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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066090
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】容積可変型燃焼設備
(51)【国際特許分類】
   F23M 3/22 20060101AFI20240508BHJP
   F23M 3/16 20060101ALI20240508BHJP
   F23M 3/18 20060101ALI20240508BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F23M3/22
F23M3/16 ZAB
F23M3/18
F23G5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175378
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】308024395
【氏名又は名称】荏原環境プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】市川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】北井 豪太
(72)【発明者】
【氏名】井口 哲治
(72)【発明者】
【氏名】岡部 由知
(72)【発明者】
【氏名】石井 章文
(72)【発明者】
【氏名】佐山 幸平
(72)【発明者】
【氏名】香島 正実
(57)【要約】
【課題】一般廃棄物などを焼却する中型炉や大型炉にも適用可能な容積可変型燃焼設備の提供。
【解決手段】容積可変型燃焼設備1は、ごみを燃焼させる燃焼室100と、燃焼室100に対して挿抜され、燃焼室100の容積を可変させる挿入装置20と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼対象物を燃焼させる燃焼室と、
前記燃焼室に対して挿抜され、前記燃焼室の容積を可変させる挿入装置と、を備える、
容積可変型燃焼設備。
【請求項2】
前記挿入装置は、内部に流体を流す冷却流路を備える、
請求項1に記載の容積可変型燃焼設備。
【請求項3】
前記挿入装置は、前記流体を前記燃焼室に噴出する噴出口を備える、
請求項2に記載の容積可変型燃焼設備。
【請求項4】
前記挿入装置は、内部で熱交換した前記流体を返送する返送流路を備える、
請求項2に記載の容積可変型燃焼設備。
【請求項5】
前記燃焼室は、
前記燃焼対象物を乾燥させる乾燥帯と、
前記乾燥帯で乾燥した前記燃焼対象物を燃焼させる燃焼帯と、を備え、
前記挿入装置は、前記燃焼帯で生じた輻射熱を、前記乾燥帯に反射する形状を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の容積可変型燃焼設備。
【請求項6】
前記挿入装置は、前記燃焼室の側壁に複数設けられている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の容積可変型燃焼設備。
【請求項7】
前記挿入装置は、前記燃焼室の対向する一対の側壁の一方側に設けられ、
前記一対の側壁の他方側は、前記燃焼室に挿入された前記挿入装置を受ける孔部を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の容積可変型燃焼設備。
【請求項8】
前記孔部は、前記挿入装置の挿入によって後退する蓋部を備える、
請求項7に記載の容積可変型燃焼設備。
【請求項9】
前記孔部は、前記蓋部を前記挿入装置の挿入方向と反対側に向かって付勢する付勢部を備える、
請求項8に記載の容積可変型燃焼設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積可変型燃焼設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、柩が出入可能な燃焼室と、この燃焼室に連通する煙道あるいは再燃焼室と煙道とを傭えた火葬炉において、前記燃焼室と再燃焼室の少なくとも一方に、可動壁と、この可動壁を室内方向と室外方向に向かって移動することが可能な可動壁移動磯構とを装備したことを特徴とする火葬炉における炉内容積可変装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62-81827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術は、燃焼室の壁を可動させる大掛かりな機構と動力が必要であるため、適用範囲が火葬炉のような小型炉に限られていた。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、一般廃棄物などを焼却する中型炉や大型炉にも適用可能な容積可変型燃焼設備の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1):本発明の一態様に係る容積可変型燃焼設備は、燃焼対象物を燃焼させる燃焼室と、前記燃焼室に対して挿抜され、前記燃焼室の容積を可変させる挿入装置と、を備える。
【0007】
(2):(1)に係る容積可変型燃焼設備において、前記挿入装置は、内部に流体を流す冷却流路を備えてもよい。
【0008】
(3):(2)に係る容積可変型燃焼設備において、前記挿入装置は、前記流体を前記燃焼室に噴出する噴出口を備えてもよい。
【0009】
(4):(2)に係る容積可変型燃焼設備において、前記挿入装置は、内部で熱交換した前記流体を返送する返送流路を備えてもよい。
【0010】
(5):(1)~(4)のいずれか一つに係る容積可変型燃焼設備において、前記燃焼室は、前記燃焼対象物を乾燥させる乾燥帯と、前記乾燥帯で乾燥した前記燃焼対象物を燃焼させる燃焼帯と、を備え、前記挿入装置は、前記燃焼帯で生じた輻射熱を、前記乾燥帯に反射する形状を備えてもよい。
【0011】
(6):(1)~(5)のいずれか一つに係る容積可変型燃焼設備において、前記挿入装置は、前記燃焼室の側壁に複数設けられていてもよい。
【0012】
(7):(1)~(6)のいずれか一つに係る容積可変型燃焼設備において、前記挿入装置は、前記燃焼室の対向する一対の側壁の一方側に設けられ、前記一対の側壁の他方側は、前記燃焼室に挿入された前記挿入装置を受ける孔部を備えてもよい。
【0013】
(8):(7)に係る容積可変型燃焼設備において、前記孔部は、前記挿入装置の挿入によって後退する蓋部を備えてもよい。
【0014】
(9):(8)に係る容積可変型燃焼設備において、前記孔部は、前記蓋部を前記挿入装置の挿入方向と反対側に向かって付勢する付勢部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明の一態様によれば、一般廃棄物などを焼却する中型炉や大型炉にも適用可能な容積可変型燃焼設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る容積可変型燃焼設備を示す構成図である。
図2】第1実施形態に係る挿入装置を示す構成図である。
図3図2に示す矢視A-A断面図である。
図4】第1実施形態に係る燃焼室に挿入装置を挿入した様子を示す図である。
図5】第1実施形態に係る挿入装置の一変形例を示す断面図である。
図6】第1実施形態に係る挿入装置の他の変形例を示す断面図である。
図7】第1実施形態に係る挿入装置の形状例を示す図である。
図8】第2実施形態に係る挿入装置の形状及び配置を示す構成図である。
図9】第3実施形態に係る挿入装置の形状及び配置を示す構成図である。
図10】第4実施形態に係る挿入装置の形状及び配置を示す構成図である。
図11】第5実施形態に係る挿入装置の形状及び配置を示す構成図である。
図12】各実施形態及び各変形例に係る挿入装置と挿入位置との適合関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。以下では、本発明を中型炉や大型炉を含むごみ焼却プラントに適用した場合を例示する。なお、本発明は小型の火葬炉などに適用しても構わない。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る容積可変型燃焼設備1を示す構成図である。
図1に示す容積可変型燃焼設備1は、搬入車両2から投入されたごみ(燃焼対象物)を焼却する焼却炉10を含むごみ焼却プラントである。この容積可変型燃焼設備1は、焼却炉10の他、プラットホーム3、ごみピット4、クレーン5、投入ホッパ6、ボイラ7、灰ピット8などを備えている。
【0019】
プラットホーム3には、ごみを積載する搬入車両2が停車する。ごみとしては、例えば、水分量が多く、発熱量が低い一般廃棄物(低質ごみ)などを例示できる。ごみピット4には、プラットホーム3から投入されるごみが貯留される。クレーン5は、ごみピット4内に貯留されるごみを攪拌および搬送し、投入ホッパ6に入れる。
【0020】
投入ホッパ6は、焼却炉10内にごみを投入する。焼却炉10は、投入ホッパ6から投入されたごみを焼却する。ボイラ7は、焼却炉10内で生じた排ガスから排熱を回収する。灰ピット8は、焼却炉10内で生じた焼却灰を貯留する。焼却炉10は、上流側(投入ホッパ6)から投入されたごみを下流側(灰ピット8)に導くストーカ11を備えている。なお、焼却炉10は、ストーカ式に限らず流動床式などであっても構わない。
【0021】
ボイラ7は、焼却炉10から上方に延びる第1回路7a(1パスとも言う)と、第1回路7aの上端部から下方に延びる第2回路7b(2パスとも言う)と、第2回路7bの下端部から上方に延びる第3回路7c(3パスとも言う)と、を備えている。第3回路7cには、図示しない過熱器などが配置されている。また、第3回路7cの上端部は、図示しない排ガス処理設備を介して図示しない煙突と接続されている。
【0022】
上記構成の容積可変型燃焼設備1において、ごみを燃焼させる燃焼室100には、燃焼室100の容積を可変させる複数の挿入装置20が設けられている。なお、本実施形態において燃焼室100とは、少なくとも焼却炉10の内部を含み、好ましくは焼却炉10とボイラ7との接続部分(0パスとも言う)を含み、より好ましくはボイラ7の第1回路7aの少なくとも一部を含む。なお、図1図2図8図11では、燃焼室100に含まれる領域に斜線を付している。
【0023】
また、本実施形態において燃焼室100の容積を可変させるとは、挿入装置20が1台の場合はその1台で、また、挿入装置20が複数台の場合はそれらの合計で、少なくとも燃焼室100の容積を10%以上可変させることを言い、好ましくは燃焼室100の容積を30%以上可変させることを言い、より好ましくは燃焼室100の容積を50%以上可変させることを言う。
【0024】
図2は、第1実施形態に係る挿入装置20を示す構成図である。図3は、図2に示す矢視A-A断面図である。図4は、第1実施形態に係る燃焼室100に挿入装置20を挿入した様子を示す図である。
図2に示すように、挿入装置20は、燃焼室100の下段部、中段部、上段部のそれぞれに設けられている。
【0025】
燃焼室100の下段部には、ごみを乾燥させる乾燥帯101と、乾燥帯101で乾燥したごみを燃焼させる燃焼帯102と、が形成されている。乾燥帯101は、焼却炉10内におけるごみの流れの上流側(図1に示す投入ホッパ6側)に形成されている。また、燃焼帯102は、焼却炉10内におけるごみの流れの乾燥帯101より下流側に形成されている。
【0026】
図2に示す例では、挿入装置20は、燃焼室100の下段部において、燃焼帯102上に複数設けられている。燃焼室100の下段部に設けられた挿入装置20は、ごみの流れに沿って水平方向に間隔をあけて複数設けられている。また、挿入装置20は、燃焼室100の中段部、上段部の適所に1つずつ設けられている。なお、挿入装置20の個数及び配置は、この構成に限定されるものではない。
【0027】
挿入装置20は、図3に示すように、燃焼室100の対向する一対の側壁10A,10Bの一方側(側壁10A)に設けられている。挿入装置20は、側壁10Aの外側に配置された移動装置30によって、燃焼室100に対し挿抜可能とされている。図3に示す移動装置30は、挿入装置20を水平方向に移動させる複数のローラー31を備えている。なお、挿入装置20の移動は、ローラー31に限らず、流体圧力式のシリンダなどであっても構わない。
【0028】
側壁10Aには、挿入装置20を燃焼室100の内部に差し込む孔部12が形成されている。側壁10Aと対向する側壁10Bには、燃焼室100に挿入された挿入装置20を受ける孔部13が形成されている。孔部13は、図4に示すように、挿入装置20の挿入によって後退する蓋部14を備えている。また、孔部13は、蓋部14を挿入装置20の挿入方向と反対側に向かって付勢する付勢部15を備えている。
【0029】
付勢部15は、挿入装置20が挿入されていないとき、蓋部14を孔部13の開口端に位置させる。これにより、挿入装置20が挿入されない状態では、蓋部14により孔部13が閉塞され、孔部13に燃焼灰などが溜まらないようになる。付勢部15としては、スプリングを例示できるが、挿入装置20によって押し込まれた蓋部14を孔部13の開口端まで押し返す付勢力を生じさせるものであればスプリングに限定されず、例えば、流体圧力式のシリンダで駆動させてもよい。
【0030】
なお、図3図4に示す例では、挿入装置20が、燃焼室100の対向する一対の側壁10A,10Bの一方側(側壁10A)に設けられ、一対の側壁10A,10Bの他方側(側壁10B)に向かって挿入される構成を例示したが、挿入装置20が一対の側壁10A,10Bの双方に設けられ、双方の挿入装置20の先端が燃焼室100内で突き合わされる(連結する)構成であっても構わない。
【0031】
図3に示すように、挿入装置20は、内部に流体を流す冷却流路20aを備えている。挿入装置20は、冷却流路20aを形成する外筒部21及び内筒部22と、外筒部21及び内筒部22に接続された接続流路40と、を備えている。外筒部21は、先端が閉塞された筒状に形成されている。外筒部21は、耐火性の材料から形成されているとよい。内筒部22は、先端22aが開口する筒状に形成されている。内筒部22は、外筒部21の内側に配置されている。内筒部22の外周面と、外筒部21の内周面との間には、流体が流通できる隙間が形成されている。
【0032】
接続流路40は、内筒部22の内部に連通する供給流路41と、内筒部22と外筒部21の隙間に連通する返送流路42と、を備えている。供給流路41は、例えば、図示しないブロアなどと接続され、挿入装置20の内部に流体(例えば空気)を供給する。返送流路42は、挿入装置20の内部で熱交換し加熱された空気を、例えば、燃焼用空気として焼却炉10(例えばストーカ11部分)に供給する。なお、挿入装置20の内部に供給する流体としては、空気以外の気体(不活性ガス、水蒸気など)、若しくは液体(水など)であっても構わない。
【0033】
図5は、第1実施形態に係る挿入装置20の一変形例を示す断面図である。なお、図5(a)は、挿入装置20の縦断面図である。図5(b)は、図5(a)に示す矢視B-B断面図である。
図5に示すように、挿入装置20は、内部を流通する流体を燃焼室100に噴出する噴出口21aを備えてもよい。噴出口21aから噴出される流体は、挿入装置20を保護するシールドガスとなる。また、流体が空気である場合、燃焼用の二次空気、若しくは排ガスを拡散または攪拌する空気となる。
【0034】
噴出口21aは、外筒部21の周面に複数形成されている。また、内筒部22の周面にも複数の噴出口22bが形成されている。内筒部22の噴出口22bは、外筒部21の噴出口21aと同一直線上に配置されてないように形成されている。これにより、挿入装置20内に流体を滞留させ、外筒部21の周面全体から偏りなく流体を噴出できる。
【0035】
図6は、第1実施形態に係る挿入装置20の他の変形例を示す断面図である。なお、図6(a)は、挿入装置20の縦断面図である。図6(b)は、図6(a)に示す矢視C-C断面図である。
図6に示すように、挿入装置20は、内筒部22を備えなくてもよい。この場合であっても、挿入装置20の内部を流通する流体を、外筒部21の噴出口21aから燃焼室100に噴出することができる。
【0036】
図7は、第1実施形態に係る挿入装置20の形状例を示す図である。なお、図7(a)~図7(d)は、挿入装置20を挿入方向から視た形状を示している。
図7(a)に示す挿入装置20Aは、挿入方向から視て円形に形成されている。また、図7(b)に示す挿入装置20Bは、挿入方向から視て四角形に形成されている。
【0037】
また、図7(c)に示す挿入装置20Cは、挿入方向から視て楕円形に形成されている。また、図7(d)に示す挿入装置20Dは、挿入方向から視て三角形に形成されている。
なお、挿入装置20は、図7(a)~図7(d)に示す形状以外の形状であってもよい。また、挿入装置20の形状に合わせて、上述した孔部12,13、及び蓋部14の形状を変更するとよい。
【0038】
カーボンニュートラル・ネガティブを見据えた中長期計画において、燃焼室100に搬入される廃棄物量(焼却量)と発熱量は低下していくと予想される。また、地球温暖化に伴い多発する災害により発生した災害ごみなど、想定外に高い発熱量の廃棄物を処理することも想定される。固定された燃焼室100の容積では、低下した焼却量と発熱量または上昇した発熱量によっては安定して燃焼することができない。なお、安定した燃焼とは、燃焼ガス濃度や温度を定められた規制値を満足させることである。
【0039】
上記構成の容積可変型燃焼設備1によれば、挿入装置20を燃焼室100内に挿入することで、燃焼室100の容積を低減できる。このように燃焼室100の容積を低減させることで、例えば、定格処理量の負荷率60%未満であっても安定して燃焼させることができる。つまり、設計低質ごみよりも更に低下した発熱量でも、負荷率60%未満(例えば負荷率40%も可)での安定した燃焼が可能となる。
【0040】
このように、上述した本実施形態に係る容積可変型燃焼設備1は、ごみを燃焼させる燃焼室100と、燃焼室100に対して挿抜され、燃焼室100の容積を可変させる挿入装置20と、を備える。この構成によれば、想定外に低い発熱量の廃棄物が搬入されても、運転計画を最善に保つことができ、かつ安定した燃焼を継続させることができる。さらに容積可変型燃焼設備1が蒸気タービンの発電施設として建設されていれば、低下していく蒸気量や発電量に応じて挿入装置20を挿抜することで安定した燃焼を確保し、安定した燃焼に必要な熱エネルギーロス分を極力少なくさせることができる。また、挿入装置20は、既存設備に対しても燃焼室100に対し上述した孔部12,13を設ける等の小規模工事で済むため、作業面でもコスト面でも適用が容易である。
このように、本実施形態によれば、一般廃棄物などを焼却する中型炉や大型炉にも適用可能な容積可変型燃焼設備1を提供できる。
【0041】
また、本実施形態において、挿入装置20は、内部に流体を流す冷却流路20aを備える。この構成によれば、燃焼室100に挿入される挿入装置20を熱から保護することができる。
【0042】
また、本実施形態において、挿入装置20は、流体を燃焼室100に噴出する噴出口21aを備える。この構成によれば、挿入装置20の内部を流通する流体を、挿入装置20の表面を保護するシールドガスとして、また、燃焼用の二次空気として利用することができる。
【0043】
また、本実施形態において、挿入装置20は、内部で熱交換した流体を返送する返送流路42を備える。この構成によれば、挿入装置20に熱交換器機能を付帯させ、返送した流体で、例えばごみを燃焼させる空気を高温化できる。つまり、燃焼用の一次空気を高温化する従来の蒸気式熱交換器や燃焼ガス式熱交換器の代わりになる。蒸気式熱交換器との代用であれば、熱交換用に使用していた蒸気を発電量に寄与させることができ、燃焼ガス式熱交換器の代用であれば、燃焼ガスの低温化を抑制でき、下流の腐食低減を図れると共に、下流にある触媒のための燃焼ガス再加熱器用の蒸気の使用量も削減できる。また、挿入装置20の熱交換機能を高めた場合は、逆に排ガスの高温化を抑制することもできる。
【0044】
また、本実施形態において、挿入装置20は、燃焼室100の側壁10Aに複数設けられている。この構成によれば、一台一台の挿入装置20を大型化しなくても、燃焼室100の容積を容易に低減できる。
【0045】
また、本実施形態において、挿入装置20は、燃焼室100の対向する一対の側壁10A,10Bの一方側(側壁10A)に設けられ、一対の側壁10A,10Bの他方側(側壁10B)は、燃焼室100に挿入された挿入装置20を受ける孔部13を備える。この構成によれば、燃焼室100に挿入された挿入装置20を片持ち支持でなく両端支持できるため、挿入装置20の支持安定性を高めることができる。
【0046】
また、本実施形態において、孔部13は、挿入装置20の挿入によって後退する蓋部14を備える。この構成によれば、挿入装置20の挿入前は孔部13を閉塞し、孔部13に燃焼灰が溜まるのを抑制できる。また、挿入装置20の挿入後は孔部13を開放し、挿入装置20の支持安定性を高めることができる。
【0047】
また、本実施形態において、孔部13は、蓋部14を挿入装置20の挿入方向と反対側に向かって付勢する付勢部15を備える。この構成によれば、挿入装置20が孔部13から抜かれたとき、付勢部15の付勢力によって蓋部14を自動で孔部13の開口端まで移動させ、孔部13を閉塞できる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0049】
図8は、第2実施形態に係る挿入装置20Cの形状及び配置を示す構成図である。
図8に示すように、第2実施形態の容積可変型燃焼設備1は、挿入方向から視て楕円形の挿入装置20Cを備えている。
【0050】
挿入装置20Cは、燃焼室100の下段部の燃焼帯102上の乾燥帯101側の下段上流位置P1と、燃焼室100の下段部の燃焼帯102上の乾燥帯101と反対側の下段下流位置P2と、燃焼室100の中段部の中段位置P3と、燃焼室100の上段部の上段位置P4に設けられている。
【0051】
中段位置P3及び上段位置P4に設けられた挿入装置20Cは、排ガスの流れを考慮し、圧力損失が少なく、また燃焼灰の堆積を抑制するため、楕円形の長軸が鉛直軸に沿って延びた形状を有している。
【0052】
下段上流位置P1及び下段下流位置P2に設けられた挿入装置20Cは、燃焼帯102で生じた輻射熱を、乾燥帯101に反射できるように、楕円形の長軸が鉛直軸に対して上流側に鋭角で傾いた形状を有している。下段上流位置P1に設けられた挿入装置20Cの楕円形の長軸が鉛直軸に対して上流側に傾く角度は、下段下流位置P2に設けられた挿入装置20Cよりも大きいとよい。
【0053】
例えば、下段上流位置P1に設けられた挿入装置20Cは、楕円形の長軸が鉛直軸に対して上流側に略45°で傾いた形状を有している。また、下段下流位置P2に設けられた挿入装置20Cは、楕円形の長軸が鉛直軸に対して上流側に略30°で傾いた形状を有している。
【0054】
このように、上記構成の第2実施形態によれば、燃焼室100の下段部(ストーカ11の近く)に設けられた挿入装置20Cが、燃焼帯102で生じた輻射熱を、乾燥帯101に反射する形状を備えるため、低下した発熱量のごみに対して、効率よく乾燥させることができ、安定燃焼に寄与できる。
【0055】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0056】
図9は、第3実施形態に係る挿入装置20Eの形状及び配置を示す構成図である。
図9に示すように、第2実施形態の容積可変型燃焼設備1は、挿入方向から視て半円形の挿入装置20Eを備えている。
【0057】
挿入装置20Eは、燃焼室100の下段部の燃焼帯102上の乾燥帯101側の下段上流位置P1と、燃焼室100の下段部の燃焼帯102上の乾燥帯101と反対側の下段下流位置P2と、燃焼室100の中段部の中段位置P3と、燃焼室100の上段部の上段位置P4に設けられている。
【0058】
中段位置P3及び上段位置P4に設けられた挿入装置20Eは、燃焼灰の堆積を抑制するため、半円形の曲面部分が上方を向いた形状を有している。
【0059】
下段上流位置P1及び下段下流位置P2に設けられた挿入装置20Eは、燃焼帯102で生じた輻射熱を、乾燥帯101に反射できるように、半円形の平面部分が鉛直軸に対して上流側に鋭角で傾いた形状を有している。下段上流位置P1に設けられた挿入装置20Eの半円形の平面部分が鉛直軸に対して上流側に傾く角度は、下段下流位置P2に設けられた挿入装置20Eよりも大きいとよい。
【0060】
例えば、下段上流位置P1に設けられた挿入装置20Eは、半円形の平面部分が鉛直軸に対して上流側に略45°で傾いた形状を有している。また、下段下流位置P2に設けられた挿入装置20Eは、半円形の平面部分が鉛直軸に対して上流側に略30°で傾いた形状を有している。
【0061】
このように、上記構成の第3実施形態によれば、燃焼室100の下段部(ストーカ11の近く)に設けられた挿入装置20Eが、燃焼帯102で生じた輻射熱を、乾燥帯101に反射する形状を備えるため、低下した発熱量のごみに対して、効率よく乾燥させることができ、安定燃焼に寄与できる。また、挿入装置20Eは、輻射熱の反射面が平面であるため、第2実施形態よりも輻射熱が散乱し難い。
【0062】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0063】
図10は、第4実施形態に係る挿入装置20Cの形状及び配置を示す構成図である。
図10に示すように、第4実施形態の容積可変型燃焼設備1は、挿入方向から視て楕円形の挿入装置20Cを備えている。
【0064】
第4実施形態では、中段位置P3及び上段位置P4に設けられた計4つ挿入装置20Cが、上方に向かって千鳥配置されると共に、それぞれの楕円形の長軸が、鉛直軸に対して上流側と下流側に交互に鋭角で傾いた、ハの字形状を有している点で、上記第2実施形態と異なる。
【0065】
上記第4実施形態の挿入装置20Cの形状及び配置は、容積可変型燃焼設備1の図示しない誘引送風機の負圧能力に余裕のある場合に適している。
【0066】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0067】
図11は、第5実施形態に係る挿入装置20Eの形状及び配置を示す構成図である。
図11に示すように、第5実施形態の容積可変型燃焼設備1は、挿入方向から視て半円形の挿入装置20Eを備えている。
【0068】
第5実施形態では、中段位置P3及び上段位置P4に設けられた計4つ挿入装置20Eが、上方に向かって千鳥配置されると共に、それぞれの半円形の平面部分が、鉛直軸に対して上流側と下流側に交互に鋭角で傾いた、ハの字形状を有している点で、上記第3実施形態と異なる。
【0069】
上記第5実施形態の挿入装置20Eの形状及び配置は、容積可変型燃焼設備1の図示しない誘引送風機の負圧能力に余裕のある場合に適している。
【0070】
以下、上述した挿入装置20の各タイプとその挿入位置との好ましい関係について説明する。なお、本発明は、以下の適合関係に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0071】
図12は、各実施形態及び各変形例に係る挿入装置20と挿入位置との適合関係を示す図である。なお、図12において、「〇」は良、「△」は状況に応じて可、「×」は不良を示している。
【0072】
図12の「輻射熱タイプ(異形状)」とは、例えば、第2~第5実施形態に係る挿入装置20C,20Dである。このタイプは、輻射熱が届きやすい下段部/乾燥帯側(下段上流位置P1)及び下段部/反乾燥帯側(下段下流位置P2)が「〇」である。また、このタイプは、輻射熱が届きがたい上段部(上段位置P4)及び中段部(中段位置P3)が「△」である。
【0073】
図12の「熱交換タイプ」とは、例えば、第1実施形態に係る図3及び図4に示す挿入装置20である。このタイプは、高温になりやすい上段部(上段位置P4)、中段部(中段位置P3)、及び下段部/乾燥帯側(下段上流位置P1)が「〇」である。また、このタイプは、ごみが燃焼灰になる及び下段部/反乾燥帯側(下段下流位置P2)が「×」である。
【0074】
図12の「ノズル付きタイプ」とは、例えば、第1実施形態に係る図6に示す挿入装置20である。このタイプは、最も高温になりやすい中段部(中段位置P3)が「〇」である。また、このタイプは、次に高温になりやすい上段部(上段位置P4)及び下段部/乾燥帯側(下段上流位置P1)が「△」である。また、このタイプは、ごみが燃焼灰になる及び下段部/反乾燥帯側(下段下流位置P2)が「×」である。
【0075】
図12の「ガス滞留・拡散タイプ」とは、例えば、第1実施形態に係る図5に示す挿入装置20である。このタイプは、流体を偏りなく噴出できるため、高温になりやすい上段部(上段位置P4)、中段部(中段位置P3)、及び下段部/乾燥帯側(下段上流位置P1)が「〇」である。また、このタイプは、ごみが燃焼灰になる及び下段部/反乾燥帯側(下段下流位置P2)においてもガス滞留性能および拡散性能が高いため「〇」である。
【0076】
図12の「付属機能なしタイプ(耐火物のみ)」とは、例えば、第1実施形態に係る図3及び図4に示す挿入装置20が外筒部21のみの場合である。このタイプは、耐火性能が他のタイプと比べて低いため、高温になりやすい中段部(中段位置P3)及び下段部/乾燥帯側(下段上流位置P1)が「×」である。また、このタイプは、次に高温になりやすい上段部(上段位置P4)が「△」である。また、このタイプは、ごみが燃焼灰になり、比較的低温の下段部/反乾燥帯側(下段下流位置P2)が「〇」である。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【符号の説明】
【0078】
1…容積可変型燃焼設備、2…搬入車両、3…プラットホーム、4…ピット、5…クレーン、6…投入ホッパ、7…ボイラ、7a…第1回路、7b…第2回路、7c…第3回路、8…灰ピット、10…焼却炉、10A…側壁、10B…側壁、11…ストーカ、12…孔部、13…孔部、14…蓋部、15…付勢部、20…挿入装置、20a…冷却流路、21…外筒部、21a…噴出口、22…内筒部、22a…先端、22b…噴出口、27a…噴出口、30…移動装置、31…ローラー、40…接続流路、41…供給流路、42…返送流路、100…燃焼室、101…乾燥帯、102…燃焼帯、P1…下段上流位置、P2…下段下流位置、P3…中段位置、P4…上段位置
図1
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図12