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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066144
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】設定装置及び車載機器
(51)【国際特許分類】
   H04L 41/0806 20220101AFI20240508BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20240508BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20240508BHJP
   H04L 45/42 20220101ALI20240508BHJP
   G06F 8/60 20180101ALI20240508BHJP
【FI】
H04L41/0806
B60R16/023 P
H04L12/28 100A
H04L45/42
G06F8/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175498
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山崎 康広
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大武 生祥
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】山根 遼
(72)【発明者】
【氏名】小方 賢太
(72)【発明者】
【氏名】泉 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】呉 ダルマワン
(72)【発明者】
【氏名】菊地 慶剛
(72)【発明者】
【氏名】浦山 博史
【テーマコード(参考)】
5B376
5K030
5K033
【Fターム(参考)】
5B376AA11
5B376GA07
5K030LB07
5K030MD04
5K033BA06
5K033EC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新たな車載機器の接続に応じて車載ネットワークの通信設定を適切に更新する設定装置及び車載機器を提供する。
【解決手段】車載ネットワーク10において、設定装置であるSDNコントローラ15は、車載ネットワークに新規車載機器14Aが接続された際に、その新規車載機器14Aから取得した設定情報に基づいて各SDNスイッチ12の通信設定を更新する。車載機器14は、複数の通信装置の通信設定の情報である設定情報を記憶した記憶部を有しており、車載機器が車載ネットワークに接続された場合、記憶部に記憶された設定情報に基づくことで、その接続に応じて各通信装置の通信設定を適切に更新できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム通信を行う複数の通信装置が設けられた車載ネットワークに、前記フレーム通信を行う車載機器が接続された際に、前記車載機器から取得した設定情報に基づいて前記複数の通信装置の通信設定を更新する設定装置。
【請求項2】
前記車載機器の接続には、同車載機器のソフトウェア更新後の前記車載ネットワークへの同車載機器の再接続が含まれる請求項1に記載の設定装置。
【請求項3】
前記設定情報には、前記フレーム通信のサービス品質の設定の情報、及びセキュリティのための通信経路制限の設定の情報が含まれる請求項1に記載の設定装置。
【請求項4】
前記車載機器から適切な前記設定情報を取得できない場合に、車外のデータセンタから前記設定情報を取得する請求項1に記載の設定装置。
【請求項5】
前記車載機器から適切な前記設定情報を取得できない場合に、車両に搭載された表示装置にエラー表示を行う請求項1に記載の設定装置。
【請求項6】
前記設定情報に基づく前記通信設定の更新を完了したときに、同通信設定の更新完了を前記車載機器に通知する請求項1に記載の設定装置。
【請求項7】
前記設定情報に基づく前記通信設定の更新を完了したときに、前記車載ネットワークに接続された他の車載機器に同通信設定の更新完了を通知する請求項1に記載の設定装置。
【請求項8】
フレーム通信を行う複数の通信装置が設けられた車載ネットワークに接続されて前記フレーム通信を行う車載機器であって、前記複数の通信装置の通信設定の情報である設定情報を記憶した記憶部を有している車載機器。
【請求項9】
前記車載ネットワークへの接続時に、前記設定情報を送信する請求項8に記載の車載機器。
【請求項10】
前記設定情報には、前記フレーム通信のサービス品質の設定の情報、及びセキュリティのための通信経路制限の設定の情報が含まれる請求項8に記載の車載機器。
【請求項11】
前記車載ネットワークには、前記記憶部に記憶された前記設定情報に基づき前記通信装置の通信設定を更新する設定装置が設けられており、当該車載機器は、前記車載ネットワークへの接続後に、前記設定装置から前記通信設定の更新完了が通知されるのを待って前記フレーム通信を開始する請求項8に記載の車載機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定装置及び車載機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ソフトウェアにより通信装置を制御することで、ハードウェアの構成を変更せずに車載ネットワークの構成や設定を変更可能なSDN(Software Defined Networking)システムが記載されている。SDNシステムは、複数のSDNスイッチと、各SDNスイッチの通信設定を更新するSDNコントローラと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-169044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなSDNシステムを車載ネットワークに利用することが考えられる。一方、車両では、機能追加等のため、新たな車載機器を車載ネットワークに追加接続することがある。新たな車載機器の接続により、車載ネットワークの構成が変更された場合には、SDNスイッチの設定を適切に更新する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する設定装置は、フレーム通信を行う複数の通信装置が設けられた車載ネットワークに、フレーム通信を行う車載機器が接続された際に、その車載機器から取得した設定情報に基づいて上記複数の通信装置の通信設定を更新する。
【0006】
上記設定装置は、車載ネットワークに新たな車載機器が接続された際に、その接続された車載機器から通信装置の設定情報を取得する。そして、上記設定装置は、こうして取得した設定情報、すなわち車載機器が車載ネットワークに接続された状態における各通信装置の通信設定の情報に基づいて各通信装置の通信設定を更新する。そのため、新たな車載機器の接続に応じて各通信装置の通信設定を適切に更新できる。
【0007】
上記課題を解決する車載機器は、フレーム通信を行う複数の通信装置が設けられた車載ネットワークに接続されてフレーム通信を行う車載機器であって、上記複数の通信装置の通信設定の情報である設定情報を記憶した記憶部を有している。こうした車載機器が車載ネットワークに接続された場合、記憶部に記憶された設定情報に基づくことで、その接続に応じて各通信装置の通信設定を適切に更新できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】設定装置及び車載機器の一実施形態が設けられた車載ネットワークの構成を模式的に示す図である。
図2】同実施形態の車載機器の構成を模式的に示す図である。
図3】同実施形態の車載ネットワークの通信設定の更新動作の一例を示すシーケンス図である。
図4】同実施形態の設定装置における通信装置の設定更新動作の他の例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、設定装置及び車載機器の一実施形態を、図1図4を参照して詳細に説明する。
<車載ネットワークの構成>
まず、図1を参照して、本実施形態が適用される車載ネットワーク10の構成を説明する。図1に示すように、車両11に設置された車載ネットワーク10は、複数のSDNスイッチ12を備えている。SDNスイッチ12は、フレーム転送を行う通信装置である。各SDNスイッチ12は、ネットワーク回線13を通じて互いに接続されている。各SDNスイッチ12には、車載機器14がそれぞれ接続されている。車載機器14は、車両11に搭載されて、車載ネットワーク10を介したフレームの送受信を行う機器である。車載機器14には、車両11に搭載された各種のECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)、センサ、カーナビゲーションシステム等が含まれる。SDNスイッチ12及び車載機器14は、フレーム通信を行う通信装置である。ここでのフレーム通信は、フレームの転送、フレームの送信、受信の少なくとも一つを行うことを言う。
【0010】
SDNスイッチ12の一つには、SDNコントローラ15が接続されている。SDNコントローラ15は、各SDNスイッチ12の通信設定を制御する設定装置である。通信設定は、車載機器14間のフレームの通信経路、及びセキュリティのための同通信経路の制限、サービス品質(QoS)のための転送順序や転送量の調整等、フレーム転送のルールを定めたものである。例えば通信設定には、宛先毎のフレームの転送先を規定するルーティングテーブルが含まれる。
【0011】
また、SDNコントローラ15は、画像を出力可能な表示装置16に接続されている。表示装置16の一例は、カーナビゲーションシステムのディスプレイである。本実施形態の場合、画像の出力に加えて、タッチ操作等による入力操作が可能な装置を表示装置16として採用している。さらに、SDNコントローラ15には、無線通信装置17が接続されている。無線通信装置17は、移動体通信網等の無線通信網18を介した車外のデータセンタ19とのデータ通信を確立する。データセンタ19は、様々な構成の車載ネットワーク10におけるSDNスイッチ12の設定情報を記憶したデータベースを備えている。なお、図1の場合、表示装置16及び無線通信装置17は、SDNコントローラ15に直接接続されているが、車載ネットワーク10経由でSDNコントローラ15に接続されていてもよい。
【0012】
<車載ネットワークへの新たな車載機器の接続>
車両11の機能追加等のため、車載ネットワーク10に新たな車載機器14が接続される場合がある。ここでの車載ネットワーク10への新たな車載機器14の接続には、新たな車載機器14を車両11に追加設置する場合に加え、次の2つの場合も含まれる。
【0013】
まず、一つは、無効化した状態で車両11に設置された車載機器14を有効化(アクティベーション)する場合である。現状では、法規により使用禁止となっている機能を実現するための車載機器を、将来の法規改正を見込んで、無効化した状態で、車両11に予め設置しておくことが考えられる。無効化した状態の車載機器は、物理的には車載ネットワーク10に接続されていても、車載ネットワーク10からは存在しないものとして扱われる。そして、そうした車載機器は、有効化されたときに、車載ネットワーク10に新たに接続されたものとして扱われる。本実施形態では、無効化した状態で設置された車載機器14の有効化による接続も、車載ネットワーク10への新たな車載機器14の接続に含めている。
【0014】
もう一つは、ソフトウェア更新後の車載機器14の再接続を行う場合である。車載ネットワーク10に接続済みの車載機器14に、ソフトウェアの更新により、新たな機能が追加される場合がある。そして、ソフトウェアの更新による機能追加により、各SDNスイッチ12の通信設定の更新が必要となる場合がある。ソフトウェア更新中の車載機器14は、車載ネットワーク10から一時的に切断される。そして、ソフトウェア更新の完了後に車載機器14は、車載ネットワーク10に再接続される。本実施形態では、こうしたソフトウェア更新後の再接続も、車載ネットワーク10への新たな車載機器14の接続に含めている。なお、ソフトウェアの更新に際しては、メモリ23に記憶された設定情報も併せ更新される。
【0015】
<車載機器のネットワーク接続部の構成>
新たな車載機器14が接続された場合に、車載ネットワーク10の各SDNスイッチ12の通信設定を、製造時の設定から変更する場合がある。本実施形態では、こうした通信設定の更新作業の自動化のため、車両11の出荷後に、車載ネットワーク10に新たに接続されることが想定される車載機器14を、下記のように構成している。なお、以下の説明では、車載ネットワーク10に新たに接続される車載機器14を新規車載機器14Aと記載する。
【0016】
次に、図2を参照して、新規車載機器14Aのネットワーク接続部20の構成を説明する。新規車載機器14Aは、ネットワーク接続部20を介して車載ネットワーク10に接続される。そして、新規車載機器14Aは、ネットワーク接続部20を通じてフレーム通信を行う。
【0017】
新規車載機器14Aのネットワーク接続部20には、コネクタ21、CPU22、及びメモリ23が設置されている。コネクタ21には、SDNスイッチ12と新規車載機器14Aとを接続するための通信配線21Aが接続される。CPU22は、新規車載機器14Aのフレームの受信や送信に係る処理を実行する。そして、メモリ23には、CPU22の処理に用いるプログラムやデータが予め記憶されている。さらに、メモリ23には、新規車載機器14Aが接続される車載ネットワーク10の設定情報が予め記憶されている。設定情報は、新規車載機器14Aが車載ネットワーク10に接続された状態での各SDNスイッチ12の通信設定を示す情報である。本実施形態では、こうしたメモリ23が、新規車載機器14Aの記憶部に対応している。なお、車載機器14には、機種別の識別情報(ID)が設定されている。新規車載機器14Aのメモリ23には、自身の識別情報も予め記憶されている。
【0018】
なお、新規車載機器14Aの一例は、図2のネットワーク接続部20を備えるECU、又はセンサである。新規車載機器14Aの他の例は、1つ以上のECUと、1つ以上のセンサと、それらが接続されたSDNスイッチと、を有するユニットである。その場合、ユニットの構成装置のいずれかが、上記ネットワーク接続部20を備える構成となる。
【0019】
<通信設定の更新>
続いて、図3及び図4を参照して、新規車載機器14Aの接続に伴う車載ネットワーク10の通信設定の更新について説明する。
【0020】
図3に、車載ネットワーク10の通信設定の更新に係る各機器の動作の一例を示す。図3には、車載ネットワーク10に設置されたSDNスイッチ12の一つに新規車載機器14Aが物理的に接続されて、そのSDNスイッチ12と新規車載機器14Aとのコネクションが確立されて以降の動作が示されている。なお、図3には、車載ネットワーク10に設置されたSDNスイッチ12のうちの二つ、及び車載ネットワーク10に接続済みの車載機器14のうちの一つが、それぞれを代表して示されている。
【0021】
新規車載機器14Aは、車載ネットワーク10に接続されると、自身のメモリ23に記憶された識別情報(ID)及び設定情報をSDNコントローラ15に送信する(S1)。SDNコントローラ15は、車載ネットワーク10に接続済みの各車載機器14の識別情報を記憶している。そして、SDNコントローラ15は、記憶されていない新規の識別情報の受信により、車載ネットワーク10への新規車載機器14Aの接続を認識する。そして、SDNコントローラ15は、受信した設定情報に基づき、車載ネットワーク10に設置された各SDNスイッチ12に通信設定の更新を指示する(S2)。各SDNスイッチ12は、指示に基づき通信設定を更新する(S3)。そして、各SDNスイッチ12は、更新を完了すると、その完了をSDNコントローラ15に通知する(S4)。SDNコントローラ15は、すべてのSDNスイッチ12から更新完了の通知を受信すると、接続済みの各車載機器14、及び新規車載機器14Aに、車載ネットワーク10全体の通信設定の更新が完了したことを通知する(S5)。接続済みの各車載機器14は、その通知をもって、フレーム通信を開始する(S6)。また、新規車載機器14Aは、同通知に応じて有効化されて、フレーム通信を開始する(S6)。
【0022】
ところで、新規車載機器14Aに設定情報が記憶されていない場合がある。また、新規車載機器14Aに記憶されている設定情報が、接続された車載ネットワーク10の構成に適合していない場合がある。
【0023】
図4には、そうした場合の車載ネットワーク10の通信設定の更新に係る各機器の動作が示されている。なお、図4は、新規車載機器14Aに設定情報が記憶されていない場合となっている。
【0024】
この場合の新規車載機器14Aは、車載ネットワーク10への接続後、自身の識別情報のみをSDNコントローラ15に送信する(S10)。SDNコントローラ15は、識別情報のみを受信し、設定情報を受信しなかったことから、新規車載機器14Aから適切な設定情報を取得できなかったと認識する(S11)。なお、車載ネットワーク10の構成に適合しない設定情報を新規車載機器14Aが送信した場合のSDNコントローラ15は、受信した設定情報の内容から、適切な設定情報を取得できなかったと認識する。
【0025】
SDNコントローラ15は、車載ネットワーク10に適合した設定情報を取得できなかったと認識すると、下記の画像の出力を表示装置16に指示する。ここで出力を指示する画像は、車載ネットワーク10の通信設定の更新エラーの発生を通知するとともに、車外からの設定情報の取得の可否を確認するための画像である。表示装置16は、SDNコントローラ15から指示された画像を出力する(S13)。そして、表示装置16は、車外からの設定情報の取得を許可する操作がなされると(S14)、その許可がなされたことをSDNコントローラ15に通知する。
【0026】
その通知を受けてSDNコントローラ15は、車外のデータセンタ19に設定情報の送信を要求する(S15)。このとき、SDNコントローラ15は、自身が接続された車載ネットワーク10の構成を示す情報、及び新規車載機器14Aの識別情報を、データセンタ19に送信する。データセンタ19は、受信した情報に基づき選択した設定情報をSDNコントローラ15に送信する(S16)。こうしてSDNコントローラ15が適切な設定情報を取得すると、以後は、図2のS2~S6を通じて車載ネットワーク10の通信設定の更新が行われる。
【0027】
<実施形態の作用効果>
新規車載機器14Aは、車載ネットワーク10に接続されると、メモリ23に記憶された設定情報をSDNコントローラ15に送信する。設定情報には、フレームの搬送経路の設定に加えて、フレーム搬送のサービス品質の設定、及びセキュリティのための通信経路制限の設定の情報も含まれている。SDNコントローラ15は、受信した設定情報に基づき、車載ネットワーク10に設置された各SDNスイッチ12の通信設定を更新する。これにより、各SDNスイッチ12のフレーム搬送経路、サービス品質、及び通信経路制限の設定が更新される。そして、SDNコントローラ15は、すべてのSDNスイッチ12の通信設定の更新が完了したことを確認すると、同更新の完了を、車載ネットワーク10に接続済みの各車載機器14、及び新規車載機器14Aに通知する。各車載機器14及び新規車載機器14Aは、この通知を受けると、フレーム通知を開始する。
【0028】
一方、SDNコントローラ15は、新規車載機器14Aから適切な設定情報を取得できなかった場合には、表示装置16のエラー表示を行う。また、この場合のSDNコントローラ15は、車外のデータセンタ19から設定情報を取得して、各SDNスイッチ12の通信設定を更新する。
【0029】
以上説明した本実施形態は、以下の作用効果を奏する。
(1)車載ネットワーク10に新たに接続される車載機器14である新規車載機器14Aのメモリ23には、予め下記の設定情報が記憶されている。設定情報は、新規車載機器14Aが車載ネットワーク10に接続された状態における各SDNスイッチ12の適切な通信設定を示す情報である。そして、車載ネットワーク10への新規車載機器14Aの接続に際してSDNコントローラ15は、新規車載機器14Aから設定情報を取得するとともに、その取得した設定情報に基づいて各SDNスイッチ12の通信設定を更新している。そのため、更新する通信設定を外部から指示しなくても、各SDNスイッチ12の通信設定を更新できる。
【0030】
(2)新規車載機器14Aは、車載ネットワーク10への接続時に、SDNコントローラ15に設定情報を送信している。そのため、SDNコントローラ15は、外部から指示されなくても、車載ネットワーク10への新規車載機器14Aの接続を契機として、各SDNスイッチ12の通信設定の更新を実施できる。
【0031】
(3)SDNコントローラ15が新規車載機器14Aから取得する設定情報に、フレーム通信のサービス品質の設定の情報、及びセキュリティのための通信経路制限の設定の情報を含めている。そのため、新規車載機器14Aの接続による車載ネットワーク10の構成の変化に応じて、フレーム搬送のサービス品質の設定やセキュリティのための通信経路制限の設定といった高度な通信の制御を実施できる。
【0032】
(4)SDNコントローラ15は、無効化した状態で設置された車載機器14を有効化する場合、ソフトウェアのアップデート後に車載機器14を再接続する場合にも、上記態様で各SDNスイッチ12の通信設定を更新している。そのため、車載機器14の有効化やソフトウェアのアップデートに応じて、SDNスイッチ12の通信設定を適切に更新できる。
【0033】
(5)SDNコントローラ15は、新規車載機器14Aから適切な設定情報を取得できなかった場合には、車両11に搭載された表示装置16にエラー表示を行っている。そのため、新規車載機器14Aの接続を行う作業者が、状況を的確に把握して対応できる。
【0034】
(6)SDNコントローラ15は、新規車載機器14Aから適切な設定情報を取得できなかった場合には、車外のデータセンタ19から設定情報を取得している。そのため、新規車載機器14Aに適切な設定情報が記憶されていない場合にも、各SDNスイッチ12の通信設定を適切に更新できる。
【0035】
(7)車外のデータセンタ19からの設定情報の取得には、新規車載機器14Aから取得する場合に比べて長い時間が掛かる可能性がある。これに対して、SDNコントローラ15は、車外のデータセンタ19からの設定情報の取得を、作業者の許可を得てから実施している。そのため、時間に余裕がある適切な時期に、各SDNスイッチ12の通信設定の更新を実施できる。
【0036】
(8)SDNコントローラ15は、設定情報に基づくSDNスイッチ12の通信設定の更新を完了したときに、車載ネットワーク10に接続済みの他の車載機器14に同通信設定の更新完了を通知している。そのため、車載ネットワーク10に接続済みの他の車載機器14は、通信設定の更新が完了してフレーム通信を開始可能となる時期を確認できる。
【0037】
(9)SDNコントローラ15は、設定情報に基づくSDNスイッチ12の通信設定の更新を完了したときに、新規車載機器14Aに同通信設定の更新完了を通知している。そして、新規車載機器14Aは、更新完了の通知を待って、フレーム通信を開始している。そのため、車載ネットワーク10に接続した新規車載機器14Aを、通信設定の更新が完了した時期に有効化してフレーム通信を開始させられる。
【0038】
<他の実施形態>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。また、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内における全ての変更が含まれることが意図される。
【0039】
(適切な設定情報を取得できなかった場合の処理)
・車載ネットワーク10に有線接続したダイアグツール等の車両診断用の端末を経由してデータセンタ19から設定情報を取得するようにしてもよい。その場合には、無線通信装置17は省略できる。
【0040】
・故障診断用の端末等の車外の表示装置に、エラー表示を行うようにしてもよい。また、データセンタ19からの設定情報の取得可否の確認操作を、車外の端末で行うようにしてもよい。
【0041】
・SDNコントローラ15が、表示装置16のエラー表示や同表示装置16での確認操作を行わずに、データセンタ19から設定情報を取得するようにしてもよい。
・新規車載機器14Aから適切な設定情報を取得できなかった場合に、SDNコントローラ15が車外のデータセンタ19から設定情報を取得せず、それ以外の方法、例えば手動で、通信設定の更新を行うようにしてもよい。
【0042】
(更新完了の通知)
・SDNコントローラ15が、SDNスイッチ12の通信設定の更新完了の通知を、接続済みの車載機器14のみに、或いは新規車載機器14Aのみに実施するようにしてもよい。また、接続済みの車載機器14、及び新規車載機器14Aのいずれにも、SDNコントローラ15による通信設定の更新完了の通知を実施しないようにしてもよい。
【0043】
(その他)
・車載ネットワーク10への接続後、SDNコントローラ15からの要求に応じて新規車載機器14Aが設定情報を送信するようにしてもよい。
【0044】
・車載ネットワーク10への接続後に新規車載機器14Aが、識別情報の送信を行わずに、設定情報のみをSDNコントローラ15に送信するようにしてもよい。
・SDNスイッチ12の数やネットワークのトポロジ等の車載ネットワーク10の構成は、図1に例示のものに限らず適宜変更してもよい。
【0045】
・車載ネットワーク10に設置された複数のSDNスイッチ12の一部、又は全てを、ルータ等のフレーム転送を行う装置であり、かつソフトウェアにより通信設定を更新可能な他の通信装置に置き換えるようにしてもよい。
【0046】
・上記実施形態の車載ネットワーク10は、車載機器14がデータリンク層(L2)で通信を行うように構成されていた。車載機器14間のメッセージ通信を、データリンク層以外の階層で行うように車載ネットワーク10を構成してもよい。すなわち、上記実施形態のSDNコントローラ15を、メッセージ通信を行う複数の通信装置が設けられた車載ネットワークにおいて、各通信機器の通信設定の更新を行う装置として構成してもよい。
【0047】
・新規車載機器14Aの接続に際して、SDNコントローラ15が、SDNスイッチ12の通信設定と共に、接続済みの各車載機器14の通信設定を更新するようにしてもよい。
【0048】
・SDNコントローラ15の構成は、車載ネットワーク10に設置された複数の通信装置の通信設定を更新する設定装置としての機能を有する任意の構成としてもよい。例えば上記実施形態におけるSDNコントローラ15の機能を、いずれかのECUが兼ね備えるようにしてもよい。すなわち、通信装置の通信設定を更新する設定装置は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを含む回路(circuitry)として構成してもよい。なお、設定装置は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又はそれらの組み合わせを含む回路として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0049】
<付記事項>
[付記1]フレーム通信を行う複数の通信装置が設けられた車載ネットワークに、前記フレーム通信を行う車載機器が接続された際に、前記車載機器から取得した設定情報に基づいて前記複数の通信装置の通信設定を更新する設定装置。
【0050】
[付記2]前記車載機器の接続には、同車載機器のソフトウェア更新後の前記車載ネットワークへの同車載機器の再接続が含まれる付記1に記載の設定装置。
[付記3]前記設定情報には、前記フレーム通信のサービス品質の設定の情報、及びセキュリティのための通信経路制限の設定の情報が含まれる付記1又は付記2に記載の設定装置。
【0051】
[付記4]前記車載機器から適切な前記設定情報を取得できない場合に、車外のデータセンタから前記設定情報を取得する付記1~付記3のいずれかに記載の設定装置。
[付記5]前記車載機器から適切な前記設定情報を取得できない場合に、車両に搭載された表示装置にエラー表示を行う付記1~付記4のいずれかに記載の設定装置。
【0052】
[付記6]前記設定情報に基づく前記通信設定の更新を完了したときに、同通信設定の更新完了を前記車載機器に通知する付記1~付記5のいずれかに記載の設定装置。
[付記7]前記設定情報に基づく前記通信設定の更新を完了したときに、前記車載ネットワークに接続された他の車載機器に同通信設定の更新完了を通知する付記1~付記6のいずれかに記載の設定装置。
【0053】
[付記8]フレーム通信を行う複数の通信装置が設けられた車載ネットワークに接続されて前記フレーム通信を行う車載機器であって、前記複数の通信装置の通信設定の情報である設定情報を記憶した記憶部を有している車載機器。
【0054】
[付記9]前記車載ネットワークへの接続時に、前記設定情報を送信する付記8に記載の車載機器。
[付記10]前記設定情報には、前記フレーム通信のサービス品質の設定の情報、及びセキュリティのための通信経路制限の設定の情報が含まれる付記8又は付記9に記載の車載機器。
【0055】
[付記11]前記車載ネットワークには、前記記憶部に記憶された前記設定情報に基づき前記通信装置の通信設定を更新する設定装置が設けられており、当該車載機器は、前記車載ネットワークへの接続後に、前記設定装置から前記通信設定の更新完了が通知されるのを待って前記フレーム通信を開始する付記8~付記10のいずれかに記載の車載機器。
【0056】
[付記12]メッセージ通信を行う複数の通信装置が設けられた車載ネットワークに、前記メッセージ通信を行う車載機器が接続された際に、前記車載機器から取得した設定情報に基づいて前記複数の通信装置の通信設定を更新する設定装置。
【0057】
[付記13]前記車載機器の接続には、同車載機器のソフトウェア更新後の前記車載ネットワークへの同車載機器の再接続が含まれる付記12に記載の設定装置。
[付記14]前記設定情報には、前記メッセージ通信のサービス品質の設定の情報、及びセキュリティのための通信経路制限の設定の情報が含まれる付記12又は付記13に記載の設定装置。
【0058】
[付記15]前記車載機器から適切な前記設定情報を取得できない場合に、車外のデータセンタから前記設定情報を取得する付記12~付記14のいずれかに記載の設定装置。
[付記16]前記車載機器から適切な前記設定情報を取得できない場合に、車両に搭載された表示装置にエラー表示を行う付記12~付記15のいずれかに記載の設定装置。
【0059】
[付記17]前記設定情報に基づく前記通信設定の更新を完了したときに、同通信設定の更新完了を前記車載機器に通知する付記12~付記16のいずれかに記載の設定装置。
[付記18]前記設定情報に基づく前記通信設定の更新を完了したときに、前記車載ネットワークに接続された他の車載機器に同通信設定の更新完了を通知する付記12~付記17のいずれかに記載の設定装置。
【0060】
[付記19]メッセージ通信を行う複数の通信装置が設けられた車載ネットワークに接続されて前記メッセージ通信を行う車載機器であって、前記複数の通信装置の通信設定の情報である設定情報を記憶した記憶部を有している車載機器。
【0061】
[付記20]前記車載ネットワークへの接続時に、前記設定情報を送信する付記19に記載の車載機器。
[付記21]前記設定情報には、前記メッセージ通信のサービス品質の設定の情報、及びセキュリティのための通信経路制限の設定の情報が含まれる付記8又は付記9に記載の車載機器。
【0062】
[付記22]前記車載ネットワークには、前記記憶部に記憶された前記設定情報に基づき前記通信装置の通信設定を更新する設定装置が設けられており、当該車載機器は、前記車載ネットワークへの接続後に、前記設定装置から前記通信設定の更新完了が通知されるのを待って前記メッセージ通信を開始する付記19~付記21のいずれかに記載の車載機器。
【符号の説明】
【0063】
10…車載ネットワーク
11…車両
12…SDNスイッチ(通信装置)
13…ネットワーク回線
14…車載機器(通信装置)
14A…新規車載機器
15…SDNコントローラ(設定装置)
16…表示装置
17…無線通信装置
18…無線通信網
19…データセンタ
20…ネットワーク接続部
21…コネクタ
21A…通信配線
22…CPU
23…メモリ
図1
図2
図3
図4