(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066194
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240508BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20240508BHJP
【FI】
G06F3/01 570
G06F3/0346 422
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175603
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】平井 敦士
【テーマコード(参考)】
5B087
5E555
【Fターム(参考)】
5B087AA09
5B087AB09
5B087CC33
5B087DD03
5E555AA10
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC04
5E555CA12
5E555CA41
5E555CA42
5E555CB14
5E555CB66
5E555CC01
5E555CC03
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】制御装置において、更なる改善を実現する技術を提供する。
【解決手段】座標取得部26は、検知対象物の時系列の空間座標を取得する。空間座標は、第1方向の座標、第1方向に交差する第2方向の座標、および第1方向と第2方向とに交差する第3方向の座標を含む。機能実行部34は、第1方向の座標の変化に関する所定の第1条件が第1時刻で満たされた後、第1方向の座標の変化に関する所定の第2条件が第2時刻で満たされた場合、第1時刻から第2時刻までの1以上の時刻における、第2方向の座標と、第3方向の座標とに基づいて、操作対象である電子機器に対する処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象物の時系列の空間座標を取得する座標取得部であって、前記空間座標は、第1方向の座標、前記第1方向に交差する第2方向の座標、および前記第1方向と前記第2方向とに交差する第3方向の座標を含む、座標取得部と、
前記第1方向の座標の変化に関する所定の第1条件が第1時刻で満たされた後、前記第1方向の座標の変化に関する所定の第2条件が第2時刻で満たされた場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、操作対象である電子機器に対する処理を実行する機能実行部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記空間座標に基づき、前記検知対象物の前記第1方向の速度を算出する算出部であって、前記検知対象物の前記第1方向の座標が小さくなるときの前記速度は負方向の速度である、算出部と、
前記速度が負方向の速度であり、かつ前記速度の絶対値が、所定値である第1速度閾値以上であるという前記第1条件が満たされるかを判定し、前記速度が正方向の速度であるという前記第2条件が満たされるかを判定する判定部と、
をさらに備え、
前記機能実行部は、前記判定部が、前記第1時刻で前記第1条件が満たされ、かつ前記第2時刻で前記第2条件が満たされると判定した場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、前記電子機器に対する処理を実行する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記速度が0または正方向の速度であるという前記第2条件が満たされるかを判定する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記速度が、正方向の速度であり、かつ所定値である第2速度閾値以上であるという前記第2条件が満たされるかを判定する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記空間座標に基づき、前記検知対象物の前記第1方向の速度を算出する算出部であって、前記検知対象物の前記第1方向の座標が小さくなるときの前記速度は負方向の速度である、算出部と、
前記速度が負方向の速度であり、かつ前記速度の絶対値が、所定値である第1速度閾値以上であるという前記第1条件が満たされるかを判定し、前記速度が負方向の速度であり、かつ前記速度の絶対値が、前記第1速度閾値よりも小さい、所定値である第2速度閾値以下であるという前記第2条件が満たされるかを判定する判定部と、
をさらに備え、
前記機能実行部は、前記判定部が、前記第1時刻で前記第1条件が満たされ、かつ前記第2時刻で前記第2条件が満たされると判定した場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、前記電子機器に対する処理を実行する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記電子機器はディスプレイであり、
前記第1方向は、前記ディスプレイの表示面の法線方向である、
請求項2から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記空間座標に基づき、前記第2方向における前記検知対象物の所定時間当たりの移動量である第1移動量を定期的に算出し、
前記判定部は、前記第1移動量が、所定値である第1移動量閾値以下であるという第3条件が満たされるかを判定し、
前記機能実行部は、前記判定部が、前記第1時刻で前記第1条件と前記第3条件が満たされ、かつ前記第2時刻で前記第2条件が満たされると判定した場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、前記電子機器に対する処理を実行する、
請求項2から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記空間座標に基づき、前記第3方向における前記検知対象物の所定時間当たりの移動量である第2移動量を定期的に算出し、
前記判定部は、前記第2移動量が、所定値である第2移動量閾値以下であるという第4条件が満たされるかを判定し、
前記機能実行部は、前記判定部が、前記第1時刻で前記第1条件と前記第3条件と前記第4条件とが満たされ、かつ前記第2時刻で前記第2条件が満たされると判定した場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、前記電子機器に対する処理を実行する、
請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記空間座標に基づき、前記第1時刻から前記第2時刻までの間のうち所定期間における、前記第2方向の座標を平均化した第1平均座標と、前記第3方向の座標を平均化した第2平均座標と、を算出する平均化部を備え、
前記機能実行部は、前記判定部が、前記第1時刻で前記第1条件が満たされ、かつ前記第2時刻で前記第2条件が満たされると判定した場合、前記第1平均座標と、前記第2平均座標と、に基づいて、前記電子機器に対する処理を実行する、
請求項2から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記算出部は、前記空間座標に基づき、前記第1時刻から前記第2時刻までの前記第1方向における前記検知対象物の移動量の合計である合計移動量を算出し、
前記判定部は、前記合計移動量が、所定値である合計移動量閾値以上であるという移動量条件が満たされるかを判定し、
前記機能実行部は、前記判定部が、前記第1時刻で前記第1条件が満たされ、前記第2時刻で前記第2条件が満たされ、かつ前記移動量条件が満たされると判定した場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、前記電子機器に対する処理を実行する、
請求項2から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
検知対象物の時系列の空間座標を取得するステップであって、前記空間座標は、第1方向の座標、前記第1方向に交差する第2方向の座標、および前記第1方向と前記第2方向とに交差する第3方向の座標を含む、ステップと、
前記第1方向の座標の変化に関する所定の第1条件が第1時刻で満たされた後、前記第1方向の座標の変化に関する所定の第2条件が第2時刻で満たされた場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、操作対象である電子機器に対する処理を実行するステップと、
を備える制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェスチャーによりユーザが指示を入力する情報処理装置が知られている(たとえば特許文献1参照)。この情報処理装置では、座標算出手段は、検知対象となる物体の少なくとも1箇所の座標を算出する。制御手段は、所定の順番が規定された複数の項目のうち少なくとも1つの項目が選択対象であることを表示手段に表示させ、座標の変化に基づいて、選択対象の項目を所定の順番に従って変更する。制御手段は、座標の変化が所定の条件を満たすと、選択対象の項目に応じた処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザによる操作入力を受け付ける制御装置において、更なる改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の制御装置は、検知対象物の時系列の空間座標を取得する座標取得部であって、空間座標は、第1方向の座標、第1方向に交差する第2方向の座標、および第1方向と第2方向とに交差する第3方向の座標を含む、座標取得部と、第1方向の座標の変化に関する所定の第1条件が第1時刻で満たされた後、第1方向の座標の変化に関する所定の第2条件が第2時刻で満たされた場合、第1時刻から第2時刻までの1以上の時刻における、第2方向の座標と、第3方向の座標とに基づいて、操作対象である電子機器に対する処理を実行する機能実行部と、を備える。
【0006】
本開示の別の態様は、制御方法である。この方法は、検知対象物の時系列の空間座標を取得するステップであって、空間座標は、第1方向の座標、第1方向に交差する第2方向の座標、および第1方向と第2方向とに交差する第3方向の座標を含む、ステップと、第1方向の座標の変化に関する所定の第1条件が第1時刻で満たされた後、第1方向の座標の変化に関する所定の第2条件が第2時刻で満たされた場合、第1時刻から第2時刻までの1以上の時刻における、第2方向の座標と、第3方向の座標とに基づいて、操作対象である電子機器に対する処理を実行するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記の態様により、更なる改善を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態の情報処理システムのブロック図である。
【
図2】空中押し込み動作を説明するための斜視図である。
【
図3】空中押し込み動作時の指先の位置と時間の関係の一例を示す図である。
【
図4】空中押し込み動作時の
図1の制御装置の処理を説明するための図である。
【
図5】
図1の情報処理システムの処理を示すフローチャートである。
【
図6】別の第2条件を用いた、空中押し込み動作時の制御装置の処理を説明するための図である。
【
図7】さらに別の第2条件を用いた、空中押し込み動作時の制御装置の処理を説明するための図である。
【
図8】第2の実施の形態の情報処理システムの処理を説明するための図である。
【
図9】第2の実施の形態の情報処理システムの処理を示すフローチャートである。
【
図10】第3の実施の形態の情報処理システムのブロック図である。
【
図11】第3の実施の形態の情報処理システムの処理を示すフローチャートである。
【
図12】第4の実施の形態の空中押し込み動作時の制御装置の処理を説明するための図である。
【
図13】第4の実施の形態の情報処理システムの処理を示すフローチャートである。
【
図14】第2の実施の形態、第3の実施の形態、および第4の実施の形態を組み合わせた情報処理システムの処理を示すフローチャートである。
【
図15】第5の実施の形態の情報処理システムに対する空中押し込み動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、工程には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の情報処理システム1のブロック図である。情報処理システム1は、センサ10、制御装置12、およびディスプレイ14を備える。
【0011】
情報処理システム1は、室内等に設置されてもよく、自動車などの車両に搭載されてもよく、用途は特に限定されない。ユーザは、ディスプレイ14に触れず空中で手の指先を動かすことで、動きに応じた操作を制御装置12に対して入力でき、制御装置12は入力された操作に応じた処理を実行する。ユーザが空中で指先を動かす動作は、空中タッチ動作またはジェスチャー動作とも呼べる。本実施の形態では、ユーザが指先をディスプレイ14の表示面に向けて空中で押し込む動作を検出する処理について主に説明する。この動作は、空中押し込み動作または空中クリック動作とも呼べる。
【0012】
センサ10は、例えば深度カメラであり、ディスプレイ14の表示面15の前に位置するユーザを撮像可能な位置に設置される。センサ10は、ユーザを定期的に撮像し、撮像した時系列の距離画像を制御装置12に出力する。撮像する頻度は、実験やシミュレーションにより適宜定めることができ、例えば、1秒間に複数回であってよい。距離画像は、画像内の各位置の空間座標の情報を含む。この空間座標は、センサ10に固有の3次元直交座標系における座標である。
【0013】
制御装置12は、センサ10から供給された時系列の距離画像に基づいて、ユーザの指先の動きを認識し、指先の動きに応じた操作入力を受け付け、その操作に応じた処理を実行する。操作に応じた処理は、操作対象であるディスプレイ14に対する処理を含む。操作対象は、ディスプレイ14に限らず、例えば、照明装置、スピーカなどの他の電子機器であってもよい。
【0014】
指先は操作入力に利用される検知対象物の一例であり、検知対象物は指先には限られない。検知対象物の他の一例として、ユーザの身体の一部分である握り拳または手のひらなどが挙げられる。検知対象物は、ユーザの身体の一部分に限らず、ユーザの手に保持された物体またはユーザの身体に装着された物体であってもよい。
【0015】
ディスプレイ14は、制御装置12の制御に従い画像を表示する。ディスプレイ14は、例えば、室内設置用の数十インチ以上の画面サイズのものでもよいし、車載用のより小さい画面サイズのものでもよい。
【0016】
図2は、空中押し込み動作を説明するための斜視図である。
図2では、センサ10と制御装置12の図示を省略する。
図2に示すように、情報処理システム1は、3次元直交座標系のX軸、Y軸、Z軸を規定する。Z軸は、第1方向に延びる。第1方向は、Z方向とも呼べる。図示する例では、第1方向は、ディスプレイ14の表示面15の法線方向である。第1方向の座標をZ座標とする。例えば、表示面15上のZ座標が0であり、表示面15から離れるほどZ座標が大きくなる。X軸は、第1方向に直交する第2方向に延びる。第2方向は、X方向とも呼べる。第2方向の座標をX座標とする。Y軸は、第1方向と第2方向とに直交する第3方向に延びる。第3方向は、Y方向とも呼べる。第3方向の座標をY座標とする。X軸とY軸は、例えば、表示面15内に延びる。
【0017】
図2に示すように、矢印A1に沿って、ユーザが指先50を表示面15に近づけてから遠ざける空中押し込み動作を行った場合、制御装置12は、この動作を検出する。
【0018】
図3は、空中押し込み動作時の指先50の位置と時間の関係の一例を示す。
図3は、等しい時間間隔で指先50の位置を示す。指先50のZ座標が小さくなるときの指先50のZ方向の速度は負の値であるとする。指先50のZ方向の速度が負の値である場合、指先50のZ方向の速度は、負方向の速度であるとする。本発明者は、空中押し込み動作時の指先50の座標の変化を解析した結果、
図3に示すように、指先50がディスプレイ14に近づくときに指先50のZ方向の速度の絶対値が増加してから低下し、次に指先50が停止し、次に指先50が逆方向に戻ることを認識した。このような指先50の動作は、押し込み動作の反動動作とも呼べる。
【0019】
そこで、制御装置12は、指先50のZ方向の速度が負方向の速度であり、かつZ方向の速度の絶対値が、正の所定値である第1速度閾値以上になった後、Z方向の速度が負方向の速度から正方向の速度に反転した場合、Z方向の速度が負方向の速度から正方向の速度に反転したときの指先50のX座標とY座標を特定し、特定されたX座標とY座標に基づいて、押し込み動作に応じた処理を実行する。押し込み動作に応じた処理は、例えば、ディスプレイ14の画面上における特定されたX座標とY座標の位置に、その位置がクリックされたこと、即ち、その位置が決定されたことを示す画像を表示させる処理を含んでよい。
【0020】
例えば、ディスプレイ14に操作ボタンなどの複数の項目が表示されている場合、制御装置12は、押し込み動作を検出する前に、複数の項目のうち、指先50の向いている方向の項目を強調表示しない。つまり、制御装置12は、押し込み動作を検出する前に、指先50の位置に対応する選択対象の項目を特定できるような画像をディスプレイ14に表示させない。
【0021】
よって、所望の位置が選択対象となっていることを目視で確認することなく、指先50のX座標とY座標を決定するための動作を、比較的短時間で、直感的に、ユーザに行わせることができる。
【0022】
これに対して、比較例として、所定の決定動作を検出する前に、指先に対応する選択対象の項目をディスプレイに強調表示させる検出装置を検討する。この比較例では、指先の位置に応じて、複数の項目の中から選択対象の項目を変更できる。ユーザは、ディスプレイの前で指先を上下左右に動かし、所望の項目が選択対象の項目として強調表示された状態で、指先により所定の決定動作を行う。検出装置は、決定動作が完了したことを検出したときに選択対象となっている項目に決定し、決定した項目に応じた処理を実行する。比較例では、ユーザは、所望の項目が選択対象となっていることを目視で確認してから、決定動作を行うため、直感性を損なってしまう可能性がある。また、比較例の決定動作として、例えば、一定時間の間、指先を停止する動作、指先で円を描くなどの特定のジェスチャー動作、または一定の距離だけ手前に指先を引く動作などがある。これらの決定動作が完了したことを比較例の検出装置が検出するまでの時間は、比較的長い。
【0023】
本実施の形態では、既述のように、これらの比較例の課題を解決できる。例えば、ユーザが空中押し込み動作を異なる位置で連続して繰り返す場合、制御装置12は、比較例よりも短時間で複数回の操作を受け付けることができる。
【0024】
以下、制御装置12の動作をより詳しく説明する。
図1に示すように、制御装置12は、制御部20および記憶部22を備える。制御部20は、画像取得部24、座標取得部26、算出部28、判定部30、機能実行部34、および表示出力部36を有する。
【0025】
制御部20の構成は、ハードウェア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。制御装置12は、例えばプロセッサとメモリとを備え、プロセッサがメモリにロードされたプログラムを実行することによって、制御部20および制御部20が有する各機能ブロックの機能を実現する。
【0026】
記憶部22は、各種情報を記憶する。記憶部22は、メモリまたはストレージのような、情報(言い換えるとデータ)を記憶するためのハードウェアにより実現される。記憶部22は、座標情報、速度閾値情報、およびモード情報を保持する。座標情報は、センサ10の設置位置の空間座標、センサ10の取り付け角度、およびディスプレイ14の設置位置の空間座標を含む。速度閾値情報は、第1速度閾値と第2速度閾値の情報を含む。座標情報、速度閾値情報、およびモード情報の詳細は後述する。
【0027】
画像取得部24は、ディスプレイ14の前に位置するユーザを撮像した時系列の距離画像をセンサ10から取得し、取得したそれぞれの距離画像を画像認識することで、ユーザの指先50を検出する。指先50の検出には公知の画像認識技術を利用できる。画像取得部24は、検出した指先50の空間座標を時系列に取得し、座標取得部26に出力する。
【0028】
座標取得部26は、画像取得部24から供給されたセンサ10の座標系でのユーザの指先50の空間座標と、記憶部22に記憶された座標情報に含まれるセンサ10の設置位置の空間座標およびセンサ10の取り付け角度とに基づいて、情報処理システム1の3次元直交座標系でのユーザの指先50の時系列の空間座標を演算し、取得する。座標取得部26は、取得した空間座標を算出部28に出力する。
【0029】
算出部28は、座標取得部26から供給された空間座標に基づき、指先50のZ方向の速度を時系列に算出し、算出したZ方向の速度を判定部30に供給する。
【0030】
判定部30は、記憶部22に記憶された速度閾値情報に基づいて、算出部28から供給されたZ方向の速度と、第1速度閾値と、第2速度閾値との大小関係を判定する。判定部30は、指先50のZ方向の速度が負方向の速度であり、かつZ方向の速度の絶対値が第1速度閾値以上であるという所定の第1条件が満たされるかを判定する。判定部30は、第1条件が満たされた場合、クリックモードに遷移する。クリックモードとは、空中押し込み動作を受け付けるための動作受け付けモードである。
【0031】
判定部30は、クリックモードにおいて、Z方向の速度が、正方向の速度であり、かつ第2速度閾値以上であるという所定の第2条件が満たされるかを判定する。ここでは、第2速度閾値は、ゼロより僅かに大きい正の値である。第2速度閾値は、Z方向の速度が負方向の速度から正方向の速度に反転した時刻を精度良く判定できるように定められてよい。つまり、第2条件は、Z方向の速度が正方向の速度であることであってもよい。
【0032】
第1条件と第2条件は、それぞれ、指先50のZ方向の座標の変化に関する条件である。第1速度閾値と第2速度閾値は、実験またはシミュレーションにより適宜定めることができる。第1速度閾値と第2速度閾値は、ユーザが設定できてもよい。判定部30は、判定結果を機能実行部34に供給する。
【0033】
機能実行部34は、判定部30が、第1時刻で第1条件が満たされ、かつ第1時刻より後の第2時刻で第2条件が満たされると判定した場合、第2時刻における指先50のX座標とY座標とに基づいて、ディスプレイ14に対する処理を実行する。記憶部22に保持されたモード情報は、クリックモードにおいて第2条件が満たされた場合に実行すべき処理内容に関する情報を含む。例えば、機能実行部34は、記憶部22に保持されたモード情報に基づき、決定したX座標とY座標および押し込み動作に応じた処理が実行された画像データを生成し、表示出力部36に供給する。
【0034】
なお、機能実行部34は、第2時刻における指先50のX座標とY座標に限らず、第1時刻から第2時刻までの間の1の時刻における指先50のX座標とY座標とに基づいて、処理を実行すればよい。
【0035】
表示出力部36は、機能実行部34から供給された画像データをディスプレイ14に出力し、ディスプレイ14に画像を表示させる。
【0036】
図4は、空中押し込み動作時の
図1の制御装置12の処理を説明するための図である。
図4の横軸は、時刻0からの経過時間を示し、縦軸は、Z座標とZ方向の速度を示す。
図4では、経過時間に応じた指先50のZ座標の変化を実線で示し、そのときのZ方向の速度の変化を破線で示す。
【0037】
指先50がディスプレイ14の表示面に向けて移動を開始し、Z方向の速度が負方向の速度になり、第1時刻t1でZ方向の速度の絶対値が第1速度閾値Vth1と等しくなる。その後、指先50が停止し、表示面から離れる方向に移動し、Z方向の速度が正方向の速度になり、第2時刻t2でZ方向の速度が第2速度閾値Vth2と等しくなる。機能実行部34は、第2時刻t2の指先50のX座標とY座標を特定し、ディスプレイ14に対する処理を実行する。
【0038】
次に、以上の構成による情報処理システム1の全体的な動作を説明する。
図5は、
図1の情報処理システム1の処理を示すフローチャートである。判定部30は、Z方向の速度が負方向の速度であり、かつZ方向の速度の絶対値が第1速度閾値Vth1以上であるか判定する(S10)。この条件が満たされなければ(S10のN)、判定部30はS10の処理に戻る。Z方向の速度が負方向の速度であり、かつZ方向の速度の絶対値が第1速度閾値Vth1以上である場合(S10のY)、判定部30は、クリックモードに遷移する(S12)。判定部30は、Z方向の速度が正方向の速度であり、かつ第2速度閾値Vth2以上であるか判定する(S14)。この条件が満たされなければ(S14のN)、判定部30はS14の処理に戻る。Z方向の速度が正方向の速度であり、かつ第2速度閾値Vth2以上である場合(S14のY)、機能実行部34は、Z方向の速度が正方向の速度であり、かつ第2速度閾値Vth2以上であると判定されたときの指先50のX座標とY座標を取得し、処理を実行する(S16)。判定部30は、クリックモードを解除し(S18)、S10の処理に戻る。なお、判定部30は、S14の処理において所定時間が経過しても、Z方向の速度が正方向の速度であり、かつ第2速度閾値Vth2以上であるという条件が満たされない場合、S18の処理に移行してクリックモードを解除してよい。
【0039】
ここで、第2条件の別の例を説明する。判定部30は、指先50のZ方向の速度が負方向の速度であり、かつZ方向の速度の絶対値が第2速度閾値Vth2以下であるという第2条件が満たされるかを判定してもよい。第2速度閾値Vth2は、第1速度閾値Vth1よりも小さい。
【0040】
図6は、別の第2条件を用いた、空中押し込み動作時の制御装置12の処理を説明するための図である。Z方向の速度が負方向の速度になり、第1時刻t1でZ方向の速度の絶対値が第1速度閾値Vth1と等しくなった後、指先50が停止する前に、第2時刻t2aでZ方向の速度の絶対値が第2速度閾値Vth2と等しくなる。つまり、指先50をZ方向に移動させる速度の絶対値が低下したときに、制御装置12は指先50のX座標とY座標を決定できる。
図4の例と比較して、第1時刻t1から第2時刻t2aまでの時間を短くでき、制御装置12は、空中押し込み動作が行われたことをより早いタイミングで決定できる。
【0041】
また、さらに別の第2条件を用いてもよい。判定部30は、指先50のZ方向の速度が、第2速度閾値Vth2と等しいか、または、正方向の速度であるという第2条件が満たされるかを判定してもよい。第2速度閾値Vth2は、0である。
図7は、さらに別の第2条件を用いた、空中押し込み動作時の制御装置12の処理を説明するための図である。第1時刻t1でZ方向の速度の絶対値が第1速度閾値Vth1と等しくなった後、指先50が停止した第2時刻t2bで、Z方向の速度は第2速度閾値Vth2と等しくなる。つまり、指先50がZ方向に関して停止したときに、制御装置12は指先50のX座標とY座標を決定できる。
図4の例と比較して、第2速度閾値Vth2が小さいので、第1時刻t1から第2時刻t2aまでの時間を短くでき、制御装置12は、空中押し込み動作が行われたことをより早いタイミングで決定できる。
【0042】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、判定部30がクリックモードに遷移するための条件が、X方向の移動量とY方向の移動量に関する条件も含むことが、第1の実施の形態と異なる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0043】
図8は、第2の実施の形態の情報処理システム1の処理を説明するための図である。情報処理システム1が空中での指先50のスライド動作またはフリック動作も受け付け可能な場合、指先50が表示面15に近づきながらスライド動作またはフリック動作を行う可能性がある。つまり、
図8の矢印A3の方向に指先50が動く場合がある。この場合、第1の実施の形態の処理では、ユーザが空中での押し込み動作を行う意図を持たずに矢印A3の方向に指先50を動かした場合にも、判定部30がクリックモードに遷移する可能性がある。
【0044】
そこで、本実施の形態では次の処理を行う。算出部28は、算出した空間座標に基づき、X方向における指先50の所定時間当たりの移動量である第1移動量と、Y方向における指先50の所定時間当たりの移動量である第2移動量と、を定期的に算出する。算出部28は、算出した第1移動量と第2移動量を判定部30に供給する。所定時間は、センサ10による距離画像の撮像間隔の自然数倍であり、実験またはシミュレーションにより適宜定めることができる。
【0045】
記憶部22は、図示しない移動量閾値情報をさらに保持する。移動量閾値情報は、所定値である第1移動量閾値と、所定値である第2移動量閾値の情報を含む。第1移動量閾値と第2移動量閾値は、実験またはシミュレーションにより適宜定めることができる。第1移動量閾値と第2移動量閾値は、ユーザが設定できてもよい。
【0046】
判定部30は、記憶部22に保持された移動量閾値情報に基づき、算出部28で算出された第1移動量が第1移動量閾値以下であるという第3条件が満たされるかを判定し、かつ、算出部28で算出された第2移動量が第2移動量閾値以下であるという第4条件が満たされるかを判定する。判定部30は、第1条件、第3条件、および第4条件が満たされた場合、クリックモードに遷移する。
【0047】
図8に示す領域R1は、第1移動量閾値と第2移動量閾値で定められる領域の一例を示す。矢印A3の方向に指先50が動いた場合、指先50の位置は領域R1を外れるため、第3条件と第4条件が満たされない。そのため、第2の実施の形態において判定部30はクリックモードに遷移しない。よって、情報処理システム1においてユーザの意図しない動作が実行されることを抑制できる。
【0048】
一方、矢印A2の方向に指先50が動いた場合、指先50の位置は領域R1に入っているため、第3条件と第4条件が満たされる。そのため、判定部30はクリックモードに遷移する。
【0049】
機能実行部34は、判定部30が、第1時刻で第1条件と第3条件と第4条件とが満たされ、かつ第2時刻で第2条件が満たされると判定した場合、第1時刻から第2時刻までの1の時刻におけるX方向の座標とY方向の座標とに基づいて、ディスプレイ14に対する処理を実行する。
【0050】
なお、判定部30は、第3条件と第4条件のいずれか一方を用い、他方を用いずに処理を行ってもよい。例えば、情報処理システム1がX方向のみのスライド動作またはフリック動作を受け付け可能な場合、ユーザはY方向にスライド動作またはフリック動作を行う可能性は低い。そのような場合には、判定部30は、第3条件を用い、第4条件を用いなくてもよい。これにより、制御部20の処理を簡素化できる。
【0051】
図9は、第2の実施の形態の情報処理システム1の処理を示すフローチャートである。
図9に示される処理では、
図5のS10の処理に替えてS10aの処理が行われる。判定部30は、X方向の第1移動量が第1移動量閾値以下であり、Y方向の第2移動量が第2移動量閾値以下であり、Z方向の速度が負方向の速度であり、かつZ方向の速度の絶対値が第1速度閾値Vth1以上であるか判定する(S10a)。この条件が満たされなければ(S10aのN)、判定部30はS10aの処理に戻る。第1移動量が第1移動量閾値以下であり、第2移動量が第2移動量閾値以下であり、Z方向の速度が負方向の速度であり、かつZ方向の速度の絶対値が第1速度閾値Vth1以上である場合(S10aのY)、判定部30は、クリックモードに遷移する(S12)。以降の処理は
図5に示される処理と同様である。
【0052】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、機能実行部34が、指先50のX座標の平均値とY座標の平均値に基づいてディスプレイ14に対する処理を実行することが、第1の実施の形態と異なる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0053】
図10は、第3の実施の形態の情報処理システム1のブロック図である。制御部20は、平均化部32をさらに備える。判定部30は、判定結果を平均化部32にも供給する。
【0054】
平均化部32は、判定部30による判定結果と算出部28で算出された空間座標とに基づき、第1時刻から第2時刻までの間のうち所定期間における、指先50のX方向の座標を平均化した第1平均座標と、指先50のY方向の座標を平均化した第2平均座標と、を算出する。平均化部32は、算出した第1平均座標と第2平均座標を機能実行部34に供給する。
【0055】
平均化の対象とする所定期間は、第1時刻から第2時刻までの全体の期間であってもよいし、一部の期間であってもよい。所定期間の始点と終点は、第1平均座標と第2平均座標がユーザの意図した座標に近づきやすいように、実験またはシミュレーションにより適宜定めることができる。所定期間の始点と終点は、ユーザが設定できてもよい。
【0056】
機能実行部34は、判定部30が、第1時刻で第1条件が満たされ、第2時刻で第2条件が満たされると判定した場合、平均化部32から供給された第1平均座標と、第2平均座標と、に基づいて、ディスプレイ14に対する処理を実行する。
【0057】
この処理は、機能実行部34が、Z方向の座標の変化に関する第1条件が第1時刻で満たされた後、Z方向の座標の変化に関する第2条件が第2時刻で満たされた場合、第1時刻から第2時刻までの複数の時刻における、指先50のX方向の座標と、Y方向の座標とに基づいて、ディスプレイ14に対する処理を実行することに相当する。
【0058】
空中押し込み動作により表示面に近づいたときの指は、X方向とY方向に位置がぶれやすいため、指先50のX座標とY座標が安定しない可能性がある。第1平均座標と第2平均座標を用いることで、指先50の位置に対応するX座標とY座標の算出精度を向上できる。
【0059】
図11は、第3の実施の形態の情報処理システム1の処理を示すフローチャートである。
図11に示される処理では、
図5のS12の処理とS14の処理との間にS20の処理が加わり、
図5のS16の処理に替えてS16aの処理が行われる。S12の処理の次に、平均化部32は、指先50のX座標とY座標をそれぞれ平均化する(S20)。次に、Z方向の速度が正方向の速度であり、かつ第2速度閾値Vth2以上であるという条件が満たされなければ(S14のN)、情報処理システム1の処理は、平均化部32によるS20の処理に戻る。一方、Z方向の速度が正方向の速度であり、かつ第2速度閾値Vth2以上である場合(S14のY)、機能実行部34は、指先50のX座標の第1平均座標と指先50のY座標の第2平均座標を取得し、処理を実行する(S16a)。
【0060】
なお、平均化部32は、指先50のX座標とY座標のそれぞれの重み付け平均を算出してもよい。重みは、第2時刻に近づくほど大きくなってもよく、第2時刻に近づくほど小さくなってもよい。重みは、第1平均座標と第2平均座標がユーザの意図した座標に近づきやすいように、実験またはシミュレーションにより適宜定めることができる。重みは、ユーザによらず所定値であってもよく、ユーザ毎に設定されてもよい。重みがユーザ毎に設定されることで、ユーザの押し込み動作の癖に合わせて、指先50の位置に対応するX座標とY座標の算出精度をさらに向上できる。
【0061】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、空中押し込み動作を受け付けるための条件が、クリックモードにおけるZ方向の移動量に関する条件も含むことが、第1の実施の形態と異なる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0062】
判定部30は、判定結果を算出部28にも供給する。算出部28は、算出した空間座標に基づき、第1時刻から第2時刻までのZ方向における指先50の移動量の合計である合計移動量を算出し、判定部30に供給する。
【0063】
記憶部22は、図示しない移動量閾値情報をさらに保持する。移動量閾値情報は、所定値である合計移動量閾値の情報を含む。合計移動量閾値は、実験またはシミュレーションにより適宜定めることができる。合計移動量閾値は、ユーザが設定できてもよい。
【0064】
判定部30は、記憶部22に保持された移動量閾値情報に基づき、算出部28で算出された合計移動量が合計移動量閾値以上であるという移動量条件が満たされるかを判定し、判定結果を機能実行部34に供給する。
【0065】
機能実行部34は、判定部30が、第1時刻で第1条件が満たされ、第2時刻で第2条件が満たされ、かつ移動量条件が満たされると判定した場合、第1時刻から第2時刻までの1の時刻における指先50のX方向の座標とY方向の座標とに基づいて、ディスプレイ14に対する処理を実行する。
【0066】
図12は、第4の実施の形態の空中押し込み動作時の制御装置12の処理を説明するための図である。この例では、第1時刻t1から第2時刻t2までのZ方向の合計移動量が合計移動量閾値以上であるため、機能実行部34は、第2時刻t2における指先50のX座標とY座標に基づいて処理を実行する。
【0067】
例えば、移動量条件を考慮しない場合、ユーザが空中押し込み動作を行う意図を持たずに指先50をZ方向に動かした際にも、指先50のZ方向の速度が第1速度閾値Vth1以下になったと判定されて、ディスプレイ14に対する処理が実行されうる。結果として、ユーザの意図しない、ディスプレイ14に対する動作が実行される可能性がある。本実施の形態においては、移動量条件を考慮することによって、ユーザが空中押し込み動作を行う意図を持って指先50を動かした場合にのみ、ディスプレイ14に対する処理が実行される可能性を高めている。よって、ユーザの意図しない、ディスプレイ14に対する処理が実行されることを抑制できる。
【0068】
図13は、第4の実施の形態の情報処理システム1の処理を示すフローチャートである。
図13に示される処理では、
図5のS12とS14の処理の間にS22の処理が加わり、
図5のS14の処理に替えてS14aの処理が行われる。S12の処理の次に、算出部28は、Z方向における指先50の移動量を合計する(S22)。次に、判定部30は、Z方向の速度が正方向の速度であり、Z方向の速度が第2速度閾値Vth2以上であり、かつZ方向の合計移動量が合計移動量閾値以上であるか判定する(S14a)。この条件が満たされなければ(S14aのN)、情報処理システム1の処理は、算出部28によるS22の処理に戻る。Z方向の速度が正方向の速度であり、Z方向の速度が第2速度閾値Vth2以上であり、かつZ方向の合計移動量が合計移動量閾値以上である場合(S14aのY)、情報処理システム1の処理は、機能実行部34によるS16の処理に移る。なお、判定部30は、S14aの処理において、所定時間が経過しても、Z方向の速度が正方向の速度であり、Z方向の速度が第2速度閾値Vth2以上であり、かつZ方向の合計移動量が合計移動量閾値以上であるという条件が満たされない場合、S18の処理に移行してクリックモードを解除してよい。
【0069】
なお、以上の第2の実施の形態、第3の実施の形態、第4の実施の形態のうち任意の2つを組み合わせてもよいし、3つを組み合わせてもよい。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0070】
図14は、第2の実施の形態、第3の実施の形態、および第4の実施の形態を組み合わせた情報処理システム1の処理を示すフローチャートである。
図14に示される処理では、
図9のS12とS14の処理の間に
図13のS22と
図11のS20の処理が加わる。
図9のS14の処理に替えて
図13のS14aの処理が行われ、
図9のS16の処理に替えて
図11のS16aの処理が行われる。
【0071】
S12の処理の次に、算出部28は、Z方向における指先50の移動量を合計する(S22)。平均化部32は、指先50のX座標とY座標をそれぞれ平均化する(S20)。S22とS20の処理の順序は逆でもよい。判定部30は、Z方向の速度が正方向の速度であり、Z方向の速度が第2速度閾値Vth2以上であり、かつZ方向の合計移動量が合計移動量閾値以上であるか判定する(S14a)。この条件が満たされなければ(S14aのN)、情報処理システム1の処理は、算出部28によるS22の処理に戻る。Z方向の速度が正方向の速度であり、Z方向の速度が第2速度閾値Vth2以上であり、かつZ方向の合計移動量が合計移動量閾値以上である場合(S14aのY)、機能実行部34は、指先50のX座標の第1平均座標と指先50のY座標の第2平均座標を取得し、処理を実行する(S16a)。
【0072】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態では、情報処理システム1は、第1の実施の形態と異なる方向の空中押し込み動作を検出する。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0073】
図15は、第5の実施の形態の情報処理システム1に対する空中押し込み動作を説明するための図である。
図15(a)は、情報処理システム1がX方向に平行な方向の空中押し込み動作を検出する例を示す。この例では、情報処理システム1は、X方向、Y方向、およびZ方向のいずれかに平行な空中押し込み動作を検出する。
【0074】
情報処理システム1は、第1スピーカ16a、第2スピーカ16b、第3スピーカ16c、および第4スピーカ16dをさらに備える。以下、これらのスピーカを区別しない場合には「スピーカ16」と呼ぶ。第1スピーカ16aと第2スピーカ16bは、ディスプレイ14の左側にY方向に並んで配置されている。第3スピーカ16cと第4スピーカ16dは、ディスプレイ14の右側にY方向に並んで配置されている。スピーカ16は、操作対象である電子機器の一例である。ディスプレイ14と3次元直交座標系の位置関係は、例えば、
図2に示した例と同じである。
【0075】
図示する例では、ユーザは、第1スピーカ16aに向けて指先50を右から左に動かす押し込み動作を行う。算出部28は、指先50の空間座標の変化に基づき、指先50の移動方向がX軸、Y軸、Z軸のうちどの軸の正の方向または負の方向であるか特定する。この例では、算出部28は、指先50の移動方向がX軸の負の方向であることを特定する。算出部28は、指先50の空間座標に基づき、指先50のX方向の速度を時系列に算出する。機能実行部34は、指先50のX方向の速度の絶対値が第1速度閾値Vth1以上になった後、X方向の速度が負方向の速度と正方向の速度との間で反転した場合、X方向の速度が負方向の速度と正方向の速度との間で反転したときの指先50のY座標とZ座標に基づいて、押し込み動作に応じた処理を実行する。押し込み動作に応じた処理は、例えば、X軸の負の方向に位置し、特定されたY座標とZ座標に対応する位置の第1スピーカ16aの電源をオンさせる処理を含んでよい。
【0076】
ユーザが、第2スピーカ16bに向けて指先50を右から左に動かした場合、指先50のX方向の速度が既述の条件を満たせば、機能実行部34は、第2スピーカ16bの電源をオンさせる。この例では、第2スピーカ16bは、X軸の負の方向に位置し、かつ、指先50のX方向の速度が負方向の速度と正方向の速度との間で反転したときの指先50のY座標とZ座標に対応する位置にある。
【0077】
一方、ユーザが、第3スピーカ16cに向けて指先50を左から右に動かした場合、算出部28は、指先50の空間座標の変化に基づき、指先50の移動方向がX軸の正の方向であることを特定する。この場合、算出される指先50のX方向の速度は正の値である。機能実行部34は、指先50のX方向の速度の絶対値が第1速度閾値Vth1以上になった後、X方向の速度が負方向の速度と正方向の速度との間で反転した場合、第3スピーカ16cの電源をオンさせる。この例では、第3スピーカ16cは、X軸の正の方向に位置し、かつ、X方向の速度が負方向の速度と正方向の速度との間で反転したときの指先50のY座標とZ座標に対応する位置にある。
【0078】
また、ユーザが、ディスプレイ14の表示面に向けて指先50を動かした場合、算出部28は、指先50の移動方向がZ軸の負の方向であることを特定する。この場合、第1の実施の形態の処理が実行される。
【0079】
このように、情報処理システム1は、X方向、Y方向、およびZ方向のいずれかに平行な空中押し込み動作を検出できる。よって、ユーザは、空中押し込み動作により、ユーザの正面方向に位置する電子機器に限らず、左、右、上、または下方向に位置する電子機器を操作することもできる。
【0080】
図15(b)は、情報処理システム1が、X方向、Y方向、およびZ方向に交差する方向の空中押し込み動作を検出する例を示す。この例では、情報処理システム1は、任意の方向の空中押し込み動作を検出する。情報処理システム1は、ディスプレイ14aをさらに備える。ディスプレイ14aの表示面15aは、X方向、Y方向、およびZ方向に交差する。
【0081】
ユーザが、ディスプレイ14aの表示面15aの法線方向と平行に指先50を動かすことを想定する。算出部28は、ディスプレイ14を基準として予め設定されている3次元直交座標系における指先50の空間座標の変化に基づき、指先50の移動方向を特定し、特定した移動方向に平行な方向を第1方向とする。算出部28は、第1方向に直交する第2方向、および、第1方向と第2方向とに直交する第3方向を新たに設定する。つまり、算出部28は、予め設定されている3次元直交座標系とは異なる、指先50の移動方向を基準とした新たな3次元直交座標系を設定する。図示する例では、第1方向は、表示面15aの法線方向である。第2方向と第3方向は、例えば、表示面15aに平行な方向である。座標取得部26は、新たな3次元直交座標系でのユーザの指先50の時系列の空間座標を演算し、取得する。算出部28は、新たな3次元直交座標系での指先50の空間座標に基づき、指先50の第1方向の速度を時系列に算出する。この場合、算出される指先50の第1方向の速度は負の値であるとする。ここでは、第1方向について、表示面15aに近づく方向を負、表示面15aから遠ざかる方向を正とする。
【0082】
機能実行部34は、指先50の第1方向の速度が負方向の速度であり、かつ第1方向の速度の絶対値が第1速度閾値Vth1以上になった後、第1方向の速度が負方向の速度から正方向の速度に反転した場合、第1方向の速度が負方向の速度から正方向の速度に反転したときの指先50の第2方向の座標と第3方向の座標に基づいて、押し込み動作に応じた処理を実行する。第2方向の座標と第3方向の座標は、新たな3次元直交座標系における座標である。押し込み動作に応じた処理は、例えば、第2方向と第3方向に平行なディスプレイ14aの表示面15a上における、特定された第2方向の座標と第3方向の座標の位置に、その位置がクリックされたことを示す画像を表示させる処理を含んでよい。
【0083】
このように、情報処理システム1は、X方向、Y方向、およびZ方向に交差する方向の空中押し込み動作を検出できる。よって、ユーザは、空中押し込み動作により、ユーザの左下、右下、左上、または右上方向に位置する電子機器を操作することもできる。
【0084】
なお、第5の実施の形態に対して、第2の実施の形態、第3の実施の形態、第4の実施の形態のうち少なくとも1つを組み合わせてもよい。
【0085】
以上、本開示について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、また、そうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0086】
本開示の一態様は、次の通りである。
【0087】
[項目1]
検知対象物の時系列の空間座標を取得する座標取得部であって、前記空間座標は、第1方向の座標、前記第1方向に交差する第2方向の座標、および前記第1方向と前記第2方向とに交差する第3方向の座標を含む、座標取得部と、
前記第1方向の座標の変化に関する所定の第1条件が第1時刻で満たされた後、前記第1方向の座標の変化に関する所定の第2条件が第2時刻で満たされた場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、操作対象である電子機器に対する処理を実行する機能実行部と、
を備える制御装置。
この態様によれば、第2方向と第3方向の座標を決定するための動作を、短時間で、直感的に、ユーザに行わせることができる。
【0088】
[項目2]
前記空間座標に基づき、前記検知対象物の前記第1方向の速度を算出する算出部であって、前記検知対象物の前記第1方向の座標が小さくなるときの前記速度は負方向の速度である、算出部と、
前記速度が負方向の速度であり、かつ前記速度の絶対値が、所定値である第1速度閾値以上であるという前記第1条件が満たされるかを判定し、前記速度が正方向の速度であるという前記第2条件が満たされるかを判定する判定部と、
をさらに備え、
前記機能実行部は、前記判定部が、前記第1時刻で前記第1条件が満たされ、かつ前記第2時刻で前記第2条件が満たされると判定した場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、前記電子機器に対する処理を実行する、
項目1に記載の制御装置。
この場合、検知対象物を第1方向に空中で押し込んだ後で戻す動作により、直感的に座標を決定できる。
【0089】
[項目3]
前記判定部は、前記速度が0または正方向の速度であるという前記第2条件が満たされるかを判定する、
項目2に記載の制御装置。
この場合、検知対象物を第1方向に押し込んで停止させた後、座標を決定できる。
【0090】
[項目4]
前記判定部は、前記速度が、正方向の速度であり、かつ所定値である第2速度閾値以上であるという前記第2条件が満たされるかを判定する、
項目2に記載の制御装置。
この場合、検知対象物を第1方向に押し込んだ後で戻したときに、座標を決定できる。
【0091】
[項目5]
前記空間座標に基づき、前記検知対象物の前記第1方向の速度を算出する算出部であって、前記検知対象物の前記第1方向の座標が小さくなるときの前記速度は負方向の速度である、算出部と、
前記速度が負方向の速度であり、かつ前記速度の絶対値が、所定値である第1速度閾値以上であるという前記第1条件が満たされるかを判定し、前記速度が負方向の速度であり、かつ前記速度の絶対値が、前記第1速度閾値よりも小さい、所定値である第2速度閾値以下であるという前記第2条件が満たされるかを判定する判定部と、
をさらに備え、
前記機能実行部は、前記判定部が、前記第1時刻で前記第1条件が満たされ、かつ前記第2時刻で前記第2条件が満たされると判定した場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、前記電子機器に対する処理を実行する、
項目1に記載の制御装置。
この場合、検知対象物を第1方向に移動させる速度を低下させたときに、座標を決定できる。
【0092】
[項目6]
前記電子機器はディスプレイであり、
前記第1方向は、前記ディスプレイの表示面の法線方向である、
項目2から5のいずれか一項に記載の制御装置。
この場合、検知対象物を表示面に向かって空中で押し込む動作により、直感的に座標を決定できる。
【0093】
[項目7]
前記算出部は、前記空間座標に基づき、前記第2方向における前記検知対象物の所定時間当たりの移動量である第1移動量を定期的に算出し、
前記判定部は、前記第1移動量が、所定値である第1移動量閾値以下であるという第3条件が満たされるかを判定し、
前記機能実行部は、前記判定部が、前記第1時刻で前記第1条件と前記第3条件が満たされ、かつ前記第2時刻で前記第2条件が満たされると判定した場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、前記電子機器に対する処理を実行する、
項目2から6のいずれか一項に記載の制御装置。
この場合、ユーザの意図しない動作が実行されることを抑制できる。
【0094】
[項目8]
前記算出部は、前記空間座標に基づき、前記第3方向における前記検知対象物の所定時間当たりの移動量である第2移動量を定期的に算出し、
前記判定部は、前記第2移動量が、所定値である第2移動量閾値以下であるという第4条件が満たされるかを判定し、
前記機能実行部は、前記判定部が、前記第1時刻で前記第1条件と前記第3条件と前記第4条件とが満たされ、かつ前記第2時刻で前記第2条件が満たされると判定した場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、前記電子機器に対する処理を実行する、
項目7に記載の制御装置。
この場合、ユーザの意図しない動作が実行されることを抑制できる。
【0095】
[項目9]
前記空間座標に基づき、前記第1時刻から前記第2時刻までの間のうち所定期間における、前記第2方向の座標を平均化した第1平均座標と、前記第3方向の座標を平均化した第2平均座標と、を算出する平均化部を備え、
前記機能実行部は、前記判定部が、前記第1時刻で前記第1条件が満たされ、かつ前記第2時刻で前記第2条件が満たされると判定した場合、前記第1平均座標と、前記第2平均座標と、に基づいて、前記電子機器に対する処理を実行する、
項目2から6のいずれか一項に記載の制御装置。
この場合、座標の算出精度を向上できる。
【0096】
[項目10]
前記算出部は、前記空間座標に基づき、前記第1時刻から前記第2時刻までの前記第1方向における前記検知対象物の移動量の合計である合計移動量を算出し、
前記判定部は、前記合計移動量が、所定値である合計移動量閾値以上であるという移動量条件が満たされるかを判定し、
前記機能実行部は、前記判定部が、前記第1時刻で前記第1条件が満たされ、前記第2時刻で前記第2条件が満たされ、かつ前記移動量条件が満たされると判定した場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、前記電子機器に対する処理を実行する、
項目2から6のいずれか一項に記載の制御装置。
この場合、ユーザの意図しない、電子機器に対する処理が実行されることを抑制できる。
【0097】
[項目11]
検知対象物の時系列の空間座標を取得するステップであって、前記空間座標は、第1方向の座標、前記第1方向に交差する第2方向の座標、および前記第1方向と前記第2方向とに交差する第3方向の座標を含む、ステップと、
前記第1方向の座標の変化に関する所定の第1条件が第1時刻で満たされた後、前記第1方向の座標の変化に関する所定の第2条件が第2時刻で満たされた場合、前記第1時刻から前記第2時刻までの1以上の時刻における、前記第2方向の座標と、前記第3方向の座標とに基づいて、操作対象である電子機器に対する処理を実行するステップと、
を備える制御方法。
この態様によれば、第2方向と第3方向の座標を決定するための動作を、短時間で、直感的に、ユーザに行わせることができる。
【符号の説明】
【0098】
1…情報処理システム、10…センサ、12…制御装置、14,15,18…判定部、20…制御部、22…記憶部、24…画像取得部、26…座標取得部、28…算出部、30…判定部、32…平均化部、34…機能実行部、36…表示出力部。