(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066182
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】継手構造
(51)【国際特許分類】
F16L 33/00 20060101AFI20240508BHJP
F16L 37/12 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F16L33/00 A
F16L37/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175580
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】390034452
【氏名又は名称】ブリヂストンフローテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 晃
【テーマコード(参考)】
3H017
3J106
【Fターム(参考)】
3H017BA01
3J106AA02
3J106BA01
3J106BA02
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE33
(57)【要約】
【課題】樹脂製の筒状部材と金属製の継手本体とを圧入により組付ける際に削りカスの発生を抑制することができる継手構造を提供する。
【解決手段】継手構造S10は、中心部に流路22を備え、外周部に周方向に沿って連続して形成されると共に半径方向外側に突出する突出部36が設けられた金属製の継手本体12と、継手本体12の外周側に配置され、継手本体12との間で管状体を軸方向に挿入するための凹状挿入部44を構成すると共に、内周面14Aの軸方向の一端側に周方向に沿って形成されると共に半径方向内側に突出し、圧入により突出部36に係合される係合部46を備えた樹脂製のカバー部材14と、カバー部材14に設けられ、内周面14Aに沿って係合部46を軸方向に貫くように配置された切欠き部50と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に流路を備え、外周部に周方向に沿って連続して形成されると共に半径方向外側に突出する突出部が設けられた金属製の継手本体と、
前記継手本体の外周側に配置され、前記継手本体との間で管状体を軸方向に挿入するための凹状挿入部を構成すると共に、内周面の軸方向の一端側に周方向に沿って形成されると共に半径方向内側に突出し、圧入により前記突出部に係合される係合部を備えた樹脂製の筒状部材と、
前記筒状部材に設けられ、前記内周面に沿って前記係合部を軸方向に貫くように配置された切欠き部と、
を有する継手構造。
【請求項2】
前記切欠き部は、前記筒状部材の周方向に間隔をおいて複数設けられている請求項1に記載の継手構造。
【請求項3】
前記筒状部材の軸方向に沿った方向から見た状態で、前記切欠き部は前記筒状部材の中心位置に対して対称の形状とされている請求項2に記載の継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管状体を接続するための管継手が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、継手本体の外周側に筒状の外側カバーを備えた管継手が開示されている。この管継手では、継手本体の外周部に係止段部を備え、筒状の外側カバーの内周部に係止段部を備えている。継手本体の係止段部と外側カバーの係止段部とは圧入して係止させることで、継手本体と外側カバーとを組み立てている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では、継手本体の係止段部と外側カバーの係止段部とは、圧入して係止させる。このため、圧入時に外側カバーの係止段部が継手本体の係止段部により削れる可能性がある。
【0006】
例えば、継手本体が金属で形成され、外側カバーが樹脂で形成されている場合、圧入時に外側カバーの係止段部が継手本体の係止段部を乗り越える際に、樹脂の係止段部が金属の係止段部によって削られ、削りカスが異物となって管継手に付着する場合がある。削りカスが管継手に付着すると、人手による管継手の洗浄作業が必要となり、加工コストが上昇する。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、樹脂製の筒状部材と金属製の継手本体とを圧入により組付ける際に削りカスの発生を抑制することができる継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、第1態様に記載の継手構造は、中心部に流路を備え、外周部に周方向に沿って連続して形成されると共に半径方向外側に突出する突出部が設けられた金属製の継手本体と、前記継手本体の外周側に配置され、前記継手本体との間で管状体を軸方向に挿入するための凹状挿入部を構成すると共に、内周面の軸方向の一端側に周方向に沿って形成されると共に半径方向内側に突出し、圧入により前記突出部に係合される係合部を備えた樹脂製の筒状部材と、前記筒状部材に設けられ、前記内周面に沿って前記係合部を軸方向に貫くように配置された切欠き部と、を有する。
【0009】
第1態様に記載の継手構造によれば、金属製の継手本体には、外周部に周方向に沿って連続して形成されると共に半径方向外側に突出する突出部が設けられている。樹脂製の筒状部材には、内周面の軸方向の一端側に周方向に沿って形成されると共に半径方向内側に突出する係合部が設けられており、筒状部材と継手本体とを圧入することで、継手本体の突出部に筒状部材の係合部を係合させる。筒状部材には、内周面に沿って係合部を軸方向に貫くように配置された切欠き部が設けられており、圧入時に樹脂製の係合部が金属製の突出部により拡径され突出部から逃げる方向に歪みやすい。また、筒状部材に切欠き部が設けられていることで、筒状部材が周方向にも歪むことができるため、圧入時に係合部の削れが発生しにくい。このため、樹脂製の筒状部材と金属製の継手本体とを圧入により組付ける際に削りカスの発生を抑制することができる。
【0010】
第2態様に記載の継手構造は、第1態様に記載の継手構造において、前記切欠き部は、前記筒状部材の周方向に間隔をおいて複数設けられている。
【0011】
第2態様に記載の継手構造によれば、切欠き部は、筒状部材の周方向に間隔をおいて複数設けられているため、圧入時に筒状部材の係合部が金属製の突出部により拡径され突出部から逃げる方向により確実に歪みやすい。このため、樹脂製の筒状部材と金属製の継手本体とを圧入により組付ける際に削りカスの発生をより確実に抑制することができる。
【0012】
第3態様に記載の継手構造は、第2態様に記載の継手構造において、前記筒状部材の軸方向に沿った方向から見た状態で、前記切欠き部は前記筒状部材の中心位置に対して対称の形状とされている。
【0013】
第3態様に記載の継手構造によれば、筒状部材の軸方向に沿った方向から見た状態で、切欠き部は筒状部材の中心位置に対して対称の形状とされているため、成型時の収縮を均一にし、出来上がり寸法が不均一となることが抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、樹脂製の筒状部材と金属製の継手本体とを圧入により組付ける際に削りカスの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る継手構造において、継手本体にカバー部材を圧入する前の状態を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る継手構造において、継手本体にカバー部材を圧入する後の状態を示す半裁断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る継手構造において、継手本体の突出部にカバー部材の係合部が係合した状態を示す拡大側面図である。
【
図4】(A)は、カバー部材の内周面側の一部を示す斜視図であり、(B)は、カバー部材の切欠き部が形成された部分の断面図である。
【
図5】(A)は、カバー部材の係合部が継手本体の突出部に係合している状態を示す部分側面図であり、(B)は、カバー部材の切欠き部及び継手本体の突出部を示す部分側面図である。
【
図6】第1実施形態に係る継手構造を備えた管継手を示す半裁断面図である。
【
図7】比較例の継手構造において、カバー部材の係合部を継手本体の突出部に係合させた状態を示す部分断面図である。
【
図8】比較例の継手構造において、カバー部材の内周面側の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。各図面において、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。
【0017】
(継手構造及び圧入治具の全体構成)
図1は、第1実施形態に係る継手構造における圧入前の状態を示す断面図であり、
図2は、第1実施形態に係る継手構造における圧入後の状態を示す断面図である。一例として、
図1及び
図2では、矢印UPで示す方向を鉛直方向の上方側とする。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の継手構造S10は、金属製の継手本体12と、継手本体12に圧入により組付けられる樹脂製のカバー部材14と、を備えている。カバー部材14は、筒状に形成されており、筒状部材の一例である。カバー部材14は、一例として、透明の樹脂で形成されている。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、カバー部材14と継手本体12とを圧入により組付けるときは、圧入治具100が使用される。本実施形態では、継手本体12の上下方向の下側にカバー部材14が配置されている。圧入治具100は、カバー部材14の上下方向の下側に配置される第1圧入治具102と、継手本体12の上下方向の上側に配置される第2圧入治具104(
図2参照)と、を備えている。カバー部材14と継手本体12との圧入時には、第1圧入治具102でカバー部材14の下側を支え、上側から第2圧入治具104で継手本体12をカバー部材14側(矢印A方向)に押し付ける構成とされている(
図2参照)。
【0019】
(継手本体)
継手本体12は、筒状に構成され、中心部に軸方向に沿って配置された流路22を備えている。継手本体12は、軸方向の一方側に配置されると共に内筒部を構成する第1側部24と、軸方向の他方側に配置された第2側部26と、軸方向における第1側部24と第2側部26との間に位置する中間部28と、を備えている。
【0020】
第2側部26の外周面には、雄ねじからなるねじ部30が形成されており、雌ねじを有する管体(図示省略)がねじ部30に螺合されることで、第2側部26に管体が接続可能とされている。
【0021】
中間部28には、第2側部26側から第1側部24側に向かって、工具掛け部32と、工具掛け部32よりも小径の外周部34と、外周部34よりも大径の突出部36と、を備えている。工具掛け部32は、六角形状の外形を有しており、スパナなどの工具を掛けることが可能である。外周部34は、工具掛け部32よりも小径であり、工具掛け部32の半径方向内側部分から軸方向に沿って延びている。外周部34は、円筒状に形成されている。突出部36は、外周部34の端部(工具掛け部32と反対側の端部)から半径方向外側に突出する。突出部36は、継手本体12の外周部34の端部に周方向に沿って連続して形成されている。
【0022】
継手本体12の軸方向と直交する方向から見た状態で、突出部36は、外周部34に繋がる位置に外周部34から直交する方向に延びた縦面36Aを有している。突出部36における縦面36Aと反対側には、外径が縦面36Aと逆方向に向かって徐々に縮小する湾曲部36Bが形成されている。
【0023】
第1側部24は、円筒状であり、外径が突出部36及び外周部34の外径よりも小さい。第1側部24と突出部36との間には、第1側部24から半径方向外側に延びた段差部38が形成されている。突出部36の湾曲部36Bは、段差部38に繋がっている。第1側部24の外周面24Aには、周方向に沿って2つの環状溝24Bが形成されている。環状溝24Bは、第1側部24の軸方向に間隔をおいて配置されている。環状溝24Bには、Oリング40が嵌め込まれている。
【0024】
(カバー部材)
カバー部材14は、継手本体12における第1側部24と突出部36と外周部34の外周側に取付けられる(
図2及び
図3参照)。カバー部材14は、内周面14Aの軸方向の一端側に周方向に沿って形成された係合部46を備えている。係合部46は、内周面14Aから半径方向内側に突出する。係合部46と内周面14Aとの間は、内周面14Aから係合部46に向かって内径が徐々に縮小する傾斜部47とされている。また、係合部46の軸方向の端部は、カバー部材14の端面に向かって内径が徐々に拡大する傾斜部48を備えている。
【0025】
内周面14Aの内径は、継手本体12の突出部36の外径とほぼ同等、又は突出部36の外径よりも僅かに大きい。また、係合部46の内径は、継手本体12の突出部36の外径よりも小さい。また、係合部46の内径は、継手本体12の外周部34の外径とほぼ同等、又は外周部34の外径よりも僅かに大きい。これにより、カバー部材14を第1側部24の側から継手本体12に圧入することで、カバー部材14の係合部46が継手本体12の突出部36を乗り越え、係合部46が外周部34の外周側に位置する。これにより、カバー部材14の係合部46が継手本体12の突出部36に係合され、カバー部材14が継手本体12から抜けるのが抑制されるようになっている。
【0026】
カバー部材14は、継手本体12における第1側部24の外周側に配置されることで、カバー部材14と第1側部24との間で、管状体(図示省略)を軸方向に挿入するための凹状挿入部44を構成する(
図3参照)。カバー部材14が継手本体12に取付けられた状態で、第1側部24の端部(第2側部24と反対側の端部)は、カバー部材14の端部から軸方向外側に露出している(
図3参照)。
【0027】
図4(A)、(B)に示されるように、カバー部材14には、内周面14Aに沿って係合部46を軸方向に貫くように配置された切欠き部50が設けられている。切欠き部50は、カバー部材14の周方向に間隔をおいて複数(本実施形成では2つ)設けられている。本実施形態では、切欠き部50は、カバー部材14の周方向の180度の位置に2つ設けられている(
図4(B)参照)。切欠き部50と係合部46の縁部には、切欠き部50から係合部46に向かって内径が徐々に縮小するテーパ部51が形成されている(
図4(A)参照)。切欠き部50にテーパ部51を設けることで、カバー部材14の成形時の金型との離型性が向上する。
【0028】
カバー部材14の軸方向に沿った方向から見た状態で、切欠き部50はカバー部材14の中心位置に対して対称の位置に形成されると共に、カバー部材14の中心位置に対して対称の形状とされている。切欠き部50の周方向の幅(切欠き部50の底の周方向の幅)は、カバー部材14の内周面14Aの内周長(周方向の長さ)の1/24以上1/6以下であることが好ましく、1/20以上1/8以下であることがより好ましく、1/16以上1/12以下であることがさらに好ましい。
【0029】
図5(A)に示されるように、カバー部材14の係合部46が形成されている部分では、カバー部材14の係合部46が継手本体12の突出部36に係合されている。また、
図5(B)に示されるように、カバー部材14の切欠き部50が形成されている部分では、カバー部材14の切欠き部50と継手本体12の突出部36とは半径方向に重なっておらず、カバー部材14の切欠き部50は継手本体12の突出部36に係合していない。
【0030】
カバー部材14は、軸方向の一端側(係合部46の側)の外径よりも、軸方向の他端側(係合部46と反対側)の外径が大きい。カバー部材14の軸方向の他端側(係合部46と反対側)の外周部には、半径方向外側に突出する複数(例えば、2つ)の突起部54が設けられている。また、カバー部材14の外周部には、突起部54よりも軸方向の中間部側に、半径方向外側に突出すると共に後述するキャップ72が当たるストッパ部56が設けられている。
【0031】
カバー部材14の軸方向の他端側(係合部46と反対側)には、軸方向の先端側に向かって突出する尖形端部52が設けられている。
【0032】
(圧入治具の構成及び圧入工程)
ここで、圧入治具100について説明する。
【0033】
図1及び
図2に示されるように、第1圧入治具102は、基台110と、基台110から軸方向に延びた円柱状の芯部112と、を備えている。芯部112の外周側には、芯部112と間隔をおいて環状壁部114が設けられている。芯部112と環状壁部114との間は、環状の溝部116とされている。環状壁部114の上端部からの溝部116の深さは、基台110の上面110Aよりも深い。環状壁部114の内壁114Aには、上下方向の下側の内径が小さくなる段差部115が形成されている。
【0034】
第1圧入治具102の溝部116には、継手本体12の第1側部24が挿入され、継手本体12の段差部38が環状壁部114の上端面に接触するようになっている(
図2参照)。環状壁部114の上端部からの溝部116の深さは、継手本体12の第1側部24の軸方向の長さに合わせて形成されており、第1側部24の端部は、溝部116の底面に接触可能とされている。
【0035】
図2に示されるように、カバー部材14と継手本体12とを圧入により組付けるときは、カバー部材14の第1側部24の端部が基台110の上面110Aに接触し、環状壁部114の外壁114Bにカバー部材14の内周面14Aが接触する。そして、ブロック状の第2圧入治具104を用いて継手本体12を矢印Aに示す上下方向下側に押し付けることで、継手本体12の第1側部24が溝部116に挿入され、第1側部24の内壁が芯部112の外周面に接触する。
【0036】
継手本体12が矢印Aに示す上下方向下側にさらに押し付けられることで、継手本体12の突出部36に押されてカバー部材14の係合部46が拡径し、係合部46が継手本体12の突出部36を乗り越える。これにより、係合部46が継手本体12の外周部34と対面し、係合部46が突出部36に係合される。この状態で、継手本体12の段差部38は環状壁部114の上端面に接触する。
【0037】
その際、樹脂製のカバー部材14には、内周面14Aに沿って係合部46を軸方向に貫くように配置された切欠き部50が設けられているので、圧入時に係合部46が金属製の継手本体12の突出部36により拡径され、突出部36から逃げる方向に歪みやすい。また、カバー部材14に切欠き部50が設けられていることで、カバー部材14が周方向にも歪むことができるため、圧入時に突出部36による係合部46の削れが発生しにくくなる。
【0038】
その後、第2圧入治具104を取り外し、第1圧入治具102から継手本体12及びカバー部材14を引き抜く。これにより、継手本体12とカバー部材14との圧入による組付けが完了する。
【0039】
(管継手の一例)
次に、本実施形態の継手構造S10を備えた管継手70の一例について説明する。
【0040】
図6に示されるように、管継手70は、継手本体12と、カバー部材14と、キャップ72と、係止爪74と、解放リング76と、を備えている。継手本体12とカバー部材14とは、上記のように圧入治具100を用いて圧入することにより組付けられている(
図2参照)。
【0041】
キャップ72は、カバー部材14の外周側に取付けられている。キャップ72の内周部には、2つの凹部72Aが形成されており、凹部72Aがカバー部材14の2つの突起部54にそれぞれ係合している。また、キャップ72の軸方向の一端部72Bは、カバー部材14のストッパ部56に接触している。キャップ72の軸方向の他端部72Cは、外周側からカバー部材14の尖形端部52を覆うように軸方向外側に張り出している。キャップ72の軸方向の他端部72Cの内周部には、半径方向内側に突出するストッパ部73が形成されている。
【0042】
係止爪74は、V字状の環状部材で構成されており、V字状の開口側(V字状の凹部の側)がカバー部材14の尖形端部52の方向を向くように配置されている。係止爪74のV字状の凹部は、カバー部材14の尖形端部52と対向している。係止爪74は、例えば、金属で構成されており、半径方向内側に先端が尖った爪部74Aを有している。係止爪74の爪部74Aは、凹状挿入部44に挿入された管状体(図示省略)の外周面に突き刺さることで、管状体を凹状挿入部44に保持する。係止爪74の爪部74Aは、管状体の挿入口側から奥側に向かって斜め方向に管状体の外周面に突き刺さる構成とされており、管状体の抜け出しが抑制されるようになっている。
【0043】
解放リング76は、筒状部材で構成されており、キャップ72の他端部72Cの内周側に、キャップ72に対して軸方向に摺動可能に配置されている。解放リング76は、外周部の軸方向の奥側(係止爪74側)に半径方向外側に突出するする突起76Aを備えている。突起76Aは、キャップ72のストッパ部73に当たることで、キャップ72からの抜け出しが抑制される。解放リング76は、突起76Aから先端側に向かって外径が徐々に縮小された傾斜部76Bを備えている。
【0044】
図示を省略するが、係止爪74による管状体の保持を解除する際には、図示しない挿入治具により解放リング76を係止爪74の方向に移動させる。これにより、解放リング76の傾斜部76Bが係止爪74の爪部74Aを凹状挿入部44の奥側に押し、爪部74Aが管状体の外周面から抜ける。この状態で、管状体を管継手70の凹状挿入部44から引き抜くことが可能となる。
【0045】
管継手70では、カバー部材14が透明の樹脂で形成されていることで、凹状挿入部44に挿入された管状体の先端部をカバー部材14の外部から目視で確認することができる。このため、管状体の先端部が管継手70の凹状挿入部44の奥部まで挿入されているかどうかを確認することができる。
【0046】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0047】
本実施形態の継手構造S10では、金属製の継手本体12には、外周部に周方向に沿って連続して形成されると共に半径方向外側に突出する突出部36が設けられている(
図1参照)。樹脂製のカバー部材14には、内周面14Aの軸方向の一端側に周方向に沿って形成されると共に半径方向内側に突出する係合部46が設けられている。カバー部材14と継手本体12とを圧入により組付けることで、継手本体12の突出部36にカバー部材14の係合部46を係合させる(
図2参照)。樹脂製のカバー部材14には、内周面14Aに沿って係合部46を軸方向に貫くように配置された切欠き部50が設けられている(
図4参照)。カバー部材14に切欠き部50が設けられていることで、カバー部材14の圧入時に係合部46が金属製の突出部36により拡径され突出部36から逃げる方向に歪みやすい。また、カバー部材14に切欠き部50が設けられていることで、カバー部材14が周方向にも歪むことができるため、カバー部材14の圧入時に突出部36による係合部46の削れが発生しにくい。このため、樹脂製のカバー部材14と金属製の継手本体12とを圧入により組付ける際に削りカスの発生を抑制することができる。
【0048】
また、継手構造S10では、切欠き部50は、カバー部材14の周方向に間隔をおいて複数(本実施形態では2つ)設けられている。このため、カバー部材14の圧入時にカバー部材14の係合部46が金属製の突出部36により拡径され突出部36から逃げる方向により確実に歪みやすい。このため、樹脂製のカバー部材14と金属製の継手本体12とを圧入により組付ける際に削りカスの発生をより確実に抑制することができる。
【0049】
また、継手構造S10では、カバー部材14の軸方向に沿った方向から見た状態で、2つの切欠き部50は筒状部材の中心位置に対して対称の形状とされている。このため、カバー部材14の成型時の収縮を均一にし、カバー部材14の出来上がり寸法が不均一となることが抑制される。
【0050】
図7及び
図8には、比較例の継手構造S200が示されている。
図7に示されるように、比較例の継手構造S200は、金属製の継手本体12と、樹脂製のカバー部材204と、を備えている。継手本体12は、本実施形態の継手構造S10と同様に、外周部に周方向に沿って連続して形成されると共に半径方向外側に突出する突出部36を備えている。カバー部材204は、内周面204Aの軸方向の一端側に周方向に沿って連続して形成されると共に半径方向内側に突出する係合部206を備えている。係合部206には、本実施形態のカバー部材14のような切欠き部はもうけられていない。
【0051】
比較例の継手構造S200では、カバー部材204と継手本体12とを圧入により組付けると、カバー部材204の係合部206が継手本体12の突出部36を乗り越える際に、樹脂製の係合部206が金属製の突出部36によって削られ、削りカスが異物となってカバー部材204又は継手本体12に付着する可能性がある。カバー部材204の係合部206は、周方向に沿って均一な厚みを有しているため、係合部206が継手本体12の突出部36により拡径されるときに係合部20が歪みにくく、突出部36から逃げきれなかった部分が削れ、削りカスが発生すると考えられる。
【0052】
これに対して、本実施形態の継手構造S10では、カバー部材14には、内周面14Aに沿って係合部46を軸方向に貫くように配置された切欠き部50が設けられているため、圧入時に係合部46が金属製の突出部36により拡径され突出部36から逃げる方向に歪みやすい。このため、樹脂製のカバー部材14と金属製の継手本体12とを圧入により組付ける際に削りカスの発生を抑制することができる。
【0053】
なお、上記実施形態において、切欠き部50の数は、2つであるが、切欠き部50の数、周方向の幅の寸法、及び形状は変更可能である。例えば、切欠き部の数は3つ以上(例えば4つ等)に変更してもよい。また、切欠き部の数は、1つでもよい。カバー部材14の係合部46を継手本体12の突出部36により拡径させることを考慮すると、切欠き部の数は2つ以上であることがより好ましい。切欠き部の数を偶数に変更したときは、切欠き部は、カバー部材の軸方向に沿った方向から見た状態で、カバー部材の中心位置に対して対称の形状とされていることが好ましい。また、切欠き部の数を3つ以上の奇数に変更したときは、切欠き部は、カバー部材の周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。
【0054】
また、上記実施形態において、カバー部材14の内周面14Aからの係合部46の高さ、係合部46の形状、及びカバー部材14における係合部46の厚さなどは変更が可能である。
【0055】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【実施例0056】
実施例1として、カバー部材14を用い、カバー部材14と継手本体12とを圧入により組付けたときの削れの発生状況を確認する実験を行った。また、比較例1として、カバー部材204を用い、カバー部材204と継手本体12とを圧入により組付けたときの削れの発生状況を確認する実験を行った。これらの実験の結果を表1に示す。
【0057】
【0058】
表1において、nは、実験を行ったカバー部材の検体数である。表1に示すように、実施例1のカバー部材14では、30個の検体で実験を行った結果、削れの発生は無かった。このため、削りカスによるコンタミ発生率は、0%である。
【0059】
これに対し、比較例1のカバー部材204では、30個の検体に対し、2個の検体で削れが発生した。このため、削りカスによるコンタミ発生率は、6.7%である。
【0060】
このため、実施例1のカバー部材14では、圧入時の樹脂の削れの発生を抑制できることが確認された。
【0061】
また、実施例1において、カバー部材14と継手本体12とを圧入により組付けるときの組立荷重と、カバー部材14と継手本体12とを逆方向に引っ張ったときの引張強度とを測定した。引張強度は、カバー部材14を継手本体12から引き抜く際の最大荷重を測定した値である。この実験の結果を表2に示す。表2において、nは、カバー部材14である検体の番号である。
【0062】
【0063】
同様に比較例1において、カバー部材204と継手本体12とを圧入により組付けるときの組立荷重と、カバー部材204と継手本体12とを逆方向に引っ張ったときの引張強度とを測定した。この実験の結果を表3に示す。
【0064】
【0065】
表2及び表3に示されるように、実施例1のカバー部材14では、比較例1のカバー部材204と比較して、組立荷重及び引張強度の値は少し小さくなるが、大きな差は認められなかった。このため、実施例1のカバー部材14では、係合部46に切欠き部50を設けても、比較例1のカバー部材204とほぼ同等の強度を確保できることが確認された。