(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066155
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】微細気泡生成ポンプ
(51)【国際特許分類】
B01F 25/60 20220101AFI20240508BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20240508BHJP
B01F 25/452 20220101ALI20240508BHJP
【FI】
B01F25/60
B01F23/23
B01F25/452
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175514
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 知也
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB04
4G035AC33
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でポンプの消費動力を抑制し、効率的にキャビテーション効果を起こして微細気泡を発生させることができる微細気泡生成ポンプを提供する。
【解決手段】本発明の微細気泡生成ポンプ1では、水を吸入する吸入部4および水を吐出する吐出部5が設けられ、水が流動する流路7が形成され、吸入部4が、流路7の上流側から下流側に向かって断面積が縮小する縮小部12と、上流側から下流側に向かって断面積が拡大する拡大部13と、縮小部12と拡大部13との間に形成された細流路部14と、を有する構成としている。そのため簡易な構成で、液体を高圧にするための消費動力をより抑制して効率的にキャビテーション効果を起こして微細気泡を発生させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸入する吸入部および前記液体を吐出する吐出部が設けられる微細気泡生成ポンプにおいて、
前記液体が流動する流路が形成され、
前記吸入部が、前記流路の上流側から下流側に向かって断面積が縮小する第1の縮小部と、前記上流側から下流側に向かって断面積が拡大する第1の拡大部と、前記第1の縮小部と前記第1の拡大部との間に形成された第1の細流路部と、を有することを特徴とする微細気泡生成ポンプ。
【請求項2】
前記吐出部が、前記流路の上流側から下流側に向かって断面積が縮小する第2の縮小部と、前記上流側から下流側に向かって断面積が拡大する第2の拡大部と、前記第2の縮小部と前記第2の拡大部との間に形成された第2の細流路部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の微細気泡生成ポンプ。
【請求項3】
前記第2の細流路部の断面積が、前記第1の細流路部の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の微細気泡生成ポンプ。
【請求項4】
前記吐出部が、前記液体の流れを規制する規制板をさらに有し、
前記規制板が前記第2の縮小部の前記上流側に配設され、
前記規制板には、前記液体が通過する通過孔が形成され、
前記通過孔の前記上流側の開口と前記下流側の開口の位置がずれていることを特徴とする請求項2または3に記載の微細気泡生成ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入した液体中に微細気泡を生成し、微細気泡を含む液体を吐出する微細気泡生成ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の微細気泡生成ポンプとして、ポンプに微細気泡発生装置が連結され、当該微細気泡発生装置がポンプにより汲み上げられた排水に微細気泡を溶解させるものが知られている。しかしながら、このようなポンプは連結のための機械が複雑化、大型化する傾向にあるため、例えば特許文献1では、液体を吸入して圧送するモータ式のフランジャポンプ装置であって、液体を加圧する加圧部と、液体を外部へ放出するための吐出管とを有し、UFB(ウルトラファインバブル)発生器が加圧部と吐出管との間に設けられるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の微細気泡生成ポンプでは、駆動部により液体としての水を吸入・加圧し、高圧にされた水が高圧回路を通じてUFB発生器に送られ、高圧水がUFB発生器を通過すると、キャビテーション効果により水の中の気体を細分化させて微細気泡を発生させている。このような微細気泡生成ポンプでは、微細気泡生成器を通過する液体を、微細気泡を発生させるために高圧にする必要があり、高い消費動力を必要としていた。
【0005】
そこで本発明は、簡易な構成でポンプの消費動力を抑制し、効率的にキャビテーション効果を起こして微細気泡を発生させることができる微細気泡生成ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の微細気泡生成ポンプは、液体を吸入する吸入部および前記液体を吐出する吐出部が設けられ、前記液体が流動する流路が形成され、前記吸入部が、前記流路の上流側から下流側に向かって断面積が縮小する第1の縮小部と、前記上流側から下流側に向かって断面積が拡大する第1の拡大部と、前記第1の縮小部と前記第1の拡大部との間に形成された第1の細流路部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の微細気泡生成ポンプによれば、簡易な構成で、液体を高圧にするための消費動力を抑制して効率的にキャビテーション効果を起こし微細気泡を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を示す微細気泡生成ポンプの部分断面図である。
【
図2】同上、
図1における枠Aの拡大断面図である。
【
図3】同上、
図1における枠Bの拡大断面図である。
【
図4】同上、(A)板部材の側面図、(B)板部材の平面図、および(C)
図4(B)におけるE-E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明における好ましい微細気泡生成器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
【0010】
図1~
図4は、本発明の微細気泡生成ポンプ1の一実施形態の構成を示している。先ず
図1を参照して全体の構成を説明すると、微細気泡生成ポンプ1は、駆動源としてのポンプ本体2と、液体を吸入する吸入部4および液体を吐出する吐出部5が設けられて、吸入した液体中に気体の微細気泡を生成し、これらの液体や気体を吐出する送液部3と、を備えて構成される。
【0011】
ポンプ本体2および送液部3は、例えば遠心式のポンプやダイヤフラム式のポンプで構成されるが、他のタイプのポンプで構成してもよく、特に限定されない。送液部3は、本体となる送液部本体3-1と、送液部本体3-1に着脱自在に設けられ、吸入部4、吐出部5および蓋状部本体6を備えて構成される蓋状部3-2とで構成され、送液部3内部の送液部本体3-1、吸入部4、吐出部5、蓋状部本体6に亘って、例えば水などの液体が流動する流路7が形成される。蓋状部本体6は、流路7の一部であり吸入部4に連通する吸入室6-1と、同じく流路7の一部であり吐出部5に連通する吐出室6-2とが形成されるが、蓋状部本体6内では吸入室6-1と吐出室6-2とが直接的に連通しておらず、送液部本体3-1を介して吸入室6-1と吐出室6-2とが連通するように構成される。そのため流路7では、吸入部4、吸入室6-1、送液部本体3-1、吐出室6-2、吐出部5の順に液体が流動する。
【0012】
吸入部4および吐出部5は、例えば弾性管やホースなど、液体を微細気泡生成ポンプ1に導入させるための部品や、微細気泡生成ポンプ1からの液体を外部に放出させるための部品を微細気泡生成ポンプ1に取付け可能にするものである。吸入部4は筒状に形成され、当該吸入部4に接続された、例えば弾性管からの液体を送液部3内に導いている。また吐出部5も筒状に形成され、ポンプ本体2により送液部3から送出される液体を、当該吐出部5に接続された、例えば弾性管に導いている。そのため吸入部4や吐出部5の軸方向の長さや外径は、接続される弾性管の種類や内径、吸入部4から流入する液体の圧力や吐出部5から吐出する液体の圧力などにより調整される。そして吸入部4の外周面には弾性管の抜け止め用の鍔部8が設けられ、吐出部5の外周面には弾性管の抜け止め用の鍔部9が設けられている。なお鍔部8,9の数や形状や位置は、接続される弾性管などの部品の種類や内径、流路7に流入する液体の圧力などにより調整され、変更されてもよい。
【0013】
蓋状部3-2は金属や樹脂材料で作成され、そのため吸入部4および吐出部5も金属や樹脂材料で作成されている。なお蓋状部3-2は、すべてが同一の材料で作成されていてもよく、例えば吸入部4および吐出部5を他と異なる材料で作成するなど異なる材料で作成されていてもよい。
【0014】
図2は
図1の枠Aの拡大断面図であり、主に吸入部4を示している。同図を参照して説明すると、吸入部4は、流路7の一部となる中空部11を内部に有し、この中空部11に、例えば水などの液体を流動させて、液体に溶解している気体からマイクロバブルやウルトラファインバブルなどの微細気泡を生成するものである。したがって吸入部4は、微細気泡を生成する気泡生成部としての機能を有している。また本実施形態における吸入部4内の中空部11や上述した吸入室6-1内の圧力は、大気圧、もしくは吸込み揚程分の負圧となっている。
【0015】
なお一般的な気泡の直径による分類では、微細気泡の直径が1μm~100μmの微細気泡がマイクロバブルと称され、微細気泡の直径が数十nm~1μm未満の微細気泡がウルトラファインバブルと称されている。ここで気泡の直径が数十nmになると、光の波長よりも小さくなるため視認することができなくなり、当該微細気泡を含んでいる液体が透明になる。また気泡の直径が数十nmの微細気泡は、浮力よりも粘性力が大きいため水中に長期溶存し、気泡の内圧が大気圧の30倍程度と高く、マイナスに帯電している。そのため、これらの微細気泡が圧壊する際に高温の熱と高い圧力が局所的に発生し、物体に付着したりしているプラスに帯電した異物に吸着して、当該異物を物体から引きはがして液体中に浮遊する、という特徴を有している。このような特徴から、微細気泡を含んでいる液体は、当該液体中の物体の洗浄能力に優れていることが周知となっている。
【0016】
中空部11は、縮小部12と、拡大部13と、細流路部14と、筒状部15で概ね構成される。縮小部12は、中空部11の入口である吸入口16から流入した液体を細流路部14に導くものである。縮小部12は、液体を円滑に細流路部14に導くために、流路7の上流側から下流側に向かって断面積が漸次縮小するように形成されるのが好ましく、本実施形態では縮小部12が略逆円錐形状に形成されるが、本発明はこれに限定されない。
【0017】
拡大部13は、液体に溶解している気体から微細気泡を生成するものである。細流路部14から拡大部13に流入した液体が、液体の流れFの方向に流路7の下流側に向かって流れるときに、この液体の周囲が大気圧以下に減圧されて負圧になり飽和蒸気圧まで達することで、この液体に溶解している気体がキャビテーションにより微細気泡となることにより液体中に微細気泡が生成される。拡大部13は、この現象を発生しやすくするために、流路7の上流側から下流側に向かって断面積が漸次拡大するように形成されるのが好ましく、本実施形態では拡大部13が略円錐形状に形成されるが、本発明はこれに限定されず、流路7の上流側から下流側に向かって断面積が拡大していればよい。また、この拡大部13の形状や流路7の断面積が拡大する度合いは、生成される微細気泡生成時の気泡生成量や気泡径により調整されてもよい。
【0018】
細流路部14は縮小部12と拡大部13との間に形成され、これらの縮小部12と拡大部13とを流体的に接続するものである。本実施形態では細流路部14が円柱状に形成されるが、本発明はこれに限定されない。細流路部14における液体の流速は細流路部14より上流側の流路7の圧力により決定され、すなわち当該液体の流量により決定されるが、この流量が同一である場合は、細流路部14における液体の流速は細流路部14の直径により決定される。このように細流路部14の直径に応じて圧力損失が変化するため、細流路部14の直径は、必要な液体の流量および圧力損失に基づいて決定されている。なお微細気泡生成時の気泡生成量や気泡径は、細流路部14から放出される液体の流速にも関係するため、細流路部14の直径は微細気泡生成時の気泡生成量や気泡径により調整され、変更されてもよく、細流路部14の直径は、拡大部13において液体が所定の流量で流れているときに当該液体の周囲の圧力が飽和蒸気圧以下になるよう設定されることが望ましい。
【0019】
筒状部15は、拡大部13から流入する液体を蓋状部本体6の吸入室6-1に導くものである。本実施形態では筒状部15が円筒状に形成され、筒状部15における中空部11の入口の直径が、拡大部13の出口の直径と略同一に形成されているが、本発明はこれに限定されず、拡大部13から流入する液体を円滑に吸入室6-1に導ければよい。
【0020】
図3は
図1の枠Bの拡大断面図であり、主に吐出部5を示している。同図を参照して説明すると、吐出部5は、吸入部4と同様に、流路7の一部となる中空部21を内部に有し、この中空部21に吐出室6-2から流入した液体を流動させて、液体内の微細気泡をさらに細分化するものである。したがって吐出部5は、微細気泡を細分化する気泡細分部としての機能を有している。
【0021】
中空部21は、中空部11と同様に、縮小部22と、拡大部23と、細流路部24と、筒状部25で概ね構成される。縮小部22、拡大部23、細流路部24および筒状部25の形状や作用は、吸入部4の縮小部12、拡大部13、細流路部14および筒状部15と同様であり、吐出室6-2から流入した液体が、縮小部22を通って細流路部24に導かれ、細流路部24から拡大部23に流入した液体が、液体の流れFの方向に流路7の下流側に向かって流れるときに、この液体の周囲が大気圧以下に減圧されて負圧になり飽和蒸気圧まで達することで、この液体内の微細気泡がキャビテーションによりさらに細分化される。そして、この液体が拡大部23から筒状部25に流入して、中空部21の出口である吐出口26から吐出部5に接続された、例えば弾性管に吐出される。
【0022】
本実施形態では、吐出部5の細流路部24の断面積が吸入部4の細流路部14の断面積よりも大きくなるように形成されている。このように構成することにより、吐出部5の細流路部24の断面積が吸入部4の細流路部14の断面積よりも小さい構成よりも微細気泡生成ポンプ1の消費動力を減少させ、液体を高圧にするための動力をより抑制して、効率的にキャビテーション効果を起こして微細気泡を発生および細分化することができる。
【0023】
ここで本願発明者らは、(1)吸入部4の中空部11が縮小部12と、拡大部13と、細流路部14と、筒状部15で構成され、吐出部5の中空部21では筒状部25のみで構成されて縮小部22、拡大部23、細流路部24を形成しない構成、(2)中空部21が縮小部22と、拡大部23と、細流路部24と、筒状部25で構成され、中空部11では筒状部15のみで構成されて縮小部12、拡大部13、細流路部14を形成しない構成、(3)中空部11,21が共に、縮小部12,22と、拡大部13,23と、細流路部14,24と、筒状部15,25で構成される構成で比較実験を行ない、微細気泡生成ポンプ1の消費動力および微細気泡の測定を行なった。なお、この測定では細流路部14,24の断面積を同一に形成し、後述する板部材31を配設せずに比較実験を行なった。
【0024】
この比較実験の結果、(1)の構成が、(2)の構成よりも、微細気泡生成ポンプ1に使用されているDCモータでの比較で消費動力が略10%減少することが確認され、また(2)の構成および(3)の構成が、当該DCモータでの比較で消費動力が同程度であることが確認された。これは微細気泡生成ポンプ1の流路7において、吸入部4側に縮小部12、拡大部13および細流路部14を形成すると、流路7の断面積が小さくなるにつれて、すなわち縮小部12の径が小さくなるにつれて中空部11の流路抵抗が大きくなるため、その分だけ吸入室6-1側に存在する液体の量が減少して送液部本体3-1内の液体の量が減少し、ポンプ本体2の駆動源であるDCモータの回転数が増加するために、DCモータの消費動力が減少して微細気泡生成ポンプ1の消費動力が減少するものと推測される。その一方で流路7において、吐出部5側に縮小部22、拡大部23、細流路部24を形成すると中空部21の流路抵抗が大きくなるため、その分だけ吐出室6-2側に存在する液体の量が増加して送液部本体3-1内の液体の量が増加し、DCモータの回転数が減少するために、DCモータの消費動力が増加して微細気泡生成ポンプ1の消費動力が増加すると推測される。したがって、吐出部5の細流路部24の断面積が吸入部4の細流路部14の断面積よりも大きくなるように形成すると、吐出部5の細流路部24の断面積が吸入部4の細流路部14の断面積よりも小さい構成よりも微細気泡生成ポンプ1の消費動力を減少できるとの効果を確認できた。
【0025】
また(1)の構成および(2)の構成は微細気泡の気泡径が同程度であることが確認され、(3)の構成が、(1)および(2)の構成よりも微細気泡の気泡径が小さくなることが確認された。したがって中空部11,21が共に、縮小部12,22と、拡大部13,23と、細流路部14,24と、筒状部15,25で構成されると、より微細気泡を細分化できるとの効果を確認できた。こうした比較実験の結果から、上記実施形態の微細気泡生成ポンプ1は、消費動力および微細気泡の細分化の両点で有位性が得られることが分かった。
【0026】
27は略筒状のリブであり、本実施形態では、吐出部5が蓋状部本体6から吐出室6-2内に突出してリブ27を形成している。また31は略円板状の板部材であり、液体の流れFを規制する規制板としての機能を有している。この板部材31はリブ27に圧入されて、吐出部5の中空部21と蓋状部本体6の吐出室6-2との間に、板部材31の面の外周が縮小部22の上流側端部に当接するように取付けられる。したがってリブ27は、板部材31を所定の位置で保持する保持部としての機能を有している。なお本実施形態では、リブ27は略筒状に形成されるが、板部材31の面の外周を縮小部22の上流側端部に当接するように保持できればよく、形状は限定されない。
【0027】
本実施形態では、縮小部22の上流側端部が吐出室6-2の内面と略面一になるように吐出部5や蓋状部本体6が形成されている。そのため蓋状部本体6の製造時では、吐出室6-2の内面における縮小部22の上流側端部の位置に板部材31の後述する下流側の面32Bが保持されるようにリブ27を形成すればよく、例えば蓋状部本体6とリブ27とを別に作成して後で接合するように製造可能であるため、蓋状部本体6の製造時におけるリブ27の形成を容易にすることができる。また吐出室6-2の内面と板部材31の面とを比較することで、板部材31がリブ27にどのくらい圧入されたかを推測できるため、吐出室6-2の内面の位置を、板部材31と縮小部22の上流側端部との当接の目安および板部材31が傾いて圧入されていないことの目安とすることができ、確実に所定の位置に板部材31を取付けることができる。
【0028】
図4(A)(B)(C)は、板部材31の側面図、上面図および(B)のE-E断面図を示している。板部材31は、略円板状の板部材本体32の外周に沿って偏心長孔33が複数個設けられ、また板部材本体32の外周面には、板部材本体32の軸方向に沿って細長突起状の抜け止め部34が複数個設けられて形成される。
【0029】
偏心長孔33は板部材本体32を貫通して設けられた通過孔であり、板部材本体32の上流側の面32Aと下流側の面32Bとで偏心長孔33の開口の位置を板部材本体32の略周方向にずらして穿設されている。そのため偏心長孔33を通過した液体の流れを螺旋状にさせて旋回流にし、かつ流速を増加させることで、細流路部24から拡大部23に流入した液体が流路7の下流側に向かって流れるときに発生する負圧の領域を増加させることができる。その結果、液体中に生成される微細気泡の気泡径をさらに微細なものにすることができ、かつ微細気泡生成時の気泡生成量を増加させることができる。なお偏心長孔33の開口の位置をずらす量は、それぞれの偏心長孔33で略同一であることが好ましく、そのため偏心長孔33の形状は、それぞれの偏心長孔33で略同一であり、これらの偏心長孔33が等間隔で板部材本体32に設けられることが好ましい。また
図3に示されるように、下流側の面32Bにおける偏心長孔33の開口の位置が縮小部22の上流側の外径近傍になるように偏心長孔33が設けられることが好ましく、そのため板部材本体32は、縮小部22の上流側の外径よりも直径が大きく形成されることが好ましい。また本実施形態では長孔形状の偏心長孔33が4つ設けられているが、偏心長孔33の形状や数は微細気泡生成時の気泡生成量や気泡径により調整され、変更されてもよい。
【0030】
抜け止め部34は、板部材31をリブ27に圧入したときに、リブ27内面と接触することで板部材本体32を所定の位置に保持するものであり、板部材31がリブ27の上下方向や周方向に移動することを抑制している。本実施形態の抜け止め部34は、断面は半球状であり、抜け止め部34の上流側の端部および下流側の端部がR形状に形成されている。なお本実施形態では抜け止め部34が板部材本体32の外周面に4つ設けられ、これらの抜け止め部34の形状は略同一であり、等間隔で板部材本体32の外周面に設けられているが、板部材本体32がリブ27の所定の位置に保持されるように抜け止め部34がリブ27内面と接触すればよく、抜け止め部34の形状や数は、板部材本体32やリブ27の形状、吐出室6-2から縮小部22に流入する液体の流量などにより調整され、変更されてもよい。
【0031】
次に
図1~
図4を参照して、上記構成の微細気泡生成器1についてその作用を説明する。微細気泡生成器1の電源を投入してポンプ本体2を駆動させると、矢印で示されるように、液体が吸入部4の吸入口16から中空部11に流入し、この中空部11の縮小部12を通って細流路部14に導かれる。そして細流路部14から拡大部13に流入した液体が流路7の下流側に向かって流れるときに、この液体の周囲が減圧されて飽和蒸気圧まで達し、この液体に溶解している気体がキャビテーションにより微細気泡となることにより液体中に微細気泡が生成される。その後、この液体が筒状部15を通って吸入室6-1に流入し、送液部本体3-1内に導かれる。
【0032】
そして、ポンプ本体2により送液部本体3-1から吐出室6-2に送出された液体が、液体の流れFの方向に流路7の下流側に向かって流れると、板部材31の板部材本体32に衝突し、また偏心長孔33から吐出部5の中空部21に流入する。偏心長孔33を通過した液体は、螺旋状に流れが変化して旋回流になり、液体の流速が増加する。そして、この液体が縮小部22を通って細流路部24に導かれて拡大部23に流入すると、当該液体の周囲が減圧されて飽和蒸気圧まで達し、液体内の微細気泡がキャビテーションによりさらに細分化される。そして矢印Fで示されるように、さらに気泡径が小さくなった微細気泡を含有する液体が筒状部25を通って吐出口26から吐出される。
【0033】
以上のように、本実施形態の微細気泡生成ポンプ1は、液体としての、例えば水を吸入する吸入部4および水を吐出する吐出部5が設けられ、水が流動する流路7が形成され、吸入部4が、流路7の上流側から下流側に向かって断面積が縮小する縮小部12と、上流側から下流側に向かって断面積が拡大する拡大部13と、縮小部12と拡大部13との間に形成された細流路部14と、を有する構成としている。そのため微細気泡生成ポンプ1では、簡易な構成で、微細気泡生成ポンプ1において液体を高圧にするための消費動力を抑制し、効率的にキャビテーション効果を起こして微細気泡を発生させることができる。
【0034】
また本実施形態の吐出部5が、縮小部22と、拡大部23と、細流路部24と、を有する構成としており、そのため簡易な構成で、水の中に含まれる微細気泡をさらに細分化することができる。
【0035】
また本実施形態の微細気泡生成ポンプ1は、吐出部5の細流路部24の断面積が吸入部4の細流路部14の断面積よりも大きい構成としており、そのため、より少ない消費動力で効率的にキャビテーション効果を起こして微細気泡を発生および細分化することができる。
【0036】
また本実施形態の吐出部5は、水の流れFを規制する規制板としての板部材31をさらに有し、板部材31が吐出部5の縮小部22の上流側に配設され、板部材31には、水が通過する通過孔としての偏心長孔33が形成され、偏心長孔33の上流側の開口と下流側の開口の位置がずれている構成としている。そのため簡易な構成かつ製造性の高い板部材31で水の流速を増加させ、かつ螺旋状にして縮小部22に流入させることができ、水中に生成される微細気泡の気泡径をさらに微細なものにすることができ、かつ微細気泡生成時の気泡生成量を増加させることができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば本実施形態の各部の構成や形状は、図示したものに限定されず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 微細気泡生成ポンプ
4 吸入部
5 吐出部
7 流路
12,22 縮小部
13,23 拡大部
14,24 細流路部
31 板部材(規制板)
33 偏心長孔(通過孔)
F 水の流れ(液体の流れ)