(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066111
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】医用画像処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240508BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20240508BHJP
【FI】
A61B6/03 373
A61B6/03 360M
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175421
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻岡 勝美
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093BA03
4C093BA04
4C093CA21
4C093EA07
4C093EB28
4C093FC12
4C093FF19
4C093FG01
4C093FG14
(57)【要約】
【課題】仮想単色エネルギーを利用した組成診断の精度及び効率を向上すること。
【解決手段】 実施形態に係る医用画像処理装置は、設定部、生成部及び表示制御部を有する。設定部は、被検体に関するCT画像に組成診断対象を表す線を設定する。生成部は、当該線に含まれる複数の位置毎の仮想単色エネルギー変化に伴うCT値変化を表す特性画像を生成する。表示制御部は、特性画像を表示機器に表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に関するCT画像に組成診断対象を表す線を設定する設定部と、
前記線に含まれる複数の位置毎の仮想単色エネルギー変化に伴うCT値変化を表す特性画像を生成する生成部と、
前記特性画像を表示機器に表示する表示制御部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記特性画像は、前記複数の位置にそれぞれ対応する複数のCT値変化曲線を含む2次元画像であり、
前記複数のCT値変化曲線各々は、第一軸が仮想単色エネルギーに規定され、第二軸が仮想単色CT値に規定されたグラフに描画される、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記特性画像は、第一軸が仮想単色エネルギーに規定され第二軸が前記線上の位置に規定された2次元画像であり、各画素に仮想単色CT値、又は当該仮想単色CT値に対応する階調値或いは色値が割り当てられている、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記特性画像は、前記複数の位置各々について、仮想単色CT値の変化が仮想単色エネルギーの変化に対して正の相関又は負の相関することを表現する、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記仮想単色CT値の変化は、仮想単色エネルギーの基準値に対応する仮想単色CT値に対する各仮想単色CT値の差で規定される、請求項4記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記正の相関と前記負の相関とを視覚的に区別して表示する、請求項4記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、閾値に比して前記仮想単色CT値の変化が大きい画素と小さい画素とを視覚的に区別して表示する、請求項4記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記特性画像は、前記複数のCT値変化曲線に加え、目的臓器に関する健常者の標準的なCT値変化曲線を含む、請求項2記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記線は、直線又は曲線である、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記CT画像は、多色X線画像又は仮想単色X線画像である、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記特性画像を、前記被検体に関する読影レポートに貼付する貼付部を更に備える、請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記特性画像は、第一の特性画像と第二の特性画像とを含み、
前記第一の特性画像は、第一軸が仮想単色エネルギーに規定され第二軸が前記線上の位置に規定された2次元画像であり、各画素に仮想単色CT値、又は当該仮想単色CT値に対応する階調値或いは色値が割り当てられ、
前記第二の特性画像は、前記複数の位置にそれぞれ対応する複数のCT値変化曲線を含む2次元画像であり、前記複数のCT値変化曲線各々は、第一軸が仮想単色エネルギーに規定され、第二軸が仮想単色CT値に規定されたグラフに描画され、
前記生成部は、前記線に基づいて前記第一の特性画像を生成し、前記第一の特性画像に基づいて前記第二の特性画像を生成する、
請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
被検体に関するCT画像に組成診断対象を表す線を設定し、
前記線に含まれる複数の位置毎の仮想単色エネルギー変化に伴うCT値変化を表す特性画像を生成し、
前記特性画像を表示機器に表示する、
ことを具備する医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デュアルエナジーCT(Dual Energy CT)やフォトンカウンティングCTでは、仮想単色エネルギー[keV]の計算が可能である。仮想単色エネルギー変化に伴うCT値変化により人体組織の組成診断が可能である。仮想単色エネルギー変化に伴うCT値変化は、仮想単色エネルギー変化に伴う仮想単色X線画像(Virtual monochromatic X-ray image)での階調度(濃度又は輝度)変化として視覚的に捉えられる。具体的には、複数の仮想単色エネルギーに対応する複数の仮想単色X線画像を順番に切り替えて表示する画像送りにより、読影医等が、人体組織のCT値変化を階調度変化として視覚的に把握している。しかしながら、視覚的な把握では、定量性のある正確な組成診断を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、仮想単色エネルギーを利用した組成診断の精度及び効率を向上することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用画像処理装置は、設定部、生成部及び表示制御部を有する。設定部は、被検体に関するCT画像に組成診断対象を表す線を設定する。生成部は、前記線に含まれる複数の位置毎の仮想単色エネルギー変化に伴うCT値変化を表す特性画像を生成する。表示制御部は、前記特性画像を表示機器に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、仮想単色エネルギーを利用した組成診断の処理手順を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す関心線に基づく第一の特性画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す第一の特性画像に基づく第二の特性画像の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、読影レポートの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、変形例1に係る第一の特性画像の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、変形例2に係る第二の特性画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置及び方法の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、デュアルエナジーCTやフォトンカウンティングCT等のスペクトラルCTにより収集されたCT画像に対して画像処理を行うコンピュータである。医用画像処理装置は、X線コンピュータ断層撮影装置に含まれるコンピュータでもよいし、画像処理サーバや画像ビューア等のX線コンピュータ断層撮影装置から独立したコンピュータでもよいし、画像処理が可能であれば如何なるコンピュータでもよい。以下の説明のため、本実施形態に係る医用画像処理装置は、X線コンピュータ断層撮影装置に含まれるコンピュータであるとする。
【0009】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置には、第3世代CT、第4世代CT等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本実施形態に適用可能である。ここで、第3世代CTは、X線管と検出器とが一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Typeである。第4世代CTは、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Typeである。また、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置には、X線管と検出器との1個のペアを回転リングに搭載した一管球型にも、X線管と検出器との複数のペアを回転リングに搭載した多管球型にも適用可能であるが、以下の説明においては、一管球型であるとする。
【0010】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、スペクトラルCTを実行する。本実施形態に係るスペクトラルCTは、デュアルエナジーCT及びフォトンカウンティングCTを含むものとする。以下の説明のため、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、デュアルエナジーCTを実行するものとする。
【0011】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の構成を示す図である。X線コンピュータ断層撮影装置1は、X線管11から被検体Pに対してX線を照射し、照射されたX線をX線検出器12で検出する。X線コンピュータ断層撮影装置1は、X線検出器12からの出力に基づいて被検体Pに関するCT画像を生成する。
【0012】
図1に示すように、X線コンピュータ断層撮影装置1は、架台10、寝台30及びコンソール40を有する。なお、
図1では説明の都合上、複数個所に架台10が図示されているが、X線コンピュータ断層撮影装置1に実装される架台10は1個でもよいし複数個でもよい。架台10は、被検体PをX線CT撮影するための構成を有するスキャン装置である。寝台30は、X線CT撮影の対象となる被検体Pを載置し、被検体Pを位置決めするための搬送装置である。コンソール40は、架台10を制御するコンピュータである。例えば、架台10及び寝台30はCT検査室に設置され、コンソール40はCT検査室に隣接する制御室に設置される。架台10、寝台30及びコンソール40は互いに通信可能に有線または無線で接続されている。なお、コンソール40は、必ずしも制御室に設置されなくてもよい。例えば、コンソール40は、架台10及び寝台30とともに同一の部屋に設置されてもよい。また、コンソール40が架台10に組み込まれてもよい。コンソール40は、医用画像処理装置の一例である。
【0013】
図1に示すように、架台10は、X線管11、X線検出器12、回転フレーム13、X線高電圧装置14、制御装置15、ウェッジ16、コリメータ17及びデータ収集回路(DAS:Data Acquisition System)18を有する。
【0014】
X線管11は、X線を被検体Pに照射する。具体的には、X線管11は、熱電子を発生する陰極と、陰極から飛翔する熱電子を受けてX線を発生する陽極と、陰極と陽極とを保持する真空管とを含む。X線管11は、高圧ケーブルを介してX線高電圧装置14に接続されている。陰極と陽極との間には、X線高電圧装置14により管電圧が印加される。管電圧の印加により陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔する。陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔することにより管電流が流れる。X線高電圧装置14からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子が飛翔し、熱電子が陽極に衝突することによりX線が発生される。例えば、X線管11には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0015】
なお、X線を発生させるハードウェアはX線管11に限られない。例えば、X線管11に代えて、第5世代方式を用いてX線を発生させることにしても構わない。第5世代方式は、電子銃から発生した電子ビームを集束させるフォーカスコイルと、電磁偏向させる偏向コイルと、被検体Pの半周を囲い偏向した電子ビームが衝突することによってX線を発生させるターゲットリングとを含む。
【0016】
X線検出器12は、X線管11から照射され被検体Pを通過したX線を検出し、検出されたX線の線量に対応した電気信号をデータ収集回路18に出力する。X線検出器12は、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向)に複数配列された構造を有する。X線検出器12は、例えば、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは、入射X線量に応じた光量の光を出力する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射面側に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光の光量に応じた電気信号に変換する。光センサとしては、例えば、フォトダイオードが用いられる。なお、X線検出器12は、直接変換型の検出器であってもよい。
【0017】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを回転軸(Z軸)回りに回転可能に支持する円環状のフレームである。具体的には、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持する。回転フレーム13は、固定フレーム(図示せず)に回転軸回りに回転可能に支持される。制御装置15により回転フレーム13が回転軸回りに回転することによりX線管11とX線検出器12とを回転軸回りに回転させる。回転フレーム13は、制御装置15の駆動機構からの動力を受けて回転軸回りに一定の角速度で回転する。回転フレーム13の開口部19には、画像視野(FOV)が設定される。
【0018】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し床面に対し水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し床面に対し垂直である軸方向をY軸方向と定義する。
【0019】
X線高電圧装置14は、高電圧発生装置及びX線制御装置を有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧及びX線管11に供給するフィラメント電流を発生する。X線制御装置は、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行う。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。X線高電圧装置14は、架台10内の回転フレーム13に設けられてもよいし、架台10内の固定フレーム(図示しない)に設けられても構わない。
【0020】
ウェッジ16は、被検体Pに照射されるX線の線量を調節する。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線の線量が予め定められた分布になるようにX線を減衰する。例えば、ウェッジ16としては、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)等のアルミニウム等の金属板が用いられる。
【0021】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を限定する。コリメータ17は、X線を遮蔽する複数の鉛板をスライド可能に支持し、複数の鉛板により形成されるスリットの形態を調節する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
【0022】
データ収集回路18は、X線検出器12により検出されたX線の線量に応じた電気信号をX線検出器12から読み出す。データ収集回路18は、読み出した電気信号を増幅し、ビュー期間に亘り電気信号を積分することにより当該ビュー期間に亘るX線の線量に応じたデジタル値を有する投影データを収集する。データ収集回路18は、例えば、投影データを生成可能な回路素子を搭載した特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)により実現される。デジタルデータは、非接触データ伝送装置等を介してコンソール40に伝送される。
【0023】
制御装置15は、コンソール40の処理回路44の撮影制御機能441に従いX線CT撮影を実行するためにX線高電圧装置14やデータ収集回路18を制御する。制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)あるいはMPU(Micro Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路は、ハードウェア資源として、CPU等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。また、制御装置15は、ASICやフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)により実現されてもよい。また、制御装置15は、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)又は単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されてもよい。制御装置15は、コンソール40若しくは架台10に取り付けられた、後述する入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台10及び寝台30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台10をチルトさせる制御、及び寝台30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台10をチルトさせる制御は、架台10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は架台10に設けられてもよいし、コンソール40に設けられても構わない。
【0024】
寝台30は、基台31、支持フレーム32、天板33及び寝台駆動装置34を備える。基台31は、床面に設置される。基台31は、支持フレーム32を、床面に対して垂直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体である。支持フレーム32は、基台31の上部に設けられるフレームである。支持フレーム32は、天板33を回転軸(Z軸)に沿ってスライド可能に支持する。天板33は、被検体Pが載置される柔軟性を有する板である。
【0025】
寝台駆動装置34は、寝台30の筐体内に収容される。寝台駆動装置34は、被検体Pが載置された支持フレーム32と天板33とを移動させるための動力を発生するモータ又はアクチュエータである。寝台駆動装置34は、コンソール40等による制御に従い作動する。
【0026】
コンソール40は、メモリ41、ディスプレイ42、入力インターフェース43及び処理回路44を有する。メモリ41とディスプレイ42と入力インターフェース43と処理回路44との間のデータ通信は、バス(BUS)を介して行われる。なお、コンソール40は架台10とは別体として説明するが、架台10にコンソール40又はコンソール40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0027】
メモリ41は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ41は、例えば、投影データや再構成画像データを記憶する。メモリ41は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体であってもよい。メモリ41は、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ41の保存領域は、X線コンピュータ断層撮影装置1内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。メモリ41には、後述するデータベースを記憶する。
【0028】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成されたCT画像や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。ディスプレイ42としては、種々の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。例えばディスプレイ42として、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)又はプラズマディスプレイが使用可能である。また、ディスプレイ42は、架台10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0029】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。入力インターフェース43としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。なお、本実施形態において、入力インターフェース43は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。また、入力インターフェース43は、架台10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0030】
処理回路44は、入力インターフェース43から出力される入力操作の電気信号に応じてX線コンピュータ断層撮影装置1全体の動作を制御する。処理回路44は、X線検出器12から出力された電気信号に基づいて画像データを生成する。例えば、処理回路44は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路44は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、撮影制御機能441、再構成機能442、設定機能443、特性画像生成機能444、表示制御機能445及び貼付機能446等を実行する。各機能441~446は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能441~446を実現するものとしても構わない。
【0031】
撮影制御機能441において処理回路44は、被検体Pに対してデュアルエナジーCTスキャンを行うためX線高電圧装置14と制御装置15とデータ収集回路18とを制御する。デュアルエナジーCTスキャンにおいてX線高電圧装置14は、第一の管電圧と当該第一の管電圧に比して低い第二の管電圧とを交互にX線管11に印加し、データ収集回路18は、第一の管電圧に対応する投影データと第二の管電圧に対応する投影データとを交互に収集する。ここで、第一の管電圧を高管電圧、第二の管電圧を低管電圧と呼ぶ。
【0032】
再構成機能442において処理回路44は、データ収集回路18から出力された投影データに基づいて被検体Pに関するCT画像を生成する。CT画像は、各画素に含まれる物質の減弱係数を評価するCT値の空間分布を表す。処理回路44は、CT画像を、任意断面の断面画像や任意視点方向のレンダリング画像に変換する。変換は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて行われる。例えば、処理回路44は、CT画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して、任意視点方向のレンダリング画像データを生成する。
【0033】
デュアルエナジーCTにおいては種々のCT画像を生成可能である。例えば、処理回路44は、高管電圧印加時の投影データに基づいて高管電圧に対応するCT画像を生成したり、低管電圧印加時の投影データに基づいて低管電圧に対応するCT画像を生成したりすることが可能である。これらCT画像は、管電圧値に対応するX線フォトンエネルギーを略最大値に有するエネルギースペクトラルを有する多色X線での撮影により収集されるCT画像であり、多色X線画像とも呼ばれる。また、処理回路44は、高管電圧印加時の投影データと低管電圧印加時の投影データとに基づいて、任意の仮想単色エネルギーに関する仮想単色X線画像を生成する。仮想単色X線画像は、任意の単一のX線フォトンエネルギー(仮想単色エネルギー)を有する単色X線での撮影により収集され得るCT画像である。仮想単色エネルギーは、仮想単色X線画像が仮定する単一のX線フォトンエネルギーを意味する。
【0034】
仮想単色X線画像の生成手順は例えば以下の通りである。まず、処理回路44は、高管電圧印加時の投影データと低管電圧印加時の投影データとに基づいて、第一の基準物質の密度値の空間分布を表す第一の基準物質画像、第二の基準物質の密度値の空間分布を表す第二の基準物質画像及び第三の基準物質の密度値の空間分布を表す第三の基準物質画像を生成する。次に処理回路44は、生成対象の仮想単色エネルギーにおける第一の基準物質、第二の基準物質及び第三の基準物質の減弱係数を取得する。仮想単色エネルギー毎の第一の基準物質、第二の基準物質及び第三の基準物質の減弱係数が登録されたテーブルは予めメモリ41等に記憶されている。処理回路44は、生成対象の仮想単色エネルギーが設定された場合、当該仮想単色エネルギーに対応する第一の基準物質、第二の基準物質及び第三の基準物質の減弱係数を当該テーブルから読み出す。そして処理回路44は、読み出した仮想単色エネルギーに対応する第一の基準物質、第二の基準物質及び第三の基準物質の減弱係数と、第一の基準物質画像と、第二の基準物質画像と、第三の基準物質画像とに基づいて、生成対象の仮想単色エネルギーに対応する仮想単色X線画像を生成する。第一の基準物質、第二の基準物質及び第三の基準物質の組合せは基準物質対と呼ばれる。第一の基準物質、第二の基準物質及び第三の基準物質の種類は特に限定されないが、以下の実施形態においては、第一の基準物質は脂肪であり、第二の基準物質は軟部組織、第三の基準物質はヨードであることを想定する。
【0035】
設定機能443において処理回路44は、再構成機能442により生成されたCT画像に、組成診断対象を表す線を設定する。組成診断対象を表す線を関心線と呼ぶことにする。関心線は、直線又は曲線である。関心線が設定されるCT画像は、多色X線画像でもよいし、仮想単色X線画像でもよい。
【0036】
特性画像生成機能444において処理回路44は、設定機能443により設定された関心線に含まれる複数の位置毎の仮想単色エネルギー変化に伴うCT値変化を表す特性画像を生成する。特性画像は、第一の特性画像と第二の特性画像とを含む。第一の特性画像は、第一軸が仮想単色エネルギーに規定され第二軸が関心線上の位置に規定された2次元画像である。第一の特性画像の各画素には仮想単色CT値、又は当該仮想単色CT値に対応する階調値或いは色値が割り当てられる。仮想単色CT値は、仮想単色X線画像に割り当てられるCT値を意味する。第二の特性画像は、関心線上の複数の位置にそれぞれ対応する複数のCT値変化曲線を含む2次元画像である。複数のCT値変化曲線各々は、第一軸が仮想単色エネルギーに規定され、第二軸が仮想単色CT値に規定されたグラフに描画される。
【0037】
表示制御機能445において処理回路44は、種々の情報をディスプレイ42に表示する。一例として、処理回路44は、多色X線画像や仮想単色X線画像等のCT画像、第一の特性画像や第二の特性画像等の特性画像を表示する。
【0038】
貼付機能446において処理回路44は、特性画像生成機能444により生成された特性画像を、被検体Pに関する読影レポートに貼付する。貼付された特性画像は、第一の特性画像及び/又は第二の特性画像である。
【0039】
以下、仮想単色エネルギーを利用した組成診断に係る医用画像処理装置40の動作例について説明する。
【0040】
図2は、仮想単色エネルギーを利用した組成診断の処理手順を示す図である。
図2の処理の開始前において、撮影制御機能441により、被検体Pに対してデュアルエナジーCTスキャンが行われ、高管電圧印加時の投影データと低管電圧印加時の投影データとが収集され、再構成機能442により、診断目的断面に関するCT画像が生成されているものとする。ヨードが注入された被検体Pに対してデュアルエナジーCTスキャンが行われたものとする。ヨードは悪性腫瘍に対して特異的に集積する薬剤が標識されているものとする。すなわち、ヨードの集積濃度と悪性腫瘍の蓋然性との間には正の相関があるものとする。
【0041】
図2に示すように、処理回路44は、表示制御機能445の実現により、診断目的断面に関するCT画像を表示する(ステップS1)。診断目的断面は、組成診断の目的臓器を含む断面に設定されるとよい。一例として、診断目的断面は、入力インターフェース43を介した操作者の指示に従い設定されるとよい。操作者は、読影医等の医療従事者を想定する。他の例として、診断目的断面は、再構成機能442により生成された3次元CT画像(ボリュームデータ)から目的臓器を任意の画像処理により抽出し、抽出された目的臓器を含む任意の断面が所定のアルゴリズムに従い設定されてもよい。表示されるCT画像としては、高管電圧に対応する多色X線画像、低管電圧に対応する多色X線画像、第一の基準物質である脂肪の密度値の空間分布を表す基準物質画像である脂肪密度画像、第二の基準物質である軟部組織の密度値の空間分布を表す基準物質画像である軟部組織密度画像、第三の基準物質であるヨードの密度値の空間分布を表す基準物質画像であるヨード密度画像、任意の仮想単色エネルギーに関する仮想単色X線画像等が表示されればよい。肝臓の場合、軟部組織は肝実質に対応する。表示されるCT画像の種類は、操作者により入力インターフェース43を介して選択されてもよい。処理回路44は、当該CT画像をディスプレイ42に表示する。
【0042】
ステップS1が行われると処理回路44は、設定機能443の実現により、CT画像に関心線を設定する(ステップS2)。関心線は、組成診断の対象として設定される。
【0043】
図3は、関心線I13の設定例を示す図である。
図3に示すように、CT画像I1には目的臓器の画像領域(以下、目的臓器領域)I11が描画されている。目的臓器領域には、組成診断の対象部位の画像領域(以下、対象部位領域)I12が含まれている。目的臓器は、特に限定されないが、肝臓を想定している。また、対象部位は、肝実質に発生した腫瘍を想定している。
【0044】
処理回路44は、対象部位領域I12を通過するように関心線I13を設定する。関心線I13は、始点PSと終点PEとを結ぶ直線として設定される。関心線I13は、操作者により入力インターフェース43を介して手動的に設定されてもよいし、画像処理により自動的に設定されてもよい。関心線の幅は、1画素に設定されるものとする。関心線I13は、直線に限定されず、曲線でもよい。曲線の場合、閉じた曲線でもよいし開いた曲線でもよい。関心線に関する上記各種設定パラメータは、操作者により入力インターフェース43を介して任意に設定可能である。
【0045】
関心線I13は複数の位置を含む。一例として、当該位置は解剖学的に区分された領域を意味する。
図3に示すように、関心線I13は、位置RA、RB及びRCを含む。位置RAは、目的臓器外の画像領域に対応する。位置RBは、目的臓器である肝臓の肝実質に対応する。位置RCは、目的臓器のうちの組成診断の対象部位である腫瘍に対応する。
【0046】
ステップS2が行われると処理回路44は、特性画像生成機能444の実現により、第一の特性画像を生成する(ステップS3)。第一の特性画像は、関心線軸と仮想単色エネルギー軸とにより規定される2次元平面における仮想単色CT値の分布を表す。処理回路44は、ステップS2において設定された関心線と被検体Pに関する複数の仮想単色エネルギーにそれぞれ対応する複数の仮想単色X線画像とに基づいて、第一の特性画像を生成する。
【0047】
図4は、
図3に示す関心線I13に基づく第一の特性画像I2の一例を示す図である。
図4に示すように、第一の特性画像I2は、横軸が仮想単色エネルギー[keV]に規定され、縦軸が関心線上の位置に規定された2次元画像であり、各画素には仮想単色CT値、又は当該仮想単色CT値に対応する階調値或いは色値が割り当てられる。一例として、第一の特性画像II2の下端が関心線I13の始点PSに設定され、上端が関心線I13の終点PEに設定される。
【0048】
第一の特性画像I2の生成手順は例えば以下の通りである。まず、処理回路44は、第一の特性画像I2のテンプレートマップを用意する。テンプレートマップの各画素には、仮想単色CT値が割り当てられていない。テンプレートマップ(第一の特性画像I2)の縦軸の画素数は、一例として、関心線を構成する画素数に比例するものとする。次に処理回路44は、関心線I13の各位置について、複数の仮想単色X線画像における同一位置の仮想単色CT値を特定する。各位置に複数の画素が含まれる場合、複数の画素の仮想単色CT値の平均値や最大値、最小値、中間値等の統計値が、当該位置の仮想単色CT値として特性される。そして処理回路44は、特定された仮想単色CT値を、テンプレートマップにおける対応画素に割り当てる。これにより第一の特性画像I12が生成される。第一の特性画像の表示のため、各画素に仮想単色CT値の他、当該仮想単色CT値に対応する階調度(濃度)が割り当てられてもよい。
【0049】
なお、第一の特性画像I2の縦軸の画素数は、関心線I13に沿う画素の個数に比例する必要はない。換言すれば、関心線I13上の1個の位置に対応する、第一の特性画像I2における画像領域の縦軸の画素数(トレース幅)は、任意の画素数に設定可能である。例えば、関心線I13上の各位置の長さ(関心線I13に沿う画素の個数)が異なる場合であっても、第一の特性画像I2の各位置のトレース幅を同一幅に規格化してもよい。
【0050】
図4に示すように、第一の特性画像I2は、関心線上の各位置における仮想単色エネルギーの変化に伴う仮想単色CT値の変化を表すことができる。具体的には、関心線上の位置RAについては、仮想単色エネルギー変化に依らず仮想単色CT値が一定である。関心線上の位置RBについては、仮想単色エネルギーが高くなるにつれて仮想単色CT値が下降するが次第に下降の程度は緩やかになる。関心線上の位置RCについては、仮想単色エネルギーが低くなるにつれて仮想単色CT値が上昇している。物質各々についての、仮想単色エネルギーの変化に伴う仮想単色CT値の変化は経験的知識として既知である。したがって、操作者等は、第一の特性画像I2を観察することにより、関心線上の各位置に存在する物質を推定することが可能である。
【0051】
ステップS3が行われると処理回路44は、特性画像生成機能444の実現により、第二の特性画像を生成する(ステップS4)。第二の特性画像は、関心線上の位置毎の仮想単色エネルギー変化に伴う仮想単色CT値のグラフである。処理回路44は、ステップS3において生成された第一の特性画像に基づいて第二の特性画像を生成する。
【0052】
図5は、
図4に示す第一の特性画像I2に基づく第二の特性画像I3の一例を示す図である。
図5に示すように、第二の特性画像I3は、関心線上の複数の位置にそれぞれ対応する複数のCT値変化曲線を表す2次元画像である。複数のCT値変化曲線各々は、横軸が仮想単色エネルギー[keV]に規定され、第二軸が仮想単色CT値に規定されたグラフに描画される。なお、
図5においては、位置RBに対応するCT値曲線と位置RCに対応するCT値変化曲線とが描画されている。
【0053】
第二の特性画像I3の生成手順は例えば以下の通りである。まず、処理回路44は、第一軸が仮想単色エネルギーに規定され、第二軸が仮想単色CT値に規定されたグラフを読み出す。当該グラフにはまだCT値変化曲線が割り当てられていない。次に処理回路44は、第一の特性画像における各位置について、仮想単色エネルギー毎の仮想単色CT値を特定する。そして処理回路44は、特定された仮想単色エネルギー毎の仮想単色CT値をグラフに割り当てる。第二の特性画像I3が生成される。なお、CT値変化曲線は、仮想単色エネルギー軸に関して移動平均処理された曲線でもよい。
【0054】
図5に示すように、第二の特性画像I3は、関心線上の各位置に対応する、仮想単色X線エネルギー変化に伴うCT値変化曲線をグラフ形式で表すことができる。具体的には、位置RBのCT値変化曲線は、仮想単色エネルギーが高くなるにつれて仮想単色CT値が下降していることを表し、位置RCのCT値変化曲線は、仮想単色エネルギーが低くなるにつれて仮想単色CT値が上昇していることを表している。したがって、操作者等は、第二の特性画像I3を観察することにより、関心線上の各位置に存在する物質を推定することが可能である。
【0055】
第二の特性画像は、第一の特性画像に比して、グラフ形式であるので、仮想単色X線エネルギー変化に伴う仮想単色CT値変化を直感的に把握することが可能である。一方、第一の特性画像は、第二の特性画像に比して、関心線軸と仮想単色エネルギー軸とで規定される2次元画像であるので、関心上の各位置相互の空間的な位置関係と共に、仮想単色X線エネルギー変化に伴う仮想単色CT値変化を把握することが可能である。
【0056】
ステップS4が行われると処理回路44は、表示制御機能445の実現により、第一の特性画像及び第二の特性画像を表示する(ステップS5)。ステップS5において処理回路44は、第一の特性画像及び第二の特性画像をディスプレイ42に表示する。処理回路44は、第一の特性画像及び第二の特性画像を並べて表示してもよいし、一枚ずつ順番に表示してもよい。第一の特性画像及び第二の特性画像を表示することにより、仮想単色エネルギーを使用した組成診断が可能になる。なお、処理回路44は、第一の特性画像及び第二の特性画像に加え、関心線が描画されたCT画像を表示してもよい。また、処理回路44は、第一の特性画像及び第二の特性画像の何れか一方のみを表示してもよい。
【0057】
本実施形態によれば、第一の特性画像及び/又は第二の特性画像を表示するのみにより、関心線における対象部位の仮想単色エネルギー変化に伴うCT値変化を視覚的に把握することができる。したがって、本実施形態によれば、対象部位に関する組成診断に関する操作者の手間や労力を、複数の仮想単色エネルギーに対応する複数の仮想単色X線画像を順番に切り替えて表示する画像送りに比して、削減することができる。
【0058】
ステップS5が行われると処理回路44は、貼付機能446の実現により、第一の特性画像及び第二の特性画像を読影レポートに貼付する(ステップS6)。読影レポートは、組成診断の対象部位について作成されることを想定する。読影レポートは、処理回路44による表示制御機能445の実現により、ディスプレイ42に表示される。
【0059】
図6は、読影レポートI4の一例を示す図である。
図6に示すように、読影レポートI4には、CT画像I41と所見欄I42とが含まれる。CT画像I41としては、対象部位の読影に有効であると判断された代表的な画像が選択される。一例として、
図3と同様、目的臓器である肝臓と対象部位である腫瘍とが描画されたCT画像I41が想定される。所見欄I42には、操作者等により所見が入力され表示される。一例として、「肝臓にがんの疑い」等の対象部位に関する所見文が入力及び表示される。
【0060】
図6に示すように、読影レポートI4には、ステップS2において関心線が設定されたCT画像I43、ステップS3において生成された第一の特性画像I44、ステップS4において生成された第二の特性画像I45が貼付される。CT画像I43、第一の特性画像I44及び第二の特性画像I45の貼付は、入力インターフェース43を介して操作者等の指示を介して行われるとよい。貼付されたCT画像I43、第一の特性画像I44及び第二の特性画像I45は、読影レポートI4に表示される。読影レポートI4にCT画像I43、第一の特性画像I44及び第二の特性画像I45が貼付されることにより、所見の根拠として機能するので、読影レポートI4の信頼性が向上し、測定結果の保管も容易になる。
【0061】
なお、読影レポートI4には、CT画像I43、第一の特性画像I44及び第二の特性画像I45の全てが貼付される必要はなく、第一の特性画像I44及び第二の特性画像I45の何れか一方が貼付されればよい。また、ステップS5における第一の特性画像I44及び/又は第二の特性画像I45の表示の代わりに、CT画像I43、第一の特性画像I44及び第二の特性画像I45が貼付された読影レポートI4が表示されてもよい。また、ステップS6における貼付処理は、読影レポートを作成しない場合等には行われる必要はない。
【0062】
ステップS6が行われると本実施形態に係る組成診断が終了する。
【0063】
図2に示す組成診断は一例であり、本実施形態の要旨を変更しない限り種々の追加、変更及び/又は削除が可能である。
【0064】
(変形例1)
変形例1に係る第一の特性画像は、関心線に含まれる複数の位置各々について、仮想単色CT値の変化が仮想単色エネルギーの変化に対して正の相関又は負の相関することを表現する。以下、変形例1について説明する。
【0065】
図7は、変形例1に係る第一の特性画像I5の一例を示す図である。
図7に示すように、第一の特性画像I5は、横軸が仮想単色エネルギー[keV]に規定され、縦軸が関心線上の位置に規定された2次元画像であり、各画素には仮想単色エネルギーの基準値I50に対応する仮想単色CT値に対する各仮想単色CT値の差、又は当該差に対応する階調値或いは色値が割り当てられる。第一の特性画像I5の仮想単色エネルギー特性は
図4に示す第一の特性画像I2の仮想単色エネルギー特性と同一であるとする。基準値I50は、如何なる仮想単色エネルギーに設定されてもよいが、一例として、臨床での使用可能性の高い20keV~160keVの中から設定されるとよい。本実施例において基準値I50は40keVに設定されたことを想定する。差が閾値以上且つ正の値であることは、仮想単色エネルギーの変化に対して仮想単色CT値の変化に正の相関があることを意味し、差が閾値以上且つ負の値であることは、仮想単色エネルギーの変化に対して仮想単色CT値の変化に負の相関があることを意味する。差が閾値未満であることは、仮想単色エネルギーの変化に対して仮想単色CT値の変化が無相関であることを意味する。
【0066】
処理回路44は、正の相関のある画素と負の相関のある画素とを視覚的に区別して表示する。具体的には、正の相関の画素には、例えば、青色の色値が割り当てられ、負の相関のある画素には、正の相関の画素に割り当てられた色値とは異なる色値、例えば、赤色の色値が割り当てられる。無相関の画素は、正の相関の画素及び負の相関の画素に割り当てられた色値とは異なる色値、例えば、灰色の色値が割り当てられるとよい。また、差の値に応じて色が濃くなるように色値が設定されてもよい。例えば、位置RBの基準値I50を下回る画像領域I51,I53は、
図5の位置RBのCT変化曲線と比較すれば分かる通り、負の相関であり、赤色で表示され、基準値I50を上回る画像領域I52,I54は、無相関であり、灰色で表示される。位置RCの画像領域I55は、
図5の位置RCのCT変化曲線と比較すれば分かる通り、正の相関であり、青色で表示される。
【0067】
このように変形例1によれば、仮想単色CT値の変化量をカラーコード化する。これにより操作者は、仮想単色CT値変化の相関を色で簡易に把握することが可能である。また、仮想単色CT値の変化量をカラーコード化するので、組織の組成を色で区別することが可能である。例えば、肝臓の組成診断において、赤色で表示されている部分は、ヨードすなわち腫瘍であり、青色で表示されている部分は、脂肪である等が分かる。また、正の相関と負の相関だけでなく、無相関の区域を設けることにより、相関の強い部分に着目することができる。また、無相関に属する部分の組成、例えば、肝実質であることを判断することも可能になる。
【0068】
(変形例2)
変形例2に係る第二の特性画像は、関心線に含まれる複数の位置にそれぞれ対応する複数のCT値変化曲線に加え、目的臓器に関する健常者の標準的なCT値変化曲線を含む。以下、変形例2について説明する。
【0069】
図8は、変形例2に係る第二の特性画像I6の一例を示す図である。
図8に示すように、第二の特性画像I6は、位置RBのCT値変化曲線と位置RCのCT値変化曲線に加え、健常者の目的臓器である肝臓の軟部組織である肝実質のCT値変化曲線が表示される。メモリ41には、予め収集された、健常者の複数の部位にそれぞれ対応する複数のCT値変化曲線を記憶しており、処理回路44は、操作者等による入力インターフェース43を介した指示に従い任意の部位に関する健常者のCT値変化曲線を選択して表示することができる。表示する健常者のCT値変化曲線は、一の部位に関するものに限定されず、二以上の部位に関するCT値変化曲線が表示されてもよい。このように、被検体のCT値変化曲線に加え、健常者のCT値変化曲線を表示することにより、目的臓器や対象部位を健常者との間で比較することが可能になる。
【0070】
(変形例3)
上記実施例において関心線の幅は一画素であるとした。変形例1に係る関心線の幅は複数画素に設定されるものとする。この場合、第一の特性画像の各画素には、関心線の幅方向の複数画素に割り当てられた複数仮想単色CT値の、最大値や最小値、平均値、中間値等の統計値が割り当てられるとよい。これによりノイズを低減することが可能である。なお、関心線の位置に依らずに幅は一定に設定されてもよいし、位置に応じて幅が異ならせて設定されてもよい。また、目的臓器や対象部位の種別及び/又は大きさに応じて関心線の幅が設定されてもよい。
【0071】
(変形例4)
上記実施例において関心線上の各位置は、解剖学的に区分された領域であるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。変形例4に係る関心線上の各位置は、関心線を構成する1画素又は複数画素に対応するものでもよい。
【0072】
(変形例5)
上記実施例において基準物質対は、脂肪、軟部組織及びヨードの3種類であるとしたが、本実施形態はこれに限定されない。基準物質対は、例えば、水とヨード等の2種類でもよい。2種類の基準物質画像からでも任意の仮想単色エネルギーに対応する仮想単色X線画像を生成可能であることが知られている。
【0073】
(変形例6)
上記実施例については肝臓がんを臨床例に挙げて説明したが、他の如何なる疾患について本実施形態は適用可能である。例えば、痛風の程度の診断に本実施形態は応用してもよい。痛風の程度の診断の場合、基準物質としては尿酸とカルシウムとが設定されるとよい。上記実施例と同様の手法により、第一の特性画像及び/又は第二の特性画像が生成されればよい。第一の特性画像や第二の特性画像における仮想単色エネルギー変化に伴うCT値変化を観察することにより、痛風の程度を把握できることが期待される。
【0074】
(変形例7)
上記実施例に係るスペクトラルCTは、デュアルエナジーCTであるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。変形例7に係るスペクトラルCTはフォトンカウンティングCTであるとする。以下、変形例7について説明する。
【0075】
フォトンカウンティングCTにおいては、任意の1種類の管電圧によるX線の照射が行われる。X線検出器12としては光子計数型のX線検出器が用いられる。DAS18は、複数のエネルギー・ビンにそれぞれ対応するX線フォトンのカウント値のデータをビュー毎に投影データとして収集する。エネルギー・ビンは、X線検出器12の各検出素子に入射するX線フォトンのエネルギー帯域を表し、仮想単色エネルギーに対応する。処理回路44は、再構成機能442の実現により、複数のエネルギー・ビンにそれぞれ対応する複数の投影データに基づいて、複数のエネルギー・ビンにそれぞれ対応する複数の仮想単色X線画像を再構成する。また、処理回路44は、複数のエネルギー・ビンにそれぞれ対応する複数の投影データに基づいて全エネルギー帯域に関する1個の投影データを生成し、当該投影データに基づいて多色X線画像を生成することも可能である。
【0076】
上記実施形態と同様、多色X線画像や仮想単色X線画像に対して関心線が設定され、複数のエネルギー・ビンにそれぞれ対応する複数の仮想単色X線画像に基づいて第一の特性画像及び/又は第二の特性画像が生成される。設定機能443による関心線の設定処理、特性画像生成機能444による特性画像の生成処理、表示制御機能445による表示処理、貼付機能446による貼付処理は、上記実施例と同様であるので、説明は省略する。
【0077】
(総括)
本実施形態に係る医用画像処理装置は、処理回路44を有する。処理回路44は、設定機能443の実現により、被検体に関するCT画像に組成診断対象を表す関心線を設定する。処理回路44は、特性画像生成機能444の実現により、関心線に含まれる複数の位置毎の仮想単色エネルギー変化に伴うCT値変化を表す特性画像を生成する。処理回路44は、表示制御機能445の実現により、特性画像をディスプレイ42に表示する。
【0078】
上記構成によれば、特性画像を観察することにより、CT画像に設定された関心線に対して仮想単色エネルギー特性を視覚的に評価することができる。よって画像送りをする場合に比して、組成診断の精度及び効率が向上する。
【0079】
ここで、本実施形態を、閉曲線で囲まれた画像領域(ROI)内の仮想単色エネルギー特性を評価する比較例に対して比較する。比較例において操作者は、定量性のある評価を行うために、ROIの位置及び大きさを一定に設定する必要があるが、それは困難である。ROIはある程度の大きさを有さざるを得ないので、微小な物体のみにROIを設定することはできず、ROIには微小物体とその周囲組織とが含まれてしまう。そのため、微小物体と周囲組織とで平均化された仮想単色エネルギー特性しか評価できず、微小物体の仮想単色エネルギー特性を正確に評価することはできない。また、ROIを境界部のみに設定することはできないので、境界部について仮想単色エネルギー特性を正確に評価することはできない。比較例に比して、本実施形態によれば、CT画像に対して直線又は曲線の関心線を設定するので、大きさを調整する必要がなく、定量性が勝ることが期待される。また、微小な物体に交差するように関心線を設定すればよいため、比較例に比して、微小な物体の仮想単色エネルギー特性を正確に評価することが可能になる。また、境界部に交差又は重なるように関心線を設定することにより、比較例に比して、境界部の仮想単色エネルギー特性を正確に評価することが可能になる。
【0080】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、仮想単色エネルギーを利用した組成診断の精度及び効率を向上することができる。
【0081】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
1 X線コンピュータ断層撮影装置
10 架台
11 X線管
12 X線検出器
13 回転フレーム
14 X線高電圧装置
15 制御装置
16 ウェッジ
17 コリメータ
18 データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)
19 開口部
30 寝台
31 基台
32 支持フレーム
33 天板
34 寝台駆動装置
40 医用画像処理装置(コンソール)
41 メモリ
42 ディスプレイ
43 入力インターフェース
44 処理回路
441 撮影制御機能
442 再構成機能
443 設定機能
444 特性画像生成機能
445 表示制御機能
446 貼付機能