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特開2024-66087メタルマスク及びメタルマスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066087
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】メタルマスク及びメタルマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/24 20060101AFI20240508BHJP
   B41C 1/14 20060101ALI20240508BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240508BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B41N1/24
B41C1/14 101
H05K3/34 505D
H05K3/12 610P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175370
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】300071823
【氏名又は名称】株式会社ボンマーク
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊與 信平
【テーマコード(参考)】
2H084
2H114
5E319
5E343
【Fターム(参考)】
2H084BB02
2H084CC10
2H114AB04
2H114AB13
2H114AB15
2H114EA02
5E319BB05
5E319GG15
5E319GG20
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB72
5E343DD03
5E343FF04
5E343FF14
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】導電性ペーストが供給される面及び被印刷物に接する面の表面粗さを適切に設定できるメタルマスクを提供する。
【解決手段】メタルマスク4は、貫通孔11が形成された第1めっき層10と、印刷パターンに対応する開口21が形成された第2めっき層20とを備える。第1めっき層10は、補強部12を備える。第1めっき層10の表面10bの表面粗さRaは0.1μmより小さい値である。第2めっき層20の表面20aの表面粗さRaは、0.1μm以上で0.4μm以下の値である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された第1めっき層と、
前記第1めっき層の第1表面に設けられ、印刷パターンに対応する開口が形成された第2めっき層と、
を備え、
前記貫通孔は、前記開口に通じ、
前記第1めっき層は、前記開口の一部のみを塞ぐように配置された補強部を備え、
前記第1めっき層の第2表面の表面粗さRaは0.1μmより小さい値であり、
前記第2表面は、前記第1表面が向く方向とは反対の方向を向き、
前記第2めっき層の第3表面の表面粗さRaは、0.1μm以上で0.4μm以下の値であり、
前記第3表面は、前記第1表面が向く方向と同じ方向を向くメタルマスク。
【請求項2】
前記第1めっき層の硬度は、前記第2めっき層の硬度より大きい請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項3】
前記第1めっき層のビッカース硬さは、700HVより大きい値であり、
前記第2めっき層のビッカース硬さは、500HVより小さい値である請求項2に記載のメタルマスク。
【請求項4】
前記第1めっき層の硬度は、前記第2めっき層の硬度より小さい請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項5】
前記第1めっき層のビッカース硬さは、520HVより小さい値であり、
前記第2めっき層のビッカース硬さは、520HVより大きい値である請求項4に記載のメタルマスク。
【請求項6】
貫通孔が形成された第1めっき層と、
前記第1めっき層の第1表面に設けられ、印刷パターンに対応する開口が形成された第2めっき層と、
前記第2めっき層の第3表面に設けられたコーティング層と、
を備え、
前記貫通孔は、前記開口に通じ、
前記第3表面は、前記第1表面が向く方向と同じ方向を向き、
前記第1めっき層は、前記開口の一部のみを塞ぐように配置された補強部を備え、
前記第1めっき層の第2表面の表面粗さRaは0.1μmより小さい値であり、
前記第2表面は、前記第1表面が向く方向とは反対の方向を向き、
前記コーティング層の表面粗さRaは、0.1μm以上で0.4μm以下の値であるメタルマスク。
【請求項7】
前記第1めっき層の硬度は、前記第2めっき層の硬度と同じである請求項1又は請求項6に記載のメタルマスク。
【請求項8】
前記第1めっき層のビッカース硬さは、700HVより大きい値であり、
前記第2めっき層のビッカース硬さは、700HVより大きい値である請求項1又は請求項6に記載のメタルマスク。
【請求項9】
貫通孔が形成された第1めっき層と、
前記第1めっき層に設けられ、印刷パターンに対応する開口が形成された第2めっき層と、
を備え、
前記貫通孔は、前記開口に通じ、
前記第1めっき層は、前記開口の一部のみを塞ぐように配置された補強部を備えたメタルマスクを製造する方法であって、
母材に、前記貫通孔に対応する第1レジストを形成する第1工程と、
前記第1工程の後、光沢めっきによって前記母材に前記第1めっき層を形成する第2工程と、
前記第2工程の後、前記第1めっき層の第1表面に、前記印刷パターンに対応する第2レジストを形成する第3工程と、
前記第3工程の後、無光沢めっきによって前記第1表面に前記第2めっき層を形成する第4工程と、
を備えたメタルマスクの製造方法。
【請求項10】
貫通孔が形成された第1めっき層と、
前記第1めっき層に設けられ、印刷パターンに対応する開口が形成された第2めっき層と、
を備え、
前記貫通孔は、前記開口に通じ、
前記第1めっき層は、前記開口の一部のみを塞ぐように配置された補強部を備えたメタルマスクを製造する方法であって、
母材に、前記貫通孔に対応する第1レジストを形成する第1工程と、
前記第1工程の後、光沢めっきによって前記母材に前記第1めっき層を形成する第2工程と、
前記第2工程の後、前記第1めっき層の第1表面に、前記印刷パターンに対応する第2レジストを形成する第3工程と、
前記第3工程の後、光沢めっきによって前記第1表面に前記第2めっき層を形成する第4工程と、
前記第4工程の後、前記第2めっき層の第2表面の表面粗さRaを0.1μm以上で0.4μm以下の値にする第5工程と、
を備え、
前記第2表面は、前記第1表面が向く方向と同じ方向を向くメタルマスクの製造方法。
【請求項11】
貫通孔が形成された第1めっき層と、
前記第1めっき層に設けられ、印刷パターンに対応する開口が形成された第2めっき層と、
前記第2めっき層に設けられたコーティング層と、
を備え、
前記貫通孔は、前記開口に通じ、
前記第1めっき層は、前記開口の一部のみを塞ぐように配置された補強部を備えたメタルマスクを製造する方法であって、
母材に、前記貫通孔に対応する第1レジストを形成する第1工程と、
前記第1工程の後、光沢めっきによって前記母材に前記第1めっき層を形成する第2工程と、
前記第2工程の後、前記第1めっき層の第1表面に、前記印刷パターンに対応する第2レジストを形成する第3工程と、
前記第3工程の後、光沢めっきによって前記第1表面に前記第2めっき層を形成する第4工程と、
前記第4工程の後、前記第2めっき層の第2表面に、表面粗さRaが0.1μm以上で0.4μm以下の値であるコーティング層を形成する第5工程と、
を備え、
前記第2表面は、前記第1表面が向く方向と同じ方向を向くメタルマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メタルマスクと、メタルマスクを製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、スクリーン印刷版が記載されている。特許文献1に記載されたスクリーン印刷版は、メッシュ領域が形成されたメッシュ領域用金属膜と、メッシュ領域用金属膜とともに凹部を形成する凹部形成用金属膜とを備える。メッシュ領域用金属膜は、無光沢めっきによって形成される。凹部形成用金属膜は、光沢めっきによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4356186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無光沢めっきによって形成された層の表面粗さは、光沢めっきによって形成された層の表面粗さより大きい。特許文献1に記載されたスクリーン印刷版では、メッシュ領域用金属膜の上面側から凹部に導電性ペーストが供給される。メッシュ領域用金属膜は無光沢めっきによって形成されるため、導電性ペーストの流動性が阻害されることがあった。
【0005】
また、特許文献1に記載されたスクリーン印刷版では、凹部形成用金属膜の表面粗さRaの下限値が0.01μmである。このため、被印刷物に接する面の表面粗さが小さくなりすぎるといった問題もあった。
【0006】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、導電性ペーストが供給される面及び被印刷物に接する面の表面粗さを適切に設定できるメタルマスクを提供することである。また、本開示の他の目的は、そのようなメタルマスクを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るメタルマスクは、貫通孔が形成された第1めっき層と、第1めっき層の第1表面に設けられ、印刷パターンに対応する開口が形成された第2めっき層と、を備える。貫通孔は、開口に通じる。第1めっき層は、開口の一部のみを塞ぐように配置された補強部を備える。第1めっき層の第2表面の表面粗さRaは0.1μmより小さい値である。第2表面は、第1表面が向く方向とは反対の方向を向く。第2めっき層の第3表面の表面粗さRaは、0.1μm以上で0.4μm以下の値である。第3表面は、第1表面が向く方向と同じ方向を向く。
【0008】
本開示に係るメタルマスクは、貫通孔が形成された第1めっき層と、第1めっき層の第1表面に設けられ、印刷パターンに対応する開口が形成された第2めっき層と、第2めっき層の第3表面に設けられたコーティング層と、を備える。貫通孔は、開口に通じる。第3表面は、第1表面が向く方向と同じ方向を向く。第1めっき層は、開口の一部のみを塞ぐように配置された補強部を備える。第1めっき層の第2表面の表面粗さRaは0.1μmより小さい値である。第2表面は、第1表面が向く方向とは反対の方向を向く。コーティング層の表面粗さRaは、0.1μm以上で0.4μm以下の値である。
【0009】
本開示に係るメタルマスクの製造方法は、貫通孔が形成された第1めっき層と、第1めっき層に設けられ、印刷パターンに対応する開口が形成された第2めっき層と、を備え、貫通孔は、開口に通じ、第1めっき層は、開口の一部のみを塞ぐように配置された補強部を備えたメタルマスクを製造する方法である。当該製造方法は、母材に、貫通孔に対応する第1レジストを形成する第1工程と、第1工程の後、光沢めっきによって母材に第1めっき層を形成する第2工程と、第2工程の後、第1めっき層の第1表面に、印刷パターンに対応する第2レジストを形成する第3工程と、第3工程の後、無光沢めっきによって第1表面に第2めっき層を形成する第4工程と、を備える。
【0010】
本開示に係るメタルマスクの製造方法は、貫通孔が形成された第1めっき層と、第1めっき層に設けられ、印刷パターンに対応する開口が形成された第2めっき層と、を備え、貫通孔は、開口に通じ、第1めっき層は、開口の一部のみを塞ぐように配置された補強部を備えたメタルマスクを製造する方法である。当該製造方法は、母材に、貫通孔に対応する第1レジストを形成する第1工程と、第1工程の後、光沢めっきによって母材に第1めっき層を形成する第2工程と、第2工程の後、第1めっき層の第1表面に、印刷パターンに対応する第2レジストを形成する第3工程と、第3工程の後、光沢めっきによって第1表面に第2めっき層を形成する第4工程と、第4工程の後、第2めっき層の第2表面の表面粗さRaを0.1μm以上で0.4μm以下の値にする第5工程と、を備える。第2表面は、第1表面が向く方向と同じ方向を向く。
【0011】
本開示に係るメタルマスクの製造方法は、貫通孔が形成された第1めっき層と、第1めっき層に設けられ、印刷パターンに対応する開口が形成された第2めっき層と、第2めっき層に設けられたコーティング層と、を備え、貫通孔は、開口に通じ、第1めっき層は、開口の一部のみを塞ぐように配置された補強部を備えたメタルマスクを製造する方法である。当該製造方法は、母材に、貫通孔に対応する第1レジストを形成する第1工程と、第1工程の後、光沢めっきによって母材に第1めっき層を形成する第2工程と、第2工程の後、第1めっき層の第1表面に、印刷パターンに対応する第2レジストを形成する第3工程と、第3工程の後、光沢めっきによって第1表面に第2めっき層を形成する第4工程と、第4工程の後、第2めっき層の第2表面に、表面粗さRaが0.1μm以上で0.4μm以下の値であるコーティング層を形成する第5工程と、を備える。第2表面は、第1表面が向く方向と同じ方向を向く。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、メタルマスクにおいて、導電性ペーストが供給される面及び被印刷物に接する面の表面粗さを適切に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1におけるメタルマスクを備えた印刷版の例を示す図である。
図2図1のA部を拡大した平面図である。
図3図2のB-B断面を示す図である。
図4】実施の形態1におけるメタルマスクの製造方法の例を示すフローチャートである。
図5】メタルマスクの製造方法を説明するための図である。
図6】メタルマスクの製造方法を説明するための図である。
図7】メタルマスクの他の製造方法の例を示すフローチャートである。
図8】メタルマスクの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0015】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるメタルマスク4を備えた印刷版1の例を示す図である。印刷版1は、枠2、紗3、及びメタルマスク4を備える。メタルマスク4は、紗3を介して枠2に設けられる。紗3は、メタルマスク4の周囲に配置される。紗3によってメタルマスク4に張力が付与される。
【0016】
図2は、図1のA部を拡大した平面図である。図3は、図2のB-B断面を示す図である。メタルマスク4は、被印刷物に特定のパターンで導電性ペーストを印刷するために使用される。以下においては、当該パターンを印刷パターンともいう。被印刷物の例として、電子回路基板が挙げられる。導電性ペーストの例として、半田ペースト、銀ペースト、及び銅ペーストが挙げられる。図3では、メタルマスク4の使用時の状態を表すため、基板5を一点鎖線で示している。
【0017】
メタルマスク4は、第1めっき層10、及び第2めっき層20を備える。第2めっき層20は、第1めっき層10の表面10aに設けられる。第2めっき層20は、めっき法によって形成される。第2めっき層20は、開口21を有する。開口21は、印刷パターンに対応するように第2めっき層20に形成される。
【0018】
メタルマスク4を使用して被印刷物に導電性ペーストを印刷する場合、第2めっき層20の表面20aが被印刷物に対向し、被印刷物に接触する。表面20aは、表面10aが向く方向と同じ方向を向く。図3に示すように、開口21の天井面は、表面10aによって形成される。即ち、表面10aのうち開口21の天井面を形成する部分は、被印刷物に対向する。
【0019】
第1めっき層10は、めっき法によって形成される。第1めっき層10は、貫通孔11を有する。貫通孔11は、開口21に通じるように第1めっき層10に形成される。即ち、貫通孔11は、表面10bと表面10aのうち開口21の天井面を形成する部分とに開口する。表面10bは、表面10aが向く方向とは反対の方向を向く。
【0020】
第1めっき層10は、補強部12を備える。補強部12は、開口21の一部のみを塞ぐように配置された部分である。図2は、第1めっき層10に格子状の補強部12が備えられた例を示す。補強部12の例は、図2に示す例に限定されない。
【0021】
メタルマスク4を使用して被印刷物に導電性ペーストを印刷する場合、導電性ペーストは、第1めっき層10の表面10bに供給される。導電性ペーストは、貫通孔11を通過して開口21に進入し、基板5に供給される。
【0022】
本実施の形態に示す例において、印刷時に導電性ペーストが供給される面、即ち表面10bの表面粗さは、被印刷物に接触する面、即ち表面20aの表面粗さより小さい。表面10bの表面粗さRa(算術平均粗さ)は、0.1μmより小さい値である。これにより、表面10bにおいて必要な導電性ペーストの流動性を確保する。一方、表面20aの表面粗さRaは、0.1μm以上で0.4μm以下の値である。これにより、導電性ペーストが開口21に進入する際の適切な空気抜けとメタルマスク4を被印刷物から離す際の適切な版離れとを実現する。
【0023】
めっき法によって金属層を形成する場合、めっき浴に含まれる添加剤によって金属層の表面粗さを変えることができる。金属層の表面粗さRaが0.1μmより小さい場合、その金属層の表面には光沢がでる。以下においては、めっき法のうち、生成された金属層の表面粗さRaが0.1μmより小さくなるようなめっき浴を用いてめっきを行うものを、光沢めっきという。即ち、当該めっき浴には、生成される金属層の表面粗さRaを0.1μmより小さくするための特定の添加剤が加えられている。
【0024】
一方、金属層の表面粗さRaが0.1μm以上になると、金属層の表面の光沢が徐々に薄れていく。以下においては、めっき法のうち、生成された金属層の表面粗さRaが特に0.1μm以上且つ0.4μm以下になるようなめっき浴を用いてめっきを行うものを、無光沢めっきという。即ち、当該めっき浴には、生成される金属層の表面粗さRaを0.1μm以上で0.4μm以下の値にするための特定の添加剤が加えられている。
【0025】
以下に、上記条件を備えたメタルマスク4の複数の例について説明する。
【0026】
<1.第1めっき層10の硬度が第2めっき層20の硬度より大きい場合>
本例では、第1めっき層10を光沢めっきによって形成することにより、第1めっき層10のビッカース硬さを700HV程度にする。第1めっき層10のビッカース硬さは、700HVより大きい値であることが好ましい。また、第2めっき層20を無光沢めっきによって形成することにより、第2めっき層20のビッカース硬さを470HV程度にする。第2めっき層20のビッカース硬さは、500HVより小さい値であることが好ましい。
【0027】
次に、図4から図6も参照し、このようなメタルマスク4を製造する方法について説明する。図4は、実施の形態1におけるメタルマスク4の製造方法の例を示すフローチャートである。図5から図6は、メタルマスク4の製造方法を説明するための図である。図5から図6では、図2のB-B断面に相当する断面を示している。
【0028】
先ず、S101において、母材40に、貫通孔11に対応する第1レジスト42を形成する第1工程を行う。具体的に、第1工程では、先ず、図5(a)に示すように導電性の母材40を用意する。次に、図5(b)に示すように、母材40の表面40aに、ドライフィルムレジスト41をラミネートする。
【0029】
次に、図5(c)に示すように、ドライフィルムレジスト41のうち貫通孔11に対応する部分を露光し、その後に現像する。これにより、図5(d)に示すように、貫通孔11に対応する第1レジスト42が母材40の表面40aに形成される。なお、この例ではドライフィルムレジスト41を用いているが、ドライフィルムレジスト41の代わりに液体レジストを用いても構わない。
【0030】
第1工程の後、S102において、1段目のめっき層である第1めっき層10を形成する第2工程を行う。具体的に、第2工程では、光沢めっきによって母材40の表面40aにめっきが行われる。例えば、光沢めっきとして電鋳法が採用される。この時、母材40に電着される金属層のビッカース硬さが700HVより大きい値になるようなめっき浴が用いられる。これにより、図5(e)に示すように、第1めっき層10が表面40aに形成される。表面40aのうち、第1レジスト42が存在する部分に、金属は電着しない。第1めっき層10には、第1レジスト42によって貫通孔11が形成される。貫通孔11は、第1めっき層10の表面10a及び表面10bで開口する。表面10aは、表面40aが向く方向と同じ方向を向く。
【0031】
第2工程の後、S103において、第1めっき層10の表面10aに、印刷パターンに対応する第2レジスト43を形成する第3工程を行う。具体的に、第3工程では、先ず、図6(a)に示すように、第1めっき層10の表面10aに、ドライフィルムレジスト44をラミネートする。
【0032】
次に、図6(b)に示すように、ドライフィルムレジスト44のうち開口21に対応する部分を露光し、その後に現像する。これにより、図6(c)に示すように、第1めっき層10に形成された貫通孔11を塞ぐように、第1めっき層10の第1めっき表面10aに第2レジスト43が形成される。なお、この例ではドライフィルムレジスト44を用いているが、ドライフィルムレジスト44の代わりに液体レジストを用いても構わない。
【0033】
第3工程の後、S104において、2段目のめっき層である第2めっき層20を形成する第4工程を行う。具体的に、第4工程では、無光沢めっきによって第1めっき層10の表面10aにめっきが行われる。例えば、無光沢めっきとして電鋳法が採用される。この時、第1めっき層10に電着される金属層のビッカース硬さが500HVより小さい値になるようなめっき浴が用いられる。これにより、図6(d)に示すように、第2めっき層20が表面10aに形成される。表面10aのうち、第2レジスト43が存在する部分に、金属は電着しない。第2めっき層20には、第2レジスト43によって開口21が形成される。
【0034】
第2めっき層20を表面10aに形成した後、図6(e)に示すように、第1レジスト42と第2レジスト43とを剥離液を用いて除去する(S105)。第1レジスト42の除去は、第3工程の前に行われても良いが、第4工程の後にまとめて除去する方が効率的で望ましい。
【0035】
最後に、第1めっき層10を母材40から分離する。これにより、図2及び図3に示すようなメタルマスク4を得ることができる。
【0036】
上記例では、第1めっき層10が光沢めっきによって形成される。このため、導電性ペーストが供給される表面10bの表面粗さRaを0.1μmより小さい値にすることができ、表面10bにおいて導電性ペーストの流動性が阻害されることを抑制できる。また、第2めっき層20が無光沢めっきによって形成される。このため、被印刷物に接する表面20aの表面粗さRaを0.1μmから0.4μmの間の値にすることができ、メタルマスク4が被印刷物に密着し過ぎることを抑制できる。
【0037】
また、上記例では、第1めっき層10のビッカース硬さを700HVより大きい値にすることが可能である。このため、メタルマスク4に十分な硬度を与えることができる。
【0038】
なお、光沢めっきによって金属層を形成した場合の開口エッジ(図6(e)における符号E1参照)は、無光沢めっきによって金属層を形成した場合の開口エッジ(図6(e)における符号E2参照)より丸みを帯びる。本例であれば、貫通孔11の表面10a側の縁は、無光沢めっきで第1めっき層10を形成した場合よりも丸みを帯びることになる。このため、導電性ペーストが貫通孔11から開口21に進入し易くなるといった効果が期待できる。更に、本例であれば、開口21の表面20a側の縁は、光沢めっきで第2めっき層20を形成した場合よりも丸みを帯びていない。このため、導電性ペーストが第2めっき層20と被印刷物との間に滲み出すことを抑制できるといった効果が期待できる。
【0039】
<2.第1めっき層10の硬度が第2めっき層20の硬度より小さい場合>
本例では、第1めっき層10を光沢めっきによって形成することにより、第1めっき層10のビッカース硬さを500HV程度にする。第1めっき層10のビッカース硬さは、520HVより小さい値であることが好ましい。また、第2めっき層20を無光沢めっきによって形成することにより、第2めっき層20のビッカース硬さを540HV程度にする。第2めっき層20のビッカース硬さは、520HVより大きい値であることが好ましい。
【0040】
本例におけるメタルマスク4の製造方法は、図4に示す方法と同様である。本例におけるメタルマスク4も、図5及び図6に示す例と同様に得ることができる。但し、本例では、第2工程で光沢めっきとして電鋳法が採用される際に、母材40に電着される金属層のビッカース硬さが520HVより小さい値になるようなめっき浴が用いられる。また、第4工程で無光沢めっきとして電鋳法が採用される際に、第1めっき層10に電着される金属層のビッカース硬さが520HVより大きい値になるようなめっき浴が用いられる。
【0041】
本例においても、導電性ペーストが供給される表面10bの表面粗さRaを0.1μmより小さい値にすることができ、表面10bにおいて導電性ペーストの流動性が阻害されることを抑制できる。また、被印刷物に接する表面20aの表面粗さRaを0.1μmから0.4μmの間の値にすることができ、メタルマスク4が被印刷物に密着し過ぎることを抑制できる。
【0042】
更に、本例では、第1めっき層10のビッカース硬さを500HV程度に抑えることで、第1めっき層10に他の機能を備えさせることが可能となる。例えば、第1めっき層10の硬度を抑えた代わりに、靭性や引張強度を改善しても良い。また、第2めっき層20のビッカース硬さを相対的に大きくすることで、メタルマスク4全体としての硬度が低下することを防止できる。
【0043】
なお、導電性ペーストが貫通孔11から開口21に進入し易い点、及び導電性ペーストが第2めっき層20と被印刷物との間に滲み出すことを抑制できる点については、前述した例と同様である。
【0044】
<3.第1めっき層10の硬度と第2めっき層20の硬度とが同じである場合>
本例では、第1めっき層10を光沢めっきによって形成することにより、第1めっき層10のビッカース硬さを700HV程度にする。第2めっき層20を光沢めっきによって形成することにより、第2めっき層20のビッカース硬さを700HV程度にする。第1めっき層10のビッカース硬さ及び第2めっき層20のビッカース硬さは、700HVより大きい値であることが好ましい。
【0045】
なお、同じめっき浴を使用してめっきを行っても、生成された金属層のビッカース硬さは、環境誤差や計測誤差等によって異なる値を示すことがある。本実施の形態では、第1めっき層10のビッカース硬さが第2めっき層20のビッカース硬さに完全には一致しない場合であっても、その差が上記誤差によって生じ得る範囲に含まれる場合は、上記2つのビッカース硬さは同じであると判断する。
【0046】
上述したように、光沢めっきによって金属層を形成すると、その金属層の表面粗さRaは0.1μmより小さい値になる。このため、本例では、光沢めっきによって第2めっき層20を形成した後、被印刷物に接する面の表面粗さRaを0.1μmから0.4μmの間の値にするための粗さ調整工程が必要になる。粗さ調整工程として、光沢めっきによって形成された表面から金属成分を除去する除去工程と、光沢めっきによって形成された表面に他の成分を付加する付加工程とのどちらが採用されても良い。
【0047】
先ず、除去工程を行う例について説明する。図7は、メタルマスク4の他の製造方法の例を示すフローチャートである。図7のS201からS203に示す手順は、図4のS101からS103に示す手順と同様である。例えば、第2工程で光沢めっきとして電鋳法が採用される際に、母材40に電着される金属層のビッカース硬さが700HVより大きい値になるようなめっき浴が用いられる。
【0048】
第3工程の後、S204において、2段目のめっき層である第2めっき層20を形成する第4工程を行う。具体的に、第4工程では、光沢めっきによって第1めっき層10の表面10aにめっきが行われる。例えば、光沢めっきとして電鋳法が採用される。この時、第1めっき層10に電着される金属層のビッカース硬さが700HVより大きい値になるようなめっき浴が用いられる。これにより、図6(d)に示すように、第2めっき層20が表面10aに形成される。表面10aのうち、第2レジスト43が存在する部分に、金属は電着しない。第2めっき層20には、第2レジスト43によって開口21が形成される。
【0049】
第4工程の後、粗さ調整工程の1つである除去工程として、第2めっき層20の表面20aの表面粗さRaを0.1μm以上で0.4μm以下の値にする第5工程を行う(S205)。具体的に、第5工程では、第2めっき層20の表面20aにエッチング処理を施したり、研磨加工を施したりすることにより、表面20aの表面粗さRaを調整する。
【0050】
第5工程の後、図6(e)に示すように、第1レジスト42と第2レジスト43とを剥離液を用いて除去する(S206)。
【0051】
最後に、第1めっき層10を母材40から分離する。これにより、図2及び図3に示すような構成のメタルマスク4を得ることができる。
【0052】
次に、付加工程を行う例について説明する。付加工程を行う場合も、図7のS201からS204に示す手順と同様の手順で、第1めっき層10の表面10aに第2めっき層20が形成される。
【0053】
第4工程の後、粗さ調整工程の1つである付加工程として、第2めっき層20の表面20aに、表面粗さRaが0.1μm以上で0.4μm以下の値であるコーティング層45を形成する第5工程を行う(S205)。図8は、メタルマスク4の製造方法を説明するための図である。図8(a)は、第2めっき層20の表面20aにコーティング層45が形成された状態を示す。
【0054】
本例では、コーティング層45が被印刷物に対向し、被印刷物に接触する。コーティング層45は、被印刷物に対向する面に必要な粗さを付与するために表面20aに設けられる層である。コーティング層45は、厚みが数μm程度、例えば5μm以下の極薄いめっき層でも良い。ガラスビーズのような粒子を液体或いはめっきによって表面20aに付着させることにより、コーティング層45を形成しても良い。
【0055】
第5工程の後、図8(b)に示すように、第1レジスト42と第2レジスト43とを剥離液を用いて除去する(S206)。
【0056】
最後に、第1めっき層10を母材40から分離する。これにより、第2めっき層20の表面20aにコーティング層45が形成されたメタルマスク4を得ることができる。
【0057】
本例においても、導電性ペーストが供給される表面10bの表面粗さRaを0.1μmより小さい値にすることができ、表面10bにおいて導電性ペーストの流動性が阻害されることを抑制できる。また、被印刷物に接するコーティング層45の表面粗さRaを0.1μmから0.4μmの間の値にすることができ、メタルマスク4が被印刷物に密着し過ぎることを抑制できる。
【0058】
更に、本例では、第1めっき層10のビッカース硬さ及び第2めっき層20のビッカース硬さを700HVより大きい値にすることが可能である。このため、メタルマスク4に十分な硬度を与えることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 印刷版
2 枠
3 紗
4 メタルマスク
5 基板
10 第1めっき層
10a 表面
10b 表面
11 貫通孔
12 補強部
20 第2めっき層
20a 表面
21 開口
40 母材
40a 表面
41 ドライフィルムレジスト
42 第1レジスト
43 第2レジスト
44 ドライフィルムレジスト
45 コーティング層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8