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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066188
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】地下構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/05 20060101AFI20240508BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
E02D29/05 Z
E02D3/12 102
E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175588
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 洋介
【テーマコード(参考)】
2D040
2D147
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040BB03
2D040BD05
2D040CA01
2D040CB03
2D040EA04
2D040EA21
2D147AB02
(57)【要約】
【課題】盤ぶくれ等の不具合の発生を抑制する。
【解決手段】地下構造物1の構築方法は、鉛直方向に延びる筒状の土留め壁30を地中に構築する第1の工程と、土留め壁30の内周面31に接しつつ鉛直方向に延びる中空柱状の地盤改良体20を土留め壁30内における床付け形成予定面10’以深に構築する第2の工程と、土留め壁30内を床付け形成予定面10’まで掘削することで床付け面10を形成する第3の工程と、土留め壁30内における床付け面10上に地下構造物1を構築する第4の工程と、を含む。第4の工程では、地盤改良体20の直上に地下構造物1を構築する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる筒状の土留め壁を地中に構築する第1の工程と、
前記土留め壁の内周面に接しつつ鉛直方向に延びる中空柱状の地盤改良体を前記土留め壁内における床付け形成予定面以深に構築する第2の工程と、
前記土留め壁内を前記床付け形成予定面まで掘削することで床付け面を形成する第3の工程と、
前記土留め壁内における前記床付け面上に地下構造物を構築する第4の工程と、
を含み、
前記第4の工程では、前記地盤改良体の直上に前記地下構造物を構築する、
地下構造物の構築方法。
【請求項2】
前記土留め壁の内周面と前記地下構造物の側部との間の間隙を埋め戻す第5の工程を更に含む、請求項1に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項3】
前記第1の工程では、前記土留め壁の下端が遮水層以深に達するまで前記土留め壁を構築する、請求項1に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項4】
前記地盤改良体の中空部内の地盤に地下水が浸透可能である、請求項1に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項5】
前記土留め壁が円筒状であり、前記地盤改良体が中空円柱状である、請求項1に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項6】
前記地下構造物が地下式タンクである、請求項1に記載の地下構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、高圧噴射撹拌工法を利用して立坑の計画域の周りと計画域内の地盤を先行補強する技術を開示している。特許文献1は、まず、立坑の計画域の周りに円筒状の連続壁を高圧噴射撹拌工法により造成し、次に、立坑の計画底の下方域に円盤状の改良底盤を高圧噴射撹拌工法により造成し、その後に、連続壁内の地盤を地表から改良底盤まで掘り下げることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-317373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、円筒状の連続壁の下部が円盤状の改良底盤によって全面的に塞がれている。このため、地下水位が想定以上に高くなった場合等に、当該改良底盤の盤ぶくれ(浮き上がり)等の不具合が発生する懸念があった。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑み、盤ぶくれ等の不具合の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明に係る地下構造物の構築方法は、鉛直方向に延びる筒状の土留め壁を地中に構築する第1の工程と、土留め壁の内周面に接しつつ鉛直方向に延びる中空柱状の地盤改良体を土留め壁内における床付け形成予定面以深に構築する第2の工程と、土留め壁内を床付け形成予定面まで掘削することで床付け面を形成する第3の工程と、土留め壁内における床付け面上に地下構造物を構築する第4の工程と、を含む。第4の工程では、地盤改良体の直上に地下構造物を構築する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、床付け面以深に位置する地盤改良体が中空柱状であるので、その中空部(非改良部)から地下水を逃す設計ができ、ひいては、盤ぶくれの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態における地下構造物の概略構成を示す図
図2図1のA-A断面図
図3】前記第1実施形態に地下構造物の構築方法を示す図
図4】前記第1実施形態に地下構造物の構築方法を示す図
図5】前記第1実施形態に地下構造物の構築方法を示す図
図6図3(イ)のB-B断面図
図7】本発明の第2実施形態における地下構造物の構築方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の第1実施形態における地下構造物(以下、単に「構造物」と称する)1の概略構成を示す。図2は、図1のA-A断面図である。
【0011】
構造物1は、本設構造物であり、地面GL以深の地中(地盤G中)に構築されている。構造物1は、例えばコンクリート構造物である。本実施形態では、構造物1が、燃料等を貯留するための地下式タンクであるとして以下説明するが、構造物1は、地下式タンクに限らない。尚、図1には地下水位WLが例示されている。
【0012】
構造物1は、筒状の壁体2と底版3とを含んで構成される。
本実施形態では壁体2は円筒状である。壁体2は、地面GL以深の地中を鉛直方向に延びている。壁体2は、その内側に、燃料等を貯留するための内部空間4を有する。
【0013】
底版3は、壁体2の下面開口を塞ぐように構築されている。底版3は平面視で円形の円盤状である。底版3は、床付け面10上に形成された砕石層11上に構築されている。砕石層11は、床付け面10上に砕石を敷くことで形成され、その上には均しコンクリートが打設され得る。
【0014】
床付け面10以深には、地盤改良体20が構築されている。地盤改良体20は、床付け面10側から下方に延びる中空柱状であり、その中空柱状における中央の中空部21に地盤Gが非改良状態(地盤改良されないままの状態)で存在している。尚、本実施形態では、地盤改良体20は、鉛直方向に延びる中空円柱状である。
【0015】
平面視で、構造物1及び地盤改良体20は、その周囲を、仮設構造物である筒状の土留め壁30によって囲まれている。本実施形態では土留め壁30は円筒状である。土留め壁30は、地面GL以深の地中を鉛直方向に延びている。土留め壁30は、床付け面10よりも更に下方に延び、地盤改良体20の下端にまで達している。土留め壁30の内周面31と壁体2の外周面2a(つまり、構造物1の側部)との間の間隙CLには、埋め戻し土Sが埋め戻されている。つまり、土留め壁30の内径は、構造物1の外径(壁体2の外径、及び、底版3の外径)よりも大きい。また、埋め戻し土Sによって埋め戻される間隙CLは水道(みずみち)となり得る。
【0016】
地盤改良体20の外周面22は、全周にわたって、土留め壁30の内周面31における床付け面10以深の部分(本実施形態では下端部)31aに接触している。地盤改良体20の内周面23は、前述の中空部21を区画するものである。中空部21内の地盤Gは地下水が浸透可能である。中空部21内の地盤Gに浸透した地下水は、砕石層11を経て、前述の間隙CLの水道(みずみち)に至り得る。
【0017】
図2に示すように、平面視で、地盤改良体20の外周面22と内周面23との間に、壁体2の外周面2a及び内周面2bが位置している。換言すれば、平面視で、地盤改良体20内に、壁体2の全体が含まれている。ゆえに、地盤改良体20の直上に、壁体2を含む構造物1が立設されている。換言すれば、構造物1の壁体2の直下に地盤改良体20が位置して、この地盤改良体20が、周囲の地盤Gと協働して、構造物1を支持している。
【0018】
地盤改良体20は、地上側(地面GL上)からの施工によって構築され得る。地盤改良体20の形成には、例えば、高圧噴射撹拌工法が採用され得る。高圧噴射撹拌工法では、まず、地面GL上に高圧噴射撹拌装置を設置し、予め地面GL側から地盤Gに形成されたボーリング孔(鉛直方向に延びている)に改良ロッドを挿入する。次に、改良ロッドを介して地盤Gに高圧のセメントミルクと圧縮空気とを注入しながら改良ロッドを回転又は揺動させることで、地盤Gにおける改良対象領域(地盤改良体20の構築予定領域)の土とセメントミルクとを混合させる。この混合を改良ロッドを引き上げながら行うことで、地盤G中に円柱状の改良体が形成される。この円柱状の改良体を、互いに横方向(水平方向)でラップするように複数形成することで、地盤改良体20が構築され得る。
【0019】
尚、地盤改良体20を構築する手法は、前述の高圧噴射撹拌工法に限らない。例えば、機械撹拌工法や薬液注入工法を採用してもよい。
【0020】
土留め壁30は、ソイルモルタル製、モルタル製、又は、コンクリート製の地中連続壁であってもよい。土留め壁30がソイルモルタル製である場合には、例えば、オーガ(土中掘削機)で地面GL側から地盤Gを掘削しながら掘削土と固化材(セメントミルク等)とを混合・撹拌することで土留め壁30が構築され得る(つまり、例えばSMW工法が採用され得る)。
【0021】
この他、鋼矢板の列により土留め壁30を構築してもよく、又は、鋼管矢板の列により土留め壁30を構築してもよい。つまり、土留め壁30は、鋼矢板又は鋼管矢板を含んで構成されてもよく、つまり、土留め壁30は鋼製であってもよい。
【0022】
次に、構造物1の構築方法について、前述の図1及び図2に加えて図3図6を用いて説明する。
図3(ア)~図5(オ)は、構造物1の構築方法を示す図である。図6は、図3(イ)のB-B断面図である。
【0023】
まず、図3(ア)に示すように、土留め壁30を地盤G中に構築する(土留め壁構築工程:第1の工程)。
【0024】
次に、図3(イ)及び図6に示すように、土留め壁30内における床付け形成予定面10’以深に地盤改良体20を構築する(地盤改良体構築工程:第2の工程)。地盤改良体20については、そのリングコンプレッション効果で土留め壁30の変位を抑制できるように構築され得る。つまり、地盤改良体20については、当該リングコンプレッション効果が発揮されるような寸法及び性状となっている。ここで、床付け形成予定面10’とは、床付け面10が形成される予定の面(仮想面)である。
【0025】
次に、図4(ウ)に示すように、リング支保工40の設置と土留め壁30内の掘削とを繰り返して、土留め壁30内を床付け形成予定面10’まで掘削することで、床付け面10を形成する(内部掘削工程:第3の工程)。尚、リング支保工40の設置は必要に応じてなされるものであり、ゆえに、リング支保工40の設置は必須ではない。
【0026】
次に、図4(エ)に示すように、床付け面10上に砕石層11(前述の均しコンクリートを含む)を形成し、その上に構造物1を構築する(地下構造物構築工程:第4の工程)。ここでは、地盤改良体20の直上に構造物1(特に壁体2)が構築される。
【0027】
次に、図5(オ)に示すように、土留め壁30の内周面31と壁体2の外周面2a(つまり、構造物1の側部)との間の間隙CLを埋め戻し土Sで埋め戻す(埋め戻し工程:第5の工程)。この埋め戻しに先立って、又は、この埋め戻しに並行して、リング支保工40の撤去を行ってもよい。又は、リング支保工40を残置してもよい。
以上のようにして、構造物1の構築が行われ得る。
【0028】
本実施形態によれば、構造物1の構築方法は、鉛直方向に延びる筒状の土留め壁30を地中に構築する第1の工程(図3(ア)参照)と、土留め壁30の内周面31に接しつつ鉛直方向に延びる中空柱状の地盤改良体20を土留め壁30内における床付け形成予定面10’以深に構築する第2の工程(図3(イ)及び図6参照)と、土留め壁30内を床付け形成予定面10’まで掘削することで床付け面10を形成する第3の工程(図4(ウ)参照)と、土留め壁30内における床付け面10上に構造物1を構築する第4の工程(図4(エ)参照)と、を含む。第4の工程(図4(エ)参照)では、地盤改良体20の直上に構造物1を構築する。これにより、地盤改良体20の中空部21(非改良部)から地下水を逃す設計ができ(例えば湧水として処理することができ)、ひいては、盤ぶくれの発生を抑制することができる。
【0029】
また、特許文献1に開示の改良底盤のように全面改良した場合には改良体の硬化時に膨張圧が作用して土留め壁に変形を生じるリスクがあるが、この点、本実施形態によれば、地盤改良体20の構築時に、当該膨張圧を内側(中空部21側)に逃がすことができるので、当該膨張による弊害(土留め壁30の変形の発生等)を削減することができる。
【0030】
また本実施形態によれば、中空円柱状(リング状)の地盤改良体20は残置して、その上に本設構造物である構造物1を構築することで、仮設構造物である土留め壁30の変形を抑える効果(リングコンプレッション効果)に加え、本設構造物である構造物1の不等沈下を抑える付加的な効果も期待できる。
【0031】
また本実施形態によれば、構造物1の構築方法は、土留め壁30の内周面31と構造物1の側部(例えば壁体2の外周面2a)との間の間隙CLを埋め戻す第5の工程(図5(オ)参照)を更に含む。これにより、第3の工程(図4(ウ)参照)にて発生した掘削土の一部を埋め戻し土Sとして有効に活用することができる。
【0032】
また本実施形態によれば、地盤改良体20の中空部21内の地盤Gに地下水が浸透可能である。ゆえに、前述の盤ぶくれの発生を抑制することができる。
【0033】
また本実施形態によれば、土留め壁30が円筒状であり、地盤改良体20が中空円柱状である。ゆえに、前述のリングコンプレッション効果が良好に発揮され得る。
【0034】
尚、本実施形態では、構造物1が地下式タンクである例を説明したが、構造物1は地下式タンクに限らない。例えば、構造物1は立坑であってもよい。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態について、図7を用いて説明する。
図7は、本実施形態における構造物1の構築方法を示す図である。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0036】
本実施形態では、地下水位WLが高いので、前述の第1の工程(土留め壁構築工程)において、土留め壁30の下端が遮水層GP以深に達するまで土留め壁30を構築している。つまり、土留め壁30を遮水層GPまで根入れする。これにより、地盤改良体20の中空部21内の地盤Gに地下水が過度に浸透することを抑制することができる。
【0037】
前述の第1及び第2実施形態では、平面視で、構造物1及び土留め壁30の形状が円形であるが、これらの形状は円形に限らず、例えば、楕円形、又は、矩形などの多角形であってもよい。また、平面視で、構造物1の形状と土留め壁30の形状とが互いに異なっていてもよい。例えば、平面視における構造物1の形状が矩形などの多角形であり、平面視における土留め壁30の形状が円形であってもよい。これらのいずれの態様であっても、地盤改良体20の外周面22は、全周にわたって、土留め壁30の内周面31における床付け面10以深の部分31aに接触している。
【0038】
前述の第1及び第2の実施形態では、平面視で、地盤改良体20の内周面23の輪郭形状(中空部21の輪郭形状)が円形であるが、当該輪郭形状は円形に限らず、例えば、楕円形、又は、矩形などの多角形であってもよい。
【0039】
前述の第1及び第2実施形態では、土留め壁30の内周面31と壁体2の外周面2aとの間の間隙CLを埋め戻し土Sで埋め戻しているが、この他、当該間隙CLを埋め戻さなくてもよい。又は、土留め壁30の内周面31と壁体2の外周面2aとが接するようにしてもよい(コンクリートを直打ちしてもよい)。
【0040】
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1…構造物(地下構造物)、2…壁体、2a…外周面、2b…内周面、3…底版、4…内部空間、10…床付け面、10’…床付け形成予定面、11…砕石層、20…地盤改良体、21…中空部、22…外周面、23…内周面、30…土留め壁、31…内周面、31a…部分、40…リング支保工、CL…間隙、G…地盤、GL…地面、GP…遮水層、S…埋め戻し土、WL…地下水位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7