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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066160
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】透過フーリエ変換赤外分光分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3563 20140101AFI20240508BHJP
【FI】
G01N21/3563
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175524
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】小島 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】隅倉 光博
(72)【発明者】
【氏名】倉部 美彩子
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB01
2G059BB09
2G059CC01
2G059CC12
2G059DD01
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE09
2G059EE12
2G059HH01
2G059MM01
2G059MM04
(57)【要約】
【課題】液体分散媒による試料の希釈を必要しない透過フーリエ変換赤外分光分析方法の提供。
【解決手段】粒子状物質を含む試料を空気又は不活性ガスに分散して測定試料を調製する工程と、前記測定試料に対して赤外光を照射し、そのとき得られる吸収スペクトルに基づいて前記粒子状物質に含まれる成分を分析する工程とを備える透過フーリエ変換赤外分光分析方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状物質を含む試料を空気又は不活性ガスに分散して測定試料を調製する工程と、
前記測定試料に対して赤外光を照射し、そのとき得られる吸収スペクトルに基づいて前記粒子状物質に含まれる成分を分析する工程と
を備える透過フーリエ変換赤外分光分析方法。
【請求項2】
前記測定試料を調製する工程において、前記粒子状物質を含む試料と前記空気又は前記不活性ガスとをセルに供給する、請求項1に記載の透過フーリエ変換赤外分光分析方法。
【請求項3】
前記粒子状物質が、岩石、セメント、及び有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の透過フーリエ変換赤外分光分析方法。
【請求項4】
前記得られる吸収スペクトルのうち波数2100cm-1以下の部分に基づいて前記粒子状物質に含まれる成分を分析する、請求項1又は2に記載の透過フーリエ変換赤外分光分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過フーリエ変換赤外分光分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フーリエ変換赤外分光(FTIR;Fourier Transform Infrared Spectroscopy)分析とは、光源から発生した赤外光を試料に照射し、透過又は反射した光のスペクトル(IRスペクトル)を測定することで、分子の構造及び官能基の情報を得ることができる分析方法である。FTIR分析は、物質の定性及び同定に活用できるほか、固形物の異物分析などにおいて有効な手段であり、広く利用されている。
【0003】
FTIR分析によって固形物を測定する場合には、全反射(ATR;Attenuated total reflection)法が簡便であり、異物分析などによく利用される。ATR法は、高屈折率のプリズムを試料表面に密着させることで、試料からの反射スペクトルを得る方法であるが、プリズムと試料の密着性が重要となるため、粒子状物質を測定する際にはピーク強度が安定せず、無理に密着させるとプリズムを痛めてしまう恐れがある。そのため、粉体試料を測定する際には拡散反射(DR;Diffuse reflection)法が用いられることが多い。これは粉体に入射した光が試料内に侵入・透過・吸収・反射して様々な方向に照射される拡散反射光(散乱光)を測定して、IRスペクトルを得る方法である。
【0004】
特許文献1には、プロセスの異常を確実に検知し、異常の要因分析を容易に行うことができるFTIRを用いたプロセス監視方法として、セルに供給される試料に対して赤外光を照射し、そのとき得られる吸収スペクトルに基づいて試料中に含まれる成分の濃度を定量分析するFTIRを用いたプロセス監視方法において、前記セルとしてセル長が異なるものを複数個互いに並列に設け、通常測定時に見られない指示異常を検出したとき、セル長の異なる他のセルに切り換えることにより、測定を続行できるようにしたことを特徴とするFTIRを用いたプロセス監視方法、及びセルに供給される試料に対して赤外光を照射し、そのとき得られる吸収スペクトルに基づいて試料中に含まれる成分の濃度を定量分析するFTIRを用いたプロセス監視方法において、前記セルの前段にサンプリングユニットを設け、通常測定時に見られない指示異常を検出したとき、セルに対して希釈された試料を供給することにより、測定を続行するようにしたことを特徴とするFTIRを用いたプロセス監視方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-033346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ATR法以外の方法でFTIR分析を行う場合には、適切なIRスペクトルを得るために赤外光を透過する物質(例えばKBr、以下分散媒)によって適当な濃度に希釈する必要がある。
図1は、岩石の磨砕物を臭化カリウム(KBr)で20倍に希釈して圧縮成形した試料を透過FTIR分析で分析した結果を示すチャートである。本来であれば1,000cm-1付近にピークが現れるはずが、吸光度が4.0(透過率約0.01%)を超えているために、図1ではピークとして検出されていない。
図2は、図1で使用したものと同じ岩石の磨砕物を臭化カリウム(KBr)で100倍に希釈して圧縮成形した試料を透過FTIR分析で分析した結果を示すチャートである。図2では、適切な希釈によって1,000cm-1付近に明瞭なピークが観察できている。このように、適切なFTIR分析のためには試料の希釈が重要である。しかし、大量の試料を分析したい場合には希釈のための物質(例えばKBr)が大量に必要になってしまう他、均一な攪拌が難しい。
可視光やUVでの濁度や吸光度の測定では、試料を水などの溶媒で希釈できる。一方、水などの溶媒は赤外光を吸収するため、FTIR分析の際は溶媒で希釈することができない。油分の分析では溶媒で希釈した試料を液体セルに入れて透過法により分析することがあるが、これは試料が溶媒で希釈しても化学的な組成が変化しないために利用できる方法であり、溶媒を加えることで化学反応が生じてしまう物質(例えば岩石、セメント、又は小麦粉)もそのままの状態で分析できる。
【0007】
特許文献1に記載されたFTIRを用いたプロセス監視方法は、セルに供給された試料の異常をFTIRによって感知する方法であり、試料濃度が濃い場合には短い光路長のセルに交換したり、試料を希釈したりして分析を可能にしている。特許文献1に記載された方法は、主に液体(石油生成物など)を対象としているため、溶媒で希釈して測定できる。しかし、岩石のような固形分は溶媒の中には水や溶媒を加えてしまうと化学反応により分子構造が変化する恐れがあるほか、溶媒内に均一に分散させることが難しいため、特許文献1に記載された方法では測定できない。
【0008】
本発明は、液体分散媒による試料の希釈を必要しない透過フーリエ変換赤外分光分析方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を含む。
[1] 粒子状物質を含む試料を空気又は不活性ガスに分散して測定試料を調製する工程と、
前記測定試料に対して赤外光を照射し、そのとき得られる吸収スペクトルに基づいて前記粒子状物質に含まれる成分を分析する工程と
を備える透過フーリエ変換赤外分光分析方法。
[2] 前記測定試料を調製する工程において、前記粒子状物質を含む試料と前記空気又は前記不活性ガスとをセルに供給する、[1]に記載の透過フーリエ変換赤外分光分析方法。
[3] 前記粒子状物質が、岩石、セメント、及び有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]又は[2]に記載の透過フーリエ変換赤外分光分析方法。
[4] 前記得られる吸収スペクトルのうち波数2100cm-1以下の部分に基づいて前記粒子状物質に含まれる成分を分析する、[1]~[3]のいずれかに記載の透過フーリエ変換赤外分光分析方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体分散媒による試料の希釈を必要しない透過フーリエ変換赤外分光分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】岩石の磨砕物を臭化カリウムで20倍に希釈して圧縮成形した試料のIR吸収スペクトルを示すチャートである。
図2】岩石の磨砕物を臭化カリウムで100倍に希釈して圧縮成形した試料のIR吸収スペクトルを示すチャートである。
図3】本発明の透過フーリエ変換赤外分光分析の一実施形態を説明する概念図である。
図4】実験例1の試料のIR吸収スペクトルを示すチャートである。
図5】実験例2の試料のIR吸収スペクトルを示すチャートである。
図6】実験例3の試料のIR吸収スペクトルを示すチャートである。
図7】フェナントレンのIR吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、透過法によるフーリエ変換赤外分光分析を「透過フーリエ変換赤外分光分析」という。
本発明において、数値範囲を「X~Y」(但し、X及びYはいずれも実数であるとする。)は「X以上Y以下」を意味する。すなわち、「X~Y」はX及びYを含む閉区間を意味する。また、「X以上」はXを含み、「Y以下」はYを含む。
【0013】
以下では本発明の実施形態について説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更が可能である。
【0014】
[透過フーリエ変換赤外分光分析方法]
本発明の透過フーリエ変換赤外分光分析方法は、粒子状物質を含む試料を空気又は不活性ガスに分散して測定試料を調製する工程と、前記測定試料に対して赤外光を照射し、そのとき得られる吸収スペクトルに基づいて前記粒子状物質に含まれる成分を分析する工程とを備える透過フーリエ変換赤外分光分析方法である。
【0015】
図3は、本発明の透過フーリエ変換赤外分光分析方法の一実施形態を説明する概念図である。
本実施形態の透過フーリエ変換赤外分光分析方法は、フーリエ変換赤外分光光度計1において、粒子状物質を含む試料14aを空気又は不活性ガス14bに分散して測定試料14を調製する工程と、測定試料14に対して光源11からの赤外光を照射し、透過光を検出器13で測定する。測定試料14に照射された赤外光の一部は粒子状物質に含まれる分子の振動や回転運動に基づき吸収される。分子の振動や回転の状態を変化させるのに必要なエネルギー(赤外光の波長)は、物質の化学構造によって異なるため、物質に吸収された赤外光を測定することで、化学構造や状態に関する情報を得ることができる。通常、分析結果は、横軸に波数(又は波長(波数の逆数))、縦軸に吸光度(又は透過率)をプロットした赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)として得られる。IRスペクトルは、物質固有のパターンを示すことから、物質の構造解析や定性分析に有用である。縦軸の吸光度は物質の濃度や厚みに比例するため、ピークの高さや面積から定量分析を行うこともできる。
FTIRは、干渉計を使用し、非分散で全波長を同時に検出する。それから、コンピュータ上でフーリエ変換を行い、各波長成分を計算する。FTIRで用いるフーリエ分光法は、2光束干渉計を分光に利用したものの総称である。構成としては、半透鏡と2枚の反射鏡(1枚は固定、1枚は可動)になる。光源からの赤外光は、平行光束で干渉計に導かれ、半透鏡に斜入射され、透過光と反射光の二つの光束に分割される。二つの光束は、固定鏡と移動鏡で反射され半透鏡に戻り、再び合成され、干渉波を発生させることができる。移動鏡の位置(光路差)により異なる光の干渉波が得られ、各位置における干渉波の信号強度から計算で、各波数成分の光の強度に分離できる。この計算がフーリエ変換であり、コンピュータで高速に処理できる。つまり、回折格子の代わりに、干渉波を計算で分光し、赤外スペクトルを測定することができる。
FTIRは、一般的にシングルビームの測定である。このため、試料室に試料がある状態と思料のない状態(バックグラウンド)の二つの測定から試料の透過スペクトルを得る。試料、バックグラウンドともに、得られたインターフェログラムをフーリエ変換して、シングルビームスペクトル(SB)を得る。透過スペクトルは以下の式により算出する。
(試料のSB)/(バックグラウンドのSB)×100=透過スペクトル
透過スペクトルでは、各素子のエネルギー特性や、HO、COの吸収がキャンセルされる。
FTIRを採用した利点として、例えば、移動鏡を動かすだけでIRスペクトルが測定できるため多波長同時検出が可能である、スリットを用いず、検出器に到達するエネルギーが大きくなり、結果としてS/Nが高くなって高スループットが得られる、移動鏡の移動距離を伸ばすことで波数分解能を上げられため、波数分解能が高い、光源、ビームスプリッター、検出器、窓板の交換により、遠赤外から可視まで測定波数域を広げることができ、測定波数域の拡張が可能といった点が挙げられる。
【0016】
光源11からの赤外光は特に限定されないが、一般に中赤外光と呼ばれる赤外光が使用され、波数で4000~400cm-1、波長で2.5~25μmの赤外光が好ましい。
【0017】
前記粒子状物質は、例えば粒子径が0.01mm以下の物質である。固体であってもよいし液体であってもよい。前記粒子状物質は、岩石、セメント、及び有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。前記有機化合物としては、フェナントレン、ベンゼン、及びフェノール等の芳香族化合物、エタノール、メタノール、及びフェノール等のアルコール、並びにヘキサン、オクタン、及びデカン等の飽和炭化水素などが挙げられる。
前記不活性ガスは、例えば窒素ガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス、ネオンガス等が挙げられる。前記粒子状物質を含む試料を分散させる分散媒としては、低コストで入手が容易であることから空気が好ましい。
【0018】
本実施形態の透過フーリエ変換赤外分光分析方法では、測定試料14を調製する際に、セル12内で粒子状物質を含む試料14aを空気又は不活性ガス14bに分散することが好ましい。この場合、このセル12(例えば光路長1cm、セル容量5mLのもの)にごく少量(例えば10mg程度)の粒子状物質を含む試料14aと空気又は不活性ガス14bを加え、セル12の上部をフィルム等で密閉した上でよく振るなどして試料をセル12内で分散させることが好ましい。そうすることで空気又は不活性ガス14bで希釈された粒子状物質を含む試料14aを赤外光が通過し、適切な透過率での測定が可能になる。セル12に入れる粒子状物質を含む試料14aの量やセル12の大きさは適宜設定してよい。
【0019】
セル12としては、赤外光の透過率が高いことから、石英ガラス製のセル(石英セル)が好ましい。ただし、石英セルでは波数2100cm-1超(波長で約4.76μm未満)での吸収が大きくなるため、得られるIRスペクトルのうち波長2100cm以上(又は、波数2100cm-1以下)の部分に基づいて前記粒子状物質に含まれる成分を分析することが好ましい。
【0020】
[作用効果]
本発明の透過フーリエ変換赤外分光分析方法では、粒子状物質を含む試料の希釈のために空気又は不活性ガスを使用しているため、試料をKBr等の分散媒で希釈する必要が無く、粒子状物質を迅速に分析できる。
【実施例0021】
以下では実験例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は後述する実施例に限定されるものではない。
なお、実験例1は比較例であり、実験例2及び実験例3は実施例である。
【0022】
[共通事項]
測定装置:
フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR-8400,島津製作所社製)
セル:
石英セル(石英ガラス製,光路長:1cm,容量:5mL;ASONE,4525-003)
【0023】
[実験例1]
岩石(関東地方の山岳トンネル工事で発生した泥岩)の一部を採取し、これを磨砕して粉体試料を調製した。調製した粉体試料を臭化カリウムを用いて体積基準で20倍希釈することにより測定試料を調製した。調製した測定試料を石英セル(上記)に入れ、フーリエ変換赤外分光光度計により測定した。
測定結果のチャートを図4に示す。全体に吸光度が高く、特に3400cm-1付近、1000cm-1付近、500cm-1付近の吸光度が高く、ピークが適切に測定できていなかった。
【0024】
[実験例2]
実験例1で使用した岩石と同じ岩石の一部を採取し、これを磨砕して粉体試料を調製した。石英セル(上記)をに、調製した粉体試料を耳かき一杯程度(約10mg)入れ、パラフィンフィルムで密閉してから上下に激しく撹拌して粉体試料を石英セル内で空気中に分散させた。分散後、直ちにこの石英セルをフーリエ変換赤外分光光度計に装着し、素早く測定した。
測定結果のチャートを図5に示す。
図4のAで指し示す部分と図5のBで指し示す部分は波数3100~3500cm-1の部分であるが、図4のAで指し示す部分は吸光度が高く適切に測定できていなかったのに対し、図5のBで指し示す部分は吸光度が1未満になっており滑らかなピークが確認できた。
なお、石英ガラスは遠赤外線を吸収するため、図5のチャートでは2100cm-1よりも波数が大きい赤外線は検出できていないが、図3のチャートのように石英セルを用いずに試料を直接測定するか、又は赤外線を吸収することなく透過する材料で構成されたセルを用いて測定することで、2100cm-1よりも大きい波数領域も測定できる。
【0025】
[実験例3]
フェナントレン粉末(富士フィルム和光純薬社製)を粉体試料として用いた。石英セル(上記)に粉体試料を耳かき一杯程度(約10mg)入れ、パラフィンフィルムで密閉してから上下に激しく撹拌して粉体試料を石英セル内で空気中に分散させた。分散後、直ちにこの石英セルをフーリエ変換赤外分光光度計に装着し、素早く測定した。また、石英セルに粉体試料を入れないブランクを準備して、同様に測定を行った。
測定結果のチャートを図6に示す。
図6中、ブラック線はブランク(空気及び石英ガラスの吸光度)を示し、グレー線はフェナントレン粉末の吸光度を示す。ブランク(ブラック線)では2100cm-1よりも波数が大きい領域では石英ガラスの吸収スペクトルが現れた。フェナントレン粉末(グレー線)では3000~3100cm-1に特徴的な吸収スペクトルを有していた。
【0026】
[参考例1]
図7は産業技術総合研究所で公開されている有機化合物のスペクトルデータベースSDBSより引用した、臭化カリウムを分散媒としたフェナントレンの透過IRスペクトルである(URL https://sdbs.db.aist.go.jp/sdbs/cgi-bin/direct_frame_disp.cgi?sdbsno=870&spectrum_type=IR&fname=NIDA395)。3000~3100cm-1に特徴的な吸収スペクトルを有しており、今回の測定方法で同様のピークが測定出来ていることが分かる。なお、図6の縦軸は吸光度を示し、図7の縦軸は透過率を示しているためスペクトルの上下が逆になっている。
【符号の説明】
【0027】
1 フーリエ変換赤外分光光度計
11 光源
12 セル
13 検出器
14 測定試料
14a 粒子状物質を含む試料
14b 空気又は不活性ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7