(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066102
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】マスク用フィルタ、当該フィルタを有するマスクおよび当該フィルタの再生方法
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240508BHJP
B01D 39/18 20060101ALI20240508BHJP
B01D 41/04 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
B01D39/18
B01D41/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175405
(22)【出願日】2022-11-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年12月2日、第21回東北大学多元物質科学研究所研究発表会ポスター発表のウェブサイト(http://www2.tagen.tohoku.ac.jp/general/event/meeting/2021/p_list.htm)にて電気通信回線(インターネット)を通じて発表 令和3年12月9日、第21回東北大学多元物質科学研究所研究発表会のポスターセッション(ZOOM meeting)にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青梅 亜美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】内村 允宣
(72)【発明者】
【氏名】川野 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】松永 智昭
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 信一
(72)【発明者】
【氏名】西原 洋知
(72)【発明者】
【氏名】潘 鄭澤
【テーマコード(参考)】
4D019
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA01
4D019BA12
4D019BA13
4D019BA18
4D019BB01
4D019BC13
4D019BD01
4D019CA01
4D019CB03
4D019CB06
4D019CB09
4D019DA03
(57)【要約】
【課題】捕捉性能の向上と圧力損失の低減とが両立され、繰り返しの使用が可能なマスク用フィルタを提供する。
【解決手段】細孔壁を介して連続的に配列された筒状セルから構成される格子状構造体を有し、前記細孔壁はセルロースを含む、マスク用フィルタ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔壁を介して連続的に配列された筒状セルから構成される格子状構造体を有し、
前記細孔壁はセルロースを含む、マスク用フィルタ。
【請求項2】
前記細孔壁の表面の少なくとも一部はケイ素含有化合物により改質されている、請求項1に記載のマスク用フィルタ。
【請求項3】
前記細孔壁が区画する細孔の細孔径は30μm以下である、請求項1に記載のマスク用フィルタ。
【請求項4】
前記細孔壁はポリウレタンをさらに含む、請求項1に記載のマスク用フィルタ。
【請求項5】
前記細孔壁の質量100質量%に対する前記ポリウレタンの質量の割合は40質量%以上90質量%以下である、請求項4に記載のマスク用フィルタ。
【請求項6】
前記格子状構造体の延在方向に垂直な断面の、水に対する接触角(25℃)が110°以上である、請求項2に記載のマスク用フィルタ。
【請求項7】
開口部を有し、装着時に使用者の顔の表面に当接して鼻および口を覆うように形成されたマスク本体部と、
前記開口部に着脱可能に設けられたカートリッジ部と、を有し、
前記カートリッジ部に、請求項1~6のいずれか1項に記載のマスク用フィルタが、前記開口部の開口面と前記格子状構造体の延在方向とが垂直になるように配置された、マスク。
【請求項8】
前記細孔壁が区画する細孔に流体を流通させることを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のマスク用フィルタの再生方法。
【請求項9】
請求項2に記載のマスク用フィルタの製造方法であって、
セルロースおよび水を含む分散液を調製する工程と、
前記分散液を一方向凍結乾燥させることで前記格子状構造体を作製する工程と、
前記格子状構造体の前記筒状セルに前記ケイ素含有化合物を含むガスを流通させて、前記細孔壁の表面の少なくとも一部を改質する工程と、
を有する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク用フィルタ、当該フィルタを有するマスクおよび当該フィルタの再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、感染対策の一環としてマスクの需要が高まるとともに、これらに用いられるフィルトレーション技術に注目が集まっている。従来のフィルトレーション技術においては、フィルタとして不織布が主に採用されてきた。しかしながら、不織布によるフィルトレーションでは捕捉性能の向上と圧力損失の低減とがトレード・オフの関係にあり、マスクにおいては捕捉性能を向上させるほど息苦しさを感じやすいという問題が生じていた。
【0003】
このような問題を解決すべく、特許文献1には、一方の端縁を湾曲させた接合縁とし、他方の端縁に耳掛け部を設けた一対のシート部と、前記一対のシート部の接合縁同士を接合した接合領域に形成される筒状の収納空間に収納される、一定以上の硬度を有する形状保持部材と、を備える立体マスクが開示されている。特許文献1によると、上記構成により、着用しても息苦しくなく装着感に優れたマスクを安価に提供できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、マスクの形状を制御することにより息苦しさの改善を図るものであり、不織布の圧力損失に起因する息苦しさに対する対処はなされていない。このため、その改善は充分なものとは言えなかった。また、不織布マスクでは、捕捉した汚染物質を除去することが困難であるため、繰り返しの使用に適した新たなマスク用フィルタが求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、捕捉性能の向上と圧力損失の低減とが両立され、繰り返しの使用が可能なマスク用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、セルロースから構成され、ストレートチャンネルを有する格子状構造体(マイクロハニカム)をマスク用フィルタに適用することで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一形態は、細孔壁を介して連続的に配列された筒状セルから構成される格子状構造体を有し、前記細孔壁はセルロースを含む、マスク用フィルタである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、捕捉性能の向上と圧力損失の低減とが両立され、繰り返しの使用が可能なマスク用フィルタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るマスク用フィルタを模式的に表す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るマスク本体の写真である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るマスク本体の開口部にカートリッジ部を装着した際の写真である。
【
図4】実施例4のマスク用フィルタについての、細孔径の測定に用いたSEM画像である。
【
図5】実施例4のマスク用フィルタについての、細孔壁の測定に用いたSEM画像である。
【
図6】実施例11のマスク用フィルタについての、細孔径の測定に用いたSEM画像である。
【
図7】実施例11のマスク用フィルタについての、細孔壁の測定に用いたSEM画像である。
【
図8】実施例4および9~11のマスク用フィルタについてのIRスペクトルである。
【
図9】実施例9~11のマスク用フィルタについての、接触角の測定の様子を撮影した写真である。
【
図10】実施例11のマスク用フィルタについての、圧縮前、圧縮中、回復後の断面を観察した光学顕微鏡写真である。
【
図11】実施例4および11のマスク用フィルタついての、水蒸気曝露後の写真である。
【
図12】圧力損失の測定に用いた装置を表す図である。
【
図13】捕捉性能の評価に用いた装置の写真である。
【
図14】再生(逆洗)の評価の様子を表す写真である。
【
図15】実施例11のマスク用フィルタついての、使用前、使用後、逆洗後の圧力損失の結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<マスク用フィルタ>
本発明の一形態に係るマスク用フィルタは、細孔壁を介して連続的に配列された筒状セルから構成される格子状構造体を有し、前記細孔壁はセルロースを含むことを特徴とする。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係るマスク用フィルタを模式的に表す斜視図である。本形態のマスク用フィルタ10は、細孔壁11を介して連続的に配列された筒状セルから構成される格子状構造体を有する。そして、格子状構造体の延在方向に対して垂直(互いのなす角が90°±5°の範囲を含む、以下同様)となるように端面13,15が形成されている。細孔壁11はセルロースおよびポリウレタンから構成されている。細孔壁11の表面はメチルトリクロロシランによる改質処理により疎水化されている。細孔壁11が区画する細孔は、フィルタ10の一方の端面13から他方の端面15まで続く管状細孔(ストレートチャンネル)である。よって、端面13から端面15までの距離(フィルタ10の厚さ)が細孔の長さに相当する。
【0013】
図1に示されるフィルタ10は、マスクに適用される際に、空気の流れ方向に対して格子状構造体の延在方向が平行(互いのなす角が0°±5°の範囲を含む、以下同様)となるように(空気の流れ方向に対して端面13,15が垂直となるように)配置される。これにより、空気と細孔壁との摩擦が小さくなるため、圧力損失の低いマスクを提供することが可能となる。また、細孔壁11が区画する細孔の細孔径は30μm程度であるため、花粉等の数十μm程度の汚染物質は端面13,15に捕捉される。また、より小さい汚染物質については、筒状セルの内部の細孔壁11に捕捉される。これにより、従来の不織布マスクと比較して、同等またはそれ以上の捕捉性能が発揮されうる。さらに、使用後のフィルタ10の細孔に流体(空気等の気体や、有機溶媒等の液体)を流通させることにより、細孔壁11の表面から汚染物質を除去できる。これにより、フィルタ10は再生され、繰り返しの使用が可能となる。
【0014】
細孔壁11はセルロースを含む。後述するように、本形態に係るマスクを構成する格子状構造体は、セルロースナノファイバー(CNF)の自己組織化現象を利用して作製されうる。細孔壁11の質量100質量%に対するセルロースの質量の割合は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である(上限値100質量%)。セルロースがこのような割合で含まれることにより、格子状構造体の作製が容易となる。
【0015】
細孔壁11は、セルロースに加えてポリウレタンを含むことが好ましい。細孔壁11がポリウレタンを含むことにより、フィルタ10の耐久性(特に、圧縮回復率)が向上するため、繰り返しの使用により適する。細孔壁11の質量100質量%に対するポリウレタンの質量の割合は、好ましくは40質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上90質量%以下であり、特に好ましくは70質量%以上80質量%以下である。ポリウレタンがこのような割合で含まれることにより、フィルタ10の耐久性(特に、圧縮回復率)がよりいっそう向上する。
【0016】
細孔壁11は、セルロースまたはセルロースおよびポリウレタン以外に他の材料を含みうる。ただし、コスト等の観点から、他の材料の含有量は可能な限り少ないことが好ましい。細孔壁11の質量100質量%に対する他の材料の質量の割合は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。
【0017】
細孔壁11が区画する細孔の細孔径は、サイズの小さな汚染物質に対する捕捉性能を向上させる観点から、小さい方が好ましい。具体的には、細孔径は35μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましく、20μm以下が特に好ましく、15μm以下が最も好ましい。なお、細孔径の下限値は、特に制限されないが、圧力損失の上昇を抑える観点から、1μm以上であることが好ましい。なお、本明細書において、細孔径は、後述の実施例に記載の方法により測定される値を採用するものとする。
【0018】
細孔壁11が区画する細孔の長さは、前述したように、フィルタ10における端面13から端面15までの距離(フィルタ10の厚さ)に相当する。細孔の長さは、特に制限されないが、1mm以上10mm以下であることが好ましい。細孔の長さが1mm以上であれば、耐久性および捕捉性能がよりいっそう向上する。細孔の長さが10mm以下であれば、圧力損失の上昇をよりいっそう抑制できる。
【0019】
細孔壁11の厚さは、特に制限されないが、好ましくは100nm以上500nm以下であり、より好ましくは200nm以上400nm以下である。細孔壁11の厚さが100nm以上であると、マスクの耐久性がよりいっそう向上する。細孔壁11の厚さが500nm以下であると、圧力損失の上昇がよりいっそう抑制される。なお、本明細書において、細孔壁の厚さとしては、後述の実施例に記載の方法により測定される値を採用するものとする。また、後述するように細孔壁の表面がケイ素含有化合物により改質されている場合、ケイ素含有化合物を含む層(改質層)の厚さも細孔壁の厚さに含むものとする。
【0020】
細孔壁11は、表面の少なくとも一部がケイ素含有化合物により改質されている(細孔壁の表面の少なくとも一部がケイ素-酸素結合を含む)ことが好ましい。これにより、細孔壁11の表面が疎水化され、フィルタ10の耐水性および耐湿性が向上する。また、このような表面改質は、フィルタ10の耐久性(特に、圧縮回復率)の向上にも寄与しうる。
【0021】
表面改質に用いられるケイ素含有化合物は、特に制限されないが、下記式に示されるシラン化合物であることが好ましい。
【0022】
【0023】
式中、R1、R2およびR3は、炭素数1~20の分岐を有していてもよいアルキル基を示す。この際、R1、R2およびR3は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。ここで、炭素数1~20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。また、X1、X2およびX3は、塩素原子、水素原子、炭素数1~8のアルコキシ基を示す。この際、X1、X2およびX3は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。ここで、炭素数1~8のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。中でも、反応性の観点から、ケイ素含有化合物は、1置換アルキルシランが好ましく、1置換アルキルトリクロロシランがより好ましく、メチルトリクロロシランがさらに好ましい(すなわち、細孔壁の表面の少なくとも一部はメチル-ケイ素-酸素結合を含むことがさらに好ましい)。
【0024】
上記表面改質は、細孔壁11の少なくとも一部の表面においてなされていればよいが、耐水性および耐湿性ならびに耐久性(特に、圧縮回復率)をよりいっそう向上させる観点から、細孔壁11の全表面の面積100%に対して50%以上の表面がケイ素含有化合物により改質されていることがより好ましく、全表面がケイ素含有化合物により改質されていることがより好ましい。
【0025】
また、フィルタ10を構成する格子状構造体の延在方向に垂直な断面の、水に対する接触角(25℃)は、110°以上であることが好ましく、120°以上であることが好ましく、130°以上であることがさらに好ましく、140°以上であることが特に好ましい。なお、接触角(25℃)の下限値は、特に制限されないが、170°以下であることが好ましい。当該断面がこのような接触角を有することで、マスクに適用した際の耐水性および耐湿性をよりいっそう向上できる。なお、本明細書において、接触角(25℃)としては、後述の実施例に記載の方法により測定される値を採用するものとする。
【0026】
細孔壁11を表面改質する手法は、特に制限されないが、格子状構造体の筒状セルにケイ素含有化合物を含むガスを流通させることにより、表面改質を行うことができる。なお、格子状構造体については、セルロースおよび水を含む分散液を調製し、当該分散液を一方向凍結乾燥させることにより作製することができる。細孔壁がセルロースに加えてポリウレタンを含む場合は、セルロースと、ポリウレタンの原料であるポリオール化合物およびイソシアネート化合物と、水とを含む分散液を調製する。セルロースと、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物とを水中で撹拌することにより、ポリウレタンが合成され、セルロースとポリウレタンとを含む分散液が得られる。よって、本発明の他の一側面によると、細孔壁を介して連続的に配列された筒状セルから構成される格子状構造体を有し、前記細孔壁はセルロースを含み、前記細孔壁の表面の少なくとも一部はケイ素含有化合物により改質されている、マスク用フィルタの製造方法が提供される。当該製造方法は、セルロースおよび水を含む分散液を調製する工程と、前記分散液を一方向凍結乾燥させることで前記格子状構造体を作製する工程と、前記格子状構造体の前記筒状セルに前記ケイ素含有化合物を含むガスを流通させて、前記細孔壁の表面の少なくとも一部を改質する工程とを有することを特徴とする。当該製造方法において、反応性の観点から、ケイ素含有化合物は、1置換アルキルシランが好ましく、1置換アルキルトリクロロシランがより好ましく、メチルトリクロロシランがさらに好ましい。
【0027】
<マスク用フィルタの再生方法>
上述したように、使用後のフィルタ10の細孔壁が区画する細孔に流体を流通させることにより、細孔壁11の表面から汚染物質を除去できる。これにより、フィルタ10は再生され、繰り返しの使用が可能となる。よって、本発明の他の側面によると、上記マスク用フィルタの細孔壁が区画する細孔に流体を流通させることを有する、マスク用フィルタの再生方法が提供される。
【0028】
再生方法に用いられる流体は、特に制限されず、気体および液体の何れも使用可能である。気体としては、空気、窒素、酸素、アルゴンなどが挙げられるが、これらに制限されない。液体としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;アセトン等のケトン類などが挙げられるが、これらに制限されない。コスト等の観点から、流体は空気であることが好ましい。
【0029】
細孔に流体を流通させる方法としては、ポンプ等を用いて流体を端面13,15の一方から他方へと通過させる方法や、流体を撹拌することにより形成される流れの中にフィルタ10を入れる方法などが挙げられるが、これらに制限されない。ポンプ等を用いて流体を端面13,15の一方から他方へと通過させる方法を採用する場合、汚染面とは逆の面から流体を通過させることが好ましい(逆洗)。これにより、汚染物質の除去効率がよりいっそう向上する。
【0030】
流体を流通させる際の流速は、流体の種類やフィルタのサイズにより、当業者が適宜設定することができる。流体が空気である場合を例に挙げると、1cm2当たりの流速は、1L/min以上50L/min以下であることが好ましく、10L/min以上30L/min以下であることがより好ましい。
【0031】
<マスク>
上述したように、フィルタ10は、従来の不織布と比較して、充分な捕捉性能を備えつつも、圧力損失が低く、また再生が可能であることから、マスクに好適である。マスクとしては、フィルタ10を介して外気を取り入れる構造となっている(つまり、フィルタ10以外の部位を介して外気を取り入れない)ものであれば、特に制限されない。また、フィルタ10がマスク本体と取り外しが可能な状態で配置されていることが好ましい。これにより、フィルタ10のみを上記再生方法により再生することが可能となり、マスク本体を使い回すことができるため、経済性に優れる。よって、本発明の他の側面によると、開口部を有し、装着時に使用者の顔の表面に当接して鼻および口を覆うように形成されたマスク本体部と、前記開口部に着脱可能に設けられたカートリッジ部と、を有し、前記カートリッジ部に、上述した形態に係るマスク用フィルタが、前記開口部の開口面と前記格子状構造体の延在方向とが垂直になるように配置された、マスクが提供される。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態に係るマスク本体の写真である。
図3は、本発明の一実施形態に係るマスク本体の開口部にカートリッジ部を装着した際の写真である。
図2に示すように、本実施形態に係るマスク本体には、開口部が12個設けられている。開口部は1以上設けられていればよく、フィルタのサイズ等によって適宜設定されうる。当該開口部には、それぞれマスク用フィルタが配置されたカートリッジ部が取り付けられる。
図3に示すように、カートリッジ部はネジにより開口部に装着されるが、接続形態はこれに限定されない。カートリッジ部には、マスク用フィルタが、開口部の開口面と格子状構造体の延在方向とが垂直になるように配置される。
【0033】
なお、以下の実施形態も本発明の範囲に含まれる:請求項2の特徴を有する請求項1に記載のマスク用フィルタ;請求項3の特徴を有する請求項1または2に記載のマスク用フィルタ;請求項4の特徴を有する請求項1~3のいずれかに記載のマスク用フィルタ;請求項5の特徴を有する請求項4に記載のマスク用フィルタ;請求項6の特徴を有する請求項2に記載のマスク用フィルタ;請求項7の特徴を有し、請求項1~6のいずれかに記載のマスク用フィルタを有するマスク;請求項8の特徴を有する、請求項1~6のいずれかに記載のマスク用フィルタの再生方法;請求項9の特徴を有する、請求項2または6に記載のマスク用フィルタの製造方法。
【実施例0034】
以下、実施例を用いて本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例のみには限定されない。
【0035】
<マスク用フィルタの作製>
[実施例1]
(1)前駆体の調製
セルロースナノファイバー(CNF)の分散液(濃度:3.3質量%)(TEMPO酸化CNF、セレンピア(登録商標)T-01A、日本製紙株式会社製、繊維幅約3nm)を脱イオン水で1.0質量%に希釈した。ホモジナイザーを用いて5000rpmで15分間混合した後、コンディショニングミキサー(あわとり練太郎大気圧タイプAR-250、株式会社シンキー製)を用いて5分間2000rpmで攪拌したのち、5分間2000rpmで脱泡した。。脱泡した混合液をポリプロピレン(PP)チューブに移し、5℃の冷蔵庫で冷却した。これにより前駆体を得た。
(2)格子状構造体(マイクロハニカム)の作製
上記前駆体を一方向凍結乾燥(UDF)プロセスにかけた。上記前駆体を入れたPPチューブをディップコーターに装填し、一定の浸漬速度(10cm/h)で液体窒素(77K)に浸漬した。サンプル凍結後、ワイヤーソーで所望の厚さ(1cmまたは4.5mm)にスライスした後、エタノール浴で真空乾燥を行った。これにより得られた格子状構造体を本実施例のマスク用フィルタとした。
【0036】
[実施例2]
上記「(1)前駆体の調製」において、セルロースナノファイバー(CNF)の分散液(濃度:3.3質量%)(TEMPO酸化CNF、セレンピア(登録商標)T-01A、日本製紙株式会社製、繊維幅約3nm)に代えて、セルロースナノファイバー(CNF)の分散液(濃度:2.2質量%)(TEMPO酸化CNF、レオクリスタ(登録商標)I-SX、第一工業製薬株式会社製、繊維幅約3nm)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法にて、格子状構造体を作製し、本実施例のマスク用フィルタとした。
【0037】
[実施例3]
上記「(1)前駆体の調製」を以下の手法で行ったこと以外は、実施例1と同様の手法にて、格子状構造体を作製し、本実施例のマスク用フィルタとした。
(1)前駆体の調製
セルロースナノファイバー(CNF)の分散液(濃度:3.3質量%)(TEMPO酸化CNF、セレンピア(登録商標)T-01A、日本製紙株式会社製、繊維幅約3nm)を脱イオン水で1質量%に希釈した。ポリオール(SETAQUA(登録商標)6522、ダイセル・オルネクス株式会社製)およびイソシアネート(DURANATE(登録商標)WT31-100、旭化成株式会社製)を原料として使用して、ポリウレタンを作製した。CNFとポリウレタンとが60:40の比率(質量比)となるように、ポリオールとイソシアネートとを2:1の比率(質量比)で希釈CNF分散液に添加し、固形分濃度を1.5質量%に調整し、ホモジナイザーを用いて5000rpmで15分間混合した後、コンディショニングミキサー(あわとり練太郎大気圧タイプAR-250、株式会社シンキー製)を用いて5分間2000rpmで攪拌したのち、5分間2000rpmで脱泡した。脱泡した混合液をポリプロピレン(PP)チューブに移し、5℃の冷蔵庫で冷却した。これにより前駆体を得た。
【0038】
[実施例4]
上記「(1)前駆体の調製」において、CNFとポリウレタンとが50:50の比率(質量比)となるように、ポリオールとイソシアネートとを2:1の比率(質量比)で希釈CNF分散液に添加したこと以外は、実施例3と同様の手法にて、格子状構造体を作製し、本実施例のマスク用フィルタとした。
【0039】
[実施例5]
上記「(1)前駆体の調製」において、CNFとポリウレタンとが30:70の比率(質量比)となるように、ポリオールとイソシアネートとを2:1の比率(質量比)で希釈CNF分散液に添加したこと以外は、実施例3と同様の手法にて、格子状構造体を作製し、本実施例のマスク用フィルタとした。
【0040】
[実施例6]
上記「(1)前駆体の調製」において、CNFとポリウレタンとが20:80の比率(質量比)となるように、ポリオールとイソシアネートとを2:1の比率(質量比)で希釈CNF分散液に添加したこと以外は、実施例3と同様の手法にて、格子状構造体を作製し、本実施例のマスク用フィルタとした。
【0041】
[実施例7]
上記「(2)格子状構造体(マイクロハニカム)の作製」において、浸漬速度を7cm/hとしたこと以外は、実施例1と同様の手法にて、格子状構造体を作製し、本実施例のマスク用フィルタとした。
【0042】
[実施例8]
上記「(2)格子状構造体(マイクロハニカム)の作製」において、浸漬速度を50cm/hとしたこと以外は、実施例1と同様の手法にて、格子状構造体を作製し、本実施例のマスク用フィルタとした。
【0043】
[実施例9]
実施例4と同様の手法にて、格子状構造体を得た。その後、当該格子状構造体について、以下の手法で表面改質を行った。
(3)表面改質
格子状構造体の細孔壁の表面を疎水化するために、メチルトリクロロシラン(MTCS、99%、東京化成工業株式会社製)を用いた化学気相成長(CVD)法にて表面改質を実施した。ガラス容器にMTCS(キャリアガス中濃度約18.4体積%)を入れ、キャリアガスとしてアルゴンガスを用い、20mL/minで格子状構造体に通過させた。この処理を10分間行い、得られた表面改質後の格子状構造体を本実施例のマスク用フィルタとした。
【0044】
[実施例10]
上記「(3)表面改質」において、表面改質の処理時間を20分間としたこと以外は、実施例9と同様の手法にて、表面改質後の格子状構造体を作製し、本実施例のマスク用フィルタとした。
【0045】
[実施例11]
上記「(3)表面改質」において、表面改質の処理時間を45分間としたこと以外は、実施例9と同様の手法にて、表面改質後の格子状構造体を作製し、本実施例のマスク用フィルタとした。
【0046】
[実施例12]
実施例1と同様の手法にて、格子状構造体を得た。その後、当該格子状構造体について、以下の手法で表面改質を行った。
(3)表面改質
格子状構造体の細孔壁の表面を疎水化するために、メチルトリクロロシラン(MTCS、99%、東京化成工業株式会社製)を用いた化学気相成長(CVD)法にて表面改質を実施した。ガラス容器にMTCS(キャリアガス中濃度約18.4体積%)を入れ、キャリアガスとしてアルゴンガスを用い、20mL/minで格子状構造体に通過させた。この処理を2時間(120分間)行い、得られた表面改質後の格子状構造体を本実施例のマスク用フィルタとした。
【0047】
[比較例1]
市販の不織布(3層構造不織布マスク、株式会社エイコー製、ポリプロピレン製、厚さ5~6mm)を本比較例のマスク用フィルタとした。
【0048】
実施例および比較例の各マスク用フィルタの作製条件を下記表1にまとめる。
【0049】
【0050】
<細孔径および細孔壁の厚さ>
実施例の各マスク用フィルタ(厚さ1cm)を、電界放射走査型電子顕微鏡(FE-SEM、S-4800、株式会社日立ハイテク製)を用いて観察し、それぞれの細孔径および細孔壁の厚さを以下の手法で求めた。細孔径については、格子状構造体の延在方向に垂直な断面をSEMを用いて観察し、数~数十視野中に観察される各細孔の細孔面積を測定した。そして、各細孔の細孔面積と同じ面積を有する真円の直径(円相当径)を算出し、それらの算術平均値を細孔径とした。細孔壁の厚さについては、格子状構造体の延在方向に垂直な断面をSEMを用いて観察し、数視野中に観察される各細孔壁の厚さを画像解析ソフトウェア Image Jにより40箇所測定し、それらの算術平均値を細孔壁の厚さとした。主な結果を下記表2および下記表3に示す。
【0051】
【0052】
表2に示すように、細孔径は、一方向凍結乾燥(UDF)プロセスの浸漬時間と相関関係があり、浸漬時間が短いほど細孔径が大きくなり、浸漬時間が長いほど細孔径が小さくなる傾向が見られた。なお、実施例1、2および6の細孔径についても実施例3~5と同等の値(24±5μm)であることが確認された。また、実施例9、10および12の細孔径についても実施例11と同等の値(23±5μm)であることが確認された。
【0053】
【0054】
表3に示すように、細孔壁の厚さは、表面改質の有無と相関関係があり、表面改質を行うことにより細孔壁の表面にケイ素含有化合物がコーティングされ、細孔壁の厚さが厚くなる傾向が見られた。また、実施例9~11を対比すると表面改質の処理時間が長くなるにつれて細孔壁がより厚くなる傾向が見られた。
【0055】
なお、参考までに、実施例4のマスク用フィルタについての、細孔径の測定に用いたSEM画像を
図4に、細孔壁の測定に用いたSEM画像を
図5に、それぞれ示す。また、実施例11のフィルタについての細孔径の測定に用いたSEM画像を
図6に、細孔壁の測定に用いたSEM画像を
図7に、それぞれ示す。
【0056】
<表面改質の確認>
実施例9~12のマスク用フィルタ(厚さ1cm)について、フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR-6600、日本分光株式会社製)を用いて、表面改質の確認を行った。主な結果を原料CNFおよび実施例4の結果と併せて
図8に示す。
【0057】
図8に示すように、実施例9~11の表面改質を行ったフィルタでは、781cm
-1付近にC-Si結合による特徴的な振動が、1270cm
-1付近に-CH
3変形振動の特徴的な振動が観測された。また、表面改質の処理時間が長くなるにつれ、これらの波長での吸収強度が強くなることから、細孔壁表面の水酸基がより多くのケイ素含有化合物により改質された(ケイ素を含む層がより緻密に形成された)ことが示唆された。なお、実施例12の表面改質を行ったフィルタについても同様の結果が得られた。一方、原料であるCNFおよび表面改質を行っていない実施例4のフィルタについては、これらの振動は観測されなかった。
【0058】
<接触角>
実施例の各マスク用フィルタ(厚さ1cm)について、格子状構造体の延在方向に垂直な断面における接触角(CA)を以下の手法で測定した。測定には、自動極小接触角計(DM-301、協和界面科学株式会社製)を使用し、25℃の温度条件下でフィルタの一方の端面に水を2μL滴下し、10秒経過後の接触角を測定した。上記測定を5回行い、算術平均値を接触角とした。主な結果を下記表4に示す。
【0059】
【0060】
表4に示すように、表面改質を行っていない実施例1~8のフィルタでは、水は、滴下後に速やかに吸収されたため、接触角は0°であった。実施例9~11のフィルタでは、表面改質の処理時間が増加するにつれて、接触角が大きくなり、疎水性が向上することが分かる。これは、処理時間が長くなるにつれて、細孔壁表面の水酸基がより多くのケイ素含有化合物により改質された(ケイ素を含む層がより緻密に形成された)ためであると考えられる。一方で、処理時間の増加に伴い、接触角が増加する割合は小さくなり、飽和傾向を示した。
【0061】
なお、参考までに、実施例9~11のフィルタについての、接触角の測定の様子を撮影した写真を
図9に示す。
【0062】
<圧縮回復率>
実施例の各マスク用フィルタ(厚さ1cm)について、以下の手法で圧縮回復率を評価した。卓上形精密万能試験機(10N-10kN、株式会社島津製作所製)を用いて、各フィルタを格子状構造体の延在方向に垂直な方向にプレスし、80%変形するまで圧縮し、圧力を解放した直後(10秒以内)の回復率を測定した。圧縮ひずみ速度は、100%/minに設定した。そして、サンプルの弾力性を反映するパラメータである回復度(RD)を、下記式により計算した。式中、dは試験前の長さ(格子状構造体の延在方向に垂直な断面の直径、単位:m)を表し、d’は回復後の長さ(単位:m)を表す。主な結果を下記表5に示す。
【0063】
【0064】
【0065】
表5に示すように、細孔壁を構成する材料中のポリウレタンの含有量が多くなるにつれて、圧縮回復率が高くなる傾向が見られる。また、表面改質の処理時間が長くなるにつれて、圧縮回復率が高くなる傾向が見られることも分かる。
【0066】
なお、参考までに、実施例11のフィルタ断面についての、圧縮前、圧縮中、回復後の光学顕微鏡写真を
図10に示す。
【0067】
<耐湿性試験>
実施例の各マスク用フィルタ(厚さ1cm)について、以下の手法で耐湿性を評価した。40℃の水を入れたビーカーの上に、ステンレス製の篩を設置し、当該篩の上に、フィルタを蓋の面と格子状構造体の延在方向とが垂直となるように配置し、1時間水蒸気曝露を行うことで耐湿性を評価した。主な結果として、実施例4および11の各フィルタの水蒸気曝露後の写真を
図11に示す。
【0068】
図11に示すように、表面改質(疎水化)処理を行っていない実施例4のフィルタは、格子状構造体が水蒸気を吸収して大きく収縮し、構造がねじれて塊となった。実施例1~3および実施例5~8もこれと同様の結果であった。実施例11のフィルタは、表面改質(疎水化)処理により水蒸気の吸収が抑制され、外観および微細構造に大きな変化はなかった。実施例9、実施例10および実施例12もこれと同様の結果であった。
【0069】
<圧力損失>
実施例および比較例の各マスク用フィルタ(厚さ4.5mm)について、以下の手法で圧力損失を測定した。
図12に示すように、フィルタを金型(中央のΦ8.5mmチャネル)に置き、フィルタを接着剤で取り付けた。圧力差を測定するため、チャンバーの両側には差圧計を設置した。ガスの流速が20~100mL/minとなるようにマスフローコントローラーにより制御した。圧力損失は、下記のHagen-Poisseuilleの式によって算出した。式中、ηはガスの粘度(Pa・s)、νはガスの流量(m/s)、Lは細孔の長さ(フィルタの厚さ、単位:m)、Dは細孔径(単位:m)を表す。
【0070】
【0071】
細孔壁の厚さを考慮すると、細孔の面積S1(単位:m2)は次式で表される。
【0072】
【0073】
細孔の面積および細孔壁の面積の合計S2(単位:m2)は次式で表される。式中、tは細孔壁の厚さ(単位:m)を表す。
【0074】
【0075】
よって、細孔壁の厚さを考慮した際の変換式は、次式のようになる。
【0076】
【0077】
得られた値を単位厚さ(Pa/mm)に変換した。主な結果を下記表6に示す。
【0078】
【0079】
表6に示すように、実施例1、実施例4および実施例11のフィルタは、比較例1の不織布フィルタと比較して、圧力損失が1/7程度まで低減した。ポリウレタンを含む実施例4および実施例11のフィルタは、セルロースのみからなる実施例1のフィルタと比較して圧力損失が若干大きくなった。これはポリウレタンを含有することで細孔壁の厚さが増加したことによると考えられる。なお、実施例4と実施例11との対比より、疎水化処理の圧力損失への影響は無視できる程度であることも分かる。
【0080】
<捕捉性能>
実施例の各マスク用フィルタ(厚さ4.5mm)について、以下の手法で捕捉性能を評価した。
図13に示す測定装置の粒子発生部(紙箱)に火をつけた線香(かゆらぎ 沈香、高さ160mm×幅30mm×奥行25mm、株式会社日本香堂製)をセットした。ハンドヘルド パーティクル カウンター(PP8506-30、株式会社パーティクルプラス製)を使用し、0.5~20μmのサイズを有する粒子の数を検出した。流量は2.83L/minで一定とした。ろ過効率(FE)を式:FE(%)={(C
1-C
2)/C
1}×100により算出した。C
1は、フィルタ未使用時における1分間での検出粒子数を表し、C
2はフィルタ使用時における1分間での検出粒子数を表す。
【0081】
実施例4についての結果を下記表7に示す。
【0082】
【0083】
実施例4のフィルタは細孔径が24μmであるが、表7に示すように、細孔径よりも小さい粒子に対して充分な捕捉性能を有することが示された。なお実施例1~3および実施例5~12のフィルタについても同様の結果が得られた。
【0084】
<再生(逆洗)>
実施例および比較例の各マスク用フィルタ(厚さ4.5mm)について、以下の手法で再生を行った。ポンプの吸引口に各フィルタを設置し、モデル汚染物質としての均一樹脂粒子ミクロパールSP-205(平均粒子径5.00±0.05μm、積水化学工業株式会社製)を吸引した。その後、ポンプを用いて上記吸引とは逆方向に空気を流すことによって汚染面に付着した汚染物質を除去した(逆洗)。その後、ポンプを用いて上記吸引と同じ方向に空気を吸引し、その際の吸引力を確認した。主な結果を
図14および
図15に示す。
【0085】
図14の上段に示すように、比較例1の不織布フィルタでは、逆洗を行っても充分な吸引が行えず、紙も吸い付かなかった。これに対し、下段の実施例11のフィルタでは、逆洗後にピンポン玉が吸い付いた。また、
図15に示すように、使用前のフィルタにモデル汚染物質を吸引させることで「使用後」として示されるように圧力損失の増加が見られるものの、逆洗後には使用前と同程度まで圧力損失が低下した。なお実施例1~10および実施例12のフィルタについても同様の結果が得られた。