(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066230
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】移動式クレーンの過負荷防止装置
(51)【国際特許分類】
B66C 23/90 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
B66C23/90 F
B66C23/90 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175678
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】506002823
【氏名又は名称】古河ユニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】金澤 二郎
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA08
3F205HA01
3F205HA02
3F205HA03
3F205HA04
3F205HA06
3F205HB01
3F205HC08
(57)【要約】
【課題】過負荷防止装置を備える移動式クレーンにおいて、クレーン装置の状態及び負荷によって変化する定格荷重及び定格作業半径を作業者が容易に把握でき、作業時間の短縮を図ることができる過負荷防止装置を提供する。
【解決手段】画像情報表示部200は、基本情報表示領域210a及び定格値表示領域220a並びに、作業可能量表示部として旋回可能領域表示領域230及び作業可能距離表示領域240を備えている。定格値表示領域220aは、荷を吊っていないときには定格荷重を表示し、荷を吊っているときには定格作業半径を表示する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも張り出し長さを調節可能なアウトリガ装置と、起伏動作、伸縮動作及び旋回動作が可能なブームと、を備える移動式クレーンに搭載される過負荷防止装置であって、
画像情報表示部と、
前記アウトリガ装置の張り出し長さを検出する張り出し長さ検出部と、
前記ブームの起伏角度を検出するブーム起伏角度検出部と、
前記ブームの長さを検出するブーム長さ検出部と、
前記ブームの旋回角度を検出するブーム旋回角度検出部と、
吊り荷重を検出する吊り荷重検出部と、
前記張り出し長さ検出部、前記ブーム起伏角度検出部、前記ブーム長さ検出部、前記ブーム旋回角度検出部及び前記吊り荷重検出部が検出した値に基づき、所定の情報を演算し、前記画像情報表示部に出力する演算制御部と、を備え、
前記演算制御部は、
前記張り出し長さ検出部、前記ブーム旋回角度検出部及び前記吊り荷重検出部の検出結果に基づき、前記所定の情報として定格作業半径を演算する定格作業半径演算部と、
前記張り出し長さ検出部、前記ブーム起伏角度検出部及び前記ブーム長さ検出部の検出結果に基づき、前記所定の情報として定格荷重を演算する定格荷重演算部と、を有し、
前記画像情報表示部は、前記定格作業半径を表示する定格作業半径表示領域と、前記定格荷重を表示する定格荷重表示領域と、を有していることを特徴とする過負荷防止装置。
【請求項2】
前記演算制御部は、前記吊り荷重検出部が検出した前記吊り荷重の値に基づき、荷吊り状態か荷吊り状態ではないかを判定する状態判定部をさらに有し、
前記画像情報表示部には、前記定格作業半径表示領域及び前記定格荷重表示領域が、重畳的に表示され、
前記状態判定部が荷吊り状態だと判定したときには、前記画像情報表示部は、前記定格荷重表示領域よりも前記定格作業半径表示領域を前面に表示し、
前記状態判定部が荷吊り状態ではないと判定したときには、前記画像情報表示部は、前記定格作業半径表示領域よりも前記定格荷重表示領域を前面に表示することを特徴とする請求項1に記載の過負荷防止装置。
【請求項3】
前記演算制御部は、
前記ブーム起伏角度検出部及び前記ブーム長さ検出部の検出結果に基づき、前記所定の情報として実作業半径を演算する実作業半径演算部と、
前記ブームの旋回中心に対する全周囲の前記定格作業半径を演算し、前記実作業半径と全周囲の前記定格作業半径とを比較することで、前記ブームが旋回可能な領域を判定する旋回可能領域判定部と、をさらに有し、
前記画像情報表示部は、前記旋回可能領域判定部の判定結果に基づき、前記ブームを旋回可能な領域を表示する旋回可能領域表示領域をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の過負荷防止装置。
【請求項4】
前記画像情報表示部は、前記定格作業半径演算部の演算結果及び前記旋回可能領域判定部の判定結果に基づき、前記吊り荷を移動可能な範囲を表示する作業可能領域表示領域をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の過負荷防止装置。
【請求項5】
前記演算制御部は、
前記ブーム起伏角度検出部及び前記ブーム長さ検出部の検出結果に基づき、前記所定の情報として実作業半径を演算する実作業半径演算部と、
前記定格作業半径と前記実作業半径の差である作業可能距離及び前記ブームを旋回可能な領域の限界までの角度である旋回可能角度のうち少なくとも一方である作業可能量を演算し、前記画像情報表示部に出力する作業可能領域演算部と、をさらに有し、
前記作業可能領域演算部が演算した前記作業可能量を通知する、作業可能量通知部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の過負荷防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業時の過負荷によるクレーンの転倒と損傷を防止するためのクレーンの安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、移動式クレーンには、転倒又は損傷を防止するための過負荷防止装置が備えられている。
例えば特許文献1に記載の過負荷防止装置は、吊り荷重があらかじめ設定されている限界荷重以上になった場合や、荷が吊られている側とは反対側のアウトリガ装置に掛かっている接地負荷があらかじめ設定されている限界接地負荷以下になった場合には、クレーンの動作を停止させたり、警報を発して作業者に注意を促したりすることで、過負荷が掛かることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、吊り荷を移動させようとする場所がクレーンの旋回中心から離れている場合には、吊り荷の移動途中に過負荷防止装置が作動し、クレーンが停止することで目的の場所まで吊り荷を移動させることができない可能性がある。その場合には、一旦吊り作業を中止して、移動式クレーンを目標の場所の近くまで改めて移動させてから、再度吊り作業をやり直さなければならない。
【0005】
そこで、過負荷防止装置が作動しないように移動式クレーンを操作するためには、移動する荷一つごとの重さと、クレーンの旋回中心から荷を移動させる場所までの距離と、アウトリガ装置の張り出し状態と、ブームの旋回角度ごとの吊り上げ能力である領域性能とを把握し、操作者が定格荷重表にそれぞれの数値をあてはめて定格荷重を導き出すか、一度荷を吊らない状態でフックを目的の場所まで移動させたときの定格荷重を確認してから作業を行う必要があった。
そのため、過負荷防止装置が作動する作業半径が一見して分からないことが、吊り荷を移動するために要する時間を増加させる原因になっており、また、移動式クレーンを用いた作業を行うのに習熟を要する原因にもなっていた。
【0006】
本発明は係る実情に鑑み、吊り荷重及びアウトリガ装置の状態に応じた定格作業半径を表示可能であり、移動式クレーンの作業者が一見して、過負荷防止装置が作動しないような吊り荷の作業可能領域を確認することができる、移動式クレーンの過負荷防止装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
張り出し長さを調節可能なアウトリガ装置と、起伏動作、伸縮動作及び旋回動作が可能なブームと、を備える移動式クレーンに搭載される過負荷防止装置であって、
画像情報表示部と、
前記アウトリガ装置の張り出し長さを検出する張り出し長さ検出部と、
前記ブームの起伏角度を検出するブーム起伏角度検出部と、
前記ブームの長さを検出するブーム長さ検出部と、
前記ブームの旋回角度を検出するブーム旋回角度検出部と、
吊り荷重を検出する吊り荷重検出部と、
前記張り出し長さ検出部、前記ブーム起伏角度検出部、前記ブーム長さ検出部、前記ブーム旋回角度検出部及び前記吊り荷重検出部が検出した値に基づき、所定の情報を演算し、前記画像情報表示部に出力する演算制御部と、を備え、
前記演算制御部は、
前記ブーム起伏角度検出部及び前記ブーム長さ検出部の検出結果に基づき、前記所定の情報として実作業半径を演算する実作業半径演算部と、
前記張り出し長さ検出部、前記ブーム旋回角度検出部及び前記吊り荷重検出部の検出結果に基づき、前記所定の情報として定格作業半径を演算する定格作業半径演算部と、
前記張り出し長さ検出部、前記ブーム起伏角度検出部及び前記ブーム長さ検出部の検出結果に基づき、前記所定の情報として定格荷重を演算する定格荷重演算部と、を有し、
前記画像情報表示部は、前記定格作業半径を表示する定格作業半径表示領域と、前記定格荷重を表示する定格荷重表示領域と、を有していることを特徴とする過負荷防止装置である。
【0008】
第二の発明は第一の発明に係る過負荷防止装置において、前記演算制御部は、
前記吊り荷重検出部が検出した前記吊り荷重の値に基づき、荷吊り状態か荷吊り状態ではないかを判定する状態判定部をさらに有し、
前記画像情報表示部には、前記定格作業半径表示領域及び前記定格荷重表示領域が、重畳的に表示され、
前記状態判定部が荷吊り状態だと判定したときには、前記画像情報表示部は、前記定格荷重表示領域よりも前記定格作業半径表示領域を前面に表示し、
前記状態判定部が荷吊り状態ではないと判定したときには、前記画像情報表示部は、前記定格作業半径表示領域よりも前記定格荷重表示領域を前面に表示することを特徴とする。
【0009】
第三の発明は第一の発明に係る過負荷防止装置において、前記演算制御部は、
前記ブームの旋回中心に対する全周囲の前記定格作業半径を演算し、前記実作業半径と全周囲の前記定格作業半径とを比較することで、前記ブームが旋回可能な領域を判定する旋回可能領域判定部をさらに有し、
前記画像情報表示部は、前記旋回可能領域判定部の判定結果に基づき、前記ブームを旋回可能な領域を表示する旋回可能領域表示領域をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
第四の発明は第三の発明に係る過負荷防止装置において、前記画像情報表示部は、前記定格作業半径演算部の演算結果及び前記旋回可能領域判定部の判定結果に基づき、前記吊り荷を移動可能な範囲を表示する作業可能領域表示領域をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
第五の発明は第一から第四の発明に係る過負荷防止装置において、前記演算制御部は、
前記定格作業半径と前記実作業半径の差である作業可能距離及び前記ブームを旋回可能な領域の限界までの角度である旋回可能角度のうち少なくとも一方である作業可能量を演算し、前記画像情報表示部に出力する作業可能領域演算部をさらに有し、
前記作業可能領域演算部が演算した前記作業可能量を通知する、作業可能量通知部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の過負荷防止装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の過負荷防止装置によれば、作業者が一見して吊り荷重及びアウトリガ装置の状態に応じた定格作業半径を確認することができる。そのため、吊り荷の移動時に安全装置が作動し作業が中断されるといった状況を回避しやすくなる。よって、吊り荷の移動に係る作業時間を短縮し、移動式クレーンを用いた作業が容易になるという優れた効果を奏しうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】移動式クレーンに設けられているコントロールパネルの正面図である。
【
図3】移動式クレーンの遠隔操作装置の正面図である。
【
図4】過負荷防止装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図4に記載の演算制御部の構成を示す図である。
【
図6】荷吊り状態でないときの第1実施形態における画像情報表示部の表示例である。
【
図7】荷吊り状態であるときの第1実施形態における画像情報表示部の表示例である。
【
図8】第1実施形態における演算制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】荷吊り状態でないときの第2実施形態における画像情報表示部の表示例である。
【
図10】荷吊り状態であるときの第2実施形態における画像情報表示部の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
なお、図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、表示等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0015】
以下の実施形態では、車両にクレーン装置を搭載した移動式クレーンの例について説明する。以降の移動式クレーンの構成に係る説明及び図面では、クレーン搭載車両が前進する方向(シフトがDレンジ等に選択されている姿勢で走行する方向)を、「前方」又は「正面」と記載する場合がある。同様に、以降の説明及び図面では、クレーン搭載車両が後退する方向(シフトがRレンジに選択されている姿勢で走行する方向)を、「後方」又は「背面」と記載する場合がある。また、以降の説明及び図面では、「左側」を、クレーン搭載車両を運転する運転者における左側とし、「右側」を、クレーン搭載車両を運転する運転者における右側とする場合があり、「下側」を、クレーン搭載車両を運転する運転者における下側とし、「上側」を、クレーン搭載車両を運転する運転者における上側とする場合がある。
【0016】
<移動式クレーンの構成>
図1に示す通り、移動式クレーン10は、車両11の運転席12と荷台13との間にクレーン装置20が搭載されている。
クレーン装置20は、ベース21によって車両11に固定されており、ベース21とコラム22は、旋回装置23を介し上下方向に沿う直線を軸として回転可能に固定されている。ブーム24は、基端部がコラム22によって支持されており、起伏を行うためのブームシリンダ24Sと、ブーム24の先端から吊り下げられたフック25とを有している。ブーム24は、アウターブーム24a内にインナーブーム24bが入れ子状に格納されている多段伸縮式ブームである。ベース21は、車両車幅方向に張り出し可能なアウトリガ装置26を左右に備えている。
アウトリガ装置26は、右アウトリガ装置26R及び左アウトリガ装置26Lがそれぞれ独立して、張り出し及びジャッキシリンダの伸縮を行うことができ、底部を接地させることで移動式クレーン10の安定を確保する。アウトリガ装置26の張り出し位置は、最小位置、中間位置、最大位置のいずれかに手動で設定される。
【0017】
図2は、ベース21に固定されるコントロールパネルCPの正面図であり、画像情報表示部200A及び音声出力部250を備えている。
図3は、クレーン装置20の遠隔操作装置RCの正面図であり、画像情報表示部200Bを備えている。
【0018】
<領域性能>
本実施形態に係る移動式クレーン10は、アウトリガ装置26を境にした車両前方(運転席12側)と車両後方(荷台13側)とで定格荷重及び定格作業半径が異なる。クレーン装置20が車両11前方側に偏って搭載されているため、実作業半径が同じであっても車両前方における定格荷重は、車両後方における定格荷重よりも低くなる。同様に吊り荷重が同じであっても車両前方における定格作業半径は車両後方における定格作業半径よりも短くなる。また、アウトリガ装置26の張り出し状態が左右で異なる場合には、車両右側(運転席側)と車両左側(助手席側)とでも定格荷重及び定格作業半径が異なる。アウトリガ装置26の張り出し状態が大きいほど、定格荷重及び定格作業半径は大きくなる。
そのため、本実施形態に係る過負荷防止装置は、ブームの旋回角度及びアウトリガ張り出し状態に応じて所定の領域性能値を設定し、定格荷重及び定格作業半径の演算に用いている。
【0019】
<過負荷防止装置>
図4に示す通り、本実施形態に係る過負荷防止装置は、過負荷防止装置を制御するためのコントローラ100と、クレーン装置20の状態を検出するための検出部150と、画像情報表示部200とを備え、過負荷防止機能として、吊り荷の移動可能距離を通知し過負荷時には警報を発するための音声出力部250及びクレーン装置20の動作を停止させるための自動停止制御部260を備えている。
【0020】
<検出部>
検出部150は、クレーン装置20の姿勢及び吊り荷重を検出し、検出値をコントローラ100に出力する。
ブーム24には、ブーム起伏角度検出部151及びブーム長さ検出部152が備えられており、先端部には、吊り荷の重さを検出するための吊り荷重検出部153として、ロードセルが備えられている。
旋回装置23にはブーム旋回角度検出部154が備えられている。それぞれの検出部151、152、154にはポテンショメータが用いられている。
アウトリガ装置26には、右アウトリガ装置26Rの張り出し長さ検出部155R及び左アウトリガ装置26Lの張り出し長さ検出部155Lが備えられている。
【0021】
<コントローラ>
図4に示す通り、コントローラ100は、演算制御部100A及び記憶部100Bを備えている。
演算制御部100Aは、検出部150から検出値を受信し必要な情報の演算及びクレーン装置20の状態判定を行い、演算結果及び判定結果を画像情報表示部200及び音声出力部250に出力し、所定の場合には自動停止制御部260を動作させる。
記憶部100Bは、演算に用いるための情報を記憶し、演算制御部100Aに出力する。
【0022】
以下において、
図4及び
図5を参照して演算制御部100Aについて説明する。
張り出し状態判定部J1は、張り出し長さ検出部155L、155Rの検出値に基づき、右アウトリガ装置26R及び左アウトリガ装置26Lのそれぞれの張り出し状態が、最小張り出し、中間張り出し又は最大張り出しのうちいずれであるか判定する。
旋回領域判定部J2は、ブーム旋回角度検出部154の検出値に基づき、ブーム24が位置する旋回領域を判定する。領域性能は旋回領域ごとに設定されており、旋回領域判定部J2の判定結果に基づき、記憶部100Bは定格荷重演算部C2及び定格作業半径演算部C4に領域性能値を出力する。
ブーム段数判定部J3は、ブーム長さ検出部152の検出値に基づき、ブーム24の張り出し段数を判定する。ブーム24の張り出し段数が多いときには、定格荷重を低く設定する場合があるためである。
【0023】
吊り荷重演算部C1は、吊り荷重検出部153の検出値から、所定の値に設定されるフック25の重量を引いた値を吊り荷重として演算する。しかし、吊り上げた直後に吊り荷が揺れることで、検出値が一定の範囲で振動し吊り荷重の値が一定に定まらない場合がある。そのため吊り荷重演算部C1は、演算した吊り荷重の移動平均値をさらに演算し、結果を吊り状態判定部J4及び画像情報表示部200に出力する。
定格荷重演算部C2は、ブーム起伏角度検出部151と、ブーム長さ検出部152と、アウトリガ装置張り出し長さ検出部155R、155Lと、ブーム段数判定部J3と、から送信される検出値、領域性能値及び判定結果に基づき、玉掛け時にブーム24がとっている姿勢において吊り上げることが可能な最大の荷重である定格荷重を演算し、画像情報表示部200に出力する。
【0024】
吊り状態判定部J4は、吊り荷重検出部153の検出値に基づきクレーン装置20が荷吊り状態であるか、荷吊り状態ではないかを判定する。ここで、フック25が揺れている場合等には吊り荷重検出部153の検出値は一定に定まらないため、吊り荷重が0kgに近い所定の誤差範囲内である場合には、荷吊り状態ではないと判定する。吊り荷重が誤差範囲以上であり且つ吊り荷重演算部C1の出力する値が一定になった場合には、荷吊り状態であると判定する。
【0025】
実作業半径演算部C3は、ブーム起伏角度検出部151及びブーム長さ検出部152の検出値に基づき、フック25と、ブーム24の旋回中心との間の水平距離である実作業半径を演算し、結果を画像情報表示部200に出力する。
定格作業半径演算部C4は、張り出し長さ検出部155R、155L及び吊り荷重演算部C1から出力される値と、記憶部100Bから出力される領域性能値に基づき、吊り荷をブーム24の旋回中心から離れる方向に移動可能な最大距離である定格作業半径を移動式クレーン10における全周囲について演算し、結果を旋回可能領域判定部J5及び画像情報表示部200に出力する。
【0026】
旋回可能領域判定部J5は、実作業半径演算部C3が演算した実作業半径と、定格作業半径演算部C4が演算した定格作業半径と、に基づき、ブーム24が旋回可能な領域を判定し、結果を画像情報表示部200に出力する。
【0027】
ブーム地上高演算部C5は、ブーム起伏角度検出部151、ブーム長さ検出部152の検出値及び記憶部100Bに記憶されているブーム24の基端部高さの値に基づき、ブーム24先端部の地上高を演算し、結果を画像情報表示部200に出力する。
【0028】
作業可能領域演算部C6は、実作業半径演算部C3が演算した実作業半径と定格作業半径演算部C4が演算した定格作業半径とを比較し、その差を作業可能距離として演算する。また、旋回可能領域判定部J5に旋回禁止の判定をされた領域とブーム24の位置とを比較し、旋回禁止領域にブーム24の先端が到達するまでの角度である旋回可能角度を演算する。ブーム24が伸長動作又は伏せ動作をした場合及び旋回動作をした場合には、画像情報表示部200に作業可能距離を出力し及び音声出力部250に作業可能距離及び旋回可能角度を出力する。
【0029】
過負荷判定部J6は、吊り荷重演算部C1が演算した吊り荷重と定格荷重演算部C2が演算した定格荷重とを比較し、吊り荷重が定格荷重を超えた場合及び実作業半径が定格作業半径を超えた場合に、音声出力部250に対して警報を出力させるための信号及び自動停止制御部260にクレーン装置20の動作を停止させるための信号を出力する。
【0030】
<画像情報表示部>
本実施形態における画像情報表示部200は、
図2に示す移動式クレーン10に搭載されているコントロールパネルCP及び
図3に示すクレーン装置20の遠隔操作装置RCに設けられている。
以下において
図6及び
図7を参照して画像情報表示部200の機能について説明する。
【0031】
本実施形態に係る画像情報表示部200は、画面左上の比較的広い領域に基本情報表示領域210aを備えており、画面右の領域には定格値表示領域220a及び旋回可能領域表示領域230を備えている。また、画面下側の領域には横長の作業可能距離表示領域240を備えている。
基本情報表示領域210aは、横方向が画像情報表示部200の左端から右端までの間における約3分の2の大きさであり、縦方向が上端から下端までの間における約5分の4の大きさの領域である。定格値表示領域220a及び旋回可能領域表示領域230は、画像情報表示部200の右側であって基本情報表示領域210aが表示されていない範囲に表示される領域であり、基本情報表示領域210aの下端から画像情報表示部200の上端までの間における下側三分の一の範囲には定格値表示領域220aが表示され、上側の3分の2の範囲には旋回可能領域表示領域230が表示される。作業可能距離表示領域240は、基本情報表示領域210a及び定格値表示領域220aの下端から画像情報表示部200の下端までの間の領域に表示される。
【0032】
基本情報表示領域210aには、移動式クレーン10及び吊り荷を簡略化して側面視したクレーン
図211a及び検出部150が検出したクレーン装置20の情報が表示される。
クレーン
図211aのブーム下側には、ブーム24が水平な状態からどれだけ起伏しているかを表示するブーム起伏角度表示領域212が表示されており、ブーム起伏角度検出部151が検出した数値が表示される。ブーム上側にはブーム24の基端部から先端部までの長さを表示するブーム長表示領域213が表示されており、ブーム長さ検出部152が検出した数値が表示される。クレーン
図211aの下側には実作業半径表示領域214が表示されており、実作業半径演算部C3が演算した数値が表示される。クレーン
図211aの右側には、ブーム地上高表示領域215が表示され、ブーム地上高演算部C5が演算した数値が表示される。クレーン
図211aにおける吊り荷の位置には吊り荷重表示領域216が表示され、吊り荷重演算部C1が演算した数値が表示される。クレーン
図211aにおけるフックの上側には、フック25へのワイヤーロープ掛け数表示領域217が表示されており、任意に設定したワイヤーロープの掛け数が表示される。
【0033】
定格値表示領域220aは、定格荷重演算部C2が演算した定格荷重を表示する領域である定格荷重表示領域221aと、定格作業半径演算部C4が演算した定格作業半径を表示する定格作業半径表示領域222aとが表示される一つの表示領域である。吊り状態判定部J4から送信される信号に基づき、定格荷重表示領域221a又は定格作業半径表示領域222aに表示が切り替わり、吊り状態判定部J4が、荷吊り状態ではないと判定している間は、定格荷重表示領域221aが表示され、荷吊り状態であると判定している間は、定格作業半径表示領域222aが表示される。
なお、定格荷重表示領域221a及び定格作業半径表示領域222aは完全に同一の領域でなくてもよく、その領域の一部が重畳的に配置され吊り状態判定部J4の判定に基づいて前面に表示される領域が切り替わってもよい。
【0034】
旋回可能領域表示領域230は円形の表示領域であり、その中心で交わる垂直線VE及び水平線HOによって、車両左前方領域FLと、車両右前方領域FRと、車両左後方領域RLと、車両右後方領域RRと、に分割されている。分割された領域ごとにブーム24を旋回可能か旋回禁止かが旋回可能領域判定部J5によって判定され、判定結果がそれぞれの領域FL、FR、RL、RRに表示される。
また、移動式クレーン10を簡略化し平面視した車両
図231aが、車両
図231aにおけるブームの旋回中心と旋回可能領域表示領域230の中心とが一致するように表示される。車両
図231aにおける左右のアウトリガ装置26の位置には左アウトリガ装置26Lの張り出し状態表示領域218L及び右アウトリガ装置26Rの張り出し状態表示領域218Rが表示される。それぞれの張り出し状態表示領域には、張り出し状態判定部J1の判定結果に基づき、最小張り出しのときはMIN、中間張り出しのときはMID、最大張り出しのときはMAXと表示される。そして、車両11に対するブーム24の角度を表示するために、車両
図231aにおけるブーム24の旋回中心から半径方向に延びる線分として旋回角度針235が表示される。旋回角度針235は、ブーム24の実際の旋回角度を示し、ブーム旋回角度検出部154が検出した値に基づき、ブーム24の旋回動作に連動して旋回する。
【0035】
作業可能距離表示領域240は、作業可能量通知部であり、数値表示部241及び棒グラフメーター部242を備えており、数値表示部241は作業可能距離をアラビア数字で表示し、棒グラフメーター部242は定格作業半径に対する実作業半径の割合を、実作業半径と定格作業半径とが一致したときに最大の長さになる色分けされた棒グラフメーターによって表示する。
【0036】
<音声出力部>
図4及び
図5に示す通り、音声出力部250は、作業可能領域演算部C6の演算結果に基づいて出力を行う作業可能量通知部である。クレーン装置が荷吊り状態のときには作業可能距離を通知し、過負荷が検出されたときには警報を発する。出力の例として、荷吊り作業可能な範囲内では断続的なブザー音が出力され、作業可能距離が短くなるに従ってブザー音の間隔が狭くなり、定格作業半径と実作業半径が一致すると連続した警報音となるような音声を使用することができる。
【0037】
<過負荷防止制御処理>
図8は本実施形態における過負荷防止制御処理の一例を示すフローチャートである。
クレーン装置20が作業可能な状態になると、コントローラ100は検出部150から検出値を受信する(ステップS1)。受信した検出値に基づき、アウトリガ装置張り出し状態、ブーム24が位置する旋回領域、ブーム段数を判定する(ステップS2~S4)。判定後にコントローラ100は、実作業半径及び定格荷重を演算する(ステップS5、S6)。コントローラ100は、画像情報表示部200に検出部150が取得した検出値と、演算制御部100Aが演算したアウトリガ張り出し状態と、実作業半径と、定格荷重とを表示させるための信号を出力する(ステップS7)。
なおステップS2~ステップS4及びステップS5~S6の順番は一例であって、並列に又は異なる順序によって処理されてもよい。
【0038】
次にコントローラ100は、荷吊り状態の判定を行い、荷吊り状態であると判定した場合には(ステップ8;Yes)、定格作業半径を演算し(ステップS9)、演算結果を画像情報表示部に出力する(ステップS10)。また、定格作業半径と実作業半径に基づき、移動可能距離を演算し(ステップS11)、画像情報表示部200及び音声出力部250に演算結果を出力する(ステップS12)。演算結果の出力後、コントローラ100は、実作業半径が定格作業半径を超過しないか、過負荷監視(ステップS14)を行う。
荷吊り状態でないと判定した場合には(ステップ8;NO)、画像情報表示部200に定格荷重を出力し(ステップS13)、吊り荷重が定格荷重を超過しないか過負荷監視を行う(ステップS14)。荷吊り状態ではない場合であっても過負荷監視を行うのは、ブーム24の段数が多いクレーン装置20を用いる場合において、アウトリガ張り出し状態が最小のときに、ブーム24が車両左前方領域FL又は車両右前方領域FRに位置しており且つブーム24が最大に伸長して実作業半径がクレーン装置20の最大値に近い場合には、荷吊り状態ではない場合であっても定格荷重に到達することが考えられるためである。
【0039】
過負荷監視中にクレーン装置20の姿勢が変化した場合や旋回角度が変化した場合には、コントローラ100は検出部150が新たに検出した情報に基づき再度判定及び演算を行い、画像情報表示部200及び音声出力部250への出力を変化させる(ステップS1~12)。
【0040】
過負荷が検出された場合には、コントローラ100は、音声出力部250に警報を発せさせるための信号を出力し、自動停止制御部260にクレーン装置20を自動停止させるための信号を出力する(ステップS15)。
【0041】
<作用・効果>
本実施形態に係る過負荷防止装置を用いることで、移動式クレーン10の操作者は、過負荷防止機能を作動させずに作業するために必要な情報を得ることができる。即ち、吊り荷を吊り上げる前には、クレーン装置20の姿勢に応じた定格荷重が表示されるため、移動させようとする荷を吊り上げることができるかについて、実際に荷を吊り上げる前に判断することができる。また、荷を吊り上げた後には定格作業半径及び旋回可能領域が画像情報表示部200A、200Bに表示され、また、音声によっても通知されるため、吊り上げている荷をブーム24の旋回中心から移動させることができる距離及びブーム24を旋回可能な角度について、実際に荷を移動させる前に判断することができる。
【0042】
旋回可能領域表示領域230には、荷吊り状態においてブーム24を旋回可能な領域が表示される。車両搭載型の移動式クレーン10の場合には、車両11の前方において吊り作業を行う場合と車両11の後方において吊り作業を行う場合とで定格荷重が大きく異なり、また、アウトリガ装置26の張り出し長さによっても定格荷重が変化するため、ブーム24の旋回角度によって定格作業半径が大きく変化しやすい。そこで、本実施形態の過負荷防止装置を用いることで、作業者がブーム24を旋回させ、吊り荷が移動することによって過負荷防止機能が作動する旋回領域をあらかじめ確認することができ、作業中に突然、過負荷防止機能が作動しないようにクレーン装置20を操作することが容易になる。
【0043】
作業可能距離表示領域240には、吊り状態において実作業半径と定格作業半径との差である作業可能距離が表示され、また、作業可能距離が棒グラフメーター部242によって図示されるため、作業者は吊り荷をブーム24から離れる方向に移動させることができる距離を直感的に理解することが容易になる。
【0044】
本実施形態における画像情報表示部は、定格荷重表示領域221a及び定格作業半径表示領域222aが定格値表示領域220aとして同一の領域に表示され、吊り状態に応じて自動的に表示が切り替わる。そのため、表示を切り替えるための操作を行う必要がなく、作業者の負担を軽減させることができる。
【0045】
また、クレーン作業において実作業半径やクレーン地上高などの情報は、常に確認可能であることが望ましいが、定格荷重は荷を吊り上げるときのみに確認できればよく、定格作業半径は荷を吊り上げた後の吊り荷の移動時にのみ確認できればよい。そこで、常に確認することが必要な情報を基本情報表示領域210aに常時表示しつつ、作業時には吊り状態の変化に応じて表示が切り替わる定格値表示領域220aを設けることで、作業時に必要な情報を直感的に把握しやすくでき、情報表示部200を効率的に使用することができる。
【0046】
特に移動式クレーン10の操作には遠隔操作装置RCが用いられることが多いが、遠隔操作装置RCは作業者が手に保持した状態で使用されるため、大型化することが困難であり、画像情報表示部200Bの大きさには限界がある。そこで本実施形態の過負荷防止装置によれば、画像情報表示部200を大型化することなく情報の視認性を向上させることができ、作業者が情報を確認する際の負担も軽減させることができる。
【0047】
以上より、本実施形態に係る過負荷防止装置を用いることで、実際に作業を行い過負荷防止機能が作動するか否かによって吊り荷を移動可能な範囲を確認しなければならない過負荷防止装置を用いる場合よりも、吊り荷を移動可能な範囲を確認することが容易になり、吊り荷の移動に要する作業時間を短縮することができる。
【0048】
<第2実施形態>
第2実施形態の過負荷防止装置は、画像情報表示部200に表示される情報に作業可能領域表示領域245が追加されている点及び各情報の表示領域の形状、大きさ、配置が異なる点以外は、第1実施形態に記載の過負荷防止装置と同様の構成を備えている。
以下において、第2実施形態の過負荷防止装置について
図9及び
図10を参照して説明する。
【0049】
<画像情報表示部>
本実施形態に係る画像情報表示部200は、画面左側の約三分の一の領域に表示される基本情報表示領域210bと、基本情報表示領域210bの一部に含まれる定格値表示領域220bと、画面右側約三分の二の領域に表示される作業可能領域表示領域245と、を有している。
【0050】
基本情報表示領域210bに表示されるクレーン
図211bは、クレーン装置20及び吊り荷を簡略化し側面視した図である。クレーン
図211bにおける吊り荷の位置には上側に吊り荷重表示領域216が表示され、下側に定格値表示領域220bが表示される。
クレーン
図211bの下部には実作業半径表示領域214が表示され、その上側には、ベース21及びアウトリガ装置26を簡略化し背面視したアウトリガ装置
図211cが表示される。アウトリガ装置
図211Cの左右には、左アウトリガ装置26Lの張り出し状態表示領域218L及び右アウトリガ装置26Rの張り出し状態表示領域218Rが表示される。定格値表示領域220bは、吊り状態によって定格荷重表示領域221bと定格作業半径表示領域222bとのいずれかに切り替わる。
【0051】
作業可能領域表示領域245には、中央に移動式クレーン10を簡略化し平面視した車両
図231b及びブーム24の旋回角度を示すブーム表示針246が表示される。ブーム表示針246は、車両
図231bにおけるブーム24の旋回中心から半径方向に延びる線分であり、実作業半径演算部C3が出力した値に基づき長さが変化し、ブーム旋回角度検出部154が検出した値に基づき、ブーム24の旋回動作に連動して旋回する。
また、作業可能領域表示領域245はブーム表示針246の旋回中心で交わる垂直線VEと水平線HOとによって、車両左前方領域FLと、車両右前方領域FRと、車両左後方領域RLと、車両右後方領域RRとに分割される。それぞれの領域には、旋回可能領域判定部J5が旋回可能であると判定した場合には定格作業半径が表示され、旋回禁止であると判定した場合には禁止と表示される作業可能距離表示領域247が設けられている。
車両
図231bの周囲には、ブーム表示針246の旋回中心からの距離を示す等距離線248が3本表示されており、それぞれの等距離線は、実際の移動式クレーン10におけるブーム24の旋回中心から5M、10M、15Mの距離を表している。
即ち、ブーム表示針246は、ブーム24の旋回角度だけではなく、実作業半径も図示する。
【0052】
作業可能領域表示領域245には、吊り状態判定部J4が吊り状態であると判定している間は、旋回可能領域判定部J5及び作業可能領域演算部C6が出力した値に基づき、旋回領域ごとの定格作業半径を図示する作業可能領域249が表示される。作業可能領域249は垂直線VE、水平線HO及び等距離線248よりも太い実線である定格作業半径線249aによって囲まれた領域であり、ブーム表示針246の先端が作業可能領域249の外に出た場合には、実際の移動式クレーン10においても、実作業半径が定格作業半径を超えたことを意味し、その場合には過負荷防止機能が作動する。
【0053】
<作用・効果>
本実施形態の過負荷防止装置における画像情報表示部200は、荷吊り時に吊り荷を移動可能な範囲が図示される作業可能領域表示領域245を備えている。そのため、移動可能距離が数値のみによって表示される場合と比較して、作業者はさらに容易に吊り作業を行うことができる範囲を把握することができる。よって、吊り荷を移動させようとしている目的の場所まで実際に吊り荷を移動可能であるかの判断を容易にすることができ、移動式クレーン10を用いた作業の時間短縮が図れ、移動式クレーン10の操作に習熟するために必要な時間も短縮することができる。
【0054】
<変形例>
作業可能領域表示領域245は、移動式クレーン10の実際の周囲の映像に重畳的に表示することもできる。その場合には、移動式クレーン10には周囲の映像を撮影するための撮像部及び撮影した映像を作業可能領域表示領域245に表示可能な形状等に処理するための映像処理部が設けられる。
作業可能領域249に移動式クレーン10の周囲の映像が重畳的に表示されることによって、作業者は画像情報表示部200を確認することで、吊り荷を作業可能な範囲を実際の移動式クレーン周囲の様子と照らし合わせて確認することができる。そのため、作業者は吊り荷を移動可能な範囲をより直感的に認識することができる。
【0055】
音声出力部250が発する音声はブザー音や警報音に限られず、例えば作業可能量を言葉で通知する音声などが発せられてもよい。
【0056】
以上の実施形態においては、トラックに車両搭載用クレーンを搭載した移動式クレーン10を例に挙げて説明したが、本発明に係る過負荷防止装置は例えばアウトリガ装置を備えたクローラークレーンや、ラフテレーンクレーン等に用いてもよく、画像情報表示部200は車両11の運転席等に設けられてもよい。なお、例えばミニクローラークレーンのように、上下方向を向く軸回りに旋回させることで機体に対して展開させることも可能なアウトリガ装置を備えるクレーンに対して、本発明に係る過負荷防止装置を用いる場合には、アウトリガ装置には張り出し長さ検出部に加え、機体に対するアウトリガ装置の角度を検出するための展開角度検出部が設けられる。そして、張り出し長さ検出部及び展開角度検出部の検出値に基づき、張り出し状態判定部J1がそれぞれのアウトリガ装置の接地位置を判定する。この判定結果に基づき、上記実施形態と同様の演算処理が行われ、画像情報表示部200に情報が表示されるため、ミニクローラークレーン等においても吊り荷を移動させようとしている目的の場所まで実際に吊荷を移動可能であるかの判断を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 移動式クレーン
11 車両
20 クレーン装置
26L、26R アウトリガ装置
100 コントローラ
150 検出部
200 画像情報表示部
210 基本情報表示領域
220 定格値表示領域
230 旋回可能領域表示領域
240 作業可能距離表示領域
245 作業可能領域表示領域