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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066115
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】タイヤ滑り止め装置の緊締手段
(51)【国際特許分類】
   B60C 27/06 20060101AFI20240508BHJP
   F16B 45/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B60C27/06 R
F16B45/00 C
F16B45/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175439
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】田辺 茂
【テーマコード(参考)】
3J038
【Fターム(参考)】
3J038AA01
3J038BA15
3J038BA21
3J038DA02
(57)【要約】
【課題】1種類のタイヤ滑り止め装置を、より多くのサイズのタイヤに適用させることのできるタイヤ滑り止め装置の緊締手段を提供する。
【解決手段】一対の前記滑り止め帯52の間に配置される本体12と、本体12と一対の滑り止め帯52とをそれぞれ接続する一対のリンク部34とを有し、本体12の回転動作により一対の滑り止め帯52間の隙間を縮めるタイヤ滑り止め装置50の緊締手段10であって、本体12には、本体12を基点として伸縮可能とする伸縮部24が備えられ、一対のリンク部34のうちの一方のリンク部34aは、本体12に係合し、他方のリンク部34bは、伸縮部24に係合する構成とし、伸縮部24には、伸縮状態を維持するための固定手段が付帯されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数分割された滑り止め帯を有するタイヤ滑り止め装置において隣接配置された一対の前記滑り止め帯の間に配置される本体と、前記本体と一対の前記滑り止め帯とをそれぞれ接続する一対のリンク部とを有し、前記本体の回転動作により一対の前記滑り止め帯間の隙間を縮めるタイヤ滑り止め装置の緊締手段であって、
前記本体には、前記本体を基点として前記滑り止め帯を配置する方向に伸縮可能とする伸縮部が備えられ、
一対の前記リンク部のうちの一方のリンク部は、前記本体と前記本体に隣接配置される前記滑り止め帯とに係合し、他方のリンク部は、前記伸縮部と前記伸縮部に隣接配置される前記滑り止め帯とに係合する構成とし、
前記伸縮部には、前記本体を基点として伸長させた状態、あるいは収縮させた状態を維持するための固定手段が付帯されていることを特徴とするタイヤ滑り止め装置の緊締手段。
【請求項2】
複数分割された滑り止め帯を有するタイヤ滑り止め装置において隣接配置された一対の前記滑り止め帯の間に配置される本体と、前記本体と一対の前記滑り止め帯とをそれぞれ接続する一対のリンク部とを有し、前記本体の回転動作により一対の前記滑り止め帯間の隙間を縮めるタイヤ滑り止め装置の緊締手段であって、
前記本体には、前記本体を基点として前記滑り止め帯を配置する方向に伸縮可能とする一対の伸縮部が備えられ、
一対の前記リンク部はそれぞれ、前記本体を基点として伸縮する前記伸縮部と前記伸縮部に隣接配置される前記滑り止め帯とに係合する構成とし、
前記伸縮部には、前記本体を基点として伸長させた状態、あるいは収縮させた状態を維持するための固定手段が付帯されていることを特徴とするタイヤ滑り止め装置の緊締手段。
【請求項3】
前記伸縮部には、前記本体を基点として、伸長方向への付勢力を生じさせる付勢手段が備えられ、
前記固定手段は、前記伸縮部の伸長方向への動きを自由としつつ収縮方向への動きを規制するラチェット機構としたことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ滑り止め装置の緊締手段。
【請求項4】
前記本体の表面には締付状態とした際に前記リンク部が当接するストッパが突設されており、
前記ストッパ以外の突出物が排除されていることを特徴とする請求項3に記載のタイヤ滑り止め装置の緊締手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ滑り止め装置の緊締手段に係り、特に、タイヤサイズの変化に対するタイヤ滑り止め装置の対応幅を広げたい場合に好適なタイヤ滑り止め装置の緊締手段に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの外周に接する滑り止め帯を樹脂により構成している滑り止め装置は、金属製の物に比べて軽量で取り扱いが容易な事から、乗用車のタイヤ滑り止め装置として多用されてきている。このような構成のタイヤ滑り止め装置は、タイヤへ装着した際にタイヤの外側面に配される緊締手段により滑り止め帯をタイヤへの押し付け、装着状態の安定化を図るようにしている。
【0003】
緊締手段は種々提案されているが、簡易かつ短時間で緊締が可能な構造として、特許文献1に開示されているようなものが知られている。特許文献1に開示されている緊締手段は図10に示すように、タイヤ60のトレッド面に接触する滑り止め帯52を複数に分割し、分割された滑り止め帯52の間にロック部材2を配置すると共に、このロック部材2と、ロック部材2の両側に配置されている滑り止め帯52を金属製のリンク部3で連結するというものである。このような緊締手段1は、治具を用いてロック部材を回転させることで、リンク部がロック部材に引き寄せられ、滑り止め帯をタイヤのトレッド面に押し付ける。そして、滑り止め帯をタイヤのトレッド面に押し付けた状態でロック部材2によりリンク部3を固定すれば、タイヤ滑り止め装置50の装着安定化を図ることができる。
【0004】
しかし、このような構造の緊締手段1では、滑り止め帯52を引き寄せる事ができる距離は、ロック部材2の回転中心からリンク部3が接続された部位までの長さによって定まることとなる。このため、装着対象のタイヤサイズが規定サイズよりも小さい場合には、締め付け状態が緩くなり、タイヤ滑り止め装置50としての性能が低下する虞がある。また、タイヤサイズが規定サイズよりも大きい場合には、締め付け操作がきつくなり、装着自体が困難になる虞がある。このため、多くのタイヤサイズに適合するタイヤ滑り止め装置50を提供するためには、多様なサイズのタイヤ滑り止め装置50をリリースする必要が生じ、生産者は製造コストの抑制が難しく、販売者は在庫管理が煩雑になるといった問題がある。そして、使用者の観点から見た場合には、タイヤサイズの異なる車に乗り換える度に、新たなタイヤ滑り止め装置50を購入する必要が生じるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5595198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明では、1種類のタイヤ滑り止め装置を、より多くのサイズのタイヤに適用させることのできるタイヤ滑り止め装置の緊締手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るタイヤ滑り止め装置の緊締手段は、複数分割された滑り止め帯を有するタイヤ滑り止め装置において隣接配置された一対の前記滑り止め帯の間に配置される本体と、前記本体と一対の前記滑り止め帯とをそれぞれ接続する一対のリンク部とを有し、前記本体の回転動作により一対の前記滑り止め帯間の隙間を縮めるタイヤ滑り止め装置の緊締手段であって、前記本体には、前記本体を基点として前記滑り止め帯を配置する方向に伸縮可能とする伸縮部が備えられ、一対の前記リンク部のうちの一方のリンク部は、前記本体と前記本体に隣接配置される前記滑り止め帯とに係合し、他方のリンク部は、前記伸縮部と前記伸縮部に隣接配置される前記滑り止め帯とに係合する構成とし、前記伸縮部には、前記本体を基点として伸長させた状態、あるいは収縮させた状態を維持するための固定手段が付帯されていることを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明に係るタイヤ滑り止め装置の緊締手段は、複数分割された滑り止め帯を有するタイヤ滑り止め装置において隣接配置された一対の前記滑り止め帯の間に配置される本体と、前記本体と一対の前記滑り止め帯とをそれぞれ接続する一対のリンク部とを有し、前記本体の回転動作により一対の前記滑り止め帯間の隙間を縮めるタイヤ滑り止め装置の緊締手段であって、前記本体には、前記本体を基点として前記滑り止め帯を配置する方向に伸縮可能とする一対の伸縮部が備えられ、一対の前記リンク部はそれぞれ、前記本体を基点として伸縮する前記伸縮部と前記伸縮部に隣接配置される前記滑り止め帯とに係合する構成とし、前記伸縮部には、前記本体を基点として伸長させた状態、あるいは収縮させた状態を維持するための固定手段が付帯されていることを特徴とするものであっても良い。
【0009】
また、上記のような特徴を有するタイヤ滑り止め装置の緊締手段では、前記伸縮部には、前記本体を基点として、伸長方向への付勢力を生じさせる付勢手段が備えられ、前記固定手段は、前記伸縮部の伸長方向への動きを自由としつつ収縮方向への動きを規制するラチェット機構とすると良い。このような特徴を有する事によれば、タイヤ滑り止め装置を装着した車両を走行させるだけで、タイヤ滑り止め装置に適正な締め付け状態が付与されることとなる。
【0010】
さらに、上記のような特徴を有するタイヤ滑り止め装置の緊締手段では、前記本体の表面には締付状態とした際に前記リンク部が当接するストッパが突設されており、前記ストッパ以外の突出物が排除されているようにすることが望ましい。このような特徴を有する事によれば、本体を回転させた際、リンク部が本体の表面近傍を通過する場合であっても干渉する虞が無い。このため、リンク部の高さを抑える事ができ、緊締手段全体の厚みを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記のような特徴を有するタイヤ滑り止め装置の緊締手段によれば、1種類のタイヤ滑り止め装置を、より多くのサイズのタイヤに適用させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る緊締手段の構成を示す斜視図である。
図2】リンク部を伸ばした状態の緊締手段の構成を示す平面図である。
図3】リンク部を引き付けた状態の緊締手段の構成を示す平面図である。
図4】緊締手段を構成する伸縮部を収縮させた状態の構成を示す断面図である。
図5】緊締手段を構成する伸縮部を伸長させた状態の構成を示す断面図である。
図6】緊締手段における伸縮部を収縮させた状態と伸長させた状態とにおける各種長さの違いを説明するための図である。
図7】直径の大きなタイヤへタイヤ滑り止め装置を装着した状態を説明するための図である。
図8】直径の小さなタイヤへタイヤ滑り止め装置を装着した状態を説明するための図である。
図9】実施形態に係る緊締手段を回転させるために用いる治具の一例についての構成を示す斜視図である。
図10】従来の緊締手段を適用したタイヤ滑り止め装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のタイヤ滑り止め装置の緊締手段に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上で好適な形態の一部であり、その効果を奏する限りにおいて、構成の一部に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
【0014】
[構成]
まず、図1から図6を参照して、本実施形態に係るタイヤ滑り止め装置の緊締手段(以下、単に緊締手段10と称す)の構成について説明する。なお、図面において、図1は、実施形態に係る緊締手段の構成を示す斜視図である。また、図2は、リンク部を伸ばした状態の緊締手段の構成を示す平面図であり、図3は、リンク部を引き付けた状態の緊締手段の構成を示す平面図である。また、図4は、緊締手段を構成する伸縮部を収縮させた状態の構成を示す断面図であり、図5は、緊締手段を構成する伸縮部を伸長させた状態の構成を示す断面図である。
【0015】
本実施形態に係る緊締手段10は、複数分割された滑り止め帯52を有するタイヤ滑り止め装置10(図7図8等参照)に適用される締付機構であり、隣接配置された滑り止め帯52の間に配置して使用される。本実施形態に係る緊締手段10は、本体12と伸縮部24、及びリンク部34を基本として構成されている。
【0016】
本体12は少なくとも、治具係合孔14、リンク係合孔16、付勢手段配置部18、伸縮部収容部20、及びラチェット機構22を有する。治具係合孔14は、本体12を回動させるための治具38(詳細は後述)を係合させるための要素であり、本実施形態では、直線状に配置された3つの貫通孔により構成されている。なお、治具係合孔14の配置位置は、本体の中央近傍としている。回転を付与する際のバランスが良いからである。
【0017】
リンク係合孔16は、詳細を後述するリンク部34のうちの一方(一方のリンク部34a)を係合させるための要素であり、本実施形態では貫通孔としている。なお、リンク係合孔16の配置位置は、詳細を後述する伸縮部収容部20の開口部を配置している側の端部と反対側に位置する端部近傍としている。
【0018】
付勢手段配置部18は、詳細を後述する伸縮部24に対して伸長方向への付勢力を付与する付勢手段36を配置するための部位である。このため、付勢手段配置部18の形態は付勢手段36の種類や形態に依存することとなる。本実施形態では付勢手段36をコイルバネとするため、付勢手段配置部18は、伸長方向に沿って形成される筒状部としている。
【0019】
伸縮部収容部20は、詳細を後述する伸縮部24を収容可能とする空間である。このため伸縮部収容部20は、伸縮部24が伸縮方向へ摺動可能な空間であれば良く、その具体的な形態は限定するものでは無いが、構成の一部に抜け止め20aを設けるようにし、伸長状態に至った伸縮部24が本体12から脱落する事を防げるようにすると良い。また当然に、伸縮部収容部20には、伸縮部24が突出する方向(伸長方向)に開口部を設け、伸縮部24を本体12から突出させることが可能な構成としている。
【0020】
ラチェット機構22は、伸縮部24の動作を規制する固定手段の一種である。本実施形態に係るラチェット機構22は、伸縮部24の伸長方向への動きを自由としつつ収縮方向への動きを規制する第1爪22aと、収縮方向への動きを自由としつつ伸長方向への動きを規制する第2爪22b、第1爪22aと第2爪22bとの間に配置され、両者の切り替えの基点となる回転軸22c、及び第1爪22aと第2爪22bとの切り替え操作を行うための切替レバー22dを備えている。なお、詳細は図示しないがラチェット機構22には、いずれか一方の爪(第1爪22a、または第2爪22b)を伸縮部24のラチェット係合歯28に付勢させた状態を保つ付勢手段22eを設けるようにすると良い。このような構成とすることで、伸縮部24に対する動作規制を確実なものとすることができるからである。
【0021】
伸縮部24は、上述した本体12の伸縮部収容部20に収容され、その一部を本体12から突出させることで緊締手段10の全長を変化させるための要素である。実施形態に係る伸縮部24には、リンク係合孔26と、ラチェット係合歯28、及び治具係合孔30が設けられ、付勢力伝達ガイド32が付帯されている。リンク係合孔26は、詳細を後述するリンク部34のうちの他方(他方のリンク部34b)を係合させるための要素であり、本実施形態では貫通孔としている。なお、リンク係合孔26の配置位置は、伸長側端部近傍としている。また、本体12におけるリンク係合孔16との関係においては、伸縮方向と交差する方向にわずかにずらし、2つのリンク係合孔16,26の間に本体12の回転中心となる治具係合孔14を介在させるようにしている。
【0022】
ラチェット係合歯28は、上述したラチェット機構22を構成する第1爪22aと第2爪22bが係合する要素であり、このラチェット係合歯28にそれぞれの爪が係合することで、伸長方向、あるいは収縮方向への動きが規制されることとなる。ラチェット係合歯28の具体的な構成は、いわゆるラックギアのような凹凸形状から成っており、凸部を構成する傾斜面のうち、伸縮部24の突出先端側(図4に示す伸縮部24の左側)に位置する傾斜面に第2爪22bが当接することで伸長方向への動きが規制され、伸縮部24の突出後端側(図5に示す伸縮部24の右側)に位置する傾斜面に第1爪22aが当接することで収縮方向への動きが規制されることとなる。ここで、傾斜面と爪とは互いに面で接触する構成とすることで、伸縮部24の動きを規制した際の応力を分散し、割れや欠けの発生を抑制することができる。また、傾斜面の中心に対して降ろされる垂線Lが、ラチェット機構22の回転軸22cの中心と、伸縮部24を構成するラチェット係合歯28の中心線(複数の傾斜面の中心を通る線)との間に位置するように構成することで、傾斜面に爪(第1爪22a、及び第2爪22b)が当接した際、楔効果を発揮すると共に、歯を台形状に形成する事ができ、歯の強度も維持することが可能となる。なお、治具係合孔30は、伸縮部24を伸縮部収容部20に収容した際、本体12に設けられた治具係合孔14に重なる位置に設けられる貫通孔である。
【0023】
付勢力伝達ガイド32は、付勢手段配置部18に配置された付勢手段36による付勢力を伸縮部24に伝達すると共に、付勢手段配置部18から露出した付勢手段36の形状維持を図るための要素である。付勢力伝達ガイド32は、伸縮部24に係合するガイド本体32aと、このガイド本体32aから延設され、付勢手段配置部18に収容可能とされる突起部32b、及び付勢手段36の付勢力を受けるバネ受け32cとを有する。ここで突起部32bは、本体12から伸縮部24が最も伸長した状態においても、その一部が付勢手段配置部18に収容された状態となるように構成されていると良い。
【0024】
リンク部34(一方のリンク部34aと他方のリンク部34bの総称)は、緊締手段10を構成する本体12及び伸縮部24と、滑り止め帯52を接続する要素である。実施形態における一方のリンク部34aと他方のリンク部34bは、互いに同一形状としつつ点対称な配置形態となるように、それぞれリンク係合孔16とリンク係合孔26に係合されている。各リンク部(一方のリンク部34a、他方のリンク部34b)の形態は、直線部34a1,34b1を中心に、この直線部34a1,34b1の両端部にそれぞれ鈍角を持って設けられる延設部34a2,34b2を有し、いわゆる弓状を成すように形成されている。そして、各延設部34a2,34b2の先端にはフックが形成されており、このフックをリンク係合孔16,26、及び滑り止め帯52に係合させることで、本体12及び伸縮部24と滑り止め帯52を接続する構成としている。
【0025】
一対のリンク部34は、互いに弓状の内側を向かい合わせるように配置している。実施形態に係る緊締手段10では、治具係合孔14を中心として本体12を回転させた際にリンク部34が当接するストッパ12aが設けられている。ストッパ12aは、一対のリンク部34が当接した際、リンク部34を構成する直線部34a1,34b1、及び延設部34a2,34b2が互いに平行な位置関係となるように配置形成されている。また、実施形態に係るストッパ12aの一部は、治具係合孔14を構成する複数の孔の間に、リンク部34の高さ(太さ)を超える高さで設けられている。ストッパ12aをこのような配置構成とすることで、詳細を後述する治具38を使用する際、治具38を構成する係合部40の差し込み高さが制限されることとなる。このため、治具38を用いて本体12および伸縮部24を回転させた場合に、治具38とリンク部34とが干渉してしまうことを避けることができる。
【0026】
また、実施形態に係る緊締手段10では、本体12の表面に配置されている突設物をストッパ12aのみとしている。このため、本体12(伸縮部24)を回転させた際、リンク部34が本体12の表面近傍を通過する場合であっても、リンク部34が本体12の構造部位に干渉する虞が無い。このように、リンク部34が本体12の表面近傍を通過することができる構成とすることで、リンク部34を本体12の表面に近接させることができ、緊締手段10の薄型化を図る事が可能となる。
【0027】
治具38は、実施形態に係る緊締手段10を回転させる事が可能であれば、その構成を問うものではない。本実施形態では図9に示すように、治具係合孔14(30)に係合可能な係合部40と、把持部42とを有する。また、把持部42は、緊締手段10を回転させる際の力を軽減できるように、係合部40の配置幅に比べて広い幅を持つハンドルにより構成されている。
【0028】
[作用]
次に、上記のような構成の緊締手段の使用方法、及び作用について、図6から図7を参照して説明する。なお、図面において図6は、実施形態に係る緊締手段における伸縮部を収縮させた状態と伸長させた状態とにおける各種長さの違いを説明するための図である。また、図7は、直径の大きなタイヤへタイヤ滑り止め装置を装着した状態を説明するための図である。さらに、図8は、直径の小さなタイヤへタイヤ滑り止め装置を装着した状態を説明するための図である。
【0029】
本実施形態に係る緊締手段10は、治具38を治具係合孔14(30)に係合させて矢印A(図2参照)の方向に回転させることで、図3に示すようにリンク部34を本体12(伸縮部24)の中心側へ巻き込むように引き寄せることができる。これにより、分割配置されている滑り止め帯52間の隙間を縮め、タイヤ滑り止め装置50をタイヤ60の表面へ押し付ける(密接させる)ことが可能となる。そして、図6(A)に示すように、本実施形態に係る緊締手段10は、伸縮部24を縮めた状態では、一方のリンク部34a、他方のリンク部34bを含む全長がL1で、締め付け距離がΔL1である。これに対して伸縮部24を伸ばした状態では、全長がL2、締め付け距離がΔL2となり、L1<L2、ΔL1<ΔL2の関係が成り立つこととなる。このため、1つの緊締手段10で滑り止め帯52の締付距離を変えたり、配置間隔が異なる滑り止め帯52の締付に適用したりすることが可能となる。
【0030】
よって、タイヤ滑り止め装置50のサイズが同じであったとしても、従来では困難であった範囲で、外径サイズの異なるタイヤ60に適用させる事が可能となる。例えばタイヤ60の外径サイズがタイヤ滑り止め装置50の規定サイズよりも大きい場合には、図7に示すように緊締手段10の伸縮部24を収縮させた状態で適用し、短い締付距離で締め付けを行うようにすると良い。一方、タイヤ60の外径サイズがタイヤ滑り止め装置50の規定サイズよりも小さい場合には、図8に示すように伸縮部24を伸ばした状態で適用して締め付けを行うようにすることで、締め付け距離を長くすることができ、タイヤ60の表面へのタイヤ滑り止め装置50の押し付け強さ(密着度)を上げることができる。
【0031】
タイヤ60に装着されたタイヤ滑り止め装置50は、車両が走行する事に伴い、分割配置された滑り止め帯52,52間の隙間に、伸長方向の力と収縮方向の力が繰り返し負荷されることとなる。これは、タイヤ60の外径サイズとタイヤ滑り止め装置50のサイズとの差や、タイヤ60とタイヤ滑り止め装置50との間の摩擦力、及びタイヤ60の回転力などに起因して生じるものである。
【0032】
具体的には、タイヤ60(駆動輪)が矢印B(図7図8参照)の方向へ回転している場合、地面に滑り止め帯52が接地している状態からタイヤ60が直接接地する状態へ移行する際に、隣接配置された滑り止め帯52間には両者の間隔を狭める方向の力が負荷される(収縮負荷)。一方、地面にタイヤ60が接地している状態から滑り止め帯52が接地する状態へ移行する際には、隣接配置された滑り止め帯52間に両者を離間させる方向の力が負荷される(伸長負荷)。
【0033】
このような作用が繰り返し成されるタイヤ滑り止め装置50において本実施形態に係る緊締手段10には、上述したように、第1爪22aをラチェット係合歯28に係合させている状態では、伸縮部24が伸長方向へ移動する事を自由とし、収縮方向へ移動することを規制する機能が備えられている。このため、第1爪22aをラチェット係合歯28に係合させた状態で緊締手段10を取り付けた場合、上記収縮負荷時に伸縮部24が伸長することとなる。また、第1爪22aがラチェット係合歯28に係合された状態では、伸縮部24が収縮する方向へ移動する事が規制されるため、タイヤ滑り止め装置50の締め付け状態が維持されることとなる。このため、実施形態に係る緊締手段10を取り付けたタイヤ滑り止め装置50を装着して車両を走行させた場合には、タイヤ滑り止め装置50が自動で、最適な締め付け状態に調整されることとなる。
【0034】
[効果]
上記のような特徴を有する緊締手段10によれば、1種類のタイヤ滑り止め装置50を、より多くのサイズのタイヤ60に適用させることができるようになる。また、タイヤ60にタイヤ滑り止め装置50を装着させた状態で走行するだけで締付量を自動調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上記実施形態では、伸縮部24は、本体12を基点と一方のみに伸縮するように示している。しかしながら、本体12を基点として両端へ伸縮する構成としても良い。このような構成とする場合、対を成すリンク部34は、それぞれ本体12を基点として反対側に位置する伸縮部に配置される構成とすると良い。
【符号の説明】
【0036】
10………緊締手段、12………本体、12a………ストッパ、14………治具係合孔、16………リンク係合孔、18………付勢手段配置部、20………伸縮部収容部、20a………抜け止め、22………ラチェット機構、22a………第1爪、22b………第2爪、22c………回転軸、22d………切替レバー、22e………付勢手段、24………伸縮部、26………リンク係合孔、28………ラチェット係合歯、30………治具係合孔、32………付勢力伝達ガイド、32a………ガイド本体、32b………突起部、32c………バネ受け、34………リンク部、34a………一方のリンク部、34a1………直線部、34a2………延設部、34b………他方のリンク部、34b1………直線部、34b2………延設部、36………付勢手段、38………治具、40………係合部、42………把持部、50………タイヤ滑り止め装置、52………滑り止め帯、60………タイヤ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10