(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066116
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/22 20060101AFI20240508BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20240508BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20240508BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20240508BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20240508BHJP
D07B 1/06 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B60C9/22 B
B60C11/00 D
B60C11/00 F
B60C9/00 M
B60C9/00 J
B60C9/18 G
B60C9/18 K
B60C9/20 E
D07B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175442
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】井上 学
(72)【発明者】
【氏名】出雲 優
【テーマコード(参考)】
3B153
3D131
【Fターム(参考)】
3B153AA08
3B153AA10
3B153AA14
3B153CC29
3B153CC52
3B153FF16
3B153GG05
3D131AA03
3D131AA39
3D131AA47
3D131BA02
3D131BA03
3D131BA20
3D131BB03
3D131BC31
3D131BC42
3D131DA52
3D131DA57
3D131EA10X
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】乗り心地性能及び耐久性能の総合性能に優れたタイヤを提供する。
【解決手段】2本以上のコードを引きそろえた束を巻き付けた周方向補強層と、キャップトレッドとを備えたタイヤであって、前記コードの曲げ剛性をF〔cm・g〕、引きそろえられた前記コードの本数をN〔本〕、前記周方向補強層のタイヤ幅方向端部からトレッド表面に引いた直線上でのトレッドの厚みをD〔mm〕、前記キャップトレッドを形成するゴム組成物の温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードで測定された複素弾性率をE〔MPa〕とし、前記周方向補強層の束剛性S〔cm・g・本〕をF×Nで表し、トレッドの剛性G〔N/mm〕をE×Dで表したとき、前記トレッドの剛性Gに対する前記周方向補強層の束剛性Sの比S/G〔10g・mm2・本/N〕が10.6以下であるタイヤに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本以上のコードを引きそろえた束を巻き付けた周方向補強層と、キャップトレッドとを備えたタイヤであって、
前記コードの曲げ剛性をF〔cm・g〕、引きそろえられた前記コードの本数をN〔本〕、前記周方向補強層のタイヤ幅方向端部からトレッド表面に引いた直線上でのトレッドの厚みをD〔mm〕、前記キャップトレッドを形成するゴム組成物の温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードで測定された複素弾性率をE〔MPa〕とし、
前記周方向補強層の束剛性S〔cm・g・本〕をF×Nで表し、トレッドの剛性G〔N/mm〕をE×Dで表したとき、
前記トレッドの剛性Gに対する前記周方向補強層の束剛性Sの比S/G〔10g・mm2・本/N〕が10.6以下であるタイヤ。
【請求項2】
周方向補強層のコードは、1本の曲げ剛性が130cm・g以下である請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
周方向補強層のコードは、2.5~49.0N荷重時における初期伸度が0.40~0.80%である請求項1記載のタイヤ。
【請求項4】
周方向補強層のコードは、N本のフィラメントを合わせたものをM本より合わせたM×N構造(Mは2~4の整数である。Nは3~5、7~12の整数である。)で構成されている請求項1記載のタイヤ。
【請求項5】
周方向補強層のコードのゴム侵入度は、ストランド間が80%以上、ストランド内が50%以下である請求項1記載のタイヤ。
【請求項6】
周方向補強層は、タイヤ幅方向の一方から、他方に向かって2本以上のコードを引きそろえた束を巻き付けたものである請求項1記載のタイヤ。
【請求項7】
周方向補強層の束剛性S〔cm・g・本〕が580以下である請求項1記載のタイヤ。
【請求項8】
トレッドの剛性G〔N/mm〕が110以上である請求項1記載のタイヤ。
【請求項9】
F/E〔cm・g/MPa〕が19以下である請求項1記載のタイヤ。
【請求項10】
F/D〔10・g〕が6以下である請求項1記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トラックの積み荷量増加を目的とした低床化が進んでおり、そのため、従来よりもタイヤの幅を広くし、低扁平化させることが検討されている。このように幅が広くなった重荷重用タイヤは、走行時に内圧の上昇に伴い外径成長が発生した際に、トレッドのセンター部、エッジ部で外径の成長率が大きく異なることになるという問題があり、タイヤ周方向に配向するスチールコードを含む補強層を配する技術などにより解決することが提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001-522748号公報
【特許文献2】特表2000-504655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような技術でも、乗り心地性能、耐久性能の向上という点で改善の余地があり、例えば、幅が広くなった重荷重用タイヤなどにおいて、これらの性能を向上することが望まれている。
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、乗り心地性能及び耐久性能の総合性能に優れたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2本以上のコードを引きそろえた束を巻き付けた周方向補強層と、キャップトレッドとを備えたタイヤであって、
前記コードの曲げ剛性をF〔cm・g〕、引きそろえられた前記コードの本数をN〔本〕、前記周方向補強層のタイヤ幅方向端部からトレッド表面に引いた直線上でのトレッドの厚みをD〔mm〕、前記キャップトレッドを形成するゴム組成物の温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードで測定された複素弾性率をE〔MPa〕とし、
前記周方向補強層の束剛性S〔cm・g・本〕をF×Nで表し、トレッドの剛性G〔N/mm〕をE×Dで表したとき、
前記トレッドの剛性Gに対する前記周方向補強層の束剛性Sの比S/G〔10g・mm2・本/N〕が10.6以下であるタイヤに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2本以上のコードを引きそろえた束を巻き付けた周方向補強層と、キャップトレッドとを備えたタイヤであって、前記S/Gが10.6以下を満たすタイヤであるので、乗り心地性能及び耐久性能の総合性能に優れたタイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤの一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、補強層の構成を説明する概略図である。
【
図3】
図3は、2本以上のコードを引きそろえた束の断面模式図である。
【
図4】
図4は、2本以上のバンドコードを引きそろえた束をタイヤに巻き付けた状態のバンドの模式図である。
【
図5】
図5は、M×N構造で構成されたコードの断面模式図である。
【
図7】
図7は、補強層の変形例を示す拡大断面図である。
【
図8】
図8は、補強層の他の変形例を示す拡大断面図である。
【
図9】
図9は、コードの曲げ剛性の試験機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、2本以上のコードを引きそろえた束を巻き付けた周方向補強層と、キャップトレッドとを備えたタイヤであって、
前記コードの曲げ剛性をF〔cm・g〕、引きそろえられた前記コードの本数をN〔本〕、前記周方向補強層のタイヤ幅方向端部からトレッド表面に引いた直線上でのトレッドの厚みをD〔mm〕、前記キャップトレッドを形成するゴム組成物の温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードで測定された複素弾性率をE〔MPa〕とし、
前記周方向補強層の束剛性S〔cm・g・本〕をF×Nで表し、トレッドの剛性G〔N/mm〕をE×Dで表したとき、
前記トレッドの剛性Gに対する前記周方向補強層の束剛性Sの比S/G〔10g・mm2・本/N〕が10.6以下であるタイヤである。
【0010】
前述の作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のメカニズムにより奏するものと推察される。
例えば、1本のスチールコードを連続して巻き付けたジョイントレスバンド構造の周方向補強層を有する場合、悪路を走行した際などに、1本のコードが破断するとそこを起点にタイヤが損傷することが懸念される。一方で、複数本のコードを用いた場合は、巻き終わり、巻き始めの部分でタイヤ周方向に剛性差が生じ、乗り心地性能が低下すると考えられる。
また、悪路走行をするとき、鋭利な石や破片、釘踏みなどによって、例えば、ジョイントレスバンドのコードが破断する場合があるが、ジョイントレスバンドを1本のコードで巻いているとで、その1本が破断してしまった時に、ジョイントレスバンドはその効果が著しく低下してしまう。
そこで、2本以上のコードを巻きつけることで、1本が破断しても他の数本のコードがジョイントレスバンドとしての役割を継続するため、ジョイントレスバンドの効果が急激に低下することを防止できる。
また、ジョイントレスバンドを1本で巻きつけた場合、コードを被覆するゴム層の境界(界面)が多くなり、その隙間で微小なボイド(気泡)が発生しやすくなってしまう。ボイドが存在してしまうと、その部分に応力が集中し、そこから亀裂が発生しやすくなると考えられる。
そこで、例えば、ジョイントレスバンドを2本以上のコードを引きそろえた束で巻きつけることによって、このボイドの発生確率を低下でき、タイヤの耐久性能が向上すると考えられる。
【0011】
また、ジョイントレスバンドの巻き始めと巻き終わりは、ジョイントレスバンドが急に無くなったり、急に現れたりする。
例えば、ジョイントレスバンドのコードの曲げ剛性と引きそろえられたコードの本数との積で表されるジョイントレスバンドの束剛性が大きい時、タイヤ転動中にジョイントレスバンドのエッジ部でジョイントレスバンドの有無が切り替わることによって振動が生じる。そこで、ジョイントレスバンドの束剛性に対して、ジョイントレスバンドのエッジ部からトレッド表面までの距離とキャップトレッドの複素弾性率との積で表されるトレッドの剛性を十分大きくすることで、ジョイントレスバンドの巻き終わり、巻き始め部に振動が生じることを抑制することができ、乗り心地性能を向上させることができると考えられる。
以上のメカニズムにより、本発明では、ジョイントレスバンドでの拘束力を担保し、また亀裂の発生を抑制しつつ、エッジ部での振動を抑制することができるため、乗り心地性能及び耐久性能の総合性能に優れたタイヤを提供できると推察される。
【0012】
このように、2本以上のコードを引きそろえた束を巻き付けた周方向補強層と、トレッドとを備えたタイヤにおいて、「トレッドの剛性Gに対する周方向補強層の束剛性Sの比(S/G)が10.6以下」を満たす構成にすることにより、乗り心地性能及び耐久性能の総合性能を向上するという課題(目的)を解決するものである。すなわち、「トレッドの剛性Gに対する周方向補強層の束剛性Sの比(S/G)が10.6以下」のパラメーターは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、乗り心地性能及び耐久性能の総合性能を向上することであり、そのための解決手段として当該パラメーターを満たすような構成にしたものである。
【0013】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明されるが、これは一形態にすぎず、本発明のタイヤは以下の形態に限定されるものではない。
【0014】
本明細書において、「正規状態」とは、タイヤが正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。
【0015】
本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない場合、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
【0016】
タイヤの「断面幅Wt(mm)」は正規状態において、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いたものとしてのサイドウォール外面間の最大幅である。
【0017】
タイヤの「外径Dt(mm)」は正規状態におけるタイヤの外径を指す。
【0018】
タイヤの「断面高さHt(mm)」はタイヤの半径方向断面における、タイヤ半径方向の高さを指し、タイヤのリム径をR(mm)としたとき、タイヤの外径Dtとリム径Rとの差の半分に相当する。言い換えると、断面高さHtは(Dt-R)/2により求めることが可能である。
【0019】
また、本明細書において、タイヤの「扁平率」とは、タイヤの断面幅Wt(mm)に対するタイヤの断面高さHt(mm)の比を百分率で表したものであり、Ht/Wt×100により求めることができる。
【0020】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける“標準リム”、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association,Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0021】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を指し、「正規リム」の場合と同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(規格に定められているもの)の正規内圧(但し、250kPA以上)を指す。なお、250kPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指す。
【0022】
また、本明細書において、「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を指し、前記した「正規リム」や「正規内圧」の場合と同様に、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合は以下の計算により、正規荷重WLを求める。
V={(Dt/2)2-(Dt/2-Ht)2}×π×Wt
WL=0.000011×V+175
WL:正規荷重(kg)
V:タイヤの仮想体積(mm3)
Dt:タイヤ外径(mm)
Ht:タイヤの断面高さ(mm)
Wt:タイヤの断面幅(mm)
【0023】
本発明のタイヤは、キャップトレッドを備えている。
本発明において、キャップトレッドとは、トレッドのうち、タイヤ径方向の最も外側に配され、路面と接地する部材を指す。トレッドが単層構造トレッドの場合はその単層がキャップトレッドに相当し、キャップ部及びベース部の2層構造のトレッドの場合はキャップ部がキャップトレッドに相当し、3層以上の構造を有するトレッドの場合は3層以上のうち路面と接地する最外層がキャップトレッドに相当し、中間の層はキャップ部、ベース部のいずれであっても良い。
【0024】
キャップトレッドを形成するゴム組成物(キャップトレッド用ゴム組成物)は、トレッドの剛性Gを高め、周方向補強層端部での振動を抑制しやすくする観点から、温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードで測定された複素弾性率(E)が5.5MPa以上であることが望ましい。Eは、より好ましくは5.9MPa以上、更に好ましくは6.2MPa以上である。
一方、トレッド部表面で振動を吸収しやすくする観点からは7.8MPa以下であることが望ましく、好ましくは6.8MPa以下、より好ましくは6.6MPa以下、更に好ましくは6.4MPa以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
【0025】
本明細書において、複素弾性率(E)とは、タイヤ成形後のキャップトレッドの複素弾性率を意味し、ゴム組成物の場合、加硫後の複素弾性率に相当するものである。具体的には、複素弾性率は、後述の実施例に記載の方法で測定される値である。
【0026】
本明細書において、キャップトレッドの複素弾性率は、温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードでの条件下で測定した複素弾性率である。測定サンプルは製造されたタイヤのキャップトレッドから幅4mm、長さ20mm、厚さ1mmの大きさで採取され、タイヤの周方向とサンプルの長手方向は一致させる。
【0027】
ゴム組成物の複素弾性率は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、オイルなどの軟化剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、軟化剤の量を減量したり、充填材の量を増量したりすることにより、複素弾性率は大きくなる傾向がある。
【0028】
キャップトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分を含む。
ゴム成分は、架橋に寄与する成分であり、一般的に、重量平均分子量(Mw)が1万以上のポリマーで、アセトンにより抽出されないポリマー成分がゴム成分に該当する。前記ゴム成分は、常温(25℃)で固体状態である。
【0029】
ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0030】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0031】
キャップトレッド用ゴム組成物に使用可能なゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴムを使用できる。ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなども挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより得られる観点から、イソプレン系ゴム、BR、SBRが好ましく、BR、SBRがより好ましい。また、これらのゴム成分は後述の変性処理、水素添加処理が行われていても良く、オイル、樹脂、液状ゴム成分などにより伸展された、伸展ゴムを用いても良い。
【0032】
上記ジエン系ゴムは、非変性ジエン系ゴムでもよいし、変性ジエン系ゴムでもよい。
変性ジエン系ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するジエン系ゴムであればよく、例えば、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ジエン系ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。
【0033】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0034】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
キャップトレッド用ゴム組成物がイソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。該含有量の上限は特に限定されず、100質量%でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0036】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BRは、シス含量が90質量%以上のハイシスBRを含むことが好ましい。該シス含量は、95質量%以上がより好ましい。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0037】
また、BRは、非変性BR、変性BRのいずれも使用可能である。変性BRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。また、BRは、水素添加ブタジエン重合体(水添BR)も使用可能である。
【0038】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0039】
キャップトレッド用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0040】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。該スチレン含有量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内にすることで、発熱を抑制し、耐久性能を向上させやすくすることができる傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、1H-NMR測定によって測定できる。
【0042】
SBRのビニル結合量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上である。該ビニル結合量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内にすることで、高速走行時の操縦安定性が改善される傾向がある。
なお、本明細書において、ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0043】
SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれも使用可能である。変性SBRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。また、SBRとして、水素添加スチレン-ブタジエン共重合体(水添SBR)も使用可能である。
【0044】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0045】
キャップトレッド用ゴム組成物がSBRを含む場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0046】
キャップトレッド用ゴム組成物は、フィラー(充填材)を含んでもよい。
フィラー(充填材)としては特に限定されず、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー、バイオ炭(BIO CHAR);難分散性フィラー等が挙げられる。
【0047】
キャップトレッド用ゴム組成物において、フィラーの合計含有量(シリカ、カーボンブラックなどのフィラーの総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0048】
フィラー(充填材)のなかでも、カーボンブラックなどの炭素由来フィラー(炭素含有フィラー)、シリカが好ましい。
【0049】
キャップトレッド用ゴム組成物に使用可能なカーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、従来の鉱物油などを原料としたカーボンブラックのほか、リグニンなどのバイオマス材料を原料としたカーボンブラックを用いても良い。また、タイヤなどのカーボンブラックを含むゴム製品、プラスチック製品などを分解して得られたリサイクルカーボンブラックを適宜、上記カーボンブラックと等量置換して用いても良い。
【0050】
キャップトレッド用ゴム組成物において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g以上が好ましく、70m2/g以上がより好ましく、90m2/g以上が更に好ましい。また、上記N2SAは、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、120m2/g以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0051】
キャップトレッド用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは45質量部以上、特に好ましくは50質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0052】
キャップトレッド用ゴム組成物において、使用可能なシリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのシリカのほか、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたシリカを用いても良い。
【0053】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上、更に好ましくは150m2/g以上、特に好ましくは180m2/g以上、最も好ましくは190m2/g以上である。また、シリカのN2SAの上限は特に限定されないが、好ましくは350m2/g以下、より好ましくは300m2/g以下、更に好ましくは250m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0054】
キャップトレッド用ゴム組成物がシリカを含む場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは10質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0055】
キャップトレッド用ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム分野で公知のものが使用可能であり、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
キャップトレッド用ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0057】
難分散性フィラーとしては、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維、短繊維状セルロース、ゲル状化合物等が挙げられる。なかでも、ミクロフィブリル化植物繊維が好ましい。
【0058】
上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、良好な補強性が得られるという点から、セルロースミクロフィブリルが好ましい。セルロースミクロフィブリルとしては、天然物由来のものであれば特に制限されず、例えば、果実、穀物、根菜などの資源バイオマス、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、及びこれらを原料として得られるパルプや紙、布、農作物残廃物、食品廃棄物や下水汚泥などの廃棄バイオマス、稲わら、麦わら、間伐材などの未使用バイオマスの他、ホヤ、酢酸菌等の生産するセルロースなどに由来するものが挙げられる。これらのミクロフィブリル化植物繊維は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
なお、本明細書において、セルロースミクロフィブリルとは、典型的には、平均繊維径が10μm以下の範囲内であるセルロース繊維、より典型的には、セルロース分子の集合により形成されている平均繊維径500nm以下の微小構造を有するセルロース繊維を意味する。典型的なセルロースミクロフィブリルは、例えば、上記のような平均繊維径を有するセルロース繊維の集合体として形成されている。
【0060】
キャップトレッド用ゴム組成物において、難分散性フィラーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0061】
キャップトレッド用ゴム組成物には、可塑剤を配合してもよい。
可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、常温(25℃)において、液体の可塑剤であっても、固体の可塑剤であっても良い。
【0062】
キャップトレッド用ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは18質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、前述の伸展ゴムを用いる場合、その伸展ゴムに用いられた伸展成分量は可塑剤の含有量に含まれる。
【0063】
キャップトレッド用ゴム組成物に使用可能な可塑剤としては特に限定されず、オイル、液状ポリマー(液状樹脂、液状ジエン系ポリマーなど)、樹脂などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、MES(Mild Extract Solvated)、DAE(Distillate Aromatic Extract)、TDAE(treated Distillate Aromatic Extract)、TRAE(treated Residual Aromatic Extract)、RAE(residual Aromatic Extract)などのパラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。またライフサイクルアセスメントの観点から上記したオイルとして、ゴム混合機やエンジンなどで用いられた潤滑油や調理店で使用された廃食用油を精製したものを用いても良い。
【0065】
液状ポリマーとしては、常温(25℃)において、液体状態の液状ジエン系ポリマーや後述の液体状態の樹脂などが挙げられる。液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0066】
キャップトレッド用ゴム組成物に使用可能な上記樹脂としては、例えば、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水添されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、芳香族ビニル重合体、石油樹脂、テルペン系樹脂が好ましい。なお、これらの樹脂成分は常温(25℃)において、固体であっても液体であっても良い。
【0067】
キャップトレッド用ゴム組成物が上記樹脂を含有する場合、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0068】
上記樹脂の軟化点は、常温(25℃)において固体である場合には、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、115℃以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、キャップトレッド用ゴム組成物内で路面からの振動を吸収しやすくなり、乗り心地性能が向上しやすくなる傾向がある。
なお、上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。前記した樹脂の軟化点は通常、樹脂のガラス転移温度より50℃±5℃高い値となる。
また、上記樹脂の軟化点は、常温(25℃)において液体状態の樹脂である場合には、25℃以下であり、15℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。
【0069】
上記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0070】
上記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0071】
上記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
【0072】
上記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0073】
上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
【0074】
上記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
【0075】
上記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂、水添DCPD樹脂が好ましい。
【0076】
上記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーであり。例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。また、これらの水素添加物も使用できる。
【0077】
上記ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0078】
上記ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα-ピネン及びβ-ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β-ピネンを主成分とするβ-ピネン樹脂と、α-ピネンを主成分とするα-ピネン樹脂とに分類される。
【0079】
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0080】
上記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0081】
上記無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂とは、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0082】
上記アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(2エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0083】
上記アクリル系樹脂を構成する芳香族ビニルモノマー成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルが挙げられる。
【0084】
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニルと共に、他のモノマー成分を使用してもよい。
【0085】
上記可塑剤としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業等の製品を使用できる。
【0086】
トレッド用ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
【0087】
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0088】
キャップトレッド用ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。
【0089】
キャップトレッド用ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
キャップトレッド用ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。
【0090】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0091】
キャップトレッド用ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。
キャップトレッド用ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは12.0質量部以下、より好ましくは11.0質量部以下、更に好ましくは10.0質量部以下である。
【0092】
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0093】
キャップトレッド用ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。
キャップトレッド用ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。
【0094】
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0095】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0096】
キャップトレッド用ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成し、良好な性能を付与するという点で、硫黄を配合することが好ましい。
【0097】
キャップトレッド用ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.7質量部以上である。該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。
【0098】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
キャップトレッド用ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
キャップトレッド用ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。上限は、好ましくは8.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。
【0100】
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、ベンゾチアゾール系加硫促進剤が好ましい。
【0101】
キャップトレッド用ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0102】
また、キャップトレッド以外の他の部材を構成するゴム組成物においても、前述の材料を用い、適宜配合量を変更して使用することが可能である。なお、キャップトレッド以外の他の部材が周方向ベルト層、ベルト層、カーカス層などのスチールコードを補強材として含む部材の被覆ゴム層である場合には、スチールコードとの接着性を高める観点から、熱硬化性樹脂やコバルトなどのイオン化傾向が銅、亜鉛の間に位置する元素を含む脂肪酸塩を含むことが好ましい。
【0103】
キャップトレッド用ゴム組成物などの製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0104】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0105】
本発明の適用が可能なタイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。特に、夏用タイヤ(サマータイヤ)、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)として好適に使用できる。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なかでも、重荷重用タイヤであることが望ましい。
なお、ここで、重荷重用タイヤとは、4輪以上のタイヤが装着される自動車に装着されるタイヤであって、正規荷重が1400kg以上のものを指す。
【0106】
タイヤは、通常の方法により製造できる。例えば、公知の方法で、未加硫の状態で、キャップトレッドや、コードと被覆ゴムを一体化した周方向補強層などの各部材を作製し、各部材をタイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0107】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」とも称する。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2の偏平率は、好ましくは65%以下である。言い換えれば、このタイヤ2は、65%以下の偏平率を有することが望ましい。
【0108】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0109】
このタイヤ2は、キャップ部26(キャップトレッド)及びベース部24からなるトレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、一対のチェーファー10、カーカス12、一対のクッション層14、インナーライナー16、一対のスチールフィラー18、及び本発明における周方向補強層を含む補強層20を備える。
【0110】
トレッド4は、その外面において路面と接地する。この外面は、トレッド面22である。トレッド4は、路面と接地するトレッド面22を有する。
図1において符号PCは、トレッド面22と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道とも称される。
【0111】
図1のトレッド4は、ベース部24と、このベース部24の径方向外側に位置するキャップ部26とを備える。ベース部24は、例えば、低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ部26は、例えば、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
図1に示されるように、ベース部24は補強層20全体を覆うことが望ましい。キャップ部26はベース部24全体を覆うことが望ましい。
【0112】
なお、
図1では、キャップ部26及びベース部24からなる2層構造トレッド4の例が示されているが、本発明のタイヤは、トレッド4が単層構造トレッド、3層以上の構造を有するトレッドでもよい。
【0113】
このタイヤ2は、少なくとも3本の周方向溝28がトレッド4に刻まれることが望ましい。
図1に示されたタイヤ2のトレッド4には、4本の周方向溝28が刻まれる。これら周方向溝28は、軸方向に並列され、周方向に連続して延びる。
【0114】
トレッド4に刻まれた4本の周方向溝28のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝28がショルダー周方向溝28sである。軸方向において、ショルダー周方向溝28sの内側に位置する周方向溝28がミドル周方向溝28mである。このタイヤ2では、4本の周方向溝28は、一対のミドル周方向溝28mと一対のショルダー周方向溝28sとで構成される。
【0115】
前述したように、トレッド4には少なくとも3本の周方向溝28が刻まれることが望ましく、この場合、このトレッド4には少なくとも4本の陸部30が構成される。
図1に示されたタイヤ2のトレッド4には4本の周方向溝28が刻まれ5本の陸部30が構成される。これら陸部30は、軸方向に並列され、周方向に連続して延びる。
【0116】
トレッド4に構成された5本の陸部30のうち、軸方向において外側に位置する陸部30がショルダー陸部30sである。ショルダー陸部30sは、トレッド面22の端PEを含む。軸方向において、ショルダー陸部30sの内側に位置する陸部30はミドル陸部30mである。軸方向において、ミドル陸部30mの内側に位置する陸部30がセンター陸部30cである。このタイヤ2では、5本の陸部30は、センター陸部30cと、一対のミドル陸部30mと、一対のショルダー陸部30sとで構成される。
【0117】
このタイヤ2では、トレッド4に構成される陸部30のうち、軸方向において中央に位置する陸部30、すなわちセンター陸部30cが赤道面上に位置する。このタイヤ2は、陸部30が赤道面上に位置するように構成されたトレッド4を備える。周方向溝28が赤道面上に位置するように、このトレッド4が構成されてもよい。
【0118】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端から径方向内向きにのびる。サイドウォール6はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6は、架橋ゴムからなることが望ましい。
【0119】
それぞれのビード8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。ビード8は、コア32と、エイペックス34とを備える。
【0120】
コア32は周方向に延びる。コア32は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。コア32は略六角形の断面形状を有することが望ましい。
【0121】
エイペックス34はコア32の径方向外側に位置する。エイペックス34は内側エイペックス34uと外側エイペックス34sとを備える。内側エイペックス34uはコア32から径方向外向きに延びる。外側エイペックス34sは内側エイペックス34uよりも径方向外側に位置する。内側エイペックス34uは硬質な架橋ゴムからなることが望ましい。外側エイペックス34sは内側エイペックス34uよりも軟質な架橋ゴムからなることが望ましい。
【0122】
それぞれのチェーファー10は、ビード8の軸方向外側に位置する。チェーファー10は、サイドウォール6の径方向内側に位置する。チェーファー10は、リム(図示されず)と接触する。チェーファー10は、耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなることが望ましい。
【0123】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6、及び一対のチェーファー10の内側に位置する。カーカス12は一方のビード8と他方のビード8との間を架け渡す。
【0124】
カーカス12は少なくとも1枚のカーカスプライ36を備える。このタイヤ2のカーカス12は1枚のカーカスプライ36からなる。カーカスプライ36は、それぞれのコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。カーカスプライ36は、一方のコア32から他方のコア32に向かってのびるプライ本体36aと、このプライ本体36aに連なりそれぞれのコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部36bとを有する。
【0125】
図示されないが、カーカスプライ36は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは赤道面と交差する。このタイヤ2では、カーカスコードが赤道面に対してなす角度(以下、カーカスコードの交差角度)は、例えば、70°以上90°以下であることが望ましい。このカーカス12はラジアル構造を有する。このタイヤ2のカーカスコードはスチールコードであることが望ましい。
【0126】
このタイヤ2では、それぞれのクッション層14は、補強層20の端20eにおいて、補強層20とカーカス12(詳細には、カーカスプライ36のプライ本体36a)との間に位置する。クッション層14の軸方向内端14ueは補強層20の端20eの軸方向内側に位置する。クッション層14の軸方向外端14seは補強層の20の端20eの軸方向外側に位置する。クッション層14は軟質な架橋ゴムからなることが望ましい。
【0127】
インナーライナー16は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー16はインスレーション(図示されず)を介してカーカス12の内面に接合される。インナーライナー16はタイヤ2の内面を構成する。インナーライナー16は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなることが望ましい。インナーライナー16はタイヤ2の内圧を保持する。
【0128】
それぞれのスチールフィラー18は、ビード部Bに位置する。スチールフィラー18は、カーカスプライ36に沿ってコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。図示されないが、スチールフィラー18は並列した多数のフィラーコードを含む。フィラーコードとしてスチールコードが用いられることが望ましい。
【0129】
周方向補強層を含む補強層20は、トレッド4の径方向内側に位置する。
補強層20とは、トレッド4とカーカス12との間に位置する1層又は2層以上からなる層であり、本発明における周方向補強層とは、補強層20を構成する層の1層又は2層以上のタイヤ周方向に巻き付けられて形成され、タイヤ赤道面と交差する層を指す。本発明では、補強層を構成する任意の層を、周方向補強層とすることが可能であり、補強層を構成するタイヤ径方向の最外層、最内層、これらの内側に位置する層のいずれも周方向補強層とでき、1層又は2層以上を周方向補強層とできる。周方向補強層として、具体的には、タイヤにおける、いわゆる周方向ベルト層、周方向バンド層などが挙げられる。
【0130】
図1に示されているタイヤ2は、周方向補強層42とベルト40とを備える補強層20を含む。このタイヤ2では、補強層20の他に一対のエッジバンド44を備える。なお、本発明における周方向補強層とは、タイヤ軸方向に繋がっており、タイヤ赤道面と交差している補強層である。
【0131】
以下では、周方向補強層42がタイヤ半径方向外側と内側に角度を有するベルト層を有する形態を説明する。
【0132】
周方向補強層42は、軸方向外側両端42eが赤道面を挟んで相対するように配置される。周方向補強層42の軸方向外側端42eはベルト40の軸方向外側端40eの軸方向内側に位置する。
【0133】
このタイヤ2では、一対のエッジバンド44は、赤道面を挟んで軸方向に離間して配置される。このタイヤ2では、それぞれのエッジバンド44は、トレッド4と周方向補強層42との間に位置する。エッジバンド44は、周方向補強層42の軸方向外側端42eの径方向外側に位置する。エッジバンド44の軸方向内端44ueは周方向補強層42の軸方向外側端42eの軸方向内側に位置する。エッジバンド44の軸方向外端44seは周方向補強層42の軸方向外側端42eの軸方向外側に位置する。エッジバンド44は径方向において周方向補強層42の軸方向外側端42eと重複する。
このタイヤ2では、エッジバンド44の軸方向外端44se位置が軸方向において周方向補強層42の軸方向外側端42e位置と一致していてもよい。この場合においても、エッジバンド44は、周方向補強層42の軸方向外側端42eの径方向外側に位置し、径方向において周方向補強層42の軸方向外側端42eと重複する。
【0134】
ベルト40は、径方向に並ぶ、少なくとも3枚のベルトプライ46を備えることが望ましい。各ベルトプライ46は、両端46eが赤道面を挟んで相対するように配置される。
このタイヤ2では、ベルト40は、第一ベルトプライ46A、第二ベルトプライ46B、第三ベルトプライ46C及び第四ベルトプライ46Dを備える。
このタイヤ2では、第一ベルトプライ46Aは、径方向において、ベルト40を構成する4枚のベルトプライ46のうち最も内側に位置するベルトプライ46である。このタイヤ2では、第一ベルトプライ46Aはトレッド4の内側においてカーカス12に積層される。
第二ベルトプライ46Bは第一ベルトプライ46Aの径方向外側に位置する。
第三ベルトプライ46Cは第二ベルトプライ46Bの径方向外側に位置する。
第四ベルトプライ46Dは第三ベルトプライ46Cの径方向外側に位置する。このタイヤ2では、第四ベルトプライ46Dが、径方向において、ベルト40を構成する4枚のベルトプライ46のうち最も外側に位置するベルトプライ46である。
【0135】
このタイヤ2では、第四ベルトプライ46Dは一対のエッジバンド44の間に位置する。第三ベルトプライ46Cは一対のエッジバンド44の径方向内側に位置する。一対のエッジバンド44は、第一ベルトプライ46A、第二ベルトプライ46B及び第三ベルトプライ46Cの径方向外側に位置する。
【0136】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ46Bが最も広い軸方向幅を有し、第四ベルトプライ46Dが最も狭い軸方向幅を有する。第一ベルトプライ46Aと第三ベルトプライ46Cとは同等の軸方向幅を有するか、第一ベルトプライ46Aの軸方向幅が第三ベルトプライ46Cの軸方向幅よりも僅かに広い。
【0137】
このタイヤ2のベルト40の軸方向外側端40eは、ベルト40を構成する複数のベルトプライ46のうち、最も広い軸方向幅を有するベルトプライ46の軸方向外側端40eで表される。このタイヤ2のベルト40では、前述したように、第二ベルトプライ46Bが最も広い軸方向幅を有する。このタイヤ2のベルト40の軸方向外側端40eは第二ベルトプライ46Bの端46Beで表される。ベルト40の軸方向外側端40eは補強層20の軸方向外側端20eでもある。
【0138】
図1に示されるように、このタイヤ2では、第一ベルトプライ46Aの軸方向外側端46Aeはショルダー周方向溝28sの軸方向外側に位置する。第二ベルトプライ46Bの軸方向外側端46Beもショルダー周方向溝28sの軸方向外側に位置する。第三ベルトプライ46Cの軸方向外側端46Ceもショルダー周方向溝28sの軸方向外側に位置する。第四ベルトプライ46Dの軸方向外側端46Deもショルダー周方向溝28sの軸方向外側に位置する。このタイヤ2では、第四ベルトプライ46Dの軸方向外側端46Deがショルダー周方向溝28sの軸方向内側に位置してもよい。
【0139】
図1に示されるように、このタイヤ2では、第一ベルトプライ46Aの軸方向外側端46Aeは周方向補強層42の軸方向外側端42eの軸方向外側に位置する。第二ベルトプライ46Bの軸方向外側端46Beも周方向補強層42の軸方向外側端42eの軸方向外側に位置する。第三ベルトプライ46Cの軸方向外側端46Ceも周方向補強層42の軸方向外側端42eの軸方向外側に位置する。
【0140】
図2は、周方向補強層42を含む補強層20の構成を示す。
図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。
図2の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。紙面の表側が径方向外側であり、裏側が径方向内側である。
【0141】
図2の補強層では、周方向補強層42及びエッジバンド44は、らせん状に巻かれたバンドコード48を含む。
図2では、説明の便宜のためバンドコード48は実線で表されるが、バンドコード48は被覆ゴム50で覆われる。
【0142】
このタイヤ2では、バンドコード48はスチールコード、又は有機繊維からなるコード(以下、有機繊維コード)であることが好ましく、スチールコードであることがより好ましい。バンドコード48として有機繊維コードが用いられる場合、この有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、及びアラミド繊維が例示される。このタイヤ2では、周方向補強層42のバンドコード48Fと、エッジバンド44のバンドコード48Eとに同じコードが用いられてもよく、異なるコードが用いられてもよい。タイヤ2の仕様に応じて、周方向補強層42及びエッジバンド44に用いられるバンドコード48が決められる。
【0143】
前述したように、周方向補強層42はらせん状に巻かれたバンドコード48Fを含む。周方向補強層42はジョイントレス構造を有する。周方向補強層42において、バンドコード48Fが赤道面においてタイヤ周方向に対してなす角度は、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下である。バンドコード48Fは実質的に周方向に延びる。
【0144】
周方向補強層42内におけるバンドコード48Fの配列密度は、20エンズ/5cm以上35エンズ/5cm以下であることが望ましい。バンドコード48Fの配列密度は、周方向補強層42内のバンドコード48Fの配列方向に垂直な断面において、周方向補強層42の5cm幅あたりに含まれるバンドコード48Fの本数により表される。
【0145】
前述したように、エッジバンド44は螺旋状に巻かれたバンドコード48Eを含む。エッジバンド44はジョイントレス構造を有する。エッジバンド44において、バンドコード48Eが周方向に対してなす角度は、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下である。エッジバンド44のバンドコード48Eは実質的に周方向に延びる。
【0146】
エッジバンド44におけるバンドコード48Eの配列密度は、20エンズ/5cm以上35エンズ/5cm以下であることが望ましい。このバンドコード48Eの配列密度は、このバンドコード48Eの延在方向に対して垂直な面に沿った、エッジバンド44の断面において、このエッジバンド44の5cm幅あたりに含まれるバンドコード48Eの断面数により表される。
【0147】
本発明において、並列したコードを含むタイヤの要素、5cm幅あたりに含まれるコードの本数が、この要素に含まれるコードの配列密度(単位は、エンズ/5cmである。)として表される。コードの配列密度は、特に言及がない限り、コードの長さ方向に対して垂直な面で切断することにより得られる要素の断面において得られる。
【0148】
図2に示されるように、ベルト40を構成する各ベルトプライ46は並列した多数のベルトコード52を含む。
図2では、説明の便宜のため、ベルトコード52は実線で表されるが、ベルトコード52は被覆ゴム54で覆われる。
このタイヤ2のベルトコード52はスチールコードであることが望ましい。各ベルトプライ46におけるベルトコード52の配列密度は、15エンズ/5cm以上30エンズ/5cm以下であることが望ましい。
【0149】
各ベルトプライ46においてベルトコード52は、周方向に対して傾斜する。
第一ベルトプライ46Aに含まれるベルトコード52の傾斜の向き(以下、第一ベルトコード52Aの傾斜方向)は、第二ベルトプライ46Bに含まれるベルトコード52の傾斜の向き(以下、第二ベルトコード52Bの傾斜方向)と同じであることが望ましい。
第二ベルトコード52Bの傾斜方向は、第三ベルトプライ46Cに含まれるベルトコード52の傾斜の向き(以下、第三ベルトコード52Cの傾斜方向)と逆であることが望ましい。
第三ベルトコード52Cの傾斜方向は、第四ベルトプライ46Dに含まれるベルトコード52の傾斜の向き(以下、第四ベルトコード52Dの傾斜方向)と同じであることが望ましい。
このタイヤ2では、第二ベルトコード52Bと第三ベルトコード52Cとが交差するようにベルト40は構成される。このベルト40は接地形状の安定化に貢献する。なお、第一ベルトコード52Aの傾斜方向が第二ベルトコード52Bの傾斜方向と逆であってもよい。第三ベルトコード52Cの傾斜方向が第四ベルトコード52Dの傾斜方向と逆であってもよい。
【0150】
図2において、角度θ1は、第一ベルトプライ46Aに含まれるベルトコード52が赤道面に対してなす角度(以下、第一ベルトコード52Aの傾斜角度θ1)である。角度θ2は、第二ベルトプライ46Bに含まれるベルトコード52が赤道面に対してなす角度(以下、第二ベルトコード52Bの傾斜角度θ2)である。角度θ3は、第三ベルトプライ46Cに含まれるベルトコード52が赤道面に対してなす角度(以下、第三ベルトコード52Cの傾斜角度θ3)である。角度θ4は、第四ベルトプライ46Dに含まれるベルトコード52が赤道面に対してなす角度(以下、第四ベルトコード52Dの傾斜角度θ4)である。
【0151】
このタイヤ2では、第一ベルトコード52Aの傾斜角度θ1、第二ベルトコード52Bの傾斜角度θ2、第三ベルトコード52Cの傾斜角度θ3、及び第四ベルトコード52Dの傾斜角度θ4は、10°以上が好ましく、60°以下が好ましい。
トレッドTの動きが効果的に拘束され、形状変化の小さい、安定した形状の接地面が得られる観点から、第一ベルトコード52Aの傾斜角度θ1は40°以上が好ましく、60°以下が好ましい。第二ベルトコード52Bの傾斜角度θ2は15°以上がより好ましく、30°以下がより好ましい。第二ベルトコード52Bの傾斜角度θ2は20°以下がさらに好ましい。第三ベルトコード52Cの傾斜角度θ3は15°以上がより好ましく、30°以下がより好ましい。第三ベルトコード52Cの傾斜角度θ3は20°以下がさらに好ましい。第四ベルトコード52Dの傾斜角度θ4は、15°以上がより好ましく、50°以下がより好ましい。
【0152】
図1、2のタイヤ2は、周方向補強層42が一層の形態であるが、複数層の周方向補強層42を有しても良い。
【0153】
このタイヤ2は、周方向補強層42が2本以上のバンドコード48Fを引きそろえた束を巻き付けた層を形成する。
【0154】
図3は、2本以上のコードを引きそろえた束の断面模式図で、コードの長手方向と垂直な面での断面模式図の一例を示している。具体的には、6本のバンドコード48を引きそろえた束の断面模式図で、引きそろえた6本のバンドコード48が被覆ゴム50と共に一体化された、6本のバンドコード48を含む束を模式的に示している。
【0155】
図4は、2本以上のバンドコード48を引きそろえた束をタイヤに巻き付けた状態の周方向補強層42の模式図が示されている。
図4において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。具体的には、
図4(a)は、タイヤ幅方向(タイヤ軸方向)の一方から、他方に向かって6本のバンドコード48を引きそろえた束を巻き付けた周方向補強層42の上面図であり、
図4(b)は、タイヤ幅方向(タイヤ軸方向)の一方から、他方に向かって2本のバンドコード48を引きそろえた束を巻き付けたバンド38の上面図である。
【0156】
このタイヤ2は、2本以上のバンドコード48を引きそろえた束を巻き付けたジョイントレス構造の周方向補強層42を備えている。このように、タイヤ2では、より効果が得られる観点から、周方向補強層が、タイヤ幅方向(タイヤ軸方向)の一方から、他方に向かって2本以上のコードを引きそろえた束を巻き付けたものであることが望ましい。
【0157】
タイヤ幅方向の一方から、他方に向かって2本以上のコードを引きそろえた束を巻き付けた周方向補強層を用いることで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、前述のとおり、ジョイントレスバンドを2本以上のコード束で巻きつけることによって、ボイドの発生確率が低下し、良好な耐久性能が得られるため、乗り心地性能及び耐久性能の総合性能が顕著に向上すると推察される。
【0158】
周方向補強層42のバンドコード48は、より効果が得られる観点から、コード1本の曲げ剛性(F)が181cm・g以下であることが望ましい。曲げ剛性(F)は、好ましくは130cm・g以下、より好ましくは104cm・g以下、更に好ましくは91cm・g以下、特に好ましくは83cm・g以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは10cm・g以上、より好ましくは25cm・g以上、更に好ましくは33cm・g以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、曲げ剛性は、後述の実施例に記載の方法で得られる値である。
【0159】
コード1本の曲げ剛性を所定以下、特に130cm・g以下に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、曲げ剛性値が所定以上の場合、タイヤが段差等を乗り越える際に、その段差の形状に追従してタイヤが変形させることが可能となり、突き上げ衝撃が防止できるため、良好な乗り心地を確保できる。よって、乗り心地性能及び耐久性能の総合性能が顕著に向上すると推察される。
【0160】
タイヤ2において、引きそろえられた束を構成するバンドコード48の本数(N)は、より効果が得られる観点から、好ましくは2本以上、より好ましくは4本以上、更に好ましくは5本以上であり、また、好ましくは10本以下、より好ましくは8本以下、更に好ましくは7本以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、コードの本数は、バンド38、ベルト40などの周方向補強層をタイヤに巻き始めた部分、巻き終わった部分について、断面を確認することで、確認可できる。
【0161】
周方向補強層42において、より効果が得られる観点から、バンドコード48のコード1本の曲げ剛性(F)と、引きそろえられたバンドコード48の本数(N)との積(F×N)で表される、束剛性S〔cm・g・本〕が、好ましくは1340以下、より好ましくは905以下、更に好ましくは580以下、特に好ましくは415以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは165以上、より好ましくは268以上、更に好ましくは340以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0162】
周方向補強層42のバンドコード48は、より効果が得られる観点から、2.5~49.0N荷重時における初期伸度が、好ましくは0.25%以上、より好ましくは0.40%以上、更に好ましくは0.44%以上、特に好ましくは0.50%以上であり、また、好ましくは0.82%以下、より好ましくは0.80%以下、更に好ましくは0.75%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、2.5~49.0N荷重時における初期伸度は、後述の実施例に記載の方法で得られる値である。
【0163】
2.5~49.0N荷重時における初期伸度が所定範囲、特に0.40~0.80%の範囲に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
初期伸度を所定以上とすると、所定の伸びを確保できるため、バンドコードのタイヤ半径方向内側にあるベルトコード又はプライコードと接触することが防止されるので、走行中にコード同士が擦れ合うことがなく、コード破断を防止できることから、良好な耐久性能が得られる。
また、所定以下とすると、バンドコードは拘束力を発揮し、走行中のふくらみを抑制し、走行前後における外形成長を抑制することができ、タイヤ性能を長期間持続させることが出来る。
以上により、耐久性能が向上し、乗り心地性能及び耐久性能の総合性能が顕著に向上すると推察される。
【0164】
周方向補強層42のバンドコード48は、N本のフィラメントを合わせたストランドをM本より合わせたM×N構造で構成されていることが好ましい。ここで、M、Nは1以上の整数であるが、効果がより良好に得られる観点から、Mは2~4であることが望ましく、Nは3~5、7~12であることが望ましい。
【0165】
図5は、M×N構造で構成されたコードの断面模式図を示しており、それぞれ、1×7、2×7、3×7、4×7、5×7、6×7、7×7構造のコードを示している。
【0166】
M×N構造で構成されたコードにおいて、特にMが2~4、Nが3~5、7~12の場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
Mが1または6以上の場合、コードにコアストランドが発生し、初期伸度が低下し、その伸びづらさから、バンドコードのタイヤ半径方向内側にあるベルトコードまたはプライコードと接触してしまい、走行中にコード同士が擦れ合って、コード破断につながることが懸念される。そのため、Mを2~4の範囲とすることによりタイヤ耐久性能を向上させやすくすることができる。
また、Nが2以下の場合、ストランド内のゴム侵入度が大きくなり、曲げ剛性が上がり、エンベロープ性能が低下し、乗り心地が悪化する。
また、Nが6の場合、ストランドは1+5構成になり、この時ゴム侵入度が大きくなり、曲げ剛性が上がり、エンベロープ性能が低下する。
また、Nが13以上の場合、初期伸度が低下し、その伸びづらさから、バンドコードのタイヤ半径方向内側にあるベルトコードまたはプライコードと接触してしまい、走行中にコード同士が擦れ合って、コード破断につながることが懸念される。
以上により、Mが2~4、Nが3~5、7~12の場合、乗り心地性能及び耐久性能の総合性能が顕著に向上すると推察される。
【0167】
周方向補強層42のバンドコード48は、フィラメントの径が、0.10mm以上、0.50mm以下であることが好ましい。Mが2以上である場合、撚り合わせたコードの外接円の径が、0.2mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。単線のコードからなる1×1構造である場合、コードの長手方向に垂直な断面形状は扁平形状であっても良い。断面が扁平形状である場合、短径と長径の単純平均を外径として扱う。
【0168】
周方向補強層42のバンドコード48のゴム侵入度は、より効果が得られる観点から、ストランド間が56%以上であることが望ましい。ストランド間のゴム侵入度は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは98%以上であり、100%でもよい。上限は特に限定されず、ストランド間のゴム侵入度は大きいほど望ましい。
【0169】
本発明において、コードのストランド間のゴム侵入度(%)は、以下の方法で計測した値を指す。
1:コードを所定の長さ(10cm)で切り出す。
2:切り出したコードから、1つのストランドを抜き取る。
3:ストランドを1つ抜き出した後、残りのストランド間にゴムが付着している領域の長さを測定し、ゴムが付着している領域の長さ(cm)/10cm×100(%)を算出し、ストランド間のゴム侵入度(%)とする。
【0170】
周方向補強層42のバンドコード48のゴム侵入度は、より効果が得られる観点から、ストランド内が99%以下であることが望ましい。ストランド内のゴム侵入度は、好ましくは50%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下であり、0%でもよい。下限は特に限定されず、ストランド内のゴム侵入度は小さいほど望ましい。
【0171】
本発明において、コードのストランド内のゴム侵入度(%)は、以下の方法で計測した値を指す。
1:1つのストランドを所定の長さ(10cm)抜き取る。
2:抜き取っとストランドから、1本のフィラメントを抜き取る。
3:フィラメントを1本抜き出した後、残りのフィラメント間にゴムが付着している領域の長さを測定し、ゴムが付着している領域の長さ(cm)/10cm×100(%)を算出し、ストランド内のゴム侵入度(%)とする。
なお、7本のフィラメントが拠りあわされている場合には、該フィラメントと接していたコアフィラメントに隣り合う2か所の領域を測定し、いずれか一方にゴムが付着していなかった場合は、その部分はゴム侵入していない領域としてカウントする。
【0172】
ストランド間のゴム侵入度が所定以上、ストランド内のゴム侵入度が所定以下、特にストランド間のゴム侵入度が80%以上、ストランド内のゴム侵入度が50%以下に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
ストランド間のゴム侵入度が小さい場合、釘踏みなどの穴から水分が侵入した際、水分がバンドコード長手方向に進展し、コードが錆びていく。隣り合ったストランド同士が走行中に擦れ合うことで、フィラメントは徐々に擦り減っていくが(フレッティング現象)、錆びている時はそれが早くなる。そこで、ストランド間のゴム侵入度を所定以上に保つことで、水分がバンドコードの空隙を進展するのを防ぐ。さらに、ストランド間にゴムがあるため、フレッティングが生じずにコードの擦り減りを抑えられ、コードの破断を抑制し、タイヤ耐久性能が向上する。
ストランド内のゴム侵入度が低いほど、バンドコードの曲げ剛性が低下し、エンベロープ性能が向上し、乗り心地が向上する。ストランド内のフィラメントは撚りピッチが同じであるためフィラメント同士の擦れによるフレッティングは生じない。仮に釘踏みなどの穴から水分が侵入し、ストランド内に水分が入り、ストランド内部の一部が錆びてしまっても、フレッティングが生じないため、コードの破断は問題にならない。また、バンドコードとゴムとの接着はストランド間の高いゴム侵入度で担保できているため、ストランド内の錆びは問題にならない。
以上により、乗り心地性能及び耐久性能の総合性能が顕著に向上すると推察される。
【0173】
図6は、
図1に示された、タイヤ2の断面の一部を示す。この
図6は、このタイヤ2のトレッド部Tを示す。
【0174】
このタイヤ2では、第二ベルトプライ46Bの軸方向外側端46Beと、第三ベルトプライ46Cの軸方向外側端46Ceとはそれぞれ、ゴム層56で覆われる。ゴム層56で覆われた第二ベルトプライ46Bの軸方向外側端46Beと第三ベルトプライ46Cの軸方向外側端46Ceとの間には、さらに2枚のゴム層56が配置される。このタイヤ2では、第二ベルトプライ46Bの軸方向外側端46Beと第三ベルトプライ46Cの軸方向外側端46Ceとの間に、計4枚のゴム層56からなるエッジ部材58が構成される。エッジ部材58は架橋ゴムからなることが望ましい。エッジ部材58は、第二ベルトプライ46Bの軸方向外側端46Beと第三ベルトプライ46Cの軸方向外側端46Ceとの間隔維持に貢献する。このタイヤ2では、走行による、第二ベルトプライ46Bの軸方向外側端46Beと第三ベルトプライ46Cの軸方向外側端46Ceとの位置関係の変化が抑えられる。エッジ部材58は、補強層20の一部である。このタイヤ2の補強層20は、周方向補強層42及びベルト40に加え、一対のエッジ部材58を備える。
【0175】
前述したように、このタイヤ2では、周方向補強層42は、軸方向外側両端42eが赤道面を挟んで相対するように配置される。周方向補強層42は、赤道面からそれぞれの軸方向外側端42eに向かって軸方向にのびる。このタイヤ2ではさらに、エッジバンド44が、径方向において、周方向補強層42の軸方向外側端42eの外側に位置する。
【0176】
このタイヤ2は低偏平なタイヤであるが、周方向補強層42及び一対のエッジバンド44がトレッド部Tの変形を効果的に抑える。タイヤ2の形状変化、例えばカーカス12の輪郭(以下、ケースラインとも称される。)の変化が抑えられるので、接地形状の変化が抑えられる。
【0177】
前述したように、周方向補強層42に含まれるバンドコード48Fは実質的に周方向に延びる。走行状態にあるタイヤ2の周方向補強層42には、径方向において内側から外側に向かって広がるように力が作用する。この力によってバンドコード48Fの張力が高まる。
【0178】
このタイヤ2では、エッジバンド44が周方向補強層42の軸方向外側端42eを拘束する。周方向補強層42に含まれるバンドコード48Fの張力変動が抑えられるので、この張力変動によるバンドコード48Fの破断の発生が抑えられる。このタイヤ2の周方向補強層42は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。エッジバンド44は周方向補強層42に比して狭い。そのため、エッジバンド44のバンドコード48Eに周方向補強層42のような張力変動は生じにくい。エッジバンド44のバンドコード48Eに破断は生じにくい。
【0179】
例えば
図6に示されるように、このタイヤ2では、周方向補強層42よりも幅の広い第二ベルトプライ46Bと第三ベルトプライ46Cとの間に周方向補強層42は配置される。第二ベルトプライ46B及び第三ベルトプライ46Cは、周方向補強層42に作用する力を抑制する。特に、第二ベルトプライ46Bに含まれるベルトコード52と第三ベルトプライ46Cに含まれるベルトコード52とは互いに交差する関係にある場合、周方向補強層42に作用する力が効果的に抑制される。周方向補強層42に含まれるバンドコード48の張力変動が抑えられるので、この張力変動によるバンドコード48の破断の発生が抑えられる。このタイヤ2の周方向補強層42は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、ベルト40に含まれる、第一ベルトプライ46A、第二ベルトプライ46B及び第三ベルトプライ46Cのうち、第二ベルトプライ46B及び第三ベルトプライ46Cは周方向補強層42よりも幅広く、この第二ベルトプライ46Bと第三ベルトプライ46Cとの間に周方向補強層42は位置するのが好ましい。この場合、第二ベルトプライ46Bに含まれるベルトコード52の傾斜の向きが第三ベルトプライ46Cに含まれるベルトコードの傾斜の向きと逆であるのがより好ましい。
【0180】
このタイヤ2では、周方向補強層42のバンドコード48の張力変動を抑え、バンドコード48の破断を防止するために、周方向補強層42の軸方向外側端42eの外側にエッジバンド44が配置される。エッジバンド44が周方向補強層42を押さえつけるので、エッジバンド44の径方向内側部分には歪みが生じやすい状況にある。
前述したように、周方向補強層42は第二ベルトプライ46Bと第三ベルトプライ46Cとの間に位置する。言い換えれば、エッジバンド44と周方向補強層42との間に、第三ベルトプライ46Cが位置する。第三ベルトプライ46Cはベルトコード52を含むので、エッジバンド44が第三ベルトプライ46Cに近いとエッジバンド44の径方向内側部分に歪みが集中し、歪みを起因とするベルトエッジルースが発生することが懸念される。逆にエッジバンド44が第三ベルトプライ46Cから遠いと、エッジバンド44と第三ベルトプライ46Cとの間の部分が大きなボリュームを有する。ゴムは変形により発熱する傾向にあることから、この場合、発熱を起因とするベルトエッジルースが発生することが懸念される。
【0181】
図6において、Dは、このタイヤ2における周方向補強層42のタイヤ幅方向端部42e(タイヤ軸方向外側端部)から、トレッド面22に引いた直線上でのトレッド4の厚みを示しており、当該直線上でのベース部24とキャップ部26との総厚みである。
【0182】
本発明において、周方向補強層のタイヤ幅方向端部からトレッド表面に引いた直線上でのトレッドの厚み(D)は、周方向補強層のタイヤ幅方向端部を通るタイヤ表面の法線に沿って計測される、該法線上でのトレッドの厚みである。なお、タイヤ2が周方向補強層42を複数層備える場合においては、これらのうち、最も軸方向幅の広い周方向補強層42のタイヤ幅方向端部42eから、トレッド面22に引いた直線上でのトレッド厚みを指す。
【0183】
周方向補強層42のタイヤ幅方向端部42eからトレッド面22に引いた直線上でのトレッド4の厚みDは、より効果が得られる観点から、好ましくは10.0mm以上、より好ましくは12.9mm以上、更に好ましくは13.6mm以上、特に好ましくは14.1mm以上であり、また、好ましくは20.1mm以下、より好ましくは18.1mm以下、更に好ましくは16.8mm以下、特に好ましくは15.5mm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0184】
本発明において、より効果が得られる観点から、周方向補強層42のタイヤ幅方向端部からトレッド表面22に引いた直線上でのトレッド4の厚みD〔mm〕と、キャップ部26を形成するゴム組成物の温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードで測定された複素弾性率E〔MPa〕との積(E×D)で表される、トレッドの剛性G〔N/mm〕が、好ましくは65以上、より好ましくは80以上、更に好ましくは110以上、特に好ましくは133以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは160以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは145以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0185】
前述の作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のメカニズムにより奏するものと推察される。トレッドの剛性Gを65以上とすることにより、周方向補強層端部での変形を抑制しやすくすることができ、耐久性能を向上させやすくすることができると考えられる。一方でトレッドの剛性Gを160以下とすることにより、タイヤ幅方向外側における走行中の蓄熱を抑えることができ、熱によるゴムやゴムとコードの接着界面の破壊を防ぐことができ、耐久性能の低下を防ぐことができる。
【0186】
周方向補強層42を備えたタイヤ2では、周方向補強層42のバンドコード48Fのコード1本の曲げ剛性(F)と、引きそろえられた周方向補強層42のバンドコード48Fの本数(N)との積(F×N)で表される、束剛性S〔cm・g・本〕と、周方向補強層42のタイヤ幅方向端部からトレッド表面22に引いた直線上でのトレッド4の厚みD〔mm〕と、キャップ部26を形成するゴム組成物の温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードで測定された複素弾性率E〔MPa〕との積(E×D)で表される、トレッドの剛性G〔N/mm〕との比(S/G)〔10g・mm2・本/N〕が、10.6以下である。
S/Gは、好ましくは10.0以下、より好ましくは7.8以下、更に好ましくは6.8以下、特に好ましくは6.6以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは1.9以上、より好ましくは3.4以上、更に好ましくは4.1以上、特に好ましくは4.4以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0187】
周方向補強層42を備えたタイヤ2では、より効果が得られる観点から、周方向補強層42のバンドコード48Fの曲げ剛性F〔cm・g〕と、キャップ部26を形成するゴム組成物の温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードで測定された複素弾性率E〔MPa〕との比(F/E)〔cm・g/MPa〕が、好ましくは29以下、より好ましくは24以下、更に好ましくは19以下、特に好ましくは18以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは13以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0188】
前述の作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のメカニズムにより奏するものと推察される。キャップ部26の弾性率に対する、バンドコードの曲げ剛性の比を小さくすることにより、転動時の変形により、周方向補強層端部に応力が集中しやすくなることを抑制し、耐久性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0189】
周方向補強層42を備えたタイヤ2では、より効果が得られる観点から、周方向補強層42のバンドコード48Fの曲げ剛性F〔cm・g〕と、周方向補強層42のタイヤ幅方向端部からトレッド表面22に引いた直線上でのトレッド4の厚みD〔mm〕との比(F/D)〔10・g〕が、好ましくは13以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下、特に好ましくは5以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0190】
前述の作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のメカニズムにより奏するものと推察される。キャップ部26の厚みに対する、バンドコードの曲げ剛性の比を小さくすることにより、転動時の変形により、周方向補強層端部に応力が集中しやすくなることを抑制し、耐久性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0191】
このタイヤ2では、エッジバンド44と第三ベルトプライ46Cとの間に、架橋ゴムからなる緩衝層60を備えることが望ましい。
この緩衝層60は、シート状であるので、歪みを起因とするベルトエッジルースの発生リスクも、発熱を起因とするベルトエッジルースの発生リスクも効果的に低減される。この緩衝層60は、ベルトエッジルースの発生リスクの低減に貢献する。この観点から、補強層20が架橋ゴムからなる緩衝層60を備え、この緩衝層60が径方向において一対のエッジバンド44と第三ベルトプライ46Cとの間に位置するのが好ましい。このタイヤ2では、この緩衝層60の厚さは、適宜設定される。
【0192】
図6に示されるように、このタイヤ2の緩衝層60は、赤道面を挟んで相対して配置される一対の幅狭緩衝層62で構成される。それぞれの幅狭緩衝層62はそれぞれのエッジバンド44の直下に配置される。
このタイヤ2では、幅狭緩衝層62の軸方向外端62seの位置は軸方向において第三ベルトプライ46Cの外端46Cの位置と一致する。幅狭緩衝層62の軸方向外端62seの位置が軸方向においてエッジバンド44の軸方向外端44seの位置と一致していてもよい。幅狭緩衝層62の軸方向外端62seが第三ベルトプライ46Cの端46Ceとエッジバンド44の軸方向外端44seとの間に位置していてもよい。幅狭緩衝層62の軸方向外端62seの位置は、エッジバンド44による作用を考慮し、エッジバンド44の軸方向外端44seと、第三ベルトプライ46Cの端46Ceとの間で適宜調整される。
【0193】
このタイヤ2では、
図7に示されるように、緩衝層60が、両端64eが赤道面を挟んで相対して配置される幅広緩衝層64で構成されてもよい。この場合、一対の幅狭緩衝層62で構成された緩衝層60に比べて、タイヤ2を構成する要素の数が低減される。この
図7に示された補強層20aは生産性の向上に貢献できる。
【0194】
前述したように、このタイヤ2では、軸方向において、エッジバンド44の軸方向内端44ueは周方向補強層42の軸方向外側端42eの内側に位置する。
図6において、符号Weで示される長さは周方向補強層42の軸方向外側端42eからエッジバンド44の軸方向内端44ueまでの軸方向距離である。
【0195】
このタイヤ2では、エッジバンド44の軸方向内端44ue位置の設定には、ショルダー周方向溝28sの底を起点とする損傷の発生への関与が考慮される。ショルダー周方向溝28sの底を起点とする損傷の発生が効果的に抑えられる観点から、軸方向において、エッジバンド44の軸方向内端44ueは、ショルダー周方向溝28sの底よりも軸方向外側に位置するのが好ましく、ショルダー周方向溝28sよりもさらに軸方向外側に位置するのがより好ましい。このタイヤ2では、軸方向において、エッジバンド44の軸方向内端44ueがショルダー周方向溝28sの底よりも内側に位置してもよい。この場合、エッジバンド44の軸方向内端44ueは、軸方向において、ショルダー周方向溝28sよりもさらに内側に位置するのがより好ましい。
【0196】
図8には、補強層20の変形例が示される。この補強層20bでは、第四ベルトプライ46Dが除かれ、周方向補強層42の位置が変わっている以外は、
図6に示された補強層20の構成と概ね同等の構成を有する。
図6に示された補強層20を構成する要素と同じ要素には同一の符号を付して、説明は省略する。
【0197】
この補強層20bでは、周方向補強層42全体がベルト40の径方向外側に位置する。
図6に示された補強層20において第三ベルトプライ46Cと第二ベルトプライ46Bとの間に配置された周方向補強層42は、この補強層20bでは、第三ベルトプライ46Cの径方向外側に配置される。緩衝層60を構成する一対の幅狭緩衝層62は、一対のエッジバンド44と周方向補強層42との間に位置する。
【0198】
上記の
図1、2、6では、補強層のうち、周方向補強層42の半径方向内側及び外側にベルト層を有する形態を説明したが、前述のとおり、ベルト40を構成する各ベルトプライ(第一ベルトプライ46A、第二ベルトプライ46B、第三ベルトプライ46C、第四ベルトプライ46Dなど)の少なくとも1層が周方向補強層を構成する形態でもよい。
【0199】
ベルト40を構成するベルトプライが周方向補強層のタイヤである場合、当該周方向補強層について、前記S/Gが10.0以下を満たす。
このような場合も、当該周方向補強層のコード1本の曲げ剛性、コードの本数、コード1本の曲げ剛性(F)と引きそろえられたコードの本数(N)との積(F×N)、コードの2.5~49.0N荷重時における初期伸度、コードのM×N構造、フィラメントの径、コードのストランド間のゴム侵入度、コードのストランド内のゴム侵入度、周方向補強層のタイヤ幅方向端部からトレッド表面に引いた直線上でのトレッドの厚み(D)、周方向補強層のタイヤ幅方向端部からトレッド表面に引いた直線上でのトレッドの厚みをDとキャップトレッドを形成するゴム組成物の温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードで測定された複素弾性率をEとの積(E×D)で表されるトレッドの剛性G、周方向補強層のコードの曲げ剛性をFとキャップトレッドを形成するゴム組成物の温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードで測定された複素弾性率をEとの比(F/E)、周方向補強層のコードの曲げ剛性をFと周方向補強層のタイヤ幅方向端部からトレッド表面に引いた直線上でのトレッドの厚みをDとの比(F/D)は、それぞれ前述の周方向補強層42の場合と同様の範囲が望ましい。
【0200】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、乗り心地性能及び耐久性能の総合性能を向上できる。本発明は、特に、65%以下の偏平比の呼びを有する、低偏平な重荷重用空気入りタイヤ2において、顕著な効果を奏する。
【実施例0201】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。
【0202】
図1、2、6に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備える重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=355/50R22.5)を試作し、各種物性、評価(乗り心地性能、耐久性能)を次のような条件で測定、評価する。
周方向補強層(ジョイントレスバンド(JLB):タイヤ幅方向の一方から、他方に向かって2本以上のコードを引きそろえた束を巻き付けたジョイントレスバンド構造)
トレッド:キャップ部(配合:表1)及びベース部の2層構造トレッド
【0203】
表1のキャップ部の使用材料は、以下のとおりである。
NR:TSR20
BR1:UBE製のBR360B
BR2:CB24
カーボンブラック1:三菱化学(株)製のシーストN134(N2SA:148m2/g)
カーボンブラック2:三菱化学(株)製のシーストN220(N2SA:114m2/g)
シリカ:エボニック製ウルトラシルVN3(もみ殻シリカ、N2SA:175m2/g、平均一次粒子径:18nm)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
)
【0204】
<粘弾性試験>
試作タイヤのキャップトレッドから、サンプルを幅4mm、長さ20mm、厚さ1mmの大きさで採取し、TAインスツルメント社製のRSAシリーズを用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で、各サンプルの複素弾性率E(MPa)を測定する。
【0205】
<周方向補強層のバンドコードの曲げ剛性>
試作タイヤから取り出した周方向補強層のバンドコードに対して、TABER社(米国)製の剛性試験機(例えば150-D型)を用い、
図9に示ように、長さ145mmのバンドコードの両端をクランプに取り付けて、バンドコードに+15度、-15度の曲げ角度を付与する。その時の+15度での曲げモーメントと-15度での曲げモーメントとの平均値を曲げ剛性(g・cm)として定義する。
【0206】
<2.5~49.0N荷重時における周方向補強層のバンドコードの初期伸度>
試作タイヤから取り出した周方向補強層のバンドコードに対して、JIS G3510のスチールタイヤコード試験方法に準拠し、チャック間隔250mm、引張速度50mm/分の条件にて引張試験を行い、荷重2.5Nの荷重が加わった時点の伸びを0として、合計で49.0Nの力が加わった段階までの伸びを、初期伸びとして測定する。
【0207】
<乗り心地性能>
試作タイヤを試験車両(トラックターヘッド)に装着し、40km走行する。走行時の乗り心地性能について、1点から5点のドライバーの官能評価を行い、同様の評価を20人のドライバーで行う。20人のドライバーの評価点を合計し、基準比較例の値を100とする指数で評価する。数値が大きいほど、乗り心地性能が優れている。
【0208】
<耐久性能>
先ず、試作タイヤをリム(22.5×11.75)に組み込み、空気を充填しタイヤの内圧を正規内圧に調整する。このタイヤを試験車両(トラックターヘッド)のドライブ軸に装着する。荷物を積載したトレーラーをこの試験車両に牽引させて、アスファルト路面で構成したテストコースでこの試験車両を、所定の走行距離まで走行させる。
走行後のタイヤを、シアログラフィ又はX線により検査し、内部損傷の有無を確認する。
内部損傷が確認されない場合は、走行を続け、内部損傷が確認されるまで走行させる。
内部損傷が確認されるまでの基準比較例の走行距離を100とし、各試作タイヤの走行距離を指数で示す。指数が大きいほど、耐久性能が優れている。
【0209】
なお、基準比較例は、以下のとおりである。
乗り心地性能:比較例3
耐久性能:比較例6
【0210】
【0211】
本発明(1)は2本以上のコードを引きそろえた束を巻き付けた周方向補強層と、キャップトレッドとを備えたタイヤであって、
前記コードの曲げ剛性をF〔cm・g〕、引きそろえられた前記コードの本数をN〔本〕、前記周方向補強層のタイヤ幅方向端部からトレッド表面に引いた直線上でのトレッドの厚みをD〔mm〕、前記キャップトレッドを形成するゴム組成物の温度70℃、初期歪10%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードで測定された複素弾性率をE〔MPa〕とし、
前記周方向補強層の束剛性S〔cm・g・本〕をF×Nで表し、トレッドの剛性G〔N/mm〕をE×Dで表したとき、
前記トレッドの剛性Gに対する前記周方向補強層の束剛性Sの比S/G〔10g・mm2・本/N〕が10.6以下であるタイヤである。
【0212】
本発明(2)は周方向補強層のコードは、1本の曲げ剛性が130cm・g以下である本発明(1)記載のタイヤである。
【0213】
本発明(3)は周方向補強層のコードは、2.5~49.0N荷重時における初期伸度が0.40~0.80%である本発明(1)又は(2)記載のタイヤである。
【0214】
本発明(4)は周方向補強層のコードは、N本のフィラメントを合わせたものをM本より合わせたM×N構造(Mは2~4の整数であるである。Nは3~5、7~12の整数である。)で構成されている本発明(1)~(3)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0215】
本発明(5)は周方向補強層のコードのゴム侵入度は、ストランド間が80%以上、ストランド内が50%以下である本発明(1)~(4)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0216】
本発明(6)は周方向補強層は、タイヤ幅方向の一方から、他方に向かって2本以上のコードを引きそろえた束を巻き付けたものである本発明(1)~(5)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0217】
本発明(7)は周方向補強層の束剛性S〔cm・g・本〕が580以下である本発明(1)~(6)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0218】
本発明(8)はトレッドの剛性G〔N/mm〕が110以上である本発明(1)~(7)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0219】
本発明(9)はF/E〔cm・g/MPa〕が19以下である本発明(1)~(8)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0220】
本発明(10)はF/D〔10・g〕が6以下である本発明(1)~(9)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。