(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066136
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法及びガラス板の検査設備
(51)【国際特許分類】
C03B 33/037 20060101AFI20240508BHJP
G01N 21/958 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C03B33/037
G01N21/958
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175485
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】西村 恵一郎
(72)【発明者】
【氏名】大東 慎司
【テーマコード(参考)】
2G051
4G015
【Fターム(参考)】
2G051AA42
2G051AB01
2G051AB06
2G051AB07
2G051CB01
2G051CB02
2G051EB01
2G051EC01
4G015FA03
4G015FA04
4G015FB02
4G015FC02
4G015FC04
(57)【要約】
【課題】検査基準が異なる複数の出荷先に対して、ガラス板を好適に出荷する。
【解決手段】ガラス板の製造方法における検査工程S4は、欠陥検出工程S42を備え、ロット判定工程S6は、算出工程S61と、出荷先選択工程S63とを備える。出荷先選択工程S63は、ロットに対して算出されたガラス板Gの一枚当りの合格欠陥の平均個数に基づき、ガラス板Gの合否基準が異なる複数の出荷先の中から、ロットの出荷先を選択する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形工程と、前記ガラスリボンからガラス板を切り出す切断工程と、前記ガラス板の欠陥を検査する検査工程と、複数の前記ガラス板をパレット上に積載してロットを形成する梱包工程と、前記ロットを判定するロット判定工程と、を備えるガラス板の製造方法であって、
前記検査工程は、前記ガラス板について、所定の判定基準で合格とされる合格欠陥と前記判定基準で不合格とされる不合格欠陥とを含む総合欠陥を検出する欠陥検出工程と、
前記欠陥検出工程後に、前記不合格欠陥の無い前記ガラス板を合格と判定するとともに、前記不合格欠陥の有る前記ガラス板を不合格と判定するガラス板合否判定工程と、を備え、
前記梱包工程では、前記ガラス板合否判定工程において合格と判定された複数の前記ガラス板のみを含む前記ロットを形成し、
前記ロット判定工程では、前記ロットに対して前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の平均個数を算出する算出工程と、前記ロットに対して算出された前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の前記平均個数に基づき、前記ガラス板の合否基準が異なる複数の出荷先の中から、前記ロットの前記出荷先を選択する出荷先選択工程と、をさらに備えることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記出荷先における前記ガラス板の前記合否基準は、前記ロットに関する不良率であり、
前記出荷先選択工程では、前記ロットに対して算出された前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の前記平均個数と、前記出荷先の前記不良率と、に基づき、前記ロットの前記出荷先を選択することを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記ロットは、第一のロットと、第二のロットとを含み、
前記第二のロットに対して算出された前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の前記平均個数は、前記第一のロットに対して算出された前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の前記平均個数よりも相対的に大きくなっており、
前記出荷先は、第一の出荷先と、第二の出荷先とを含み、
前記第二の出荷先に係る前記ロットの前記不良率は、前記第一の出荷先に係る前記ロットの前記不良率よりも相対的に小さくなっており、
前記出荷先選択工程では、前記第二のロットの出荷先として、相対的に前記不良率が小さな前記第二の出荷先を選択することを特徴とする請求項2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
ガラス板を撮像する撮像装置と、前記ガラス板の欠陥を検査する検査装置と、を備える検査設備であって、
前記撮像装置は、前記ガラス板を撮像して得た画像データを前記検査装置に送信する送信部を含み、
前記検査装置は、
前記画像データを記憶する記憶部と、
前記画像データに基づいて、所定の判定基準で合格とされる合格欠陥と、前記判定基準で不合格とされる不合格欠陥と、を含む総合欠陥を検出する検出部と、
前記不合格欠陥の無い複数の前記ガラス板のみを含むロットに対して、前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の平均個数を取得する取得部と、
前記ロットに対して取得された前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の前記平均個数に基づき、前記ガラス板の合否基準が異なる複数の出荷先の中から、前記ロットの前記出荷先を選択する選択部と、を備えることを特徴とする検査設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に使用されるガラス板の製造方法及びガラス板の検査設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイ、有機EL照明、タッチパネル、更には太陽電池のパネル等の電子機器には、ガラス基板やカバーガラス等のガラス板が広く用いられている。
【0003】
この種のガラス板は、マザーガラスと呼ばれるガラス板から切り出されることによって製造されるのが通例である。マザーガラス板は、溶融ガラスから成形されたガラスリボンの一部を切断することにより製造される。
【0004】
製造されたマザーガラス板には、泡や異物等の欠陥が存在する場合がある。そして、このような欠陥により電子機器の不良が生じないように、マザーガラス板を検査する工程が実施される。
【0005】
例えば特許文献1は、マザーガラス板を検査する工程を含むマザーガラス板の製造方法を開示している。マザーガラス板を検査する工程では、所定の判定基準で合格とされる合格欠陥と、この判定基準で不合格とされる不合格欠陥からなる総合欠陥をマザーガラス板から検出する。その後、不合格欠陥の無い複数のマザーガラス板により構成されるロットに対し、マザーガラス板の一枚当りの合格欠陥の平均個数を算出する。その後、この欠陥の平均個数に基づいて、ロットの合否を判定する(同文献の請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガラス板の製造工程では、マザーガラス板の製造が行われた工場から、ガラス板の製造を行うための工場にマザーガラス板が移送される場合がある。この場合において、複数のマザーガラス板をロットごとにパレットに梱包することでガラス板梱包体が製造される。ガラス板梱包体は、マザーガラス板の製造工場からガラス基板の加工工場(以下「出荷先」という)へと搬送される。
【0008】
出荷先では、マザーガラス板に各種処理が施される。各種処理として、例えばマザーガラス板から所望寸法のガラス板を切り出す切断処理や、切り出されたガラス板の端面を研削・研磨する端面加工処理、ガラス板の表面を洗浄する洗浄処理、ガラス板を検査する検査処理、ガラス板を梱包する梱包処理等が施される。このようにして得られるガラス板の端面は、研磨面である。得られるガラス板は、ガラス基板やカバーガラス用のガラス板として、電子機器の製造工場へと搬送される。
【0009】
マザーガラス板の製造工場から複数の出荷先にマザーガラス板を出荷する場合、各出荷先は、独自の検査基準に基づいて、マザーガラス板を検査する。このため、マザーガラス板の製造工場において検査に合格したマザーガラス板であっても、複数の出荷先のうち、一部の出荷先の検査では合格となり、他の出荷先の検査では不合格となる事態も生じ得る。この場合には、厳しい検査基準を定める出荷先において、マザーガラス板の不良率が大きくなるおそれがある。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、検査基準が異なる複数の出荷先に対して、ガラス板を好適に出荷することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形工程と、前記ガラスリボンからガラス板を切り出す切断工程と、前記ガラス板の欠陥を検査する検査工程と、複数の前記ガラス板をパレット上に積載してロットを形成する梱包工程と、前記ロットを判定するロット判定工程と、を備えるガラス板の製造方法であって、前記検査工程は、前記ガラス板について、所定の判定基準で合格とされる合格欠陥と前記判定基準で不合格とされる不合格欠陥とを含む総合欠陥を検出する欠陥検出工程と、前記欠陥検出工程後に、前記不合格欠陥の無い前記ガラス板を合格と判定するとともに、前記不合格欠陥の有る前記ガラス板を不合格と判定するガラス板合否判定工程と、を備え、前記梱包工程では、前記ガラス板合否判定工程において合格と判定された複数の前記ガラス板のみを含む前記ロットを形成し、前記ロット判定工程は、前記ロットに対して前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の平均個数を算出する算出工程と、前記ロットに対して算出された前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の前記平均個数に基づき、前記ガラス板の合否基準が異なる複数の出荷先の中から、前記ロットの前記出荷先を選択する出荷先選択工程と、をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、出荷先選択工程において、ロットに対して算出されたガラス板の一枚当りの合格欠陥の平均個数に基づいて出荷先を選択することで、ロットを最適な出荷先に出荷することができる。これにより、検査基準が異なる複数の出荷先に対して、ガラス板を好適に出荷でき、各出荷先で廃棄されるガラス板の数を低減することができる。
【0013】
(2) 上記(1)に記載のガラス板の製造方法において、前記出荷先における前記ガラス板の前記合否基準は、前記ロットに関する不良率であり、前記出荷先選択工程では、前記ロットに対して算出された前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の前記平均個数と、前記出荷先の前記不良率と、に基づき、前記ロットの前記出荷先を選択してもよい。
【0014】
かかる構成によれば、各出荷先における不良率に基づいて各ロットの出荷先を決定することで、各出荷先で廃棄されるガラス板の数をより効果的に低減することができる。
【0015】
(3) 上記(1)又は(2)に記載のガラス板の製造方法において、前記ロットは、第一のロットと、第二のロットとを含み、前記第二のロットに対して算出された前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の前記平均個数は、前記第一のロットに対して算出された前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の前記平均個数よりも相対的に大きくなっており、前記出荷先は、第一の出荷先と、第二の出荷先とを含み、前記第二の出荷先に係る前記ロットの前記不良率は、前記第一の出荷先に係る前記ロットの前記不良率よりも相対的に小さくなっており、前記出荷先選択工程では、前記第二のロットの出荷先として、相対的に前記不良率が小さな前記第二の出荷先を選択してもよい。
【0016】
ここで、ロットに対して算出されたガラス板の一枚当りの合格欠陥の平均個数の大小は、そのロットの品質の高低を意味する。また、各出荷先におけるロットの不良率の大小は、各出荷先におけるロットの検査基準の高低を意味する。
【0017】
本発明では、ロットの品質が相対的に低い第二のロットの出荷先として、検査基準が相対的に低い第二の出荷先を選択することで、各出荷先の不良率の上昇を防止することができる。
【0018】
(4) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス板を撮像する撮像装置と、前記ガラス板の欠陥を検査する検査装置と、を備える検査設備であって、前記撮像装置は、前記ガラス板を撮像して得た画像データを前記検査装置に送信する送信部を含み、前記検査装置は、前記画像データを記憶する記憶部と、前記画像データに基づいて、所定の判定基準で合格とされる合格欠陥と、前記判定基準で不合格とされる不合格欠陥と、を含む総合欠陥を検出する検出部と、前記不合格欠陥の無い複数の前記ガラス板のみを含むロットに対して、前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の平均個数を取得する取得部と、前記ロットに対して取得された前記ガラス板の一枚当りの前記合格欠陥の前記平均個数に基づき、前記ガラス板の合否基準が異なる複数の出荷先の中から、前記ロットの前記出荷先を選択する選択部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、ロットに対して算出されたガラス板の一枚当りの合格欠陥の平均個数に基づいて、選択部により出荷先を選択することで、ロットを最適な出荷先に出荷することができる。これにより、検査基準が異なる複数の出荷先に対して、ガラス板を好適に出荷でき、出荷されることなく廃棄されるガラス板の数を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、検査基準が異なる複数の出荷先に対して、ガラス板を好適に出荷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】ガラス板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】ロット判定工程を示すフローチャートである。
【
図7】合格欠陥の平均個数と出荷先の不良率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
図1乃至
図7は、本発明に係るガラス板の製造方法及び製造装置の一実施形態を示す。
【0023】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る製造装置1は、例えばオーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスからガラスリボンを成形する。製造装置1は、ガラスリボンから切り出されたマザーガラス板(以下、単に「ガラス板」という)Gを搬送する搬送経路2を備える。なお、
図1及び
図2におけるXYZは直交座標系である。X方向及びY方向は水平方向(横方向)であり、Z方向は鉛直方向(上下方向)である。
【0024】
搬送経路2は、例えば外部からの汚染物質をある程度遮断できる空間を区画形成するクリーンルームにより構成される。搬送経路2は、複数の空間(処理室)に区切られている。なお、清浄度が管理された空気が搬送経路2に供給されていれば、搬送経路2はクリーンルームにより構成されなくてもよい。
【0025】
搬送経路2は、ガラスリボンから切り出されたガラス板Gを受け渡す受渡室3と、ガラス板Gの一部を切断する切断室4と、ガラス板Gの検査を行う検査室5と、ガラス板Gを梱包する梱包室6と、を備える。これらの各処理室は、壁7によって仕切られている。各壁7には、ガラス板Gを通過させるための開口部7aが設けられている。なお、壁7の開口部7aには、この開口部7aを開閉するためのシャッターが設けられていてもよい。
【0026】
上記の構成の他、搬送経路2は、ガラス板Gを縦姿勢で搬送する搬送装置8~10を備える。搬送装置8~10は、第一搬送装置8と、第二搬送装置9と、第三搬送装置10と、を含む。各搬送装置8~10は、ガラス板Gの上部を把持する把持部(チャック、吸着パッド等)を備える。
【0027】
受渡室3は、ガラス板Gを第一搬送装置8から第二搬送装置9へと受け渡すためのものである。第一搬送装置8は、ガラスリボンから切り出されたガラス板Gを受渡室3内で第二搬送装置9に向かって搬送する。第二搬送装置9は、受渡室3内の所定位置に待機している。第二搬送装置9は、第一搬送装置8からガラス板Gを受け取ると、このガラス板Gを切断室4、検査室5、梱包室6の順に搬送する。
【0028】
第二搬送装置9は、ガラス板Gをその幅方向に沿って搬送する。すなわち、第二搬送装置9は、ガラス板Gの表面が搬送方向に面しない状態でガラス板Gを搬送する。これにより、搬送時におけるガラス板Gの揺れを抑制することができる。
【0029】
切断室4は、ガラス板Gの幅方向の端部に形成される厚肉の耳部を含む不要部Gaを除去するためのものである。切断室4は、切断装置としてのスクライブ装置(図示せず)及び折割装置(図示せず)を内部に備える。なお、切断室4は、スクライブ装置によりガラス板Gにスクライブ線を形成するスクライブ室と、折割装置によりガラス板Gから不要部Gaを除去する折割室と、の2つの処理室に分かれていても良い。
【0030】
検査室5は、ガラス板Gを検査するための検査設備11を備える。検査設備11は、ガラス板Gを撮像する撮像装置11aと、撮像装置11aによって取得された画像データに基づいてガラス板Gの検査を実施する検査装置11bと、を備える。
【0031】
撮像装置11aは、第二搬送装置9によって縦姿勢に保持されたガラス板Gを撮像し、その画像データを取得する。撮像装置11aは、光源(図示せず)を含み、ガラス板Gを透過した光、又はガラス板Gで反射した光を撮像してもよい。撮像装置11aは、取得した画像データを検査装置11bに送信する送信部を含む。送信部は、例えばモデム、LANポート、Wi-Fiカード、モバイル通信ハードウェアのような、任意の有線または無線のネットワークハードウェアを含む。
【0032】
検査装置11bは、CPU、RAM、ROM、HDDを内蔵する他、ディスプレイ、入力インターフェース等のハードウェアを実装するコンピュータである。
図3に示すように、検査装置11bは、演算処理部12と、記憶部13と、通信制御部14と、を備える。
【0033】
演算処理部12は、画像処理部15と、取得部16と、判定部17と、ロット形成部18と、選択部19と、を備える。
【0034】
画像処理部15は、撮像装置11aから送られた画像データからガラス板Gに含まれる欠陥を検出する検出部15aを備える。検出部15aは、例えば、ガラス板Gの欠陥情報として、ガラス板Gの偏肉(板厚)、筋(脈理)、欠陥の種類(例えば、泡、異物など)、位置(座標)、大きさ、各欠陥の個数などを検出することができる。
【0035】
検出部15aは、ガラス板Gの画像データに基づいて、所定の判定基準で合格とされる合格欠陥と、判定基準で不合格とされる不合格欠陥とを含む総合欠陥を検出する。検出部15aは、検出した欠陥について、所定の基準に基づいて合格欠陥と不合格欠陥とに分類する。本実施形態の判定基準は、欠陥の大きさに関する閾値であり、この閾値未満の欠陥が合格欠陥であり、この閾値以上の欠陥が不合格欠陥である。
【0036】
この判定基準となる欠陥の大きさは、例えば、欠陥が泡であれば50μm~1000μmであり、欠陥が異物であれば20μm~300μmである。なお、検査装置11bでは、例えば、泡であれば、10数μm以上のものが欠陥として検出され、異物であれば、数μm以上のものが欠陥として検出される。
【0037】
取得部16は、検出部15aによって検出された欠陥情報に基づいて、ガラス板Gの合否の判定に必要な判定用データを算出する。具体的には、取得部16は、例えば複数のガラス板Gにより構成されるロットに対して、ガラス板Gの一枚当りの総合欠陥又は合格欠陥の平均個数を取得する。ここで、ロットとは、複数のガラス板Gの集合体であり、搬送、製造処理等を行う単位である。
【0038】
判定部17は、取得部16によって取得された判定用データに基づいてガラス板Gの合否を判定する。また、判定部17は、合格と判定された複数のガラス板Gによって構成されるロットの合否を判定する。
【0039】
選択部19は、判定部17によって合格と判定されたロットの出荷先を選択する。選択部19は、例えばロットに対して取得されたガラス板Gの一枚当りの合格欠陥の平均個数に基づき、ガラス板Gの合否基準が異なる複数の出荷先の中から、そのロットに適した出荷先を選択することができる。
【0040】
記憶部13は、検査装置11bによるガラス板Gの検査に使用されるソフトウェアプログラム、撮像装置11aによって取得された画像データ、検査装置11bによって検出されたデータ、過去に出荷したガラス板Gに関するデータなど、各種のデータを保存している。
【0041】
通信制御部14は、撮像装置11aから送られた画像データを受信する。通信制御部14は、例えばモデム、LANポート、Wi-Fiカード、モバイル通信ハードウェアのような、任意の有線または無線のネットワークハードウェアを含む。通信制御部14が受信した画像データは、演算処理部12による演算処理に使用される。
【0042】
梱包室6は、ガラス板GをパレットP1~P3に梱包することによってガラス板梱包体を製造するためのものである。梱包室6内には、複数のパレットP1~P3と、複数の第三搬送装置10とが配されている。梱包室6では、第二搬送装置9から第三搬送装置10へのガラス板Gの受け渡しが行われる。第三搬送装置10は、ガラス板Gを縦姿勢で保持した状態でパレットP1~P3に載置することが可能な積載装置として機能する。
【0043】
梱包室6には、シート供給装置(図示せず)によって、ガラス板Gを保護するための保護シート(図示せず)が供給される。シート供給装置は、梱包室6に隣接するシート供給室(図示せず)に配置されている。第三搬送装置10によって搬送されるガラス板Gは、シート供給装置によって保護シートが重ねられた状態で、パレットP1~P3に載置される。
【0044】
以下、上記の構成を備える製造装置1を使用して、ガラス板Gを製造する方法について説明する。
図4に示すように、本発明に係るガラス板Gの製造方法は、成形工程S1と、熱処理工程S2と、切断工程S3と、検査工程S4と、梱包工程S5と、ロット判定工程S6と、移送工程S7と、を備える。
【0045】
成形工程S1は、溶融ガラスから長尺状のガラスリボンを成形する工程である。本実施形態では、成形工程S1は、例えばオーバーフローダウンドロー法を実行可能な成形体によってガラスリボンを成形する。成形体は、成形炉に収容されており、その断面形状が略楔形状を呈する。この成形体は、その上部にオーバーフロー溝を有する。
【0046】
成形体は、溶融ガラスをオーバーフロー溝から溢れ出させて、当該成形体の両側の側壁面に沿って流下させる。さらに成形体は、流下させた溶融ガラスを各側壁面の下端部で融合させる。このように融合させた溶融ガラスの幅方向の端部をローラ(エッジローラ)にて把持することで、所定の幅を有するガラスリボンが成形される。なお、成形体は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。
【0047】
熱処理工程S2は、成形体によって成形されたガラスリボンを徐冷炉によって徐冷する徐冷工程と、徐冷工程後のガラスリボンをさらに冷却(放冷)する冷却工程とを含む。徐冷工程では、徐冷炉内に配された搬送ローラによって、ガラスリボンを下方に搬送する。徐冷炉内では所定の温度勾配が設定されており、ガラスリボンは徐冷炉内を通過することで徐冷される。徐冷工程後の冷却工程では、ガラスリボンは、徐冷されながら徐冷炉の下方に配された冷却室を通過する。
【0048】
切断工程S3は、第一切断工程及び第二切断工程を備える。第一切断工程では、ガラスリボンの中途部を幅方向に沿って切断することで枚葉状のガラス板Gを切り出す。すなわち、第一切断工程では、下方に移動するガラスリボンの中途部に幅方向に沿うスクライブ線を形成し(スクライブ工程)、このスクライブ線に沿ってガラスリボンの一部を折割ることで、枚葉状のガラス板Gを形成する(折割工程)。このようにして得られる枚葉状のガラス板Gの端面は、切断面となる。
【0049】
第二切断工程では、切断室4内において、第二搬送装置9によって縦姿勢に保持されるガラス板Gに対して、スクライブ装置によってスクライブ線を形成し(スクライブ工程)、その後、折割装置によってガラス板Gの不要部Gaを折割る(折割工程)。切断工程S3が終了すると、第二搬送装置9は、不要部Gaが除去されたガラス板Gを検査室5へと搬送する。
【0050】
検査工程S4は、切断工程S3によって形成されたガラス板Gに含まれる欠陥を検出し、この欠陥に基づいて各ガラス板Gの良否を検査する工程である。
【0051】
図5に示すように、検査工程S4は、画像データ取得工程S41と、欠陥検出工程S42と、ガラス板合否判定工程S43と、を備える。
【0052】
画像データ取得工程S41では、撮像装置11aによって取得されたガラス板Gの画像データが検査装置11bに送信される。この画像データは、検査装置11bの通信制御部14によって受信され、次の欠陥検出工程S42において利用される。
【0053】
欠陥検出工程S42では、検査装置11bの検出部15aによってガラス板Gの欠陥を検出する。欠陥検出工程S42において、検出部15aは、ガラス板Gの画像データに基づき、上記の判定基準に基づいて、合格とされる合格欠陥と、不合格とされる不合格欠陥と、を含む総合欠陥を検出する。
【0054】
ガラス板合否判定工程S43において、判定部17は、欠陥検出工程S42で検出された不合格欠陥の個数に基づき、ガラス板Gの合否を一枚ずつ判定する。例えば、不合格欠陥の個数が所定の閾値以下であれば、そのガラス板Gは合格と判定され、梱包室6に搬送される。そして、不合格欠陥の個数が所定の閾値より多ければ、そのガラス板Gは不合格と判定され、廃棄される。
【0055】
ガラス板Gの合否の判定材料には、欠陥検出工程S42で取得されたその他のデータ(泡、異物等の不合格欠陥の種類、不合格欠陥の位置等)を加えてもよい。不合格欠陥の所定の閾値は、例えばガラス板ごとに0(ゼロ)個であり、この場合、不合格欠陥の有無で合否を判定し、不合格欠陥の無いガラス板Gが合格となり、不合格欠陥の有るガラス板Gが不合格となる。
【0056】
梱包工程S5において、第三搬送装置10は、第二搬送装置9から受け取ったガラス板Gを縦姿勢で保持し、パレットP1~P3に搬送する。ガラス板Gは、シート供給装置によって保護シートが重ねられた状態でパレットP1~P3に積載される。所定数のガラス板GがパレットP1~P3に積載されることで、パレットP1~P3上にロットに相当するガラス板積層体が構成される。その後、ガラス板積層体を保護するための保護カバーや位置規制部材がパレットP1~P3に取り付けられる。これにより、複数のガラス板梱包体が製造される。
【0057】
また、梱包工程S5では、検査装置11bのロット形成部18により、一つのパレットに積載された複数のガラス板Gのデータを集めて一つのロット情報を形成する。ロット形成部18は、ロットに管理番号を付するとともに、そのロットに含まれる各ガラス板Gに対して管理番号を付する。ロット情報には、例えば、そのロットに含まれるガラス板Gのサイズ、材質、欠陥情報(欠陥の種別、大きさ、数、位置等)等の情報が含まれる。
【0058】
図6に示すように、ロット判定工程S6は、算出工程S61と、ロット合否判定工程S62と、出荷先選択工程S63と、を備える。
【0059】
算出工程S61において、取得部16は、ロット情報に含まれるガラス板Gの欠陥情報に基づいて、ロット合否判定工程S62及び出荷先選択工程S63で使用されるロット判定用データを算出する。このロット判定用データは、「一つのロットにおけるガラス板Gの一枚当りの合格欠陥の平均個数」を含む。
【0060】
「一つのロットにおけるガラス板Gの一枚当りの合格欠陥の平均個数」には、第一平均個数と第二平均個数とが含まれる。第一平均個数は、欠陥の全種類の個数に対して算出されるものである。第二平均個数は、欠陥のうち、特定の種類の個数に対して算出されるものである。本実施形態では、第二平均個数は、「泡」に対するものと「異物」に対するものの2種類であるが、1種類でもよいし、3種類以上でもよい。
【0061】
ロット合否判定工程S62では、判定部17は、一つのロットに対して算出されたガラス板Gの一枚当りの欠陥の平均個数(第一平均個数)に基づき、そのロットの合否を判定する。判定部17は、所定の閾値と、判定対象となるロットに対して算出されたガラス板Gの一枚当りの欠陥の平均個数(第一平均個数)と比較する。判定部17は、判定対象であるロットにおける欠陥の平均個数が閾値以下である場合には、そのロットを合格と判定する。判定部17は、判定対象であるロットにおける欠陥の平均個数が閾値を超える場合には、そのロットを不合格と判定する。合格と判定されたロットには、次の出荷先選択工程S63が実施される。不合格と判定されたロットのガラス板Gは、より小さな大きさに再度切断されるか、又は廃棄されることになる。
【0062】
出荷先選択工程S63では、ロット合否判定工程S62において合格と判定されたロットにおけるガラス板Gの一枚当りの合格欠陥の平均個数に基づき、ガラス板Gの合否基準が異なる複数の出荷先の中から、そのロットの出荷先が選択される。具体的には、出荷先選択工程S63では、ロットに対して算出されたガラス板Gの一枚当りの合格欠陥の平均個数と、出荷先に対して過去に出荷したガラス板Gの不良率とに基づいて、そのロットの出荷先が選択される。以下、出荷先選択工程S63の具体的態様について説明する。
【0063】
検査装置11bの記憶部13には、過去の出荷実績に関するデータが保存されている。このデータは、例えば
図7に示すように、過去に出荷したロットの品質A~Cに対応する出荷先X~Zの不良率のデータを含む。
【0064】
選択部19は、ロット合否判定工程S62において合格と判定された複数のロット(ロット番号No.1~No.3)に関するガラス板Gの一枚あたりの合格欠陥の平均個数a~cと、ロットの品質A~Cを判定するための閾値TH1~TH3とに基づいて、各ロットの品質を判定する。この閾値TH1~TH3は、各出荷先X~Zの過去の出荷実績に基づくガラス板Gの不良率に基づいて定められている。閾値TH1~TH3の大小関係は、TH1<TH2<TH3である。
【0065】
図7に示すように、ロット番号No.1のロットは、ガラス板Gの一枚当たりの合格欠陥の平均個数が「a」である。また、ロット番号No.2のロットにおけるガラス板Gの一枚当たりの合格欠陥の平均個数は、「b」であり、ロット番号No.3のロットにおけるガラス板Gの一枚当たりの合格欠陥の平均個数は、「c」である。ここで、この例における合格欠陥の平均個数a~cの大小関係は、a<b<cであるものとする。
【0066】
図7に示すように、選択部19は、ロット番号No.1のロットに関し、ガラス板Gの一枚当たりの合格欠陥の平均個数aと、閾値TH1~TH3とを比較し、a≦TH1と判定した結果、このロットの品質を「A」と判定している。
【0067】
選択部19は、ロット番号No.2のロットに関し、ガラス板Gの一枚当たりの合格欠陥の平均個数bと、閾値TH1~TH3とを比較し、TH1<b≦TH2と判定した結果、このロットの品質を「B」と判定している。
【0068】
選択部19は、ロット番号No.3のロットに関し、ガラス板Gの一枚当たりの合格欠陥の平均個数cと、閾値TH1~TH3とを比較し、TH2<c≦TH3と判定した結果、このロットの品質を「C」と判定している。
【0069】
選択部19は、評価が最も低い品質Cのロット番号No.3に係るロットの出荷先を選択する。品質Cのロットに対する各出荷先X~Zの過去の不良率を比較すると、出荷先Zの不良率が最も大きく、出荷先Yの不良率が次に大きく、出荷先Xの不良率が最も小さい。これは、出荷先Zにおけるガラス板Gに対する合否基準が最も高く、出荷先Yにおけるガラス板Gに対する合否基準が次に高く、出荷先Xにおけるガラス板Gに対する合否基準が最も低いことを意味している。
【0070】
この場合において、選択部19は、複数の出荷先X~Zの中から、不良率が最も小さい(合否基準が最も低い)出荷先Xを選択する。
【0071】
次に、選択部19は、品質Bと判定されたロット番号No.2の出荷先を選択する。選択部19は、品質Bのロットに係る出荷先Y,Zの過去の不良率に基づいて、出荷先を選択する。この場合において、既にロット番号No.3のロットの出荷が決定した出荷先Xは、出荷対象から除外される。
【0072】
選択部19は、品質Bに係る出荷先X,Yの過去の不良率を比較し、相対的に不良率が小さい(合否基準が相対的に低い)出荷先Yを選択する。その後、選択部19は、相対的に最も高い品質Aとして判定されたロット番号No.1に係るロットの出荷先を選択する。選択部19は、最後に残った出荷先Xを、ロット番号No.1に係るロットの出荷先として選択する。
【0073】
上記のように、出荷先選択工程S63では、ガラス板の一枚当りの合格欠陥の平均個数が大小異なる第一のロット及び第二のロットがあり、不良率が大小異なる第一の出荷先及び第二の出荷先がある場合において、合格欠陥の平均個数が大きな第二のロットを、不良率が小さな第二の出荷先に割り当てる。このように、ロットの品質が相対的に低い第二のロットの出荷先として検査基準が相対的に低い第二の出荷先を選択することで、検査基準が相対的に高い第一の出荷先における不良率の上昇を防止することができる。
【0074】
移送工程S7では、梱包工程S5において製造されたガラス板梱包体を搬送車両等の搬送手段によって指定された出荷先に搬送する。
【0075】
以上説明した本実施形態に係るガラス板Gの製造方法及び製造装置1(検査設備11)によれば、出荷先選択工程S63において、ロットに対して算出されたガラス板Gの一枚当りの合格欠陥の平均個数に基づいて、選択部19が出荷先を選択することで、そのロットを最適な出荷先に出荷することができる。これにより、検査基準が異なる複数の出荷先に対して、ガラス板Gを好適に出荷でき、出荷されることなく廃棄されるガラス板の数を低減することができる。
【0076】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0077】
上記の実施形態では、ロット合否判定工程S62及び出荷先選択工程S63を検査設備11の検査装置11bによって実行する例を示したが、本発明はこれに限定されない。ロット合否判定工程S62及び出荷先選択工程S63は、検査装置11bを操作するオペレータが行ってもよい。
【0078】
上記の実施形態では、三つの出荷先X~Zに、ロット番号No.1~No.3の3つのロットをそれぞれ一つずつ出荷する例を示したが、本発明はこれに限定されない。複数の出荷先に、それぞれ複数のロットを出荷してもよい。この場合であっても、上記の実施形態と同様に最適な出荷先を選択することで、廃棄されるガラス板の数を低減することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 ガラス板の製造装置
11 検査設備
11a 撮像装置
11b 検査装置
13 記憶部
15a 検出部
16 取得部
19 選択部
S1 成形工程
S3 切断工程
S4 検査工程
S5 梱包工程
S42 欠陥検出工程
S43 ガラス板合否判定工程
S61 算出工程
S63 出荷先選択工程
G ガラス板
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