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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066168
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ピンホール検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/40 20060101AFI20240508BHJP
   G01N 27/92 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G01M3/40 A
G01N27/92 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175540
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000110952
【氏名又は名称】ニッカ電測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】上村 久仁男
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】村中 進
(72)【発明者】
【氏名】菊地 誠
【テーマコード(参考)】
2G041
2G067
【Fターム(参考)】
2G041AA08
2G041NA02
2G067AA44
2G067BB30
2G067DD23
2G067EE01
(57)【要約】
【課題】導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物に高電圧を印加して精度良くピンホールを検査するピンホール検査装置を提供する。
【解決手段】本発明のピンホール検査装置10は、導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物のピンホールを検出するピンホール検査装置10において、
出力インピーダンスが2メガオーム以上の高電圧電源12と、
一次側が前記高電圧電源12に接続し変圧する高電圧トランス14と
前記高電圧トランス14の二次側で高電圧を前記検査物に印加する一対の電極(16a,16b)と、
前記高電圧トランス14の二次側で前記検査物のピンホールに印加された電圧を測定する電圧測定部18と、
前記電圧測定部18の測定値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電圧基準値と比較して前記ピンホールの有無を判定する判定処理部20を備えたことを特徴としている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物のピンホールを検出するピンホール検査装置において、
出力インピーダンスが2メガオーム以上の高電圧電源と、
一次側が前記高電圧電源に接続し変圧する高電圧トランスと
前記高電圧トランスの二次側で高電圧を前記検査物に印加する一対の電極と、
前記高電圧トランスの二次側で前記検査物のピンホールに印加された電圧を測定する電圧測定部と、
前記電圧測定部の測定値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電圧基準値と比較して前記ピンホールの有無を判定する判定処理部を備えたことを特徴とするピンホール検査装置。
【請求項2】
導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物のピンホールを検出するピンホール検査装置において、
出力インピーダンスが2メガオーム以上の高電圧電源と、
一次側が前記高電圧電源に接続し変圧する高電圧トランスと
前記高電圧トランスの二次側で高電圧を前記検査物に印加する一対の電極と、
前記高電圧トランスの二次側で前記検査物のピンホールに印加された電圧を測定する電圧測定部と、
前記検査物を流れる前記ピンホールに起因する電流を測定する電流測定部を備え、
前記判定処理部は、前記電圧測定部の測定値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電圧基準値と比較して、および前記電流測定部の測定値の積分値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電流積分値の基準値と比較して前記ピンホールの有無を判定することを特徴とするピンホール検査装置。
【請求項3】
導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物のピンホールを検出するピンホール検査装置において、
出力インピーダンスが2メガオーム以上の高電圧電源と、
一次側が前記高電圧電源に接続し変圧する高電圧トランスと
前記高電圧トランスの二次側で高電圧を前記検査物に印加する一対の電極と、
前記高電圧トランスの二次側で前記検査物のピンホールに印加された電圧を測定する電圧測定部と、
前記検査物を流れる電流を測定する電流測定部を備え、
前記判定処理部は、前記電圧測定部の測定値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電圧基準値と比較して、および前記電流測定部の電流測定値のピーク値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因するピーク値の基準値と比較して前記ピンホールの有無を判定することを特徴とするピンホール検査装置。
【請求項4】
請求項2及び請求項3に記載されたピンホール検査装置であって、
前記判定処理部は、前記電圧測定部の測定値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電圧基準値と比較して、および前記電流測定部の測定値の積分値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電流積分値の基準値と比較して、
又は前記電圧測定部の測定値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電圧基準値と比較して、および前記電流測定部の電流測定値のピーク値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因するピーク値の基準値と比較して
前記ピンホールの有無を判定することを特徴とするピンホール検査装置。
【請求項5】
請求項2に記載されたピンホール検査装置であって、
前記判定処理部は、前記電圧測定部の測定値及び前記電流測定部の電流測定値を乗算した電力値と、あらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電力値の基準値と比較して前記ピンホールの有無を判定することを特徴とするピンホール検査装置。
【請求項6】
請求項2に記載されたピンホール検査装置であって、
前記判定処理部は、前記電圧測定部の測定値をアナログデジタル変換して差分演算した値及び前記電流測定部の電流測定値をアナログデジタル変換した値を乗算した電力値と、あらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電力値の基準値と比較して前記ピンホールの有無を判定することを特徴とするピンホール検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物に高電圧を印加してピンホールを検査するピンホール検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物のピンホール検査は、検査物に高電圧を印加して、一対の電極間で検査物に流れるピンホールに起因する電流を測定しピンホールの有無を判定していた(特許文献1)。
測定した電流には放電ノイズも重畳しているため、電流の積分値が用いられている。
図12は検査物の良品及び不良品(ピンホールあり)の電流電圧変化値とその積分値を示す説明図であり、(A)は良品の電流電圧変化値(電流値)、(B)は(A)の積分値、(C)は不良品の電流電圧変化値(電流値)、(D)は(C)の積分値を示している。(A)及び(B)は検査物と電極の距離が短い場合の良品である。一方、(C)及び(D)は検査物と電極が少し離れたときの電流値及び積分値である。この場合、電流値は良品のピーク値が6.0ボルトであり(A参照)、不良品のピーク値は良品の約3倍の15.0ボルトであるが(C参照)、積分値は良品のピーク値が0.6ボルトであるのに対して(B参照)、不良品は良品と同等もしくはそれ以下の値(0.6弱)となってしまう(D参照)。このように積分値を用いて測定した場合には、不良品であるにもかかわらず良品と判定してしまう可能性があった。このため従来行われている検査物に流れる電流のみではピンホールを正確に検出できないことがあった。
【0003】
また従来、装置の初期設定等で高電圧表示の校正のために二次側の電圧を測定していた。高電圧トランスの二次側は数万ボルトの電圧がかかり危険を伴うためピンホール検査には利用されていなかった。
ここで、特許文献2に開示の試験方法では、ピックアップコイルとして変圧器の一次側を接続し、二次側の電圧変動を検出すれば、ピンホールまたはクラックの有無が確実に検知されると記載されている(第4段落参照)。しかし変圧器の二次側は電圧を直接測定することは危険を伴うため、一次側の測定電圧を二次側の測定電圧と置き換えて測定するということを意味している。このケースは二次側が長時間短絡した場合(大きなピンホールなど)に適用できる例であり、実際の微小なピンホールは、振幅の小さい高速パルス(一例として2マイクロ秒程度)のために高電圧トランスの分布容量(Co)で高速信号は減衰してしまい一次側では測定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-182548号公報
【特許文献2】特開昭48-45250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物に高電圧を印加して精度良くピンホールを検査するピンホール検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物のピンホールを検出するピンホール検査装置において、
出力インピーダンスが2メガオーム以上の高電圧電源と、
一次側が前記高電圧電源に接続し変圧する高電圧トランスと
前記高電圧トランスの二次側で高電圧を前記検査物に印加する一対の電極と、
前記高電圧トランスの二次側で前記検査物のピンホールに印加された電圧を測定する電圧測定部と、
前記電圧測定部の測定値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電圧基準値と比較して前記ピンホールの有無を判定する判定処理部を備えたことを特徴とするピンホール検査装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、本発明者が従来行われていなかった検査物に印加される高電圧を測定したところ、良品と不良品での放電による高電圧降下の違いを見出した知見に基づいて、高インピーダンスの高電圧電源を用いることにより負荷の変動に合わせて電圧も変動するため、従来の低インピーダンスの高電圧電源よりもピンホールに起因する変動を検出し易くなった。またデジタル計測器の発達により、より小さく高速な信号を計測することができるようになり、正確なピンホール検査を実現できる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物のピンホールを検出するピンホール検査装置において、
出力インピーダンスが2メガオーム以上の高電圧電源と、
一次側が前記高電圧電源に接続し変圧する高電圧トランスと
前記高電圧トランスの二次側で高電圧を前記検査物に印加する一対の電極と、
前記高電圧トランスの二次側で前記検査物のピンホールに印加された電圧を測定する電圧測定部と、
前記検査物を流れる前記ピンホールに起因する電流を測定する電流測定部を備え、
前記判定処理部は、前記電圧測定部の測定値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電圧基準値と比較して、および前記電流測定部の測定値の積分値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電流積分値の基準値と比較して前記ピンホールの有無を判定することを特徴とするピンホール検査装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、電圧の高周波成分のみではピンホール有りと判断できない場合に電流の積分値も用いることにより高精度のピンホール検出が実現できる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物のピンホールを検出するピンホール検査装置において、
出力インピーダンスが2メガオーム以上の高電圧電源と、
一次側が前記高電圧電源に接続し変圧する高電圧トランスと
前記高電圧トランスの二次側で高電圧を前記検査物に印加する一対の電極と、
前記高電圧トランスの二次側で前記検査物のピンホールに印加された電圧を測定する電圧測定部と、
前記検査物を流れる電流を測定する電流測定部を備え、
前記判定処理部は、前記電圧測定部の測定値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電圧基準値と比較して、および前記電流測定部の電流測定値のピーク値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因するピーク値の基準値と比較して前記ピンホールの有無を判定することを特徴とするピンホール検査装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、電圧の高周波成分のみではピンホール有りと判断できない場合に電流のピーク値も用いることにより高精度のピンホール検出が実現できる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第2及び第3の手段であって、前記判定処理部は、前記電圧測定部の測定値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電圧基準値と比較して、および前記電流測定部の測定値の積分値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電流積分値の基準値と比較して、
又は前記電圧測定部の測定値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電圧基準値と比較して、および前記電流測定部の電流測定値のピーク値とあらかじめ定めた前記ピンホールに起因するピーク値の基準値と比較して
前記ピンホールの有無を判定することを特徴とするピンホール検査装置を提供することにある。
上記第4の手段によれば、電圧の高周波成分のみではピンホール有りと判断できない場合に電流の積分値またはピーク値も用いることにより高精度のピンホール検出が実現できる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第5の手段として、第2の手段であって、前記判定処理部は、前記電圧測定部の測定値及び前記電流測定部の電流測定値を乗算した電力値と、あらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電力値の基準値と比較して前記ピンホールの有無を判定することを特徴とするピンホール検査装置を提供することにある。
上記第5の手段によれば、電圧値と電流値を乗算した電力を用いることにより検出の信頼性を高めることができる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための第6の手段として、第2の手段であって、前記判定処理部は、前記電圧測定部の測定値をアナログデジタル変換して差分演算した値及び前記電流測定部の電流測定値をアナログデジタル変換した値を乗算した電力値と、あらかじめ定めた前記ピンホールに起因する電力値の基準値と比較して前記ピンホールの有無を判定することを特徴とするピンホール検査装置を提供することにある。
上記第6の手段によれば、高電圧電極とアースが近くにある装置構成のときに、検査物を介さずに直接高電圧電極からアースに電流が流れる沿面放電の可能性がある。この場合には検査物に流れる電流も監視することにより検査物に電流が流れて高電圧が低下したらピンホール有りと正しく判定できる。また良品と不良品の電流測定値が同じ場合であっても、高電圧変化値ΔVには違いが生じることがある。
従って電圧値と電流値を乗算した電力を用いることにより検出の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物に高電圧を印加して精度良くピンホールを検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のピンホール検査装置の構成概略図である。
図2】高電圧分圧回路の説明図である。
図3】実施例1の判定処理部の説明図である。
図4】検査物の良品及び不良品(ピンホールあり)の高電圧分圧回路の高電圧波形とハイパス回路・微分回路を通過後に整流した高電圧変化値ΔVを示す説明図である。
図5】実施例2の判定処理部の説明図である。
図6】検査物の良品及び不良品(ピンホールあり)の電流電圧変化値とその積分値とハイパス回路・微分回路を通過後に整流した高電圧変化値ΔVを示す説明図である。
図7】実施例3の判定処理部の説明図である。
図8】実施例4の判定処理部の説明図である。
図9】実施例5の判定処理部の説明図である。
図10】高電圧波形から電圧変動の取り出しの説明図である。
図11】実施例6の判定処理部の説明図である。
図12】検査物の良品及び不良品(ピンホールあり)の電流電圧変化値とその積分値を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のピンホール検査装置の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。本発明の検査物は、薬品のアンプル、バイアル、食品のソーセージ、レトルト食品などの導電性内容物をフィルム、ガラス等の絶縁物で密封した包装体の容器を対象としている。
【0015】
[ピンホール検査装置10]
図1は、本発明のピンホール検査装置の構成概略図である。本発明のピンホール検査装置10は、導電性内容物を絶縁体で密封した検査物11のピンホールを検出するピンホール検査装置10において、出力インピーダンスが2メガオーム以上の高電圧電源12と、一次側が高電圧電源12に接続し変圧する高電圧トランス14と、高電圧トランス14の二次側で高電圧を検査物11に印加する一対の電極(16a,16b)と、高電圧トランス14の二次側で検査物11のピンホールに印加された電圧を測定する電圧測定部18と、電圧測定部18の測定値とあらかじめ定めたピンホールに起因する電圧基準値と比較してピンホールの有無を判定する判定処理部20a~20fを備えている。なお一次側の電圧測定V1は従来構成の測定部であり、本発明では省略できる。
【0016】
高電圧電源12は、交流式であり、出力インピーダンスが2メガオーム以上の高インピーダンスに設計及び調整して検査物11のインピーダンス変化を検出し易くし、過電流を保護している。
高電圧トランス14は、一次側が高電圧電源12に接続して供給された電圧を所定電圧に変圧して二次側の電極に供給している。
電極は、検査物11の上面に配置する高圧電極16aと、検査物11の下面に配置する低圧電極16bからなる。
電流測定部17は、低圧電極16bに接続し、電極に流れる電流を測定する電流測定回路・電流電圧変換(抵抗)である。電流電圧変換の構成により電流(アンペア)×抵抗(オーム)=電圧(ボルト)に変換できる。
電圧測定部18は、高電圧トランス14の二次側に配置して、電圧(V2)を測定する。
本実施形態の電圧測定部18の具体的な構成は、高電圧トランス14の二次側に、図2に示す高電圧分圧回路19を配置している。高電圧分圧回路19は、複数の抵抗19aとコンデンサ19bの並列回路を高圧電極16aと低圧電極16bとアース16cに接続している。
判定処理部20a~20fは、電流測定部17と、電圧測定部18に接続して測定値を用いて実施例1~6の処理を実行している。
【0017】
(実施例1)
図3は実施例1の判定処理部の説明図である。実施例1は、検査物11のピンホールに起因するインピーダンス低下、それにより印加される高電圧の低下を電圧測定部18で検出している。具体的には電圧測定部18となる高電圧分圧回路19で電圧を測定する。次に判定処理部20aのハイパス回路・微分回路21で電圧測定値の高周波成分を取り出す。
図4は検査物の良品及び不良品(ピンホールあり)の高電圧分圧回路の高電圧波形とハイパス回路・微分回路を通過後に整流した高電圧変化値ΔVを示す説明図であり、(A)は良品の高電圧波形、(B)は(A)の高電圧変化値ΔV、(C)は不良品の高電圧波形、(D)は(C)の高電圧変化値ΔVを示している。良品の場合、高電圧分圧回路19の電圧の正弦波のピークが、ハイパス回路・微分回路21による微分値では0になっている。一方、不良品の場合、高電圧分圧回路19の電圧の歪み部分が、ハイパス回路・微分回路21による微分値では波形のピークとしてあらわれる。この良品と不良品の実測値を比較して、電圧基準値を設定できる。一例として、電圧基準値を0.3ボルトにすると0.3ボルト未満であれば良品、0.3ボルト以上であれば不良品を判定することができる。
電圧測定値を判定処理部20aのコンパレータ22に入力してあらかじめ定めたピンホールに起因する電圧基準値と比較する。コンパレータ22はオペレーショナルアンプリファイナリー(演算増幅器ともいう)で一方に電圧基準値、他方に電圧値を入力し、基準値を超えたら出力する。具体的には、電圧測定値が電圧基準値以上に高電圧が低下したときピンホール有り(リーク不良ともいう)と判定する。
この他、高電圧分圧回路19の電圧を数マイクロ秒毎にアナログデジタル変換してメモリに保存する。1~3サンプリング前の信号と差分処理を行い、差分結果が基準値をこえたときにリーク(ピンホール有り、以下同じ)と判定しても良い。
図10は高電圧波形から電圧変動の取り出しの説明図である。高電圧波形から高電圧変化値ΔVの取出しは、アナログ式のハイパスフィルタ回路、微分回路、デジタル式の差分処理、デジタルハイパスフィルタ等を適用することができる。ただし図10に示すように高電圧分圧及び電流の高電圧パルス幅は2マイクロ秒から20マイクロ秒以内の単パルスであるので短時間の時定数で処理する必要がある。
【0018】
(実施例2)
実施例1の高電圧変化値ΔVはピンホールの放電以外にも、高電圧が電極からアースに直接放電する沿面放電により大きく変化することがある。特に電極とアースが近くにある場合にはときどき沿面放電が発生する。このため高電圧変化値ΔVだけでは誤判定が生じる可能性がある。そこで実施例2は、実施例1の高電圧測定(高電圧変化値ΔV)に加え、電流測定部17による電流Aの積分値のAND回路であり、両者が基準値を超えた場合にリークと判定することにより装置の信頼性が向上する。
図5は実施例2の判定処理部の説明図である。実施例1と同様に高電圧分圧回路19から判定処理部20bのハイパス回路・微分回路21を通して高周波成分を取り出す。
電流測定部(電流測定回路・電流電圧変換)17で電流を測定し、判定処理部20bの積分回路23で電流を積分する。電圧の高周波成分をコンパレータ22に通して電圧基準値と比較する。電流の積分値をコンパレータ22に通して電流基準値と比較する。なお電流基準値は、図12の(B)と(D)から一例として0.6ボルトとすることができる。判定処理部20bは、AND回路25により電圧の高周波成分と電流の積分値のいずれもが基準値以上の場合にピンホール有りと判定する。実施例2の構成により、電圧の高周波成分のみではピンホール有りと判断できない場合に電流の積分値も用いることにより高精度のピンホール検出が実現できる。
なお積分回路23はアナログ式の積分回路、ローパスフィルタやデジタル信号による積分又は平均処理などを適用することができる。
【0019】
(実施例3)
図6は検査物の良品及び不良品(ピンホールあり)の電流電圧変化値とその積分値とハイパス回路・微分回路を通過後に整流した高電圧変化値ΔVを示す説明図であり、(A)は良品の電流電圧変化値(電流値)、(B)は(A)の積分値、(C)は良品の高電圧変化値ΔV、(D)は不良品の電流電圧変化値(電流値)、(E)は(D)の積分値、(F)は不良品の高電圧変化値ΔVを示している。
良品に大きなインパルス電流が流れて(A参照)、良品と不良品の電流差があまり生じていない(B,E参照)。しかし不良品の高電圧変化値ΔVは電圧基準値を超えている(F参照)。そこで実施例3の判定処理部20cは、実施例2と同様にAND回路25であり、実施例1の高電圧測定(高電圧変化値ΔV)に加え、電流測定値のピーク値(電流の最大値)が基準値を超えた場合にリークと判定する。
図7は実施例3の判定処理部の説明図である。実施例1と同様に高電圧分圧回路19からハイパス回路・微分回路21を通して高周波成分を取り出す。
電流測定部(電流測定回路・電流電圧変換)17で電流を測定する。電圧の高周波成分をコンパレータ22に通して電圧基準値と比較する。電流値のピーク値を検出してコンパレータ22に通して電流基準値と比較する。判定処理部20cは、AND回路25により電圧の高周波成分と電流値にピーク値のいずれもが基準値以上の場合にピンホール有りと判定する。実施例3の構成により、電流の積分値ではピンホール有りと判断できない場合に電流のピーク値(実測値)を用いることにより高精度のピンホール検出が実現できる。
【0020】
(実施例4)
図8は実施例4の判定処理部の説明図である。実施例4は、実施例2と実施例3のOR回路26であり、判定処理部20dは実施例2の高電圧測定(高電圧変化値ΔV)と電流の積分値が基準値を超えたとき、または実施例3の高電圧測定(高電圧変化値ΔV)と電流のピーク値が基準値を超えたときのいずれか一方が発生した場合にリークと判定する。
【0021】
(実施例5)
図9は実施例5の判定処理部の説明図である。
実施例5は、実施例1と同様に検査物11に印加される高電圧を抵抗コンデンサ並列回路による高電圧分圧回路19で取り出して高電圧変化値ΔVを測定する。高電圧変化値ΔVは、判定処理部20eのハイパス回路・微分回路21で微分する。また電流測定部17となる電流測定回路・電流電圧変換で検査物11に流れる電流を測定する。判定処理部20eの積分回路23で電流を積分する。
その電流測定値Iの積分値(穏やかな時定数)と高電圧変化値ΔVを乗算器27で積を取り電力(P=I×ΔV)を求める。コンパレータ22で電力基準値を超えた場合にピンホール有りと判定する。なお電力基準値は不良品の検査物の電流と電圧の実測値を用いてあらかじめ定めている。
【0022】
(実施例6)
図11は実施例6の判定処理部の説明図である。
実施例6は、実施例1と同様に検査物11に印加される高電圧を抵抗コンデンサ並列回路による高電圧分圧回路19で測定する。取り出した電圧は、アナログデジタル変換機(ADC)28で変換され配列HV[i]に保存して差分演算する。ただしi=1,2,3,…nとする。
差分値Diffは、Diff[i]=HV[i]-HV[i-k]とする。または判定し易いように絶対値を取る。高電圧変化値ΔVは次のように表す。
高電圧変化値(ΔV)=絶対値(差分値Diff[i])=abs(HV[i]-HV[i-k])
ただし差分演算の間隔kは、2マイクロ秒~20マイクロ秒とする。
また検査物11に流れる電流を電流測定部17となる電流測定回路・電流電圧変換で測定する。判定処理部20bの積分回路23で電流を積分する。取り出した電流の積分値(穏やかな時定数)はアナログデジタル変換機(ADC)28で変換される。次に乗算器27で高電圧変化値ΔVと電流Ipの積を取り電力Piを求める。
Pi=abs(HV[i]-HV[i-k])×Ip
ただしi=1,2,3,…nとする。
コンパレータ22でPiが電力基準値を超えた場合にピンホール有りと判定する。なお電力基準値は不良品の検査物の電流と電圧の実測値を用いてあらかじめ定めている。
【0023】
このような本発明によれば、導電性内容物を絶縁性包装体で密封した検査物に高電圧を印加して精度良くピンホールを検査することができる。
本発明のピンホール検査装置は、検査物がベルトコンベアで自動搬送される搬送路中に配置する構成、又は卓上で手動検査する構成を適用することができる。
本実施形態のAND回路とOR回路は、TTL(Transistor Transistor Logic)、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)、マイクロコントローラによるソフトウェアプログラムで実現することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 ピンホール検査装置
11 検査物
12 高電圧電源
14 高電圧トランス
16a,16b 電極
17 電流測定部
18 電圧測定部
19 高電圧分圧回路
20a,20b,20c,20d,20e,20f 判定処理部
21 ハイパス回路・微分回路
22 コンパレータ
23 積分回路
25 AND回路
26 OR回路
27 乗算器
28 アナログデジタル変換機
図1
図2
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図12