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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066220
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】故障搬送車移動システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20240508BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B65G1/00 511J
B65G1/04 505C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175652
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岩田 昌重
(72)【発明者】
【氏名】木村 和誠
(72)【発明者】
【氏名】堀江 智史
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022EE09
3F022FF01
3F022JJ09
3F022KK01
3F022MM55
(57)【要約】
【課題】故障した搬送車を移動させることが可能なシステムを、設備のコストの上昇を抑制しつつ実現する。
【解決手段】補助輪ユニット20は、支持フレーム22と、支持フレーム22に支持された補助輪21と、支持フレーム22を車体10に対して着脱自在に固定する固定装置90と、を備える。支持フレーム22は、車体10の底面17に対して下側V2から当接する支持面23を備える。支持面23と補助輪21の下端との上下方向Vの寸法Uが、上昇装置により駆動輪11aの位置を上昇させていない通常接地状態における車体10の底面17と走行面99との上下方向Vの間隔D1よりも小さく、補助輪ユニット20が車体10から取り外された状態で上昇装置により駆動輪11aの位置を上昇させた上昇状態における、車体10の底面17と走行面99との上下方向Vの間隔よりも大きい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行面上を走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車が故障した場合に用いられる補助輪ユニットと、を備えた故障搬送車移動システムであって、
前記搬送車は、車体と、前記車体を支持した状態で前記走行面上を転動する複数の車輪と、を備え、
複数の前記車輪の少なくとも1つは、駆動モータの駆動軸と連動して回転するように連結された駆動輪であり、
前記駆動輪は、サスペンション機構を介して前記車体に取り付けられ、
前記搬送車は、更に、前記車体に対する前記駆動輪の位置を上昇させる上昇装置を備え、
前記補助輪ユニットは、支持フレームと、前記支持フレームに対して回転自在に支持された補助輪と、前記支持フレームを前記車体に対して着脱自在に固定する固定装置と、を備え、
前記支持フレームは、前記補助輪よりも上側において前記車体の底面に対して下側から当接する支持面を備え、
前記支持面と前記補助輪の下端との上下方向の寸法が、前記上昇装置により前記駆動輪の位置を上昇させていない通常接地状態における前記車体の底面と前記走行面との上下方向の間隔よりも小さく、前記補助輪ユニットが前記車体から取り外された状態で前記上昇装置により前記駆動輪の位置を上昇させた上昇状態における、前記車体の底面と前記走行面との上下方向の間隔よりも大きい、故障搬送車移動システム。
【請求項2】
前記サスペンション機構は、前記車体に対して揺動自在に設けられて前記駆動輪を支持する支持アームと、前記車体に取り付けられて前記支持アームの揺動支点を支持する揺動支持部と、前記駆動輪を下側へ向かわせる方向の付勢力を前記支持アームに作用させる弾性ユニットと、を備え、
前記上昇装置は、前記駆動輪を上側へ向かわせる方向に前記支持アームを押圧する押圧部材と、前記押圧部材により前記支持アームを押圧する方向を押圧方向として、前記押圧部材を前記押圧方向に出退させる出退機構と、を備える、請求項1に記載の故障搬送車移動システム。
【請求項3】
前記押圧部材は、押圧用ボルトであり、
前記出退機構は、前記車体に対する位置が固定され、前記押圧用ボルトが螺合する押圧用雌ねじ孔を備え、
前記押圧用雌ねじ孔に螺合した前記押圧用ボルトを回転させることにより、前記押圧用ボルトが前記支持アームにおける前記揺動支点に対して前記駆動輪の側とは反対側の部分を押圧し、前記支持アームに前記駆動輪を上側へ向かわせる方向のモーメントを作用させる、請求項2に記載の故障搬送車移動システム。
【請求項4】
前記サスペンション機構は、前記車体に対する位置が固定され、前記駆動輪を下側へ向かわせる方向への前記支持アームの揺動を予め定められた位置までに規制するストッパを備え、
前記押圧用雌ねじ孔又は前記押圧用雌ねじ孔に連通する孔が、前記ストッパを貫通するように設けられ、
前記押圧用ボルトの端部が、前記ストッパに対して前記支持アームの側に突出して前記支持アームを押圧するように構成されている、請求項3に記載の故障搬送車移動システム。
【請求項5】
前記補助輪ユニット及び前記車体の少なくとも一方に、前記支持フレームを前記車体における予め定められた位置に位置決めするための位置決め機構が設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の故障搬送車移動システム。
【請求項6】
前記位置決め機構として、前記支持フレームに設けられた係合部と、前記車体に設けられて前記係合部が係合する被係合部と、を備え、
前記搬送車が走行する方向を車体前後方向とし、前記車体前後方向に対して上下方向視で直交する方向を車体幅方向として、
前記係合部は、前記車体幅方向の一方側から前記被係合部に係合することで、前記車体前後方向に位置決めされる、請求項5に記載の故障搬送車移動システム。
【請求項7】
前記固定装置は、固定用ボルトと、前記車体及び前記支持フレームの一方に設けられた固定用雌ねじ孔と、前記車体及び前記支持フレームの他方に設けられた固定用貫通孔と、を備え、
前記固定用雌ねじ孔と前記固定用貫通孔とが、前記位置決め機構により前記支持フレームが前記車体に位置決めされた状態で、互いに同軸上に配置される、請求項5に記載の故障搬送車移動システム。
【請求項8】
前記支持面と前記補助輪の下端との上下方向の寸法が互いに異なる複数種類の前記補助輪ユニットを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の故障搬送車移動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行面上を走行して物品を搬送する搬送車と、搬送車が故障した場合に用いられる補助輪ユニットと、を備えた故障搬送車移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行面上を走行して物品を搬送する搬送車の一例が、特開平11-59431号公報(特許文献1)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。特許文献1における搬送車としての無人搬送車(1)は、駆動車輪(2)に加えて、補助キャスター(4)と、補助キャスター(4)を昇降させる昇降装置(10)と、を備えている。通常の走行時には、補助キャスター(4)は、床面(5)から離れた状態とされる。一方、無人搬送車(1)が異常停止した場合には、昇降装置(10)により補助キャスター(4)を押し下げることで、駆動車輪(2)を床面(5)から浮かせる。これにより、無人搬送車(1)が異常停止をして走行できない場合に、当該無人搬送車(1)を牽引自走車(12)によって牽引して走行路外へ退避させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-59431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、搬送車が故障する頻度は高くないのが通常であるため、搬送車が故障した場合に用いられる補助輪(特許文献1では、補助キャスター)の使用頻度は通常低い。この点に関して、特許文献1の技術では、使用頻度の低い補助キャスターやそれを昇降させるための昇降装置を、予め全ての搬送車に取り付けておく必要がある。そのため、特許文献1の技術では、特に搬送車の台数が多い場合に、設備のコストが高くなりやすい。
【0005】
そこで、故障した搬送車を移動させることが可能なシステムを、設備のコストの上昇を抑制しつつ実現することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る故障搬送車移動システムは、走行面上を走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車が故障した場合に用いられる補助輪ユニットと、を備えた故障搬送車移動システムであって、前記搬送車は、車体と、前記車体を支持した状態で前記走行面上を転動する複数の車輪と、を備え、複数の前記車輪の少なくとも1つは、駆動モータの駆動軸と連動して回転するように連結された駆動輪であり、前記駆動輪は、サスペンション機構を介して前記車体に取り付けられ、前記搬送車は、更に、前記車体に対する前記駆動輪の位置を上昇させる上昇装置を備え、前記補助輪ユニットは、支持フレームと、前記支持フレームに対して回転自在に支持された補助輪と、前記支持フレームを前記車体に対して着脱自在に固定する固定装置と、を備え、前記支持フレームは、前記補助輪よりも上側において前記車体の底面に対して下側から当接する支持面を備え、前記支持面と前記補助輪の下端との上下方向の寸法が、前記上昇装置により前記駆動輪の位置を上昇させていない通常接地状態における前記車体の底面と前記走行面との上下方向の間隔よりも小さく、前記補助輪ユニットが前記車体から取り外された状態で前記上昇装置により前記駆動輪の位置を上昇させた上昇状態における、前記車体の底面と前記走行面との上下方向の間隔よりも大きい。
【0007】
本構成によれば、駆動モータ等の故障により搬送車が走行できない状態となった場合であっても、車体の底面に対して下側から当接する支持面を備えた支持フレームを固定装置により車体に固定し、上昇装置により車体に対する駆動輪の位置を上昇させることで、駆動輪が走行面から浮き上がり且つ支持フレームに支持された補助輪が接地した状態を実現することができる。従って、駆動モータ等の故障によって駆動輪が回転しない状態となり、或いは、駆動輪を回転させるために大きな力が必要な状態となった場合であっても、駆動輪を浮き上がらせることで、作業者の力や別の牽引車両の力等により、搬送車を比較的容易に移動させることが可能となる。このように故障した搬送車を移動させることが可能であるため、搬送車が複数台存在する場合には、故障した搬送車が他の搬送車の走行の妨げとなることを回避できる。また、本構成によれば、支持フレームの支持面と補助輪の下端との上下方向の寸法が、通常接地状態における車体の底面と走行面との上下方向の間隔よりも小さいため、基本的に、ジャッキ等により車体を持ち上げることなく、補助輪を支持する支持フレームを車体に取り付けることができる。そのため、車体に対する支持フレームの取り付けを容易に行うことができる。
【0008】
そして、本構成によれば、支持フレームが車体に対して着脱自在であるため、搬送車が故障した場合にのみ、補助輪を支持する支持フレームを当該搬送車に取り付ければよい。従って、搬送車が複数台存在する場合であっても、搬送車の台数より少ない個数の補助輪ユニットを設備に備えておけば基本的に十分であり、予め全ての搬送車に補助輪を取り付けておく場合に比べて、設備のコストの低減を図ることができる。
【0009】
以上のように、本構成によれば、故障した搬送車を移動させることが可能なシステムを、設備のコストの上昇を抑制しつつ実現することが可能となっている。
【0010】
故障搬送車移動システムの更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】搬送設備の平面図
図2】容器棚の正面図
図3】搬送車の車体幅方向視図
図4】移載装置の第1姿勢と第2姿勢とを示す平面図
図5】車体の構造を示す図
図6】車体の構造を示す図
図7】通常接地状態を示す図
図8】駆動輪浮上状態を示す図
図9】補助輪ユニットの斜視図
図10】昇降装置により車体を持ち上げた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
故障搬送車移動システムの実施形態について、図面に基づいて説明する。ここでは、本開示に係る故障搬送車移動システムを、図1に例示するような搬送設備に適用した場合を例として説明する。
【0013】
図1に示すように、搬送設備Fは、容器70(図2参照)を収納する容器棚8と、容器70の搬出及び搬入を行う搬出入部9と、容器70を搬送する搬送車100と、を備えている。本実施形態では、搬送設備Fは、複数の搬送車100を備えている。搬送車100は、搬出入部9によって搬入された容器70を容器棚8へ搬送し、又は、容器棚8に収納された容器70を搬出のために搬出入部9へ搬送する。容器70は物品の一例であり、容器70以外の物品が搬送対象とされてもよい。本実施形態では、容器70が「物品」に相当する。
【0014】
本実施形態では、複数の容器棚8が、規定の間隔を空けつつ互いに平行に配置されている。複数の容器棚8のそれぞれは少なくとも正面が開口しており、当該正面において容器70の出し入れが行われる。そして、正面が向かい合って隣り合う一対の容器棚8の間に、走行体1(搬送車100)の走行経路Rの一部が設定されている。また、搬送設備Fに備えられた複数の容器棚8のうち最も端に配置された容器棚8は、正面を外側に向けて配置されており、当該端の容器棚8の正面に沿った領域にも走行経路Rの一部が設定されている。また、搬送設備Fには、複数の搬出入部9が設けられており、複数の搬出入部9のそれぞれを通る領域にも、走行経路Rの一部が設定されている。
【0015】
走行経路Rは、容器棚8の正面に沿って当該容器棚8の延在方向に延びる棚内経路Raと、容器棚8の配置領域の外部に設定された棚外経路Rbと、を含んでいる。棚内経路Raは、複数の容器棚8のそれぞれに対応して設定されている。本実施形態では、正面が向かい合って隣り合う一対の容器棚8の間の領域に設定された走行経路Rの一部、及び、正面を外側に向けて配置された容器棚8の当該正面に沿った領域に設定された走行経路Rの一部が、棚内経路Raに相当する。また、棚外経路Rbは、複数の棚内経路Raを繋ぐように設定されている。また、棚外経路Rbは、複数の搬出入部9のそれぞれを通るようにも設定されている。本実施形態では、走行経路Rにおける棚内経路Ra以外の部分が、棚外経路Rbに相当する。
【0016】
図2に示すように、容器棚8は、容器70を収納する棚部80を上下方向Vに複数段備えている。本実施形態では、容器棚8は、当該容器棚8の正面に沿って水平方向に延在する梁部材82を複数備えると共に、上下方向Vに沿って延在し、複数の梁部材82のそれぞれに連結される複数の支柱部材81を備えている。
【0017】
複数の梁部材82は、上下方向Vに互いに離間して配置されている。そして、複数の梁部材82のそれぞれに、容器70を載置するための載置部材83が連結されている。本例では、容器70は、一対の載置部材83に載置されることにより、棚部80に収納される。また、棚部80には、一対の載置部材83の組が複数組配置されており、1つの棚部80において複数の容器70を収納可能となっている。
【0018】
容器70は、搬送車100による搬送対象である。容器70は、上側V1に開口部を備えた箱状に形成されている。本例では、上下方向V視における容器70の外形は、矩形状を成している。容器70の内部には、規定の被収容物が収容可能となっている。被収容物には、例えば、食料品や生活用品などの各種商品、又は、工場の生産ライン等において用いられる部品や仕掛品などが含まれる。
【0019】
本実施形態では、容器70は、その内部に被収容物を収容した状態で、別の容器70と積み重ねることが可能に構成されている。すなわち、容器70は、上下方向Vに段積み可能に構成されている(図3参照)。本例では、容器70の底部が、別の容器70の開口部に対して上側V1から嵌合することにより、2つの容器70が上下方向Vに段積みされる。
【0020】
図3に示すように、搬送車100は、走行面99上を走行する走行体1を備えている。すなわち、搬送車100は、走行面99上を走行して容器70を搬送する。走行面99は、例えば、床面により構成される。走行体1は、既定の走行経路R(図1参照)に沿って走行する。本実施形態では、搬送車100は、複数の容器70を段積み状態の容器群7として規定の段積み領域2A内に支持する容器群支持部2と、容器群支持部2に支持された容器群7の容器70を持ち上げる持ち上げ装置3と、容器70の移載を行う移載装置4と、を備えている。本実施形態では、搬送車100は、走行体1、持ち上げ装置3、及び移載装置4を制御する制御装置C(図5図6参照)を更に備えている。制御装置Cは、これらの他、容器群支持部2も制御する。
【0021】
容器群支持部2、持ち上げ装置3、及び移載装置4は、走行体1に搭載されている。搬送車100(具体的には、走行体1)が走行する方向を「車体前後方向L」とすると、容器群支持部2と移載装置4とは、走行体1上において車体前後方向Lに並んで配置されている。ここで、車体前後方向Lの一方側を「車体前後方向第1側L1」とし、車体前後方向Lの反対側を「車体前後方向第2側L2」とする。また、上下方向Vに沿う上下方向V視で車体前後方向Lに直交する方向を「車体幅方向W」とし、車体幅方向Wの一方側を「車体幅方向第1側W1」とし、車体幅方向Wの他方側を「車体幅方向第2側W2」とする。ここでは、車体前後方向L及び車体幅方向Wは、互いに直交する水平方向である。
【0022】
容器群支持部2は、複数の容器70を段積み状態の容器群7として支持可能に構成されている。容器群支持部2に対して上側V1には、容器群7が配置される段積み領域2Aが規定されている。本例では、容器群支持部2は、容器群7を載置した状態で当該容器群7を車体幅方向Wに移動させることが可能なコンベヤを備えている。
【0023】
搬出入部9(図1参照)には、複数の容器70が段積みされた状態の容器群7が搬入される。走行体1が搬出入部9に隣接した状態で、容器群支持部2は、搬出入部9から容器群7を受け取り、又は、搬出入部9へ容器群7を引き渡す。詳細な図示は省略するが、本例では、搬出入部9は、容器70から商品等の被収容物を取り出す作業が行われるピッキングエリアに隣接している。容器群支持部2から搬出入部9へ容器群7が引き渡されると、搬出入部9に隣接するピッキングエリアにおいて容器70から被収容物が取り出される。容器70に収容された被収容物の一部又は全部が取り出された後は、当該容器70は、搬出入部9から容器群支持部2(搬送車100)に引き渡されて、再び容器棚8へ搬送される。
【0024】
持ち上げ装置3は、容器群支持部2に支持された容器群7の容器70を持ち上げるように構成されている。持ち上げ装置3は、走行体1から上側V1に立設された持ち上げ用マスト30と、持ち上げ用マスト30に連結された持ち上げ用昇降体30Bと、持ち上げ用昇降体30Bに支持された持ち上げ機構(本例では、後述する第1持ち上げ機構31及び第2持ち上げ機構32)と、持ち上げ用昇降体30Bを持ち上げ用マスト30に沿って昇降させる持ち上げ用昇降体駆動部30Mと、を備えている。詳細な図示は省略するが、持ち上げ用昇降体駆動部30Mは、例えば、ベルト等の無端体が巻回された回転体を回転駆動するためのモータを備えている。
【0025】
本例では、持ち上げ装置3は、段積み領域2Aに段積みされた容器群7の内の任意の高さの容器70を当該容器70に対して下側V2に隣接する容器70に対して持ち上げる第1持ち上げ機構31と、第1持ち上げ機構31により持ち上げられた容器70よりも下側V2の容器70を当該容器70に対して下側V2に隣接する容器70に対して持ち上げる第2持ち上げ機構32と、を備えている。また、本実施形態では、第1持ち上げ機構31と第2持ち上げ機構32とが、上下方向Vに離間して配置されている。これにより、第1持ち上げ機構31によって持ち上げられた容器70と、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70との上下方向Vの間に、スペースを形成することが可能となっている。また、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70に対して下側V2にも、上下方向Vのスペースを形成することが可能となっている。
【0026】
第1持ち上げ機構31によって持ち上げられた容器70と第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70との上下方向Vの間にスペースを形成した場合には、当該スペースに、他の容器70を卸すことが可能となっている。すなわち、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70に対して上側V1に、移載装置4によって他の容器70を段積みすることが可能となっている。また、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70に対して下側V2に上下方向Vのスペースを形成した場合には、当該スペースを利用して、第2持ち上げ機構32によって持ち上げられた容器70に対して下側V2に隣接して配置された容器70を掬うことが可能となっている。
【0027】
移載装置4は、移載対象箇所Tに対して容器70の移載を行うように構成されている。移載装置4は、移載対象箇所Tへ容器70を移載する卸し動作と、移載対象箇所Tから容器70を移載する掬い動作と、を行うように構成されている。なお、本明細書では、移載対象箇所Tから移載装置4へ容器70を移載することを「掬い」と称しており、「掬い」は、特定の移載動作に限定されるものではない。本実施形態では、移載対象箇所Tには、段積み領域2Aと容器棚8の棚部80とが含まれる。
【0028】
図3に示すように、搬送車100は、走行体1に固定されると共に上下方向Vに沿うように配置された移載用マスト40と、移載用マスト40に沿って昇降する移載用昇降体40Bと、を備えている。また、搬送車100は、移載用昇降体40Bを移載用マスト40に沿って昇降させる移載用昇降体駆動部40Mを備えている。移載装置4は、移載用昇降体40Bに支持されている。これにより、搬送車100は、移載装置4を上下方向Vに移動させることができ、複数段の棚部80(図3参照)のそれぞれに対して容器70を移載することが可能となっている。本例では、移載装置4は、第1移載機41と、第1移載機41よりも下側V2に配置された第2移載機42とを備えており、第1移載機41による移載動作と第2移載機42による移載動作とを並行して行うことが可能となっている。詳細な図示は省略するが、移載用昇降体駆動部40Mは、例えば、ベルト等の無端体が巻回された回転体を回転駆動するためのモータを備えている。
【0029】
ここで、移載装置4により移載される容器70の移動方向を「移載方向X」とする。また、移載方向Xの一方側を「移載方向卸し側X1」とし、移載方向Xの他方側を「移載方向掬い側X2」とする。本例では、移載方向Xは、水平方向に沿う方向である。移載方向卸し側X1は、容器70を卸す場合に、移載方向Xに沿って容器70が移動する側である。移載方向掬い側X2は、容器70を掬う場合に、移載方向Xに沿って容器70が移動する側である。本例では、移載装置4(ここでは、第1移載機41及び第2移載機42のそれぞれ)は、不図示の押圧体により容器70を移載方向卸し側X1へ向けて押圧することで、移載対象箇所Tへ当該容器70を移載する卸し動作を行い、不図示の係止体を容器70に係止させて当該容器70を移載方向掬い側X2へ向けて引き込むことで、移載対象箇所Tから当該容器70を移載する掬い動作を行う。
【0030】
本実施形態では、搬送車100は、移載装置4を上下方向Vに沿う軸心回りに旋回させる旋回装置5を備えている。図4に示すように、旋回装置5は、移載装置4(詳細には移載装置4の一部)を上下方向Vに沿う軸心回りに旋回させて、移載方向卸し側X1を段積み領域2Aに向けた第1姿勢P1と、移載方向卸し側X1を容器棚8に向けた第2姿勢P2とに、移載装置4の向きを変更するように構成されている。このように本実施形態では、移載方向Xは、旋回装置5によって水平面内において変更され得る。
【0031】
本実施形態では、搬送車100は、移載対象箇所Tの位置に応じて移載装置4の姿勢を変更する。具体的には、移載装置4は、移載対象箇所Tが段積み領域2Aである場合に第1姿勢P1となり、移載対象箇所Tが容器棚8(棚部80)である場合に第2姿勢P2となる。図3に示すように、本例では、旋回装置5は、移載装置4を支持する旋回台50と、移載用昇降体40Bに対して旋回台50を旋回自在に支持する旋回軸51と、旋回軸51を駆動する旋回駆動部(不図示)と、を備えている。
【0032】
図5及び図6に示すように、搬送車100は、各部を制御する制御装置Cを備えている。本実施形態では、制御装置Cは、走行体1、容器群支持部2、持ち上げ装置3、移載装置4、及び、旋回装置5を制御する。容器70を支持、搬送、及び移載するための動作は、制御装置Cによる各部の制御によって実現される。本例では、制御装置Cは、各種センサによる検出結果に基づいて、容器70を支持、搬送、及び移載するための動作を各部に行わせる。制御装置Cは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各機能が実現される。
【0033】
図5及び図6に示すように、搬送車100(具体的には、走行体1)は、車体10と、車体10を支持した状態で走行面99上を転動する複数の車輪11と、を備えている。図6に示すように、複数の車輪11の少なくとも1つは、駆動モータ11Mの駆動軸16と連動して回転するように連結された駆動輪11aである。本実施形態では、搬送車100は、6つの車輪11を備えており、そのうちの2つが駆動輪11aであり、残りの4つが従動輪11b(非駆動輪)である。図6に示すように、本例では、車体10における車体前後方向Lの中央部の領域である中央領域10Amに、車体幅方向Wに並ぶように一対の駆動輪11aが設けられ、車体10における中央領域10Amに対して車体前後方向Lの両側の領域のそれぞれに、車体幅方向Wに並ぶように一対の従動輪11bが設けられている。
【0034】
一対の駆動輪11aは、駆動モータ11Mにより、互いに同じ速度又は異なる速度で回転駆動される。本実施形態では、一対の駆動輪11aは、それぞれ別の駆動モータ11Mによって駆動される。なお、一対の駆動輪11aが互いに異なる速度で回転駆動される場合には、一対の駆動輪11aのうち一方が正方向に回転駆動され、他方が逆方向に回転駆動される場合が含まれる。換言すれば、一対の駆動輪11aが、互いに反対方向に回転駆動される場合が含まれる。本実施形態では、駆動輪11aの回転軸心11axが沿う方向は、車体幅方向Wに固定されている。一方、従動輪11bは、上下方向Vに沿う軸心回りに回転自在に車体10に支持されている。すなわち、従動輪11bの回転軸心が沿う方向は、水平面内において変更され得る。本例では、各従動輪11bは、キャスターとされている。
【0035】
本実施形態では、一対の駆動輪11aが互いに反対方向に回転駆動されることで、搬送車100は、走行体1をその場で上下方向Vに沿う軸心回りに旋回させる、いわゆるスピンターンを行うことができる。但し、走行体1の進行方向の変更は、スピンターン以外によっても可能である。例えば、搬送車100は、一対の駆動輪11aの一方の回転を停止させ、他方を回転させることで走行体1の進行方向を変更し、或いは、一対の駆動輪11aを同じ方向に回転させつつ互いの回転速度を異ならせることで走行体1の進行方向を変更するようにしても良い。
【0036】
走行体1は、車輪11を走行面99に接触させ易くするため、及び、走行時の車輪11の振動を吸収するためのサスペンション機構Sを備えている。サスペンション機構Sは、駆動輪11aに設けられている。すなわち、駆動輪11aは、サスペンション機構Sを介して車体10に取り付けられている。本実施形態では、一対の駆動輪11aが、それぞれ別のサスペンション機構Sを介して車体10に取り付けられている。本実施形態では、サスペンション機構Sは、従動輪11bには設けられていない。
【0037】
図7に示すように、サスペンション機構Sは、車体10に対して揺動自在に設けられて駆動輪11aを支持する支持アーム12と、車体10に取り付けられて支持アーム12の揺動支点12xを支持する揺動支持部13と、駆動輪11aを下側V2へ向かわせる方向の付勢力を支持アーム12に作用させる弾性ユニット14と、を備えている。支持アーム12は、駆動輪11aを回転自在に支持している。本実施形態では、支持アーム12は、更に、駆動モータ11Mを支持している。
【0038】
以下では、支持アーム12が揺動する方向を「揺動方向Z」とし、支持アーム12の揺動方向Zにおける、駆動輪11aを走行面99へ向かわせる側を「揺動方向第1側Z1」とし、その反対側を「揺動方向第2側Z2」とする。すなわち、揺動方向第1側Z1は、駆動輪11aを下側V2へ向かわせる側であり、揺動方向第2側Z2は、駆動輪11aを上側V1へ向かわせる側である。
【0039】
支持アーム12の揺動支点12xの軸心、換言すれば、支持アーム12の揺動軸心は、駆動輪11aの回転軸心11axと平行状(平行又は実質的に平行)に配置されている。これにより、走行体1が凹凸のある走行面99を走行する場合の駆動輪11aの上下動を許容するように、支持アーム12が揺動する。支持アーム12の揺動支点12xは、駆動輪11aの回転軸心11axとは車体前後方向Lの異なる位置に配置されている。ここでは、支持アーム12の揺動支点12xは、駆動輪11aの回転軸心11axに対して車体前後方向第2側L2に配置されている。
【0040】
揺動支持部13は、支持アーム12の揺動支点12xを支持する部材である。本実施形態では、車体10は、上側V1を向く上面部101と、上面部101から下側V2に向かって垂下する垂下壁部102と、を備えている。上面部101は、支持アーム12及び駆動輪11aに対して上側V1に配置され、垂下壁部102は、支持アーム12及び駆動輪11aに対して車体前後方向第2側L2に配置されている。そして、揺動支持部13は、垂下壁部102に対して固定されている。本例では、揺動支持部13は、垂下壁部102に対して車体前後方向第1側L1から当接した状態で垂下壁部102に固定されている。そして、揺動支持部13は、垂下壁部102に対して車体前後方向第1側L1において、支持アーム12の揺動支点12xを支持している。
【0041】
本実施形態では、サスペンション機構Sは、車体10に対する位置が固定されたストッパ15を備えている。ストッパ15は、駆動輪11aを下側V2へ向かわせる方向への支持アーム12の揺動(言い換えれば、揺動方向第1側Z1への揺動)を予め定められた位置までに規制する。図10は、支持アーム12の位置がストッパ15によって規制された状態を示している。なお、図10は、ジャッキ等の昇降装置98によって車体10を持ち上げた状態を示している。例えば、駆動輪11a及び支持アーム12を車体10から取り外す場合に、このように車体10が持ち上げられる。このように車体10を持ち上げた場合、重力の作用により支持アーム12が揺動方向第1側Z1へ揺動するが、支持アーム12の揺動をストッパ15により規制することで、駆動輪11a及び支持アーム12が下側V2に大きく垂れ下がった状態とならないようにできる。よって、駆動輪11a及び支持アーム12の取り外しを行いやすい。
【0042】
ストッパ15は、支持アーム12が揺動方向第1側Z1へ揺動した場合に支持アーム12に接触する位置に配置されている。そして、ストッパ15は、ストッパ15と接触する位置までの支持アーム12の揺動方向第1側Z1への揺動を許容しつつ、当該位置よりも揺動方向第1側Z1への支持アーム12の揺動を規制する(図10参照)。本実施形態では、垂下壁部102の一部がストッパ15を構成しており、ストッパ15は、支持アーム12が揺動方向第1側Z1へ揺動した場合に、支持アーム12における揺動支点12xに対して車体前後方向第2側L2の部分(ここでは、後述する押圧部分121)に接触する位置に配置されている。
【0043】
図7に示すように、弾性ユニット14は、支持アーム12における揺動支点12xから離間した対象箇所12pに対して揺動方向第2側Z2から当接する当接部140と、支持アーム12に当接している状態の当接部140を揺動方向第1側Z1へ向けて付勢する弾性部141と、当接部140及び弾性部141を支持する本体部142と、を備えている。本体部142は、車体10(具体的には、上面部101)に固定されている。走行体1の重量の少なくとも一部を駆動輪11aが支えている状態において、弾性部141によって付勢された当接部140が支持アーム12に当接することで、支持アーム12に支持された駆動輪11aを走行面99の側へ押し付けて、駆動輪11aを走行面99に接触させた状態とすることができる。そのため、駆動輪11aが走行面99から浮いて空転し難いようにすることができる。
【0044】
本実施形態では、対象箇所12pは、支持アーム12における、駆動輪11aの回転軸心11axに対して揺動支点12xとは車体前後方向Lの反対側に設定されている。ここでは、対象箇所12pは、支持アーム12における駆動輪11aの回転軸心11axに対して車体前後方向第1側L1に設定されている。また、本実施形態では、対象箇所12pは、支持アーム12における上側V1を向く面に設定されている。そして、当接部140は、対象箇所12pに対して上側V1から当接するように設けられており、弾性部141は、当接部140を下側V2へ向けて付勢するように設けられている。
【0045】
本体部142は、筒状に形成された収容室を備えており、当接部140は、当該収容室の内部を上下方向Vに移動可能なピストン状に形成されたピストン部140aと、ピストン部140aから下側V2に延在するように形成されると共に上記収容室の下端から下側V2に突出するように配置された突出部140bと、を備えている。本例では、突出部140bの下端部が、支持アーム12における対象箇所12pに対して上側V1から当接する。
【0046】
弾性部141は、ピストン部140aを下側V2へ付勢するように構成されている。本例では、弾性部141は、本体部142が備える収容室に収容されてピストン部140aを付勢するバネ部材141aを備えている。ここでは、バネ部材141aは、当該収容室の上壁とピストン部140aとの上下方向Vの間に配置された圧縮コイルバネである。本実施形態では、弾性部141は、バネ部材141aの弾性力を調整するための調整部141bを備えている。本例では、調整部141bを構成するボルトを締めることで、バネ部材141aとしての圧縮コイルバネの圧縮量を大きくして弾性力を大きくすることができる。反対に、調整部141bを構成するボルトを緩めることで、バネ部材141aとしての圧縮コイルバネの圧縮量を小さくして弾性力を小さくすることができる。
【0047】
ところで、搬送車100の故障(例えば、駆動モータ11Mの故障)によって、駆動輪11aが回転しない状態となり、或いは、駆動輪11aを回転させるために大きな力が必要な状態となる場合がある。例えば、電力が供給されることにより制動状態が解除されるネガティブブレーキ(例えば、無励磁ブレーキ)が駆動モータ11Mと駆動輪11aとの間の動力伝達機構に設けられる場合、搬送車100の故障に伴い動作電力の供給が遮断されると、駆動輪11aが回転しない状態となる。本開示に係る故障搬送車移動システムによれば、このように駆動輪11aが回転しない状態となり、或いは、駆動輪11aを回転させるために大きな力が必要な状態となった場合であっても、以下に述べるように、駆動輪11aを走行面99から浮き上がらせることで、作業者の力や別の牽引車両の力等により、搬送車100を比較的容易に移動させることが可能となる。
【0048】
故障搬送車移動システムは、搬送車100と、搬送車100が故障した場合に用いられる補助輪ユニット20(図9参照)と、を備えている。本実施形態では、図1に示すように、搬送車100が複数台存在し、いずれかの搬送車100が故障した場合に、故障した搬送車100に対して補助輪ユニット20が用いられる。
【0049】
図9に示すように、補助輪ユニット20は、支持フレーム22と、支持フレーム22に対して回転自在に支持された補助輪21と、支持フレーム22を車体10に対して着脱自在に固定する固定装置90と、を備えている。補助輪ユニット20(具体的には、支持フレーム22)は、通常時には搬送車100から取り外されており、搬送車100が故障した場合にのみ車体10に取り付けられる。本実施形態では、補助輪21は、上下方向Vに沿う軸心回りに回転不能に支持フレーム22に支持されており(すなわち、補助輪21の回転軸心が沿う方向は、支持フレーム22に対して固定されており)、支持フレーム22は、補助輪21の回転軸心が車体幅方向Wに沿う向きで、固定装置90により車体10に対して固定される。
【0050】
図7に示すように、支持フレーム22は、補助輪21よりも上側V1において車体10の底面17に対して下側V2から当接する支持面23を備えている。本実施形態では、支持フレーム22は、車体10が備える取付部103に取り付けられる。そのため、支持フレーム22の支持面23が下側V2から当接する底面17は、取付部103の底面17である。図9に示すように、取付部103は、水平面に沿う板状に形成されている。また、図7に示すように、本実施形態では、取付部103は、上面部101よりも車体前後方向第1側L1であって、上面部101よりも下側V2に配置されている。本例では、取付部103は、上面部101と一体的に形成されている。
【0051】
図6に示すように、車体10は、車体幅方向Wの両側に取付部103を備えており、搬送車100の故障時には、一対の補助輪ユニット20が用いられる。すなわち、搬送車100の故障時には、車体幅方向Wの両側の取付部103のそれぞれに補助輪ユニット20(具体的には、支持フレーム22)が取り付けられる。なお、図9は、一対の補助輪ユニット20のうちの車体幅方向第2側W2の補助輪ユニット20を示しているが、車体幅方向第1側W1の補助輪ユニット20は、車体幅方向第2側W2の補助輪ユニット20と同じ構成であって、車体幅方向Wに直交する面に対して車体幅方向第2側W2の補助輪ユニット20と鏡対称に配置されている。
【0052】
図7に示すように、本実施形態では、固定装置90は、固定用ボルト91と、車体10及び支持フレーム22の一方に設けられた固定用雌ねじ孔92と、車体10及び支持フレーム22の他方に設けられた固定用貫通孔93と、を備えている。図7に示す例では、支持フレーム22に固定用雌ねじ孔92が設けられ、車体10に固定用貫通孔93が設けられている。具体的には、固定用雌ねじ孔92は、支持フレーム22の上面に開口するように支持フレーム22に形成され、固定用貫通孔93は、車体10の取付部103を上下方向Vに貫通するように形成されている。そして、固定用ボルト91(本例では、蝶ボルト)を上側V1から固定用貫通孔93に貫通させて固定用雌ねじ孔92に螺合させて締結することにより、支持フレーム22が車体10(具体的には、取付部103)に固定される。なお、図7に示す例では、固定装置90は、車体前後方向Lの2箇所で、固定用ボルト91により支持フレーム22を車体10に固定する。
【0053】
図9に示すように、本実施形態では、補助輪ユニット20及び車体10の少なくとも一方に、支持フレーム22を車体10における予め定められた位置に位置決めするための位置決め機構Pが設けられている。ここでは、位置決め機構Pにより支持フレーム22が車体10に位置決めされた状態で、固定用雌ねじ孔92と固定用貫通孔93とが互いに同軸上に配置されるように(図7参照)、位置決め機構Pが構成されている。
【0054】
本実施形態では、故障搬送車移動システムは、位置決め機構Pとして、支持フレーム22に設けられた係合部24と、車体10に設けられて係合部24が係合する被係合部18と、を備えている。すなわち、位置決め機構Pは、補助輪ユニット20及び車体10の双方に設けられている。具体的には、位置決め機構Pを構成する係合部24と被係合部18とが、支持フレーム22と車体10とに分かれて設けられている。図9に示す例では、位置決め機構Pは、車体前後方向Lの2箇所で係合部24を被係合部18に係合させることにより、支持フレーム22を車体10に対して位置決めする。
【0055】
図9に示す例では、係合部24は、支持フレーム22に固定されたボルトの頭部により構成され、被係合部18は、車体10(具体的には、取付部103)に形成された切り欠き部により構成されている。係合部24を構成するボルトは、当該ボルトの頭部が支持面23(図7参照)に対して上側V1に突出するように、支持フレーム22に固定されている。また、被係合部18を構成する切り欠き部は、取付部103の側面の一部(言い換えれば、上下方向V視での取付部103の外縁の一部)を切り欠いて形成されている。なお、本例では、係合部24が凸部であり被係合部18が凹部であるが、係合部24が凹部であり被係合部18が凸部である構成としてもよい。
【0056】
図9に示すように、係合部24は、車体幅方向Wの一方側から被係合部18に係合することで、車体前後方向Lに位置決めされる。ここでは、係合部24は、車体幅方向Wの外側から被係合部18に係合するように構成されている。そのため、被係合部18を構成する切り欠き部は、取付部103の車体幅方向Wの外側の側面の一部を切り欠いて形成されている。なお、車体幅方向Wの外側は、車体幅方向Wにおいて搬送車100の中央部から離れる側であり、図9に示す車体幅方向第2側W2の補助輪ユニット20の場合、車体幅方向第2側W2が車体幅方向Wの外側である。
【0057】
係合部24は、被係合部18を構成する切り欠き部に挿入された状態で、当該切り欠き部により車体前後方向Lの両側への移動を規制されることで、車体前後方向Lに位置決めされる。また、係合部24は、被係合部18を構成する切り欠き部に車体幅方向Wの外側から接触した状態で、当該切り欠き部により車体幅方向Wの内側(車体幅方向Wの外側とは反対側)への移動を規制されることで、車体幅方向Wに位置決めされる。本例では、支持フレーム22を車体10に対して車体幅方向Wの外側から取り付けることができる。そのため、例えば、搬送車100が故障により棚内経路Raに停止している場合に、作業者は容器棚8に対して下側V2に潜り込んで搬送車100に対して車体幅方向Wの外側から接近することで、支持フレーム22を車体10に対して比較的容易に取り付けることができる。
【0058】
図8に示すように、搬送車100は、車体10に対する駆動輪11aの位置を上昇させる上昇装置60を備えている。本実施形態では、上昇装置60は、押圧部材61と出退機構63とを備えている。押圧部材61は、駆動輪11aを上側V1へ向かわせる方向に支持アーム12を押圧する部材である。すなわち、押圧部材61は、支持アーム12を揺動方向第2側Z2へ揺動させる方向に、支持アーム12を押圧する。押圧部材61により支持アーム12を押圧する方向(ベクトル)を押圧方向Yとして、出退機構63は、押圧部材61を押圧方向Yに出退させる機構である。本実施形態では、押圧方向Yは、車体前後方向Lに平行な方向(ここでは、車体前後方向第1側L1へ向かう方向)とされている。
【0059】
出退機構63により押圧部材61を押圧方向Yに移動させることにより、支持アーム12を押圧して車体10に対する駆動輪11aの位置を上昇させ、出退機構63により押圧部材61を押圧方向Yとは反対方向に移動させることにより、車体10に対する駆動輪11aの位置を下降させることができる。図8は、押圧部材61により支持アーム12を押圧することにより、支持アーム12が二点鎖線で示す状態(押圧部材61による押圧前の状態)から揺動方向第2側Z2に揺動し、車体10に対する駆動輪11aの位置が、押圧部材61による押圧前の状態に比べて上昇した状態を示している。なお、車体10に対する駆動輪11aの位置を上昇させるためには、弾性ユニット14による付勢力に抗して支持アーム12を揺動方向第2側Z2へ揺動させる必要がある。支持アーム12を揺動方向第2側Z2へ揺動させるために必要な押圧力を小さく抑えるために、弾性ユニット14による支持アーム12の付勢力を小さくした状態や、弾性ユニット14による支持アーム12の付勢を解除した状態で、車体10に対する駆動輪11aの位置を上昇させてもよい。例えば、弾性部141(具体的には、バネ部材141a)の弾性力が小さくなるように調整部141bによる調整を行った状態で、車体10に対する駆動輪11aの位置を上昇させるとよい。
【0060】
図8に示す例では、押圧部材61は、押圧用ボルト62であり、出退機構63は、押圧用ボルト62が螺合する押圧用雌ねじ孔64を備えている。押圧用雌ねじ孔64は、車体10に対する位置が固定されている。上昇装置60は、押圧用雌ねじ孔64に螺合した押圧用ボルト62を回転させることにより、押圧用ボルト62が支持アーム12における揺動支点12xに対して駆動輪11aの側とは反対側の部分を押圧し、支持アーム12に駆動輪11aを上側V1へ向かわせる方向のモーメントを作用させるように構成されている。図8に示す例では、押圧用ボルト62は、支持アーム12における揺動支点12xに対して車体前後方向第2側L2であって下側V2の部分である押圧部分121を、車体前後方向第2側L2から押圧するように構成されている。押圧用ボルト62の頭部は、押圧用雌ねじ孔64に対して車体前後方向第2側L2に配置されており、作業者は、車体前後方向第2側L2から押圧用ボルト62を回転させることができる。
【0061】
図8に示すように、本例では、押圧用雌ねじ孔64又は押圧用雌ねじ孔64に連通する孔が、ストッパ15を貫通するように設けられている。ここで、押圧用雌ねじ孔64に連通する孔は、押圧用ボルト62が挿通される貫通孔である。本例では、押圧用雌ねじ孔64が、ストッパ15を貫通するように設けられている。そして、押圧用ボルト62の端部が、ストッパ15に対して支持アーム12の側に突出して支持アーム12を押圧するように構成されている。ここでは、押圧用ボルト62の車体前後方向第1側L1の端部が、ストッパ15に対して車体前後方向第1側L1に突出して支持アーム12(具体的には、押圧部分121)を押圧するように構成されている。
【0062】
図8に示す例では、垂下壁部102に対して車体前後方向第2側L2に固定された部材に、押圧用雌ねじ孔64に連通する孔(貫通孔)が形成されており、押圧用ボルト62は、当該孔に挿通された状態で押圧用雌ねじ孔64に螺合している。このような構成とは異なり、例えば、垂下壁部102に対して車体前後方向第2側L2に固定された部材に、押圧用雌ねじ孔64が形成され、押圧用雌ねじ孔64に連通する孔が、ストッパ15を貫通するように形成されていてもよい。また、押圧用雌ねじ孔64がストッパ15を貫通するように設けられる場合に、押圧用雌ねじ孔64に連通する孔が形成されない構成(例えば、図8に示す例において、垂下壁部102に対して車体前後方向第2側L2に固定された部材が存在しない構成)とすることもできる。
【0063】
図7は、上昇装置60により駆動輪11aの位置を上昇させていない通常接地状態を示している。図7において、ユニット寸法Uは、補助輪ユニット20の上下方向Vの寸法であり、具体的には、支持面23と補助輪21の下端との上下方向Vの寸法である。また、図7において、第1間隔D1は、上昇装置60により駆動輪11aの位置を上昇させていない通常接地状態における車体10の底面17(ここでは、取付部103の底面17、以下同様)と走行面99との上下方向Vの間隔である。本実施形態では、通常接地状態を、搬送車100(故障していない搬送車100)が設計通りに走行面99上に配置されている状態としている。そのため、第1間隔D1は、設計上の車体10の底面17と走行面99との上下方向Vの間隔である。
【0064】
一方、図8は、補助輪ユニット20が車体10に取り付けられた状態で上昇装置60により駆動輪11aの位置を上昇させた駆動輪浮上状態を示している。図8において、駆動輪浮上状態における車体10の底面17と駆動輪11aの下端との上下方向Vの間隔を、第2間隔D2としている。仮に図8に示す状態において補助輪ユニット20が車体10に取り付けられていなければ、搬送車100の重量により車体10が撓み変形して、駆動輪11aが走行面99に接地した状態となる。そのため、第2間隔D2は、補助輪ユニット20が車体10から取り外された状態で上昇装置60により駆動輪11aの位置を上昇させた上昇状態における、車体10の底面17と走行面99との上下方向Vの間隔である。
【0065】
図7及び図8に示すように、ユニット寸法Uは、第1間隔D1よりも小さく、第2間隔D2よりも大きい。なお、第2間隔D2は、上昇装置60による駆動輪11aの位置の上昇量に応じて変化し、上昇装置60により駆動輪11aの位置をその上昇可能範囲内で最大限上昇させた場合に、第2間隔D2は最小値となる。ユニット寸法Uは、少なくとも第2間隔D2の最小値よりも大きい。ユニット寸法Uが第1間隔D1よりも小さいため、図7に示すように、基本的に、ジャッキ等の昇降装置98(図10参照)により車体10を持ち上げることなく、補助輪21を支持する支持フレーム22を車体10に取り付けることができる。そして、ユニット寸法Uが第2間隔D2よりも大きいため、補助輪ユニット20を車体10に取り付けた状態で上昇装置60により駆動輪11aの位置を上昇させることで、駆動輪11aが走行面99から浮き上がり且つ補助輪21が走行面99に接地した状態(図8に示す駆動輪浮上状態)を実現することができる。これにより、搬送車100の故障により駆動輪11aが回転しない状態となり、或いは、駆動輪11aを回転させるために大きな力が必要な状態となった場合であっても、駆動輪11aを浮き上がらせることで、作業者の力や別の牽引車両の力等により、搬送車100を比較的容易に移動させることができる。
【0066】
ところで、車体10の底面17と走行面99との上下方向Vの間隔は、起伏等の走行面99の状態によって、当該間隔の設計値である第1間隔D1から変化し得る。車体10の底面17と走行面99との上下方向Vの間隔は、搬送車100における容器70の搭載状態(すなわち、搬送車100の総重量の変化)によっても、第1間隔D1から変化し得る。故障した搬送車100における車体10の底面17と走行面99との上下方向Vの間隔が、ユニット寸法Uよりも小さくなっている場合に限って、昇降装置98により車体10を持ち上げて補助輪ユニット20を車体10に取り付けることもできるが、故障搬送車移動システムが、ユニット寸法Uが互いに異なる複数種類の補助輪ユニット20を備える構成とすることもできる。なお、複数種類の補助輪ユニット20のそれぞれのユニット寸法Uは、第1間隔D1よりも小さく設定される。このように、故障搬送車移動システムが、ユニット寸法Uが互いに異なる複数種類の補助輪ユニット20を備える場合、故障した搬送車100における車体10の底面17と走行面99との上下方向Vの間隔に応じた適切な補助輪ユニット20(具体的には、当該間隔よりもユニット寸法Uの小さい補助輪ユニット20)を選択して使用することができる。
【0067】
また、上記のように車体10の底面17と走行面99との上下方向Vの間隔が変化し得ることを考慮して、以下のような構成とすることもできる。すなわち、通常接地状態を、上昇装置60により駆動輪11aの位置を上昇させていない状態において、車体10の底面17と走行面99との上下方向Vの間隔が当該間隔の変動範囲内の最小値となっている状態とし、第1間隔D1を、このような通常接地状態における車体10の底面17と走行面99との上下方向Vの間隔とすることもできる。この場合、ユニット寸法Uが互いに異なる複数種類の補助輪ユニット20を故障搬送車移動システムが備えていなくても、故障した搬送車100における車体10の底面17と走行面99との上下方向Vの間隔が、基本的にユニット寸法Uよりも小さくならないようにすることができる。
【0068】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、押圧用ボルト62の端部が、ストッパ15に対して支持アーム12の側に突出して支持アーム12を押圧する構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、押圧用ボルト62の端部が、垂下壁部102におけるストッパ15として機能しない部分に対して支持アーム12の側に突出して支持アーム12を押圧する構成とすることもできる。この場合、押圧用雌ねじ孔64は、例えば、垂下壁部102におけるストッパ15として機能しない部分を貫通するように設けられる。
【0069】
(2)上記の実施形態では、上昇装置60が、押圧部材61と、押圧部材61を押圧方向Yに出退させる出退機構63と、を備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、上昇装置60が、車体幅方向Wに沿う軸心回りに揺動自在に車体10に支持されたレバー部材と、当該レバー部材を揺動させる揺動機構(例えば、てこの原理を用いてレバー部材を揺動させるリンク機構)とを備え、揺動機構によりレバー部材を揺動方向の一方側に揺動させることにより、当該レバー部材の先端部が支持アーム12(例えば、押圧部分121)を押圧し、支持アーム12に駆動輪11aを上側V1へ向かわせる方向のモーメントを作用させる構成とすることもできる。
【0070】
(3)上記の実施形態では、支持フレーム22に固定用雌ねじ孔92が設けられ、車体10に固定用貫通孔93が設けられる構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、車体10(例えば、取付部103)に固定用雌ねじ孔92が設けられ、支持フレーム22に固定用貫通孔93が設けられる構成とすることもできる。この場合、例えば、固定用ボルト91を下側V2から固定用貫通孔93に貫通させて固定用雌ねじ孔92に螺合させて締結することにより、支持フレーム22が車体10に固定される構成とすることができる。
【0071】
(4)上記の実施形態では、固定装置90が、固定用ボルト91、固定用雌ねじ孔92、及び固定用貫通孔93を備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、固定装置90が、支持フレーム22を車体10に対して着脱自在に固定するための機構として、車体10(例えば、取付部103)を挟持するクランプ機構を備える構成とすることもできる。
【0072】
(5)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0073】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した故障搬送車移動システムの概要について説明する。
【0074】
走行面上を走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車が故障した場合に用いられる補助輪ユニットと、を備えた故障搬送車移動システムであって、前記搬送車は、車体と、前記車体を支持した状態で前記走行面上を転動する複数の車輪と、を備え、複数の前記車輪の少なくとも1つは、駆動モータの駆動軸と連動して回転するように連結された駆動輪であり、前記駆動輪は、サスペンション機構を介して前記車体に取り付けられ、前記搬送車は、更に、前記車体に対する前記駆動輪の位置を上昇させる上昇装置を備え、前記補助輪ユニットは、支持フレームと、前記支持フレームに対して回転自在に支持された補助輪と、前記支持フレームを前記車体に対して着脱自在に固定する固定装置と、を備え、前記支持フレームは、前記補助輪よりも上側において前記車体の底面に対して下側から当接する支持面を備え、前記支持面と前記補助輪の下端との上下方向の寸法が、前記上昇装置により前記駆動輪の位置を上昇させていない通常接地状態における前記車体の底面と前記走行面との上下方向の間隔よりも小さく、前記補助輪ユニットが前記車体から取り外された状態で前記上昇装置により前記駆動輪の位置を上昇させた上昇状態における、前記車体の底面と前記走行面との上下方向の間隔よりも大きい。
【0075】
本構成によれば、駆動モータ等の故障により搬送車が走行できない状態となった場合であっても、車体の底面に対して下側から当接する支持面を備えた支持フレームを固定装置により車体に固定し、上昇装置により車体に対する駆動輪の位置を上昇させることで、駆動輪が走行面から浮き上がり且つ支持フレームに支持された補助輪が接地した状態を実現することができる。従って、駆動モータ等の故障によって駆動輪が回転しない状態となり、或いは、駆動輪を回転させるために大きな力が必要な状態となった場合であっても、駆動輪を浮き上がらせることで、作業者の力や別の牽引車両の力等により、搬送車を比較的容易に移動させることが可能となる。このように故障した搬送車を移動させることが可能であるため、搬送車が複数台存在する場合には、故障した搬送車が他の搬送車の走行の妨げとなることを回避できる。また、本構成によれば、支持フレームの支持面と補助輪の下端との上下方向の寸法が、通常接地状態における車体の底面と走行面との上下方向の間隔よりも小さいため、基本的に、ジャッキ等により車体を持ち上げることなく、補助輪を支持する支持フレームを車体に取り付けることができる。そのため、車体に対する支持フレームの取り付けを容易に行うことができる。
【0076】
そして、本構成によれば、支持フレームが車体に対して着脱自在であるため、搬送車が故障した場合にのみ、補助輪を支持する支持フレームを当該搬送車に取り付ければよい。従って、搬送車が複数台存在する場合であっても、搬送車の台数より少ない個数の補助輪ユニットを設備に備えておけば基本的に十分であり、予め全ての搬送車に補助輪を取り付けておく場合に比べて、設備のコストの低減を図ることができる。
【0077】
以上のように、本構成によれば、故障した搬送車を移動させることが可能なシステムを、設備のコストの上昇を抑制しつつ実現することが可能となっている。
【0078】
ここで、前記サスペンション機構は、前記車体に対して揺動自在に設けられて前記駆動輪を支持する支持アームと、前記車体に取り付けられて前記支持アームの揺動支点を支持する揺動支持部と、前記駆動輪を下側へ向かわせる方向の付勢力を前記支持アームに作用させる弾性ユニットと、を備え、前記上昇装置は、前記駆動輪を上側へ向かわせる方向に前記支持アームを押圧する押圧部材と、前記押圧部材により前記支持アームを押圧する方向を押圧方向として、前記押圧部材を前記押圧方向に出退させる出退機構と、を備えると好適である。
【0079】
本構成によれば、出退機構により押圧部材を押圧方向に移動させることにより、支持アームを押圧して車体に対する駆動輪の位置を上昇させ、出退機構により押圧部材を押圧方向とは反対方向に移動させることにより、車体に対する駆動輪の位置を下降させることができる。従って、車体に対する駆動輪の位置を必要に応じて上昇させる上昇装置を、適切に構成することができる。
【0080】
上記の構成において、前記押圧部材は、押圧用ボルトであり、前記出退機構は、前記車体に対する位置が固定され、前記押圧用ボルトが螺合する押圧用雌ねじ孔を備え、前記押圧用雌ねじ孔に螺合した前記押圧用ボルトを回転させることにより、前記押圧用ボルトが前記支持アームにおける前記揺動支点に対して前記駆動輪の側とは反対側の部分を押圧し、前記支持アームに前記駆動輪を上側へ向かわせる方向のモーメントを作用させると好適である。
【0081】
本構成によれば、押圧用雌ねじ孔に螺合した押圧用ボルトを回転させるだけで、駆動輪を上側へ向かわせる方向に支持アームを押圧することができる。従って、支持アームを押圧するために大きな力は必要とされず、上昇装置により車体に対する駆動輪の位置を上昇させる作業を容易に行うことができる。
【0082】
上記の構成において、前記サスペンション機構は、前記車体に対する位置が固定され、前記駆動輪を下側へ向かわせる方向への前記支持アームの揺動を予め定められた位置までに規制するストッパを備え、前記押圧用雌ねじ孔又は前記押圧用雌ねじ孔に連通する孔が、前記ストッパを貫通するように設けられ、前記押圧用ボルトの端部が、前記ストッパに対して前記支持アームの側に突出して前記支持アームを押圧するように構成されていると好適である。
【0083】
本構成によれば、ジャッキ等により車体を持ち上げた際に、支持アームの揺動をストッパにより規制することで、駆動輪及び支持アームが下側に大きく垂れ下がった状態とならないようにできる。そして、本構成によれば、押圧用雌ねじ孔に螺合した押圧用ボルトがストッパを貫通し、押圧用ボルトの端部がストッパに対して支持アームの側に突出して支持アームを押圧するように構成されている。従って、押圧用ボルトの押圧方向の突出量を少なく抑えつつ支持アームを適切に押圧できる機構を実現しやすい。
【0084】
上記の各構成において、前記補助輪ユニット及び前記車体の少なくとも一方に、前記支持フレームを前記車体における予め定められた位置に位置決めするための位置決め機構が設けられていると好適である。
【0085】
本構成によれば、車体における予め定められた位置に支持フレームを固定する作業を、容易に行うことができる。
【0086】
上記の構成において、前記位置決め機構として、前記支持フレームに設けられた係合部と、前記車体に設けられて前記係合部が係合する被係合部と、を備え、前記搬送車が走行する方向を車体前後方向とし、前記車体前後方向に対して上下方向視で直交する方向を車体幅方向として、前記係合部は、前記車体幅方向の一方側から前記被係合部に係合することで、前記車体前後方向に位置決めされると好適である。
【0087】
本構成によれば、支持フレームを車体幅方向の一方側から車体に取り付ける場合における支持フレームの位置決めを、容易に行うことができる。従って、例えば、故障中の搬送車に対して作業者が接近可能な方向が車体幅方向に限られている場合であっても、支持フレームの取付作業を容易に行うことができる。
【0088】
上記の構成において、前記固定装置は、固定用ボルトと、前記車体及び前記支持フレームの一方に設けられた固定用雌ねじ孔と、前記車体及び前記支持フレームの他方に設けられた固定用貫通孔と、を備え、前記固定用雌ねじ孔と前記固定用貫通孔とが、前記位置決め機構により前記支持フレームが前記車体に位置決めされた状態で、互いに同軸上に配置されると好適である。
【0089】
本構成によれば、支持フレームが車体に位置決めされた状態で、固定用ボルトを固定用貫通孔に貫通させて固定用雌ねじ孔に螺合させて締結することにより、支持フレームを車体に固定することができる。従って、固定装置による車体に対する支持フレームの固定を容易に行うことができる。
【0090】
上記の各構成において、前記支持面と前記補助輪の下端との上下方向の寸法が互いに異なる複数種類の前記補助輪ユニットを備えると好適である。
【0091】
本構成によれば、例えば、起伏等の走行面の状態によって車体の底面と走行面との上下方向の間隔が変動する場合や、搬送車における物品の搭載状態(すなわち、搬送車の総重量の変化)によって車体の底面と走行面との上下方向の間隔が変動する場合であっても、適切なユニットを選択して使用することができる。
【0092】
本開示に係る故障搬送車移動システムは、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0093】
10:車体
11:車輪
11M:駆動モータ
11a:駆動輪
12:支持アーム
12x:揺動支点
13:揺動支持部
14:弾性ユニット
15:ストッパ
16:駆動軸
17:底面
18:被係合部
20:補助輪ユニット
21:補助輪
22:支持フレーム
23:支持面
24:係合部
60:上昇装置
61:押圧部材
62:押圧用ボルト
63:出退機構
64:押圧用雌ねじ孔
70:容器(物品)
90:固定装置
91:固定用ボルト
92:固定用雌ねじ孔
93:固定用貫通孔
99:走行面
100:搬送車
D1:第1間隔(通常接地状態における車体の底面と走行面との上下方向の間隔)
D2:第2間隔(上昇状態における車体の底面と走行面との上下方向の間隔)
L:車体前後方向
P:位置決め機構
S:サスペンション機構
U:ユニット寸法(支持面と補助輪の下端との上下方向の寸法)
V:上下方向
V1:上側
V2:下側
W:車体幅方向
Y:押圧方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10