(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066112
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240508BHJP
B05C 3/09 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01L21/30 563
B05C3/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175425
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】山本 滋
(72)【発明者】
【氏名】岩田 敬次
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】合田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】永井 泰彦
【テーマコード(参考)】
4F040
5F146
【Fターム(参考)】
4F040AA02
4F040AA12
4F040AB20
4F040CC14
4F040CC16
4F040CC18
5F146HA02
(57)【要約】
【課題】撥水化剤に由来する基板への悪影響を防止することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る基板処理装置1によれば、基板Wに撥水処理を施す際に、チャンバ3内に位置する処理槽11に向けて供給された撥水化剤蒸気は、処理槽11上部の開口部12aで収集され、排気口を介してチャンバ外に排出される。この様に構成すれば、撥水化剤蒸気がチャンバ3側壁に回り込むことがなく、チャンバ3側壁において撥水化剤残渣物が付着することがない。本発明によれば、撥水化剤残渣物が基板Wに悪影響を及ぼすことがなく、基板Wの清浄性を保つことができる基板処理装置1を提供することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板に対して撥水化処理と洗浄処理と乾燥処理とを連続して行う基板処理装置であって、
密閉可能なチャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、洗浄液を貯留する、上部が開口している処理槽と、
複数枚の基板を保持して、前記処理槽の内部位置と前記処理槽の上方位置との間で昇降移動するリフタと、
前記処理槽に貯留された前記洗浄液を排液する排液手段と、
前記処理槽内を減圧することにより、前記チャンバ内を排気する処理槽減圧手段と、
前記処理槽の上方位置にある基板に撥水化剤を供給する撥水化剤供給手段と、
前記複数枚の基板に対する一連の処理を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記複数枚の基板に対する撥水化処理の過程では、前記排液手段により前記処理槽内の処理液を排液し、続いて、前記処理槽減圧手段により前記処理槽内を減圧することにより、前記チャンバ内を排気しながら、前記撥水化剤供給手段により前記処理槽の上方位置にある基板に撥水化剤を供給する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記処理槽減圧手段は、
前記処理槽に形成された排気口と、前記排気口に一端が接続された配管と、前記配管に介在する開閉弁と、前記配管の他端に接続する減圧ポンプで構成されており、
前記制御手段は、前記撥水化剤供給手段により前記処理槽の上方位置にある基板に撥水化剤を供給する際、前記減圧ポンプによる減圧を行いながら、前記開閉弁を開状態とし、前記処理槽の上部開口から前記処理槽内に収集された撥水化剤を前記排気口から排出させる
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記排気口は、前記処理槽の底部に設けられている
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記チャンバ内に有機溶剤蒸気を供給する有機溶剤供給手段を更に備える
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記排気口は、前記処理槽に保持される液も通過させる
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
複数枚の基板に対して撥水化処理と洗浄処理と乾燥処理とを連続して行う基板処理方法であって、
前記撥水処理の過程は、
上部に複数枚の基板を導入する開口を有する処理槽内を減圧することにより、前記処理槽が設けられているチャンバ内を排気する処理槽減圧過程と、
前記処理槽減圧過程を実行しながら、前記処理槽の上部に位置する複数枚の基板に対して撥水化剤を供給する撥水化剤供給過程と、を備える
ことを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理方法において、
前記撥水化剤供給過程の後、前記処理槽を液で洗浄する処理槽洗浄過程を備える
ことを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
請求項6に記載の基板処理方法において、
前記撥水化剤供給過程の後、前記処理槽に有機溶剤を供給する有機溶剤供給過程を備える
ことを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、液晶表示用や有機EL(Electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の各種基板に所定の処理を行う基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、チャンバ内に収容される基板を処理する基板処理方法を開示する。基板処理方法は、基板を所定の液に浸漬させるための槽と、チャンバ内に不活性ガス、有機溶剤蒸気、撥水化剤蒸気を供給する吐出口と、チャンバ内を減圧する減圧部を備えている。特許文献1の開示によれば、減圧を行いながら撥水化剤蒸気をチャンバ内に供給する。この様にして基板表面の改質が行われる。撥水化剤蒸気の供給によって基板表面に付着する撥水化剤の残渣物は、後の過程において基板が希釈有機溶剤に浸漬されることで除去され、基板に悪影響を及ぼさない構成となっている。
【0003】
特許文献2も、特許文献1と同様の基板処理方法を開示する。特許文献2の基板処理方法もチャンバ内を減圧しながら撥水化剤蒸気を供給する過程を備えている。減圧を行いながらながら撥水化剤を供給する効果としては、撥水化剤を蒸気の状態でチャンバ内に供給することが容易となることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-27089号公報
【特許文献2】特開2018-56155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の構成によれば、撥水化剤が及ぼす基板への悪影響を十分に防止することができないという問題がある。すなわち、撥水化剤蒸気がチャンバ内に供給された際、撥水化剤残渣物は、基板表面のみならずチャンバの内壁にも付着する。チャンバの内壁であっても、チャンバの底部に当たる部分は、希釈有機溶剤がチャンバ内に溜められる際に希釈有機溶剤の液面下に位置する。したがって、この部分に付着した撥水化剤残渣物は除去される。しかし、チャンバの内壁におけるそれ以外の部分には、撥水化剤残渣物が残留し、これが基板に対して悪影響を及ぼすことがある。
【0006】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、撥水化剤に由来する基板への悪影響を防止することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、この様な目的を達成するために次の様な構成をとる。
【0008】
複数枚の基板に対して撥水化処理と洗浄処理と乾燥処理とを連続して行う基板処理装置であって、密閉可能なチャンバと、前記チャンバ内に設けられ、洗浄液を貯留する、上部が開口している処理槽と、複数枚の基板を保持して、前記処理槽の内部位置と前記処理槽の上方位置との間で昇降移動するリフタと、前記処理槽に貯留された前記洗浄液を排液する排液手段と、前記処理槽内を減圧することにより、前記チャンバ内を排気する処理槽減圧手段と、前記処理槽の上方位置にある基板に撥水化剤を供給する撥水化剤供給手段と、前記複数枚の基板に対する一連の処理を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記複数枚の基板に対する撥水化処理の過程では、前記排液手段により前記処理槽内の処理液を排液し、続いて、前記処理槽減圧手段により前記処理槽内を減圧することにより、前記チャンバ内を排気しながら、前記撥水化剤供給手段により前記処理槽の上方位置にある基板に撥水化剤を供給することを特徴とする基板処理装置。
【0009】
[作用・効果]上述した(1)に記載の基板処理装置は、複数枚の基板に対する撥水化処理の過程において、排液手段により処理槽内の処理液を排液して処理槽内を空にし、続いて、処理槽減圧手段により処理槽内を減圧することにより、チャンバ内を排気しながら、撥水化剤供給手段により処理槽の上方位置にある基板に撥水化剤蒸気を供給する。つまり、本発明に係る基板処理装置における撥水化剤蒸気は、処理槽の開口を通過して処理槽内に至るという雰囲気の流れに乗って流動する。この様に構成すれば、撥水化剤蒸気がチャンバ内に供給された際、撥水化剤残渣物がチャンバの内壁に付着することが軽減される。撥水化剤蒸気は、処理槽に収集され、処理槽外壁とチャンバ内壁の間の空間に回り込むことができないからである。本発明によれば、チャンバ内において撥水化剤残渣物の残留し、これが基板に対して悪影響を及ぼすことが軽減される。
【0010】
本発明は以下のような特徴も有している。
【0011】
(2)(1)に記載の基板処理装置において、前記処理槽減圧手段は、前記処理槽に形成された排気口と、前記排気口に一端が接続された配管と、前記配管に介在する開閉弁と、前記配管の他端に接続する減圧ポンプで構成されており、前記制御手段は、前記撥水化剤供給手段により前記処理槽の上方位置にある基板に撥水化剤を供給する際、前記減圧ポンプによる減圧を行いながら、前記開閉弁を開状態とし、前記処理槽の上部開口から前記処理槽内に収集された撥水化剤を前記排気口から排出させることを特徴とする基板処理装置。
【0012】
[作用・効果](2)のように、処理槽内の雰囲気を通過させる排気口を処理槽に設けるようにすれば、減圧状態の処理槽から処理槽外に抜ける雰囲気の流れを作ることができるので、撥水化剤蒸気が処理槽外壁とチャンバ内壁の間の空間に回り込むことが確実に防止できる。
【0013】
(3)(2)に記載の基板処理装置において、前記排気口は、前記処理槽の底部に設けられていることを特徴とする基板処理装置。
【0014】
[作用・効果](3)のように、前記排気口が前記処理槽の底部に設けられていれば、処理槽内の雰囲気を処理槽の上から下に通過させる気流が発生するので、処理槽上部の雰囲気をより確実に処理槽に収集させることができる。
【0015】
(4)(1)に記載の基板処理装置において、前記チャンバ内に有機溶剤蒸気を供給する有機溶剤供給手段を更に備えることを特徴とする基板処理装置。
【0016】
[作用・効果](4)のように、チャンバ内に有機溶剤蒸気を供給する構成としても、有機溶剤と撥水化剤とが反応してできるパーティクルにより基板の清浄性に悪影響が生じることが軽減される。本発明によれば、チャンバの内壁に撥水化剤が残存することが軽減されているからである。
【0017】
(5)(2)に記載の基板処理装置において、前記排気口は、前記処理槽に保持される液も通過させることを特徴とする基板処理装置。
【0018】
[作用・効果](5)のように排気口に排液口としての機能を持たせる構成とすれば、処理槽から液を排出させるための排液口を排気口とは別に設ける必要がなくなる。当該構成によれば、装置構成をより簡略なものとし、製造およびメンテナンスがし易い基板処理装置が提供できる。
【0019】
(6)複数枚の基板に対して撥水化処理と洗浄処理と乾燥処理とを連続して行う基板処理方法であって、前記撥水処理の過程は、上部に複数枚の基板を導入する開口を有する処理槽内を減圧することにより、前記処理槽が設けられているチャンバ内を排気する処理槽減圧過程と、前記処理槽減圧過程を実行しながら、前記処理槽の上部に位置する複数枚の基板に対して撥水化剤を供給する撥水化剤供給過程と、を備えることを特徴とする基板処理方法。
【0020】
[作用・効果](6)に係る基板処理方法によれば、上部に複数枚の基板を導入する開口を有する処理槽内における雰囲気の吸引を開始する吸引開始過程と、吸引操作の最中に、処理槽の上部から撥水化剤蒸気を供給する撥水化剤供給過程と、を備える。本発明に係る撥水化剤蒸気は、処理槽の開口に収集されてチャンバ外に排出される。この様に構成すれば、撥水化剤蒸気がチャンバ内に供給された際、撥水化剤残渣物がチャンバの内壁に付着することが軽減される。撥水化剤蒸気は、処理槽に収集され、処理槽外壁とチャンバ内壁の間の空間に回り込むことができないからである。本発明によれば、チャンバ内において撥水化剤残渣物の残留し、これが基板に対して悪影響を及ぼすことが軽減される。
【0021】
(7)(6)に記載の基板処理方法において、前記撥水化剤供給過程の後、前記処理槽を液で洗浄する洗浄過程を備えることを特徴とする基板処理方法。
【0022】
[作用・効果](7)に係る基板処理方法は、撥水化剤供給過程の後、処理槽を液で洗浄する洗浄過程を備える。この様にすれば、基板の清浄性を更に高めることができる。
【0023】
(8)(6)に記載の基板処理方法において、前記撥水化剤供給過程の後、前記処理槽に有機溶剤を供給する有機溶剤供給過程を備えることを特徴とする基板処理方法。
【0024】
[作用・効果](8)に係る基板処理方法は、前記撥水化剤供給過程の後、前記処理槽に有機溶剤を供給する有機溶剤供給過程を備える。このような構成としても、有機溶剤と撥水化剤とが反応してできるパーティクルにより基板の清浄性に悪影響が生じることがない。本発明によれば、チャンバの内壁に撥水化剤が残存することがないからである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る基板処理装置によれば、基板に撥水処理を施す際に、チャンバ内に位置する処理槽に向けて供給された撥水化剤蒸気は、処理槽上部の開口で収集されてチャンバ外に排出される。この様に構成すれば、撥水化剤蒸気が処理槽外壁やチャンバ側壁に回り込むことがなく、処理槽外壁やチャンバ側壁において撥水化剤残渣物が付着することがない。本発明によれば、撥水化剤残渣物が基板に悪影響を及ぼすことがなく、基板の清浄性を保つことができる基板処理装置を提供することができる。また、本発明に係る基板処理方法によれば、撥水化剤蒸気は、処理槽の開口に収集されて排出される。この様に構成すれば、撥水化剤蒸気がチャンバ内に供給された際、撥水化剤残渣物がチャンバの側壁に付着することがない。撥水化剤蒸気は、処理槽に収集され、処理槽外壁とチャンバ内壁の間の空間に回り込むことができないからである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例に係る基板処理装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【
図2】実施例に係る基板処理を説明するフローチャートである。
【
図3】実施例に係る基板処理を具体的に説明する模式図である。
【
図4】実施例に係る基板処理を具体的に説明する模式図である。
【
図5】実施例に係る基板処理を具体的に説明する模式図である。
【
図6】実施例に係る基板処理を具体的に説明する模式図である。
【
図7】実施例に係る基板処理を具体的に説明する模式図である。
【
図8】実施例に係る基板処理を具体的に説明する模式図である。
【
図9】実施例に係る基板処理を具体的に説明する模式図である。
【
図10】実施例の構成における効果を説明する図である。
【
図11】本発明の1変形例を説明する模式図である。
【
図12】本発明の1変形例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。本発明の基板処理装置は、 複数枚の基板に対して撥水化処理と洗浄処理と乾燥処理とを連続して行うバッチ処理に関している。本発明の基板処理は、例えば、基板表面に回路を形成してデバイスを生産する過程の一部である。なお、本明細書における液体純水(純水),液体有機溶剤、不活性ガス、有機溶剤蒸気、および撥水化剤蒸気等の純度は、基板処理に影響を与えない程度に高い。純水、液体有機溶剤は、本発明の洗浄液の一例である。
【実施例0028】
<1.基板処理装置の概要>
図1は、実施例に係る基板処理装置1の概要を示す模式図である。本例の基板処理装置1は、ロットを構成する複数枚の基板Wに対して同一の基板処理を一括して行うことで、基板処理のスループットを高めている。本例のロットとは、円盤状の基板Wが基板Wの厚み方向に所定間隔を空けて配列されて構成される。本例に係る基板処理の具体例としては、基板の撥水化処理、洗浄処理、乾燥処理である。
【0029】
基板Wは、表面に回路パターンを有する。回路パターンは、基板Wの一面側(表側)に形成されている。基板Wにおける回路パターンが設けられている面はデバイス面とよばれる。
【0030】
基板処理装置1は、ロットを収納可能なチャンバ3を備えている。基板処理装置1で種々の基板処理を実行する際には、ロットは、チャンバ3に収納され、チャンバ3内の空間において処理を受ける。チャンバ3の上端は開口部となっており、この開口部を通じてロットをチャンバ3に収納したり、チャンバ3から取り出したりすることができる。チャンバ3には開口部を閉塞可能な扉2が設けられている。扉2は、チャンバ3にロットを出入りさせるときには、開状態となり、ロットに基板処理を施すときには閉状態となる。扉2が開状態となると、チャンバ3の内部は外部と連通する。扉2が閉状態となると、チャンバ3の内部は、密閉状態となる。従って、ロットに対する基板処理は、密閉状態のチャンバ3内で行われる。
【0031】
チャンバ3の内空間における下部には、液体を保持可能な処理槽11が備えられている。処理槽11は、上方に開放されており、上部に開口部12aを有している。この開口部12aを通じてロットを処理槽11内に位置させたり、処理槽11から取り出したりすることができる。処理槽11は、本発明の処理槽に相当する。
【0032】
処理槽11内の雰囲気を排出する処理槽減圧ユニット40の構成について説明する。処理槽11の底部には、処理槽11内を減圧するときに用いられる処理槽排気口42が設けられている。処理槽排気口42は、配管43を通じて排気弁44に接続されており、排気弁44を制御することで処理槽排気口42を通じた気体の通過を許容したり禁止したりすることができる。排気弁44の下流には、処理槽11内を減圧するための減圧ポンプ45が設けられている。排気弁44が開の状態で減圧ポンプ45が作動すると、処理槽11内の雰囲気が処理槽排気口42を通じてチャンバ3外に排出されるという気体の流れが発生する。なお、処理槽11が液を保持する際には、排気弁44は、閉状態であり、減圧ポンプ45が槽内を減圧しない。処理槽排気口42は、本発明の排気口に相当する。排気弁44は、本発明の開閉弁に相当する。減圧ポンプ45は、本発明の減圧手段に相当する。
【0033】
処理槽11内の洗浄液を排液する排液ユニット50の構成について説明する。処理槽11の底部には、処理槽11内の処理液を排出するための処理槽排液口52が設けられている。処理槽排液口52は、配管53を通じて排液弁54に接続されており、排液弁54を制御することで処理槽排液口52を通じた処理液の通過を許容したり禁止したりすることができる。排液弁54の下流には、液体を処理槽11から排出させる排液ポンプ55が設けられている。排液弁54が開の状態で排液ポンプ55が作動すると、処理槽11内の液体が処理槽排液口52を通じてチャンバ3外に排出される。なお、処理槽11が液を保持する際には、排液弁54は、閉状態であり、排液ポンプ55が槽内の液体を排出しない。処理槽排液口52は、処理槽11に保持される液体の全てを排出することができる様に処理槽11の最深部に設けられている。
【0034】
処理槽11の底部には、処理槽11内の液体をチャンバ3の底部に排出する連絡口72が設けられている。従って、処理槽11に保持された液体は、上述の処理槽排液口52から処理槽11外に排出される場合と、当該連絡口72から処理槽11外に排出される場合とがある。連絡口72は、処理槽11底部において、処理槽11内の液体の全てを排出することが可能な最深部に設けられている。連絡口72は、処理槽11の外側に向かって延びる通路71に連通している。通路71における排出側の端部には、排液弁74が設けられている。従って排液弁74は、処理槽11とチャンバ3底部との間に存する空間に設けられている。処理槽11に液体を保持するときには、排液弁74は閉状態とされる。一方、処理槽11に保持されている液体を処理槽11から速やかに排出させるときには、排液弁74は開状態とされる。また、上述の排気弁44が開状態となるときには、排液弁74は、閉状態にされる。
【0035】
チャンバ3の内空間における上部には、複数枚の基板W(ロット)を保持するリフタ13が設けられている。リフタ13は、ロットを構成する各基板Wを略鉛直姿勢で保持する。したがって、リフタ13は、鉛直姿勢の基板Wを基板Wの厚み方向X(水平方向:鉛直方向Zと直交する方向)に配列した状態で保持する。ちなみに、
図1においては、方向Xおよび方向Zのいずれにも直交する方向を方向Yと説明している。
【0036】
チャンバ3には、リフタ13を昇降させる昇降機構15が備えられている。従って、昇降機構15を制御すれば、処理槽11上のロットを処理槽11内に取り込んだりすることができる。すなわち、本例では、リフタ13を上昇させてロットを処理槽11上に設定された第1位置P1に待機させることもできれば、リフタ13を下降させてロットを処理槽11内に設定された第2位置P2に置くこともできる。第1位置P1にあるロットを構成する基板Wは、全域が液体を保持する処理槽11の上部に位置する(全域が処理槽11における液面の上部に位置する)。第2位置P2にあるロットを構成する基板Wは、全域が液体を保持する処理槽11の内部に位置する(全域が処理槽11における液面の下部に位置する)。このように、リフタ13は、複数枚の基板Wを保持して、処理槽11の内部位置(第2位置P2)と処理槽11の上方位置(第1位置P1)との間で昇降移動する。
【0037】
基板処理装置1は、チャンバ3にガス、所定の蒸気を供給する複数の気体供給ユニットを備える。このうち、気体供給ユニット21は、基板表面の撥水化に係る撥水化剤蒸気をチャンバ3の内部空間に供給する。一方、気体供給ユニット31は、有機溶剤蒸気、不活性ガスをチャンバ3の内部空間に供給する。有機溶剤は、基板Wの濡れ性を維持できるものでよく、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)である。不活性ガスは、反応性に乏しい気体であればよく、例えば窒素ガスである。気体供給ユニット31は、本発明の有機溶剤供給手段に相当する。
【0038】
実施例に係る撥水化剤としては、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)などのアルキルジシラザン(シリルアミン類)や、フッ化アルキルクロロシランなどのフッ化物が挙げられる。すなわち、本例に用いることができる撥水化剤は、シリコン系撥水剤など基板Wに対して蒸気として供給できるものであればよい。本例の撥水化処理は、基板W表面の改質を可能とすれば十分であり、必ずしも撥水膜を基板W上に生成させる必要はない。
【0039】
基板処理装置1は、チャンバ3内の処理槽11に液体を供給する液体供給ユニット61を備える。液体供給ユニット61は、純水や液体の有機溶剤、水で希釈された有機溶剤などの溶液を処理槽11に供給可能である。
【0040】
チャンバ3の内壁には、チャンバ3内部の圧力を検出する圧力センサ89が備えられる。圧力センサ89は、通路71を通じて処理槽11から排出された液が保持されるチャンバ3の底部を避けて設けられている。圧力センサ89が出力する検出信号は、チャンバ3内の圧力を所定のものとするときに各種弁の開度を調整するのに用いられる。
【0041】
チャンバ3の側壁には、チャンバ3内を減圧するチャンバ排気口82と、チャンバ排気口82に配管81を通じて接続された減圧ポンプ85を備えている。チャンバ排気口82は、通路71を通じて処理槽11から排出された液が保持されるチャンバ3の底部を避けて設けられている。調整弁84は、配管81の中途に設けられており、チャンバ3底部に液が保持される場合や、処理槽排気口42を通じてチャンバ3内の減圧を行う場合には、閉状態となる。チャンバ3内を大気圧に保つ場合や、処理槽11が液を保持している状態でチャンバ3内を減圧する場合は、調整弁84が開状態となる。
【0042】
その他、チャンバ3は、チャンバ3底部に保持された液体をチャンバ3外に排出するためのチャンバ排液口92を備える。チャンバ排液口92は、配管93を通じてドレイン弁94に接続されている。チャンバ排液口92は、チャンバ3底部において、チャンバ3内の液体の全てを排出することが可能な最深部に設けられている。チャンバ3底部に保持された液体をチャンバ3外に排出する場合、ドレイン弁94は、開状態となり、それ以外の場合は閉状態となる。配管93は、更にドレイン弁94と上述の排液ポンプ55とを接続する構成となっている。従って、排液ポンプ55は、処理槽11またはチャンバ3底部より処理液を吸引することで排液を促す構成である。
【0043】
そして、チャンバ3は、弁の各々、扉2,昇降機構15,減圧ポンプ45,排液ポンプ55,減圧ポンプ85等を制御するCPU(Central Processing Unit)101と、制御に必要な各種情報を記憶する記憶部102を備えている。CPU101の具体的構成は、特に限定されない。例えば、チャンバ3に1つのCPU101を備えるようにしてもよいし、制御の対象ごとに複数のCPU101を設けるようにしてもよい。また、チャンバ3の動作に必要な制御の一部を一括して実現するCPU101を複数設けるようにしてもよい。記憶部102の具体的構成もCPU101と同様、特に限定されない。
【0044】
以降、各供給ユニットの具体的構成について説明する。撥水化剤蒸気をチャンバ3内に供給する気体供給ユニット21は、チャンバ3内に配置される吐出部22を有している。吐出部22は、処理槽11の上部に設けられており、撥水化剤蒸気を吐出する構成である。吐出部22は、第1位置P1に位置する基板Wの右側と左側の両側に設けられており、気体供給ユニット21は、チャンバ3内の空間における中心に向けて2箇所の吐出部22から左右同時に撥水化剤蒸気を噴出する構成となっている。吐出部22は、複数の吐出口が設けられた管状の形状をしており、吐出部22は、実際には複数の吐出口の各々から撥水化剤蒸気を噴出する。つまり、気体供給ユニット21は、処理槽11の上方位置(第1位置P1)にある基板Wに撥水化剤蒸気を供給する構成である。
【0045】
気体供給ユニット21は、吐出部22に撥水化剤蒸気を供給する配管23と、撥水化剤蒸気の噴出量を制御する弁24を備えている。そして、撥水化剤蒸気供給源25は、撥水化剤を貯留する貯留部と、撥水化剤を気化させる気化部を備えている。配管23は、吐出部22の上流に設けられた弁24と、弁24の更に上流に設けられた撥水化剤蒸気供給源25の間に設けられており、撥水化剤蒸気を撥水化剤蒸気供給源25から弁24を通じて吐出部22まで通過させる。弁24が開状態となると、撥水化剤蒸気が配管23を通じて流れ、吐出部22から噴出される。弁24が閉状態となると、撥水化剤蒸気の流れは弁24によりせき止められて吐出部22に至らない。
【0046】
不活性ガス等をチャンバ3内に供給する気体供給ユニット31の構造について説明する。気体供給ユニット31は、チャンバ3内に配置される吐出部32を有している。吐出部32は、処理槽11の上部に設けられており、不活性ガスまたは有機溶剤蒸気を吐出する構成である。吐出部32は、気体供給ユニット21の吐出部22と同様、第1位置P1に位置する基板Wの右側と左側の両側に設けられている。気体供給ユニット31は、チャンバ3内の空間における中心に向けて2箇所の吐出部32から左右同時に不活性ガスまたは有機溶剤蒸気を噴出する構成となっている。なお、吐出部32は、吐出部22と同様、気体を基板Wに向けて噴出する複数の吐出口が設けられた管状の形状をしており、基板Wの右側と左側から気体を同時に噴出する構成である。
【0047】
気体供給ユニット31は、吐出部32に不活性ガスを供給する不活性ガス供給モジュール31aと、吐出部32に有機溶剤蒸気を供給する有機溶剤蒸気供給モジュール31bを備えている。不活性ガス供給モジュール31aは、吐出部32に不活性ガスを供給する配管33aと、不活性ガスの噴出量を制御する弁34aを備えている。そして、不活性ガス供給源35aは、液化不活性ガスを貯留するガスタンクを有している。配管33aは、吐出部32の上流に設けられた弁34aと、弁34aの更に上流に設けられた不活性ガス供給源35aの間に設けられており、不活性ガスを不活性ガス供給源35aから弁34aを通じて吐出部32まで通過させる。弁34aが開状態となると、不活性ガスが配管33aを通じて流れ、吐出部32から噴出される。弁34aが閉状態となると、不活性ガスの流れは弁34aによりせき止められて吐出部32に至らない。
【0048】
気体供給ユニット31が有する有機溶剤蒸気供給モジュール31bは、不活性ガス供給モジュール31aと同様の構成をしている。すなわち、有機溶剤蒸気供給モジュール31bは、吐出部32に有機溶剤蒸気を供給する配管33bと、有機溶剤蒸気の噴出量を制御する弁34bを備えている。そして、有機溶剤蒸気供給源35bは、液体の有機溶剤を貯留する貯留部と、当該有機溶剤を気化させる気化部を有している。配管33bは、吐出部32の上流に設けられた弁34bと、弁34bの更に上流に設けられた有機溶剤蒸気供給源35bの間に設けられており、有機溶剤蒸気を有機溶剤蒸気供給源35bから弁34bを通じて吐出部32まで通過させる。弁34bが開状態となると、有機溶剤蒸気が配管33bを通じて流れ、吐出部32から噴出される。弁34bが閉状態となると、有機溶剤蒸気の流れは弁34bによりせき止められて吐出部32に至らない。
【0049】
このように、気体供給ユニット31は、吐出部32を共有する不活性ガス供給モジュール31aと、有機溶剤蒸気供給モジュール31bとを備えている。吐出部32からは、不活性ガス供給モジュール31aに由来する不活性ガス、または有機溶剤蒸気供給モジュール31bに由来する有機溶剤蒸気を噴出可能である。吐出部32から不活性ガスを噴出させるときは、不活性ガス供給モジュール31aが有する弁34aが開状態とされ、有機溶剤蒸気供給モジュール31bが有する弁34bが閉状態とされる。一方、吐出部32から有機溶剤蒸気を噴出させるときは、不活性ガス供給モジュール31aが有する弁34aが閉状態とされ、有機溶剤蒸気供給モジュール31bが有する弁34bが開状態とされる。
【0050】
続いて、処理槽11に液体を供給する液体供給ユニット61について説明する。液体供給ユニット61は、処理槽11内に配置された処理液供給口62を有する。処理液供給口62は、純水、液体の有機溶剤を処理槽11に吐出する。液体供給ユニット61は、処理液供給口62に純水を供給する純水供給モジュール61aと、処理液供給口62に液体有機溶剤を供給する液体有機溶剤供給モジュール61bを備えている。純水供給モジュール61aは、処理液供給口62に純水を供給する配管63aと、純水の放出量を制御する弁64aを備えている。そして、純水供給源65aは、純水を貯留するタンクを有している。配管63aは、処理液供給口62の上流に設けられた弁64aと、弁64aの更に上流に設けられた純水供給源65aの間に設けられており、純水を純水供給源65aから弁64aを通じて処理液供給口62まで通過させる。弁64aが開状態となると、純水が配管63aを通じて流れ、処理液供給口62から放出される。弁64aが閉状態となると、純水の流れは弁64aによりせき止められて処理液供給口62に至らない。
【0051】
液体供給ユニット61が有する液体有機溶剤供給モジュール61bは、純水供給モジュール61aと同様の構成をしている。すなわち、液体有機溶剤供給モジュール61bは、処理液供給口62に液体有機溶剤を供給する配管63bと、液体有機溶剤の放出量を制御する弁64bを備えている。そして、液体有機溶剤供給源65bは、液体の有機溶剤を貯留する貯留部を有している。配管63bは、処理液供給口62の上流に設けられた弁64bと、弁64bの更に上流に設けられた液体有機溶剤供給源65bの間に設けられており、液体有機溶剤を液体有機溶剤供給源65bから弁64bを通じて処理液供給口62まで通過させる。弁64bが開状態となると、液体有機溶剤が配管63bを通じて流れ、処理液供給口62から放出される。弁64bが閉状態となると、液体有機溶剤の流れは弁64bによりせき止められて処理液供給口62に至らない。
【0052】
このように、液体供給ユニット61は、処理液供給口62を共有する純水供給モジュール61aと、液体有機溶剤供給モジュール61bとを備えている。処理液供給口62からは、純水供給モジュール61aに由来する純水、または液体有機溶剤供給モジュール61bに由来する液体有機溶剤を放出可能である。処理液供給口62から純水を放出させるときは、純水供給モジュール61aが有する弁64aが開状態とされ、液体有機溶剤供給モジュール61bが有する弁64bが閉状態とされる。一方、処理液供給口62から液体有機溶剤を放出させるときは、純水供給モジュール61aが有する弁64aが閉状態とされ、液体有機溶剤供給モジュール61bが有する弁64bが開状態とされる。
【0053】
実施例では、気体供給ユニット31に液体の有機溶剤の貯留に係る貯留部とは別に液体供給ユニット61に液体の有機溶剤の貯留に係る貯留部が設けられていたが、同様の貯留部を気体供給ユニット31と液体供給ユニット61とで共有する構成としてもよい。
【0054】
<基板処理の流れ>
以降、
図2に係るフローチャートを参照しながら実施例に係る基板処理装置1を用いた基板処理について具体的に説明する。本例の基板処理は、第2位置P2においてリフタ13に支持されたロットに対して種々の基板処理を行う構成である。処理槽11には、純水が保持されているものとし、扉2は閉状態となっているものとする。このときのチャンバ3内の圧力は大気圧である。
【0055】
ステップS1:まず、気体供給ユニット31によりチャンバ3内に不活性ガスが供給される。このとき、チャンバ3の下側に位置するチャンバ排気口82を介してチャンバ3内が減圧され、チャンバ3内が減圧状態となる。この様な状態を維持すると、チャンバ3内の空気は速やかに不活性ガスに置き換わる。こうして、空気に含まれる酸素などの反応性に富むガスがチャンバ3外に排気され、本ステップに続く各種基板処理を行う前に必要な準備が完了する。なお、次のステップS2では、チャンバ3内に有機溶剤蒸気が供給される。本ステップでは、その前にチャンバ3内を減圧しておくことで、チャンバ3内の不活性ガスを希薄なものとし、チャンバ3内の不活性ガスが速やかに有機溶剤蒸気に置き換わるようにしている。チャンバ3内を減圧にすることで有機溶剤蒸気が供給される前に不活性ガスの一部が既にチャンバ3から追い出されていると捉えることもできる。
【0056】
なお、本ステップにおいて、チャンバ3に供給された不活性ガスは、処理槽11を回り込むように流れ、チャンバ排気口82に至る。不活性ガスは、チャンバ排気口82からチャンバ3外に排出される。
図3(a)は、本ステップにおける気体の流れを説明している。
【0057】
ステップS2:続いて、液体供給ユニット61を通じて処理槽11に液体の有機溶剤を供給しつつ、処理槽排液口52から処理槽11内の純水を排出する。この動作により、処理槽11に保持された純水は次第に液体有機溶剤に置き換わる。したがって、第2位置P2上のロットは、有機溶剤に浸漬されることになる。また、本ステップにおいては、気体供給ユニット31によりチャンバ3内に有機溶剤蒸気が供給される。このとき、チャンバ3の下側に位置するチャンバ排気口82を介してチャンバ3内が減圧され、チャンバ3内が減圧状態となる。この様な状態を維持すると、上述のステップS1で説明した原理によりチャンバ3内の不活性ガスは速やかに有機溶剤蒸気に置き換わる。こうして、ロットを構成する各基板Wは、濡れ性が確実に維持される状態となる。
図3(b)は、本ステップにおける気体および液体の流れを説明している。
【0058】
ステップS3:第2位置P2に位置するロットは、リフタ13により、第2位置P2から上昇して第1位置P1に至る。この状態で排液弁74が開状態となると、処理槽11に保持されていた液体有機溶剤は、速やかにチャンバ3の底部へと流出し、そこで保持される。その一方で、気体供給ユニット31から有機溶剤蒸気が供給される。このとき減圧ポンプ45は作動していないので、有機溶剤蒸気は、供給された量だけ自ずとチャンバ排気口82を通じてチャンバ3外に排出される。従って、本ステップにおけるチャンバ3内の圧力は大気圧に等しい。従って、処理槽11に保持された液体有機溶剤は、気相による吸引を受けず速やかに処理槽11外に排出される。本ステップは、次のステップS4を行うための準備である。すなわち、ステップS4では、処理槽11底部に位置する処理槽排気口42を通じた減圧が行われるが、この動作を行うのに処理槽11に保持される液体の有機溶剤が妨げとなる。本ステップは、処理槽11を空の状態にすることで、処理槽排気口42から処理槽11内を減圧することを可能としている。
図4(a)は、本ステップにおける気体の流れを説明している。
【0059】
ステップS4:処理槽排気口42を通じて処理槽11内の減圧排気が開始される。処理槽11内を減圧排気すると、チャンバ3内も減圧状態となる。その結果、チャンバ3内の雰囲気は、処理槽11上部の開口部12aから処理槽11内に取り入れられて、処理槽排気口42に至る。このように、処理槽減圧ユニット40は、洗浄液が排液されて空になった処理槽11内を減圧することにより、チャンバ3内を排気する。
【0060】
ステップS5:処理槽11内の減圧排気が継続された状態で、気体供給ユニット21より撥水化剤蒸気がチャンバ3内に供給される。このときのチャンバ3内は減圧状態である。従って、処理槽11内の雰囲気は、ステップS1に係る減圧操作と同じ原理により、速やかに有機溶剤蒸気から撥水化剤蒸気に置き換わる。気体供給ユニット21より供給された撥水化剤蒸気は、処理槽11内の減圧排気に伴う気体の流れに乗ってチャンバ3外に排気される。従って、チャンバ3内に供給された撥水化剤蒸気は、処理槽11の開口部12aに収集される。この様にすると、チャンバ排気口82から撥水化剤蒸気を吸引する構成よりも、パーティクルが基板Wに影響を及ぼさないようにすることができる。チャンバ排気口82から撥水化剤蒸気を吸引した場合、撥水化剤蒸気は、処理槽11の開口部12aに収集されることなく処理槽11側壁とチャンバ3側壁との間に位置する空間まで回り込む。すると、チャンバ3の側壁および処理槽11の外壁に撥水化剤が付着し、将来この部分でパーティクルが発生することになる。本ステップによれば、チャンバ3の側壁および処理槽11の外壁に撥水化剤が付着することが防止されているので、当該部分でパーティクルが発生することがない。そして、撥水化剤蒸気に曝露された基板Wの各々は、親水性であった表面が疎水性となり、基板表面が改質される。
【0061】
なお、本ステップにおいては、気体供給ユニット31からは、不活性ガスが噴出される。このときの不活性ガスの流れる速度は、ステップS1における不活性ガスの噴出速度よりも低い。この様に気体供給ユニット31から不活性ガスを弱く噴出させることで、気体供給ユニット31にチャンバ3内の撥水化剤蒸気が逆流して生じる悪影響が出ない。撥水化剤蒸気と有機溶剤は、反応してパーティクルを生じさせる。吐出部32から不活性ガスを噴出させるようにすれば、基板Wの清浄化に悪影響を及ぼすパーティクルが気体供給ユニット31の配管内で生じない。
図4(b)は、ステップS4,ステップS5における気体の流れを説明している。
【0062】
ステップS6:処理槽排気口42を通じて処理槽11内における減圧が継続された状態で、チャンバ3内に有機溶剤蒸気が供給される。処理槽11内を減圧すると、チャンバ3内が減圧状態となる。従って、処理槽11内の雰囲気は、ステップS1に係る減圧操作と同じ原理により、速やかに撥水化剤蒸気から有機溶剤蒸気に置き換わる。気体供給ユニット31より供給された有機溶剤蒸気は、処理槽11の開口から処理槽排気口42に向かう雰囲気の流れに乗ってチャンバ3外に排気される。従って、チャンバ3内に供給された有機溶剤蒸気は、処理槽11の開口部12aに収集されて処理槽11側壁とチャンバ3側壁との間に位置する空間まで回り込むことがない。結局、当該空間には、撥水化剤蒸気および有機溶剤蒸気のいずれも到来しないので、チャンバ3の側壁および処理槽11の外壁においてパーティクルが発生することがない。
図5(a)は、本ステップにおける気体の流れを説明している。
【0063】
なお、本ステップでは、基板W表面において残留していた過剰な撥水化剤は、有機溶剤蒸気と反応してパーティクルとなって遊離する。このパーティクルは後段の洗浄過程において除去されるので、基板Wの清浄性に悪影響を及ぼさない。一方、チャンバ3の側壁および処理槽11の外壁においてパーティクルが発生すると、当該パーティクルは、後段の洗浄過程では除去されない。しかしながら、本例によれば、処理槽11を通じたチャンバ11内の排気により、もとよりチャンバ3の側壁および処理槽11の外壁にパーティクルが付着することは抑制される。
【0064】
ステップS7:閉状態となっていたドレイン弁94が開状態となり、チャンバ3底部に保持された液体有機溶剤がチャンバ3から排出される。本ステップでは、気体供給ユニット31から不活性ガスが供給される。このとき減圧ポンプ45は作動していないので、不活性ガスは、供給された量だけ自ずとチャンバ排気口82を通じてチャンバ3外に排出される。従って、本ステップにおけるチャンバ3内の圧力は大気圧に等しく、チャンバ3底部の液体有機溶剤は、気相による吸引を受けず速やかにチャンバ3外に排出される。
図5(b)は、本ステップにおける気体および液体の流れを説明している。なお、本ステップは減圧条件下で行ってもよい。従って、本ステップにおける液体有機溶剤の排出過程については、上述のステップS4~ステップS6の最中に行う様にしてもよい。
【0065】
ステップS8:純水を用いて処理槽11が洗浄される。当該処理中においてロットは、第1位置P1で待避される。本ステップにおけるチャンバ3内の圧力は大気圧であり、チャンバ3には不活性ガスが供給され続けている。
図6(a)は、ステップS7において行われていた液体有機溶剤の排出が終了した状態を示している。
図6(b)は、処理槽11に純水が供給されている状態を示している。これにより、処理槽11に保持された純水の水位が上昇し、
図7(a)に示すように、処理槽11は純水により満水の状態となる。この状態から処理槽11における純水が処理槽排液口52を通じて処理槽11から排出される。この様にして、処理槽11に付着しているパーティクルは、純水に溶解して除去される。洗浄前の処理槽11の内壁には、上述のステップS5,ステップS6を通じ撥水化剤、有機溶剤が付着している。従って、当該内壁には、両剤が反応してパーティクルが付着している。ステップS8は、このパーティクルを処理槽11の内壁から除去するために処理槽11を洗浄する構成である。
【0066】
ステップS9:処理槽11の洗浄が終了すると、今度は、基板Wに付着しているパーティクルを除去するべく基板Wの洗浄が実行される。本ステップにおけるチャンバ3内の圧力は大気圧であり、チャンバ3には不活性ガスが供給され続けている。まず、空の状態となった処理槽11に純水を供給する。処理槽11が純水で満水となると、今度は、第1位置P1にあったロットを第2位置P2まで降下させて、ロットを構成する各基板Wを純水に浸漬させる。この状態で、処理槽11に純水を供給する一方で、処理槽11内の純水を排出する。本ステップによって基板W表面のパーティクルは溶解して基板Wから除去される。更に、処理に未使用の純水が処理槽11に常に供給され続けているので、基板Wの清浄性は更に高いものとなる。
図7(b),
図8(a)は、本ステップにおける気体および液体の流れを説明している。
【0067】
ステップS10:チャンバ3内における減圧が開始され、チャンバ3内が減圧状態となる。本ステップにおいてもチャンバ3には不活性ガスが供給され続けている。本ステップは、次のステップS11を行うための準備である。次のステップS11では、チャンバ3内に有機溶剤蒸気が供給される。本ステップでは、その前にチャンバ3内を減圧しておくことで、チャンバ3内の不活性ガスを希薄なものとし、チャンバ3内の不活性ガスが速やかに有機溶剤蒸気に置き換わるようにしている。チャンバ3内を減圧にすることで有機溶剤蒸気が供給される前に不活性ガスの一部が既にチャンバ3から追い出されていると捉えることもできる。
図8(b)は、本ステップにおける気体の流れを説明している。
【0068】
ステップS11:チャンバ3内を減圧状態としたまま、チャンバ3内に有機溶剤蒸気が供給される。すると、チャンバ3内の雰囲気は、ステップS1に係る減圧操作と同じ原理により、速やかに不活性ガスから有機溶剤蒸気に置き換わる。チャンバ3内のロットは、有機溶剤蒸気に曝露され、ロットを構成する基板Wの各々には予備的な乾燥処理が施される。本ステップにおいて、チャンバ3に供給された有機溶剤蒸気は、処理槽11を回り込むように流れ、チャンバ排気口82に至る。この様に構成したとしても、チャンバ3側壁および処理槽11外壁からパーティクルが巻き上げられてチャンバ3内に浮遊することがない。本例のチャンバ3側壁および処理槽11には、パーティクルが発生していないからである。本ステップにおいてパーティクルが基板W表面に付着すると、パーティクルは除去されずに残存し、生産されるデバイスの品質に影響を与える。しかし、本例によれば、もとよりチャンバ3内にパーティクルが浮遊しないので、このような事態とはならない。
図9(a)は、本ステップにおける気体の流れを説明している。
【0069】
ステップS12:チャンバ3内を大気圧に戻した状態で、チャンバ3内に不活性ガスが供給される。すると、基板W表面に対して有機溶剤がこれ以上付着しなくなる。この様にしてロットを構成する基板Wに対する予備乾燥は終了となる。更に不活性ガスをチャンバ3内に供給し続けると、基板Wは次第に乾燥される。基板Wの乾燥完了をもって本例に係る基板処理は終了となる。
図9(b)は、本ステップにおける気体の流れを説明している。
【0070】
以上のように、本発明の基板処理装置1における撥水化処理の過程では、排液ユニット50により処理槽11内の処理液を排液して処理槽11内を空にし、続いて、処理槽減圧ユニット40により処理槽11内を減圧することにより、チャンバ3内を排気しながら、気体供給ユニット21により処理槽11の上方位置(第1位置P1)にある基板Wに撥水化剤蒸気を供給する。より具体的には、基板処理装置1に係る処理槽11には、処理槽11内部の雰囲気を通過させる処理槽排気口42が設けられ、チャンバ3内に撥水化剤蒸気が供給される際に、減圧ポンプ45により処理槽排気口42から撥水化剤蒸気が吸引される。すると、処理槽11上部の開口部12aから処理槽11内に収集された撥水化剤蒸気が処理槽排気口42から排出される。つまり、本発明に係る基板処理装置1における吐出部22から吐出された撥水化剤蒸気は、処理槽11の開口部12aを通過して処理槽11に設けられた処理槽排気口42に至るという雰囲気の流れに乗って流動する。この様に構成すれば、撥水化剤蒸気がチャンバ3内に供給された際、パーティクルなどの撥水化剤残渣物がチャンバ3の側壁や処理槽11の外壁に付着することがない。撥水化剤蒸気は、処理槽11に収集され、処理槽11外壁とチャンバ3内壁の間の空間に回り込むことができないからである。本発明によれば、チャンバ3側壁や処理槽11の外壁において撥水化剤残渣物の残留し、これがパーティクルとなって基板Wに対して悪影響を及ぼすことがない。
【0071】
続いて、本発明に係る効果の実際について説明する。
図10は、基板Wに対するパーティクルの影響を実測した結果である。
図10に示すように、ステップS5において撥水化剤蒸気を吸引しない場合、直径150nm以上のパーティクルは、処理前と比べて、大幅に増加している。これに比べてステップS5において撥水化剤蒸気を吸引する場合、直径150nm以上のパーティクルは、処理前と比べて増加はしているものの、その増加量は撥水化剤蒸気を吸引しない場合と比べて抑制されている。なお、
図10における(i)は、ロットにおける先頭に位置する基板W上の単位面積当たりのパーティクル増加量を示しており、(ii)は、ロットにおける先頭から数えて25番目に位置する基板W上の単位面積当たりのパーティクル増加量を示している。
図10における(iii)は、ロットにおける先頭から数えて43番目に位置する基板W上の単位面積当たりのパーティクル増加量を示している。ロットは50枚の基板Wから構成される。
【0072】
本発明は、上述の実施例に限られず、下記の様な変形実施が可能である。
【0073】
<変形例1>
実施例の処理槽排気口42は、処理槽11の底部に設けられていたが、本発明はこの構成に限られず、処理槽排気口42を処理槽11の側壁に設けてもよい。この様な構成によっても実施例と同様な効果が奏される。
【0074】
<変形例2>
実施例のステップS6においては、当該ステップの全期間において必ずしもチャンバ3内を減圧し続ける必要はない。たとえば、ステップS6の途中からチャンバ3内の圧力を大気圧とし、チャンバ3内に供給された有機溶剤蒸気を自ずとチャンバ排気口82より排出させる様にしてもよい。この様にすると、ステップS6においてチャンバ3底部に保持された液体有機溶剤を速やかにチャンバ3外に排出させることができる。
【0075】
<変形例3>
実施例のステップS5においては、基板Wが第1位置P1に位置した状態で撥水化剤蒸気がチャンバ3内に供給されていたが、本発明はこの構成に限られない。基板Wを第1位置P1と第2位置P2との間で往復させながら撥水化剤蒸気をチャンバ3内に供給するようにしてもよい。この様な構成とすることで、撥水化剤蒸気の吐出部22と基板Wの位置関係を変えながら基板Wの撥水処理を行うことができるので、基板W全域に撥水化剤蒸気が確実に行き渡る。従って、本変形例によれば、より確実な撥水処理を基板Wに施すことができる。
【0076】
<変形例4>
本変形例は、吐出部22における撥水化剤蒸気の噴出方向について具体化するものである。すなわち、
図11に示すように撥水化剤蒸気を斜め下方向に噴出するように吐出部22を構成してもよい。この様な構成とすることで、チャンバ3内における天井面等に撥水化剤蒸気が到来することを防ぐことができる。本変形例によれば、チャンバ3の内壁に撥水化剤が付着することが実施例の構成から更に防止されるので、パーティクルが基板Wの清浄性に悪影響を及ぼすことを一段と防止できる。同様に、吐出部32についても有機溶剤蒸気を斜め下方向に噴出するように構成してもよい。
【0077】
<変形例5>
上述の実施例では、撥水化剤蒸気に係る吐出部22が有機溶剤蒸気に係る吐出部32の上部に位置していたが、吐出部22と吐出部32の位置関係を逆に構成することもできる。すなわち、本変形例によれば、有機溶剤蒸気に係る吐出部32が撥水化剤蒸気に係る吐出部22の上部に位置する。
【0078】
<変形例6>
上述の実施例と比べて基板処理装置1の配管を省略する構成とすることもできる。本変形例では、特に変形例4,変形例5を適用した装置に適している。つまり、本変形例は、撥水化剤蒸気に係る吐出部22が有機溶剤蒸気に係る吐出部32の下側にあり、吐出部22が撥水化剤蒸気を斜め下方向に噴出する構成に適している。本変形例では、
図12に示すように実施例における処理槽排気口42,配管43,排気弁44,減圧ポンプ45は省略されており、チャンバ3内は、ステップS4,ステップS5,ステップS6においても減圧ポンプ85によって減圧状態にされる。減圧の際、排液弁74は、開状態となり、処理槽11に向けて噴出された撥水化剤蒸気は、処理槽11底部に位置する連絡口72を通じて処理槽11外に流れ、チャンバ排気口82に至る。本変形例の構成によれば、上述の実施例と同様にパーティクルが基板Wの清浄性に影響しない。
【0079】
<変形例7>
上述の実施例では、有機溶剤蒸気をチャンバ3内に供給する過程としてステップS6,ステップS11を備えていたが、これら過程を省略してもよい。本変形例によれば、実施例の構成と比べて基板Wはパーティクルの影響を受けにくい。しかし、そうであっても、ステップS5で説明したように、撥水化剤蒸気を処理槽11の底部から吸引するようにすれば、チャンバ3の側壁や処理槽11の外壁に撥水化剤残渣物が付着することがなく、撥水化剤残渣物が基板Wの清浄性に悪影響を及ぼすことが防止できる。
【0080】
<変形例8>
上述の実施例では、処理槽排液口52とチャンバ排液口92とは、共通の排液ポンプ55に連通していたが、本発明はこの構成に限られない。処理槽排液口52とチャンバ排液口92とを2つの排液ポンプの各々に接続し、処理槽排液口52に係る配管とチャンバ排液口92に係る配管を独立させるようにしてもよい。
【0081】
<変形例9>
上述の実施例では、処理槽排気口42とチャンバ排気口82とは、互いに独立した配管に接続されていたが、本発明はこの構成に限られない。処理槽排気口42とチャンバ排気口82とを共通の減圧ポンプに接続し、処理槽排液口52に係る配管とチャンバ排液口92に係る配管を統合させるようにしてもよい。
【0082】
<変形例10>
上述の実施例では、処理槽11の底部に処理槽排気口42が設けられる構成としていたが、本発明は、処理槽11の底部に排気口が設けられていない装置に対しても適用が可能である。すなわち、本発明としては、処理槽11の底部において撥水化剤蒸気が吸引される通気口が設けられていればよく、例えば、処理槽11の開口部12aから処理槽11の底部に向けて延びるチャンバ3外の減圧ポンプに接続された配管を備えるようにし、当該配管から処理槽11内を減圧するように構成してもよい。
【0083】
<変形例11>
上述の実施例では、撥水化剤蒸気がチャンバ3内に供給されていたが、本発明はこの構成に限られない。撥水化剤蒸気に代えて、霧状の撥水化剤をチャンバ3に供給するようにしてもよい。