(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066151
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】トレンチゲート型のスイッチング素子とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240508BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240508BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240508BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 653C
H01L29/78 658F
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175505
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 容佑
(57)【要約】
【課題】 層間絶縁膜の絶縁性能の劣化を抑制する。
【解決手段】 トレンチゲート型のスイッチング素子であって、上面にトレンチが形成されている半導体基板と、ゲート電極と、層間絶縁膜と、上部電極を有する。前記ゲート電極は、前記トレンチ内に配置されている。前記ゲート電極の上面は、前記半導体基板の前記上面よりも下側に位置している。前記層間絶縁膜は、前記半導体基板の前記上面に接していない状態で前記ゲート電極の前記上面を覆っている。前記上部電極は、前記半導体基板の前記上面と前記層間絶縁膜の前記上面を覆っている。前記層間絶縁膜の前記上面が、凸部と、前記凸部と前記トレンチの各側面の間に設けられた特定表面を有している。前記各特定表面が、前記凸部に近づくに従って下側に変位するように前記半導体基板の前記上面に対して傾斜している、または、前記半導体基板の前記上面と平行である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチゲート型のスイッチング素子であって、
上面にトレンチ(14)が形成されている半導体基板(12)と、
前記トレンチの内面を覆うゲート絶縁膜(16)と、
前記トレンチ内に配置されているゲート電極(18)であって、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されており、前記ゲート電極の上面が前記半導体基板の前記上面よりも下側に位置している前記ゲート電極と、
前記半導体基板の前記上面に接していない状態で前記ゲート電極の前記上面を覆っている層間絶縁膜(20)と、
前記半導体基板の前記上面と前記層間絶縁膜の上面を覆っており、前記層間絶縁膜によって前記ゲート電極から絶縁されている上部電極(22)、
を有し、
前記層間絶縁膜の前記上面が、凸部(40)と、前記凸部と前記トレンチの各側面の間に設けられた特定表面(42)を有し、
前記各特定表面が、前記凸部に近づくに従って下側に変位するように前記半導体基板の前記上面に対して傾斜している、または、前記半導体基板の前記上面と平行である、
スイッチング素子。
【請求項2】
前記半導体基板の前記上面に対する前記特定表面の傾斜角度が30度以下である、請求項1に記載のスイッチング素子。
【請求項3】
前記凸部の上端が、前記半導体基板の前記上面よりも下側に位置している、請求項1または2に記載のスイッチング素子。
【請求項4】
前記層間絶縁膜の前記上面が複数の前記凸部を有する、請求項1または2に記載のスイッチング素子。
【請求項5】
スイッチング素子の製造方法であって、
ウエハであって、
上面にトレンチが形成されている半導体基板と、
前記トレンチの内面を覆うゲート絶縁膜と、
前記トレンチ内に配置されているゲート電極であって、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されており、前記ゲート電極の上面が前記半導体基板の前記上面よりも下側に位置している前記ゲート電極、
を有する前記ウエハを準備する工程と、
前記半導体基板の前記上面と前記ゲート電極の前記上面を覆っており、前記トレンチの中央の上部に凹部を有する層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜の前記上面を覆うポリシリコン層を形成する工程と、
前記ポリシリコン層をエッチングすることによって、前記凹部の外側の前記ポリシリコン層を除去し、前記凹部内に前記ポリシリコン層を残存させる工程と、
前記ポリシリコン層に対するエッチングレートが前記層間絶縁膜に対するエッチングレートよりも低いエッチング方法によって前記ポリシリコン層と前記層間絶縁膜をエッチングする工程であって、
・前記ポリシリコン層を除去する、
・前記半導体基板の前記上面を覆う前記層間絶縁膜を除去する、
・前記トレンチ内に前記ゲート電極の前記上面を覆う前記層間絶縁膜を残存させる、
・残存させる前記層間絶縁膜の上面のうちの前記ポリシリコン層の直下の位置に凸部が形成される、
・残存させる前記層間絶縁膜の前記上面のうちの前記凸部と前記トレンチの各側面の間に特定表面が形成される、
・前記各特定表面が、前記凸部に近づくに従って下側に変位するように前記半導体基板の前記上面に対して傾斜している、または、前記半導体基板の前記上面と平行である、
という条件を満たすように前記ポリシリコン層と前記層間絶縁膜をエッチングする工程と、
前記半導体基板の前記上面と前記層間絶縁膜の前記上面を覆っており、前記層間絶縁膜によって前記ゲート電極から絶縁されている上部電極を形成する工程、
を有する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、トレンチゲート型のスイッチング素子に関する。
【0002】
トレンチゲート型のスイッチング素子は、トレンチ内に配置されているゲート電極と、ゲート電極の上面を覆う層間絶縁膜と、層間絶縁膜の上面と半導体基板の上面とを覆う上部電極を有する。上部電極は、層間絶縁膜によってゲート電極から絶縁されている。スイッチング素子の小型化のために、層間絶縁膜を半導体基板の上面を覆わない状態でゲート電極の上部に形成する技術が知られている。この技術では、まず、半導体基板の上面とトレンチ内のゲート電極の上面に層間絶縁膜を形成する。次に、層間絶縁膜をエッチングして、トレンチの外部の層間絶縁膜を除去し、ゲート電極の上部に層間絶縁膜を残存させる。これにより、層間絶縁膜を半導体基板の上面を覆わない状態でゲート電極の上部に設けることができる。しかし、この技術では、エッチングにおいてゲート電極の上部の層間絶縁膜まで除去される場合があり、エッチングの制御が困難という問題があった。これに対し、特許文献1には、上面に凸部が設けられた層間絶縁膜が開示されている。この構造では、層間絶縁膜をゲート電極の上部に容易に残存させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11に示すように、特許文献1では、層間絶縁膜120の厚みが、トレンチの中央部からトレンチの両側面に近づくに従って薄くなっている。すなわち、層間絶縁膜120の側面が、トレンチの両側面に近づくに従って下側に変位するように傾斜する傾斜面120aとなっている。このため、トレンチの側面と層間絶縁膜120の傾斜面120aによって、V字状の溝が形成されている。V字状の溝内には、上部電極122が充填されている。したがって、上部電極122は、トレンチの側面近傍において、下側に向かって鋭く突出する突出部122aを有している。スイッチング素子の使用時にゲート電極118と上部電極122の間に電位差が生じると、層間絶縁膜120に電界が加わる。このとき、層間絶縁膜120に向かって鋭く突出する突出部122a近傍において、電界集中が生じる。すなわち、突出部122a近傍において層間絶縁膜120に高電界が印加される。このため、層間絶縁膜120の絶縁性能が劣化する場合がある。本明細書では、層間絶縁膜の絶縁性能の劣化を抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するトレンチゲート型のスイッチング素子は、半導体基板と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極と、層間絶縁膜と、上部電極を有する。前記半導体基板の上面にトレンチが形成されている。前記ゲート絶縁膜は、前記トレンチの内面を覆っている。前記ゲート電極は、前記トレンチ内に配置されている。前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されている。前記ゲート電極の上面は、前記半導体基板の前記上面よりも下側に位置している。前記層間絶縁膜は、前記半導体基板の前記上面に接していない状態で前記ゲート電極の前記上面を覆っている。前記上部電極は、前記半導体基板の前記上面と前記層間絶縁膜の前記上面を覆っており、前記層間絶縁膜によって前記ゲート電極から絶縁されている。前記層間絶縁膜の前記上面が、凸部と、前記凸部と前記トレンチの各側面の間に設けられた特定表面を有している。前記各特定表面が、前記凸部に近づくに従って下側に変位するように前記半導体基板の前記上面に対して傾斜している、または、前記半導体基板の前記上面と平行である。
【0006】
このスイッチング素子では、層間絶縁膜の上面が、凸部とトレンチの各側面の間に設けられた特定表面を有している。各特定表面が、凸部に近づくに従って下側に変位するように半導体基板の上面に対して傾斜している、または、半導体基板の上面と平行である。したがって、上部電極は、トレンチの側面近傍において下側に向かって鋭く突出する突出部を有していない。このため、層間絶縁膜に対する電界集中を抑制でき、層間絶縁膜の絶縁性能の劣化を抑制できる。
【0007】
また、本明細書は、トレンチゲート型のスイッチング素子の製造方法を提案する。この製造方法は、ウエハを準備する工程を有する。前記ウエハは、半導体基板と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極を有する。前記半導体基板の上面に、トレンチが形成されている。前記ゲート絶縁膜は、前記トレンチの内面を覆っている。前記ゲート電極は、前記トレンチ内に配置されている。前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されている。前記ゲート電極の上面は、前記半導体基板の前記上面よりも下側に位置している。前記製造方法は、前記半導体基板の前記上面と前記ゲート電極の前記上面を覆っているとともに前記トレンチの中央の上部に凹部を有する層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜の前記上面を覆うポリシリコン層を形成する工程と、前記ポリシリコン層をエッチングすることによって前記凹部の外側の前記ポリシリコン層を除去して前記凹部内に前記ポリシリコン層を残存させる工程と、前記ポリシリコン層に対するエッチングレートが前記層間絶縁膜に対するエッチングレートよりも低いエッチング方法によって前記ポリシリコン層と前記層間絶縁膜をエッチングする工程を有する。前記層間絶縁膜をエッチングする前記工程では、・前記ポリシリコン層を除去する、・前記半導体基板の前記上面を覆う前記層間絶縁膜を除去する、・前記トレンチ内に前記ゲート電極の前記上面を覆う前記層間絶縁膜を残存させる、・残存させる前記層間絶縁膜の上面のうちの前記ポリシリコン層の直下の位置に凸部を形成される、・残存させる前記層間絶縁膜の前記上面のうちの前記凸部と前記トレンチの各側面の間に特定表面が形成される、・前記各特定表面が、前記凸部に近づくに従って下側に変位するように前記半導体基板の前記上面に対して傾斜している、または、前記半導体基板の前記上面と平行である、という条件を満たすように前記ポリシリコン層と前記層間絶縁膜をエッチングする。前記製造方法は、前記半導体基板の前記上面と前記層間絶縁膜の前記上面を覆っており、前記層間絶縁膜によって前記ゲート電極から絶縁されている上部電極を形成する工程、を有する。
【0008】
この製造方法によれば、層間絶縁膜で電界集中が生じ難いスイッチング素子を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】トレンチの拡大断面図(特定表面が傾斜している場合)。
【
図3】トレンチの拡大断面図(特定表面が傾斜していない場合)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書が開示するスイッチング素子においては、前記半導体基板の前記上面に対する前記特定表面の傾斜角度が30度以下であってもよい。
【0011】
この構成によれば、層間絶縁膜の凸部の近傍における電界集中を抑制できる。
【0012】
本明細書が開示するスイッチング素子においては、前記凸部の上端が、前記半導体基板の前記上面よりも下側に位置していてもよい。
【0013】
この構成によれば、上部電極の上面を平坦化することができる。
【0014】
本明細書が開示するスイッチング素子においては、前記層間絶縁膜の前記上面が複数の前記凸部を有していてもよい。
【0015】
また、本明細書が開示するスイッチング素子においては、前記半導体基板が、前記上部電極に接しているとともに前記トレンチの側面で前記ゲート絶縁膜に接している第1n型領域と、前記第1n型領域よりも下側の前記トレンチの前記側面で前記ゲート絶縁膜に接しているp型のボディ領域と、前記ボディ領域よりも下側の前記トレンチの前記側面で前記ゲート絶縁膜に接している第2n型領域、を有していてもよい。例えば、第1n型領域がソース領域であってもよく、第2n型領域はドリフト領域であってもよい。
【0016】
図1に示す実施形態のスイッチング素子10は、半導体基板12を有している。半導体基板12は、SiCにより構成されている。但し、半導体基板12は、他の半導体材料(例えば、Si、GaNなど)により構成されていてもよい。以下では、半導体基板12の上面12aに平行な一方向をx方向といい、上面12aに平行かつx方向に直交する方向をy方向という。半導体基板12の上面12aには、複数のトレンチ14が設けられている。各トレンチ14は、y方向に長く伸びており、x方向に間隔を空けて配置されている。各トレンチ14の内面は、ゲート絶縁膜16により覆われている。各トレンチ14内に、ゲート電極18が配置されている。ゲート電極18は、ゲート絶縁膜16により半導体基板12から絶縁されている。ゲート電極18の上面は、半導体基板12の上面12aよりも下側に配置されている。各トレンチ14内に、層間絶縁膜20が配置されている。層間絶縁膜20は、ゲート電極18の上面を覆っている。半導体基板12の上部には、上部電極22が配置されている。上部電極22は、半導体基板12の上面12aと層間絶縁膜20の上面を覆っている。上部電極22は、層間絶縁膜20によってゲート電極18から絶縁されている。半導体基板12の下部には、下部電極24が配置されている。下部電極24は、半導体基板12の下面12bを覆っている。
【0017】
半導体基板12は、複数のソース領域30、複数のコンタクト領域32、ボディ領域34、ドリフト領域36、及び、ドレイン領域38を有している。
【0018】
各ソース領域30は、高いn型不純物濃度を有するn型領域である。各ソース領域30は、対応するトレンチ14の側面においてゲート絶縁膜16に接している。また、各ソース領域30は、上部電極22にオーミック接触している。
【0019】
各コンタクト領域32は、高いp型不純物濃度を有するp型領域である。各コンタクト領域32は、上部電極22にオーミック接触している。
【0020】
ボディ領域34は、コンタクト領域32よりも低いp型不純物濃度を有するp型領域である。ボディ領域34は、各ソース領域30及び各コンタクト領域32に対して下側から接している。ボディ領域34は、各ソース領域30の下側でゲート絶縁膜16に接している。
【0021】
ドリフト領域36は、ソース領域30よりも低いn型不純物濃度を有するn型領域である。ドリフト領域36は、ボディ領域34に対して下側から接している。ドリフト領域36は、ボディ領域34の下側でゲート絶縁膜16に接している。
【0022】
ドレイン領域38は、ドリフト領域36よりも高いn型不純物濃度を有するn型領域である。ドレイン領域38は、ドリフト領域36に対して下側から接している。ドレイン領域38は、下部電極24にオーミック接触している。
【0023】
ソース領域30、コンタクト領域32、ボディ領域34、ドリフト領域36、ドレイン領域38、ゲート電極18及びゲート絶縁膜16によって、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field effect transistor)が構成されている。
【0024】
図2は、トレンチ14の拡大断面図である。
図2に示すように、層間絶縁膜20は、半導体基板12の上面12aに接しない状態でゲート電極18の上面を覆っている。層間絶縁膜20の上面に、凸部40が設けられている。凸部40は、x方向におけるトレンチ14の中央部に設けられている。また、層間絶縁膜20の上面は、凸部40の両側に配置された特定表面42を有している。各特定表面42は、凸部40とトレンチ14の側面との間に配置されている。特定表面42は、トレンチ14の側面から凸部40に向かうに従って下側に変位するように傾斜している。半導体基板12の上面12aに対する特定表面42の傾斜角度θは、30度以下である。なお、
図3に示すように、特定表面42が上面12aと平行(すなわち、傾斜角度θが0度)であってもよい。凸部40の上端は、半導体基板12の上面12aよりも下側に位置している。すなわち、凸部40は、上面12aよりも上側に突出していない。
【0025】
スイッチング素子10の使用時には、下部電極24に上部電極22よりも高い電位が印加される。また、スイッチング素子10の使用時には、ゲート電極18の電位が、上部電極22と同電位または上部電極22よりも低い電位であるゲートオフ電位と、上部電極22よりも高い電位であるゲートオン電位の間で制御される。ゲート電極18にゲートオン電位を印加するとスイッチング素子10がオンし、ゲート電極18にゲートオフ電位を印加するとスイッチング素子10がオフする。また、ゲート電圧の制御によってゲート電極18と上部電極22の間に電位差が生じると、層間絶縁膜20に電界が印加される。このとき、
図11のように上部電極122がトレンチの側面に隣接する位置で下側に突出する突出部122aを有していると、突出部122aの近傍の層間絶縁膜120に電界が集中する。このため、層間絶縁膜120の絶縁性能が劣化し易い。これに対し、実施形態のスイッチング素子10では、
図2または
図3に示すように、凸部40とトレンチ14の側面の間に特定表面42が設けられている。特定表面42は凸部40に向かうに従って下側に変位するように傾斜している、または、特定表面42は半導体基板12の上面12aと平行である。したがって、上部電極22が下側に鋭く突出する突出部(すなわち、
図11の突出部122aのような突出部)を有していない。したがって、層間絶縁膜20に高い電界が印加されることが抑制される。このため、実施形態のスイッチング素子10では、層間絶縁膜20の絶縁性能が劣化し難い。
【0026】
また、
図2のように特定表面42が凸部40に向かうに従って下側に変位するように傾斜している場合には、凸部40に隣接する位置に鋭角の角部44が形成される。角部44が鋭いと、角部44近傍で高い電界が生じ易い。しかしながら、本実施形態では、特定表面42の上面12aに対する傾斜角度θが30度以下であるので、角部44がそれほど鋭くない。このため、角部44近傍において層間絶縁膜20に高電界が印加されることが抑制される。これによっても、層間絶縁膜20の絶縁性能の劣化が抑制される。
【0027】
次に、スイッチング素子10の製造方法について説明する。まず、エピタキシャル成長、イオン注入等によって、半導体基板12に、ソース領域30、コンタクト領域32、ボディ領域34、ドリフト領域36、及び、ドレイン領域38を形成する。次に、半導体基板12の上面12aを選択的にエッチングすることで、
図4に示すように、トレンチ14を形成する。次に、
図5に示すように、トレンチ14の内面と半導体基板12の上面12aに酸化シリコンにより構成されたゲート絶縁膜16を形成する。次に、トレンチ14内と半導体基板12の上面12a上(すなわち、ゲート絶縁膜16の表面)にポリシリコンにより構成されたゲート電極18を成長させる。次に、
図6に示すように、ゲート電極18をエッチングすることにより、上面12a上のゲート電極18を除去し、トレンチ14内にゲート電極18を残存させる。ここでは、残存するゲート電極18の上面がトレンチ14内に位置する(すなわち、残存するゲート電極18の上面が上面12aよりも下側に位置する)ようにエッチングを行う。次に、
図7に示すように、ウエハ上に酸化シリコンにより構成された層間絶縁膜20を成長させる。すなわち、トレンチ14内と上面12a上(すなわち、ゲート絶縁膜16の表面)に層間絶縁膜20を成長させる。ゲート電極18の上部では、ゲート電極18の上面とトレンチ14の側面から層間絶縁膜20が成長する。したがって、ゲート電極18の上部では上面12a上よりも層間絶縁膜20が厚く形成される。また、トレンチ14の形状に沿って層間絶縁膜20が成長するので、トレンチ14の中央部の上部において、層間絶縁膜20の上面に凹部20aが形成される。次に、
図7に示すように、層間絶縁膜20上にポリシリコン層50を成長させる。ここでは、凹部20a内にポリシリコン層50が充填される。次に、
図8に示すように、ポリシリコン層50をエッチングする。ここでは、凹部20a内にポリシリコン層50を残存させるとともに、凹部20aの外側のポリシリコン層50を除去する。残存するポリシリコン層50の幅は、トレンチ14の幅よりも狭い。
【0028】
次に、層間絶縁膜20に対するエッチングレートがポリシリコン層50に対するエッチングレートよりも高いエッチングガスによりポリシリコン層50と層間絶縁膜20をドライエッチングする。ここでは、
図9に示すように、トレンチ14の外側(すなわち、半導体基板12の上面12a上)の層間絶縁膜20が除去され、ポリシリコン層50が除去され、トレンチ14内に層間絶縁膜20が残存するようにエッチングを行う。なお、層間絶縁膜20が除去された範囲では、ゲート絶縁膜16も除去される。エッチング前においてゲート電極18の上部にポリシリコン層50が存在するので、ゲート電極18の上部ではエッチングの進行が遅い。このため、ゲート電極18の上部(すなわち、トレンチ14内)に容易に層間絶縁膜20を残存させることができる。このように層間絶縁膜20をトレンチ14内に残存させると、層間絶縁膜20をゲート電極18の上部に自己整合的に形成することができる。したがって、隣り合うトレンチ14の間の間隔が狭い場合であっても、正確に層間絶縁膜20をゲート電極18の上部に形成できる。隣り合うトレンチ14の間の間隔を狭くできるので、スイッチング素子10を小型化することができる。
【0029】
また、エッチング前において、ゲート電極18の上部の層間絶縁膜20の中央部はポリシリコン層50によって覆われている。したがって、トレンチ14の中央部では、トレンチ14の側面近傍に比べて、エッチングの進行が遅い。したがって、エッチング後に、トレンチ14内の層間絶縁膜20の上面の中央部(すなわち、x方向におけるトレンチ14の中央部)に凸部40が形成される。ポリシリコン層50と層間絶縁膜20(すなわち、酸化シリコン)の間でエッチングレートに大きな差を設けることができるので、凸部40の側面がテーパ形状になり難く、凸部40の側面を半導体基板12の厚み方向と略平行とすることできる。したがって、凸部40とトレンチ14の側面の間に、上面12aに対する傾斜角度が小さい特定表面42が形成される。すなわち、特定表面42を、凸部40に近づくに従って下側に変位するように半導体基板12の上面12aに対して傾斜している形状、または、半導体基板12の上面12aと平行な形状とすることができる。ここでは、特定表面42の上面12aに対する傾斜角度θが0~30度となるように特定表面42を形成する。また、ここでは、凸部40の上端が半導体基板12の上面12aよりも上側に突出しないように凸部40を形成する。
【0030】
次に、
図2に示すように、層間絶縁膜20の上面と半導体基板12の上面12aを覆うように上部電極22を形成する。上部電極22は、凸部40の上面、凸部40の側面、及び、特定表面42で層間絶縁膜20に接触する。この構造では、凸部40の側面がテーパ状の場合に比べて、上部電極22が層間絶縁膜20に対して広い面積で接触することができる。したがって、上部電極22を層間絶縁膜20に対して高い強度で密着させることができる。また、特定表面42が形成されているので、上部電極22には
図11の突出部122aのような下側に突出する突出部が形成されない。また、特定表面42の傾斜角度θが0~30度であるので、角部44がそれほど鋭くならない。このため、層間絶縁膜20において電界集中し難いスイッチング素子10を製造できる。
【0031】
また、凸部40の上端が半導体基板12の上面12aより上側に突出してないので、上部電極22の上面に凸部が形成されることを防止できる。したがって、上部電極22の形成後に上部電極22の上面を平坦化する処理を実施する必要が無い。なお、図示していないが、上部電極22の形成後に、半導体基板12の上面12aの外周部を覆うポリイミド樹脂層を形成する工程が実施される。このとき、上部電極22の外周部等がポリイミド樹脂層により覆われる。上部電極22の上面が平坦であるので、上部電極22上に均一な膜厚でポリイミド樹脂層を形成することができる。上部電極22を形成した後に、下部電極24を形成する。これにより、
図1のスイッチング素子が完成する。
【0032】
なお、上記の実施形態では、凸部40が上面12aよりも上側に突出していなかった。しかしながら、凸部40が上面12aよりも上側に突出していてもよい。この場合でも、特定表面42が適切に設けられていれば、層間絶縁膜20に高電界が印加されることを防止できる。
【0033】
また、上記の実施形態では、層間絶縁膜20が1つの凸部40を有していた。しかしながら、
図10に示すように、層間絶縁膜20が複数の凸部40を有していてもよい。この場合でも、凸部40とトレンチ14の側面との間に特定表面42を設けることで、層間絶縁膜20に高電界が印加されることを防止できる。
【0034】
また、上記の実施形態では、スイッチング素子がMOSFETであった。しかしながら、IGBT(insulated gate bipolar transistor)等の他のスイッチング素子に本明細書に開示の技術を適用してもよい。
【0035】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0036】
10:スイッチング素子、12:半導体基板、14:トレンチ、18:ゲート電極、20:層間絶縁膜、40:凸部、42:特定表面