(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066201
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】手芸用品及び手芸用品の指編み方法
(51)【国際特許分類】
D04D 9/00 20060101AFI20240508BHJP
D04B 1/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
D04D9/00
D04B1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175615
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】390012449
【氏名又は名称】株式会社ユニバル
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕司
【テーマコード(参考)】
4L002
4L049
【Fターム(参考)】
4L002AA00
4L002AB00
4L002BA00
4L002EA00
4L002FA00
4L002FA09
4L049AA11
4L049AA16
4L049AB12
4L049CA01
4L049DA00
(57)【要約】
【課題】手芸の指編みにおいて、指編みしやすい手芸用品を提供する。
【解決手段】本発明の手芸用品1は、編糸Fが編成されて緯方向(横方向)Gに環状(リング10)を構成するともに、径方向(縦方向)JにC字状の横断面Dを構成している。そして、手芸用品1を変成する編糸Fが2本以上の糸fで形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編糸が編成されて緯方向に環状を構成するとともに、径方向にC字状の横断面を構成する手芸用品であって、
前記編糸が2本以上の糸で形成されている、
手芸用品。
【請求項2】
編糸が編成されて緯方向に環状を構成するとともに、径方向にC字状の横断面を構成する手芸用品であって、
前記編糸が弾性の異なる糸で構成されている、
手芸用品。
【請求項3】
編糸が編成されて緯方向に環状を構成するとともに、径方向にC字状の横断面を構成する手芸用品であって、
前記編糸の太さが4mm以下であることを特徴とする、
手芸用品。
【請求項4】
編糸が編成されて緯方向に環状を構成するとともに、径方向にC字状の横断面を構成する手芸用品を、8の字状にねじった交差点を基点として折り曲げて上下に重ね、巻回するように折り曲げて、一方の輪を他方の輪に通して引き締める、
手芸用品の指編み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手芸用品及び手芸用品の指編み方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手芸用に用いられる紐として、様々なものが提案され使用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1の紐は、所定幅の長尺メリヤス編生地の長手方向に沿った両側縁の自然旋回によって紐体が形成される紐体の環状体よりなることを特徴とする伸縮性の環状多用途紐であって、筒状のメリヤス編生地を所定の幅で輪切り状に裁断することによって形成されるものである。また、従来から、靴下製造時に切断されて端材となる靴下のハギレも手芸用紐として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、筒状のメリヤス編生地を所定の幅で輪切り状に裁断するため、切断面から糸が解れ易い。このため、手芸の指編みをする際に編みにくく、完成した手芸品の見栄えも悪い。また、一度筒状に編成した編生地を再度裁断するため、手間がかかり生産効率性が低く、各紐の形状や大きさが不均一であるという問題点がある。
【0006】
また、靴下製造時に切断されて端材となる靴下のハギレも、切断面から糸が解れて手芸の指編みの際に編みにくく見栄えも悪い。また、靴下1足につき2つの端材しか得ることができない。さらに、靴下のハギレは、指編み時に編生地の伸縮性が十分でないため編みにくく、カラーバリエーションも限られるという問題点がある。
【0007】
本発明は、上記のような現状を検討して改善を施した手芸用品及び手芸用品の指編み方法を提供することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、手芸用品及び手芸用品の指編み方法に関するものであり、各請求項で特定される構成を含んでいる。
【0009】
本発明の手芸用品は、編糸が編成されて緯方向に環状を構成するとともに、径方向にC字状の横断面を構成する手芸用品であって、前記編糸が2本以上の糸で形成されている。
【0010】
本発明の手芸用品は、編糸が編成されて緯方向に環状を構成するとともに、径方向にC字状の横断面を構成する手芸用品であって、前記編糸が弾性の異なる糸で構成されている。
【0011】
本発明の手芸用品は、編糸が編成されて緯方向に環状を構成するとともに、径方向にC字状の横断面を構成する手芸用品であって、前記編糸の太さが4mm以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の手芸用品に係る指編み方法は、前記手芸用品を8の字状にねじった交差点を基点として折り曲げて上下に重ね、巻回するように折り曲げて、一方の輪を他方の輪に通して引き締める方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の手芸用品によれば、手芸用品同士を指編みする際に、従来の手芸用紐等と比較して、伸縮性に優れ編み易く且つ編んだ手芸品の耐久性や安定性(伸びすぎない)の両方に優れた効果を発揮する。また、従来の手芸用紐等と比較して、本発明に係る手芸用品は生産効率性が高く、良質且つ多種多彩な手芸用品を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る手芸用品の一実施例を示したもので、(a)は手芸用品の斜視説明図、(b)は(a)の一部破断側面説明図である。
【
図2】同手芸用品の編生地の表面(表目)側を拡大して示した平面説明図である。
【
図3】本発明の手芸用品に係る指編み方法の第一実施例を示したもので、(a)~(f)は指編み方法の説明図、(g)は完成した結びの平面図である。
【
図4】本発明の手芸用品に係る指編み方法の第二実施例を示したもので、(a)~(d)は指編み方法の説明図、(e)は完成した結びの平面図である。
【
図5】本発明の手芸用品に係る指編み方法の第三実施例を示したもので、(a)~(d)は指編み方法の説明図、(e)は完成した結びの平面図である。
【
図6】本発明の手芸用品に係る指編み方法の第四実施例を示したもので、(a)~(d)は指編み方法の説明図、(e)は完成した結びの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1~6を参照して本発明の一実施例について説明する。なお、上下、左右等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。
【0016】
<手芸用品の一実施例>
本発明に係る手芸用品の一実施例を
図1~2を参照しながら説明する。本発明の手芸用品1は、編糸Fが編成されて緯方向(横方向)G、即ち、周方向(長手方向)Bに環状に形成されている。換言すると、手芸用品1は、全体として閉ループを形成するリング状構造である。即ち、手芸用品1のリング10は、編地Aが筒状に編成されており、繋ぎ目のないシームレスな輪状を構成する。
【0017】
手芸用品1は、編機によって手芸用品1に係るリング10の周方向(長手方向)Bに供給された編糸Fで編目(ループ)Lを形成し、これらの編目Lを径方向(縦方向)Jに連結させる緯編みによって編成される。手芸用品1は、緯編みの三原組織(平編み、ゴム編み、パール編み)のうち、平編みが好ましい。平編みは、天竺編み、メリヤス編み、ジャージー(jersey)とも称される。
【0018】
図2で示すように平編みAは、左右が緯方向(横方向)G、上下が経方向(縦方向)Jであり、図の手前側が通常の表面(表目)K側に相当し、奥(背面)側が通常の裏面(裏目)M側に相当する。平編みAを構成する各段の編糸Fは、通常の表面(表目)K側からみて、「Ω」のような編目Lとなる。また、平編みAは、編糸FのΩ字状の編目構造から、平編みAの緯方向(横方向)Gに伸縮し易いという特徴を有する。
【0019】
手芸用品1では、平編みAの緯方向(横方向)Gがリング10の延在方向(長手方向)即ち、周方向Bに一致しているので、手芸用品1が長手方向Bに沿って伸縮し易い。また、手芸用品1は、リング10の周方向Bが平編みAの緯方向(横方向)Gと一致しているため、リング10が周方向(長手方向)Bに長くなるように引き伸ばすことができ、周方向Bに広範囲で伸縮可能である。
【0020】
手芸用品1は、平編みAによって編成され、平編みAの緯方向(横方向)Gに沿って延在している。即ち、手芸用品1は、平編みAの緯方向(横方向)Gに長く、平編みAの経方向(縦方向)Jに短い。換言すると、手芸用品1の編地Aは帯状体であって(
図1(b)参照)、帯の幅方向(幅方向の高さ)Vが平編みAの経方向(縦方向)Jに実質的に一致し、帯状体の長手方向Bが平編みAの緯方向(横方向)Gと実質的に一致する。
【0021】
手芸用品1は、平編みされた編地Aからなり且つ平編みの緯方向(横方向)Gに沿って延在しているので、平編み特有の性質により緯方向(横方向)G、即ち、帯状編物の周方向(長手方向)B(
図1(b)参照)の弾力性が高く周方向Bに伸縮し易い。換言すると、手芸用品1の周方向Bと平編みAの緯方向(横方向)Gが一致しているため、手芸用品が長手方向(周方向)Bに沿って伸縮し易いこととなる。これにより、手芸用品1は長手方向Bへの伸縮性に優れ且つ平編み特有の耐久性にも富み、手芸用品1を用いて指編みする際、従来の手芸用紐と比較して格段に編み易く使い勝手もよい。
【0022】
平編みAでは、Ω字状の編目構造であることから、J1方向の端部13は、編地Aの手前側(表面K側)に近接するように反り返って湾曲され、同様に、J2方向の端部14も、編地A手前側(表面K側)に近接するように反り返って湾曲される(
図1(b)及び
図2参照)。これにより、手芸用品1は、
図1に示すように、いわゆる表面K側が内側に位置するように両端部13,14が反り返って巻かれて、全体としてC字状の横断面Dを採る。このとき、両端部13,14の端縁やその近傍部分の外面(即ち、平編みAの裏面M)は、C字状の内面(即ち、平編みAの表面K)に接触する。
【0023】
手芸用品1は、平編みの性質上、平編みAの経方向(縦方向)J、即ち、平編みされた帯状編物の幅方向Vの両端部13,14が平編みAの表面Kを内面とするように反り返って湾曲し、全体としてC字状の横断面Dを有する(
図1(b)参照)。このように、横断面DのC字形状は、平編みされた編生地自体即ち、平編みの編成構造により生成されるものである。このC字状横断面Dの構造により、手芸用品1は全体として弾力性が高まり、ある程度の太さ(嵩)と弾力性とを備える。これにより、手芸用品1を用いて製作した手芸品にも厚みやボリューム感が反映され、独特の曲線による美観性を得ることができる。また、編み込んだ手芸用品1同士の隙間やズレが生じにくいというメリットもある。
【0024】
平編みAの経方向(縦方向)Jは、手芸用品1の幅ないし高さ方向V(
図1(b)参照)と一致しているので、手芸用品1は、両端部13,14が巻込まれるように変形されて、横断面Dが全体としてC字形状を有することになる。両端部13,14が内側に巻込まれたC字状の横断面Dを有する手芸用品1は、V方向の圧縮力に対してC字状の中央部16の編目構造が弾力性を与えるだけでなく、C字状の内側に巻込まれた両端部13,14が隣接部分に軽く接触して積層構造をとり、該積層構造により弾力性を向上させる。その結果、手芸用品1は横断面DがC字状で、弾力性及び伸縮性に富んだ無端リング10の形態を採り、手芸用品1を用いた手芸品において美しい曲線表現が可能となる。
【0025】
手芸用品1の太さ(嵩)、幅(幅方向の高さV)や、C字状の曲率半径は、手芸用品1の編み方や編糸Fの太さ(直径)や素材を選択すること等により所望に応じて任意に設定をすることができる。また、手芸用品1の周長(リング10の一周分の長さ)も、所望に応じて任意に設定することができる。
【0026】
手芸用品1は、例えば
図1(a)に示したように、リング10の内周面12側にC字状の開口部15を有するタイプの手芸用品であってもよいし、開口部15が手芸用品1の外周面に位置してもよい(図示せず)。即ち、
図1(a)に示すリング10の内周面12と外周面11が逆となるように編地Aをひっくり返してもよい。このように、リング10の外側を中央部16とするか、開口部15とするかを任意に選択することができる。
【0027】
手芸用品1は、C字状の両端部13,14が開口した状態(開口部15)である。これは、手芸用品1が1本の編糸Fから筒状の編地Aが編成されることから、従来の編生地を裁断等した手芸用紐に比べて、両端部13,14の糸が解けにくいため開口部15を縫合又は接着しなくてもよい。なお、両端部13,14を縫合糸で縫合してもよいし、接着剤等によって接着しても特段問題ない。これにより、湾曲その他の変形によりC字状の開口部15が過度に拡がるように割れるおそれがないだけでなく、手芸用品1の弾力性や嵩が確実に保持され易くなる。
【0028】
また、手芸用品1は、例えば2つの手芸用品1,1を並設して相互に縫い合わせて、より太い手芸用品1を形成するようにしてもよい。その場合、2つの手芸用品1,1を、端部13,14で当接させ縫合等により一体化して形成してもよいし、一方の手芸用品1のリング10の外周面11又は内周面12に他方の手芸用品1を並設し外周側の手芸用品1の内周面12と内周側の手芸用品1の外周面11とを縫合等により一体化して形成してもよい。その場合、外周側の手芸用品1としては、内周側の手芸用品1よりもリング10の周長が長いものを準備してもよい。また、手芸用品1は、周方向Bに十分な長さと伸縮性とを備えているので、同じ周長の手芸用品1を用いてもよい。
【0029】
手芸用品1の編糸Fは、2本以上の糸fで形成される。編糸Fを構成する2本以上の糸fは、同種類の糸f1で構成されてもよいし、異なる2種類以上の糸f1,f2・・・,ftで構成されてもよい。例えば、編糸Fは、2本の糸fで形成されたいわゆる双糸であってもよいし、3本の糸fで形成されたいわゆる三本子や、4本以上の糸fで形成されたいわゆる多子糸であってもよい。
【0030】
編糸Fは、2本以上の糸fを撚った表糸fpと、表糸fpに撚られることなく別糸として表糸fpと編みこまれる1本以上の糸fで形成された裏糸fqで形成されるものとしてもよい。このように相互に撚られていない表糸fpと裏糸fqで構成することにより、表糸fpと裏糸fqとが独立して作用するため、適度な耐久性と伸縮性を兼ね備えた手芸用品1を編成することができる。このとき、表糸fpを構成する糸fを同種類の糸f1で構成してもよいし、異なる2種類以上の糸f1,f2・・・,ftで構成されてもよい。また、表糸fpを構成する糸と裏糸fqを構成する糸とを同種類の糸としても構わないし、表糸fpを構成する糸と裏糸fqを構成する糸とを種類の異なる糸としても構わない。また、裏糸fqについても、表糸fpと同様2本以上の糸fで撚られた糸としてもよい。このとき、表糸fpを構成する糸fを同種類の糸f1で構成してもよいし、異なる2種類以上の糸f1,f2・・・,ftで構成されてもよい。
【0031】
編糸Fは、同一種の糸f1をn1本(n1≧2)で構成するものとしてもよい。また、編糸Fを複数種の糸f1,f2,…,ft(t≧2)で構成するものとしてもよい。この場合、編糸Fを構成するt種類の糸f1,f2,…,ftがそれぞれ、n1本(n1≧1)、n2本(n2≧1)、…、nt本(nt≧1)となり、2本以上且つ2種類以上の糸で編糸Fが構成される。即ち、編糸Fを構成する少なくとも2種類の糸f1,f2,…,ftが1本以上となる。このように編糸Fを2本以上の糸fで構成する場合、上述した表糸fxと裏糸fyで構成されるものとしても構わないし、表糸fxのみ又は裏糸fyのみで構成されるものとしても構わない。
【0032】
手芸用品1の編成する編糸Fを2本以上の糸fで構成することで、手芸用品1の編糸Fが1本の糸f(いわゆる単糸)のみで編成された場合と比べて、手芸用品1に適度な厚みが生じ、耐久性と安定性が向上する。また、編糸Fを2本以上の糸fが、例えば伸縮性の異なる複数種類の糸f1,・・・,ftで構成すると、適度な耐久性と伸縮性を兼ね備えた手芸用品1を編成することができる。さらに、編糸Fを編成する2本以上の糸fを異なる種類の糸f1,f2,…,ftで形成することで、多種多彩な手芸用品1を編成することが可能である。このような多種多彩な手芸用品1を用いて手芸品を製作することが可能であり、従来よりも製作の自由度が高まる。
【0033】
手芸用品1を編成する編糸Fは、弾性(伸縮性)の異なるt(t≧2)種類の糸f1,f2,…,ftで形成される。このように編糸Fを弾性(伸縮性)の異なる糸f1,f2,…,ftを用いることにより、編糸Fで編成された手芸用品1を伸ばしやすくなるばかりか元の形状へ復帰し易くなる。弾性(伸縮性)の異なる糸f1,f2,…,ftは、それぞれの弾性力の強弱が異なるものであり、中には全く弾性の無いものも含まれる。このとき、編糸Fを構成するt種類の糸f1,f2,…,ftがそれぞれ、n1本(n1≧1)、n2本(n2≧1)、…、nt本(nt≧1)となる。即ち、t(t≧2)種類の糸f1,f2,…,ftで編糸Fを構成すると、少なくとも1本以上となるt種類の糸f1,f2,・・・,ftのうち、少なくとも1種類の糸が他の糸の弾性力と異なる。このように構成することで、従来よりも指編みに適した伸縮性と耐久性のある手芸用品1を編成することができる。
【0034】
手芸用品1を編成する編糸Fを構成する弾性(伸縮性)の異なる糸fとは、例えば、非弾性糸は天然繊維である綿糸等であったり、弾性糸としてはFTY(Filament Twisted Yarn )と称されるポリウレタン等を芯糸とした加工糸であってもよい。前述で例に挙げた種類の糸fに限らず、手芸用品1の所望の大きさ、太さや伸縮性によって、弾性の異なる多種の糸fを自由に組み合わせることができる。また、編糸Fに弾性のある糸fを含めることで、手芸用品1の長手方向(周方向)Bの伸縮性が向上し、適度な曲げや引っ張りに対しての自由度が向上する。また、弾性の異なる糸fを自由に組み合わせることで、伸縮性の異なる手芸用品1を編成することが可能であり、手芸品作成にあたって適宜、所望の伸縮性や大きさの手芸用品1を選択し、使い分けることができる。
【0035】
手芸用品1を編成する編糸Fの太さは、直径4mm以下の範囲内で構成される。編糸Fの太さ(直径)を該範囲内とすることで、伸縮性と耐久性を兼ね備え且つ指編みに適した手芸用品1を編成することができる。また、編機(丸編機や筒編機等)で手芸用品1を編成する場合は、編糸Fの太さを直径0.015以上2mm以下とすることが好ましい。このように構成することで、従来よりも指編みに適した伸縮性と耐久性のある手芸用品1を編成することができる。より好ましくは、編糸Fの太さを直径0.02以上1.8mm以下とすることで、伸縮性と耐久性を兼ね備えるとともに指編みにより編み込んだときの意匠性を向上させる手芸用品1を編成できる。このように太さを決定した編糸Fについて、指編みに適した手芸用品1とするべく、上述のように2本以上の糸fで構成するものとしても構わない。
【0036】
手芸用品1を編成する際に、編地Aの1段分(リング10の一周分)を編成するために用いる糸の長さは、手芸用品1の周長に対して1~7倍の範囲で構成される。換言すると、リング10の一周、即ち、編地Aの1段分(いわゆるコース1段)を、周方向(長手方向)Bに供給された編糸Fで編目(ループ)Lを形成する際に用いる糸の長さは、手芸用品1のリング10の周長に対して1~7倍の範囲である。例えば、編機(丸編機や筒編機等)で手芸用品1を編成するとき、リング10の一周分を編成するために用いる糸の長さは、手芸用品1の周長に対して、2~5倍の範囲が好ましい。該範囲内に設定することで、従来よりも指編みに適した伸縮性と耐久性のある手芸用品1を編成することができる。また、例えば編機で手芸用品1を編成する場合、該範囲内に糸の長さを設定することで編成中に過度な負荷(テンション)によって編糸が切れて途切れることがない。
【0037】
このように手芸用品1は、手芸の指編みに適した伸縮性と耐久性を備えており、従来の手芸用紐等と比較して格段に指編みし易い構造である。また、手芸用品1は適度な太さや厚みがあるため、手芸用品1を用いて製作した手芸品も、嵩があり立体的且つ独特な弾力性を有するものとなり、美観性(意匠性)に優れる。さらに、編糸Fの太さや長さを上記範囲内に設定することで、編成中に編糸が千切れて途切れることなく、編糸の使用量も削減することが可能であり、生産効率の向上を図ることが可能である。
【0038】
手芸用品1は、例えば、平型緯編機や丸編機(円形編機、筒編機等)によって、編地Aが編成されてもよい。例えば、編地Aは、一列針床編機(いわゆるシングル編機)によって、編目(ループ)Lを一方向に引き出して、緯方向(横方向)Gに編みこまれて形成される。換言すると、手芸用品1は、1本の編糸Fによって継ぎ目なく筒状に編成される。このため、既に編成された編地Aを裁断等することがないため、手芸用品1の両端部13,14の糸が解れることなく、各手芸用品1の品質を一定に保持することができる。また、手芸用品1の各個体差が少なく全体が均一であるため、これら手芸用品1を用いて製作した手芸品の見栄えも向上する。
【0039】
糸fの素材は、例えば、天然繊維を含む紡績糸であってもよいし、合成繊維を含む加工糸等であってもよい。例えば、綿、麻などの植物系天然繊維であってもよいし、ウール、アンゴラなどの獣毛系繊維であってもよい。また、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維や多少伸縮性のある糸(ウーリー加工糸)であってもよいし、伸縮性を有するPTT(ポリトリメチレンテレフタラート)繊維であってもよい。なお、天然繊維等の絡みやすい性質を有する糸とPTT繊維等の糸を組み合わせることで、形態安定性が大きくなる効果がある。前述で例として挙げたものに限らず、多種の糸fを自由に組み合わせて編糸Fを形成することで、所望の伸縮性や色を備えた手芸用品1を編成することができる。
【0040】
手芸用品1を編成する編糸Fを構成する糸fは、例えば、同色(一色のみ)であってもよいし、複数色であってもよい。このとき、編糸Fを構成する糸fは、例えば、同一種類の糸f1を同色または複数色としてもよいし、複数種類(t種類)の糸f1,f2,…,ftそれぞれについて同色または複数色としてもよい。このとき、編糸Fを構成するt種類の糸f1,f2,…,ftについて、弾性力の異なる糸の種類がx種類(1≦x≦t)であり、色の異なる糸の種類がy種類(1≦y≦t)となる。
【0041】
また、編糸Fを構成する素材としていわゆる一般的な繊維を紡いだ糸以外の素材であってもよい。例えば、布を細く糸状に切断したものや、ビニールやプラスチック等の軟質素材を糸状にしたものであってもよい。これにより、従来の手芸用紐よりも多種多彩な手芸用品1を編成することができ、これらの手芸用品1を用いて製作する手芸品のバリエーションや自由度も大幅に拡大することで、手芸品の美観性(意匠性)も飛躍的に向上する。
【0042】
手芸用品1は、編地Aを裁断等することがないため両端部13,14の糸がほつれない。また、平編み特有の性質によって両端部13,14がC字状に巻き込まれることで、両端部13,14が自然とC字状にカールして内側に隠れる。即ち、両端部13,14を縫合糸で縫合したり、接着剤等で接着することなく手芸用品1全体の美観を保持ことができる。なお、手芸用品1の開口部15を縫合したり、接着してもかまわない。また、端末糸の飛び出しは、熱接着糸や熱加工等によって処理してもよい。これにより、手芸用品1の編地Aの耐久性が向上するとともに、指編みした際に手芸用品1の糸が解れることなく、製作した手芸品の見栄えも向上する。
【0043】
本発明は、上述のような手芸用品1を用いて手芸品を形成ないし製作する指編み方法を提供するともいえる。その場合、例えば、手芸用品1として、太さ、長さ、色、模様等が異なる複数種類の手芸用品1を適宜組合せて手芸品を製作してもよい。
【0044】
<指編み方法の実施例>
本発明の手芸用品に係る指編み方法の実施例について、
図3~6を参照して説明する。手芸用品1に係る指編み方法は、手芸用品1を指編みして手芸品を製作するために最適な指編み方法である。
【0045】
1.第一実施例
図3を参照して、本発明に係る指編み方法の第一実施例を説明する。まず第一に、手芸用品1を均等な2つの輪20,21が形成されるように、8の字状にねじる。これにより、均等な2つの輪20,21が形成される(
図3(a)参照)。第二に、手芸用品1を均等な2つの輪20,21ができるように8の字状にねじった際に、手芸用品1の紐が重なり合う交差点30を基点として、半分に畳むように折り曲げる。これにより、2つの輪20と21が重なり、1つの手芸用品1が二重の輪状となる(
図3(b)参照)。
【0046】
第三に、二重の輪状となった手芸用品1を、手芸用品1を指編みによって結びつける対象40の下に十字に交差するよう配置する。この際、二重になった手芸用品1は、対象40を中心軸として輪20,21で形成される左右に均等な空間31,32が構成される。即ち、対象40の右側に受側紐部22,23と対象40からなる空間31が、対称40の左側に差込紐部24,25と対象40からなる空間32が構成される(
図3(c)参照)。第四に、対象40の下に交差して配置した手芸用品1を、対象40を巻き込むように半分に折り曲げる。これにより、対象40を中心軸として右側に空間31を構成する、受側紐部22,23と対象40からなるリング部が、左側に空間32を構成する、差込紐部24,25と対象40からなるリング部が形成される(
図3(d)参照)。
【0047】
第五に、対象40を軸として半分に折り曲げた手芸用品1の空間31に差込紐部24,25を差し込む。即ち、手芸用品1の受側紐部22,23と対象40とによって形成されたる空間31に、差込紐部24,25を差し込む。(
図3(e)参照)。第六に、手芸用品1の空間31に差し込んだ差込紐部24,25を引っ張り、引き締める。(
図3(f)参照)。これにより、手芸用品1の差込紐部24,25がうさぎの耳のような形態となる結びRが完成する(
図3(g)参照)。
【0048】
2.第二実施例
図4を参照して、本発明に係る指編み方法の第二実施例を説明する。まず第一に、手芸用品1を均等な2つの輪20,21が形成されるように、8の字状にねじり、ねじった際に手芸用品1の紐が重なり合う交差点30を基点として半分に折曲げ、1つの手芸用品1を二重のリング状とする(
図4(a)参照)。第二に、手芸用品1を指編みによって編みこむ軸となる対象41に係る空間33に、二重のリング状となった手芸用品1を、対象41の一部が中心軸となるように差し込む。即ち、二重に重なった輪20,21で構成される手芸用品1を対象41の空間33に差し込む。これにより、対象41を中心軸として空間31,32が構成される。即ち、軸となる対象41の右側に受側紐部22,23と対象41からなる空間31が、左側に差込紐部24,25と対象41からなる空間32が構成される。換言すると、対象41の一部を中心軸として、その右側に空間31を構成する受側紐部22,23と対象41からなるリング部が形成され、その左側に空間32を構成する差込紐部24,25と対象41からなるリング部が形成される(
図4(b)参照)。
【0049】
第三に、空間33に差し込んだ二重のリング状である手芸用品1と対象41とで囲まれた空間31に差込紐部24,25を差し込む。即ち、手芸用品1の受側紐部22,23と対象41によって形成される空間31に、差込紐部24,25を差し込む。第四に、手芸用品1の空間31に差し込んだ差込紐部24,25を引っ張り、引き締める(
図4(d)参照)。これにより、手芸用品1の差込紐部24,25がうさぎの耳のように輪状で突出した結びRが完成する(
図4(e)参照)。
【0050】
3.第三実施例
図5を参照して、本発明に係る指編み方法の第三実施例を説明する。まず第一に、手芸用品1を二重の環状(輪20,21)となるように交差点30を基点としてねじり、半分に折り曲げる(
図5(a)参照)。第二に、二重の環状を形成した手芸用品1が形成する空間34に、手芸用品1を指編みによって結びつける対象42を差し込む。説明上、
図5(b)に示すように、差し込んだ対象42を基準として、対象42の背面(奥側)を差込紐部24,25、対象42の表面(手前側)を受側紐部22,23とする。二重の環状を形成した手芸用品1を基軸として右側に対象42に係る空間35が形成される(
図5(b)参照)。
【0051】
第三に、手芸用品1の差込紐部24,25を対象42に係る空間35に挿通する。換言すると、対象42の奥側(背面)にある手芸用品1の差込紐部24,25を対象42に係る空間35に差込むために、空間35の奥側(背面)から手前側(表面)へ引っ張る(
図5(c)参照)。第四に、対象42の空間35に差し込み通した手芸用品1の差込紐部24,25をさらに引っ張り、結び目ができるように引き締める(
図5(d)参照)。これにより、手芸用品1の差込紐部24,25によって、うさぎの耳のような2つの環状が形成された結びRが完成する(
図5(e)参照)。
【0052】
4.第四実施例
図6を参照して、本発明に係る指編み方法の第四実施例を説明する。まず第一に、手芸用品1を指編みによって編み込む対象43(本例では、板状の対象43)に隣接して形成された2つの穴44,45に手芸用品1を差し込む。即ち、対象43の隣接する2つの穴44,45に、手芸用品1の差込紐部24,25を同一方向から差し込む。換言すると、手芸用品1の差込紐部24を屈曲させた先端を細くして対象43の穴44に通す一方で、差込紐部24と相対する差込紐部25についても同様に、その先端が細くなるように屈曲させて、差込紐部24と同一方向から対象43の穴45に差し込む。
【0053】
これにより、手芸用品1は、差込紐部24,25それぞれの間に位置する受側紐部22,23によって、対象43との間に空間36を構成する(
図5(a)(b)参照)。第二に、対象43の穴44,45に差し込んだ手芸用品1の差込紐部24,25を、差込紐部24,25と対象43とに囲まれた空間36に挿通する(
図5(c)参照)。第三に、手芸用品1の空間36に差し込んだ差込紐部24,25を引っ張り、引き締める(
図5(d)参照)。これにより、手芸用品1の差込紐部24,25がうさぎの耳のように突出した結びRが完成する(
図6(e)参照)。
【0054】
手芸用品1に係る指編み方法は、手芸用品1を用いた指編みに最適な指編み方法である。指編み時の手芸用品1の伸縮性を活かしながら、製作した手芸品自体の耐久性や安定性の両方を兼ね備えることが可能である。換言すると、指編みする際に編みやすいように伸縮性に優れた手芸用品1を用いて手芸品を作成した場合、手芸品自体が手芸用品1の伸縮性によって伸びてしまい、形態維持の安定性に欠けるという問題点を解決することができる指編み方法であり、該指編み方法によれば、指編みし易く、完成した手芸品は適度に伸縮性が抑制され、手芸品の安定性且つ耐久性を向上することができる。
【0055】
手芸用品1を本発明の指編み方法によって結びつける対象は、
図3~6に示した対象40~43に限らず、所望に応じて任意に選択することができる。また、該対象は、手芸用品1であってもよいし、手芸用品1以外のもの、例えば、穴が形成された板やプラスチック等のリングであってもよい。
【0056】
本発明の指編み方法は、
図3~6に示した以外に、同一形状の結びRが形成されるものも含まれる。即ち、本発明の指編み方法は、うさぎの耳のような2つの輪が突出して形成された結びRを形成する編み方に相当する。また、本発明の指編み方法によって形成される結びRを組み合わせて編んでもよいし、本発明の指編み方法によって形成される結びRと、他の指編み方法によって形成される結びを組み合わせて編んでもよい。
【0057】
本発明における各構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。即ち、前述の実施形態のもの以外の構造を採り得る。
【符号の説明】
【0058】
1 手芸用品
10 リング
11 外周面
12 内周面
13,14 端部
15 開口部
16 中央部
20,21 輪
22,23 受側紐部
24,25 差込紐部
30 交差点
31~36 空間
40~43 対象
44,45 穴
A 編地(平編み)
B 周方向(長手方向)
D 断面
F 編糸
f 糸
G 緯方向(横方向)
J 経方向(縦方向)
K 表面(表目)
L 編目(ループ)
M 裏面(裏目)
R 結び
V 幅方向(幅方向の高さ)