(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066128
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】フロントフォーク
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20240508BHJP
F16F 9/44 20060101ALI20240508BHJP
B62K 25/08 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/44
B62K25/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175466
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】望月 隆久
【テーマコード(参考)】
3D014
3J069
【Fターム(参考)】
3D014DD02
3D014DE02
3D014DE08
3D014DE27
3J069AA46
3J069EE36
(57)【要約】
【課題】本発明は、伸側減衰力の調整と圧側減衰力の調整とをフロントフォークの上端側で行えるフロントフォークの提供を目的とする。
【解決手段】フロントフォークFは、伸縮可能なフォーク本体1と、フォーク本体1内に収容されて車体側チューブ2と車軸側チューブ3との間に介装されるダンパDとを備え、ダンパDは、シリンダ10と、シリンダ10内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン11と、車体側チューブ2に連結されるとともにピストン11に連結される筒状のピストンロッド12と、ピストンロッド12内に設けられて伸側室R1をリザーバ室Rに連通する第1減衰力調整通路P1と、ピストンロッド12内に設けられて伸側室R1と圧側室R2とを連通する第2減衰力調整通路P2と、ピストンロッド12内に設けられた第1減衰力調整バルブV1と第2減衰力調整バルブV2とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側チューブと車軸側チューブとを有して伸縮可能なフォーク本体と、
前記フォーク本体内に収容されて前記車体側チューブと前記車軸側チューブとの間に介装されるダンパとを備え、
前記ダンパは、
前記車軸側チューブに連結されるシリンダと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されて前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されて上端が前記車体側チューブに連結されるとともに下方側が前記ピストンに連結される筒状のピストンロッドと、
前記ピストンロッド内に設けられて前記伸側室を前記フォーク本体と前記ダンパとの間の空間で形成されるリザーバ室に連通する第1減衰力調整通路と、
前記ピストンロッド内に設けられて前記伸側室と前記圧側室とを連通する第2減衰力調整通路と、
前記ピストンロッド内に設けられて第1減衰力調整通路を通過する液体の流れに与える抵抗を調整可能な第1減衰力調整バルブと、
前記ピストンロッド内に設けられて第2減衰力調整通路を通過する液体の流れに与える抵抗を調整可能な第2減衰力調整バルブとを有する
ことを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
前記第2減衰力調整バルブは、前記第1減衰力調整バルブに連動して前記抵抗を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項3】
アクチュエータと、
前記アクチュエータの動力を前記第1減衰力調整バルブに伝達するコントロールロッドとを備え、
前記第1減衰力調整バルブと前記第2減衰力調整バルブとは、前記ピストンロッド内に前記ピストンロッドの軸方向に移動可能であって前記軸方向に並べて直列に配置される
ことを特徴とする請求項2に記載のフロントフォーク。
【請求項4】
前記第1減衰力調整バルブおよび前記第2減衰力調整バルブは、ともにニードルバルブである
ことを特徴とする請求項3に記載のフロントフォーク。
【請求項5】
前記第2減衰力調整バルブは、
前記ピストンロッドの内周に設けた第2環状弁座と、
前記ピストンロッド内に軸方向へ移動可能に挿入される第2ニードルと、
前記ピストンロッド内に収容されて前記第2ニードルを前記第2環状弁座から離間する方向へ付勢する第2ばねとを有し、
前記ピストンロッドの内周に設けられて前記第2ニードルに当接すると前記第2ニードルの前記第2環状弁座から離間する方向への移動を規制する第2ストッパとを有し、
前記第2ニードルは、前記ピストンロッドの内周に摺接するとともに前記第2ストッパと軸方向で対向するとともに前記第2ばねのばね受として機能するガイド部を有する
ことを特徴とする請求項4に記載のフロントフォーク。
【請求項6】
前記ダンパは、
前記伸側室と前記圧側室とを連通する伸側減衰通路に設けられて前記伸側室から前記圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブと、
前記圧側室と前記伸側室とを連通する圧側通路に設けられて前記圧側室から前記伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブと、
前記圧側室と前記リザーバ室とを連通する圧側減衰通路に設けられて前記圧側室から前記リザーバ室へ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブと、
前記圧側室と前記リザーバ室とを連通する吸込通路に設けられて前記リザーバ室から前記圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する吸込チェックバルブとを有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のフロントフォーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントフォークに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車の車体と前輪との間に介装されるフロントフォークは、自動二輪車の走行時における車体および前輪の振動を抑制するために、伸縮作動時に減衰力を発生するダンパを内蔵している。
【0003】
より詳しくは、フロントフォークは、たとえば、車体側チューブと、車体側チューブに対して軸方向へ相対移動可能な車軸側チューブと、車体側チューブの上端を閉塞するキャップと、車軸側チューブの下端を閉塞するとともに前輪の車軸を保持するアクスルブラケットとを備えたフォーク本体と、フォーク本体に収容されるダンパとを備えている。
【0004】
また、ダンパは、下端がアクスルブラケットに固定されるシリンダと、上端がキャップに連結されるとともにシリンダ内に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドの先端に装着されるとともにシリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内の下方側に挿入されてシリンダに設けられた孔を介してシリンダ外のリザーバ室に連通される部屋と圧側室との間を仕切るバルブディスクと、ピストンに設けられた伸側減衰通路と圧側通路と、伸側減衰通路を開閉して伸側室から圧側室へ向かう作動油の流れに抵抗を与える伸側リーフバルブと、圧側通路を開閉して圧側室から伸側室へ向かう作動油の流れのみを許容する圧側チェックバルブと、バルブディスクに設けられた圧側減衰通路と吸込通路と、圧側減衰通路を開閉して圧側室からリザーバ室へ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側リーフバルブと、吸込ポートを開閉してリザーバ室から圧側室へ向かう作動油の流れのみを許容する伸側チェックバルブとを備えている。
【0005】
このように構成されたフロントフォークでは、ダンパが発生する減衰力の調整を可能とするために、前記構成に加えて、ピストンロッドに伸側減衰通路を迂回して伸側室と圧側室とを連通する伸側減衰力調整通路と、当該伸側減衰力調整通路の途中に設けた伸側ニードルバルブと、アクスルブラケットに設けられて圧側室とリザーバ室とを連通する圧側減衰力調整通路と、当該圧側減衰力調整通路の途中に設け圧側ニードルバルブとを備えている。このフロントフォークでは、伸側ニードルバルブの流路面積をフォーク本体のキャップに設けられた伸側アジャスタの操作によってダンパの伸長時の伸側減衰力を調節できるとともに、圧側ニードルバルブの流路面積をアクスルブラケットに設けられた圧側アジャスタの操作によってダンパの収縮時の圧側減衰力を調整できる(たとえば、特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-201214号公報
【特許文献2】実開平6-56532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の懸架装置では、各フロントフォークにおけるダンパの伸側減衰力と圧側減衰力とを独立に調整できるが、圧側アジャスタがフロントフォークの下端のアクスルブラケットに設けられているために、圧側減衰力の調整を行うにはユーザは車両から降車して屈みこんで圧側アジャスタを操作する必要がある。このように、従来の懸架装置における圧側減衰力の調整は面倒な作業になっており、伸側減衰力の調整だけではなく、圧側減衰力の調整もフロントフォークの上端側で行える懸架装置が要望されている。
【0008】
また、圧側減衰力をアクチュエータの利用で調整する場合を考えると、従来の懸架装置ではアクチュエータを地面近くに配置する構造となってしまうので、従来の懸架装置ではアクチュエータの設置にも不向きである。
【0009】
そこで、本発明は、伸側減衰力の調整と圧側減衰力の調整とをフロントフォークの上端側で行えるフロントフォークの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明のフロントフォークは、車体側チューブと車軸側チューブとを有して伸縮可能なフォーク本体と、フォーク本体内に収容されて車体側チューブと車軸側チューブとの間に介装されるダンパとを備え、ダンパは、車軸側チューブに連結されるシリンダと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されて上端が車体側チューブに連結されるとともに下方側がピストンに連結される筒状のピストンロッドと、ピストンロッド内に設けられて伸側室をフォーク本体とダンパとの間の空間で形成されるリザーバ室に連通する第1減衰力調整通路と、ピストンロッド内に設けられて伸側室と圧側室とを連通する第2減衰力調整通路と、ピストンロッド内に設けられて第1減衰力調整通路を通過する液体の流れに与える抵抗を調整可能な第1減衰力調整バルブと、ピストンロッド内に設けられて第2減衰力調整通路を通過する液体の流れに与える抵抗を調整可能な第2減衰力調整バルブとを備えている。
【0011】
このように構成されたフロントフォークでは、ピストンロッド内に伸側室をリザーバ室とを連通する第1減衰力調整通路と、伸側室と圧側室とを連通する第2減衰力調整通路とが設けられており、ピストンロッド内の第1減衰力調整バルブと第2減衰力調整バルブとによって伸側減衰力と圧側減衰力の双方を調整できる。そして、第1減衰力調整バルブと第2減衰力調整バルブとがピストンロッド内に設けられているので、ピストンロッドの上端が連結される車体側チューブの上端側から第1減衰力調整バルブおよび第2減衰力調整バルブV2を操作して伸側減衰力と圧側減衰力とを調整できる。
【0012】
また、フロントフォークは、第2減衰力調整バルブが第1減衰力調整バルブに連動して通過する液体の流れに与える抵抗を調整するように構成されてもよい。このように構成されたフロントフォークによれば、1つのみのアクチュエータの利用で、第1減衰力調整バルブおよび第2減衰力調整バルブの双方がそれぞれ通過する液体の流れに与える抵抗を調整でき、フロントフォークの伸圧双方の減衰力調整の電動化を安価に実現できる。
【0013】
さらに、フロントフォークは、アクチュエータと、アクチュエータの動力を第1減衰力調整バルブに伝達するコントロールロッドとを備え、第1減衰力調整バルブと第2減衰力調整バルブとは、ピストンロッド内にピストンロッドの軸方向に移動可能であって軸方向に並べて直列に配置されてもよい。このように構成されたフロントフォークによれば、第1減衰力調整バルブと第2減衰力調整バルブとがピストンロッド内に軸方向に移動可能であって直列配置されているので、第1減衰力調整バルブで第2減衰力調整バルブを直接押圧する構造を採ることができ、簡単な構造の採用でフロントフォークの伸圧双方の減衰力調整の電動化を実現して、より一層、製造コストを安価にできる。
【0014】
また、フロントフォークにおける第1減衰力調整バルブおよび第2減衰力調整バルブがともにニードルバルブとされてもよく、このように構成されたフロントフォークによれば、伸側減衰力と圧側減衰力のチューニングが容易となる。
【0015】
さらに、フロントフォークにおける第2減衰力調整バルブは、ピストンロッドの内周に設けた第2環状弁座と、ピストンロッド内に軸方向へ移動可能に挿入される第2ニードルと、ピストンロッド内に収容されて弁体を第2環状弁座から離間する方向へ付勢する第2ばねとを有し、ピストンロッドの内周に設けられて第2ニードルに当接すると第2ニードルの第2環状弁座から離間する方向への移動を規制する第2ストッパとを備え、第2ニードルは、ピストンロッドの内周に摺接するとともに第2ストッパと軸方向で対向するとともに第2ばねのばね受として機能するガイド部を備えてもよい。このように構成されたフロントフォークによれば、第2ニードルにおけるガイド部に第2減衰力調整バルブの最大流路面積の規制、第2ニードルの移動のガイドおよび第2ばねのばね受の3つの機能を集約させつつも、第2ニードルの構造の複雑化を回避でき、フロントフォークを安価に製造できる。
【0016】
さらに、フロントフォークにおけるダンパは、伸側室と圧側室とを連通する伸側減衰通路に設けられて伸側室から圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブと、圧側室と伸側室とを連通する圧側通路に設けられて圧側室から伸側室へ向かう液体の流れにのみを許容する圧側チェックバルブと、圧側室とリザーバ室とを連通する圧側減衰通路に設けられて圧側室からリザーバ室へ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブと、圧側室とリザーバ室とを連通する吸込通路に設けられてリザーバ室から圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する吸込チェックバルブとを備えてもよい。このように構成されたフロントフォークによれば、前記回路構成を備えることでダンパがバイフロー型のダンパとして機能するが、バイフロー型のダンパであっても第1減衰力調整バルブと第2減衰力調整バルブとで伸長作動時と収縮作動時の両方の減衰力の調整が可能となるとともに、伸長作動時と収縮作動時の減衰力の特性を伸側減衰バルブと圧側減衰バルブとにより独立して設定でき、車両の振動の抑制に最適な伸側減衰力と圧側減衰力とを発生できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のフロントフォークによれば、伸側減衰力の調整と圧側減衰力の調整とをフロントフォークの上端側で行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態のフロントフォークの断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態のフロントフォークの第1減衰力調整バルブおよび第2減衰力調整バルブの拡大断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態のフロントフォークにおける第1減衰力調整バルブおよび第2減衰力調整バルブの第1変形例の拡大断面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態のフロントフォークにおける第1減衰力調整バルブおよび第2減衰力調整バルブの第2変形例の拡大断面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態のフロントフォークにおける第1減衰力調整バルブおよび第2減衰力調整バルブの第3変形例の拡大断面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態のフロントフォークにおける第1減衰力調整バルブおよび第2減衰力調整バルブの第4変形例の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1に示すように、一実施の形態におけるフロントフォークFは、車体側チューブ2と車軸側チューブ3とを有して伸縮可能なフォーク本体1と、フォーク本体1内に収容されて車体側チューブ2と車軸側チューブ3との間に介装されるダンパDとを備えて構成されており、図示はしないが、自動二輪車やトライク等の鞍乗型車両の車体と前輪との間に介装されて車体と前輪との振動を抑制するものである。
【0020】
以下、フロントフォークFの各部について詳細に説明する。フロントフォークFは、前述したように、フォーク本体1とフォーク本体内に収容されるダンパDとを備えている。フォーク本体1は、車体側チューブ2と、車体側チューブ2に対して軸方向へ移動可能な車軸側チューブ3とを備えて伸縮可能となっている。また、フォーク本体1は、車体側チューブ2の上端を閉塞するキャップ4と、車軸側チューブ3の下端を閉塞するとともに前記前輪の車軸を保持するアクスルブラケット5と備えており、内部が密閉状態となっている。
【0021】
キャップ4は、筒状であって、車体側チューブ2の上端の開口部の内周に螺子結合される大径部4aと、大径部4aの
図1中下端から下方へ延びて外径が大径部4aよりも小径であって内周に符示しない小径部4bとを備えている。また、キャップ4の大径部4aの内周には、ステッピングモータとステッピングモータの図外のロータの回転運動を直動軸6aの軸方向への運動に変換する変換機構とを備えたアクチュエータ6が収容されている。アクチュエータ6は、通電によって駆動されるとキャップ4内で直動軸6aを
図1中上下方向へ変位させ得る。
【0022】
車軸側チューブ3は、車体側チューブ2の下方から車体側チューブ2内に挿入されており、車体側チューブ2に対して軸方向へ相対移動できる。なお、車体側チューブ2の下端の内周には、車軸側チューブ3の外周に摺接する環状のブッシュ7と環状のシール部材8とが設けられており、車軸側チューブ3の上端外周には車体側チューブ2の内周に摺接する環状のブッシュ9が装着されている。よって、車体側チューブ2と車軸側チューブ3とは、ブッシュ7,9によって互いに軸ぶれせずに軸方向へ移動できる。
【0023】
車軸側チューブ3の下端は、図外の前記前輪の車軸を把持するアクスルブラケット5によって閉塞されており、アクスルブラケット5によってフォーク本体1が前記前輪に連結される。そして、このように構成されたフォーク本体1内は、シール部材8によって外方から密閉された空間となっている。アクスルブラケット5は、筒状であって車軸側チューブ3の下端の外周に螺子締結される有底筒状の筒部5aと、筒部5aの底部に連なって図外の前記車軸を把持する把持部5bとを備えている。なお、図示はしないが、アクスルブラケット5には、ブレーキキャリパやフェンダ等の装着を可能とする取り付け部が設けられる。
【0024】
なお、本実施の形態のフロントフォークFでは、フォーク本体1は、車体側チューブ2内に車軸側チューブ3を挿入した倒立型として構成されているが、車体側チューブ2を車軸側チューブ3内に挿入した正立型として構成されてもよい。
【0025】
ダンパDは、車軸側チューブ3にアクスルブラケット5を介して連結されるシリンダ10と、シリンダ10内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ10内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン11と、シリンダ10内に軸方向へ移動可能に挿入されて上端がキャップ4を介して車体側チューブ2に連結されるとともに下方側がピストン11に連結される筒状のピストンロッド12と、ピストンロッド12内に設けられて伸側室R1をフォーク本体1とダンパDとの間の空間で形成されるリザーバ室Rに連通する第1減衰力調整通路P1と、ピストンロッド12内に設けられて伸側室R1と圧側室R2とを連通する第2減衰力調整通路P2と、ピストンロッド12内に設けられて第1減衰力調整通路P1を通過する液体の流れに与える抵抗を調整可能な第1減衰力調整バルブV1と、ピストンロッド12内に設けられて第2減衰力調整通路を通過する液体の流れに与える抵抗を調整可能な第2減衰力調整バルブV2とを備えている。さらに、本実施の形態のフロントフォークFでは、ダンパDは、伸側室R1と圧側室R2とを連通する圧側通路11aと伸側減衰通路11bと、圧側通路11aに設けられた圧側チェックバルブ13と、伸側減衰通路11bに設けられた伸側減衰バルブ14と、圧側室R2とリザーバ室Rとを連通する圧側減衰通路16aと吸込通路16bと、圧側減衰通路16aに設けられた圧側減衰バルブ17と、吸込通路16bに設けられた吸込チェックバルブ18とを備えている。そして、ダンパDは、フォーク本体1内に収容されており、フォーク本体1内であってダンパD外に液体が貯留されるリザーバ室Rが形成される。
【0026】
以下、ダンパDの各部について説明する。シリンダ10は、フォーク本体1におけるアクスルブラケット5に固定されるベースバルブ組立体15を介してアクスルブラケット5に連結されている。シリンダ10は、下端の側部から開口してシリンダ10内とリザーバ室Rとを連通する透孔10aを備えている。また、シリンダ10の上端開口端には、環状のロッドガイド20が装着されている。ロッドガイド20は、環状であってシリンダ10の上端の内周に螺合されて内周に挿通されるピストンロッド12の外周に摺接するガイド部20aと、ガイド部20aの上端から上方へ向けて突出する筒状のケース部20bとを備えている。なお、シリンダ10内およびリザーバ室Rに充填される液体は、作動油とされているが、作動油以外の液体とされてもよい。
【0027】
ベースバルブ組立体15は、シリンダ10の透孔10aよりも上方側に嵌合する環状の隔壁体16と、アクスルブラケット5の筒部5aの底部を貫くボルト21によってアクスルブラケット5に固定されるとともにシリンダ10の下端に螺合するとともに隔壁体16を保持する保持部材19とを備えている。保持部材19は、シリンダ10の下端であって透孔10aよりも下方の内周に螺合してシリンダ10の下端を閉塞する閉塞部19aと、閉塞部19aから上方へ向けて突出するとともに外周に隔壁体16が装着される軸部19bとを備えている。このように、シリンダ10内であって隔壁体16と閉塞部19aとの間の空間は、透孔10aを介してリザーバ室Rに連通されており、隔壁体16は、シリンダ10内を圧側室R2とリザーバ室Rに連通される空間とに区画している。
【0028】
また、隔壁体16には、前記空間を介して圧側室R2をリザーバ室Rに連通する圧側減衰通路16aと吸込通路16bとが設けられている。そして、圧側減衰通路16aには、圧側室R2からリザーバ室Rへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブ17が設けられており、吸込通路16bには、リザーバ室Rから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する吸込チェックバルブ18が設けられている。
【0029】
ピストンロッド12は、筒状のピストンロッド本体22と、ピストンロッド本体22の下端に螺子結合されてピストン11を保持する筒状のセンターロッド23と、ピストンロッド本体22とセンターロッド23との間で挟持される第2ストッパとしての筒状のカラー24とを備えている。そして、ピストンロッド12は、上端がキャップ4における小径部4bの内周に螺子結合されて連結されており、下端側がロッドガイド20の内周を通してシリンダ10内に挿入されている。ピストンロッド12は、ロッドガイド20とピストン11によってシリンダ10に対して径方向への移動が規制された状態でピストン11とともに軸方向となる
図1中上下方向へ相対移動できる。
【0030】
ピストンロッド本体22は、
図1および
図2に示すように、筒状であって、
図1に示すように、上端がキャップ4の小径部4bに螺子結合されており、中間部分に側方から開口して内部に通じる横孔22aを備えるとともに、
図2に示すように、下端の外周に螺子部22bを備えている。
【0031】
また、センターロッド23は、
図1および
図2に示すように、筒状であってピストンロッド本体22の螺子部22bの外周に螺子結合されるソケット23aと、ソケット23aの
図2中下端に連なるとともに内径がソケット23aの内径より小径であって
図2中下端側が縮径されて内周に段部を有する筒状のバルブ収容筒23bと、バルブ収容筒23bの
図2中下端から下方へ延びてバルブ収容筒23bよりも外径が小径であって外周にピストン11が装着される筒状のピストン装着部23cと、伸側室R1に臨むバルブ収容筒23bの側方から開口してバルブ収容筒23bの段部よりもピストンロッド本体側に通じるポート23dと、バルブ収容筒23bの内周に設けられた段部で形成された第2環状弁座23eとを備えている。
【0032】
カラー24は、筒状であって、
図2中の下端の外周に設けられたフランジ24aと、下端の内周の内径が拡径されて設けられた大径内周部24bとを備えている。カラー24は、センターロッド23のソケット23a内にフランジ24a側から挿入されており、ソケット23aの内周にピストンロッド本体22の螺子部22bを螺子結合するとフランジ24aがピストンロッド本体22とバルブ収容筒23bの上端とによって挟持されて、ピストンロッド本体22とセンターロッド23とに固定される。このように構成されたピストンロッド12は、ピストンロッド本体22、センターロッド23およびカラー24が筒状であるので、全体として筒状となっている。そして、ピストンロッド12の先端となる下端の開口部が圧側室R2に臨んでいるので、ピストンロッド12内は、圧側室R2に連通され、横孔22aを介してリザーバ室Rに連通されるとともに、ポート23dを介して伸側室R1に連通されている。
【0033】
そして、ピストンロッド12におけるポート23d、横孔22aおよびピストンロッド12内のポート23dから横孔22aまでの部分で伸側室R1とリザーバ室Rとを連通する第1減衰力調整通路P1が形成されており、ピストンロッド12におけるポート23dおよびピストンロッド12内のポート23dから下端開口部までの部分で伸側室R1と圧側室R2とを連通する第2減衰力調整通路P2が形成されている。
【0034】
また、ピストンロッド本体22の外周であって横孔22aよりも
図1中下方には、ダンパDが最収縮する際にロッドガイド20のケース部20b内に侵入する環状のロックピース26が設けられている。ケース部20bとロックピース28とは液圧クッション装置を構成しており、液圧クッション装置は、ケース部20b内にロックピース26が侵入すると、ケース部20b内の圧力を上昇させてダンパDのそれ以上の収縮を抑制する。ロッドガイド20のケース部20bとキャップ4の小径部4bの外周に装着された筒状のばね受50との間には、フォーク本体1を常時伸長させる方向へ付勢する懸架ばね51が介装されている。よって、フロントフォークFを車体と前輪との間に介装するとフロントフォークFは懸架ばね51による弾発力を発揮して車体を弾性支持する。なお、ロックピース26がケース部20b内に侵入しても、横孔22aは、ケース部20bとロックピース26とで囲まれる空間の外にあってリザーバ室Rと連通状態に保たれるので、第1減衰力調整通路P1を通過する液体の流れに対して液圧クッション装置が抵抗を与えることはない。
【0035】
ピストン11は、環状であって、ピストンロッド12のセンターロッド23の
図2中下方となる先端に設けられたピストン装着部23cの外周に嵌合しており、バルブ収容筒23bの下端とピストン装着部23cの
図2中下端に螺子結合されるピストンナット25とによって挟持されてピストン装着部23cに固定されている。また、ピストン11は、シリンダ10の内周に接しており、シリンダ10内を伸側室R1と圧側室R2とに区画している。さらに、ピストン11は、伸側室R1と圧側室R2とを並列に連通する圧側通路11aと伸側減衰通路11bとを備えている。
【0036】
ピストン11の伸側室側端には、圧側通路11aの外周を取り囲む圧側弁座11cが設けられている。また、ピストン11の伸側室側には、圧側弁座11cに離着座して圧側通路11aを開閉するとともに圧側通路11aを圧側室R2から伸側室R1へ向けて通過する液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブ13が設けられている。圧側チェックバルブ13は、ピストン装着部23cの外周に軸方向移動可能に装着されて圧側弁座11cに離着座する環状板と、ピストン装着部23cの外周に装着されるばね受と、環状板とばね受との間に圧縮状態で介装されて環状板をピストン11側へ向けて付勢するばねとを備えて構成されている。そして、圧側チェックバルブ13は、圧側通路11aを介して圧側室R2の圧力を受けて環状板がばねを押し縮めて圧側弁座11cから離間すると圧側通路11aを開放し、環状板が圧側弁座11cに着座すると圧側通路11aを遮断する。よって、圧側チェックバルブ13は、圧側通路11aを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。
【0037】
ピストン11の圧側室側端には、伸側減衰通路11bの外周を取り囲む伸側弁座11dが設けられるとともに、伸側弁座11dに離着座して伸側減衰通路11bを開閉するとともに伸側減衰通路11bを伸側室R1から圧側室R2へ向けて通過する液体の流れのみを許容しつつ当該流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ14が重ねられている。伸側減衰バルブ14は、複数の環状のリーフバルブを積層して構成された積層リーフバルブとされており、内周がピストン11とともにピストンナット25によってピストン装着部23cに固定されており、外周側の撓みが許容されている。
【0038】
よって、伸側減衰バルブ14は、伸側減衰通路11bを介して作用する伸側室R1の圧力を受けて外周側を撓ませて伸側弁座11dから離間すると伸側減衰通路11bを開放するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える一方、伸側弁座11dに着座した状態では伸側減衰通路11bを遮断する。よって、伸側減衰バルブ14は、伸側減衰通路11bを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。
【0039】
つづいて、第1減衰力調整バルブV1は、ピストンロッド12内に設けられている。より詳細には、第1減衰力調整バルブV1は、本実施の形態のフロントフォークFではニードルバルブとされており、ピストンロッド本体22の
図2中下下端側の内方に軸方向へ移動可能に挿入される第1ニードル30と、カラー24の
図2中上端の開口の周囲で形成される第1環状弁座31と、ピストンロッド本体22内に軸方向へ移動可能に挿入されてアクチュエータ6の直動軸6aの推力をニードル30へ伝達するコントロールロッド32とを備えて構成されている。
【0040】
第1ニードル30は、
図2に示すように、カラー24内に軸方向へ移動可能に挿入されて外周に円錐面を有する頭部30aと、頭部30aの
図2中上端に連なって第1環状弁座31に
図2中下端を対向させて第1環状弁座31に離着座可能な円柱状の胴部30bと、胴部30bの外周に設けられてピストンロッド本体22の内周に摺接するフランジ状のガイド部30cとを備えている。そして、第1ニードル30は、ピストンロッド本体22内に軸方向へ移動可能に挿入されていて、第1環状弁座31に対して軸方向で遠近できるようになっている。また、ニードル30は、胴部30bの
図2中下端外周を第1環状弁座31に着座させると第1減衰力調整通路P1を閉塞して第1減衰力調整通路P1を介しての伸側室R1とリザーバ室Rとの連通を断つ。また、第1ニードル30は、胴部30bの
図2中下端外周を第1環状弁座31から離間させた状態では頭部30aの円錐面でなる外周面と第1環状弁座31の内周との間に隙間を生じさせて第1減衰力調整通路P1を開放し、第1減衰力調整通路P1を介して伸側室R1とリザーバ室Rとを連通させる。また、第1ニードル30は、胴部30bの
図2中下端外周を第1環状弁座31から離間させた状態で、第1環状弁座31に対して軸方向へ変位すると、第1環状弁座31に対する位置に応じて頭部30aと第1環状弁座31の内周との間に隙間の大きさを変化させることができ、これによって、第1減衰力調整バルブV1を通過する液体の流れに与える抵抗を大小調整できる。
【0041】
また、ガイド部30cがピストンロッド本体22の内周に摺接しているので、第1ニードル30は、ピストンロッド12内で軸ぶれせずに軸方向へ移動できる。なお、第1ニードル30のガイド部30cの外周には切欠30dが設けられており、ガイド部30cによって第1減衰力調整通路P1が遮断されないようになっている。
【0042】
コントロールロッド32は、筒状とされてピストンロッド本体22内に軸方向へ移動可能に挿入されており、下端の近傍に設けられた下方孔32aと、ピストンロッド本体22の横孔22aが設けられた位置の近傍から開口する上方孔32bとを備えている。よって、コントロールロッド32の内外が下方孔32aおよび上方孔32bによって連通される。コントロールロッド32の
図2中下端は、第1ニードル30のガイド部30cの
図2中上端に当接しているが、コントロールロッド32の外径がピストンロッド本体22およびガイド部30cの外径よりも小径となっているので、切欠30dを閉塞することがなく第1減衰力調整通路P1による伸側室R1とリザーバ室Rとの連通が確保されている。また、本実施の形態のフロントフォークFでは、コントロールロッド32が筒状であって下方孔32aと上方孔32bとを備えているので、コントロールロッド32内も第1減衰力調整通路P1の一部として機能するのでピストンロッド本体22内にコントロールロッド32を挿入しても、液体の通過の妨げとならない程度の十分な広さの流路面積を確保できる。
【0043】
このように構成されたコントロールロッド32は、第1ニードル30とアクチュエータ6の直動軸6aとの間に介装されており、アクチュエータ6の推力を第1ニードル30に伝達できる。よって、アクチュエータ6の推力の調整によって、第1ニードル30は、第1減衰力調整バルブV1における流路面積の大きさを調整して第1減衰力調整バルブV1を通過する液体の流れに与える抵抗の大きさを調整できるとともに、第1減衰力調整バルブV1を閉弁させて第1減衰力調整通路P1を遮断できる。また、第1減衰力調整バルブV1における第1ニードル30の頭部30aの形状は、ダンパDの収縮作動時に第1減衰力調整通路P1を通過する液体の流量に最適となるように設定されている。また、第1減衰力調整バルブV1は、ダンパDが最伸長してシリンダ10からピストンロッド12が最大限に
図1中上方へ移動しても、リザーバ室Rに貯留されている液体の液面Oよりも下方になる位置に設けられている。
【0044】
つづいて、第2減衰力調整バルブV2は、ピストンロッド12内に第1減衰力調整バルブV1と軸方向にて直列に配置して設けられている。より詳細には、第2減衰力調整バルブV2は、本実施の形態のフロントフォークFではニードルバルブとされており、第2減衰力調整通路P2の一部を形成するセンターロッド23のバルブ収容筒23b内に軸方向へ移動可能に挿入される第2ニードル33と、センターロッド23のバルブ収容筒23bの内周に設けられた第2環状弁座23eと、バルブ収容筒23bと第2ニードル33との間に介装されて第2ニードル33を第2環状弁座23eから離間する方向へ付勢する第2ばね34とを備えて構成されている。
【0045】
第2ニードル33は、
図2に示すように、外周に円錐面を有してバルブ収容筒23bの内周であって第2環状弁座23eよりも下方の縮径された内周部に軸方向へ移動可能に挿入される頭部33aと、頭部33aの
図2中上端に連なって第2環状弁座23eに
図2中下端を対向させて第2環状弁座23eに離着座可能な円柱状の胴部33bと、胴部33bの
図2中上端の外周に設けられてバルブ収容筒23bの内周に摺接するフランジ状のガイド部33cと、ガイド部33cの後端となる
図2中上端から上方へ延びてカラー24内に挿入されて第1ニードル30の先端に対向する伝達軸33dとを備えている。なお、伝達軸33dの外径は、カラー24の内径よりも小径となっており、伝達軸33dの外周とカラー24の内周との間には液体の通過を許容する環状隙間が形成される。
【0046】
第2ニードル33は、胴部33bの
図2中下端外周を第2環状弁座23eに着座させるとセンターロッド23のポート23dの開口部よりも下方側を閉塞して第2減衰力調整通路P2を介しての伸側室R1と圧側室R2との連通を断つ。また、第2ニードル33は、胴部33bの
図2中下端外周を第2環状弁座23eから離間させた状態では頭部33aの円錐面でなる外周面と第2環状弁座23eの内周との間に隙間を生じさせて第2減衰力調整通路P2を開放し、第2減衰力調整通路P2を介して伸側室R1とリザーバ室Rとを連通させる。また、第2ニードル33は、胴部33bの
図2中下端外周を第2環状弁座23eから離間させた状態で、第2環状弁座23eに対して軸方向へ変位すると、第2環状弁座23eに対する位置に応じて頭部33aと第2環状弁座23eの内周との間に隙間の大きさを変化させることができ、これによって、第2減衰力調整バルブV2を通過する液体の流れに与える抵抗を大小調整できる。
【0047】
また、ガイド部33cがセンターロッド23のバルブ収容筒23bの内周に摺接しているので、第2ニードル33は、センターロッド23内で軸ぶれせずに軸方向へ移動できる。なお、第2ニードル33のガイド部33cの外周には切欠33eが設けられており、ガイド部33cによって第2減衰力調整通路P2が遮断されないようになっている。
【0048】
第2ばね34は、第2ニードル33のガイド部33cとバルブ収容筒23bの内周の段部との間に圧縮された状態で介装されており、第2ニードル33を常に軸方向であって第2環状弁座23eから離間する方向へ付勢している。第2ニードル33は、第2ばね34の付勢力を受ける以外に何ら力を受けない状態では、第2ばね34の付勢力によってガイド部33cの
図2中上端がカラー24の
図2中下端に当接する位置に位置決められる。ガイド部33cの上端がカラー24の下端に当接しても、カラー24の大径内周部24bとガイド部33cの切欠33eとが互いに対向して第2ニードル33とカラー24とによって第2減衰力調整通路P2が遮断されることはない。
【0049】
また、第2ばね34によって第2ニードル33が第1減衰力調整バルブV1における第1ニードル30側へ向けて付勢されているので、第2ニードル33の後端の伝達軸33dが第1ニードル30の先端に当接して、第1ニードル30に第2ばね34の付勢力が伝達される。このように、第2ニードル33と第1ニードル30とがピストンロッド12内で軸方向にて直列に配置されて、互いに当接しているので、アクチュエータ6を駆動して直動軸6aを
図2中軸方向へ上下動させると、コントロールロッド32を介してアクチュエータ6の動力が第1ニードル30に伝達されて第1ニードル30が上下動するとともに、第2ニードル33にも第1ニードル30を介してアクチュエータ6の動力が伝達して第2ニードル33も第1ニードル30とともに上下動する。
【0050】
そして、第1ニードル30の先端と第2ニードル33の伝達軸33dの後端とが当接した状態で、ピストンロッド12の軸方向で第1ニードル30の胴部30bの下端から第2ニードル33の胴部33bの下端までの距離は、第1環状弁座31と第2環状弁座23eとの間の軸方向における距離と等しくなっている。よって、アクチュエータ6を駆動して、第1ニードル30の胴部30bを第1環状弁座31に着座させて第1減衰力調整バルブV1を閉弁させて第1減衰力調整通路P1を遮断すると、第2ニードル33も第2ばね34の付勢力に抗してセンターロッド23内を
図2中下方へ移動して胴部33bを第2環状弁座23eに着座させて第2減衰力調整バルブV2を閉弁させて第2減衰力調整通路P2を遮断する。
【0051】
他方、第1ニードル30を第1環状弁座31から離間させると第1減衰力調整バルブV1が開弁して第1減衰力調整通路P1を開き、第2ニードル33も第2ばね34の付勢力によって第2環状弁座23eから離間して第2減衰力調整バルブV2が開弁して第2減衰力調整通路P2を開く。そして、第1減衰力調整バルブV1と第2減衰力調整バルブV2とを開弁させる状態では、アクチュエータ6が第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2に与える推力と第2ばね34の付勢力が釣り合う位置に第1ニードル30と第2ニードル33とが位置決められる。よって、第1減衰力調整バルブV1と第2減衰力調整バルブV2とを開弁させる状態では、アクチュエータ6が第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2に与える推力を大小調整することによって、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2の開弁度合を調整できる。なお、第2ニードル33は、ガイド部33cの後端がカラー24に当接するとその上限位置に位置決めされて、それ以上第2環状弁座23eからの離間が規制されるので、第2減衰力調整バルブV2の最大流路面積を規制できる。よって、第1ニードル30がピストンロッド12内を
図2中上方へ移動して、第1ニードル30が第2ニードル33のストローク上限以上変位すると、第1ニードル30と伝達軸33dとが離間して第2ニードル33が上限位置に位置決めされる。このように、第2ニードル33に当接すると第2ニードル33の第2環状弁座23eからの離間を規制する第2ストッパとして機能するカラー24を設けることにより、第2減衰力調整バルブV2の最大流路面積を設定できる。なお、第1環状弁座31が形成されるカラー24を第2ストッパとして利用することで部品点数を少なくできるが、センターロッド23内に第2ストッパを別途設けてもよい。また、本実施の形態のフロントフォークFでは、第1環状弁座31を形成するカラー24を設けることで、センターロッド23内への第2減衰力調整バルブV2の組み付け、第2ニードル33に対する第2ストッパの設置および第1減衰力調整バルブV1における第1環状弁座31の設置を簡単に行うことができる。
【0052】
このように、本実施の形態のフロントフォークFでは、第1減衰力調整バルブV1を介して第2減衰力調整バルブV2にアクチュエータ6の動力を伝達でき、第2減衰力調整バルブV2を第1減衰力調整バルブV1の動作に連動させて、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2が通過する液体の流れに与える抵抗の大きさを調整できる。
【0053】
また、第1減衰力調整バルブV1における第1ニードル30の頭部30aの形状は、ダンパDの伸長作動時に第1減衰力調整通路P1を通過する液体の流量に最適となるように設定されている。なお、第2減衰力調整バルブV2は、第1減衰力調整バルブV1と同様に、ダンパDが最伸長してシリンダ10からピストンロッド12が最大限に
図1中上方へ移動しても、リザーバ室Rに貯留されている液体の液面Oよりも下方になる位置に設けられている。
【0054】
フロントフォークFは、以上のように構成されており、以下にフロントフォークFの作動について説明する。まず、フロントフォークFが伸長する場合、フォーク本体1とともにダンパDが伸長する。ダンパDは、伸長すると、シリンダ10内をピストン11が
図1中で上方へ移動して伸側室R1を縮小させるとともに圧側室R2を拡大させる。すると、液体は、ピストン11の伸側減衰バルブ14を押し開いて伸側減衰通路11bを通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動する。液体が伸側減衰バルブ14を通過する際に抵抗を受けるので伸側室R1の圧力が上昇する。また、第1減衰力調整バルブV1における第1ニードル30が第1環状弁座31から離間して第1減衰力調整バルブV1が開弁している場合、伸側室R1の液体は、伸側減衰通路11bを通過して圧側室R2へ向かう他に、第1減衰力調整バルブV1および第1減衰力調整通路P1を通過してリザーバ室Rへ移動する。さらに、本実施の形態のフロントフォークFでは、第2減衰力調整バルブV2が第1減衰力調整バルブV1と連動しており、第1減衰力調整バルブV1が開弁すると同様に開弁するため、伸側室R1の液体は、伸側減衰通路11bの他にも第2減衰力調整バルブV2および第2減衰力調整通路P2を通過して圧側室R2へ移動する。よって、フロントフォークFの伸長作動時であって第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2の開弁時には、伸側室R1の容積の減少に見合った流量の液体が伸側減衰バルブ14、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2を通過し、伸側減衰バルブ14、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2が通過する液体の流れに抵抗を与える。
【0055】
また、フロントフォークFの伸長作動時には、ピストンロッド12がシリンダ10から退出するため、拡大する圧側室R2内ではピストンロッド12がシリンダ10から退出する体積分の液体が不足するが、この不足分の液体は、吸込チェックバルブ18が開弁して吸込通路16bを介してリザーバ室Rから圧側室R2へ供給される。よって、圧側室R2の圧力は、略リザーバ室R内の圧力と等しくなる。
【0056】
このように、フロントフォークFの伸長作動時には、伸側室R1の圧力が上昇して圧側室R2の圧力よりも高くなってピストン11に作用し、ダンパDはフロントフォークFの伸長を妨げる伸側減衰力を発生する。
【0057】
第1減衰力調整通路P1における第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整通路P2における第2減衰力調整バルブV2は、アクチュエータ6の推力調整によって連動し、通過する液体の流れに与える抵抗の大きさを調整できるので、フロントフォークFの伸長作動時におけるダンパDの伸側室R1の圧力を高低調整できる。よって、フロントフォークFの伸長作動時にダンパDが発生する伸側減衰力の大きさを調整でき、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2を閉弁させれば、第1減衰力調整通路P1および第2減衰力調整通路P2がともに遮断されるので、伸側室R1の液体は伸側減衰バルブ14のみを通過するようになって伸側減衰力を最大にできる。このように、フロントフォークFの伸長作動時には、1つのアクチュエータ6の利用で第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2が液体の流れに与える抵抗を高低調整できるのでフロントフォークFの伸側減衰力を大小調整できる。また、本実施の形態では、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2が閉弁して、第1減衰力調整通路P1および第2減衰力調整通路P2を完全に遮断できるので、フロントフォークFの伸長作動時に発生する減衰力の最高値を大きくできる。また、第2ニードル33が第2ストッパとしてのカラー24に当接すると、第2減衰力調整バルブV2の流路面積がそれ以上大きくなることが無くなるので、フロントフォークFの伸側減衰力を小さくした場合に減衰力不足となる事態を回避できる。
【0058】
つづいて、フロントフォークFが収縮作動する場合、フォーク本体1とともにダンパDが収縮する。ダンパDは、収縮すると、シリンダ10内をピストン11が
図1中で下方へ移動して圧側室R2を縮小させるとともに伸側室R1を拡大させる。すると、液体は、圧側チェックバルブ13を圧側弁座11cから離間させるとともに圧側チェックバルブ13の全体をピストン11から後退させて圧側通路11aを通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動する。
【0059】
また、ピストンロッド12がシリンダ10内に侵入するため、シリンダ10ではピストンロッド12がシリンダ10内に侵入する体積分の液体が過剰となる。この過剰分の液体は、圧側減衰バルブ17を押し開いて圧側減衰通路16aを通じて圧側室R2からリザーバ室Rへ移動するが、第1減衰力調整バルブV1が開弁している場合には、圧側減衰通路16a以外にも第1減衰力調整通路P1を通過してシリンダ10内からリザーバ室Rへ移動する。なお、第1減衰力調整バルブV1が開弁している場合、第1減衰力調整バルブV1に連動して第2減衰力調整バルブV2も開弁するが、ダンパDの収縮作動時には、圧側チェックバルブ13が開弁して圧側室R2と伸側室R1とが連通状態になるとともに第2減衰力調整バルブV2が抵抗となるため第2減衰力調整通路P2を液体がほとんど通らない。
【0060】
このように、フロントフォークFの収縮作動時には、圧側減衰バルブ17或いは第1減衰力調整バルブV1が開弁している場合には圧側減衰バルブ17とともに第1減衰力調整バルブV1がシリンダ10内からリザーバ室Rへ向かう液体の流れに対して抵抗を与えるとともに、伸側室R1と圧側室R2とが圧側通路11aを介して連通状態におかれるので、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力が略等しく上昇する。そして、伸側室R1の圧力がピストン11の上面に作用し、圧側室R2の圧力がピストン11の下面に作用するが、ピストン11がピストンロッド12に連結されているのでピストン11の上面の受圧面積よりも下面の受圧面積の方が大きくなるため、ダンパDはフロントフォークFの収縮を妨げる圧側減衰力を発生する。
【0061】
このように、フロントフォークFの収縮作動時であって第1減衰力調整バルブV1の開弁時には、圧側減衰バルブ17と第1減衰力調整バルブV1とでシリンダ10の圧力を上昇させてフロントフォークFが圧側減衰力を発生し、アクチュエータ6の利用で第1減衰力調整バルブV1が通過する液体の流れに与える抵抗を調整することによって、圧側減衰力の調整が可能である。また、フロントフォークFの収縮作動時であって第1減衰力調整バルブV1の閉弁時には、シリンダ10内の液体が第1減衰力調整通路P1を通過できなくなり圧側減衰バルブ17のみを通じてリザーバ室Rへ移動する。よって、フロントフォークFの収縮作動時であって第1減衰力調整バルブV1の閉弁時には、フロントフォークFは、第1減衰力調整バルブV1の開弁時より大きな圧側減衰力を発生する。前述したところから理解できるように、本実施の形態のフロントフォークFでは、第1減衰力調整バルブV1によって、フロントフォークFが発生する圧側減衰力を高低調整できる。
【0062】
ここで、本実施の形態におけるフロントフォークFでは、フォーク本体1によってフロントフォークFに作用する横方向の力を受ける構造となっているため、ピストンロッド12は軸方向においてダンパDが発生する減衰力に耐え得る強度を備えていればよく、ピストンロッド12の外径を小さくする方がフロントフォークFの重量を軽減できコストも安価になるので、ピストンロッド12の外径を極力小さくしている。そのため、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2の開弁時において、フロントフォークFの伸長作動時に伸側室R1から第1減衰力調整通路P1および第2減衰力調整通路P2を介して排出される液体の流量と、フロントフォークFの収縮作動時に第1減衰力調整通路P1を通過する液体の流量とを比較すると、フロントフォークFの伸長作動時の液体の流量の方が多くなる。第1減衰力調整バルブV1は、フロントフォークFの収縮作動時の液体の流量に対して適度な抵抗を与えるように第1ニードル30の頭部30aの形状を設計しているため、フロントフォークFの収縮作動時における少ない液体の流量に適した抵抗を与えて圧側減衰力の調整幅を大きくできる。第1減衰力調整バルブV1がフロントフォークFの収縮作動時の少ない液体の流量に対して適した抵抗を与えるように設定されているため、フロントフォークFの伸長作動時の第1減衰力調整通路P1および第2減衰力調整通路P2を通過する液体の全流量が第1減衰力調整バルブV1を通過することになると第1減衰力調整バルブV1における抵抗が大きくなりすぎてフロントフォークFの伸側減衰力の調整幅が小さくなってしまう。ところが、本実施の形態のフロントフォークFでは、フロントフォークFの伸長作動時には、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2を開弁させると、液体は第1減衰力調整バルブV1のみならず第2減衰力調整バルブV2をも通過するようになり、第1減衰力調整バルブV1の液体の通過流量を少なくでき、伸側減衰力の低下幅を大きくできる。よって、本実施の形態のフロントフォークFでは、圧側減衰力と伸側減衰力との調整が可能であるとともに、圧側減衰力と伸側減衰力の調整幅も大きくできる。
【0063】
以上のように、本実施の形態のフロントフォークFは、車体側チューブ2と車軸側チューブ3とを有して伸縮可能なフォーク本体1と、フォーク本体1内に収容されて車体側チューブ2と車軸側チューブ3との間に介装されるダンパDとを備え、ダンパDは、車軸側チューブ3に連結されるシリンダ10と、シリンダ10内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ10内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン11と、シリンダ10内に軸方向へ移動可能に挿入されて上端が車体側チューブ2に連結されるとともに下方側がピストン11に連結される筒状のピストンロッド12と、ピストンロッド12内に設けられて伸側室R1をフォーク本体1とダンパDとの間の空間で形成されるリザーバ室Rに連通する第1減衰力調整通路P1と、ピストンロッド12内に設けられて伸側室R1と圧側室R2とを連通する第2減衰力調整通路P2と、ピストンロッド12内に設けられて第1減衰力調整通路P1を通過する液体の流れに与える抵抗を調整可能な第1減衰力調整バルブV1と、ピストンロッド12内に設けられて第2減衰力調整通路P2を通過する液体の流れに与える抵抗を調整可能な第2減衰力調整バルブV2とを備えている。
【0064】
このように構成されたフロントフォークFでは、ピストンロッド12内に伸側室R1をリザーバ室Rとを連通する第1減衰力調整通路P1と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する第2減衰力調整通路P2とが設けられており、ピストンロッド12内の第1減衰力調整バルブV1と第2減衰力調整バルブV2とによって伸側減衰力と圧側減衰力の双方を調整できる。そして、第1減衰力調整バルブV1と第2減衰力調整バルブV2とがピストンロッド12内に設けられているので、ピストンロッド12の上端が連結される車体側チューブ2の上端、つまり、フロントフォークFの上端に設置したアクチュエータ6で第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2を操作して伸側減衰力と圧側減衰力とを調整できる。
【0065】
以上より、本実施の形態のフロントフォークFは、伸側減衰力と圧側減衰力の調整をフロントフォークFの上端側で行える。また、本実施の形態のフロントフォークFでは、フロントフォークFの上端側にアクチュエータ6を設置すれば第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2の調整が可能となる。そのため、本実施の形態のフロントフォークFによれば、アクチュエータを地面の至近となるフロントフォークFの下端に配置する必要が無く、アクチュエータの保護とアクチュエータへの配線の取り回しも容易となる。
【0066】
なお、本実施の形態のフロントフォークFでは、コントロールロッド32を介してアクチュエータ6の動力を第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2に伝達して伸圧双方の減衰力調整を行うようにしているが、アクチュエータ6の設置に代えてユーザの手動操作によってコントロールロッド32を軸方向となる上下方向に移動させ得るアジャスタをピストンロッド12の先端に設けてもよい。なお、アジャスタは、たとえば、キャップ4或いはピストンロッド12に回転可能に装着される操作部と、操作部の回転によってキャップ4或いはピストンロッド12に対して上下動する送り螺子機構とを備えていればよく、コントロールロッド32を介して前記送り螺子機構の上下動を第1ニードル30および第2ニードル33に伝達するようにすればよい。また、前記操作部がキャップ4或いはピストンロッド12に螺着されて、送り螺子機構を構成するようなアジャスタであってもよい。
【0067】
また、本実施の形態のフロントフォークFでは、第2減衰力調整バルブV2が第1減衰力調整バルブV1に連動して通過する液体の流れに与える抵抗を調整する。このように構成されたフロントフォークFによれば、1つのみのアクチュエータ6の利用で、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2の双方がそれぞれ通過する液体の流れに与える抵抗を調整できる。よって、本実施の形態のフロントフォークFによれば、フォーク本体1の上端側に第1減衰力調整バルブV1を駆動するアクチュエータ6を1つ設置すればよく、フロントフォークFの伸圧双方の減衰力調整の電動化を安価に実現できる。
【0068】
さらに、本実施の形態のフロントフォークFは、アクチュエータ6と、アクチュエータ6の動力を第1減衰力調整バルブV1に伝達するコントロールロッド32とを備え、第1減衰力調整バルブV1と第2減衰力調整バルブV2とは、ピストンロッド12内にピストンロッド12の軸方向に移動可能であって軸方向に並べて直列に配置されている。このように構成されたフロントフォークFによれば、第1減衰力調整バルブV1と第2減衰力調整バルブV2とがピストンロッド12内に軸方向に移動可能であって直列配置されているので、第1減衰力調整バルブV1で第2減衰力調整バルブV2を直接押圧する構造を採ることができ、アクチュエータ6の動力を1つのコントロールロッド32で第1減衰力調整バルブV1と第2減衰力調整バルブV2に伝達して、第2減衰力調整バルブV2を第1減衰力調整バルブV1に連動させることができる。よって、本実施の形態のフロントフォークFによれば、簡単な構造の採用でフロントフォークFの伸圧双方の減衰力調整を電動化でき、より一層、フロントフォークFの製造コストを安価にできる。
【0069】
また、本実施の形態のフロントフォークFでは、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2は、ともにニードルバルブであるので、第1ニードル30の頭部30aと第2ニードル33の頭部33aの外周の円錐面の傾斜角度の設定によって、第1ニードル30および第2ニードル33の変位量に対する流路面積の変化度合を容易に伸側減衰力と圧側減衰力の調整に最適化することができ、チューニングが容易となる。
【0070】
さらに、本実施の形態のフロントフォークFでは、第2減衰力調整バルブV2は、ピストンロッド12の内周に設けた第2環状弁座23eと、ピストンロッド12内に軸方向へ移動可能に挿入される第2ニードル33と、ピストンロッド12内に収容されて第2ニードル33を第2環状弁座23eから離間する方向へ付勢する第2ばね34とを有し、ピストンロッド12の内周に設けられて第2ニードル33に当接すると第2ニードル33の第2環状弁座23eから離間する方向への移動を規制するカラー(第2ストッパ)24とを備え、第2ニードル33は、ピストンロッド12の内周に摺接するとともにカラー(第2ストッパ)24と軸方向で対向するとともに第2ばね34のばね受として機能するガイド部33cを備えている。このように構成されたフロントフォークFによれば、第2ニードル33がガイド部33cを備えているので、ピストンロッド12内に設けた第2環状弁座23eに対して軸ぶれすることなく変位できるのでフロントフォークFの伸側減衰力を狙い通りに調整できるとともに、第2ニードル33が第2ストッパとしてのカラー24に当接すると、第2減衰力調整バルブV2の流路面積がそれ以上大きくなることが無くなるので、フロントフォークFの伸側減衰力を小さくした場合に減衰力不足となる事態を回避でき、また、ガイド部33cが第2ばね34のばね受として機能できる。よって、このように構成されたフロントフォークFによれば、第2ニードル33におけるガイド部33cに第2減衰力調整バルブV2の最大流路面積の規制、第2ニードル33の移動のガイドおよび第2ばね34のばね受の3つの機能を集約させつつも、第2ニードル33の構造の複雑化を回避でき、フロントフォークFを安価に製造できる。
【0071】
なお、第1減衰力調整バルブV1と第2減衰力調整バルブV2とは、ニードルバルブ以外にも流路面積の調整や圧力制御が可能なバルブであってもよい。よって、第1減衰力調整バルブV1と第2減衰力調整バルブV2は、ニードルバルブ以外にも、たとえば、スプールバルブやロータリバルブといったバルブやポペットバルブとされてもよい。以下に、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2の変形例について説明する。各変形例の説明に当たり、各変形例の第1減衰力調整バルブおよび第2減衰力調整バルブを構成する部品で前記した第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2の部品と共通する部品については、説明が重複するため同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0072】
また、
図3に示すように、第1変形例における第1減衰力調整バルブV1aと第2減衰力調整バルブV2aとを連動させる必要がない場合、第2ニードル33の伝達軸33dを無くし、コントロールロッド32内に第1ニードル30の中心を軸方向に貫通するとともに伝達軸33dを廃止した第2ニードル33のガイド部33cの後端に当接する第2のコントロールロッド35を軸方向へ移動可能に挿入し、コントロールロッド32を軸方向へ移動させ得る図外の第1のアジャスタと、第2のコントロールロッド35を軸方向へ移動させ得る図外の第2のアジャスタとを設けて、第1減衰力調整バルブV1aの第1ニードル30と第2減衰力調整バルブV2aの第2ニードル33とを互いに独立に軸方向へ変位させるようにしてもよい。この場合、第1減衰力調整バルブV1aと第2減衰力調整バルブV2aとがそれぞれ通過する液体に与える抵抗を独立に調整できるので、ユーザは、フロントフォークFの伸側減衰力の特性と圧側減衰力の特性とを独立して調整できる。なお、
図3に示した態様であると、第1ニードル30は、第2ばね34からの付勢力を受けないが、伸側室R1からの圧力の作用でコントロールロッド32に押し付けられるため、第1ニードル30を別途付勢するばねを設けなくともよいが、ばねを設けて第1ニードル30をコントロールロッド32に当接するように付勢してもよい。
【0073】
さらに、
図4に示した第2変形例における第1減衰力調整バルブV1bと第2減衰力調整バルブV2bのように、第1減衰力調整バルブV1bと第2減衰力調整バルブV2bは、ピストンロッド12内に回転する筒状弁体を有するロータリバルブであってもよい。第1減衰力調整バルブV1bは、ピストンロッド本体22の下端の内周に設けた溝22cに対向可能なポート36aを有する筒状弁体36を備えており、溝22cに対するポート36aが対向する面積を筒状弁体36の回転によって変化させて、流路面積の調整が可能である。第2減衰力調整バルブV2bは、下端が閉塞されたセンターロッド23の下方側の圧側室R2に面する側部から開口してセンターロッド23内に通じる孔23fに対向可能なポート37aを有する筒状弁体37を備えており、孔23fに対するポート37aが対向する面積を筒状弁体37の回転によって変化させて、流路面積の調整が可能である。
【0074】
このような第1減衰力調整バルブV1bと第2減衰力調整バルブV2bとの筒状弁体36,37を別々に駆動したい場合には、
図4に示すように、筒状弁体36に接続されてピストンロッド12内に挿入される筒状の第1のコントロールロッド38と、筒状弁体27に接続されて第1のコントロールロッド38内に挿入される第2のコントロールロッド39とを設けて、第1のコントロールロッド38と第2のコントロールロッド39とをユーザが外部から回転操作できるようにして、第1減衰力調整バルブV1bおよび第2減衰力調整バルブV2bにおける流路面積をそれぞれ独立して調整可能とすればよい。この場合、たとえば、第1のコントロールロッド38の上端をキャップ4の上端から外方へ突出されせるとともに、第2のコントロールロッド39の上端を第1のコントロールロッド38の上端から外方へ突出させておき、ユーザによる第1のコントロールロッド38と第2のコントロールロッド39の回転操作を可能にしておけばよい。また、第1減衰力調整バルブV1bと第2減衰力調整バルブV2bとを連動させたい場合、第2のコントロールロッド39を廃止して、筒状弁体36と筒状弁体37とを連結して、第1のコントロールロッド38の回転操作によって第1減衰力調整バルブV1bと第2減衰力調整バルブV2bの流路面積が同時に調整できるようにすればよい。この場合、第1のコントロールロッド38を回転駆動するアクチュエータをキャップ4に設けて第1減衰力調整バルブV1bと第2減衰力調整バルブV2bの流路面積の調整を電動化してもよい。
【0075】
さらに、
図5にした第3変形例における第1減衰力調整バルブV1cおよび第2減衰力調整バルブV2cのように、第2減衰力調整バルブV2cをスプールバルブとして第1減衰力調整バルブV1cにおける第1ニードル30に連結してもよい。第2減衰力調整バルブV2cは、センターロッド23のポート23dよりも下方側の内周に摺接するスプール40と、スプール40を第1ニードル30の先端に連結する連結ロッド41とを備えて、センターロッド23のポート23dよりも下方側の内周に設けた溝23gの開閉度合をスプール40の変位によって調整するスプールバルブとなっている。なお、第1ニードル30およびスプール40を初期位置に位置決めするために、第1ニードル30のガイド部30cとカラー24との間にばね46を介装してある。このように、第1減衰力調整バルブV1cと第2減衰力調整バルブV2cとは、ともに同じバルブとされるのではなく、互いに異なるバルブとされてもよく、第1減衰力調整バルブV1と第2減衰力調整バルブV2とがピストンロッド12内で軸方向に移動可能に直列に設けられていると、第1減衰力調整バルブV1cと第2減衰力調整バルブV2cとを複雑な構造を伴わずに連動させ得る。なお、第1減衰力調整バルブV1cと第2減衰力調整バルブV2cとを連動させる必要がない場合、
図3に示したような2つのコントロールロッドを備える構造の採用によって、第1ニードル30とスプール40とを独立して変位させるようにしてもよい。
【0076】
また、
図6に示した第4変形例における第1減衰力調整バルブV1dおよび第2減衰力調整バルブV2dのように、第1減衰力調整バルブV1dと第2減衰力調整バルブV2dとを連動させる必要がない場合、第2減衰力調整バルブV2dは、センターロッド23のポート23dよりも下方の内周側に収容されて、センターロッド23のポート23dよりも内周に下方に向けて設けた第2環状弁座42に離着座するポペット型弁体43と、ポペット型弁体43を第2環状弁座42に着座させる方向となる上方へ向けて付勢する第2ばね44とで構成したポペットバルブとしてもよい。そして、
図6に示すようにコントロールロッド32内に挿入されるとともに第1ニードル30の中心を軸方向に貫通してポペット型弁体43に当接する第2のコントロールロッド45によって、ポペット型弁体43を第2環状弁座42から離間させる方向へ付勢する力を与えて第2減衰力調整バルブV2の開弁圧を調節して通過する液体の流れに与える抵抗を調整するようにしてもよい。この場合、第2のコントロールロッド45を押圧するアクチュエータやばねを設けて付勢力の調整を行えばよい。また、ポペット型弁体43の開度調整のみを行う場合には第2のコントロールロッド45を上下方向へ移動させるアジャスタ或いはアクチュエータを設けてもよい。このように、第1減衰力調整バルブV1dと第2減衰力調整バルブV2dとを構成しても、フロントフォークFの上端側から第1減衰力調整バルブV1dが通過する液体の流れに与える抵抗を調整してフロントフォークFの伸側減衰力を調整でき、フロントフォークFの上端側から第2減衰力調整バルブV2dが通過する液体の流れに与える抵抗を調整してフロントフォークFの圧側減衰力を調整できる。
【0077】
さらに、本実施の形態のフロントフォークFでは、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2は、リザーバ室Rの液面Oより下方に設置されているので、第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2が常に液中に配置されることになる。よって、本実施の形態のフロントフォークFによれば、伸縮作動時に第1減衰力調整バルブV1および第2減衰力調整バルブV2による減衰力発生が遅れてしまうのを防止できる。
【0078】
さらに、本実施の形態のフロントフォークFでは、ダンパDは、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側減衰通路11bに設けられて伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ14と、圧側室R2と伸側室R1とを連通する圧側通路11aに設けられて圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れにのみを許容する圧側チェックバルブ13と、圧側室R2とリザーバ室Rとを連通する圧側減衰通路16aに設けられて圧側室R2からリザーバ室Rへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブ17と、圧側室R2とリザーバ室Rとを連通する吸込通路16bに設けられてリザーバ室Rから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する吸込チェックバルブ18とを備えている。このように構成されたフロントフォークFでは、前記回路構成を備えることでダンパDが伸長作動時には伸側室R1の液体が圧側室R2へ移動するとともに収縮作動時には圧側室R2の液体が伸側室R1へ移動するバイフロー型のダンパとなるが、バイフロー型のダンパDであっても第1減衰力調整バルブV1と第2減衰力調整バルブV2とで伸長作動時と収縮作動時の両方の減衰力の調整が可能となるとともに、伸長作動時と収縮作動時の減衰力の特性を伸側減衰バルブ14と圧側減衰バルブ17とにより独立して設定でき、車両の振動の抑制に最適な伸側減衰力と圧側減衰力とを発生できる。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1・・・フォーク本体、2・・・車体側チューブ、3・・・車軸側チューブ、10・・・シリンダ、11・・・ピストン、11a・・・圧側通路、11b・・・伸側減衰通路、12・・・ピストンロッド、13・・・圧側チェックバルブ、14・・・伸側減衰バルブ、6・・・アクチュエータ、16a・・・圧側減衰通路、16b・・・吸込通路、17・・・圧側減衰バルブ、18・・・吸込チェックバルブ、23e・・・第2環状弁座、24・・・カラー(第2ストッパ)、32・・・コントロールロッド、33・・・第2ニードル、33c・・・ガイド部、34・・・第2ばね、D・・・ダンパ、F・・・フロントフォーク、P1・・・第1減衰力調整通路、P2・・・第2減衰力調整通路、R・・・リザーバ室、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室、V1,V1a,V1b,V1c,V1d・・・第1減衰力調整バルブ、V2,V2a,V2b,V2c,V2d・・・第2減衰力調整バルブ