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  • 特開-熱処理方法、および熱処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066251
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】熱処理方法、および熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27D 19/00 20060101AFI20240508BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20240508BHJP
   F27D 7/00 20060101ALI20240508BHJP
   F27B 5/18 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F27D19/00 Z
F27D21/00 A
F27D7/00 A
F27B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175716
(22)【出願日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトサーモシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】中谷 淳司
【テーマコード(参考)】
4K056
4K061
4K063
【Fターム(参考)】
4K056AA09
4K056AA11
4K056BB06
4K056CA01
4K056CA10
4K056FA04
4K056FA08
4K056FA15
4K061AA01
4K061BA02
4K061BA09
4K061DA05
4K061FA05
4K061FA11
4K061GA03
4K061GA06
4K061HA05
4K063AA05
4K063AA07
4K063AA12
4K063AA15
4K063BA02
4K063BA03
4K063BA04
4K063CA03
4K063DA05
4K063DA06
4K063DA16
4K063DA24
4K063DA32
4K063DA34
(57)【要約】
【課題】接合剤を除去しすぎることによるクラックが被処理物に生じることを抑制する。
【解決手段】接合剤を含む被処理物100から接合剤を除去するように過熱水蒸気で熱処理する加熱室2への過熱水蒸気の供給を制御する加熱処理方法において、熱処理中における被処理物100に含まれている接合剤の残留量を推定し、残留量に基づいて、熱処理終了時における被処理物100に含まれている接合剤の残留量が所定範囲内となるように、過熱水蒸気の供給を制限する。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合剤を含む被処理物から前記接合剤を除去するように過熱水蒸気で熱処理する加熱室への前記過熱水蒸気の供給を制御する熱処理方法において、
熱処理中における前記被処理物に含まれている前記接合剤の残留量を推定し、
前記残留量に基づいて、熱処理終了時における前記被処理物に含まれている前記接合剤の残留量が所定範囲内となるように、前記過熱水蒸気の供給を制限する、熱処理方法。
【請求項2】
前記被処理物に含まれている前記接合剤が前記熱処理中にガスとなって放出される際の放出量特性に応じて前記残留量を推定する、請求項1に記載の熱処理方法。
【請求項3】
前記被処理物に含まれている前記接合剤が前記熱処理中にガスとなって放出される化学成分の検出値に基づいて前記残留量を推定する、請求項1に記載の熱処理方法。
【請求項4】
前記残留量に基づいて前記熱処理終了時の前記残留量が前記所定範囲内となる前記過熱水蒸気の停止タイミングを推定し、推定した前記タイミングで前記過熱水蒸気を停止するように前記過熱水蒸気の供給を制限する、請求項1に記載の熱処理方法。
【請求項5】
前記残留量に基づいて前記加熱室へ前記被処理物の酸化を抑制するガスを供給する、請求項1に記載の熱処理方法。
【請求項6】
接合剤を含む被処理物から前記接合剤を除去するように過熱水蒸気で熱処理する加熱室への前記過熱水蒸気の供給を制御する熱処理装置において、
熱処理中における前記被処理物に含まれている前記接合剤の残留量を推定する手段と、
前記残留量に基づいて、熱処理終了時における前記被処理物に含まれている前記接合剤の残留量が所定範囲内となるように、前記過熱水蒸気の供給を制限する手段と、を備えることを特徴とした熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理方法、および熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過熱水蒸気を用いてワークに含有しているバインダを除去するものとして、例えば特許文献1~3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6787665号明細書
【特許文献2】特開2012-148941号公報
【特許文献3】特開2016-166123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バインダを用いて材料を成形したワークからバインダを除去しすぎると、ワークにクラックが生じる場合がある。過熱水蒸気を用いて脱脂工程を行った場合、短時間で脱脂されるために、ワークにバインダを適度に残留させるのが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる加熱処理方法は、
接合剤を含む被処理物から前記接合剤を除去するように過熱水蒸気で熱処理する加熱室への前記過熱水蒸気の供給を制御する熱処理方法において、
熱処理中における前記被処理物に含まれている前記接合剤の残留量を推定し、
前記残留量に基づいて、熱処理終了時における前記被処理物に含まれている前記接合剤の残留量が所定範囲内となるように、前記過熱水蒸気の供給を制限する。
【0006】
(2)前記被処理物に含まれている前記接合剤が前記熱処理中にガスとなって放出される際の放出量特性に応じて前記残留量を推定してもよい。
【0007】
(3)前記被処理物に含まれている前記接合剤が前記熱処理中にガスとなって放出される化学成分の検出値に基づいて前記残留量を推定してもよい。
【0008】
(4)前記残留量に基づいて前記熱処理終了時の前記残留量が前記所定範囲内となる前記過熱水蒸気の停止タイミングを推定し、推定した前記タイミングで前記過熱水蒸気を停止するように前記過熱水蒸気の供給を制限してもよい。
【0009】
(5)前記残留量に基づいて前記加熱室へ前記被処理物の酸化を抑制してもよい。
【0010】
(6)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる熱処理装置は、接合剤を含む被処理物から前記接合剤を除去するように過熱水蒸気で熱処理する加熱室への前記過熱水蒸気の供給を制御する熱処理装置において、
熱処理中における前記被処理物に含まれている前記接合剤の残留量を推定する手段と、
前記残留量に基づいて、熱処理終了時における前記被処理物に含まれている前記接合剤の残留量が所定範囲内となるように、前記過熱水蒸気の供給を制限する手段と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、接合剤を除去しすぎることによるクラックが被処理物に生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、熱処理装置の全体構成図である。
図2図2は、熱処理中の雰囲気温度とCO濃度との関係を示すグラフである。
図3図3は、CO濃度の積分値と被処理物中の接合剤の残留量との関係を示すグラフである。
図4図4は、温度と熱重量との関係及び温度と起電力の関係を示すグラフである。
図5図5(A)~(C)は、過熱水蒸気量の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<熱処理装置の全体構成>
図1は、熱処理装置1の全体構成図である。熱処理装置1は、加熱室2と、過熱水蒸気発生器3と、制御部4と、を有している。
【0014】
加熱室2は、被処理物100を収容する。加熱室2には、過熱水蒸気発生器3から過熱水蒸気を供給するラインと、酸化抑制ガスを供給するラインと、が繋がっている。
【0015】
加熱室2内には、循環ファン5、ヒータ6、温度センサ7、被処理物100が載せられるワーク台8が設置されている。循環ファン5は、電動モータ等の駆動源によって駆動され、ガスを循環させる。加熱室2内のガスは、排気口9を通って加熱室2の外部に排出される。本実施形態では、ヒータ6は、電熱ヒータである。温度センサ7は、加熱室2内の雰囲気温度を測定する。
【0016】
過熱水蒸気発生器3は、被処理物100を熱処理するための過熱水蒸気を発生する。過熱水蒸気発生器3の上流には、弁10が設置されている。弁10は、上水道または水タンク等の水源から過熱水蒸気発生器3への水の供給量を調整する。過熱水蒸気発生器3の下流には、弁11が設置されている。弁11は、過熱水蒸気発生器3から加熱室2への過熱水蒸気の供給量を調整する。
【0017】
酸化抑制ガスを供給するラインにあるガスタンク12から加熱室2へつながる配管に弁13は設置されている。弁13は、加熱室2へ供給される酸化抑制ガス量を調整する。酸化抑制ガスは、被処理物100が酸化することを抑制するガスである。酸化抑制ガスは、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガスと、窒素ガスと、を含む不活性ガスがある。
【0018】
制御部4は、循環ファン5と、ヒータ6と、温度センサ7と、過熱水蒸気発生器3と、に電気的に接続されており、それらを制御する。制御部4は、温度センサ7による検出温度を用い、目標温度になるようにヒータ6をフィードバック制御する。
【0019】
排気ガス測定装置14は、排気口9を通って加熱室2の外部に排出されたガスを導入し、ガスに含まれるCO濃度を検出する。この排気ガス測定装置14は、導入されたガスを燃焼しCOと水に分解する。分解したCOの量を検出し、CO濃度を算出する。CO濃度の算出については、本実施形態では、非分散型赤外線吸収方法(NDIR)である理研機器株式会社製の可搬型赤外線式ガスモニター(型式:RI-557)を用いた。本実施例の被処理物100中の接合剤は、ベンゼンやアルデヒド基などであり、排気されるガスには炭素を含む。
【0020】
被処理物100は、母材と、接合剤と、からなる。また、母材と接合剤とが積層されるタイプや、母材に接合剤が混合されるタイプがある。母材は、金属粉末、およびセラミック粉末の何れか1種以上を含むような材料である。接合剤は、有機化合物を含む材料で、有機化合物としては、ベンゼン、アルデヒド基がある。なお、母材、および接合剤の具体的な構成および組み合わせは限定されない。また、接合剤は、バインダと呼ばれる場合もある。
【0021】
<熱処理方法の概要>
まず、被処理物100が加熱室2に搬入される。次に、被処理物100の酸化を抑制したい場合は、加熱室2へ酸化抑制ガスを供給し、加熱室2を予熱する。加熱室2の温度が過熱水蒸気の温度(例えば150℃)に達すると過熱水蒸気発生器3から加熱室2へ過熱水蒸気を供給するとともに、酸化抑制ガスの供給を停止する。
【0022】
加熱室2へ過熱水蒸気が供給され、被処理物100の接合剤が除去される。接合剤の残留量が所定の範囲になるように、過熱水蒸気の供給を制限する。また、過熱水蒸気の供給を制限するとともに、加熱室2へ酸化抑制ガスを供給する。その後、被処理物100が常温程度になったら、加熱室2から搬出される。
【0023】
制御部4は、推定した被処理物100中の接合剤の残留量に基づいて、加熱処理終了時において被処理物100に残留する接合剤の量が所定範囲内となるように、加熱室2への過熱水蒸気の供給を制限する。
【0024】
<接合剤の残留量の推定および過熱水蒸気の供給の制限>
制御部4は、被処理物100に含まれている接合剤が熱処理中にガスとなって放出される際の放出量特性に応じて被処理物100中の接合剤の残留量を推定する。具体的には放出されるガスのうち所定の化学成分であるCO濃度の検出値に基づき残留量を推定する。
【0025】
図2は、熱処理中の雰囲気温度とCO濃度との関係を示すグラフである。過熱水蒸気により被処理物100を熱処理すると、被処理物100中の接合剤は、過熱水蒸気によって溶融し、この溶融が十分進行した後、蒸発する。このように、接合剤は、過熱水蒸気に起因する溶融段階から蒸発段階に移行するとき、急峻に蒸発量が増すことで多くのガスを排出する。その結果、蒸発に伴いCO濃度が急峻に増加する。そして、接合剤の蒸発が一気に進む結果、接合剤の蒸発速度が急激に低下する。その結果、接合剤からのガスの排出量が急激に低下し、CO濃度も急峻に低下する。このような作用によって、CO濃度は、時間経過中にピークが発生する放出量特性となる。このピークの始まりから終わりの間で、過熱水蒸気による熱処理を制限開始及び停止すると接合剤の残留量が所定範囲になる。よって、このピークの始まりから終わりの間が、推定される過熱水蒸気の制限開始及び停止タイミングとなる。
【0026】
また、過熱水蒸気の供給を制限開始と同時に、加熱室2へ酸化抑制ガスを供給し、被処理物100の酸化を抑制する。すなわち、接合剤の除去が進行して被処理物100中の接合剤が減ると、過熱水蒸気が接合剤を分解させて蒸発させる作用が減少し、過熱水蒸気によって被処理物100に含む金属成分を酸化させる作用が生じやすくなるが、上記したように酸化抑制ガスを供給することで、被処理物100の酸化を抑制できる。
【0027】
なお、放出されるCOの放出量特性に応じて被処理物100中の接合剤の残留量を推定する換わりに、放出されたCO量から被処理物100中の接合剤の残留量を推定してもよい。熱処理前の被処理物100に含有していた接合剤の量を予め実験等で把握しておき、その量から熱処理によって蒸発した接合剤の量を減算すると接合剤の残留量が求められる。
【0028】
図3は、CO濃度の積分値と被処理物100中の接合剤の残留量との関係を示すグラフである。検出されたCO量の積分値が大きいということは、被処理物100から蒸発した接合剤の量が多いこととなり、接合剤の残留量が少ないことになる。また、CO濃度の計測器の容積は一定なので、CO濃度が高いと、CO量が多いということなり、直接的にCO量を積分しなくても、CO濃度の値を積分しても、相関しているので、蒸発した接合剤の量を推定できる。
【0029】
また、放出されるCOの放出量特性に応じて被処理物100中の接合剤の残留量を推定する換わりに、示差熱分析(DTA:Differential Thermal Analysis)や、熱重量測定(TG:Thermogravimetry)を用いて、被処理物100中の接合剤の残留量を推定してもよい。
【0030】
示差熱分析の場合、被処理物100を加熱した時の、起電力を示した結果が図4のDTAグラフ(破線)である。このDTAグラフのTemp1からTemp2の間に示すピークは、CO濃度で発生するピークと同様な温度領域になる。その温度領域を用いて被処理物100中の接合剤の残留量を推定してもよい。よって、このTemp1からTemp2の間の温度範囲が、過熱水蒸気の制限開始タイミングとなる。
【0031】
熱重量測定の場合、被処理物100の温度を連続的に上昇させながら加熱し、この加熱に際して被処理物100の重量変化を温度と共に追跡測定した測定結果が図4のTGグラフ(実線)に示される。このTGグラフのTemp1からTemp2の間に示す傾斜が急峻なところは、熱重量の減少が急激に進行するところである。すなわち、接合剤の蒸発量が急激に増して多くのガスを放出し、被処理物100の重量が急激に減少する。特に、過熱水蒸気を用いるとより急峻な特性となる傾向がある。
【0032】
この急峻となる傾斜は、DTAグラフのピークが発生する始まりから終わりの間にある。このタイミングを用いて被処理物100中の接合剤の残留量を推定してもよい。すなわち、Temp1からTemp2の間の温度範囲で、過熱水蒸気の制限開始タイミングとなる。
【0033】
なお、JIS(日本産業規格)のK0129にあるような熱重量測定・示差熱分析に基づいて残留する接合剤の量を推定する方法の他に、電子天秤など重量センサで、被処理物100の重量を測定し、測定した重量から残留する接合材の量を推定してもよい。
【0034】
また、被処理物100から放出される接合剤の量を推定する方法として、放出されるガスの特定化学成分の量を直接的に検出するCOセンサを用いて推定してもよいし、放出されるガスをカメラで撮像し画像処理によって推定してもよい。また、熱処理中の被処理物100の温度を測定し、温度と排出される接合剤の量との関係から推定してもよい。
【0035】
また、被処理物100の仕様や求められる要件および熱処理条件が同じであれば、熱処理後の接合剤の残留量が所定範囲となる熱処理時間を予め実験的に求めておき、熱処理時間を計測することで、被処理物100中の接合剤の残留量を推定してもよい。この場合は、放出されるガスを検出するような構成を設けなくてもよく、簡易的に実施できる。
【0036】
また、過熱水蒸気の供給を制限する方法としては、過熱水蒸気の供給を段階的や徐々に減らしてもよい。更に、酸化抑制ガスの供給を過熱水蒸気の供給減少量に合わせて設定してもよい。
【0037】
また、過熱水蒸気の供給量は同じで、過熱水蒸気の温度を低下させるようにしてもよい。例えば、過熱水蒸気生成器3を複数設け、それぞれ異なる温度の過熱水蒸気を蓄えるようにする。そして、相対的に高温の過熱水蒸気の供給から、低温の過熱水蒸気の供給に切替えるようにしてもよい。
【0038】
図5の(A)~(C)は、加熱室2内に供給する過熱水蒸気の制限開始と停止するタイミングの例を示すグラフである。図5の(A)は、過熱水蒸気の供給を制限開始及び停止する。すなわち、過熱水蒸気の供給を制限開始するタイミングT1と、過熱水蒸気を停止するタイミングT1とが、一致する例である。
【0039】
図5(B)は、過熱水蒸気の供給を段階的に減らす例であり、タイミングT2にて、過熱水蒸気の供給の制限開始として、過熱水蒸気の供給量を所定量減らし、タイミングT3にて過熱水蒸気を停止させる例である。
【0040】
図5(C)は、過熱水蒸気の供給を徐々に減らす例であり、タイミングT4にて、過熱水蒸気の供給の制限を開始して、過熱水蒸気の供給量を徐々に連続的に減らし、タイミングT5にて過熱水蒸気を停止させる例である。
【0041】
接合剤の残留量の所定範囲の上限は、被処理物100の焼成品質に悪影響を及ぼさない程度に残留していても構わない接合剤の残留量である。一方、所定範囲の下限は、被処理物100に崩壊が生じないように必要な程度の接合剤の残留量である。被処理物100の母材の組成、接合剤の組成、および母材と接合剤との比率等や、求められる要求仕様に応じて所定範囲は調整される。例えば、母材が92重量%、接合剤が8重量%、合計で100重量%であるセラミック系の被処理物100を挙げる。この一例における接合剤の残留量の所定範囲は、加熱処理前の接合剤の重量を100%としたときに、以下の通りである。
上限:接合剤の残重量が75.0%~62.5%。
下限:接合剤の残重量が37.5%~25.0%。
換言すれば、以下の通りである。
上限:6.0重量%~5.0重量%。
下限:3.0重量%~2.0重量%。
【0042】
このように、接合剤の残留量が所定範囲となるように加熱室2への過熱水蒸気の供給が制限されることで、被処理物100にクラックや剥がれ等の損傷が生じることを抑制できる。また、接合剤の蒸発が急激に増加する放出量特性に応じて過熱水蒸気を制御することで、被処理物100中の接合剤の残留量を適切にできる。また、化学成分の検出値に基づいて被処理物100中の接合剤の残留量を推定できる。また、過熱水蒸気の停止タイミングを推定し、推定したタイミングで過熱水蒸気を停止することで、被処理物100の接合剤の残留量を適切にできる。また、接合剤の残留量に基づき加熱室2へ酸化抑制ガスを供給することで、被処理物100の酸化を抑制できる。
【符号の説明】
【0043】
1 熱処理装置
2 加熱室
3 過熱水蒸気発生器
4 制御部
14 排気ガス測定装置
図1
図2
図3
図4
図5