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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066215
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】試験方法及び試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20240508BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20240508BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20240508BHJP
【FI】
G01M11/00 T
H01L33/00 K
G01R31/26 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175643
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新関 彰一
【テーマコード(参考)】
2G003
2G086
5F241
【Fターム(参考)】
2G003AA06
2G003AH05
2G003AH06
2G086EE03
5F241AA46
(57)【要約】
【課題】試験環境の経時的な変化に起因して発光装置の光出力の測定精度が経時的に低下することを抑制する試験方法及び試験装置を提供する。
【解決手段】試験方法は、受光素子にて発光装置の光出力を継続的又は断続的に測定し、発光装置の累積発光時間が異なる複数のタイミングに、受光素子に向けて補正用光源を発光させ、複数のタイミングの補正用光源の光出力に基づき、受光素子にて測定された発光装置の光出力の測定値を補正する。試験装置は、発光装置の光出力を継続的又は断続的に測定する受光素子と、受光素子に向けて複数のタイミングで光を照射可能な補正用光源と、を備え、発光装置から受光素子へ向けて発される光と、補正用光源から受光素子へ向けて発される光とは、互いに隔てられていない共通の光路を通る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子にて発光装置の光出力を継続的又は断続的に測定し、
前記発光装置の累積発光時間が異なる複数のタイミングに、前記受光素子に向けて補正用光源を発光させ、
前記複数のタイミングの前記補正用光源の光出力に基づき、前記受光素子にて測定された前記発光装置の光出力の測定値を補正する、
試験方法。
【請求項2】
前記発光装置は、紫外光を発する、
請求項1に記載の試験方法。
【請求項3】
前記発光装置の発光開始前及び発光終了後の少なくとも一方においても、前記補正用光源を発光させる、
請求項1又は2に記載の試験方法。
【請求項4】
前記補正用光源の発光時は、前記発光装置の発光を停止する、
請求項1又は2に記載の試験方法。
【請求項5】
前記補正用光源を発光させる前記複数のタイミングの少なくとも1つは、前記発光装置が発光しているタイミングであり、
前記発光装置と前記補正用光源とを同時に発光させている場合は、前記発光装置と前記補正用光源との合成の光出力に基づき、前記補正用光源の光出力を算出する、
請求項1又は2に記載の試験方法。
【請求項6】
発光装置の光出力を継続的又は断続的に測定する受光素子と、
前記受光素子に向けて複数のタイミングで光を照射可能な補正用光源と、を備え、
前記発光装置から前記受光素子へ向けて発される光と、前記補正用光源から前記受光素子へ向けて発される光とは、互いに隔てられていない共通の光路を通る、
試験装置。
【請求項7】
前記受光素子は、紫外光を発する前記発光装置の光出力を継続的又は断続的に測定する、
請求項6に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験方法及び試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発光ダイオード等の光素子の光出力を検出する光素子検査装置が開示されている。特許文献1に記載の光素子検査装置は、光素子の光出力を測定するフォトディテクタと、フォトディテクタ較正用の基準光源とを備える。さらに、光素子検査装置は、光素子からの光を入射する第1の光ファイバ束と、基準光源からの光を入射する第2の光ファイバ束と、第1の光ファイバ束及び第2の光ファイバ束のそれぞれの光出射側を束ねた第3の光ファイバ束とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-184730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の光素子検査装置においては、例えば光素子の寿命測定等のように光素子の長時間の光出力を行う場合、試験環境が変化することで、光素子の光出力の測定精度が経時的に変化する懸念がある。しかしながら、かかる懸念について、特許文献1においては何ら考慮されていない。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、試験環境の経時的な変化に起因して発光装置の光出力の測定精度が経時的に低下することを抑制する試験方法及び試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、受光素子にて発光装置の光出力を継続的又は断続的に測定し、前記発光装置の累積発光時間が異なる複数のタイミングに、前記受光素子に向けて補正用光源を発光させ、前記複数のタイミングの前記補正用光源の光出力に基づき、前記受光素子にて測定された前記発光装置の光出力の測定値を補正する、試験方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記の目的を達成するため、発光装置の光出力を継続的又は断続的に測定する受光素子と、前記受光素子に向けて複数のタイミングで光を照射可能な補正用光源と、を備え、前記発光装置から前記受光素子へ向けて発される光と、前記補正用光源から前記受光素子へ向けて発される光とは、互いに隔てられていない共通の光路を通る、試験装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、試験環境の経時的な変化に起因して発光装置の光出力の測定精度が経時的に低下することを抑制する試験方法及び試験装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態における、発光装置が設置された試験装置を示す断面図である。
図2】第1の実施の形態における、発光装置に流れる電流値と、補正用光源に流れる電流値とを示すタイムチャートである。
図3】第1の実施の形態における、試験結果を示すグラフである。
図4】第2の実施の形態における、受光素子による測定結果グラフである。
図5】第2の実施の形態における、図4の結果から、発光装置の光出力と補正用光源の光出力とを分離したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図3を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(発光装置10)
図1は、発光装置10が設置された試験装置1を示す断面図である。
まず、光出力の測定対象となる発光装置10について説明する。本形態において、発光装置10は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)である例について説明するが、これに限られず、その他の種類の光源であってもよい。
【0012】
発光装置10は、紫外光を発する。後述するように、本件の試験対象となる発光装置10としては、例えば、中心波長が280nm以下の深紫外光を発するものが好ましい。
【0013】
発光装置10は、例えば、いわゆるCOS(Chip On Submount)構造を有するものや、いわゆる気密封止構造を有するものとすることができる。あるいは、発光装置10を、パッケージ化される前の状態の発光素子としてもよい。発光装置10は、所定方向への指向性を有する。そして、発光装置10は、後述する受光素子2に向けて光を発することができる姿勢で試験装置1に設置される。
【0014】
(試験装置1)
試験装置1は、発光装置10の光出力を測定するための装置である。試験装置1は、発光装置10と対向する位置に配される受光素子2と、受光素子2を配置する受光素子配置部3と、発光装置10を配置する発光装置配置部4と、発光装置配置部4に配された補正用光源5と、発光装置10及び補正用光源5が発する光を遮光する筒状の遮光部6と、試験装置1における各種処理を制御する制御部7とを有する。
【0015】
受光素子2は、受光した光の強度を検出する。例えば、受光素子2は、受光したときに、その光強度に応じた値の電流を出力する。受光素子2は、例えばシリコン(Si)等からなるフォトダイオードとすることができる。本形態において、受光素子2は、紫外光を長期間受光することで劣化し得る(すなわち光出力の検出精度が変化し得る)。受光素子2は、外部からの光を取り入れる受光面21が発光装置10側を向くような姿勢で受光素子配置部3に配置されている。
【0016】
受光素子配置部3は、受光素子2を配置する部材である。受光素子配置部3は、受光素子2の受光面21側と反対側に位置している。受光素子配置部3は、遮光性を有する素材からなる。受光素子配置部3は、紫外光を長期間受光することで劣化し、これによって例えば反射率等が変化し得る。受光素子配置部3の受光素子2が配された側に、発光装置配置部4が配されている。
【0017】
発光装置配置部4は、発光装置10を配置する部材である。発光装置配置部4は、遮光性を有する素材からなる。発光装置10は、発光装置配置部4の受光素子配置部3側の面において、受光素子2の受光面21に向けて光を発することができる姿勢で配置されている。発光装置配置部4は、紫外光を長期間受光することで劣化し、これによって例えば反射率等が変化し得る。発光装置配置部4には、発光装置10に隣り合う位置に補正用光源5が配置されている。
【0018】
補正用光源5は、受光素子2に向けて複数のタイミングで光を照射可能に構成された光源である。補正用光源5は、発光装置10が発する光の中心波長と同等の中心波長の光を発する。例えば、発光装置10が発する光の中心波長と補正用光源5が発する光の中心波長との差の絶対値が10nm以下であれば、これらの中心波長は同等であるといえる。
【0019】
本形態において、補正用光源5は、発光装置10と同じ構成(例えば同じ型番)の発光ダイオードとした。補正用光源5を発光装置10と同じ構成の光源とすることで、発光装置10と補正用光源5とのそれぞれから発される光の中心波長を揃えやすい。なお、図1においては、区別のために、便宜上、発光装置10と補正用光源5との大きさを変えているが、これらの大きさは同じであってもよい。
【0020】
補正用光源5は、例えば発光ダイオード以外の光源とすることも可能である。また、補正用光源5から発される光の中心波長は、受光素子2にて感知可能な波長であればよく、発光装置10から発される光の中心波長と異なっていてもよい。例えば、補正用光源5として、可視光を発するものを使用してもよい。ただし、理由は後述するが、補正用光源5は、発光装置10が発する光の中心波長と同等の中心波長の光を発することが好ましい。
【0021】
発光装置10及び補正用光源5のそれぞれから発された光は、試験装置1の外部に漏れないよう、かつ、外部からの光が試験装置1内に入らないよう、遮光部6にて遮光されている。
【0022】
遮光部6は、受光素子配置部3と発光装置配置部4との間に配されており、遮光性を有する素材を筒状に形成してなる。受光素子2と発光装置10との対向方向(すなわち図1の上下方向)から見たとき、遮光部6の内側領域に受光素子2、発光装置10及び補正用光源5が収まるよう遮光部6が配されている。発光装置10から受光素子2へ向けて発される光と、補正用光源5から受光素子2へ向けて発される光とは、互いに隔てられていない共通の光路(すなわち遮光部6の内側の空間)を通る。遮光部6は、紫外光を長期間受光することで劣化し、これによって例えば反射率等が変化し得る。
【0023】
試験装置1の構造は以上の通りであり、試験装置1の各種処理は、制御部7にて制御される。
【0024】
制御部7は、プロセッサ及びプロセッサ動作時の演算領域となるRAMを含む制御領域と、ROM、ハードディスク等を有し、CPUが実行するプログラム等を記憶する記憶部とを備えるコンピュータを用いて実現することができる。制御部7は、例えば発光装置10への通電タイミング(すなわち発光装置10の発光タイミング)、補正用光源5への通電タイミング(すなわち補正用光源5の発光タイミング)を制御したり、後述するような発光装置の光出力の測定値の補正等の演算を実施したりする。
【0025】
以上、1つの発光装置10の光出力を測定する試験装置1を一例として示したが、例えば前述の試験装置1の構成を、受光素子2と発光装置10との対向方向に直交する二次元方向において縦横に多数並べることで、多数の発光装置10の光出力の測定を可能としてもよい。この場合、多数の試験装置1の受光素子配置部3は、共通の1つの部材としてもよく、同様に、多数の試験装置1の発光装置配置部4は、共通の1つの部材としてもよい。また、遮光部6を、受光素子2と発光装置10との対向方向から見たときの形状が格子状となるよう形成してもよい。かかる格子状の遮光部においては、格子の多数の空間を区画する筒状の部分の1つ1つが、1つ1つの試験装置1を区画する。
【0026】
(試験方法)
次に、試験装置1を用いて発光装置10の光出力を長期的に測定する方法について説明する。例えば、発光装置10の寿命を測定する際において、発光装置10の光出力の長期的な測定が実施される。発光装置10の寿命測定においては、発光装置10の光出力が長期的に測定され、発光装置10の光出力が初期から所定割合(例えば70%)下がったときが発光装置10の寿命と判断される。発光装置10の寿命測定においては、例えば数万時間以上、発光装置10の光出力が測定される。
【0027】
このように、長期にわたって発光装置10の光出力を測定する場合、試験装置1の試験環境が変化し得る。試験環境の変化としては、例えば、受光素子2が紫外光を長期間にわたって受け続けることで劣化し、感度が経時的に変化することが考えられる。また、試験装置1の各部位が、発光装置10が発する紫外光を長期間にわたって受け続けることで劣化して変色等することも考えられる。こうなると、変色した部位における光の反射率、透過率等が変化する。試験装置1の各部が紫外光を受けることによる劣化は、特に発光装置10が、レーザよりも光の広がりを有する発光ダイオード等のような光源である場合に顕著となりやすい。また、前述のような紫外光に起因する試験環境の変化は、特に、発光装置10が深紫外光を発する場合に顕著となりやすい。
【0028】
また、発光装置10が紫外光以外の波長帯の光を発するものであったとしても、例えば試験装置1の各部の経時的な劣化(例えば酸化等)、不純物の付着又は脱落等によって、試験環境が変化し得る。
【0029】
本形態の試験方法は、前記にて例示したような試験環境の経時的な変化に起因して、試験装置1による発光装置10の光出力の測定精度が変動することを抑制すべく工夫されたものである。
【0030】
図2は、発光装置10に流れる電流値と、補正用光源5に流れる電流値とを示すタイムチャートである。図2において、時間を示す横軸は、紙面右側ほど時間が経過している。図2においては、発光装置10に流れる電流値を細い実線で表しており、補正用光源5に流れる電流値を太い実線にて表している。
【0031】
本形態の試験方法においては、発光装置10に所定の電流値の電流を断続的に流して発光装置10を発光させ、その間の発光装置10の光出力を受光素子2にて測定する。具体的には、後述する補正用光源の発光タイミング(例えば数秒×複数回)のみにおいて発光装置10の発光を停止させ、その他の時間は発光装置10の光出力を測定し続ける。本形態において、発光装置10に流す所定の電流値は、350mAとしたが、これに限られない。以後、発光装置10の発光開始時刻を時刻t1とし、発光装置10の発光停止時刻をt2とする。時刻t1から時刻t2までの時間は、発光装置10の寿命以上の時間であり、例えば数万時間以上の長期間である。
【0032】
また、本形態の試験方法においては、発光装置10の累積発光時間が異なる複数のタイミングにおいて、補正用光源5に所定の電流値の電流を流して補正用光源5を発光させ、受光素子2にて補正用光源5の光出力を測定する。本形態において、補正用光源5の流す所定の電流値は、200mAとしたが、これに限られず、例えば発光装置10に流す電流値(すなわち350mA)と同じとしてもよい。補正用光源5は、発光装置10とは異なって試験期間中に散発的に発光させるものであるため、試験期間において光出力は一定(すなわち光出力が変化しないか、変化しても無視できる程度)となる。
【0033】
本形態の試験方法においては、補正用光源5の発光時に、発光装置10の発光を停止させるよう試験装置1が制御される。これにより、補正用光源5の単独の光出力を容易に測定可能となる。
【0034】
補正用光源5の光出力は、発光装置10の発光開始(すなわち時刻t1)の前、時刻t1から時刻t2までの間、及び発光装置10の発光終了(すなわち時刻t2)の後において測定される。時刻t1から時刻t2までの間においては、補正用光源5の光出力は複数回測定される。本形態においては、便宜的に、補正用光源5の複数の発光タイミングが等間隔のタイミングである例について説明するが、補正用光源5の複数の発光タイミングはこれに限られない。補正用光源5の複数の発光タイミングのその他の例は後述する。
【0035】
補正用光源5の発光タイミングの間隔は、例えば数十時間以上とすることができ、補正用光源5の各回の発光時間は、例えば10秒以下とすることができる。なお、補正用光源5の各回の発光時間は、補正用光源5の発光の間隔(例えば数十時間以上)よりも極めて短いため、図2及び後述の図3において忠実に補正用光源5の発光時間を表すと見難くなることを考慮し、図2及び図3においては便宜的に補正用光源5の発光時間を長めに表している。
【0036】
発光装置10及び補正用光源5の光出力の測定結果を図3に示す。図3において、時間を示す横軸は、紙面右側ほど時間が経過している。図3において、実線は、発光装置の光出力の測定値を示しており、四角形のプロットは、補正用光源5の光出力の測定値を示している。また、図3においては、発光装置10と補正用光源5とのそれぞれの光出力を相対光出力として表している。発光装置10の相対光出力は、発光装置10の初期の光出力の測定値を1として正規化したものであり、補正用光源5の相対光出力は、補正用光源5の初期の光出力の測定値を1として正規化したものである。
【0037】
ここで、仮に、試験期間中において試験環境が変化しない場合、補正用光源5の光出力の測定値は一定となるはずである。しかしながら、図3の結果を見ると、補正用光源5の相対光出力は経時的に変化しており、試験環境が変化していることが分かる。長期間にわたる試験期間中においては、試験環境の変化を防ぐことは難しく、図3の結果のように補正用光源5の相対光出力は変化し得る。各時間における補正用光源5の相対光出力は、各時間における試験環境の状況を反映している。
【0038】
そこで、本形態の試験方法においては、各時間の補正用光源5の相対光出力に基づき、発光装置10の光出力の測定値を補正するための補正係数を算出する。
【0039】
ここで、補正用光源5の相対光出力の測定点は限られており(例えば図3においては4点)、測定点間の各時間の補正用光源5の相対光出力までは現状不明である。そこで、補正用光源5の相対光出力の測定値に基づき、各時間の補正用光源5の相対光出力を推定する。この推定は、例えば、測定にて得られた補正用光源5の相対光出力に基づいて、関数近似にて得られた一次関数等の近似線を用いてもよい。また、補正用光源5の相対光出力の測定結果の間を所定の補間法にて補間してもよい。本形態においては、図3にて破線で示すように、補正用光源5の相対光出力の測定結果から一次関数の近似直線を算出した。
【0040】
そして、各時間の発光装置10の相対光出力に対して、各時間の補正用光源5の相対光出力の逆数を補正係数として乗算する。これにより、図3の二点鎖線にて示すように、各時間における発光装置10の光出力の測定値が、各時間における発光装置の真の光出力に近付くよう補正される。
以上のようにすることで、各時間における発光装置の正確な光出力を把握可能である。
【0041】
なお、受光素子2の感度の劣化の仕方は、波長によって異なる可能性があり得る。これを考慮し、発光装置10の測定値の補正を実現するためのアルゴリズムが複雑になることを防ぐべく、前述のように補正用光源5が発する光の中心波長は、発光装置10が発する光の中心波長と同等であることが好ましい。
【0042】
また、本形態のように受光素子2がシリコンからなるフォトダイオードである場合、受光素子2の感度は、初期段階において劣化速度が速く、次第に劣化速度が遅くなる。これを考慮し、劣化の進行が速く劣化パターンの把握が比較的難しい発光初期段階において、高頻度で補正用光源5を発光させることで、試験環境の変化を正確に把握しやすくなる。例えば、補正用光源5の発光タイミングが、試験開始から0時間、24時間、48時間、100時間、300時間、500時間、1000時間等となるように、発光間隔を次第に長くしてもよい。また、本形態において、補正用光源5の光出力の測定値の近似線は一次関数としたが、使用するフォトダイオードの劣化曲線に対応する関数(例えば指数関数等)としてもよい。
【0043】
また、本形態においては、発光装置10及び補正用光源5の光出力の測定値が経時的に過小評価された例を示すが、経時的に過大評価されることも考えられる。例えば、試験装置1が部分的に色褪せたり、試験装置1に付着していた不純物等が脱落したりして、光が試験装置1内において反射されやすくなることで、発光装置10及び補正用光源5の光出力の測定値の過大評価が生じ得る。また、試験中において、過大評価されたり過小評価されたりする時間が共存する場合もあり得る。これらのような場合も、本形態にて説明した方法にて、発光装置10の光出力の測定値を真の値に近付けるよう補正することができる。
【0044】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
本形態の試験方法は、受光素子2にて発光装置10の光出力を断続的に測定する。そして、発光装置10の累積発光時間が異なる複数のタイミングに、受光素子2に向けて補正用光源5を発光させ、複数のタイミングの補正用光源5の光出力に基づき、受光素子2にて測定された発光装置10の光出力の測定値を補正する。これにより、発光装置10の光出力の測定値を補正する際に、試験環境の変化が反映される。そのため、試験環境の経時的な変化に起因して発光装置10の光出力の測定精度が経時的に低下することが抑制される。
【0045】
また、発光装置10は、紫外光を発する。それゆえ、試験装置1の各部が紫外光を受けて劣化しやすく、試験環境の変化が進みやすい。このような状況において、本形態の試験方法が好適に実施される。
【0046】
また、発光装置10の発光開始(すなわち時刻t1)前及び発光終了(すなわち時刻t2)後の少なくとも一方においても、補正用光源5を発光させる。発光装置10の発光開始前の補正用光源5の光出力を把握することで、試験装置1が劣化する前の試験環境での補正用光源5の光出力が把握可能となる。また、発光装置10の発光終了後の補正用光源5の光出力を把握することで、試験終了時の試験環境での補正用光源5の光出力が把握可能となる。これにより、試験開始時周辺、及び試験終了時周辺の少なくとも一方の試験環境を反映した補正用光源5の光出力を把握することができる。
【0047】
また、補正用光源5の発光時は、発光装置10の発光を停止する。これにより、補正用光源5の光出力の把握が容易となる。
【0048】
また、本形態の試験装置1において、発光装置10から受光素子2へ向けて発される光と、補正用光源5から受光素子2へ向けて発される光とは、互いに隔てられていない共通の光路を通る。すなわち、受光素子2にて発光装置10の光出力を測定する試験環境と、受光素子2にて補正用光源5の光出力を測定する試験環境とは同等の試験環境となる。それゆえ、複数のタイミングで発光させた補正用光源5の光出力を把握することで、受光素子2にて発光装置10の光出力を測定する試験環境の劣化状況を把握可能である。一方、前述の特許文献1(特開平2-184730号公報)に記載の発明においては、光ファイバ束によって、測定対象の光素子からフォトディテクタまでの光路と、基準光源からフォトディテクタまでの光路とが区別されており、光素子が配された試験環境の変化の把握は困難である。
【0049】
以上のごとく、本形態によれば、試験環境の経時的な変化に起因して発光装置の光出力の測定精度が経時的に低下することを抑制する試験方法及び試験装置を提供することができる。
【0050】
[第2の実施の形態]
図4は、本形態の試験方法において、受光素子2にて測定された光出力を示すグラフである。図5は、図4のグラフにおいて、発光装置10の光出力と補正用光源5の光出力とを分離したグラフである。
【0051】
本形態の試験方法においては、発光装置10の発光開始時刻t1から発光終了時刻t2までの間においてノンストップで継続的に発光装置10を光らせ、受光素子2にて発光装置10の光出力を継続的に測定する。さらに、発光装置10の発光開始時刻t1から発光終了時刻t2までの間の複数のタイミングにて補正用光源5を発光させる。すなわち、本形態においては、発光開始時刻t1から発光終了時刻t2までの間において、補正用光源5の発光時においても発光装置10の発光を維持している。こうすると、図4に示すごとく、発光装置10と補正用光源5とを同時に発光させた時間において光出力のピークが表れる。このピークの高さは、補正用光源5の光出力に相当する。そこで、本形態においては、発光装置10と補正用光源5との合成の光出力に基づいて、補正用光源5の光出力を算出している。
【0052】
ピークの高さは、次のようにして算出することができる。まず、ピーク前後の光出力の値を直線で結ぶような一次関数を算出する。そして、ピーク時の相対光出力から、前記一次関数の時間パラメータにピーク時刻を代入して得られる値を差し引くことで、ピークの高さ(すなわち補正用光源5単体の光出力)が算出される。あるいは、ピーク値と、ピークの前後いずれかの光出力との差分を、ピークの高さとしてもよい。第1の実施の形態と同様、補正用光源5の発光時間は10秒以下の短期間であり、ピーク前後の光出力の値は同等と考えられるため、この方法でも十分高精度にピークの高さを算出可能である。
【0053】
なお、本形態においては、第1の実施の形態と同様、発光装置10の発光開始(すなわち時刻t1)の前と発光終了(すなわち時刻t2)の後とのそれぞれにおいて、補正用光源5を単独で発光させている。
【0054】
その他は、第1の実施の形態と同様である。
なお、第2の実施の形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0055】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本形態においては、補正用光源5を発光させる複数のタイミングの少なくとも1つは、発光装置10が発光しているタイミングである。そして、発光装置10と補正用光源5とを同時に発光させている場合は、発光装置10と補正用光源5との合成の光出力に基づき、補正用光源5の光出力を算出する。それゆえ、試験中に発光装置10の発光を停止させる必要性が生じることを抑制可能である。
その他、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を有する。
【0056】
[第2の実施の形態の変形例1]
第2の実施の形態の変形例1、並びに後述の変形例2及び3は、発光装置10と補正用光源5との合成の光出力が、発光装置10の光出力と補正用光源5の光出力との単純和とならない場合について検討したものである。すなわち、この場合、第2の実施の形態にて示した方法では、補正用光源5の光出力を精度よく算出することができない場合も考えられるため、変形例1~3はこれに対処するために工夫したものである。
【0057】
本変形例及び第2の実施の形態においては、1回目の補正用光源5の発光タイミングにて、補正用光源5を単独で発光させており、その直後の2回目の補正用光源5の発光タイミングにて、発光装置10と補正用光源5とを同時に発光させている。これらの発光タイミングの間隔は、試験環境が変化しない程度の間隔(例えば1分以内等)である。そのため、1回目の補正用光源5の発光タイミングにおける補正用光源5の光出力の測定値(以後、「1回目測定値」という。)と、2回目の補正用光源5の発光タイミングにおける補正用光源5の算出値(以後、「2回目算出値」という。)とは、理論上は同じとなる。しかしながら、これらの値がずれている場合、何らかの理由で、発光装置10と補正用光源5との合成の光出力が、発光装置10の光出力と補正用光源5の光出力との単純和となっていないものと判断可能である。
【0058】
そこで、本変形例においては、2回目算出値が1回目測定値と異なっている場合、2回目算出値を1回目測定値と一致させるよう、2回目算出値に第1補正係数を乗算する。第1補正係数は、1回目測定値を、2回目算出値で除算した値である。そして、3回目以降の補正用光源5の光出力の算出値についても、同じ第1補正係数を乗算して補正を行う。これにより、発光装置10と補正用光源5との合成の光出力が、発光装置10の光出力と補正用光源5の光出力との単純和とならない場合であっても、補正用光源5の光出力を精度よく算出することができる。
【0059】
[第2の実施の形態の変形例2]
本変形例及び第2の実施の形態においては、最後の補正用光源5の発光タイミングにて、補正用光源5を単独で発光させており、その直前の補正用光源5の発光タイミングにて、発光装置10と補正用光源5とを同時に発光させている。これらの発光タイミングの間隔は、試験環境が変化しない程度の間隔(例えば1分以内等)である。
【0060】
そこで、最後の補正用光源5の発光タイミングにおける補正用光源5の光出力の測定値(以後、「最後測定値」という。)と、最後の直前の補正用光源5の発光タイミングにおける補正用光源5の光出力の算出値(以後、「直前算出値」という。)とが異なっている場合、直前算出値を最後測定値と一致させるよう、直前算出値に第2補正係数を乗算する。第2補正係数は、最後測定値を、直前算出値にて除算した値である。そして、最後の直前より前の発光タイミングにおける補正用光源5の光出力の算出値についても、同じ第2補正係数を乗算して補正を行う。
【0061】
[第2の実施の形態の変形例3]
本変形例においては、変形例1と同様に第1補正係数を算出するとともに、変形例2と同様に第2補正係数を算出する。そして、第1補正係数と第2補正係数とが異なる場合、第1補正係数と第2補正係数との間を補間(すなわち内挿)し、補正用光源5の各発光時における算出値の補正係数を算出する。
【0062】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0063】
[1]本発明の第1の実施態様は、受光素子2にて発光装置10の光出力を継続的又は断続的に測定し、前記発光装置10の累積発光時間が異なる複数のタイミングに、前記受光素子2に向けて補正用光源5を発光させ、前記複数のタイミングの前記補正用光源5の光出力に基づき、前記受光素子2にて測定された前記発光装置10の光出力の測定値を補正する、試験方法である。
これにより、試験環境の経時的な変化に起因して発光装置10の光出力の測定精度が経時的に低下することが抑制される。
【0064】
[2]本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記発光装置10が、紫外光を発することである。
これにより、試験方法が好適に実施される。
【0065】
[3]本発明の第3の実施態様は、第1又は第2の実施態様において、前記発光装置10の発光開始前及び発光終了後の少なくとも一方においても、前記補正用光源5を発光させることである。
これにより、試験開始時周辺、及び試験終了時周辺の少なくとも一方の試験環境を反映した補正用光源5の光出力を把握することができる。
【0066】
[4]本発明の第4の実施態様は、第1乃至第3のいずれか1つの実施態様において、前記補正用光源5の発光時は、前記発光装置10の発光を停止することである。
これにより、補正用光源5の光出力の把握が容易となる。
【0067】
[5]本発明の第5の実施態様は、第1乃至第3のいずれか1つの実施態様において、前記補正用光源5を発光させる前記複数のタイミングの少なくとも1つは、前記発光装置10が発光しているタイミングであり、前記発光装置10と前記補正用光源5とを同時に発光させている場合は、前記発光装置10と前記補正用光源5との合成の光出力に基づき、前記補正用光源5の光出力を算出することである。
これにより、試験中に発光装置10の発光を停止させる必要性が生じることを抑制可能である。
【0068】
[6]本発明の第6の実施態様は、発光装置10の光出力を継続的又は断続的に測定する受光素子2と、前記受光素子2に向けて複数のタイミングで光を照射可能な補正用光源5と、を備え、前記発光装置10から前記受光素子2へ向けて発される光と、前記補正用光源5から前記受光素子2へ向けて発される光とは、互いに隔てられていない共通の光路を通る、試験装置1である。
これにより、受光素子2にて発光装置10の光出力を測定する試験環境の劣化状況を把握可能である。
【0069】
[7]本発明の第7の実施態様は、第6の実施態様において、前記受光素子2が、紫外光を発する前記発光装置10の光出力を継続的又は断続的に測定することである。
これにより、本試験装置1が好適に使用される。
【0070】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…試験装置
2…受光素子
5…補正用光源
10…発光装置
図1
図2
図3
図4
図5