(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066098
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】平型導体用電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/77 20110101AFI20240508BHJP
H01R 13/533 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01R12/77
H01R13/533 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175400
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】玉木 祥一郎
【テーマコード(参考)】
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E087EE11
5E087GG06
5E087RR15
5E223AB45
5E223BA04
5E223BA07
5E223BA08
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB29
5E223CB39
5E223CD01
5E223CD02
5E223DA05
5E223EA02
(57)【要約】
【課題】端子と平型導体との良好な接触状態を維持しやすい平型導体用電気コネクタを提供する。
【解決手段】端子20は、一端側でハウジング10に固定的に取り付けられる取付部と、他端側で前後方向に延びて設けられ平型導体Cの回路部に接触する接触腕部25,26と、取付部と接触腕部25,26との間に設けられた弾性変位可能な弾性部28とを有しており、弾性部28は、前後方向、端子配列方向、および平型導体Cの厚さ方向である上下方向の少なくとも1つの方向に弾性変位可能となっており、接触腕部25,26は、少なくとも上下方向に弾性変位可能であり、かつ、前記弾性部28が弾性変位したとき、弾性部28とともに変位可能となっている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる平型導体が前方へ向けて挿入接続される平型導体用電気コネクタにおいて、
前記平型導体の幅方向を端子配列方向として配列される複数の端子と、
前記複数の端子を保持するハウジングとを有しており、
前記端子は、一端側で前記ハウジングに固定的に取り付けられる取付部と、他端側で前後方向に延びて設けられ前記平型導体の回路部に接触する接触腕部と、前記取付部と前記接触腕部との間に設けられた弾性変位可能な弾性部とを有しており、
前記弾性部は、前後方向、端子配列方向、および前記平型導体の厚さ方向である上下方向の少なくとも1つの方向に弾性変位可能となっており、
前記接触腕部は、少なくとも上下方向に弾性変位可能であり、かつ、前記弾性部が弾性変位したとき、前記弾性部とともに変位可能となっていることを特徴とする平型導体用電気コネクタ。
【請求項2】
前記弾性部は、その長手方向での中間位置で屈曲された屈曲部を有していることとする請求項1に記載の平型導体用電気コネクタ。
【請求項3】
前記端子は、上下方向で前記平型導体に対して前記接触腕部とは反対側に、前記平型導体を前記接触腕部へ向けて直接的または間接的に押圧する押圧部を有していることとする請求項1または請求項2に記載の平型導体用電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平型導体が挿入接続される平型導体用電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
平型導体用電気コネクタとして、例えば、特許文献1の電気コネクタが知られている。この特許文献1の電気コネクタでは、前後方向に延びる平型導体(フラットケーブル)が前方へ向けて挿入接続されており、複数の端子を保持するハウジングに取り付けられたスライダによって、平型導体がコネクタに接続された状態を維持するようになっている。具体的には、スライダは、平型導体の抜出を許容する後退位置と平型導体の抜出を阻止する前進位置との間で前後方向に移動可能な状態で、ハウジングに後方から取り付けられている。
【0003】
端子は、ハウジングの前部で上下方向に延びる支柱部と、支柱部の下端からハウジング外へ延出し回路基板の実装面に接続される接続部と、支柱部の上部から後方へ向けて延びる上アーム部と、支柱部の下部から後方へ向けて延び上下方向で弾性変位可能な第1下アーム部および第2下アーム部を有している。この端子は、上アーム部の前端部に形成された突起でハウジングに対して前方から圧入されて保持されている。第1下アーム部および第2下アーム部は、前後方向での長さが異なっており、それぞれの後端に設けられた接触部で平型導体の回路部に接圧をもって接触可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電気コネクタが、振動が生じやすい環境で使用された場合、端子の第1下アーム部および第2下アーム部が電気コネクタの外部からの振動に追従するように弾性変位することにより、端子の接触部と平型導体の回路部との接触状態が維持される。第1下アーム部および第2下アーム部が上記振動にどの程度追従できるかは、第1下アーム部および第2下アーム部の長さに左右される。もし振動の周波数が高く、第1下アーム部および第2下アーム部の弾性変位によって追従できない場合には、端子の接触部と平型導体の回路部とが細かく摺接することとなる。このような細かい摺接が繰り返されると、接触部および回路部が削られて金属粉が生じ、この金属粉が接触部と回路部との接触部分の近傍に堆積する。これらの金属粉は、酸化することにより、接触部と回路部との電気的導通状態に悪影響を及ぼす。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、端子と平型導体との良好な接触状態を維持しやすい平型導体用電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る平型導体用電気コネクタは、前後方向に延びる平型導体が前方へ向けて挿入接続される。
【0008】
かかる平型導体用電気コネクタにおいて、本発明では、前記平型導体の幅方向を端子配列方向として配列される複数の端子と、前記複数の端子を保持するハウジングとを有しており、前記端子は、一端側で前記ハウジングに固定的に取り付けられる取付部と、他端側で前後方向に延びて設けられ前記平型導体の回路部に接触する接触腕部と、前記取付部と前記接触腕部との間に設けられた弾性変位可能な弾性部とを有しており、前記弾性部は、前後方向、端子配列方向、および前記平型導体の厚さ方向である上下方向の少なくとも1つの方向に弾性変位可能となっており、前記接触腕部は、少なくとも上下方向に弾性変位可能であり、かつ、前記弾性部が弾性変位したとき、前記弾性部とともに変位可能となっていることを特徴としている。
【0009】
本発明では、端子は、取付部と接触腕部との間に、前後方向、端子配列方向および上下方向の少なくとも1つの方向に弾性変位可能な弾性部を有している。したがって、本発明の電気コネクタが、振動が生じやすい環境で使用され、外部からの振動を受けたとき、端子において、接触腕部だけでなく、弾性部も弾性変位する。つまり、本発明では、従来のような接触腕部だけが弾性変位可能となっている場合と比べて、弾性変位可能な部分が長く設けられている。したがって、電気コネクタが外部からの高い周波数の振動を受けても、接触腕部が弾性部とともに変位することでその振動に追従しやすくなり、その結果、接触腕部との平型導体の回路部との細かい摺接、ひいてはその摺接に起因する金属粉の発生を回避できる。したがって、接触部と回路部との電気的導通状態を維持しやすくなる。
【0010】
(2) (1)の発明において、前記弾性部は、その長手方向での中間位置で屈曲された屈曲部を有していることとしてもよい。このように弾性部に屈曲部を設けることにより、屈曲部の屈曲方向で弾性部を大きくすることなく、弾性部の全長を長くして、弾性部ひいては端子における弾性変位量を大きく確保できる。
【0011】
(3) (1)と(2)の発明において、前記端子は、上下方向で前記平型導体に対して前記接触腕部とは反対側に、前記平型導体を前記接触腕部へ向けて直接的または間接的に押圧する押圧部を有していてもよい。このような押圧部を設けることにより、平型導体が押圧部と接触腕部によって直接的あるいは間接的に挟持された状態となり、接触腕部と平型導体の回路部との接圧が高められる。このとき、電気コネクタが外部からの振動を受けて、弾性部および接触腕部が振動に追従するように弾性変位しても、平型導体が挟持された状態は維持される。したがって、接触腕部と平型導体の回路部とが高い接圧をもって接触した状態を良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、端子と平型導体との良好な接触状態を維持しやすい平型導体用電気コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る平型導体用電気コネクタを平型導体とともに示した斜視図であり、平型導体を挿入する前の状態を示している。
【
図2】
図1の平型導体用電気コネクタについて、各部材を分離した状態で示した斜視図である。
【
図3】
図1の平型導体用電気コネクタの横断面図であり、上下方向における案内溝部の位置での断面を示している。
【
図4】
図1の平型導体用電気コネクタの縦断面図であり、(A)は、コネクタ幅方向における外腕部の位置での断面、(B)はコネクタ幅方向における端子の位置での断面、(C)は嵌合検知部材の移動方向に沿った面における嵌合検知部材の位置での断面、(D)は、嵌合検知部材の移動方向に対して直角な面における嵌合検知部材の位置での断面を示している。
【
図5】平型導体用電気コネクタを平型導体とともに示した図であり、(A)は平型導体を挿入した直後における斜視図、(B)は(A)の上下方向における案内溝部の位置での断面を示す横断面図である。
【
図6】
図5(A)の平型導体用電気コネクタの縦断面図であり、(A)は、コネクタ幅方向における外腕部の位置での断面、(B)はコネクタ幅方向における端子の位置での断面、(C)は嵌合検知部材の移動方向に沿った面における嵌合検知部材の位置での断面を示している。
【
図7】平型導体用電気コネクタを平型導体とともに示した図であり、(A)は平型導体を挿入後、スライダを前進位置に移動させた直後における斜視図、(B)は(A)の上下方向における案内溝部の位置での断面を示す横断面図である。
【
図8】
図7(A)の平型導体用電気コネクタの縦断面図であり、(A)は、コネクタ幅方向における外腕部の位置での断面、(B)はコネクタ幅方向における端子の位置での断面、(C)は嵌合検知部材の移動方向に沿った面における嵌合検知部材の位置での断面を示している。
【
図9】平型導体用電気コネクタを平型導体とともに示した図であり、(A)は平型導体の接続が完了した状態を示す斜視図、(B)は(A)の上下方向における案内溝部の位置での断面を示す横断面図である。
【
図10】
図9(A)の平型導体用電気コネクタの縦断面図であり、(A)は、コネクタ幅方向での外腕部の位置での断面、(B)はコネクタ幅方向における端子の位置での断面、(C)は嵌合検知部材の移動方向に沿った面における嵌合検知部材の位置での断面を示している。
【
図11】平型導体用電気コネクタのコネクタ幅方向における端部についての前後方向に対して直角な面での縦断面図であり、(A)は嵌合検知部材が待機位置にある状態、(B)は嵌合検知部材が検知位置にある状態を示している。
【
図12】変形例に係るハウジングおよび補強金具の斜視図であり、(A)は補強金具をハウジングに取り付けた状態、(B)は補強金具をハウジングから分離した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る平型導体用電気コネクタ(以下「コネクタ1」という)を平型導体Cとともに示した斜視図であり、平型導体Cを挿入する前の状態を示している。
図2は、コネクタ1について、各部材を分離した状態で示した斜視図である。
図3は、
図1のコネクタ1の横断面図であり、上下方向における後述の案内溝部45A-1の位置での断面を示している。
図4(A)~(D)は、
図1のコネクタ1の縦断面図であり、
図4(A)は、コネクタ幅方向における後述する外腕部43の位置での断面、
図4(B)はコネクタ幅方向における後述する端子20の位置での断面、
図4(C)は後述する嵌合検知部材50の移動方向に沿った面における嵌合検知部材50の位置での断面、
図4(D)は、嵌合検知部材50の移動方向に対して直角な面における嵌合検知部材50の位置での断面を示している。ここで、
図4(C)は、
図3にてIVC-IVC線で示された位置の断面であり、
図4(D)は、
図3にてIVD-IVD線で示された位置の断面である。
【0016】
コネクタ1は、回路基板(図示せず)の実装面上に実装され、該実装面に対して平行な前後方向(X軸方向)を挿抜方向として、平型導体C(例えば、FPC)が挿抜可能に接続されるようになっている。コネクタ1は、平型導体Cが接続されることにより、回路基板と平型導体Cとを電気的に導通させる。本実施形態では、X軸方向(前後方向)にて、X1方向を前方、X2方向を後方とする。また、回路基板の実装面に平行な面内(XY平面内)で前後方向(X軸方向)に対して直角をなすY軸方向をコネクタ幅方向とし、回路基板の実装面に対して直角なZ軸方向を上下方向(Z1方向が上方、Z2方向が下方)とする。
【0017】
平型導体Cは、前後方向(X軸方向)に延びコネクタ幅方向(Y軸方向)を幅方向とする可撓な帯状をなし、前後方向に延びる複数の回路部(図示せず)がコネクタ幅方向に配列され形成されている。該回路部は、前端側部分を除いて平型導体Cの絶縁層内に埋設されているが、前端側部分だけは平型導体Cの下面で露呈しており、パッドとして形成されている。
【0018】
平型導体Cの前端側部分には、上記幅方向の両端部に、コネクタ1に設けられた後述のハウジング10の後述の係止突部12Aを下方から受入可能な切欠部C1が形成されている。また、平型導体Cは、切欠部C1の前方に耳部C2を有しており、該耳部C2の後端は、上述の係止突部12Aに対して前方から係止可能な被係止部C2Aをなしている。
【0019】
コネクタ1は、
図1ないし
図3に示されるように、平型導体Cを後方から受け入れるハウジング10と、コネクタ幅方向(Y軸方向)を端子配列方向として配列されてハウジング10に保持される複数の端子20と、複数の端子20の端子配列範囲の外側に配置されハウジング10に保持される補強金具30と、前後方向に移動可能な状態でハウジング10に取り付けられるスライダ40と、前後方向に対して傾斜した方向で移動可能な状態でスライダ40に取り付けられる嵌合検知部材50とを有している。
【0020】
ハウジング10は、樹脂等の電気絶縁材で作られており、
図2に示されるように、コネクタ幅方向を長手方向として延びる略直方体外形をなしている。ハウジング10は、本体部11と、コネクタ幅方向における本体部11の両外側に設けられた側壁部17とを有している。本体部11の後部には、スライダ40の一部が嵌合される嵌合部12が設けられている。嵌合部12には、スライダ40の一部および平型導体Cの前端側部分を後方から受入可能な受入部13が、コネクタ幅方向に延びるとともに後方に開口する空間として形成されている。また、本体部11の前部には、端子20を保持する前壁部14がコネクタ幅方向に延びて設けられている(
図3および
図4(B)参照)。
【0021】
受入部13の両端部である受入端部13Aは、スライダ40の後述の内腕部42を収容するようになっている。本実施形態では、受入端部13Aの上側内壁面および下側内壁面、換言すると、嵌合部12の上壁の下面および下壁の上面には、前後方向へ延びた溝部が、受入端部13Aの一部として形成されている。受入端部13Aでは、この溝部によって、スライダ40の内腕部42を、コネクタ幅方向での移動を規制しながら前後方向に案内可能となっている。
【0022】
図3に示されるように、受入部13の下側内壁面、換言すると嵌合部12の下壁の上面には、コネクタ幅方向における端子配列範囲と受入端部13Aとの間に、上方へ突出する係止部としての係止突部12Aが設けられている(
図4(B)も参照)。係止突部12Aは、前後方向に対して直角な平坦面をなす前端面で平型導体Cの被係止部C2Aに対して後方から係止可能となっている(
図5(B)参照)。また、
図4(B)に示されるように、係止突部12Aは、その後部の上面が、前方へ向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面12A-1として形成されており、受入部13に挿入された平型導体Cの耳部C2を傾斜面12A-1で前方へ案内可能となっている。一方、係止突部12Aの前部の上面(以下、「上端面」という)は、上下方向に対して直角な平坦面となっている。
【0023】
図3に示されているように、本体部11には、端子20を収容するための端子収容部15がコネクタ幅方向に配列して形成されている(
図4(B)も参照)。端子収容部15についての詳細な説明に先立って、まず、端子20の構成を説明する。端子20は、
図2に示されるように、金属板部材を板厚方向に打ち抜いて作られており、
図4(B)に示されるように、一端側に設けられた取付部(後述の下脚部21および被保持部22)および接続部23と、他端側に設けられた基腕部24、下側接触腕部25、上側接触腕部26、押圧腕部27と、取付部と基腕部24との間に設けられた弾性部28とを有している。以下、下側接触腕部25および上側接触腕部26について、両者を区別する必要がない場合には、説明の便宜上、「接触腕部25,26」と総称する。
【0024】
図4(B)に示されるように、取付部は、ハウジング10の前壁部14の下面に沿って前後方向に延びる下脚部21と、下脚部21の前部から上方へ延びる被保持部22とを有している。被保持部22の側縁部(上下方向に延びる縁部)には前壁部14に圧入保持されるための突起が複数形成されている。接続部23は、下脚部21の前端から前方へ向けて延びハウジング10外に位置しており、その下縁で、回路基板の対応回路部に半田接続されるようになっている。
【0025】
基腕部24は、前壁部14の後面に沿って上下方向に延びている。接触腕部25,26は、基腕部24の下部から嵌合部12の下壁に沿って後方へ延びており、上下方向で弾性変位可能となっている。下側接触腕部25の後端には、上方へ突出して受入部13内に位置する後方接触部25Aが形成されている。上側接触腕部26は、下側接触腕部25の上方に設けられており、下側接触腕部25よりも短く形成されている。この上側接触腕部26の後端には、後方接触部25Aよりも前方で上方へ突出して受入部13内に位置する前方接触部26Aが形成されている。以下、後方接触部25Aおよび前方接触部26Aについて、両者を区別する必要がない場合には、説明の便宜上、「接触部25A,26A」と総称する。接触腕部25,26は、下方へ弾性変位しながら、接触部25A,26Aで平型導体Cの回路部に下方から接圧をもって接触可能となっている。
【0026】
押圧腕部27は、基腕部24の上部から嵌合部12の上壁に沿って後方へ向けて、下側接触腕部25の後端とほぼ同位置まで延びている。押圧腕部27は、スライダ40の後述の上側当接部44を介して、平型導体Cを上方から接触部25A,26Aへ向けて間接的に押圧可能となっている(
図8(B)および
図10(B)参照)。本実施形態では、押圧腕部27は、接触腕部25,26よりも上下方向で太く形成されている。
【0027】
弾性部28は、下方へ向けて開口する略逆U字状をなしており、下脚部21と基腕部24とを連結している。弾性部28は、前方側で上下方向に延びる前脚部28Aと、後方側で上下方向に延びる後脚部28Bと、下方へ向けて屈曲されて前脚部28Aおよび後脚部28Bの上端部同士を連結する屈曲部28Cとを有している。前脚部28Aは、その下端で下脚部21の後部に連結されている。また、後脚部28Bは、その下端部が後方へ向けて屈曲されており、基腕部24の下部に連結されている。弾性部28は、前後方向、コネクタ幅方向および上下方向のいずれの方向にも弾性変位可能となっている。本実施形態では、弾性部28に屈曲部28Cが設けられているので、屈曲部28Cの屈曲方向、すなわち上下方向で弾性部28を大きくすることなく、該弾性部28の全長を長く確保して、該弾性部28ひいては端子20における弾性変位量を大きく確保できる。
【0028】
ハウジング10の端子収容部15の説明に戻る。端子収容部15は、コネクタ幅方向(Y軸方向)に対して直角に広がるスリット状の溝部として形成されている。端子収容部15は、
図4(B)に示されるように、前壁部14に形成された前方収容部15A、中間収容部15Bおよび下方収容部15C、嵌合部12および前壁部14に形成された後方収容部15Dとを有している。
【0029】
前方収容部15Aは、前壁部14の前部で上下方向に延びており、端子20の被保持部22を収容して圧入保持する端子保持部として形成されている。中間収容部15Bは、前壁部14の後部で上下方向に延びており、弾性部28を収容している。中間収容部15Bに弾性部28が収容された状態において、弾性部28と中間収容部15Bの内壁面との間には、前後方向、コネクタ幅方向および上下方向に隙間が形成されており(
図4(B)参照)、弾性部28がこれら3つの方向で弾性変位可能となっている。また、中間収容部15Bの下部は、後方に開放されていて、後方収容部15Dと連通しており、弾性部28の後脚部28Bの下端部を収容している。
【0030】
下方収容部15Cは、前壁部14の下部で、前後方向に貫通して形成され端子20の下脚部21を収容している。また、下方収容部15Cは、上下方向に開放されており、前方収容部15Aおよび中間収容部15Bと連通している。
【0031】
後方収容部15Dは、嵌合部12の下壁、上壁および前壁部14に沿って延びており、後方へ開口する略横U字状をなしている。後方収容部15Dは、上記下壁に沿って前後方向に延びる下溝部で接触腕部25,26を収容し、上記上壁に沿う上溝部で前後方向に延びる押圧腕部27を収容し、前壁部14に沿う前溝部で上下方向に延びる基腕部24を収容している。
図4(B)に見られるように、上記下溝部は上方および下方に開放されている。一方、上記上溝部は下方には開放されているが、上端は閉塞されている。
【0032】
端子20は、このような形状の端子収容部15に、下方から取り付けられて収容される。具体的には、端子20は、被保持部22が前方収容部15Aへ下方から圧入されることで、端子収容部15に収容され、ハウジング10に保持される。端子20がハウジング10に取り付けられると、
図4(B)に示されるように、端子20の接触部25A,26Aが後方収容部15Dの下溝部から上方に突出して受入部13内に位置し、押圧腕部27の下端部が後方収容部15Dの上溝部から下方に突出して受入部13内に位置する。
【0033】
図2に示されるように、コネクタ幅方向でのハウジング10の両端部には、補強金具30を収容して保持するための金具収容部16が形成されている。金具収容部16は、コネクタ幅方向での嵌合部12と側壁部17との間で、ハウジング10の後端から前方へ向けて延び、コネクタ幅方向に対して直角に広がるスリット状の縦溝部16Aと、嵌合部12の後部においてコネクタ幅方向での端部の上面から没入して縦溝部16Aの上端と連通する上横凹部16Bと、側壁部17の後部の下面から没入して縦溝部16Aの下端と連通する下横凹部16Cとを有している。
【0034】
側壁部17には、
図2および
図4(A)に示されるように、スライダ40の後述の外腕部43を後方から受け入れるための外孔部17Aが、該側壁部17を前後方向に貫通して形成されている。また、側壁部17の上壁には、前端側の位置で該上壁を上下方向で貫通して外孔部17Aに連通する四角形状の上孔部17Bが形成されている。
図4(A)に示されるように、上孔部17Bの後縁部は、その一部が下方へ突出して外孔部17A内に位置している。この上孔部17Bの後縁部は、スライダ40の後述の外腕部43に対して後方から係止可能なスライダ用係止部17Cをなしている。側壁部17においてコネクタ幅方向での外側に位置する外壁には、前後方向での中間位置で該外壁を貫通して外孔部17Aに連通する四角形状の側孔部17Dが形成されている。
【0035】
補強金具30は、
図2に示されるように、金属板部材を板厚方向で屈曲して形成されており、コネクタ幅方向を板厚方向として前後方向に延びる被保持板部31と、被保持板部31の後部の上縁で直角に屈曲されてコネクタ幅方向で内方へ延びる上板部32と、被保持板部31の後部の下縁で直角に屈曲されてコネクタ幅方向で外方へ延びる固定部33とを有している。被保持板部31は、その下縁に複数の突起を有しており、これらの突起がハウジング10の縦溝部16Aの内壁面に喰い込むことにより、縦溝部16Aで収容される。上板部32は、ハウジング10の上横凹部16Bに収容され、ハウジング10の嵌合部12の上面に対面している。固定部33は、ハウジング10の下横凹部16Cに収容され、回路基板の対応部に半田接続により固定されるようになっている。
【0036】
本実施形態では、上述したように、上板部32が嵌合部12の上面に対面している。したがって、仮にコネクタ1に接続された平型導体Cに上方へ向けた外力が作用して、この外力が嵌合部12の上壁に伝達されたとき、上板部32が嵌合部12に上方から接面することで、上記外力に対抗する下方へ向けた反力が嵌合部12に作用する。つまり、このように上板部32を設けることにより、嵌合部12の上方への移動を規制して、コネクタ1が回路基板から外れてしまうことを防止できる。
【0037】
また、本実施形態では、補強金具30は、端子配列範囲の両外側に1つずつ設けられている。つまり、一方の補強金具30と他方の補強金具30が別個の部材として設けられている。したがって、仮に、コネクタに設けられる端子の本数が設計変更により増減することで、ハウジングのコネクタ幅方向での寸法が変更されても、補強金具30については設計変更前と同じ形状のものをそのまま使用できる。この結果、設計変更時に生ずる製造コストの増大を抑制できる。
【0038】
スライダ40は、平型導体Cの抜出を許容する後退位置(例えば、
図1および
図3参照)と平型導体Cの抜出が阻止された状態を維持する前進位置(例えば、
図7(A),(B)参照)との間で前後方向に移動可能な状態でハウジング10に取り付けられ、前進位置にてハウジング10に嵌合するようになっている。スライダ40は、樹脂等の電気絶縁材で作られており、
図2に示されるように、コネクタ幅方向に延びた基部41と、コネクタ幅方向での基部41の両端部から前方へ向けて延びる内腕部42および外腕部43と、2つの内腕部42の間で基部41から前方へ向けて延びる第一当接部としての上側当接部44と、基部41のそれぞれの端部に連結されて設けられた側部45とを有している。
【0039】
基部41は、前後方向に見て、ハウジング10とほぼ同じ範囲に広がって設けられており、受入部13に対応する範囲には、前後方向で基部41を貫通する挿入孔部41A形成されている。挿入孔部41Aは、基部41の中央域でコネクタ幅方向に延びるスリット状をなし、平型導体Cの挿通を許容している。
【0040】
内腕部42は、コネクタ幅方向を板厚とする板状をなしており、前後方向に対して直角な断面形状が、上下方向を長手方向とする長方形をなしている(
図11(A),(B)参照)。内腕部42の前部かつ下部には、コネクタ幅方向での内側面から突出する第二当接部としての下側当接部42Aが設けられている。下側当接部42Aは、コネクタ幅方向でハウジング10の係止突部12Aよりも外側に設けられおり、
図4(B)に示されるように、コネクタ幅方向に見た形状が台形をなしている。下側当接部42Aは、その後部の上面が、後方へ向かうにつれて上下方向での下側当接部42Aの寸法を減ずるように、すなわち後方へ向かうにつれて下方へ傾斜する傾斜面42A-1をなしており、前部の上面(以下、「上端面」という)が上下方向に対して直角な平坦面となっている。
図4(B)に示されるように、下側当接部42Aは、ハウジング10の係止突部12Aと上下方向でほぼ同じ位置に設けられているが、該下側当接部42Aの上端面は、係止突部12Aの上端面よりも上方に位置している。なお、下側当接部42Aの上端面は、上下方向で係止突部12Aの上端面と同じ位置にあってもよい。
【0041】
外腕部43は、
図2に示されるように、コネクタ幅方向での内腕部42の外側で該内腕部42に隣接して設けられている。外腕部43は、上下方向で弾性変形可能な弾性腕部をなしており、内腕部42とほぼ同じ長さで形成されている。外腕部43の前部には、上方へ突出する前方爪部43Aおよび後方爪部43Bが設けられている。前方爪部43Aは、外腕部43の前端部で上方へ向けて略三角形状に突出している。前方爪部43Aの上面は、該前方爪部43Aの前端から後方へ向かうにつれて上方へ傾斜する傾斜面をなしている。また、前方爪部43Aの後面は、前後方向に対して直角な平坦面をなしており、
図4(A)に示されるように、スライダ40が後退位置にあるとき、ハウジング10のスライダ用係止部17Cに対して前方から係止しており、これによって、スライダ40の後方への移動が阻止されている。
【0042】
後方爪部43Bは、前方爪部43Aよりも後方に位置し、前方爪部43Aよりも低い略三角形状をなして上方へ突出している。後方爪部43Bの上面は、該前方爪部43Aの上面とほぼ同じ角度で傾斜する傾斜面をなしている。後方爪部43Bの後面は、上下方向に対して若干前方へ傾斜した傾斜面、具体的には、上方へ向かうにつれて前方へ傾斜する傾斜面となっている。後方爪部43Bの後面は、スライダ40が前進位置にあるとき、ハウジング10のスライダ用係止部17Cに対して前方から係止可能に位置しており、これによって、スライダ40の後方への移動が阻止されている(
図8(A)および
図10(A)参照)。このとき、後方爪部43Bは、上述したように後面が傾斜しているので、前方爪部43Aと比べて、スライダ用係止部17Cに対する係止力が小さくなっている。
【0043】
上側当接部44は、基部41の挿入孔部41Aよりも上方に位置し、コネクタ幅方向に延びて2つの内側腕部の内側面同士を連結している。上側当接部44は、コネクタ幅方向での端子配列範囲においては、スライダ40が前進位置にあるときに、端子20の接触部25A,26Aと押圧腕部27との間に後方から進入する(
図8(B)参照)。このとき、上側当接部44は、押圧腕部27からの押圧力を上方から受けるとともに、平型導体Cの上面を下方へ押圧し、平型導体Cと接触部25A,26Aと押圧腕部27との接圧を高めるようになっている。また、上側当接部44は、コネクタ幅方向の両端部においては、スライダ40が前進位置にあるときに、ハウジング10の係止突部12Aの直上で、平型導体Cの上面に対面して該上面に当接し、係止突部12Aの突出方向である上方への平型導体Cの移動を規制するようになっている。
【0044】
側部45は、基部41の端部に連結された案内部45Aと、案内部45Aの上部から前方へ延びる延出部45Bとを有している。案内部45Aには、嵌合検知部材50を後述の待機位置と検知位置との間で案内するための案内溝部45A-1が形成されている。案内溝部45A-1は、
図3に示されるように、平型導体の面(XY平面)に対して平行、かつ、前後方向(X軸方向)に対して傾斜する方向、具体的には、前方へ向かうにつれてコネクタ幅方向内方に傾斜する方向(
図3でのP軸方向)に延び、案内部45Aを貫通して形成されている。また、案内溝部45A-1は、
図4(D)に示されるように、その長手方向に対する断面形状が横T字状をなしている。
【0045】
延出部45Bには、
図4(C)に示されるように、その下面から突出する位置決め突部45B-1が設けられている。位置決め突部45B-1は、嵌合検知部材50の移動方向(P軸方向)で嵌合検知部材50の後述の隆起部51Bに係止可能となっており、嵌合検知部材50を待機位置(
図4(C)参照)または検知位置(
図10(C)参照)に維持するようになっている。
図4(C)に示されるように、位置決め突部45B-1の下端面は、下方に向かって先細った形状を形成する2つの傾斜面を有している。
【0046】
嵌合検知部材50は、スライダ40が前進位置にあることを検知する検知位置と、検知位置へ向けた操作を待機する待機位置との間で移動可能な状態でスライダ40に取り付けられている。嵌合検知部材50は、樹脂等の電気絶縁材製であり、待機位置(
図3参照)と検知位置(
図9参照)との間で移動可能な状態でスライダ40のそれぞれの側部45に1つずつ取り付けられている。2つの嵌合検知部材50は、コネクタ幅方向で互いに対称な姿勢をなるように設けられている。また、本実施形態では、それぞれの嵌合検知部材50は、上下方向で対称な形状となっている。したがって、一方の嵌合検知部材50と他方の嵌合検知部材50が上下方向で互いに反転した状態で設けられている。このように、嵌合検知部材50を上下方向で対称な形状で作ることにより、1種類の嵌合検知部材50をコネクタ幅方向の両側にて互いに上下反転した姿勢で設けることができ、したがって、形状の異なる2種類の嵌合検知部材50を作る必要がなくなるので、製造コストを抑制できる。
【0047】
嵌合検知部材50は、作業者による移動操作を受ける操作部51と、操作部51の側面から突出する被案内突部52および規制部53とを有している。操作部51は、上下方向に見て略台形状をなす角柱状をなしており、待機位置と検知位置とのいずれかの位置に嵌合検知部材50を位置させるための位置決め溝部51Aが上面および下面のそれぞれに形成されている。位置決め溝部51Aは、操作部51の上面および下面のそれぞれから没入し、嵌合検知部材50の移動方向、すなわち平型導体Cの面(XY平面)に対して平行で、かつ、前方へ向かうにつれてコネクタ幅方向内方へ傾斜する方向(
図3でのP軸方向)に延びて形成されている。位置決め溝部51Aは、
図2および
図4(C)に示されるように、移動方向での前端側(
図4(C)でのP1側)が閉塞されており、移動方向での後端側(
図4(C)でのP2側)が開放されている。
【0048】
図3および
図4(C)に示されるように、位置決め溝部51A内には、溝底面から山状に隆起する隆起する隆起部51Bが形成されている。隆起部51Bは、
図4(C)に示されるように、延出部45Bの位置決め突部45B-1に対して上記移動方向(P軸方向)で係止するようになっており、隆起部51Bが位置決め突部45B-1に対して上記移動方向でいずれの側(P1側またはP2側)に位置しているかによって嵌合検知部材50の位置が決められている。具体的には、隆起部51Bが位置決め突部45B-1に対して移動方向後方側(P2側)に位置しているときは、嵌合検知部材50が待機位置に維持され(
図4(C)参照)、隆起部51Bが位置決め突部45B-1に対して移動方向前方側(P1側)に位置しているときは、嵌合検知部材50が検知位置に維持される(
図10(C)参照)。
【0049】
本実施形態では、嵌合検知部材50が待機位置と検知位置との間を移動する過程において、位置決め突部45B-1と隆起部51Bが当接すると、延出部45Bがその板厚方向(上下方向)で弾性変位することにより、位置決め突部45B-1が上方へ若干変位し、その結果、位置決め突部45B-1が隆起部51Bを乗り越えることが可能なり、上記移動方向での嵌合検知部材50のさらなる移動が許容されるようになっている。
【0050】
操作部51は、
図2および
図3に示されるように、その後部に、上記移動方向(P軸方向)へ向けて延びる側面を有している。被案内突部52は、該側面から突出するとともに上記移動方向に延びて設けられている。被案内突部52は、
図4(D)に示されるように、上記移動方向に対して直角な面での断面が横T字状をなしており、スライダ40の案内溝部45A-1に収容されている。嵌合検知部材50は、被案内突部52が案内溝部45A-1によって案内されることで、上記移動方向で円滑に移動可能となっている。
【0051】
規制部53は、操作部51の前部におけるコネクタ幅方向での内側の側面(コネクタ幅方向に対して直角な平坦面)から突出して設けられている。規制部53は、略四角柱状をなして上記側面からコネクタ幅方向内方へ向けて突出している。規制部53は、嵌合検知部材50が検知位置にあるとき、外腕部43の直下で該外腕部43に当接可能に位置することで前記外腕部43の下方への弾性変位を規制する(
図10(A)および
図11(B)参照)。また、規制部53は、嵌合検知部材50が検知位置にないときには、外腕部43の直下には位置しておらず、外腕部43の下方への弾性変位を許容する(
図11(A)参照)。
【0052】
本実施形態では、嵌合検知部材50を平型導体Cの面(XY平面)に対して平行な方向で移動するように設けているので、嵌合検知部材50の移動時に嵌合検知部材50がハウジング10から上下方向に突出する状態が生じ得ない。したがって、コネクタ1の上下方向での大型化を回避しやすくなる。また、嵌合検知部材50を前後方向に対して傾斜する方向で移動するように設けているので、嵌合検知部材50がコネクタ幅方向のみで移動するように設けられる場合と比べて、コネクタ幅方向での移動量を少なくすることができる。したがって、嵌合検知部材50の移動時に嵌合検知部材50がコネクタ幅方向でハウジング10の外側に大きく突出した状態が生じにくくなるので、コネクタ1のコネクタ幅方向での大型化を回避しやすくなる。
【0053】
コネクタ1の組立要領について説明する。まず、端子20をハウジング10に下方から取り付けるとともに、補強金具30をハウジング10に後方から取り付ける。具体的には、端子20の被保持部22をハウジング10の前方収容部15Aへ下方から圧入して、端子20を端子収容部15に収容する。また、補強金具30の被保持板部31をハウジング10の縦溝部16Aへ後方から圧入して、補強金具30を金具収容部16内に収容する。なお、端子20および補強金具30の取付けの順序は、いずれが先でもあってもよいし、同時であってもよい。
【0054】
また、スライダ40の側部45に嵌合検知部材50を該嵌合検知部材50の移動方向前方側(
図3でのP1側)から取り付ける。具体的には、嵌合検知部材50の被案内突部52をスライダ40の案内溝部45A-1へ上記移動方向前方側から挿通させる。これと同時に、スライダ40の位置決め突部45B-1を、嵌合検知部材50の上面に形成された位置決め溝部51A内へ嵌合検知部材50の移動方向後方側(
図3でのP2側)から進入させる。このとき、位置決め突部45B-1は隆起部51Bを乗り越え、嵌合検知部材50は待機位置に達するまで押し込まれる。
【0055】
なお、本実施形態では、位置決め溝部51Aの上記移動方向での前端側は閉塞しており、待機位置にて位置決め突部45B-1に上記移動方向前方から当接可能となっている。したがって、上記移動方向前方側から押し込まれた嵌合検知部材50が、側部45から上記移動方向で後方へ抜けてしまうことはない。嵌合検知部材50の取付けは、ハウジング10への端子20および補強金具30の取付けよりも前に行われてもよく、後に行われてもよく、また、同時に行われてもよい。
【0056】
次に、スライダ40をハウジング10へ後方から取り付ける。具体的には、スライダ40の内腕部42をハウジング10の受入端部13Aへ後方から挿入するとともに、スライダ40の外腕部43をハウジング10の外孔部17Aへ後方から挿入する。このスライダ40の取付作業は、スライダ40が後退位置に配置されるまで、すなわち、外腕部43の前方爪部43Aがハウジング10のスライダ用係止部17Cの前方に位置するまで行われる(
図4(A)参照)。
【0057】
外腕部43の挿入過程においては、外腕部43の前方爪部43Aの傾斜面がハウジング10のスライダ用係止部17Cに後方から当接することで、外腕部43が下方へ弾性変位し、前方へ向けたさらなる挿入が許容される。そして、前方爪部43Aがスライダ用係止部17Cの位置を通過し、スライダ用係止部17Cの前方に位置する結果、スライダ40が後退位置に配置される。この後退位置にて、前方爪部43Aがスライダ用係止部17Cに対して前方から係止可能な状態となっており、これによって、ハウジング10からのスライダ40の抜けが防止される。また、スライダ40の側部45は、
図1に示されるように、コネクタ幅方向でのハウジング10の両外側で該ハウジング10の側面に沿って位置する。このようにしてスライダ40がハウジング10に取り付けられることにより、コネクタ1が完成する。
【0058】
次に、コネクタ1に対する平型導体Cの挿抜の動作を説明する。まず、
図1に示されるように、平型導体Cの前端側部分を前後方向に延びた状態でコネクタ1の後方に位置させる。次に、平型導体Cの前端側部分をスライダ40の挿入孔部41Aに前方へ向けて挿通させ、さらにハウジング10の受入部13に前方へ向けて挿入する。受入部13への挿入過程において、平型導体Cは、
図6(B)に示されるように、端子20の接触腕部25,26と押圧腕部27との間に進入する。この平型導体Cの挿入は、平型導体Cの前端が前壁部14の後面に当接した時点で完了する。
【0059】
また、コネクタ幅方向での平型導体Cの両端部では、耳部C2がハウジング10の係止突部12Aの傾斜面12A-1に案内されて係止突部12Aの上端面に乗り上げた後、さらに前進して係止突部12Aの位置を通過し、
図6(B)に示されるように、スライダ40の下側当接部42Aの上端面に乗り上げる。平型導体Cの挿入が完了した時点において、平型導体Cは、
図5(B)に示されるように、上方から見て、耳部C2が係止突部12Aよりも前方に位置するとともに、切欠部C1が係止突部12Aを囲むように位置する。
【0060】
また、平型導体Cの挿入が完了した時点において、
図6(B)に示されるように、スライダ40の上側当接部44が、係止突部12Aよりも後方位置で、平型導体Cの上面を下方へ向けて押圧している。したがって、平型導体Cは、
図6(B)に示されるように、その厚さ方向で略クランク状に屈曲された状態となっている。
【0061】
次に、スライダ40を前方へ向けて押し込んで、
図7(A),(B)および
図8(A),(B)に示される前進位置へ移動させ、ハウジング10にスライダ40を後方から嵌合させる。この時点において、嵌合検知部材50は、
図8(C)に示されるように、まだ待機位置にある。スライダ40が前進位置へ向けて移動する過程において、外腕部43の後方爪部43Bの傾斜面(上面)がハウジング10のスライダ用係止部17Cに後方から当接することで、外腕部43が下方へ弾性変位し、スライダ40のさらなる前進が許容される。後方爪部43Bがスライダ用係止部17Cの位置を通過し、スライダ用係止部17Cの前方に位置する結果、
図8(A)に示されるように、スライダ40が前進位置に配置される。この前進位置にて、後方爪部43Bがスライダ用係止部17Cに対して前方から係止可能な状態となっており、これによって、スライダ40の後方への移動が規制される。
【0062】
また、スライダ40を前方へ移動したことにより、スライダ40の下側当接部42Aが平型導体Cよりも前方へ移動する。したがって、スライダ40の移動前において下側当接部42A(
図4(B)参照)の上端面に乗っていた平型導体Cは降下して、受入部13の下側内壁面の上に配置される。その結果、平型導体Cの切欠部C1内にハウジング10の係止突部12Aが下方から進入するとともに、平型導体Cの耳部C2が上下方向で係止突部12Aの前方にて、上下方向で係止突部12Aと重複する範囲をもって位置するので、平型導体Cの被係止部C2Aが係止突部12Aに対して前方から係止可能な状態となる。
【0063】
さらに、
図7(B)に示されるように、スライダ40の上側当接部44におけるコネクタ幅方向での両端部が、前後方向で係止突部12Aと重複する範囲をもつように係止突部12Aの上方に位置する。上側当接部44は、この位置において、平型導体Cの上面に当接して該平型導体Cの上方への移動を規制するので、平型導体Cの被係止部C2Aは係止突部12Aに対して係止可能な位置に維持される。
【0064】
また、
図8(B)に示されるように、コネクタ幅方向での端子配列範囲では、スライダ40の上側当接部44が、端子20の押圧腕部27と平型導体Cとの間に進入し、押圧腕部27から下方へ向けた押圧力を受ける。この押圧力は、上側当接部44を介して平型導体Cへ伝達され、さらに、該平型導体Cによって接触部25A,26Aが押圧され、接触腕部25,26が下方へ弾性変位する。その結果、接触部25A,26Aが平型導体Cの回路部に下方から接圧をもって接触する。そして、押圧腕部27と接触腕部25,26とによって上側当接部44および平型導体Cが挟持された状態となる。また、この端子配列範囲においても、上側当接部44が平型導体Cの上面に当接することにより、平型導体Cの上方への移動が規制されている。なお、
図8(B)では、接触腕部25,26が弾性変位していない状態で図示されているが、実際には、下方へ弾性変位している(
図10(B)についても同様である)。
【0065】
このように、本実施形態では、端子20に押圧腕部27を設けることにより、平型導体Cが押圧腕部27と接触腕部25,26とによって間接的に状態となり、接触部25A,26Aと平型導体Cの回路部との接圧が高められる。したがって、コネクタ1の使用時、コネクタ1が外部からの振動を受けて、弾性部28および接触腕部25,26が振動に追従するように弾性変位しても、平型導体Cが挟持された状態は維持される。その結果、接触部25A,26Aと平型導体Cの回路部とが高い接圧をもって接触した状態を良好に維持することができる。
【0066】
次に、待機位置にある嵌合検知部材50を斜め前方(P1方向)、すなわち、前方かつコネクタ幅方向内方へ押し込んで、
図9(A),(B)、
図10(C)および
図11(B)に示される検知位置へ移動させる。このとき、スライダ40の位置決め突部45B-1が嵌合検知部材50の隆起部51Bを乗り越えることにより、嵌合検知部材50が検知位置に到達することが許容される。嵌合検知部材50が検知位置にあるとき、
図11(B)に示されるように、規制部53は、ハウジング10の側孔部17Dを経て、外腕部43の直下位置まで及んでおり、該外腕部43に対して下方から当接可能に位置し、該外腕部43の下方への弾性変位を規制する(
図10(A)も参照)。
【0067】
このように外腕部43の下方への弾性変位が規制部53により規制されると、
図10(A)に示されるように、外腕部43の後方爪部43Bがハウジング10のスライダ用係止部17Cに対して前方から係止可能な状態が良好に維持される。したがって、スライダ40の後退位置への不用意な移動が確実に阻止されるので、スライダ40の上側当接部44により平型導体Cの上方への移動が規制された状態、ひいては、平型導体Cの被係止部C2Aがハウジング10の係止突部12Aに前方から係止可能な状態が良好に維持される。したがって、仮に、コネクタ1に接続されている平型導体Cに後方へ向けた不用意な外力が作用しても、平型導体Cがコネクタ1から抜けにくくなる。このようにして嵌合検知部材50が検知位置へ移動することにより、コネクタ1に対する平型導体Cの接続動作が完了する。
【0068】
仮に、スライダ40が前進位置に達しておらず、ハウジング10に完全に嵌合していなかった場合、すなわち、いわゆる半嵌合状態になっていた場合には、その後、嵌合検知部材50を検知位置へ向けて移動させても、規制部53が側孔部17Dよりも後方でハウジング10の側面に当接し、これによって、嵌合検知部材50の検知位置への移動が阻止される。したがって、操作者は、嵌合検知部材50を検知位置へ移動させられないことにより、スライダ40が前進位置まで完全に移動していないことを容易に認識できる。このとき、操作者は、再度、スライダ40を前方へ向けて押し込んで前進位置に完全に到達させてから、嵌合検知部材50を検知位置に移動させる操作を行えばよい。
【0069】
また、本実施形態では、端子20に弾性部28が設けられており、コネクタ1が外部からの振動を受けたとき、端子20において、接触腕部25,26だけでなく、弾性部28も弾性変位する。つまり、本実施形態では、接触腕部だけが弾性変位可能となっている場合と比べて、弾性変位可能な部分が長く設けられている。したがって、コネクタ1が外部からの高い周波数の振動を受けても、接触腕部25,26が弾性部28とともに変位することでその振動に追従しやすくなり、その結果、接触腕部25,26との平型導体Cの回路部との細かい摺接、ひいてはその摺接に起因する金属粉の発生を回避できる。したがって、接触部と回路部との電気的導通状態を維持しやすくなる。
【0070】
ここで、接触腕部25,26が弾性部28とともに変位する場合、接触腕部25,26の変位方向と弾性部28の変位方向とが一致するとは限らない。例えば、弾性部28がその略逆U字状部分を開閉するように前後方向で変位しているときに、接触腕部25,26が上下方向に変位してもよい。また、このとき、接触腕部25,26のみならず、弾性部28よりも後方に設けられている部分(基腕部24、接触腕部25,26および押圧腕部27)全体が、基腕部24と後脚部28Bとの連結部分を支点として回転するように、上下方向成分をもって変位してもよい。
【0071】
なお、本実施形態では、弾性部28は、前後方向、コネクタ幅方向および上下方向の3方向において弾性変位可能となっているが、弾性部が3方向全てにおいて弾性変位可能であることは必須ではない。例えば、主に前後方向での振動が生じやすい環境でコネクタを使用する場合には、主に前後方向で弾性変位可能な弾性部を端子に設けることとしてもよい。
【0072】
コネクタ1に挿入接続された平型導体Cを抜出する場合には、スライダ40の後方爪部43Bとハウジング10のスライダ用係止部17Cとの係止力よりも大きい抜出力で、スライダ40を後方へ向けて後退位置まで移動させる操作を行う。その結果、スライダ40の上側当接部44および下側当接部42Aが後方へ移動し、上側当接部44は平型導体Cの上方への移動を規制しない位置にもたらされ、また、下側当接部42Aは平型導体Cの下面に当接する位置にもたらされる。このとき、下側当接部42Aは前後方向で係止突部12Aと重複する範囲をもって位置する。
【0073】
本実施形態では、下側当接部42Aの後部には傾斜面42A-1が形成されているので、スライダ40が後退位置へ向けて後方へ移動したとき、下側当接部42Aが平型導体Cの下方へ前方から進入しやすくなっている。換言すると、平型導体Cをこの傾斜面42A-1で円滑に案内して、下側当接部42Aの上端面上に配置しやすくなっている。その結果、平型導体Cの被係止部C2Aをハウジング10の係止突部12Aよりも上方、すなわち、係止突部12Aに対して係止しない位置まで容易にもち上げることができる。そして、平型導体Cを後方へ引くだけで簡単に該平型導体Cをコネクタ1から抜出することができる。
【0074】
また、本実施形態では、後退位置にて、上側当接部44は係止突部よりも後方に位置するので、平型導体Cの抜出時に、上側当接部44が平型導体Cの上面に干渉しにくくなり、平型導体Cを簡単に抜出しやすくなる。
【0075】
本実施形態では、下型当接部42Aは、コネクタ幅方向で係止突部12Aよりも外側に位置しており、かつ、後退位置にあるとき、前後方向で係止突部12Aと重複する範囲をもって位置するように設けられている。したがって、スライダ40が後退位置に移動したとき、下側当接部42Aを係止部12Aに干渉させることなく、前後方向で係止部12Aと近接させることができる。したがって、下側当接部42Aによって、平型導体Cを係止突部12Aと係止しない位置まで、より確実にもち上げることができる。
【0076】
本実施形態では、コネクタ幅方向でハウジング10の嵌合部12の両端側に互いに別体をなす補強金具30が1つずつ設けられることとしたが、変形例として、
図12(A)に示されるように、コネクタ幅方向で嵌合部12の全域にわたって延びる補強金具を1つだけ設けるようにしてもよい。
図12(A),(B)は、変形例に係るハウジング110および補強金具130の斜視図であり、
図12(A)は補強金具130をハウジング110に取り付けた状態、
図12(B)補強金具130をハウジング110から分離した状態を示している。この変形例では、既述の実施形態のコネクタ1と異なる構成を中心に説明し、同じ構成については、既述の実施形態における符号に「100」を加えた符号を付して説明を省略する。
【0077】
この変形例では、補強金具130は、
図12(B)に示されるように、既述の実施形態における2つの補強金具30の上板部32を延ばして連結して一体化したような構成をなしている。ハウジング110においては、嵌合部112の上面がハウジング110の他部の上面よりも、補強金具130の上板部132の厚さ寸法分だけ低く位置している。補強金具130は、両端側に設けられた被保持腕部131をハウジング110の縦溝部116Aへ後方から圧入することで取り付けられる。
【0078】
補強金具130は、ハウジング110に取り付けられた状態において、
図12(A)に示されるように、上板部132で嵌合部112の上面を覆う。上板部132は、既述の実施形態の補強金具30の上板部32と同様に、嵌合部112の上方への移動を規制するようになっている。本実施形態では、上板部132がコネクタ幅方向で嵌合部112の全域にわたって延びており、嵌合部1112の上面と接面する面積が大きく確保されているので、嵌合部112の上方への移動を、より確実に規制できる。また、この変形例では、コネクタ幅方向での上板部132の両方の端部が、被保持腕部131の後部を介して回路基板に半田接続される固定部133に連結されている。つまり、上板部132は、両持ち梁状に固定された状態となっているので、嵌合部112の上方への移動を、さらに確実に規制できる。したがって、平型導体Cに上方へ向けた不用意な外力が作用して、その外力が嵌合部112の上壁に伝達されても、コネクタ1が回路基板から外れてしまうことを良好に防止できる。
【0079】
本実施形態では、端子20の押圧腕部27がスライダ40の上側当接部44を介して平型導体Cを間接的に上方から押圧することとしたが、これに替えて、押圧腕部が平型導体の上面を直接的に押圧するようにしてもよい。
【0080】
本実施形態では、嵌合検知部材50が、スライダ40のコネクタ幅方向の両端側に設けられることとしたが、これに替えて、いずれか一端側のみに設けられることとしてもよい。
【0081】
本実施形態では、嵌合検知部材50が、平型導体Cの面(XY平面)に対して平行、かつ、前後方向(X軸方向)に対して傾斜する方向に移動することとしたが、これに替えて、上下方向でコネクタ1の周囲に十分なスペースがある場合には、嵌合検知部材を上下方向で移動するように設けてもよい。このとき、弾性腕部は、コネクタ幅方向に弾性変位可能となっている。そして、嵌合検知部材が上方または下方へ移動して検知位置に達すると、規制部が、ハウジングに形成された開口部を経て弾性腕部と当接可能に位置するようになる。
【0082】
また、コネクタ幅方向でコネクタ1の周囲に十分なスペースがある場合には、嵌合検知部材をコネクタ幅方向のみで移動するように設けてもよい。このとき、弾性腕部は、上下方向に弾性変位可能となっている。そして、嵌合検知部材がコネクタ幅方向内方へ移動して検知位置に達すると、規制部が、ハウジングに形成された開口部を経て弾性腕部と当接可能に位置するようになる。
【0083】
本実施形態では、ハウジング10において、係止部は受入部13の下側内壁面から上方へ突出する係止突部12Aとして形成されており、また、スライダ40において、第一当接部は、前進位置にて平型導体の上面に当接可能な上側当接部44として形成され、第二当接部は、後退位置にて平型導体の下面に当接可能な下側当接部42Aとして形成されていた。しかし、係止部、第一当接部および第二当接部が設けられる位置はこれに限られず、変形例として、例えば、本実施形態における位置を上下反転させたような位置であってもよい。具体的には、ハウジングにおいて、係止部が、受入部の上側内壁面から下方へ突出する係止突部として形成され、スライダにおいて、第一当接部が、前進位置にて平型導体の下面に当接可能な下側当接部として形成され、第二当接部が、後退位置にて平型導体の上面に当接可能な上側当接部として形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 コネクタ
10,110 ハウジング
12A 係止突部(係止部)
13 受入部
17D 側孔部
20 端子
25 下側接触腕部
26 上側接触腕部
27 押圧腕部(押圧部)
28 弾性部
28C 屈曲部
40 スライダ
42A 下側当接部
42A-1 傾斜面
43 外腕部
44 上側当接部
45 側部
45A 案内部
50 嵌合検知部材
53 規制部
C 平型導体
C2A 被係止部