと、蓋部材と、第1部材との位置的関係を示す図であって、
図4の部分断面図の要部を拡大して示した部分断面図である。
【
図5】実施形態に係る車両側部構造の第1部材を示す斜視図である。
【
図6】実施形態に係る車両側部構造の第1ガイド部を示す、車幅方向内方から見た側面図である。
【
図7】実施形態に係る車両側部構造の第1ガイド部を示す正面図である。
【
図8】スライドドアを開位置から閉位置に移動させた際の車両側部構造の動作を説明する図であって、スライドドアを開位置よりも車両前方に配置した場合における、
図1のSA-SA線に沿った部分断面図と、SB-SB線に沿った部分断面図とを重ねて表した図である。
【
図9】スライドドアを開位置から閉位置に移動させた際の車両側部構造の動作を説明する図であって、スライドドアを
図8に示された位置よりも車両前方に配置した場合における、
図8に相当する部分断面図である。
【
図10】スライドドアを開位置から閉位置に移動させた際の車両側部構造の動作を説明する図であって、スライドドアを
図9に示された位置よりも車両前方に配置した場合における、
図8に相当する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る車両側部構造について説明する。なお、各図中のFR,RRは、車両前後方向前方、後方のそれぞれを示す。LH,RHは、車幅方向左方、右方のそれぞれを示す。UP,DNは、車両上下方向上方、下方のそれぞれを示す。また、車幅方向における車両中心側を車幅方向内方と称し、車幅方向内方とは反対側を車幅方向外方と称する。各図中のISは車幅方向内方を示し、OSは車幅方向外方を示す。以下の説明では、車両前後方向前方、後方、車幅方向左方、右方、車両上下方向上方、下方を、それぞれ単に「車両前方」「車両後方」「車両左方」「車両右方」「上方」「下方」と称する。また、各図の車両右方は車幅方向外方に相当し、車両左方は車幅方向内方に相当する。なお、以下の説明では同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
実施形態に係る車両側部構造は、例えば乗用車である車両Vの側部構造に適用することができる。車両Vは内燃機関(不図示)、電動モータ(不図示)等により駆動する自動車であってもよい。
図1に示すように、実施形態に係る車両側部構造は、スライドドア10と、蓋部材20と、を備える。
【0011】
スライドドア10は、例えば車両Vの車両右方側を構成する側部1に形成された乗降用のドア開口2を閉塞する部材であり、
図1に例示されるように全体として側面視で略矩形の形状を有してもよい。スライドドア10は開位置Pa1と閉位置Pa2の間で移動可能となるように側部1に取り付けられており、後述するレール部3に沿って車両前後方向に移動可能である。なお、スライドドア10の形状は図示された例に限定されず、例えば車両Vの車体又はドア開口2の形状、寸法等に応じて適宜設定されてもよい。
【0012】
閉位置Pa2は、ドア開口2が閉塞された状態におけるスライドドア10の位置である。スライドドア10を閉位置Pa2に配置することによって、車両Vの車室内と車室外とがスライドドア10によって仕切られる。開位置Pa1は、ドア開口2が閉塞されていない状態におけるスライドドア10の位置である。図に例示されるように、開位置Pa1は閉位置Pa2よりも車両後方に設定されている。スライドドア10を開位置Pa1に配置することによって、ドア開口2を介して乗降車が可能となる。また、図に例示された開位置Pa1は、側面視においてドア開口2が最も広く開放される全開位置である。なお、スライドドア10が閉位置Pa2に配置された状態を単に「ドア閉状態」と称し、スライドドア10が開位置Pa1に配置された状態を単に「ドア開状態」と称する。
【0013】
レール部3は、
図1~
図3に例示されるように側部1において略車両前後方向に延在する溝状の部分である。図示した例では、レール部3の車両前方側の端部は、ドア開口2の車両後方側を画成する周縁部4(
図3参照)に位置している。スライドドア10は後述する支持部材30aを介してレール部3に沿って移動可能に取り付けられている。例えば、閉位置Pa2に配置されているスライドドア10を開位置Pa1に移動する場合には、スライドドア10を閉位置Pa2から車幅方向外方かつ車両後方に向けて移動させ、その後車両後方に移動させればよい。また、開位置Pa1に配置されたスライドドア10を閉位置Pa2に移動させる場合には、スライドドア10を開位置Pa1から車両前方に移動させ、その後車幅方向内方かつ車両前方に移動させればよい。
【0014】
蓋部材20は車両Vの側部1に設けられている。
図1及び
図2に例示されるように、蓋部材20は側部開口5を閉塞する部材であり、側部1に開閉可能に取り付けられている。なお、
図2は車室内から車幅方向外方を見た場合の、開位置Pa1に配置されたスライドドア10と、蓋部材20と、第1部材30との位置的関係を示した部分側面図である。なお、
図2では説明のためボディサイドパネル6等の車両Vの側部1を構成する部材の表示を省略した。
【0015】
側部開口5は側部1の車両後方側の所定領域を車幅方向外方に向けて開口させることにより形成されている。側部開口5内には、例えば車両Vの給油口(不図示)、充電ポート(不図示)等が配置されていてもよい。即ち、蓋部材20は給油口を車幅方向外方から覆うフューエルリッド、又は充電ポートを車幅方向外方から覆う充電ポートリッドであってもよい。蓋部材20が側部開口5を閉塞した状態では、ボディサイドパネル6の車両外方側の面、及び蓋部材20の外側面21によって、側部1の外装面の一部が構成される。
【0016】
図4の矢印A,Bで示すように、蓋部材20は、車両後方側が車幅方向内外方に開閉可能となるように構成されている。蓋部材20は、その車両前方側に設けられたヒンジ(不図示)を介して側部1に取り付けられていてもよい。これにより、当該ヒンジを支軸として所定範囲で回転可能な状態で蓋部材20を側部1に配設することができる。
図1及び
図2に例示された蓋部材20は側部開口5を閉塞している。一方、
図4に例示された蓋部材20は当該ヒンジを支軸として車両後方側が車幅方向外方に開いた状態になっており、蓋部材20は側部開口5を閉塞していない。なお、蓋部材20が側部開口5を閉塞した状態を単に「閉状態」と称し、蓋部材20が側部開口5を閉塞していない状態を単に「開状態」と称する。また、開状態から閉状態にする際に蓋部材20を動かす方向を「閉方向」と称する。
図4では矢印Aで示すように、蓋部材20の車両後方側を車幅方向内方に移動させることによって開状態から閉状態にすることができる。即ち、車幅方向内方が閉方向となる。また、閉状態から開状態にする際に蓋部材20を動かす方向を「開方向」と称する。
図4では矢印Bで示すように、蓋部材20の車両後方側を車幅方向外方に移動させることによって閉状態から開状態にすることができる。即ち、車幅方向外方が開方向となる。
【0017】
閉状態では、開状態になるのを規制するロック機構(不図示)によって、側部開口5を閉塞した状態で蓋部材20はロックされている。また、蓋部材20の車幅方向内方には、バネ部材(不図示)が配置されており、閉状態では、圧縮された当該バネ部材に起因する車幅方向外方を向いた反発力が蓋部材に入力されている。そのため、例えば車両Vの乗員の操作によって蓋部材20のロックを解除されると、当該バネ部材の反発力に従ってヒンジを支軸として蓋部材20の車両後方側が開方向に移動し、開状態となる。
【0018】
図2に例示されるように、蓋部材20は側面視で略矩形の形状を有する板状部材であってもよい。蓋部材20の車両後方側の端部には、略上下方向に延在する後縁部22が形成されている。蓋部材20のうち後縁部22の上方側には角部23が形成されている。角部23は蓋部材20の上方側の縁を構成する上縁部24と、後縁部22との間に延在する縁部であり、図示した例のように側面視において車両後上方に向けて凸となる曲線を形成してもよい。なお、蓋部材20の形状は図示された例に限定されず、例えば車両Vの車体又は側部開口5の形状、寸法等に応じて適宜設定されてもよい。
【0019】
また、ドア開状態では蓋部材20はスライドドア10の車幅方向内方に位置することとなる。なお、ドア開状態では蓋部材20の少なくとも一部は車幅方向外方からスライドドア10によって覆われてもよい。即ち、スライドドア10が開位置Pa1に配置された状態では、側面視においてスライドドア10と、蓋部材20の少なくとも一部が重なってもよい。なお、図示された例ではドア開状態において蓋部材20の全部が車幅方向外方からスライドドア10によって覆われている。
【0020】
スライドドア10の内側部11には第1部材30が取り付けられている。第1部材30はスライドドア10の移動と共に第1位置Pb1と第2位置Pb2と、の間で移動する部材である。なお、内側部11はスライドドア10の車幅方向内方側の壁面を形成しており、例えば鋼等の金属から構成されたドアインナーパネルであってもよい。また、内側部11にはドアトリム12が取り付けられていてもよい。ドアトリム12は車両Vの内装の一部を形成する、例えば樹脂から構成されたパネル部材である。
【0021】
第1部材30はレール部3に移動可能に取り付けられる支持部材30aであってもよい。
図1及び
図2に示した例では、支持部材30aは内側部11の車両後方側の上下方向中央部近傍に、例えばボルト等の締結具を用いて締結固定されている。そのため、スライドドア10は車両Vの車体に対して車両前後方向に移動できるように、支持部材30aによって支持されている。
【0022】
図3に例示するように、ドア開状態では支持部材30aは第1位置Pb1に配設される。第1位置Pb1は蓋部材20よりも車両後方の位置である。また、第1位置Pb1において支持部材30aは内側部11と側部1との間に配設されている。ドア閉状態では支持部材30aは第2位置Pb2に配設される。第2位置Pb2は蓋部材20よりも車両前方の位置である。第2位置Pb2では、支持部材30aはスライドドア10の車両後方側の端部と、周縁部4との間に配設されてもよい。このように、支持部材30aはスライドドア10の移動と共に、レール部3の延在方向に沿って第1位置Pb1と第2位置Pb2との間を移動可能である。
【0023】
次に、
図5~
図7を参照しながら第1部材30としての支持部材30aの一構成例について説明する。
【0024】
支持部材30aは、
図5に例示されるようにドア取付部31と、ローラ取付部32と、を備えてもよい。ドア取付部31は支持部材30aをスライドドア10に固定するための部分であり、図示した例のように、車幅方向内方からボルト等の締結具を用いてスライドドア10の内側部11に締結固定されてもよい。ローラ取付部32は支持部材30aをレール部3に移動可能に取り付けるための部分であり、ドア開状態ではドア取付部31の車幅方向内方側に位置する。図示した例では、ローラ取付部32の上方側には軸周りに回転可能なローラ33が固定されており、ローラ33はレール部3の内部に配置される。そのため、支持部材30aはレール部3の延在方向に沿って移動可能となるようにレール部3に取り付けられることとなる。また、図示した例ではドア取付部31とローラ取付部32とは上下方向に延在する支軸34を介して連結されている。そのため、ドア取付部31及びローラ取付部32は支軸34を回転軸として、所定の角度範囲で回転可能である。なお、支軸34はドア取付部31及びローラ取付部32に反発力を付与するバネ(不図示)を備えてもよい。このように、支持部材30aは全体として車両Vの側部1にスライドドア10を移動可能に支持するヒンジを構成してもよい。なお、支持部材30aの形状は図示した例に限定されず、車両V又はスライドドア10の形状、寸法等に応じて適宜設定することができる。
【0025】
支持部材30aは第1ガイド部40を有する。
図5に例示されるように、第1ガイド部40は、ローラ取付部32の前壁部35の下方側と、下壁部36とを覆うようにして取り付けられている。前壁部35はドア開状態においてローラ取付部32の車両前方側の少なくとも一部を構成する壁部であり、上下方向に延在している。下壁部36はローラ取付部32の下方側を構成する壁部であり、車両前後方向に延在している。また、
図6に示されるように、第1ガイド部40はドア開状態において側面視で略L字形の形状を有し、例えば樹脂から構成されていてもよい。第1ガイド部40は支持部材30aの一部を構成しており、スライドドア10の移動に従って移動する。また、支持部材30aが第1位置Pb1から第2位置Pb2に移動する際、第1ガイド部40は開状態の蓋部材20に当接して、蓋部材20を閉方向に案内する。
【0026】
図5及び
図6に例示されるように、第1ガイド部40の下方側には第1ガイド面としてのガイド面41が形成されていてもよい。ドア開状態、即ち支持部材30aが第1位置Pb1に配設された状態で、ガイド面41は少なくとも車両前後方向に連続して延在していてもよい。ガイド面41は前端部42が後端部43よりも上方に位置するように傾斜してもよい。前端部42はドア開状態におけるガイド面41の車両前方側の端部である。後端部43はドア開状態におけるガイド面41の車両後方側の端部である。また、
図7に例示されるように、ドア開状態において外端部44は内端部45よりも下方に位置するようにガイド面41は傾斜してもよい。外端部44はドア開状態におけるガイド面41の車幅方向外方側の端部である。内端部45はドア開状態におけるガイド面41の車幅方向内方側の端部である。
【0027】
このようなガイド面41を備える第1ガイド部40では、支持部材30aが第1位置Pb1から第2位置Pb2に移動する際、ガイド面41が開状態の蓋部材20に当接して当該蓋部材20を閉方向に案内する。例えば、ガイド面41は、支持部材30aが第1位置Pb1から第2位置Pb2に移動する際に蓋部材20の角部23(
図2参照)に当接して、蓋部材20を閉方向に案内してもよい。
【0028】
図2に例示されるように、支持部材30aが第1位置Pb1に配設された状態において、第1ガイド部40は蓋部材20と上下方向における高さが等しい部分41aを含んでもよい。図示した例では、ガイド面41は上縁部24の上方から、上縁部24の下方にかけて延在している。そのため、ガイド面41は部分41aを含んでいる。なお、第1ガイド部40の形状は図示した例に限定されず、車両V又はスライドドア10の形状、寸法等に応じて適宜設定することができる。
【0029】
図1及び
図2に示すように、スライドドア10の内側部11には第2ガイド部50が配設されてもよい。第2ガイド部50は、支持部材30aが第1位置Pb1から第2位置Pb2に移動する際、開状態の蓋部材20に当接して、ガイド面41に蓋部材20を案内する部材である。第2ガイド部50は、スライドドア10の内側部11のうち第1ガイド部40とは異なる場所に配置されており、側面視で略矩形の形状を備えたブロック状の形状を有してもよい。また、第2ガイド部50は例えば樹脂から構成されていてもよい。
【0030】
図示した例では、第2ガイド部50は側面視で支持部材30aよりも下方に位置しており、蓋部材20の後縁部22は第2ガイド部50と上下方向における高さが等しい部分を含む。そのため、第2ガイド部50は、支持部材30aが第1位置Pb1から第2位置Pb2に移動する際に後縁部22(
図2参照)に当接する。即ち、第2ガイド部50は蓋部材20のうち第1ガイド部40が当接する部分以外の部分に当接する。
【0031】
第2ガイド部50は第2ガイド面としてのガイド面51を含んでもよい。ガイド面51は、開状態の蓋部材20に当接して、当該蓋部材20をガイド面41に案内する面である。図示した例では、ガイド面51は第2ガイド部50の車幅方向内方側において車両前後方向に連続的に延在する面である。また、
図8に例示するように、ガイド面51の車両前方側の部分には領域51aが形成されていてもよい、領域51aは、ガイド面51のうち車両後方に向かうほど車幅方向内方に位置するように延在する領域である。なお、第2ガイド部50の形状は図示した形状に限定されない。例えばガイド面51に領域51aを設定することなく、車幅方向に垂直な面としてガイド面51を構成してもよい。
【0032】
ガイド面41を構成する材料の硬さは、ガイド面51を構成する材料の硬さより低くてもよい。例えばガイド面41をオレフィン系熱可塑性エラストマ(TPO;Thermoplastic Olefinic Elastomer)から構成し、ガイド面51をTPOよりも硬さの高いポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等から構成してもよい。当該硬さは、日本工業規格の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-」(JIS K6253-3:2012)に規定されるデュロメータ硬さであってもよい。ある実施形態では、測定時間を15秒とした測定試験において、ガイド面41のデュロメータ硬さはA60以上D50以下であってもよい。また、ガイド面51のデュロメータ硬さはガイド面41のデュロメータ硬さよりも高く、かつD45以上D85以下であってもよい。なお、測定に用いられるデュロメータの機種は特に限定されず、JIS K6253に準拠したデュロメータを用いればよい。
【0033】
次に、
図4及び
図8~
図10を参照しながら、実施形態に係る車両側部構造の動作の一例について説明する。
図8~
図10に例示された断面は、後述する当接部46a,46bを通る、上下方向に垂直な断面である。図示された断面において、ガイド面41は車両後方側に向かうほど車幅方向内方に位置するように連続して延在している。なお、
図8~
図10では説明のため、
図1のSA-SA線に沿った断面におけるスライドドア10、蓋部材20、及び第1ガイド部40を実線で示し、
図1のSB-SB線に沿った断面における蓋部材20及び第2ガイド部50を鎖線で表示した。
【0034】
図4ではスライドドア10が開位置Pa1に配置されている。このとき、支持部材30aは第1位置Pb1に位置している。また、第1ガイド部40及び第2ガイド部50は蓋部材20よりも車両後方に位置している。このようなドア開状態において車両Vの乗員の操作により蓋部材20を閉状態から開状態にする操作が行われると、例えば蓋部材20の車幅方向内方に配置されたバネ部材の反発力によって、蓋部材20の車両後方側が車幅方向外方に移動する(矢印B参照)。そして、図に例示されるように外側面21がドアトリム12に当たり接触して蓋部材20は停止する。なお、図示された例では、蓋部材20には当該バネ部材の反発力が車幅方向内方から依然として入力されている。
【0035】
図8はスライドドア10を開位置Pa1から車両前方に移動させて、開位置Pa1よりも車両前方の位置Pa3に配置した状態を表す。スライドドア10が開位置Pa1から位置Pa3に移動する際、蓋部材20の車両後方側は車幅方向外方に向けて移動するが、スライドドア10の移動と共に車両前方に移動してきた第2ガイド部50に接触して停止する。図示した例では、ガイド面51に蓋部材20の後縁部22が接触している。そのため、例えば
図4に示す状態でバネ部材の反発力が車幅方向内方から蓋部材20に入力されていたとしても、第2ガイド部50によって蓋部材20の車両後方側の過度な車幅方向外方への移動を規制することができる。即ち、蓋部材20が過度に開くことを第2ガイド部50によって抑制することができる。なお、ガイド面51のうち後縁部22と接触する領域は上下方向に所定範囲で延在してもよい。即ち、ガイド面51と後縁部22とは線接触してもよい。
【0036】
なお、スライドドア10が位置Pa3に配置されているとき、ドアトリム12と外側面21とは離隔していてもよい。また、図示した例ではスライドドア10の移動に従って第1ガイド部40は第1位置Pb1よりも車両前方に配置されているが、蓋部材20の角部23とガイド面41とは離隔している。
【0037】
また、
図8の矢印Cで示されるように、スライドドア10を位置Pa3から更に車両前方へ移動させると、第2ガイド部50も車両前方へと移動する。その際、後縁部22はガイド面51の領域51a上を滑りながら、矢印Dに示すように車幅方向内方に向けて変位する。即ち、第2ガイド部50は、支持部材30aが第1位置Pb1から第2位置Pb2に移動する際、開状態の蓋部材20に当接して、閉方向に蓋部材20を案内してもよい。
【0038】
図9はスライドドア10を位置Pa3から更に車両前方に移動させて、位置Pa3よりも車両前方の位置Pa4に配置した状態を表す。スライドドア10の移動により、ドアトリム12と外側面21との隙間は
図8に示された状態よりも拡大している。また、スライドドア10の移動に従って、第1ガイド部40は
図8に示された位置よりも車両前方に配置されており、ガイド面41の当接部46aに蓋部材20の角部23が当たり接触している。当接部46a及び後述する当接部46bは、ガイド面41のうち蓋部材20と当接している部分である。第2ガイド部50は、スライドドア10の移動に従ってスライドドア10を位置Pa3に配置させたときよりも車両前方に移動しており、ガイド面51と後縁部22とが接触している。
【0039】
なお、
図9に示された断面の領域R1において、線分L1と半直線HL1とが形成する角度θ1は鈍角であってもよい。これにより、ガイド面41によって蓋部材20をより確実に閉方向である矢印F方向に案内することができる。なお、領域R1は線分L1の車幅方向内方に延在し、かつ半直線HL1の車両前方に延在する領域である。線分L1は、蓋部材20の車両前方側の部分に設けられたヒンジの回転中心O1、及び当接部46aを端部とする線分である。半直線HL1は、当接部46aを端部として車幅方向内方かつ車両後方に向けて延びる、図示された断面におけるガイド面41の延在方向と平行な半直線である。
【0040】
また、
図9の矢印Eで示されるように、スライドドア10を位置Pa4から更に車両前方へ移動させると、第1ガイド部40も車両前方へと移動する。その際、角部23はガイド面41上を滑るようにしながら移動する。そのため、蓋部材20の車両後方側は矢印Fに示すように車幅方向内方、即ち閉方向に向けて変位する。
【0041】
図10はスライドドア10を位置Pa4から更に車両前方に移動させて、位置Pa4よりも車両前方の位置Pa5に配置した状態を表す。スライドドア10の移動により、ドアトリム12と外側面21との隙間は
図9に示された状態よりも拡大している。また、スライドドア10の移動に従って、第1ガイド部40は
図9に示された位置よりも車両前方に配置されており、ガイド面41の当接部46bに蓋部材20の角部23が接触している。なお、当接部46bはガイド面41内において当接部46aよりも車幅方向内方かつ車両後方に位置している。また、当接部46a,46bにおけるガイド面41と蓋部材20との接触は略点状の接触であってもよい。第2ガイド部50はスライドドア10を位置Pa4に配置させたときよりも車両前方に移動しているが、蓋部材20の車両後方側が第1ガイド部40に案内されて車幅方向内方、即ち閉方向に変位したことにより、ガイド面51と後縁部22とは離隔している。
【0042】
なお、
図10に示された断面の領域R2において、線分L2と半直線HL2とが形成する角度θ2は鈍角であってもよい。これにより、ガイド面41によって蓋部材20をより確実に閉方向である矢印H方向に案内することができる。領域R2は線分L2の車幅方向内方に延在し、かつ半直線HL2の車両前方に延在する領域である。線分L2は、回転中心O1及び当接部46bを端部とする線分である。半直線HL2は、当接部46bを端部として車幅方向内方かつ車両後方に向けて延びる、図示された断面におけるガイド面41の延在方向と平行な半直線である。なお、
図10に示された蓋部材20は、
図9に示された蓋部材20よりも車両後方側が車幅方向内方に移動している。そのため、角度θ2は角度θ1よりも角度が大きい。
【0043】
また、
図10の矢印Gで示されるように、スライドドア10を位置Pa5から更に車両前方へ移動させると、第1ガイド部40も車両前方へと移動する。その際、角部23はガイド面41上を滑るようにしながら車幅方向内方に更に移動する(矢印H参照)。このように、ドア開状態からドア閉状態にする際、第1ガイド部40によって蓋部材20が閉じ方向に案内されるため、支持部材30aと蓋部材20との干渉が抑制される。なお、スライドドア10の矢印G方向への移動によって、ガイド面41が角部23よりも車両前方まで移動した後、蓋部材20の車両後方側は例えばバネ部材の反発力に応じて再度開方向に変位してもよい。
【0044】
以上の説明では第1部材30として支持部材30aを例にとって実施形態に係る車両側部構造について説明したが、これに限定されない。例えば、第1部材はスライドドア10の内側部11において車幅方向内方に向けて突出するように設けられた任意の突出部であってもよい。また、以上の説明では車両Vの車両右方側を例にとって、実施形態に係る車両側部構造について説明したが、これに限定されない。例えば車両Vの車両左方側に当該車両側部構造を適用してもよい。その際には、車両Vの車両右方側と車両左方側とは、車両Vの平面視における車幅方向中心線を含む車両上下方向に平行な面に対して、面対称の形状を備えていてもよい。
【0045】
以下、実施形態に係る車両側部構造の作用効果について説明する。
【0046】
(1)実施形態に係る車両側部構造は、車両Vのスライドドア10と、車両Vの側部1に、車両後方側が車幅方向内外方に開閉可能に配設された蓋部材20と、を備える。また、車両側部構造は、スライドドア10と共に蓋部材20よりも車両前後方向後方の第1位置Pb1と、蓋部材20よりも車両前後方向前方の第2位置Pb2と、の間で移動する、スライドドア10の車幅方向内方側に配設された第1部材30を備える。第1部材30は、当該第1部材30が第1位置Pb1から第2位置Pb2に移動する際、車両後方側が車幅方向外方に開いた開状態の蓋部材20に当接して当該蓋部材20を閉方向に案内する第1ガイド部40を有する。
【0047】
実施形態に係る車両側部構造によれば、スライドドア10の移動に応じて第1部材30が第1位置Pb1から第2位置Pb2に移動する際に、開状態の蓋部材20が第1ガイド部40によって閉方向に案内される。そのため、第1部材30と蓋部材20との干渉の発生が抑制され、スライドドア10の移動が蓋部材20によって規制されることを抑制することができる。
【0048】
(2)第1ガイド部40は、開状態の蓋部材20に当接して当該蓋部材20を閉方向に案内する第1ガイド面41を備えてもよい。第1ガイド面41が蓋部材20に当接した状態で、第1ガイド面41の蓋部材20と当接する当接部46a,46bを通る、上下方向に垂直な断面における第1ガイド面41は、車両前後方向後方側に向かうほど車幅方向内方に位置するように連続して延在してもよい。
【0049】
これにより、スライドドア10の移動に応じて第1部材30が第1位置Pb1から第2位置Pb2に移動する際に、ガイド面41によって、蓋部材20を閉方向に向けて案内することができる。そのため、第1部材30と蓋部材20との干渉の発生をより確実に抑制することができる。
【0050】
(3)第1ガイド部40は、開状態の蓋部材20に当接して当該蓋部材20を閉方向に案内する第1ガイド面41を備えてもよい。スライドドア10の車幅方向内方側には、第1部材30が第1位置Pb1から第2位置Pb2に移動する際、蓋部材20のうち第1ガイド部40が当接する部分23以外の部分22に当接する第2ガイド部50が配設されてもよい。第2ガイド部50は開状態の蓋部材20と当接して、蓋部材20を第1ガイド面41に案内してもよい。
【0051】
これにより、蓋部材20の閉方向への案内が第1ガイド部40と第2ガイド部50とによって、段階的に行われる。よって、第1ガイド部40をより小さな形状にすることができる。そのため、例えばドア開口2を画成する周縁部4の形状が第1ガイド部40の大きさに起因する制約を受けることを抑制することができる。更に、第1部材30が第1位置Pb1から第2位置Pb2に移動する際に、第2ガイド部50によって開状態の蓋部材20を第1ガイド部40のガイド面41に案内することができる。そのため、より確実に第1ガイド部40によって蓋部材20を閉方向に案内することができる。即ち、第1部材30と蓋部材20との干渉の発生をより確実に抑制することができる。
【0052】
(4)第2ガイド部50は、開状態の蓋部材20と当接して当該蓋部材20を第1ガイド面41に案内する第2ガイド面51を備え、第1ガイド面41を構成する材料の硬さは、第2ガイド面51を構成する材料の硬さよりも低くてもよい。
【0053】
例えば、蓋部材20のうちガイド面41と当接する部分の面積が、ガイド面51と当接する部分の面積よりも小さい場合には、ガイド面41から蓋部材20に入力される圧力は、ガイド面51から蓋部材20に入力される圧力よりも大きくなる。そのような場合であっても、ガイド面41を構成する材料の硬さを、ガイド面51を構成する材料の硬さよりも低く設定することにより、ガイド面41との接触に起因する蓋部材20の傷の発生を抑制することができる。
【0054】
(5)第1部材30は、車両Vにスライドドア10を車両前後方向に移動可能に支持する支持部材30aであり、第1ガイド面41は、蓋部材20と上下方向における高さが等しい部分41aを含んでもよい。
【0055】
支持部材30aはスライドドア10をレール部3に沿って移動可能に車体に支持する。そのため、十分な強度を確保すべく支持部材30aの小型化が制約される場合が有る。また、ドア開状態においてスライドドア10をより車体側部に近く配置するために、スライドドア10の内側部11と、側部1との隙間をより小さく設定する場合が有る。これにより、車両Vの側部の構造が、支持部材30aと開状態の蓋部材20との干渉が発生しやすい構造となる場合が有る。そのような場合であっても、支持部材30aは蓋部材20と上下方向における高さが等しい部分41aを含むガイド面41を有するため、支持部材30aと蓋部材20との干渉をより確実に抑制することができる。即ち、スライドドア10を支持部材30aで支持すると共に、支持部材30aと蓋部材20との干渉の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 側部
10 スライドドア
11 内側部
20 蓋部材
22 後縁部(部分)
23 角部(部分)
30 第1部材
30a 支持部材
40 第1ガイド部
41 ガイド面(第1ガイド面)
41a 部分
46a,46b 当接部
50 第2ガイド部
51 ガイド面(第2ガイド面)
V 車両
Pb1 第1位置
Pb2 第2位置