(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066247
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20240508BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20240508BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240508BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C5/00 H
B60C11/03 B
B60C11/03 100C
B60C11/12 A
B60C11/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175710
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 匠
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC13
3D131BC19
3D131BC34
3D131CB06
3D131EB05U
3D131EB22X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB38V
3D131EB38W
3D131EB38X
3D131EB46V
3D131EB46W
3D131EB46X
3D131EB47V
3D131EB47W
3D131EB87X
3D131EB89V
3D131EB89W
3D131EB91V
3D131EB91W
(57)【要約】
【課題】ドライ路面及びウエット路面での操縦安定性能をより改善したタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ10は、トレッド表面14に少なくとも4本の周方向主溝を備え、当該4本の周方向主溝によって5本の陸部が区画形成されている。タイヤ平面視で、内側ショルダー陸部24と外側ショルダー陸部32とに、それぞれ形成された、周方向主溝に開口しないラグ溝31を備える。第1周方向主溝16に開口する傾斜溝は、溝底に形成されたサイプを有する。タイヤ赤道面CLを境界として、車両装着内側領域に含まれる周方向主溝の主溝幅の合計は、車両装着外側領域に含まれる周方向主溝の主溝幅の合計よりも大きい。車両装着最内側に配置された周方向主溝の主溝幅は、車両装着最外側に配置された周方向主溝の主溝幅よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両装着内側から車両装着外側へ順に、少なくとも、最内側に第1周方向主溝、第2周方向主溝、第3周方向主溝、及び最外側に第4周方向主溝を有し、4本の前記周方向主溝によって車両装着内側から車両装着外側へ順に、少なくとも内側ショルダー陸部、内側中間陸部、センター陸部、外側中間陸部、及び外側ショルダー陸部が区画形成されたタイヤにおいて、
前記内側ショルダー陸部と前記外側ショルダー陸部に形成された、前記周方向主溝に開口しないラグ溝と、
前記内側中間陸部と、前記センター陸部と、前記外側中間陸部とに、それぞれ形成された、一端が4本の前記周方向主溝のいずれかに開口し、他端が前記各陸部のいずれかにおいて終端する内側傾斜溝と、センター傾斜溝と、外側傾斜溝と、を備え、
前記内側傾斜溝は、前記第1周方向主溝に開口した第1内側傾斜溝を有し、
前記第1内側傾斜溝は、溝底に形成されたサイプを有し、
タイヤ赤道面を境界として、車両装着内側領域に含まれる前記周方向主溝の主溝幅の合計が、車両装着外側領域に含まれる前記周方向主溝の主溝幅の合計よりも大きく、
前記第1周方向主溝の主溝幅が、前記第4周方向主溝の主溝幅よりも大きいことを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記センター傾斜溝は、前記第2周方向主溝に開口した第1センター傾斜溝を有し、
前記第1センター傾斜溝は、溝底に形成されたサイプを有する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記サイプの深さは、前記サイプを含む前記内側傾斜溝の深さの50%以上80%以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記サイプの幅は、前記サイプが形成された前記第1内側傾斜溝又は前記第1センター傾斜溝の溝幅の10%以上50%以下である、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項5】
タイヤ赤道面を境界として、車両装着内側領域に含まれる前記周方向主溝の溝幅合計は、車両装着外側領域に含まれる前記周方向主溝の溝幅合計の102%以上108%以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記内側傾斜溝と、前記センター傾斜溝と、前記外側傾斜溝とは、タイヤ幅方向に対する角度が0°より大きく、かつ60°以下であり、
前記第1内側傾斜溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ1と、前記第1センター傾斜溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ2とは、θ1<θ2の関係を有する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第4周方向主溝のタイヤ幅方向外側に周方向細溝をさらに備え、
前記周方向細溝は、4本の前記周方向主溝のうち最小の溝幅に対し30%以下の溝幅を有する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
タイヤ赤道面を境界として、車両装着内側領域に含まれる前記周方向主溝の溝幅合計W1と、車両装着外側領域に含まれる前記周方向主溝と前記周方向細溝との溝幅合計W2とは、0.9≦(W1/W2)≦1.1の関係を有する、請求項7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記センター傾斜溝は、前記第2周方向主溝に開口した第1センター傾斜溝を有し、
前記第1センター傾斜溝は、溝底に形成されたサイプを有し、
前記第1センター傾斜溝の対向する側面がなす角度は、前記第1内側傾斜溝の対向する側面がなす角度より大きい、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ラグ溝は、少なくとも一方の縁に面取り部を有する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第1内側傾斜溝と前記第1センター傾斜溝とは、タイヤ周方向の一方へ傾斜しており、
前記内側中間陸部は、前記第1内側傾斜溝に対向して、前記第1内側傾斜溝とタイヤ周方向に交互に配置された第2内側傾斜溝を有し、
前記センター陸部は、前記第1センター傾斜溝に対向して、前記第1センター傾斜溝とタイヤ周方向に交互に配置された第2センター傾斜溝を有する、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記外側傾斜溝は、前記センター傾斜溝とタイヤ周方向逆側に傾斜しており、
前記外側中間陸部は、前記第4周方向主溝に開口し、前記外側傾斜溝に対向して配置された、外側サイプをさらに有し、
前記外側傾斜溝と、前記外側サイプとは、互いに、タイヤ周方向逆側に傾斜している、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライ路面及びウエット路面での操縦安定性能の両立を図ったタイヤが知られている。例えば、特許文献1は、トレッド部に、タイヤ周方向に連続してのびる複数の主溝と、主溝により区分される複数の陸部とが設けられた空気入りタイヤであって、主溝は、タイヤ赤道よりもタイヤ軸方向の両外側に位置する一対のショルダー主溝と、一対のショルダー主溝の間に位置するセンター主溝とを含み、陸部は、各ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側の一対のショルダー陸部と、センター主溝と一方のショルダー主溝との間の第1センター陸部と、センター主溝と他方のショルダー主溝との間の第2センター陸部とを含み、第1センター陸部は、幅が2mm以上の溝が設けられておらず、かつ、幅が2mm未満の複数の第1センターサイプが設けられ、第2センター陸部は、幅が2mm以上の溝が設けられておらず、かつ、幅が2mm未満の複数の第2センターサイプが設けられ、第1センターサイプは、センター主溝から一方のショルダー主溝までのびており、第2センターサイプは、センター主溝から他方のショルダー主溝までのびており、第1センターサイプは、タイヤ軸方向に対して一方向に傾斜し、第2センターサイプは、タイヤ軸方向に対して第1センターサイプと同じ方向に傾斜し、第1センターサイプ及び第2センターサイプは、それぞれ、タイヤ半径方向外側に面取り部を有する空気入りタイヤを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のタイヤは、第1センターサイプが両側の主溝に貫通していると共に、第2センターサイプが両側の主溝に貫通していることによって、第1センター陸部及び第2センター陸部の剛性が低下し、ドライ路面での十分な操縦安定性が得られない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ドライ路面及びウエット路面での操縦安定性能をより改善したタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤは、車両装着内側から車両装着外側へ順に、少なくとも、最内側に第1周方向主溝、第2周方向主溝、第3周方向主溝、及び最外側に第4周方向主溝を有し、4本の前記周方向主溝によって車両装着内側から車両装着外側へ順に、少なくとも内側ショルダー陸部、内側中間陸部、センター陸部、外側中間陸部、及び外側ショルダー陸部が区画形成されたタイヤにおいて、前記内側ショルダー陸部と前記外側ショルダー陸部とに、それぞれ形成された、前記周方向主溝に開口しないラグ溝と、前記内側中間陸部と、前記センター陸部と、前記外側中間陸部とに、それぞれ形成された、一端が4本の前記周方向主溝のいずれかに開口し、他端が前記各陸部内で終端する内側傾斜溝と、センター傾斜溝と、外側傾斜溝と、を備え、前記内側傾斜溝は、前記第1周方向主溝に開口した第1内側傾斜溝を有し、前記第1内側傾斜溝は、溝底に形成されたサイプを有し、タイヤ赤道面を境界として、車両装着内側領域に含まれる前記周方向主溝の主溝幅の合計が、車両装着外側領域に含まれる前記周方向主溝の主溝幅の合計よりも大きく、車両装着最内側に配置された前記周方向主溝の主溝幅が、車両装着最外側に配置された前記周方向主溝の主溝幅よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドライ路面及びウエット路面での操縦安定性能をより改善したタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態のタイヤのトレッド表面の一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、溝底に形成されたサイプを有する傾斜溝の断面図である。
【
図4A】
図4Aは、溝底に形成されたサイプを有する内側傾斜溝の断面図である。
【
図4B】
図4Bは、溝底に形成されたサイプを有するセンター傾斜溝の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るタイヤの実施形態(以下に示す、基本形態及び付加的形態1~11)を、図面に基づいて詳細に説明する。これらの実施の形態は、本発明を限定するものではない。また、上記実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記実施の形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
【0010】
<基本形態>
以下に、本発明の実施形態に係るタイヤについて、その基本形態を説明する。以下の説明において、タイヤ径方向とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。さらに、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤの回転軸に直交するとともに、タイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。なお、各溝及び各サイプが「タイヤ幅方向に延びる」とは、タイヤ幅方向と平行な方向に延びる場合に限らず、タイヤ幅方向に対しタイヤ周方向の一方及び他方へ60°未満の角度で傾斜している場合を含む。
【0011】
図1に示すタイヤ10は、タイヤ径方向外側にトレッド部12を備える。トレッド部12は、ゴム材(トレッドゴム)で形成される。トレッド部12は車両走行時に路面と接触するトレッド表面14を有する。トレッド表面14は、環状であって、タイヤ幅方向に所定の長さを有し、タイヤ周方向に連続する。トレッド表面14に、所定模様のトレッドパターンが刻まれている。トレッドパターンは、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側間でタイヤ赤道面CLに対して非対称である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ10においては、トレッド表面14に少なくとも4本の周方向主溝を備え、当該4本の周方向主溝によって5本の陸部が区画形成されている。タイヤは、車両装着内側(
図1において左側)から車両装着外側(
図1において右側)へ順に、第1周方向主溝16、第2周方向主溝18、第3周方向主溝20、及び第4周方向主溝22が設けられている。4本の周方向主溝は、タイヤ周方向に延在している。タイヤ10は、トレッド表面14に、車両装着内側から車両装着外側へ順に、内側ショルダー陸部24、内側中間陸部26、センター陸部28、外側中間陸部30、及び外側ショルダー陸部32を有する。タイヤ10は、トレッド表面14に、車両装着内側から車両装着外側へ順に、内側ショルダー陸部24、第1周方向主溝16、内側中間陸部26、第2周方向主溝18、センター陸部28、第3周方向主溝20、外側中間陸部30、第4周方向主溝22、及び外側ショルダー陸部32を有する。
【0013】
内側ショルダー陸部24は、第1周方向主溝16より車両装着内側に配置されている。内側中間陸部26は、第1周方向主溝16と第2周方向主溝18との間に配置されている。センター陸部28は、第2周方向主溝18と第3周方向主溝20との間に配置されている。外側中間陸部30は、第3周方向主溝20と第4周方向主溝22との間に配置されている。外側ショルダー陸部32は、第4周方向主溝22より車両装着外側に配置されている。タイヤ10は、4本の周方向主溝のうち、第1周方向主溝16が最内側に配置されており、第4周方向主溝22が最外側に配置されている。
【0014】
このような前提の下、基本形態に係るタイヤ10は、タイヤ平面視で、内側ショルダー陸部24と外側ショルダー陸部32とに、それぞれ形成された、周方向主溝に開口しないラグ溝31を備える。第1周方向主溝16に開口する傾斜溝は、溝底に形成されたサイプを有する。タイヤ赤道面CLを境界として、車両装着内側領域に含まれる周方向主溝の主溝幅の合計は、車両装着外側領域に含まれる周方向主溝の主溝幅の合計よりも大きい。車両装着最内側に配置された周方向主溝の主溝幅は、車両装着最外側に配置された周方向主溝の主溝幅よりも大きい。
【0015】
内側ショルダー陸部24は、内側ラグ溝34を備える。内側ラグ溝34の車両装着外側の端部が、第1周方向主溝16に開口していない。外側ショルダー陸部32は、外側ラグ溝36を備える。外側ラグ溝36は、車両装着内側の端部が第4周方向主溝22に開口していない。
【0016】
センター陸部28は、センター傾斜溝37を有する。センター傾斜溝37は、車両装着内側から車両装着外側へ向かって一方へ傾斜した、第1センター傾斜溝38と、第2センター傾斜溝40とを有する。第1センター傾斜溝38は、一端38Aが第2周方向主溝18に開口しており、他端38Bがセンター陸部28内で終端している。第2センター傾斜溝40は、一端40Aが第3周方向主溝20に開口しており、他端40Bがセンター陸部28内で終端している。
【0017】
内側中間陸部26は、内側傾斜溝41を有する。内側傾斜溝41は、車両装着内側から車両装着外側へ向かって一方へ傾斜した、第1傾斜溝としての第1内側傾斜溝42と、第2内側傾斜溝44とを有する。第1内側傾斜溝42は、一端が第1周方向主溝16に開口しており、他端が内側中間陸部26内で終端している。第1内側傾斜溝42は、
図2に示すように、溝底に形成されたサイプ46を有する。第2内側傾斜溝44は、一端44Aが第2周方向主溝18に開口しており、他端44Bが内側中間陸部26内で終端している。
【0018】
外側中間陸部30は、外側傾斜溝48を有する。外側傾斜溝48は、車両装着内側から車両装着外側へ向かって他方へ傾斜していてもよい。外側傾斜溝48は、一端48Aが第3周方向主溝20に開口しており、他端48Bが外側中間陸部30内で終端している。
【0019】
以下の説明において、単なる「傾斜溝」の用語は、センター傾斜溝37、内側傾斜溝41、及び外側傾斜溝48のいずれかに限定して用いられるものではなく、センター傾斜溝37、内側傾斜溝41、及び外側傾斜溝48を総称しているものとする。
【0020】
傾斜溝は、溝の深さが一定である場合に限らず、周方向主溝に開口した一端から、陸部内で終端した他端に向かって、溝の深さが漸減する形状のものを含む。
【0021】
タイヤ赤道面CLを境界として、車両装着内側領域AR1に含まれる第1周方向主溝16の主溝幅WG1と第2周方向主溝18の主溝幅WG2の合計W1は、車両装着外側領域に含まれる第3周方向主溝20の主溝幅WG3と第4周方向主溝22の主溝幅WG4の合計W2よりも大きい。
【0022】
車両装着最内側に配置された周方向主溝である第1周方向主溝16の主溝幅WG1は、車両装着最外側に配置された周方向主溝である第4周方向主溝22の主溝幅WG4よりも大きい。
【0023】
本実施形態の場合、周方向主溝が4本である場合について説明したが、本発明はこれに限らない。タイヤ10は、例えば5本以上の周方向主溝を有してもよい。周方向主溝が奇数本の場合など、奇数本の周方向主溝のうち中央の周方向主溝がタイヤ赤道面CLを跨ぐ位置に配置される場合がある。この場合、タイヤ赤道面CLを境界として、車両装着内側領域AR1に含まれる周方向主溝幅の合計W1は、車両装着内側領域AR1に完全に含まれる周方向主溝の主溝幅と、タイヤ赤道面CLを跨ぐ位置に配置された周方向主溝の主溝幅のうちタイヤ赤道面CLから車両装着内側の幅長さと、の合計とする。同様に、タイヤ赤道面CLを境界として、車両装着外側領域に含まれる周方向主溝幅の合計W2は、車両装着外側領域に完全に含まれる周方向主溝の主溝幅と、タイヤ赤道面CLを跨ぐ位置に配置された周方向主溝の主溝幅のうちタイヤ赤道面CLから車両装着外側の幅長さと、の合計とする。
【0024】
図1は、タイヤ10が空気入りタイヤとした場合に、規定リムに組み込んで規定内圧の5%の内圧を充填した無負荷状態における空気入りタイヤの各溝の寸法を例示する。例えば、サイズ225/65R17のタイヤの、4本の周方向主溝の主溝幅は、5mm~14mmであり、その深さは6.0mm~10.0mmであり、それらの間隔は15.0mm~40.0mmである。傾斜溝の溝幅は、2.0mm~8.0mmであり、その深さは、6.0mm~10.0mmであり、それらの間隔は、10.0mm~40.0mmである。傾斜溝の溝底に形成されたサイプ46の溝幅は、0.5mm~1.5mmであり、その深さは、4本の周方向溝の深さより浅くてよく、例えば2.0mm~8.0mmでもよい。本明細書において、溝幅とは、溝の延在方向に垂直な方向における最大寸法であり、サイプ46及び溝の深さとは、サイプ46及び溝がないとした場合における(タイヤ子午断面視での)タイヤプロファイルからサイプ46底及び溝底までタイヤ径方向に測定した際の最大寸法である。
【0025】
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。
【0026】
(作用等)
タイヤ10は、第1周方向主溝16の主溝幅WG1が第4周方向主溝22の主溝幅WG4よりも大きく、タイヤ赤道面CLを境界とし、車両装着内側領域AR1に含まれる第1周方向主溝16の主溝幅WG1と第2周方向主溝18の主溝幅WG2の合計W1は、車両装着外側領域AR2に含まれる第3周方向主溝20の主溝幅WG3と第4周方向主溝22の主溝幅WG4の合計W2よりも大きいので、車両装着内側において排水性を向上できる。さらに、主溝幅の合計W1がより大きいので、車両装着内側の接地面積が減少し、その分、接地圧が高くなる。したがって、タイヤ10は、ので、ウエット路面での操縦安定性を改善できる。
【0027】
一方、タイヤ10は、第4周方向主溝22の主溝幅WG4は、第1周方向主溝16の主溝幅WG1より小さく、タイヤ赤道面CLを境界とし、車両装着外側領域AR2に含まれる第3周方向主溝20の主溝幅WG3と第4周方向主溝22の主溝幅WG4の合計W2は、車両装着内側領域AR1に含まれる第1周方向主溝16の主溝幅WG1と第2周方向主溝18の主溝幅WG2の合計W1よりも小さいので、車両装着外側の陸部剛性が高くなり、ドライ路面での操縦安定性を改善できる。
【0028】
さらに、タイヤ10は、センター陸部28に第1センター傾斜溝38と第2センター傾斜溝40、内側中間陸部26に第1内側傾斜溝42と第2内側傾斜溝44、及び外側中間陸部30に外側傾斜溝48をそれぞれ有することによって、各陸部の接地面積が減り、その分、接地圧を高める。これによって、タイヤ10はウエット路面での操縦安定性を改善できる。
【0029】
第1内側傾斜溝42は、溝底にサイプ46を有するので、同じ容積の傾斜溝に比べ、溝面積を小さくできる。ここで溝面積とは、トレッド表面における溝の開口面積であり、例えば、タイヤ10が規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤ10と平板との接触面にて、測定される。したがって、タイヤ10は、内側中間陸部26に第1内側傾斜溝42を有することによって、溝の容積を維持しながら、溝面積を小さくし、その分、接地面積を大きくできるので、排水性を維持しながら内側中間陸部26の剛性の低下を抑制できる。
【0030】
結果として、タイヤ10は、陸部剛性と排水性とを最適化することによって、ドライ路面及びウエット路面での操縦安定性をより改善できる。
【0031】
以上に示す、基本形態に係るタイヤ10が空気入りタイヤである場合は、図示しないが、従来のタイヤと同様の子午断面形状を有する。ここで、タイヤの子午断面形状とは、タイヤ赤道面CLと垂直な平面上に現れるタイヤの断面形状をいう。基本形態に係るタイヤ10は、タイヤ子午断面視で、タイヤ径方向内側から外側に向かって、ビード部、サイドウォール部、ショルダー部及びトレッド部を有する。そして、上記タイヤ10は、例えば、タイヤ子午断面視で、トレッド部から両側のビード部まで延在して一対のビードコアの周りで巻回されたカーカス層と、カーカス層のタイヤ径方向外側に順次形成された、ベルト層及びベルト補強層とを備える。
【0032】
以上に示す基本形態に係るタイヤ10は、通常の各製造工程、すなわち、タイヤ材料の混合工程、タイヤ材料の加工工程、グリーンタイヤの成型工程、加硫工程及び加硫後の検査工程等を経て得られるものである。基本形態のタイヤ10を製造する場合には、加硫用金型の内壁に、例えば、
図1に示すトレッドパターンに対応する凸部及び凹部を形成し、この金型を用いて加硫を行う。
【0033】
以上に示した本基本形態のタイヤ10は、特に空気入りタイヤとすることが好適であるが、空気入りタイヤ以外であっても
図1に示すトレッドパターンを有するタイヤであれば、本発明の範囲に含まれるものである。
【0034】
<付加的形態>
次に、本発明に係るタイヤの上記基本形態に対して、任意選択的に実施可能な、付加的形態1から11を説明する。
【0035】
(付加的形態1)
基本形態においては、センター傾斜溝37は、第2周方向主溝18に開口した第1センター傾斜溝38を有し、第1センター傾斜溝38は、溝底に形成されたサイプ46を有すること(付加的形態1)が好ましい。
【0036】
第1センター傾斜溝38は、
図2に示すように、溝底にサイプ46を有するので、同じ容積の傾斜溝に比べ、溝面積を小さくできる。したがって、タイヤ10は、センター陸部28に第1センター傾斜溝38を有することによって、溝の容積を維持しながら、溝面積を小さくし、その分、接地面積を大きくできるので、排水性を維持しながらセンター陸部28の剛性の低下を抑制できる。したがって、タイヤ10はドライ路面での操縦安定性を改善することができる。
【0037】
(付加的形態2)
基本形態又は基本形態に付加的形態1を加えた形態においては、サイプ46の深さは、サイプ46を含む内側傾斜溝の深さの50%以上80%以下であること(付加的形態2)が好ましい。
【0038】
サイプ46の深さをDs、サイプ46を含む傾斜溝の深さをDmとすると、DsとDmは、0.5≦(Ds/Dm)≦0.8の関係を有する。ここでサイプ46を含む傾斜溝は、少なくとも第1内側傾斜溝42を含み、さらに第1センター傾斜溝38を含んでもよい。
【0039】
タイヤ10は、傾斜溝の深さに対するサイプ46の深さの割合が小さすぎると、同じ容積の傾斜溝に対し溝面積がほとんど変わらないため陸部剛性の改善が期待できない。一方、タイヤ10は、傾斜溝の深さに対するサイプ46の深さの割合が大きすぎると、サイプ46を除いた傾斜溝の容積が小さくなるので、排水性が低下してしまう。
【0040】
本実施形態のタイヤ10は、(Ds/Dm)が0.5以上であることによって、同じ容積の傾斜溝に対し傾斜溝の容積の一部をサイプ46に置き換えることで、傾斜溝の容積を減らすことができる。すなわちタイヤ10は、(Ds/Dm)が0.5以上であることによって、溝面積を小さくし、その分、接地面積を大きくできるので、同じ容積であってサイプ46を有しない傾斜溝に比べ、陸部剛性を改善できる。また、本実施形態のタイヤ10は、(Ds/Dm)が0.8以下であることによって、サイプ46を除いた傾斜溝の容積が十分な大きさを有する傾斜溝を形成できるので、排水性を改善できる。したがって、タイヤ10はドライ路面及びウエット路面での操縦安定性をより改善できる。
【0041】
(付加的形態3)
基本形態又は基本形態に付加的形態1及び2の少なくともいずれかを加えた形態においては、サイプ46の幅は、傾斜溝の幅の10%以上50%以下であること(付加的形態3)が好ましい。ここでサイプ46を含む傾斜溝は、少なくとも第1内側傾斜溝42を含み、さらに第1センター傾斜溝38を含んでもよい。
【0042】
サイプ46の幅をWs、傾斜溝の幅をWmとすると、WsとWmは、0.1≦(Ws/Wm)≦0.5の関係を有する。タイヤ10は、傾斜溝に対するサイプ46の幅が小さすぎると、排水性が低下してしまう。一方、タイヤ10は、傾斜溝に対するサイプ46の幅が大きすぎると、陸部剛性が低下してしまう。
【0043】
本実施形態のタイヤ10は、Ws/Wmが0.1以上であることによって、十分な溝幅を有するサイプ46を形成できるので、排水性を改善できる。また、本実施形態のタイヤ10は、Ws/Wmが0.5以下であることによって、陸部剛性の低下を抑制できる。したがって、タイヤ10はドライ路面での操縦安定性を低下させずに、ウエット路面での操縦安定性をより改善できる。
【0044】
(付加的形態4)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~3の少なくともいずれかを加えた形態においては、タイヤ赤道面CLを境界として、車両装着内側領域AR1に含まれる周方向主溝の溝幅合計は、車両装着外側領域AR2に含まれる周方向主溝の溝幅合計の102%以上108%以下であること(付加的形態4)が好ましい。
【0045】
車両装着内側領域AR1に含まれる周方向主溝の溝幅合計をW1、車両装着外側領域AR2に含まれる周方向主溝の溝幅合計をW2とする。本実施形態の場合、W1は、第1周方向主溝16の主溝幅WG1と第2周方向主溝18の主溝幅WG2との合計である。また、W2は、第3周方向主溝20の主溝幅WG3と第4周方向主溝22の主溝幅WG4との合計である。W1とW2は、1.02≦(W1/W2)≦1.08の関係を有する。
【0046】
本実施形態のタイヤ10は、W1/W2が1.02以上1.08以下であることによって、車両装着内側において排水性を向上し、さらに、車両装着内側の接地面積が減り、その分、接地圧が高くなるので、ウエット路面での操縦安定性をより確実に改善できる。また、タイヤ10は、車両装着外側の陸部剛性が高くなるので、ドライ路面での操縦安定性をより確実に改善できる。
【0047】
(付加的形態5)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~4の少なくともいずれかを加えた形態においては、内側傾斜溝41と、センター傾斜溝37と、外側傾斜溝48とは、タイヤ幅方向に対する角度が5°より大きく、かつ60°以下であり、第1内側傾斜溝42のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ1と、第1センター傾斜溝38のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ2とは、θ1<θ2の関係を有すること(付加的形態5)が好ましい。
【0048】
傾斜溝の傾斜角度は、
図3に示すように、傾斜溝の一端の溝幅の中心と他端の溝幅中心とを結ぶ直線と、タイヤ幅方向とのなす角度のうち小さい方をいう。具体的には、第1内側傾斜溝42の傾斜角度θ1は、一端42Aの溝幅の中心と他端42Bの溝幅の中心とを結ぶ直線と、タイヤ幅方向のなす角度のうち小さい方をいう。また、第1センター傾斜溝38の傾斜角度θ2は、一端38Aの溝幅の中心と他端38Bの溝幅の中心とを結ぶ直線と、タイヤ幅方向のなす角度のうち小さい方をいう。第1内側傾斜溝42と第1センター傾斜溝38とは、それぞれタイヤ周方向の一方へ傾斜しており、一端42A,38Aと他端42B,38Bの中間がタイヤ周方向他方へ突出するように湾曲している。このように湾曲した傾斜溝においても、傾斜溝の一端の溝幅の中心と他端の溝幅中心とを結ぶ直線と、タイヤ幅方向とのなす角度の2つのうち、小さい方の角度を傾斜溝の傾斜角度と呼ぶ。
【0049】
センター傾斜溝37、内側傾斜溝41、及び外側傾斜溝48は、それぞれ、傾斜角度が5°より大きく、60°以下である。上記傾斜角度が60°以下であることによって、傾斜溝と、当該傾斜溝が開口する主溝とのなす角度は40°より大きく、上記角度が小さくなりすぎることを防ぐことができる。
【0050】
なお、傾斜溝と、当該傾斜溝が開口する主溝とのなす角度が小さいほど、傾斜溝と主溝の間に形成されるエッヂ部が先鋭な形状になりやすくなる。先鋭な形状のエッヂ部は、剛性が著しく低いので、摩耗しやすい。このような先鋭な形状のエッヂ部を有する場合、タイヤは、耐摩耗性が悪化する。
【0051】
本実施形態のタイヤ10は、傾斜角度が5°より大きく、60°以下であることによって、第1センター傾斜溝38と第2周方向主溝18、第2センター傾斜溝40と第3周方向主溝20、第1内側傾斜溝42と第1周方向主溝16、第2内側傾斜溝44と第2周方向主溝18、第1外側傾斜溝と第3周方向主溝20、第2外側傾斜溝と第3周方向主溝20との間に形成されるエッヂ部が先鋭な形状となることを抑制し、耐摩耗性を改善することができる。
【0052】
さらに第1内側傾斜溝42の傾斜角度θ1と第1センター傾斜溝38の傾斜角度θ2が、θ1<θ2の関係を有することによって、車両装着内側の傾斜角度が小さいので、タイヤ周方向の駆動力を確保し、ウエット路面での操縦安定性を改善できる。θ2はθ1より5°~55°大きいことが好ましい。
【0053】
(付加的形態6)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~5の少なくともいずれかを加えた形態においては、第4周方向主溝22のタイヤ幅方向外側に周方向細溝53をさらに備え、周方向細溝53は、4本の周方向主溝のうち最小の溝幅に対し30%以下の溝幅を有すること(付加的形態6)が好ましい。
【0054】
周方向細溝53は、第4周方向主溝22と外側ショルダー陸部32との間に設けられており、タイヤ周方向に延在している。周方向細溝53の溝幅は、0.3mm以上5.0mm未満、その深さは、2.0mm以上5.0mm以下とすることができる。第4周方向主溝22のタイヤ幅方向外側に周方向細溝53を設けることによって、車両装着外側の剛性と車両装着内側の剛性との差を少なくする。これによって、タイヤ10は、偏摩耗の発生を抑制し、耐摩耗性を改善することができる。
【0055】
(付加的形態7)
基本形態に付加的形態6を加えた形態においては、タイヤ赤道面CLを境界として、車両装着内側領域AR1に含まれる周方向主溝の溝幅合計W1と、車両装着外側領域AR2に含まれる周方向主溝と周方向細溝との溝幅合計W2とは、0.9≦(W1/W2)≦1.1の関係を有すること(付加的形態7)が好ましい。
【0056】
本実施形態のタイヤ10は、W1/W2が0.9以上1.1以下であることによって、車両装着外側の剛性と車両装着内側の剛性との差をより確実に少なくすることができる。したがって、タイヤ10は、付加的形態6の効果をより高いレベルで実現することができる。
【0057】
(付加的形態8)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~7の少なくともいずれかを加えた形態においては、センター傾斜溝37は、第2周方向主溝18に開口した第1センター傾斜溝38を有し、第1センター傾斜溝38は、溝底に形成されたサイプ46を有し、第1センター傾斜溝38の対向する外側面50がなす角度は、第1内側傾斜溝42の対向する内側面52がなす角度より大きいこと(付加的形態8)が好ましい。
【0058】
図4Aに示すように、第1センター傾斜溝38は、トレッド表面14からタイヤ径方向内側へ向かって、溝幅の中央へ収束するように傾斜した外側面50を有する。同様に、
図4Bに示すように、第1内側傾斜溝42は、トレッド表面14からタイヤ径方向内側へ向かって、溝幅の中央へ収束するように傾斜した内側面52を有する。第1内側傾斜溝42の一対の内側面52がなす角度をθA、第1センター傾斜溝38の一対の外側面50がなす角度をθBとすると、θAとθBはθA<θBの関係を有する。θA<θBであることによって、溝幅が同じ場合、角度が小さい方が溝の深さが深くなるので、第1内側傾斜溝42の溝体積の方が、第1センター傾斜溝38の溝体積より大きい。そうすると車両装着内側における傾斜溝(第1内側傾斜溝42)の溝体積の方が大きいので、内側中間陸部26における排水性が向上すると共に、接地面積が減るので接地圧が増える。
【0059】
また、θA<θBであることによって、第1センター傾斜溝38の溝体積の方が、第1内側傾斜溝42の溝体積より小さいので、センター陸部28の剛性を高めることができる。
【0060】
したがって、本実施形態に係るタイヤ10は、第1内側傾斜溝42と第1センター傾斜溝38がθA<θBの関係を有することによって、ドライ路面及びウエット路面での操縦安定性能をより改善することができる。
【0061】
なお、第1内側傾斜溝42の一対の側面がタイヤ径方向となす角度θaとθbは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。同様に、第1センター傾斜溝38の一対の側面がタイヤ径方向となす角度θcとθdは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0062】
(付加的形態9)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~8の少なくともいずれかを加えた形態においては、ラグ溝31は、少なくとも一方の縁に面取り部54を有する(付加的形態9)ことが好ましい。
【0063】
図5に示すように、ラグ溝31は、ラグ溝31の延在方向に沿ってラグ溝側面56とトレッド表面14との間に面取り部54を有する。ラグ溝31が面取り部54を有することによって、内側ショルダー陸部24と外側ショルダー陸部32における接地面積が減少する。接地面積が減少した分、接地圧が増加するので、ウエット路面での操縦安定性をより改善できる。
【0064】
(付加的形態10)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~9の少なくともいずれかを加えた形態においては、第1内側傾斜溝42と第1センター傾斜溝38とは、タイヤ周方向の一方へ傾斜しており、内側中間陸部26は、第1内側傾斜溝42に対向して、第1内側傾斜溝42とタイヤ周方向に交互に配置された第2内側傾斜溝44を有し、センター陸部28は、第1センター傾斜溝38に対向して、第1センター傾斜溝38とタイヤ周方向に交互に配置された第2センター傾斜溝40を有すること(付加的形態10)が好ましい。
【0065】
第1内側傾斜溝42、第2内側傾斜溝44、第1センター傾斜溝38、及び第2センター傾斜溝40は、いずれもタイヤ周方向の一方へ傾斜している。
【0066】
第1内側傾斜溝42と第1センター傾斜溝38とは、タイヤ周方向の一方へ傾斜していることによって、水が一方へ流れやすくなるので、排水性がより向上する。また、内側中間陸部26は、第1内側傾斜溝42に対向して、第1内側傾斜溝42とタイヤ周方向に交互に第2内側傾斜溝44が配置されているので、第1内側傾斜溝42から第2内側傾斜溝44へ、及び第2内側傾斜溝44から第1内側傾斜溝42へ、水が流れやすい。同様に、センター陸部28は、第1センター傾斜溝38に対向して、第1センター傾斜溝38とタイヤ周方向に交互に第2センター傾斜溝40が配置されているので、第1センター傾斜溝38から第2センター傾斜溝40へ、及び第2センター傾斜溝40から第1センター傾斜溝38へ、水が流れやすい。したがって、本実施形態に係るタイヤ10は、排水性をより改善することができる。
【0067】
(付加的形態11)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~10の少なくともいずれかを加えた形態においては、外側傾斜溝48は、センター傾斜溝37とタイヤ周方向逆側に傾斜しており、外側中間陸部30は、第4周方向主溝22に開口し、外側傾斜溝48に対向して配置された、外側サイプ58をさらに有し、外側傾斜溝48と、外側サイプ58とは、互いに、タイヤ周方向逆側に傾斜していること(付加的形態11)が好ましい。
【0068】
外側傾斜溝48は、タイヤ周方向の他方へ傾斜しており、すなわち内側傾斜溝41及びセンター傾斜溝37と逆側へ傾斜している。タイヤ10は、外側傾斜溝48の傾斜方向を内側傾斜溝41及びセンター傾斜溝37と逆側とすることによって、タイヤ幅方向における陸部剛性の偏りを抑制する。
【0069】
仮に、傾斜溝の傾斜方向を一方のみとすると、タイヤ幅方向における陸部剛性が偏り、直進性が低下する可能性がある。
【0070】
本実施形態に係るタイヤ10は、外側傾斜溝48の傾斜方向を内側傾斜溝41及びセンター傾斜溝37と逆側とし、陸部の剛性をタイヤ幅方向で均一にすることで、直進性を向上することができる。さらに、外側中間陸部30は、外側サイプ58を有する(
図1)。すなわち外側中間陸部30は、外側傾斜溝48と外側サイプ58との組合せであるので、第1内側傾斜溝42と第2内側傾斜溝44との組み合わせである内側中間陸部26に比べ、陸部剛性を高めることができる。したがって、タイヤ10は、ドライ路面での操縦安定性を改善できる。
【実施例0071】
以下の実施例は、空気入りタイヤを用いて行った。
タイヤサイズを225/65R17 102Hとし、
図1に示すトレッドパターン(又は
図1に示すトレッドパターンに近似したトレッドパターン)を有する実施例1から実施例22に係るタイヤ、及び比較例のタイヤを作製した。なお、これらのタイヤの細部の諸条件については、以下の表1及び表2に示す通りである。
【0072】
このように作成した、実施例1から22に係るタイヤ、及び比較例のタイヤを、17×6.5Jのアルミニウム製のリムに230kPaで組付け、各試験タイヤをFR方式の試験車両(排気量:2500cc)に装着し、以下の要領に従い、ウエット路面及びドライ路面での操縦安定性について評価を行った。
【0073】
(ウエット路面での操縦安定性)
各試験タイヤを装着した車両でウエット路面(水膜1mm)のテストコースを走行した際の、テストドライバーによる官能性評価を実施した。そして、この結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表に併記する。この評価は、指数が大きいほど、ウエット路面での操縦安定性に優れていることを示す。
【0074】
(ドライ路面での操縦安定性)
平坦な周回路を有するドライ路面のテストコースを、試験車両によって10km/hから180km/hで走行し、テストドライバーがレーンチェンジ時及びコーナリング時における操舵性と、直進時における安定性とについての官能評価を実施した。そして、この結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。評価結果を表に併記する。この評価は、指数が大きいほど、ドライ路面での操縦安定性に優れていることを示す。
【0075】
【0076】
【0077】
(結果)
実施例1~22と比較例を比較し、傾斜溝が主溝に対し非貫通であって、車両装着内側領域に含まれる第1周方向主溝の主溝幅WG1と第2周方向主溝の主溝幅WG2の合計W1が車両装着外側領域に含まれる第3周方向主溝の主溝幅WG3と第4周方向主溝の主溝幅WG4の合計W2より大きく(すなわち、{(WG1+WG2)/(WG3+WG4+)}>1)、WG1がWG4よりも大きい(WG1/WG4>1)ことによって、ドライ路面及びウエット路面での操縦安定性をより改善できることが確認された。
【0078】
実施例1と、実施例2を比較し、センター陸部に第1センター傾斜溝を有することによって、ドライ路面での操縦安定性を改善できることが分かった。
実施例1及び2と、実施例3~5を比較し、サイプの深さDsと、サイプを含む傾斜溝の深さDmが、0.5≦(Ds/Dm)≦0.8を満たすことによって、ドライ路面及びウエット路面での操縦安定性をより改善できることが確認された。
実施例1~6と、実施例7を比較し、サイプの幅Wsと、傾斜溝の幅Wmが、0.1≦(Ws/Wm)≦0.5を満たすことによって、ウエット路面での操縦安定性をより改善できることが分かった。
実施例1~9と、実施例10,11を比較し、W1とW2は、1.02≦(W1/W2)≦1.08の関係を有することによって、ドライ路面での操縦安定性が改善することが分かった。
実施例1~12、14と、実施例13を比較し、内側傾斜溝と、センター傾斜溝と、外側傾斜溝とは、第1内側傾斜溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ1と、第1センター傾斜溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ2とは、θ1<θ2の関係を有することによって、ウエット路面での操縦安定性を改善できる
実施例1~14と、実施例15を比較し、周方向細溝を設けることによって、耐摩耗性能が向上することが確認できた。
実施例16と、実施例15、17を比較し、W1とW2が0.9≦(W1/W2)≦1.1を満たすことによって、耐摩耗性能がより向上することが確認できた。
実施例1~15、17と、実施例18を比較し、θA<θBであることによって、ウエット路面での操縦安定性をより改善できることが分かった。
実施例1~19と、実施例20とを比較し、ラグ溝が縁に面取り部を有することによってウエット路面での操縦安定性をより改善できることが分かった。
実施例1~20と、実施例21とを比較し、第1内側傾斜溝と第1センター傾斜溝とは、タイヤ周方向の一方へ傾斜しており、内側中間陸部は、第1内側傾斜溝に対向して、第1内側傾斜溝とタイヤ周方向に交互に配置された第2内側傾斜溝を有し、センター陸部は、第1センター傾斜溝に対向して、第1センター傾斜溝とタイヤ周方向に交互に配置された第2センター傾斜溝を有することによって、ウエット路面での操縦安定性をより改善できることが分かった。
実施例1~21と、実施例22を比較し、外側傾斜溝は、センター傾斜溝とタイヤ周方向逆側に傾斜しており、外側中間陸部は、第4周方向主溝に開口し、外側傾斜溝に対向して配置された、外側サイプをさらに有し、外側傾斜溝と、外側サイプとは、互いに、タイヤ周方向逆側に傾斜していることによって、ドライ路面での操縦安定性をより改善できることが分かった。