(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066117
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F02D 21/08 20060101AFI20240508BHJP
F02M 26/50 20160101ALI20240508BHJP
【FI】
F02D21/08 301C
F02M26/50 301
F02D21/08 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175444
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 裕二
(72)【発明者】
【氏名】新見 淳一
(72)【発明者】
【氏名】城之内 克成
(72)【発明者】
【氏名】井谷 昌裕
【テーマコード(参考)】
3G062
3G092
【Fターム(参考)】
3G062GA04
3G062GA06
3G062GA10
3G092AA17
3G092BA03
3G092DC08
3G092EA08
3G092EA11
3G092EA28
3G092EA29
3G092FA17
3G092HB01
3G092HE01
3G092HF08
(57)【要約】
【課題】EGRバルブにデポジットが堆積するリスクが低い場合には、EGRバルブをできるだけ開く制御を行って、排気ガスに含まれるNOxの外部環境への放出をできるだけ低減する。
【解決手段】エンジンは、EGRバルブを制御する制御部を備える。制御部は、少なくともエンジン回転数および燃料噴射量に応じて、少なくとも第1モード、第2モード、および第3モードの中から所定の制御モードを選択し、選択した制御モードでEGRバルブを制御する。第1モードは、EGRバルブを全閉する制御モードである。第2モードは、エンジンの運転状態に応じてEGRバルブの開度を調整する制御モードである。第3モードは、エンジンの運転状態に応じてEGRバルブの開度を調整するオン期間と、EGRバルブを全閉するオフ期間とを繰り返す制御モードである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドから排出される排気ガスの一部を、前記シリンダヘッドに気体を供給する吸気管にEGRガスとして還流させるEGR装置を備え、
前記EGR装置が、前記EGRガスの還流量を調整するEGRバルブを有するエンジンであって、
前記EGRバルブを制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、少なくともエンジン回転数および燃料噴射量に応じて、少なくとも第1モード、第2モード、および第3モードの中から所定の制御モードを選択し、選択した前記制御モードで前記EGRバルブを制御し、
前記第1モードは、前記EGRバルブを全閉する制御モードであり、
前記第2モードは、前記エンジンの運転状態に応じて前記EGRバルブの開度を調整する制御モードであり、
前記第3モードは、前記エンジンの運転状態に応じて前記EGRバルブの開度を調整するオン期間と、前記EGRバルブを全閉するオフ期間とを繰り返す制御モードである、エンジン。
【請求項2】
前記エンジン回転数に応じて予め設定される前記燃料噴射量の2種類の閾値を、小さいほうから第1閾値および第2閾値としたとき、
前記制御部は、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第1閾値以下である場合、前記制御モードとして前記第1モードを選択し、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第2閾値よりも大きい場合、前記制御モードとして前記第2モードを選択し、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第1閾値よりも大きく、かつ、前記エンジン回転数に対応する前記第2閾値以下である場合、前記制御モードとして前記第3モードを選択する、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記制御部は、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第1閾値よりも大きい場合において、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第2閾値以下であり、かつ、前記EGRバルブの初期位置に基づいて得られる前記EGRバルブへのデポジットの堆積量が第3閾値よりも大きい場合に、前記制御モードとして前記第3モードを選択する一方、前記堆積量が前記第3閾値以下である場合、前記制御モードとして前記第2モードを選択する、請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記制御部は、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第1閾値よりも大きい場合において、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第2閾値以下であり、かつ、前記EGRガスの温度が第4閾値以下である場合に、前記制御モードとして前記第3モードを選択する一方、前記EGRガスの温度が前記第4閾値よりも大きい場合、前記制御モードとして前記第2モードを選択する、請求項2に記載のエンジン。
【請求項5】
前記制御部は、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第1閾値よりも大きい場合において、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第2閾値以下であり、かつ、前記シリンダヘッドから前記排気ガスを排出する排気マニホールドの温度が第5閾値以下である場合に、前記制御モードとして前記第3モードを選択する一方、前記排気マニホールドの温度が前記第5閾値よりも大きい場合、前記制御モードとして前記第2モードを選択する、請求項2に記載のエンジン。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1モードを選択した後、前記第1閾値を、増大方向にシフトさせる、請求項2に記載のエンジン。
【請求項7】
前記制御部は、前記第3モードを選択した後、前記第1閾値を、減少方向にシフトさせる、請求項2に記載のエンジン。
【請求項8】
前記制御部は、前記第3モードを選択した後、前記第2閾値を、増大方向にシフトさせる、請求項2に記載のエンジン。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2モードを選択した後、前記第2閾値を、減少方向にシフトさせる、請求項2に記載のエンジン。
【請求項10】
前記制御部は、前記第3モードにおいて、前記EGRガスの温度が低いほど、前記オン期間と前記オフ期間との繰り返し単位である1周期において、前記オフ期間を長くする、請求項1に記載のエンジン。
【請求項11】
前記制御部は、前記第3モードにおいて、前記EGRバルブの初期位置に基づいて得られる前記EGRバルブへのデポジットの堆積量が多くなるほど、前記オン期間と前記オフ期間との繰り返し単位である1周期において、前記オフ期間を長くする、請求項1に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR(Exhaust Gas Recirculation )装置を備えたエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
EGR装置を備えたエンジンにおいて、EGRバルブへの異物(例えばデポジットと呼ばれる煤)の付着量が多くなると、エンジンの適正な運転が阻害される。そこで、例えば特許文献1のエンジンでは、EGRバルブに付着するデポジットの付着量推定値と、閾値とを比較し、付着量推定値が閾値以上である場合には、排気ガスの一部をEGRガスとして還流することを停止する制御(EGRカット)を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、EGRバルブにデポジットが堆積するほど、EGRガスの温度が低くない場合、EGRバルブにデポジットが堆積するリスクは低いと言える。特許文献1の制御では、EGRバルブにデポジットが堆積するリスクが低い場合でも、デポジットの付着量推定値が閾値以上となる条件では、EGRカットが行われる。この場合、EGRガスが吸気側に還流されないため、排気ガスに含まれるNOxの外部環境への放出(NOxエミッション)が増大することが懸念される。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、EGRバルブにデポジットが堆積するリスクが低い場合には、EGRバルブをできるだけ開く制御を行って、排気ガスに含まれるNOxの外部環境への放出をできるだけ低減することができるエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るエンジンは、シリンダヘッドから排出される排気ガスの一部を、前記シリンダヘッドに気体を供給する吸気管にEGRガスとして還流させるEGR装置を備え、前記EGR装置が、前記EGRガスの還流量を調整するEGRバルブを有するエンジンであって、前記EGRバルブを制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、少なくともエンジン回転数および燃料噴射量に応じて、少なくとも第1モード、第2モード、および第3モードの中から所定の制御モードを選択し、選択した前記制御モードで前記EGRバルブを制御し、前記第1モードは、前記EGRバルブを全閉する制御モードであり、前記第2モードは、前記エンジンの運転状態に応じて前記EGRバルブの開度を調整する制御モードであり、前記第3モードは、前記エンジンの運転状態に応じて前記EGRバルブの開度を調整するオン期間と、前記EGRバルブを全閉するオフ期間とを繰り返す制御モードである。
【発明の効果】
【0007】
EGRバルブにデポジットが堆積するリスクが低い場合には、例えば第3モードの選択により、EGRバルブをできるだけ開く制御を行って、排気ガスに含まれるNOxの外部環境への放出をできるだけ低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の一形態に係るエンジンの概略の構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】上記エンジンの主要部の構成を示すブロック図である。
【
図3】エンジン回転数に応じて設定される燃料噴射量の閾値を模式的に示すグラフである。
【
図4】EGRバルブの制御モードの1つである第3モードの詳細を示す説明図である。
【
図5】上記EGRバルブを制御する動作の流れを示すフローチャートである。
【
図6】上記第3モードで上記EGRバルブを制御する場合において、EGRガスの温度とデューティ比との関係を模式的に示す説明図である。
【
図7】上記第3モードで上記EGRバルブを制御する場合において、イニシャライズステップ数とデューティ比との関係を模式的に示す説明図である。
【
図8】上記制御モードの遷移による第1閾値の変化を模式的に示すグラフである。
【
図9】上記制御モードの遷移による第2閾値の変化を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0010】
〔1.エンジンの構成〕
以下、本実施形態のエンジンの構成について説明する。
図1は、本実施形態のエンジン1の概略の構成を模式的に示す説明図である。
図2は、エンジン1の主要部の構成を示すブロック図である。エンジン1は、例えばディーゼルエンジンであり、作業車両(作業機械)、農業機械、船舶等に搭載される。
【0011】
エンジン1は、吸気系の部材として、吸気管2と、吸気マニホールド3と、を備える。吸気管2は、外部から気体を吸入して吸気マニホールド3に供給する。
【0012】
吸気マニホールド3は、吸気管2から供給された気体をシリンダ(気筒)数に応じた数(例えば
図1では4つ)に分けてシリンダヘッド4へ供給する。シリンダヘッド4は、各シリンダを覆うシリンダヘッドカバー(図示せず)と、各シリンダの燃焼室4aに対応して設けられるインジェクタ5(燃料噴射装置)とを有する。インジェクタ5は、コモンレール6に高圧で蓄えられた燃料を、所定のタイミングで各シリンダの燃焼室4aに噴射する。各シリンダには、燃焼室4a内を往復摺動し、コンロッド(連結棒)を介してクランク軸を回転させるピストンが設けられている。
【0013】
上記のインジェクタ5は、ECU(エンジンコントロールユニット)20によって制御される。ECU20は、エンジン1の各部の動作を制御する制御部である。
【0014】
エンジン1は、排気系の部材として、排気マニホールド7と、排気管8と、排気ガス浄化装置9と、を備える。
【0015】
排気マニホールド7は、複数の燃焼室4aで発生した気体(排気ガス)をまとめる。排気マニホールド7には、排気マニホールド温度センサ7aが設けられる。排気マニホールド温度センサ7aは、排気マニホールド7の温度(排気マニホールド7内の排気ガスの温度と近似する)を検知する。排気マニホールド温度センサ7aで検知された温度情報は、ECU20に出力される。
【0016】
排気マニホールド7を通過した気体は、一部が後述するEGR(Exhaust Gas Recirculation )装置10へ供給され、残りの気体は排気管8を介して排気ガス浄化装置9へ供給される。
【0017】
排気ガス浄化装置9は、排気ガスを浄化して排出する装置であり、DPF(Diesel Particulate Filter )とも呼ばれる。排気ガス浄化装置9は、酸化触媒9aと、フィルタ9bと、を備える。酸化触媒9aは、排気ガスに含まれる未燃燃料、一酸化炭素、一酸化窒素等を酸化(燃焼)するための触媒であり、白金等で構成される。フィルタ9bは、例えばウォールフロー型のフィルタとして構成されており、酸化触媒9aで処理された排気ガスに含まれるPM(Particulate Matter、粒子状物質)を捕集する。
【0018】
本実施形態のエンジン1は、EGR装置10を備える。EGR装置10は、シリンダヘッド4から排出される排気ガスの一部を、シリンダヘッド4に気体を供給する吸気管2にEGRガスとして還流させる排気ガス再循環装置である。EGR装置10は、EGR管11と、EGRクーラ12と、EGRバルブ13と、を有する。
【0019】
EGRクーラ12は、排気マニホールド7からEGR管11を介して供給される排気ガス(EGRガス)を冷却する。EGRバルブ13は、EGRクーラ12から吸気管2に供給されるEGRガスの量を変化させる。つまり、EGRバルブ13は、EGRクーラ12から供給されるEGRガスの吸気管2への還流量を調整する。吸気マニホールド3に吸気される気体に排気ガスを混ぜることにより、吸気される気体中の酸素量が少なくなるため、燃焼温度を下げることができる。これにより、NOxと呼ばれる窒素酸化物の発生を減らすことができ、排気ガスに含まれるNOxの外部環境への放出(NOxエミッション)を低減することができる。
【0020】
EGR装置10は、EGRガス温度検知センサ14と、バルブポジションセンサ15と、をさらに有する。EGRガス温度検知センサ14は、EGRバルブ13を流れるEGRガスの温度を検知する。
【0021】
バルブポジションセンサ15は、EGRバルブ13の位置を検知する。例えばEGRバルブ13を一方向に平行移動させることにより、EGRバルブ13の開度(EGRガスの還流量)を調整する構成では、バルブポジションセンサ15は、エンジン始動時のEGRバルブ13の位置(初期位置)をイニシャライズステップ数として検知する。EGRバルブ13にデポジット(例えば煤)が堆積すると、イニシャライズステップ数が変化(例えば増加)する。したがって、バルブポジションセンサ15がEGRバルブ13の初期位置(イニシャライズステップ数)を検知し、その検知結果(検知信号)をECU20に出力することにより、ECU20は、上記検知信号に基づき、EGRバルブ13に付着したデポジットの堆積量を認識することができる。
【0022】
図2に示すように、エンジン1は、エンジン回転数センサ16をさらに備える。エンジン回転数センサ16は、エンジン1のクランク軸の回転数を、エンジン1の回転数(実回転数)として検出する。エンジン回転数センサ16で検出されたエンジン回転数の情報は、ECU20に出力される。これにより、ECU20は、エンジン回転数に基づき、エンジン1の運転状態を認識することができる。例えば、ECU20は、エンジン回転数に基づき、エンジン1が停止中であるか、始動時(クランキング中)であるか、通常運転中であるか、を認識することができる。
【0023】
エンジン1は、アクセル開度センサ17をさらに備える。アクセル開度センサ17は、例えばアクセルペダルポジションセンサで構成される。アクセルペダルポジションセンサは、アクセルペダルの位置、すなわちアクセルペダルの踏み込み量をアクセル開度として検知する。アクセル開度センサ17で検知されたアクセル開度の情報は、ECU20に出力される。これにより、ECU20は、アクセル開度に基づいて、エンジン1の目標回転数を認識することができる。すなわち、エンジン1の目標回転数は、アクセル開度に応じて決まる。
【0024】
本実施形態では、ECU20は、少なくともエンジン回転数(実回転数)および燃料噴射量に応じて、複数の制御モードの中から所定の制御モードを選択し、選択した制御モードでEGRバルブ13を制御する。ここで、上記の燃料噴射量とは、エンジン1の目標回転数を実現するための燃料の噴射量(目標噴射量)のことである。ECU20は、エンジン回転数が目標回転数に近づくように、目標噴射量を調整するフィードバック制御を行う。また、ECU20は、燃料噴射量、インジェクタ5への通電時間、およびコモンレール圧の関係をマップとして持っており、このマップは実際の燃料噴射量を計測のうえキャリブレーションされている。このため、上記の目標噴射量を、実際の燃料噴射量と同一視することができる。
【0025】
上記のECU20は、EGRバルブ13を制御する機能のほか、時間を計時する計時部としての機能、およびECU20の制御プログラム、各種マップなどを記憶する記憶部としての機能も有する。
【0026】
〔2.EGRバルブの制御〕
以下、ECU20によるEGRバルブ13の制御の詳細について説明する。
図3は、エンジン回転数に応じて設定される燃料噴射量の閾値を模式的に示している。ここでは、上記燃料噴射量の閾値を、小さいほうから順に、第1閾値Th1、第2閾値Th2とする。すなわち、同一のエンジン回転数では、Th1<Th2である。同図に示すように、第1閾値Th1および第2閾値Th2は両方とも、エンジン回転数に応じて変化する。具体的には、第1閾値Th1および第2閾値Th2は、エンジン回転数が増大するにしたがって低下する。なお、
図3で示した第1閾値Th1および第2閾値Th2の変化は一例であり、これに限定されるわけではない。
【0027】
本実施形態では、EGRバルブ13の制御モードとして、第1モードM1、第2モードM2、第3モードM3、の3つの制御モードが存在する。
【0028】
第1モードM1は、EGRバルブ13を全閉する制御モードである。ECU20が第1モードM1を選択してEGRバルブ13を制御することにより、EGRバルブ13が全閉されるため、EGRバルブ13へのデポジットの堆積を抑制することができる。
【0029】
第2モードM2は、エンジン1の運転状態に応じてEGRバルブ13の開度を調整する制御モードであり、エンジン1の運転時に行われる通常の制御と同じである。ECU20が第2モードM2を選択してEGRバルブ13を制御することにより、エンジン1の運転状態に応じてEGRバルブ13の開度が調整されるため、排気ガスに含まれるNOxの発生を減らして、NOxエミッションを低減することができる。
【0030】
図4は、第3モードM3の詳細を示す説明図である。第3モードM3は、オン期間P1とオフ期間P2とを所定の比率で繰り返す制御モードである。ここで、オン期間P1とは、エンジン1の運転状態に応じてEGRバルブ13の開度を調整する期間である。一方、オフ期間P2とは、EGRバルブ13を全閉する期間である。同図に示すように、第3モードM3では、オン期間P1とオフ期間P2とが所定の周期Pで繰り返される。なお、オン期間P1では、エンジン1の運転状態に応じてEGRバルブ13の開度が調整されるため、EGRバルブ13が全開される(開度が100%になる)とは限らない。1周期Pにおけるオン期間P1とオフ期間P2との比率のことを、ここでは「デューティ比」とも称する。
【0031】
ECU20が第3モードM3を選択してEGRバルブ13を制御することにより、オフ期間P2でEGRバルブ13を全閉してEGRバルブ13へのデポジットの堆積を抑制しつつ、オン期間P1でEGRバルブ13を開いて、NOxエミッションを低減することができる。つまり、EGRバルブ13へのデポジットの堆積の抑制と、NOxエミッションの低減との両立を図ることができる。
【0032】
図5は、EGRバルブ13を制御する動作の流れを示すフローチャートである。以下、
図1~
図5を参照しながらEGRバルブ13の制御動作について説明する。なお、以下では、アクセル開度センサ17で検知されたアクセル開度に基づいてECU20が認識するエンジン1の目標回転数に対応する目標噴射量を、実際の燃料噴射量とみなし、これを単に「燃料噴射量」と記載する。また、エンジン回転数センサ16によって検出されたエンジン1の回転数を、単に、「エンジン回転数」と記載する。
【0033】
まず、ECU20は、燃料噴射量が、エンジン回転数に対応する第1閾値Th1(以下、単に「第1閾値Th1」と称する)以下であるか否かを判断する(S1)。燃料噴射量が第1閾値Th1以下で場合(S1にてYes)、ECU20は、制御モードとして第1モードM1を選択し、第1モードM1でEGRバルブ13を制御する(S2)。
【0034】
一方、S1にて、燃料噴射量が第1閾値Th1よりも大きい場合(S1にてNo)、ECU20は、燃料噴射量が、エンジン回転数に対応する第2閾値Th2(以下、単に「第2閾値Th2」と称する)以下であるか否かを判断する(S3)。S3では同時に、ECU20は、EGRバルブ13へのデポジットの堆積量が第3閾値Th3よりも大きいか否かを判断する。なお、上記堆積量は、上述したように、バルブポジションセンサ15によって検知されるイニシャライズステップ数に基づいてECU20が認識することができる。さらに、S3では、ECU20は、EGRガス温度検知センサ14で検知されたEGRガスの温度が第4閾値Th4以下であるか否かを判断するとともに、排気マニホールド温度センサ7aで検知された排気マニホールド7の温度が第5閾値Th5以下であるか否かを判断する。
【0035】
S3にてNoの場合、すなわち、例えば、燃料噴射量が第2閾値Th2よりも大きい場合、ECU20は、制御モードとして第2モードM2を選択し、第2モードM2でEGRバルブ13を制御する(S4)。また、デポジットの堆積量が第3閾値Th3以下である場合、EGRガスの温度が第4閾値Th4よりも大きい場合、排気マニホールド7の温度が第5閾値Th5よりも大きい場合、のいずれであっても、ECU20は、制御モードとして第2モードM2を選択し、第2モードM2でEGRバルブ13を制御する(S4)。
【0036】
S3にてYesの場合、すなわち、例えば、燃料噴射量が第2閾値Th2以下である場合、ECU20は、制御モードとして第3モードM3を選択し、第3モードM3でEGRバルブ13を制御する(S5)。また、デポジットの堆積量が第3閾値Th3よりも大きい場合、EGRガスの温度が第4閾値Th4以下である場合、排気マニホールド7の温度が第5閾値Th5以下である場合も同様に、ECU20は、制御モードとして第3モードM3を選択し、第3モードM3でEGRバルブ13を制御する(S5)。
【0037】
そして、ECU20は、エンジン回転数に基づき、エンジン1が停止するまでS1以降の処理を繰り返し(S6)、エンジン1が停止すると、一連の処理(制御)を終了する。
【0038】
以上のように、制御部としてのECU20は、少なくともエンジン回転数および燃料噴射量に応じて、第1モードM1、第2モードM2、および第3モードM3の中から所定の制御モードを選択し、選択した制御モードでEGRバルブ13を制御する。
【0039】
EGRバルブ13の制御モードとして、第1モードM1および第2モードM2以外に、第3モードM3が存在するため、例えば燃料噴射量が第1閾値Th1よりも大きく第2閾値以下である場合など(S1にてNo、S3にてYes)、EGRバルブ13にデポジットが堆積するリスクが低い場合には、ECU20は第3モードM3を選択してEGRバルブ13を制御することができる。第3モードM3では、オン期間P1の間だけEGRバルブ13が開かれるため、例えば第1モードM1でEGRバルブ13を制御する場合に比べると(EGRバルブ13を全閉する場合に比べると)、シリンダヘッド4から排出される排気ガスに含まれるNOxを低減することができる。したがって、EGRバルブ13にデポジットが堆積するリスクが低い場合には、第3モードM3の選択により、EGRバルブ13をできるだけ開く制御を行って、NOxエミッションをできるだけ低減することができる。
【0040】
燃料噴射量が第1閾値Th1以下である場合(S1にてYes)、EGRバルブ13にデポジットが堆積するリスクが高いと考えられる。この場合、EGRバルブ13を全閉して、EGRバルブ13へのデポジットの堆積を抑制することが望ましい。このような観点では、ECU20は、燃料噴射量が第1閾値Th1以下である場合、制御モードとして第1モードM1を選択することが望ましい(S1、S2)。
【0041】
また、燃料噴射量が第2閾値Th2よりも大きい場合(S3にてNo)、NOxエミッションを低減する観点から、ECU20は、制御モードとして第2モードM2を選択することが望ましい(S4)。
【0042】
一方、燃料噴射量が第1閾値Th1よりも大きく、かつ、第2閾値Th2以下である場合、EGRバルブ13にデポジットが堆積するリスクが低いと考えられる。この場合、EGRバルブ13へのデポジットの堆積を抑制しつつ、EGRバルブ13をできるだけ開いて、NOxエミッションを低減する観点から、ECU20は、制御モードとして第3モードM3を選択することが望ましい(S3、S5)。
【0043】
燃料噴射量が第1閾値Th1よりも大きく、かつ、第2閾値以下である場合(S3)、上述のように、EGRバルブ13にデポジットが堆積するリスクが低いと考えられるが、デポジットの実際の堆積量が多いと、堆積したデポジットに起因して、EGRバルブ13の開度をエンジン1の運転状態に応じた開度に適切に調整することができなくなるおそれがある。したがって、S3の判断に基づいてS5の第3モードM3を選択するにあたっては、S3の判断において、EGRバルブ13へのデポジットの実際の堆積量を考慮に入れることが望ましい。すなわち、ECU20は、EGRバルブ13の初期位置に基づいて得られるEGRバルブ13へのデポジットの堆積量が第3閾値Th3よりも大きい場合に、制御モードとして第3モードM3を選択することが望ましい(S3、S5)。
【0044】
一方、S3において、デポジットの堆積量が第3閾値Th3以下である場合、NOxエミッションの低減を(EGRバルブ13へのデポジットの堆積の抑制よりも優先して)図る観点から、ECU20は、制御モードとして第2モードM2を選択することが望ましい(S4)。
【0045】
また、燃料噴射量が第1閾値Th1よりも大きく、かつ、第2閾値Th2以下である場合において(S3)、EGRガスの温度が低いと、EGRバルブ13にデポジットが堆積するリスクが高くなり、堆積したデポジットに起因して、EGRバルブ13の開度をエンジン1の運転状態に応じた開度に適切に調整することができなくなるおそれがある。したがって、S3の判断に基づいてS5の第3モードM3を選択するにあたっては、S3の判断において、EGRガスの温度を考慮に入れることが望ましい。すなわち、ECU20は、EGRガスの温度が第4閾値Th4以下である場合、制御モードとして第3モードM3を選択することが望ましい(S3、S5)。
【0046】
一方、S3において、EGRガスの温度が第4閾値Th4よりも大きい場合、EGRバルブ13にデポジットが堆積するリスクが低いと考えられる。この場合は、NOxエミッションの低減を(EGRバルブ13へのデポジットの堆積の抑制よりも優先して)図る観点から、ECU20は、制御モードとして第2モードM2を選択することが望ましい(S4)。
【0047】
また、燃料噴射量が第1閾値Th1よりも大きく、かつ、第2閾値Th2以下である場合において(S3)、シリンダヘッド4から排気ガスを排出する排気マニホールド7の温度(排気ガスの温度)が低いと、排気ガス中に未燃成分が多く含まれているため、排気ガスの一部がEGRガスとして通るEGRバルブ13にデポジットが堆積するリスクが高くなる。その結果、堆積したデポジットに起因して、EGRバルブ13の開度をエンジン1の運転状態に応じた開度に適切に調整することができなくなるおそれがある。したがって、S3の判断に基づいてS5の第3モードM3を選択するにあたっては、S3の判断において、排気マニホールド7の温度を考慮に入れることが望ましい。すなわち、ECU20は、排気マニホールド7の温度が第5閾値Th5以下である場合に、制御モードとして第3モードM3を選択することが望ましい(S3、S5)。
【0048】
一方、S3において、排気マニホールド7の温度が第5閾値Th5よりも大きい場合、EGRバルブ13にデポジットが堆積するリスクが低いと考えられる。この場合は、NOxエミッションの低減を(EGRバルブ13へのデポジットの堆積の抑制よりも優先して)図る観点から、ECU20は、制御モードとして第2モードM2を選択することが望ましい(S4)。
【0049】
〔3.第3モードにおけるデューティ比の調整について〕
図6は、第3モードM3でEGRバルブ13を制御する場合において、EGRガスの温度とデューティ比(オン期間とオフ期間との比率)との関係を模式的に示している。ここでは、オン期間とオフ期間との繰り返し単位である1周期P(sec)を一定とする。また、EGRガスの温度がT1(℃)であるときのオン期間をP11(sec)とし、オフ期間をP21(sec)とする。EGRガスの温度がT1よりも低いT2(℃)であるときのオン期間をP12(sec)とし、オフ期間をP22(sec)とする。EGRガスの温度がT2よりも低いT3(℃)であるときのオン期間をP13(sec)とし、オフ期間をP23(sec)とする。
【0050】
第3モードにおいて、NOxエミッションの低減の観点では、オン期間を確保してEGRバルブ13を極力開けることが望ましい。しかし、EGRバルブ13を開けると、EGRガス温度が低くなるほど、EGRバルブ13にデポジットが堆積しやすくなる(堆積するリスクが高くなる)。このため、本実施形態では、EGRガスの温度が、T1、T2(<T1)、T3(<T2)と変化する場合において、1周期Pにおけるオフ期間を、P21、P22(>P21)、P23(>P22)と変化させる。すなわち、EGRガスの温度を考慮して、EGRバルブ13へのデポジットの堆積を抑制する観点では、ECU20は、第3モードにおいて、EGRガス温度が低くなるほど、1周期Pにおけるオフ期間を長くすることが望ましい。
【0051】
図7は、第3モードM3でEGRバルブ13を制御する場合において、EGRバルブ13の初期位置を示すイニシャライズステップ数とデューティ比との関係を模式的に示している。
図6の場合と同様に、オン期間とオフ期間との繰り返し単位である1周期P(sec)を一定とする。また、イニシャライズステップ数がN1(step)であるときのオン期間をP14(sec)とし、オフ期間をP24(sec)とする。イニシャライズステップ数がN1よりも大きいN2(step)であるときのオン期間をP15(sec)とし、オフ期間をP25(sec)とする。イニシャライズステップ数がN2よりも大きいN3(step)であるときのオン期間をP16(sec)とし、オフ期間をP26(sec)とする。なお、イニシャライズステップ数がN1、N2、N3のときにECU20にて認識される、EGRバルブ13へのデポジットの堆積量を、それぞれD1(mm)、D2(mm)、D3(mm)とする。なお、N1<N2<N3であるため、D1<D2<D3である。
【0052】
第3モードにおいて、NOxエミッションの低減の観点では、オン期間を確保してEGRバルブ13を極力開けることが望ましい。しかし、EGRバルブ13を開けると、EGRバルブ13にデポジットが堆積しやすくなる。そして、EGRバルブ13へのデポジットの堆積量が増えると、堆積したデポジットに起因して、EGRバルブ13の開度をエンジン1の運転状態に応じた開度に適切に調整することができなくなるおそれがある。このため、本実施形態では、イニシャライズステップ数が、N1、N2(>N1)、N3(>N2)と変化する場合において、つまり、デポジット堆積量が、D1、D2(>D1)、D3(>D2)と変化する場合において、1周期Pにおけるオフ期間を、P24、P25(>P24)、P26(>P25)と変化させる。すなわち、デポジット堆積量を考慮して、EGRバルブ13の開度を適切に調整する観点では、ECU20は、第3モードにおいて、デポジットの堆積量が多くなるほど、1周期Pにおけるオフ期間を長くすることが望ましい。
【0053】
〔4.閾値の調整について〕
図8は、制御モードの遷移による第1閾値Th1の変化を模式的に示している。ECU20は、制御モードとして第1モードM1を選択した後、第1閾値Th1を(燃料噴射量の)増大方向にシフトさせることが望ましい。例えば、シフト前の第1閾値Th1をTh1-aとしたとき、シフト後の第1閾値はTh1-bとなる。なお、Th1-aからTh1-bへのシフト量は、適宜設定可能である。
【0054】
このように第1閾値Th1を調整すると、例えば、制御モードが第3モードM3から第1モードM1に移行した後に燃料噴射量が増大する方向に変化した場合でも、制御モードが第1モードM1から第3モードM3に短期間で移行しにくくなる(第1閾値Th1が実質的に上がるため)。つまり、制御モードが短期間で切り替わるおそれが低減される。これにより、EGRバルブ13の制御が煩雑になるおそれが低減される。
【0055】
また、ECU20は、制御モードとして第3モードM3を選択した後、第1閾値Th1を(燃料噴射量の)減少方向にシフトさせることが望ましい。例えば、シフト前の第1閾値Th1をTh1-bとしたとき、シフト後の第1閾値はTh1-aとなる。
【0056】
このように第1閾値Th1を調整すると、例えば、制御モードが第1モードM1から第3モードM3に移行した後に燃料噴射量が減少する方向に変化した場合でも、制御モードが第3モードM3から第1モードM1に短期間で移行しにくくなる(第1閾値Th1が実質的に下がるため)。つまり、制御モードが短期間で切り替わるおそれが低減される。これにより、EGRバルブ13の制御が煩雑になるおそれが低減される。
【0057】
図9は、制御モードの遷移による第2閾値Th2の変化を模式的に示している。ECU20は、制御モードとして第3モードM3を選択した後、第2閾値Th2を(燃料噴射量の)増大方向にシフトさせることが望ましい。例えば、シフト前の第2閾値Th2をTh2-aとしたとき、シフト後の第2閾値はTh2-bとなる。なお、Th2-aからTh2-bへのシフト量は、適宜設定可能である。
【0058】
このように第2閾値Th2を調整すると、例えば、制御モードが第2モードM2から第3モードM3に移行した後に燃料噴射量が増大する方向に変化した場合でも、制御モードが第3モードM3から第2モードM2に短期間で移行しにくくなる(第2閾値Th2が実質的に上がるため)。つまり、制御モードが短期間で切り替わるおそれが低減される。これにより、EGRバルブ13の制御が煩雑になるおそれが低減される。
【0059】
また、ECU20は、制御モードとして第2モードM2を選択した後、第2閾値Th2を(燃料噴射量の)減少方向にシフトさせることが望ましい。例えば、シフト前の第2閾値Th2をTh2-bとしたとき、シフト後の第2閾値はTh2-aとなる。
【0060】
このように第2閾値Th2を調整すると、例えば、制御モードが第3モードM3から第2モードM2に移行した後に燃料噴射量が減少する方向に変化した場合でも、制御モードが第2モードM2から第3モードM3に短期間で移行しにくくなる(第2閾値Th2が実質的に下がるため)。つまり、制御モードが短期間で切り替わるおそれが低減される。これにより、EGRバルブ13の制御が煩雑になるおそれが低減される。
【0061】
〔5.補足〕
以上では、EGRバルブ13の制御モードとして、第1モードM1、第2モードM2、第3モードM3、の3つの制御モードが存在する例について説明したが、4つ以上の制御モードが存在してもよい。そして、ECU20は、4つ以上の制御モードの中から、少なくともエンジン回転数および燃料噴射量に応じて、第1モードM1、第2モードM2、第3モードM3のいずれかを選択し、選択した制御モードでEGRバルブ13を制御してもよい。したがって、例えば、EGRバルブ13の複数の制御モードの中に、EGRバルブ13を全開する第4モードが含まれていてもよい。
【0062】
図5のS3の判断において用いる第3閾値Th3、つまり、EGRバルブ13へのデポジットの堆積量との比較対象である第3閾値Th3は、エンジン1の運転時間によって変動させてもよい。例えば、エンジン1の運転時間が長くなるほど、第3閾値Th3を増大させてもよい。エンジン1の運転時間が長くなると、EGRバルブ13へのデポジットの堆積量が多くなることが想定される。このため、第3閾値Th3を増大させることで、第2モードM2(通常制御)に入りにくくすることができる。言い換えれば、第2モードM2よりも、EGRバルブ13を全閉するオフ期間を有する第3モードM3を優先する制御を行うことが可能となる。
【0063】
図5のS3では、EGRバルブ13へのデポジットの堆積量と第3閾値Th3とを比較する条件の代わりに、エンジン1の運転時間と別の閾値とを比較する条件を入れてもよい。エンジン1の運転時間が長くなるほど、EGRバルブ13へのデポジットの堆積量が多くなることが想定される。したがって、エンジン1の運転時間と別の閾値とを比較することによっても、上記閾値の設定次第で、デポジットの堆積量と第3閾値Th3とを比較した場合と同等の結果を得ることができると考えられる。
【0064】
〔6.付記〕
本実施形態で説明したエンジンは、以下の付記に記載のように表現することができる。
【0065】
付記(1)のエンジンは、シリンダヘッドから排出される排気ガスの一部を、前記シリンダヘッドに気体を供給する吸気管にEGRガスとして還流させるEGR装置を備え、
前記EGR装置が、前記EGRガスの還流量を調整するEGRバルブを有するエンジンであって、
前記EGRバルブを制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、少なくともエンジン回転数および燃料噴射量に応じて、少なくとも第1モード、第2モード、および第3モードの中から所定の制御モードを選択し、選択した前記制御モードで前記EGRバルブを制御し、
前記第1モードは、前記EGRバルブを全閉する制御モードであり、
前記第2モードは、前記エンジンの運転状態に応じて前記EGRバルブの開度を調整する制御モードであり、
前記第3モードは、前記エンジンの運転状態に応じて前記EGRバルブの開度を調整するオン期間と、前記EGRバルブを全閉するオフ期間とを(所定の比率で)繰り返す制御モードである。
【0066】
付記(2)のエンジンは、付記(1)に記載のエンジンにおいて、
前記エンジン回転数に応じて予め設定される前記燃料噴射量の2種類の閾値を、小さいほうから第1閾値および第2閾値としたとき、
前記制御部は、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第1閾値以下である場合、前記制御モードとして前記第1モードを選択し、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第2閾値よりも大きい場合、前記制御モードとして前記第2モードを選択し、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第1閾値よりも大きく、かつ、前記エンジン回転数に対応する前記第2閾値以下である場合、前記制御モードとして前記第3モードを選択する。
【0067】
付記(3)のエンジンは、付記(2)に記載のエンジンにおいて、
前記制御部は、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第1閾値よりも大きい場合において、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第2閾値以下であり、かつ、前記EGRバルブの初期位置に基づいて得られる前記EGRバルブへのデポジットの堆積量が第3閾値よりも大きい場合に、前記制御モードとして前記第3モードを選択する一方、前記堆積量が前記第3閾値以下である場合、前記制御モードとして前記第2モードを選択する。
【0068】
付記(4)のエンジンは、付記(2)または(3)に記載のエンジンにおいて、
前記制御部は、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第1閾値よりも大きい場合において、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第2閾値以下であり、かつ、前記EGRガスの温度が第4閾値以下である場合に、前記制御モードとして前記第3モードを選択する一方、前記EGRガスの温度が前記第4閾値よりも大きい場合、前記制御モードとして前記第2モードを選択する。
【0069】
付記(5)のエンジンは、付記(2)から(4)のいずれかに記載のエンジンにおいて、
前記制御部は、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第1閾値よりも大きい場合において、
前記燃料噴射量が、前記エンジン回転数に対応する前記第2閾値以下であり、かつ、前記シリンダヘッドから前記排気ガスを排出する排気マニホールドの温度が第5閾値以下である場合に、前記制御モードとして前記第3モードを選択する一方、前記排気マニホールドの温度が前記第5閾値よりも大きい場合、前記制御モードとして前記第2モードを選択する。
【0070】
付記(6)のエンジンは、付記(2)から(5)のいずれかに記載のエンジンにおいて、
前記制御部は、前記第1モードを選択した後、前記第1閾値を、増大方向にシフトさせる。
【0071】
付記(7)のエンジンは、付記(2)から(6)のいずれかに記載のエンジンにおいて、
前記制御部は、前記第3モードを選択した後、前記第1閾値を、減少方向にシフトさせる。
【0072】
付記(8)のエンジンは、付記(2)から(7)のいずれかに記載のエンジンにおいて、
前記制御部は、前記第3モードを選択した後、前記第2閾値を、増大方向にシフトさせる。
【0073】
付記(9)のエンジンは、付記(2)から(8)のいずれかに記載のエンジンにおいて、
前記制御部は、前記第2モードを選択した後、前記第2閾値を、減少方向にシフトさせる。
【0074】
付記(10)のエンジンは、付記(1)から(9)のいずれかに記載のエンジンにおいて、
前記制御部は、前記第3モードにおいて、前記EGRガスの温度が低いほど、前記オン期間と前記オフ期間との繰り返し単位である1周期において、前記オフ期間を長くする。
【0075】
付記(11)のエンジンは、付記(1)から(10)のいずれかに記載のエンジンにおいて、
前記制御部は、前記第3モードにおいて、前記EGRバルブの初期位置に基づいて得られる前記EGRバルブへのデポジットの堆積量が多くなるほど、前記オン期間と前記オフ期間との繰り返し単位である1周期において、前記オフ期間を長くする、請求項1から10のいずれかに記載のエンジン。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、例えばトラクタなどの作業車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 エンジン
2 吸気管
4 シリンダヘッド
7 排気マニホールド
10 EGR装置
13 EGRバルブ
20 ECU(制御部)
M1 第1モード
M2 第2モード
M3 第3モード
P 周期
P1 オン期間
P2 オフ期間
Th1 第1閾値
Th2 第2閾値
Th3 第3閾値
Th4 第4閾値
Th5 第5閾値